遮光フィルム及びその製造方法
【課題】遮光性に優れるとともに薄型化に適し、更に光沢度の低い遮光フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム（基材）と、前記基材の少なくとも一方の面に配設された遮光層とを備えた遮光フィルムであって、前記遮光層が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、且つその全体の厚さが１５μｍ以下であり、前記遮光層が、その厚さ方向において、前記基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が前記基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高く、全体の厚さが４０μｍ以下の遮光フィルム。
【解決手段】基材フィルム（基材）と、前記基材の少なくとも一方の面に配設された遮光層とを備えた遮光フィルムであって、前記遮光層が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、且つその全体の厚さが１５μｍ以下であり、前記遮光層が、その厚さ方向において、前記基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が前記基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高く、全体の厚さが４０μｍ以下の遮光フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は遮光フィルム及びその製造方法に関し、更に詳しくは、カメラ、ビデオカメラ、複写機、現像機等の各種光学機器の遮光部材として有用であり、遮光性に優れるとともに薄型化に適し、更に光沢度の低い遮光フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
近時、カメラはポケットサイズにまで小型化され、デジタル技術の発達によりデジタルカメラが普及し、このデジタルカメラは薄型化、コンパクト化が進み、名刺サイズのものや携帯電話にカメラ機能を付加したものまで出てきている。また、ビデオカメラも小型化、軽量化が進んでいるが、カメラ同様、デジタル化により更なる小型化に加え、高性能化が進んでいる。
【０００３】
このように、カメラやビデオカメラの小型化により、それらを構成する部品にも小型化、軽量化が要求されるようになってきている。例えば、シャッターや絞りなどの遮光部材には金属が使用されていたが、小型化、軽量化及び低コスト化に伴い、合成樹脂フィルムが用いられることが多くなってきている。このような中で、光学機器に用いられる遮光フィルムとしては、カーボンブラックを混入させたポリエステルフィルムにサンドブラストによって表面を粗面化し、さらに、電子伝導型の導電剤を塗布したもの（特許文献１）が提案されている。また、基材フィルムの少なくとも片面にバインダー樹脂、平均粒径１μｍ以下の黒色微粉末、平均粒径０．５〜１０μｍの有機フィラー及び平均粒径０．１〜１０μｍの滑剤とからなる遮光層を設けたもの（特許文献２）や、基材フィルムの少なくとも片面に、Ｔｇ４０℃以上、軟化点８０℃以上の熱可塑性樹脂からなるバインダー樹脂、平均粒径１μｍ以下の黒色微粉末、平均粒径０．５〜１０μｍの有機フィラー及び平均粒径０．１〜１０μｍの滑剤とからなる遮光層を設けたもの（特許文献３）が提案されている。これ以外にも、例えば、パラ系芳香族ポリアミドからなるフィルム材であって光学濃度が２以上の羽根材の少なくとも片面に、遮光性及び耐溶剤性を有する墨インクを塗工し、さらに重ねて潤滑性を有する黒色塗装を施して、光学濃度が８以上になるようにした厚さ５０〜２００μｍ程度の遮光羽根（特許文献４）が提案されている。
【特許文献１】特開平１−１２５０３号公報
【特許文献２】特開平７−３１９００４号公報
【特許文献３】特開２００３−２９３１４号公報
【特許文献４】特開平１０−３１２００号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
特許文献１に記載の発明は、カーボンブラックを混入させたポリエステルフィルムにより遮光性を得ているため、ポリエステルフィルムに配合するカーボンブラックの量を多くする必要がある。カーボンブラックの使用量が増えると、フィルムの機械的及びその他の物性が変化し、フィルムの平面性やコスト面で不利である。また、サンドブラストにより表面が粗面化してあるため、フィルム同士の摺り合わせ等により表面の凹凸がつぶれやすく、長期使用後にフィルム表面に光沢が生じてしまうという問題があった。
【０００５】
一方、遮光フィルムの薄型化はカメラやビデオカメラの高性能化に寄与する。例えばカメラのシャッターやビデオカメラの絞り等に薄型化した遮光フィルムを使用すれば、軽量であるため、シャッターや絞りを駆動させるために必要な電力を低く抑えることができるだけでなく、カメラやビデオカメラ自体の薄型化、コンパクト化が可能となる。さらには、薄型化することにより断面での光の反射を抑えることができるため、シャッターや絞りとしての信頼性を向上させることができる。
【０００６】
しかしながら、特許文献２及び特許文献３に記載の遮光フィルムや特許文献４に記載の遮光羽根は、その薄型化及び遮光性の点から見ると、必ずしも十分満足しうるものではなかった。薄型化は基材フィルム及び遮光層を従来使用しているものよりもさらに薄くする必要があるが、遮光層を薄くすると、遮光性が低下することに加え、遮光層表面の光沢度が高くなり、その表面に光源（ライトや太陽等）が写る現象（写り込み）が発生するという問題があった。
【０００７】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、遮光性に優れるとともに薄型化に適し、更に光沢度の低い、遮光層表面への写り込みの発生を低減した遮光フィルム及びその製造方法を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を達成するため、本発明によって以下の遮光フィルム及びその製造方法が提供される。
【０００９】
［１］ 基材フィルム（基材）と、前記基材の少なくとも一方の面に配設された遮光層とを備えた遮光フィルムであって、前記遮光層が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、且つその全体の厚さが１５μｍ以下であり、前記遮光層が、その厚さ方向において、前記基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が前記基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高く、全体の厚さが４０μｍ以下の遮光フィルム。
【００１０】
［２］ 前記基材の両面に前記遮光層が配設され、片面の前記遮光層の厚さが８μｍ以下である［１］に記載の遮光フィルム。
【００１１】
［３］ 前記フィラーが有機樹脂粒子及び／又は無機粒子である［１］又は［２］に記載の遮光フィルム。
【００１２】
［４］ 前記遮光層の、前記基材に接する面に近い領域が、バインダー樹脂及び黒色顔料を含有する第１遮光層により構成され、前記遮光層の、前記表面に近い領域が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有する第２遮光層により構成され、前記第１遮光層に含有される黒色顔料の濃度が、前記第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度より高く、前記第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度が３質量％以上である［１］〜［３］のいずれかに記載の遮光フィルム。
【００１３】
［５］ 前記バインダー樹脂が、ガラス転移温度（Ｔｇ）１０〜１５０℃のポリエステル樹脂を含有する［１］〜［４］のいずれかに記載の遮光フィルム。
【００１４】
［６］ 光学濃度が５．０以上であり、光沢度が６．０％以下である［１］〜［５］のいずれかに記載の遮光フィルム。
【００１５】
［７］ 基材フィルム（基材）の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂及び水分散性の黒色顔料を含有する第１遮光層塗工液を塗布、乾燥し、全体の厚さが１〜６μｍの第１遮光層を得る工程と、前記第１遮光層の表面に、バインダー樹脂、水分散性の黒色顔料及びフィラーを含有し、前記黒色顔料の濃度が前記第１遮光層塗工液における黒色顔料の濃度より低い第２遮光層塗工液を、塗布、乾燥し、全体の厚さが６〜１０μｍの第２遮光層を得る工程とを有し、前記バインダー樹脂が水溶性又は水分散性であり、前記第１遮光層と前記第２遮光層とから形成される遮光層の厚さを１５μｍ以下とする遮光フィルムの製造方法。
【００１６】
［８］ 前記基材の両面に前記第１遮光層塗工液及び第２遮光層塗工液を塗布し、片面の全体の厚さを８μｍ以下とし、片面の第１遮光層の厚さを０．５〜３μｍとし、片面の第２遮光層の厚さを３〜６μｍとする［７］に記載の遮光フィルムの製造方法。
【００１７】
［９］ 前記バインダー樹脂が、ガラス転移温度（Ｔｇ）１０〜１５０℃のポリエステル樹脂を含有する［７］又は［８］に記載の遮光フィルムの製造方法。
【００１８】
［１０］ 光学濃度が５．０以上であり、光沢度が６．０％以下である遮光フィルムを作製する［７］〜［９］のいずれかに記載の遮光フィルムの製造方法。
【００１９】
［１１］ 前記黒色顔料がカーボンブラックである［７］〜［１０］に記載の遮光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【００２０】
本発明の遮光フィルムによれば、基材フィルム（基材）に配設される遮光層が、その厚さ方向において、基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高いため、遮光層の厚さを１５μｍ以下と薄くしても、遮光性に優れたものとなる。そして、遮光フィルム全体の厚さを４０μｍ以下という薄いものとすることができる。また、遮光層にフィラーが含まれるため、光沢度が低く、遮光層表面の写りこみの発生を低減することができる。これにより、本発明の遮光フィルムは、薄型化、コンパクト化が要求される光学機器用のシャッター、絞り等の材料として好適に用いることができる。また、本発明の遮光フィルムの製造方法は、上記本発明の遮光フィルムを効率的に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２１】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【００２２】
本発明の遮光フィルムの一実施形態は、基材フィルム（基材）と、基材の少なくとも一方の面に配設された遮光層とを備えた遮光フィルムであって、遮光層が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、且つその全体の厚さが１５μｍ以下であり、遮光層が、その厚さ方向において、基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高く、全体の厚さが４０μｍ以下の遮光フィルムである。以下、その詳細について説明する。
【００２３】
本実施の形態の遮光フィルムは、その一方の面又は両面に配設される遮光層が、その厚さ方向において、基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高いものである。黒色顔料の遮光層の厚さ方向における濃度分布は、基材に接する側の面から表面に向かって連続的に低くなってもよいし、断続的に表面側の濃度が低くなってもよい。断続的に表面側の黒色顔料の濃度が低くなる場合とは、例えば、遮光層が、基材に接する面に近い領域を構成する層（第１遮光層）と、表面に近い領域を構成する層（第２遮光層）との２層から形成され、第１遮光層に含有される黒色顔料の濃度が、第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度より高くなっている場合である。ここで、「遮光層の、厚さ方向における、基材に接する面に近い領域」というときは、黒色顔料の濃度が遮光層内で厚さ方向に連続的に変わっている場合には、遮光層の基材に接する面から遮光層の厚さの１／２に相当する位置までをいい、遮光層が２層から構成されている場合には、基材に接する側の層（第１遮光層）をいう。また、「遮光層の、厚さ方向における、表面に近い領域」というときは、黒色顔料の濃度が遮光層内で厚さ方向に連続的に変わっている場合には、遮光層の表面から遮光層の厚さの１／２に相当する位置までをいい、遮光層が２層から構成されている場合には、表面側の層（第２遮光層）をいう。また、遮光層が３層以上の層から構成される場合には、「遮光層の、厚さ方向における、表面に近い領域」は、遮光層の最も表面側に位置する層をいい、「遮光層の、厚さ方向における、基材に接する面に近い領域」は、遮光層の最も表面側に位置する層を除いたその他の層をいう。また、「遮光層の全体の厚さ」というときは、基材の一方の面（片面）にのみ遮光層が配設されている場合には、その遮光層の厚さを意味し、基材の両面に遮光層が配設されている場合には、両方の遮光層の厚さを合計した厚さを意味する。また、同様に、「第１遮光層の全体の厚さ」というときは、基材の一方の面（片面）にのみ遮光層が配設されている場合には、その遮光層を構成する第１遮光層の厚さを意味し、基材の両面に遮光層が配設されている場合には、両方の遮光層を構成する第１遮光層の厚さを合計した厚さを意味する。さらに、「第２遮光層の全体の厚さ」という場合も上記第１の遮光層の場合と同様である。
【００２４】
これにより、本実施形態の遮光フィルムは、遮光層の全体の厚さを１５μｍ以下と薄くしても、遮光性に優れたものとなり、遮光フィルム全体の厚さを４０μｍ以下という薄いものとすることができる。そして、遮光層の表面側の領域の黒色顔料が少なくなる分だけ、表面側の領域フィラーを多く添加することが可能となるため、光沢度が低く、遮光層表面の写りこみの発生を低減することができる。
【００２５】
遮光層の全体の厚さは、１５μｍ以下であり、８〜１４μｍが好ましい。遮光層を基材の片面にのみ配設する場合には、上記遮光層の厚さ（遮光層全体の厚さ）は１０〜１４μｍが好ましい。片面にのみ配設された遮光層が、第１遮光層（基材に接する側の層）と第２遮光層（表面側の層）との２層から構成されている場合には、第１遮光層の厚さは、１〜６μｍが好ましく、１〜５μｍが更に好ましい。また、第２遮光層の厚さは、６〜１０μｍが好ましく、７〜１０μｍが更に好ましい。また、遮光層を基材の両面に配設する場合には、一方の面（片面）に配設される遮光層の全体の厚さとしては、８μｍ以下が好ましく、４〜８μｍが更に好ましく、５〜７μｍが特に好ましい。両面に配設された遮光層のそれぞれが、第１遮光層（基材に接する側の層）と第２遮光層（表面側の層）との２層から構成されている場合には、その中の片面の遮光層を構成する第１遮光層の厚さは、０．５〜３μｍが好ましく、０．５〜２．５μｍが更に好ましい。また、第２遮光層の厚さは、３〜６μｍが好ましく、４〜５μｍが更に好ましい。
【００２６】
遮光層に含有される黒色顔料の濃度は、全体として、３〜６０質量％であることが好ましく、５〜５５質量％であることが更に好ましい。３質量％より少ないと、遮光性及び導電性が低下することがあり、６０質量％より多いと塗膜強度が低下することがあり、また、コスト高となる。遮光層が第１遮光層（基材に接する側の層）と第２遮光層（表面側の層）との２層から構成されている場合には、第１遮光層に含有される黒色顔料の濃度は３０〜６０質量％であることが好ましく、４５〜５５質量％であることが更に好ましい。また、第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度は３質量％以上であることが好ましく、４〜１０質量％であることが更に好ましい。
【００２７】
上述のように、本発明の遮光フィルムにおいて、遮光層は、その遮光層中の黒色顔料の濃度が基材側で高くなるように構成すれば、１層から構成されてもよいし、２層以上から構成されてもよいが、生産性、遮光性、光沢度及び薄型化の観点より２層以上であることが好ましい。上述のように、遮光層が第１遮光層（基材に接する側の層）と第２遮光層（表面側の層）との２層から構成されている場合には、第１遮光層には遮光性を高めるために黒色顔料の濃度を、塗膜強度が維持できる範囲で、できるだけ高く保つことが好ましい。そのため、第１遮光層が、バインダー樹脂及び黒色顔料を含有する層であることが好ましく、バインダー樹脂及び黒色顔料のみを含有する層であることが更に好ましい。そして、第１の遮光層の表面に設ける第２遮光層が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有する層であることが好ましい。この様に構成することにより、第１遮光層がフィラーを含有しない分だけ黒色顔料の濃度を高くすることが可能になり、薄い層でありながら遮光性を向上させることが可能になる。そして、第２遮光層にフィラーを含有させることにより、表面にフィラーが露出する状態となり、光沢度を低くし、遮光層表面に写り込みの発生を低減することが可能となる。フィラーは遮光層の表面に露出させることにより光沢度を低くしているため、基材側に位置する第１遮光層には含有させる必要がない。そして、第２遮光層に含有されるフィラーとしては、球状の有機樹脂粒子、特にアクリル系樹脂粒子が摺動性及び耐磨耗性の面から好ましい。
【００２８】
遮光層を２層以上にした場合の、各層のバインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーの配合させ方は、上述した形態に限定されない。例えば、遮光層を２層とした場合には、第１遮光層（基材に接する側の層）にバインダー樹脂と黒色顔料を含有させ（フィラーを含有させない）、第２遮光層（表面側の層）にバインダー樹脂と有機フィラーを含有させる（黒色顔料を含有させない）ことができる。また、遮光層を２層とした場合に、第１遮光層にバインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有させ、第２遮光層にバインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有させ、第２遮光層の黒色顔料濃度より第１遮光層の黒色顔料濃度を高くするようにしてもよい。更に、遮光層を３層にして、第１遮光層（基材に接する側の層）にバインダー樹脂と黒色顔料を含有させ（フィラーを含有させない）、中間遮光層（第１遮光層と第２遮光層に挟まれた中間に位置する遮光層）にバインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有させ、第２遮光層（表面側の層）にバインダー樹脂と有機フィラーを含有させる（黒色顔料を含有させない）ことができる。
【００２９】
本実施形態の遮光フィルムは、光学濃度が５．０以上であることが好ましく、光沢度が６．０％以下であることが好ましい。光学濃度が５．０より小さいと遮光性において不十分のことがある。光沢度が６．０％を超えると、遮光層表面の写りこみの発生低減効果が低下することがある。遮光フィルムの光学濃度は光学濃度計（マクベス社製ＴＤ−９０４）を用いて測定した値である。光沢度は、光沢度計（村上色彩技術研究所製、ＧＭＸ−２０２）を用いて鏡面光沢度を測定して得られた値である。
【００３０】
本実施形態の遮光フィルムは、その厚さが４０μｍ以下であり、３０〜４０μｍが好ましい。４０μｍ超であると、要求されている薄型化という点で満足できるものではない。また断面での光反射防止性が低下するため、シャッターや絞りとしての高性能化の妨げになるので好ましくない。
【００３１】
本実施形態の遮光フィルムにおいて、基材フィルム（基材）としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、液晶ポリマー等の合成樹脂フィルム等が用いられるが、特にポリエステルフィルムがコストと性能とのバランスに優れているので好適である。また、基材フィルムは透明なものはもちろん、発泡ポリエステルフィルムや、カーボンブラック等の黒色顔料や他の顔料を含有させた合成樹脂フィルムを使用することもできる。この場合、その基材フィルムはその用途により適当なものを選ぶことができる。例えば、より高い遮光性が必要な場合には黒色顔料含有の合成樹脂フィルムを、そうでない場合には透明もしくは発泡した合成樹脂フィルムを使用することができる。基材フィルムの厚みは使用目的や利用分野等により様々であるが、より薄型化を目指すという本発明の目的からすれば、５〜２５μｍが好ましく、更に好ましくは１２〜２５μｍである。
【００３２】
本実施形態の遮光フィルムにおいて、バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ（メタ）アクリル酸系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリブチラール樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン／ポリブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの１種又は２種以上を混合して用いることができる。本発明で用いるバインダー樹脂は遮光層の薄型化と高遮光性を得るために使用する黒色顔料の粒径をできるだけ小さく、かつ均一に分散させるためにも、水溶性又は水分散性の樹脂を用いるのが好ましい。さらに、バインダー樹脂としては、平面性、摺動性及び耐熱性の面から、Ｔｇ（ガラス転移温度）は１０℃以上が好ましく、更に好ましくは１０〜１５０℃、特に好ましくは１５〜１４０℃である。軟化点温度は８０℃以上が好ましく、更に好ましくは８０〜３００℃であり、特に好ましくは８５〜２９０℃であり、最も好ましいのは９０〜２９０℃である。
【００３３】
バインダー樹脂としてはポリエステル樹脂を用いるのが更に好ましい。本発明者らは、ポリエステル樹脂をバインダー樹脂として用いる時には、硬度及び耐傷性に優れるとともに、平面性に優れた遮光フィルムが得られることを見出した。前記ポリエステル樹脂は、従来公知の製造方法によりポリオールと多塩基酸を触媒の下で反応させて容易に得ることができる。ポリオールとしては、例えば、１，３−プロパンジオール、１，４−ブタンジオール、１，６−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール又はテトラエチレングリコールを挙げることができる。多塩基酸としては、芳香族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル、これらの酸無水物等を挙げることができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等を挙げることができる。
【００３４】
なお、本実施形態において、Ｔｇは、示差走査熱量測定（ＤＳＣ）により測定されたものであり、軟化点温度は、針入度法または環球法により測定されたものである。
【００３５】
この遮光層中のバインダー樹脂の含有量は、バインダー樹脂と後述する黒色顔料及びフィラーの合計質量に対し、２０〜６０質量％であることが好ましく、２５〜５５質量％であることが更に好ましい。この範囲より少ないと、基材フィルムと遮光層との接着性が低下し、またこの範囲より多いと、遮光性と薄型化及び遮光層表面の光沢度のバランスを取るのが困難になる。
【００３６】
また、前記バインダーは架橋剤により架橋させてもよい。この場合用いられる架橋剤は、バインダー樹脂の官能基と反応性を有する架橋剤を適宜選択すればよく、例えば、水溶性の尿素樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン系化合物等が挙げられる。架橋剤の配合割合は、通常、バインダー樹脂成分１００質量部に対し、５〜１５質量部の範囲である。この範囲より架橋剤の使用量が少ないと塗膜強度や耐熱性の向上が期待できないし、この範囲を超えて配合してもさらなる向上が期待できない。
【００３７】
本実施形態の遮光フィルムにおいて、黒色顔料としては、従来公知の各種のもの、例えば、カーボンブラックや、チタンブラック等の無機顔料やアニリンブラック等の有機顔料等を用いることができる。黒色顔料の平均粒径は好ましくは１μｍ以下であり、更に好ましくは０．５μｍ以下である。その下限値は、通常、０．０１μｍ程度である。平均粒径がこの範囲より大きくなると、光沢度は十分に低くなるが、遮光性が低下するので好ましくない。このような顔料を凝集させずに、均一に分散させることにより、高遮光性と薄型化に対応することが可能になる。このような顔料としては、黒色顔料を水性溶媒に予め分散したものを用いるのが好ましい。
【００３８】
本発明においては、黒色顔料としてカーボンブラックを用いることが更に好ましい。本発明者らは、カーボンブラックを黒色顔料として用いる時には、遮光性が特に優れた遮光フィルムが得られることを見出した。遮光層中に含有させる黒色顔料は、遮光層表面側よりも遮光層基材側の方が黒色顔料の濃度を高くする必要がある。このようにすることにより、本発明の特徴である十分な遮光層を有することができ、しかもその分、遮光層表面側のフィラー添加量を多くすることができるので、光沢度を十分に低くすることが可能になり、しかも薄膜化が可能になる。黒色顔料の含有量は、遮光層中、３〜６０質量％であることが好ましく、５〜５５質量％であることが更に好ましい。黒色顔料をこのような範囲にすることにより、遮光フィルムの導電性及び塗膜強度を良好に維持しながら、遮光性に優れたものとすることができる。この範囲より少ないと、遮光性及び導電性が低下し、この範囲より多いと塗膜強度が低下し、またコスト高になる。
【００３９】
本実施形態の遮光フィルムにおいて、フィラーとしては、有機樹脂粒子及び／又は無機粒子を用いることができる。このようなフィラーを含有させることにより塗膜表面に凹凸をつけることができ、その結果光沢度を低下させることができる。
【００４０】
本実施形態の遮光フィルムにおいて用いられる有機樹脂粒子としては、各種の合成樹脂粒子、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン／メラミン／ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂等が挙げられ、また、無機粒子としては、例えば合成シリカ、天然シリカ、カオリン、タルク、クレー、炭酸カルシウム、チタニア、アルミナ、ジルコニア、ゼオライト、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、ガラス等の粉末からなるものが挙げられる。これらのフィラーは１種又は２種以上を混合して用いることができる。また、前記フィラーの形状は球状品でも粉砕品であってもよいが、球状品を使用することにより、静摩擦係数が低くなり、摺動性が向上するので好ましい。フィラーの含有量は、遮光層中、５〜７０質量％、好ましくは１０〜６５質量％であり、この範囲を逸脱すると、表面の光沢度が増加したり、摺動性が低下することがある。フィラーの平均粒径は、０．１〜７μｍ、好ましくは０．２〜６μｍであり、この範囲より大きいと薄膜化が困難となることがあり、小さいとフィルム表面の光沢度が高くなることがある。また、平均粒径の異なる数種類のフィラーを混合して用いることもできる。例えば、遮光層表面に入射する光の角度が低角度から高角度に至るまであらゆる角度に対して光沢度が低くなるように、１μｍ未満のフィラーと、１〜６μｍのフィラーとを混合することが特に好ましい。さらには、フィラーは黒色あるいは濃い色に着色されていてもよい。尚、フィラーの平均粒子径は、上記黒色顔料の平均粒子径の測定方法と同じ測定方法で測定した値である。
【００４１】
本実施形態の遮光フィルムにおいて、遮光層には、上述したバインダー樹脂、黒色顔料、フィラーに加えて、必要に応じて公知の各種添加剤が含有されてもよい。添加剤としては、滑剤、カップリング剤等のフィラーの表面処理剤、界面活性剤、静電防止剤、潤滑剤、消泡剤等を挙げることができる。
【００４２】
これら添加剤の中で、滑剤としては、従来公知の各種のもの、例えば、ポリエチレン等の炭化水素系滑剤、ステアリン酸等の脂肪族系滑剤、ステアリルアルコール等のアルコール系滑剤、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤、シリコン系樹脂粒子、含フッ素樹脂粒子、架橋ポリメチルメタクリレー粒子、架橋ポリスチレン粒子等が挙げられる。また、滑剤の形状は球状であってもなくてもよいが、球状の方が摺動性、光沢度の面から好ましい。滑剤の含有量は遮光層中、５〜２０質量％、好ましくは７〜１５質量％であり、この範囲を逸脱すると、摺動性及び光沢度が不十分となる。また、滑剤の平均粒径は、０．１〜３μｍ、好ましくは０．１５〜２μｍであり、この範囲より平均粒径が大きいと薄型化が困難となり、かつ摺動効果が低下するし、この範囲より小さいと、光沢度が高くなってしまい、写り込み防止性に劣るようになる。
【００４３】
以上のように、本発明の遮光フィルムは、遮光性と薄型化を同時に満足できるものであり、しかも光沢度が低く、遮光層表面に写り込みが発生するのを防止することができることにより、薄型で高性能な光学機器用シャッター、絞り等の光学機器用遮光部材を得ることができるものとして好適なものである。薄型化できることから、遮光部材の断面での光の反射を防止しやすくなるため、より精密性等が要求される光学機器にも十分に対応できるものである。また、本発明の遮光フィルムにおいては、遮光層中の黒色顔料の含有量を調節することにより、薄型化を維持しつつ、遮光性に優れ、なお且つ光沢度が低く、遮光層表面に写り込みが発生するのを防止することができるので、多種の光学機器用遮光材に対応することができる。
【００４４】
次に、本発明の遮光フィルムの製造方法の一の実施形態について説明する。
【００４５】
本発明の遮光フィルムの製造方法の一実施形態は、基材フィルム（基材）の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂及び黒色顔料を含有する第１遮光層塗工液を塗布、乾燥し、厚さ２〜６μｍの第１遮光層を得る工程と、第１遮光層の表面に、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、黒色顔料の濃度が第１遮光層塗工液における黒色顔料の濃度より低い第２遮光層塗工液を、塗布、乾燥し、厚さ６〜１０μｍの第２遮光層を得る工程とを有し、第１遮光層と前記第２遮光層とから形成される遮光層の厚さを１５μｍ以下とするものである。この方法により、遮光層が２層（第１遮光層と第２遮光層）からなる遮光フィルムを製造することができる。
【００４６】
まず、基材の一方の面又は両方の面にバインダー樹脂及び黒色顔料を含有する第１遮光層塗工液を塗布する。第１遮光層塗工液は、バインダー樹脂及び黒色顔料を溶媒に溶解又は分散し、必要に応じて各種添加剤を添加して混合したものである。溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合物等を用いることができる。本実施形態において、基材、バインダー樹脂、黒色顔料及び各種添加剤は上記本発明の遮光フィルムの説明において挙げたものを使用することができる。特に、黒色顔料については、カーボンブラックが水分散性であるため、塗工液全体に均一に分散させることができる点で好ましい。これは、第２遮光層塗工液に含有される黒色顔料についても同様である。また、バインダー樹脂については、水溶性又は水分散性であることが、塗工液全体に均一に分散させることができる点で好ましい。これは、第２遮光層塗工液に含有されるバインダー樹脂についても同様である。そして、第１遮光層塗工液中の各配合物の配合量は、乾燥させて第１遮光層を形成したときに、上記本発明の遮光フィルムにおける第１遮光層の各配合物の含有量となるように調製することが好ましい。
【００４７】
ここで、遮光層形成に先立って、必要に応じ、遮光層と基材フィルムの接着性向上のために常用されている表面処理を基材に施すこともできる。このような表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線処理、電子線処理、放射線処理等のような表面活性化処理；サンドマット処理、ヘアライン処理等の粗面化処理のような物理的処理；オゾン処理、化学薬品処理のような化学的表面処理；ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等からなるアンカー層を形成するアンカー処理等が挙げられる。
【００４８】
次に、第１遮光層塗工液を塗布した基材を乾燥させて第１遮光層を形成する。乾燥方法は特に限定されず、公知の方法を使用できるが、熱風乾燥が好ましい。乾燥後の第１遮光層の厚さは、遮光層を基材の片面にのみ配設する場合には、１〜６μｍとし、１〜５μｍとすることが好ましい。また、遮光層を基材の両面に配設する場合には、第１遮光層の全体の厚さは、１〜６μｍである。遮光層を基材の両面に配設する場合、片面の第１遮光層の厚さを０．５〜３μｍとすることが好ましく、０．５〜２．５μｍとすることが更に好ましい。
【００４９】
次に、第１遮光層の表面に、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、黒色顔料の濃度が第１遮光層塗工液における黒色顔料の濃度より低い第２遮光層塗工液を塗布する。第２遮光層塗工液は、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを溶媒に溶解又は分散し、必要に応じて各種添加剤を添加して混合したものである。溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合物等を用いることができる。第２遮光層塗工液中の各配合物の配合量は、乾燥させて第２遮光層を形成したときに、上記本発明の遮光フィルムにおける第２遮光層の各配合物の含有量となるように調製することが好ましい。
【００５０】
次に、第２遮光層塗工液を塗布した基材を乾燥させて第１遮光層及び第２遮光層からなる遮光層を形成し、本実施の形態の遮光フィルムを得ることができる。乾燥方法は特に限定されず、公知の方法を使用できるが、熱風乾燥が好ましい。乾燥後の第２遮光層の厚さは、遮光層を基材の片面にのみ配設する場合には、６〜１０μｍとし、７〜１０μｍとすることが好ましい。また、遮光層を基材の両面に配設する場合には、第２遮光層の全体の厚さは、６〜１０μｍとする。遮光層を基材の両面に配設する場合、片面の第１遮光層の厚さを０．５〜３μｍとすることが好ましい。
【００５１】
そして、第１遮光層と第２遮光層とから形成される遮光層の厚さ（遮光層の全体の厚さ）を１５μｍ以下とし、８〜１４μｍとすることが好ましい。遮光層を基材の片面にのみ配設する場合には、遮光層の全体の厚さは、７〜１４μｍが好ましい。また、遮光層を基材の両面に配設する場合には、一層分の厚さ（片面の厚さ）としては、８μｍ以下が好ましく、４〜８μｍが更に好ましく、５〜７μｍが特に好ましい。
【００５２】
得られた遮光フィルムは、光学濃度が５．０以上であることが好ましく、光沢度が６．０％以下であることが好ましい。光学濃度が５．０より小さいと遮光性において不十分のことがある。光沢度が６．０％を超えると、遮光層表面の写りこみの発生低減効果が低下することがある。
【実施例】
【００５３】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【００５４】
（１）遮光性：
マクベス社製の光学濃度計ＴＤ−９０４にて遮光フィルムの光学濃度を測定した。光学濃度が５以下の場合を良好「○」とし、光学濃度が５より大きい場合を不良「×」とした。
【００５５】
（２）光沢度（％）：
光沢度計（村上色彩技術研究所製 ＧＭＸ−２０２）にて６０°の光沢度を測定した。光沢度が６％以下の場合を良好「○」とし、光沢度が６％より大きい場合を不良「×」とした。
【００５６】
（３）厚さ（μｍ）：
紙厚測定器（シチズン社製 ＭＥＩ−１０）にて３点測定しその平均値を求めた。
【００５７】
（実施例１）
厚さ２５μｍのカーボンブラック含有ポリエステルフィルムの両面に、下記処方（組成）の第１遮光層塗工液を塗布し、１００℃で２分間乾燥して厚さ２μｍの第１遮光層を形成後、この第１遮光層上に、下記処方（組成）の第２遮光層塗工液を塗布し、１００℃で２分間乾燥して厚さ４μｍの第２遮光層を形成することにより遮光フィルムを得た。なお、遮光フィルム全体の厚さは３７μｍであった。得られた遮光フィルムについて、上記方法により、遮光性及び光沢度を測定した。結果を表１に示す。
【００５８】
第１遮光層塗工液：
バインダー樹脂；ポリエステルエマルジョン（固形分２５％の水分散体）
（数平均分子量＝（１５０００）、Ｔｇ＝２０℃） ４０．９質量部
黒色顔料；カーボンブラック水分散体（固形分３１％の水分散体）
（粒径＝（０．３）μｍ） ３５．１質量部
メチルエチルケトン； １９．２質量部
水； ４．８質量部
【００５９】
第２遮光層塗工液：
バインダー樹脂；ポリエステルエマルジョン（固形分３４％の水分散体）
（数平均分子量＝（１５０００）、Ｔｇ＝６７℃） ２６．０質量部
黒色顔料；カーボンブラック水分散体（固形分３１％の水分散体）
（粒径＝（０．３）μｍ） ６．０質量部
フィラー；ベンゾグアナミン／メラミン／ホルムアルデヒド樹脂
（粒径＝０．４μｍ） ３．０質量部
フィラー；ベンゾグアナミン／メラミン／ホルムアルデヒド樹脂
（粒径＝２．５μｍ） ８．８質量部
フィラー；ベンゾグアナミン／メラミン／ホルムアルデヒド樹脂
（粒径＝４．５μｍ） ５．０部質量
カップリング剤；（（チッソ社製） サイラエースＳ５１０） ０．２質量部
エチルアルコール； ２１．５質量部
水； ２９．５質量部
【００６０】
（実施例２）
第１遮光層の厚さを１μｍ、第２遮光層の厚さを５μｍとした以外は、実施例１と同様の方法で遮光フィルムを得た。なお、遮光フィルム全体の厚さは３７μｍであった。得られた遮光フィルムについて、上記方法により、遮光性及び光沢度を測定した。結果を表１に示す。
【００６１】
（実施例３）
第１遮光層の厚さを３μｍ、第２遮光層の厚さを４μｍとした以外は、実施例１と同様の方法で遮光フィルムを得た。なお、遮光フィルム全体の厚さは３９μｍであった。得られた遮光フィルムについて、上記方法により、遮光性及び光沢度を測定した。結果を表１に示す。
【００６２】
（比較例１）
実施例１で使用した第１遮光層塗工液５０質量部と第２遮光層塗工液１００質量部を混ぜて均一にし、塗工液Ａを得た。得られた塗工液Ａを、実施例１と同様のカーボンブラック含有ポリエステルフィルムの両面に塗布し、１００℃で２分間乾燥し、厚さ６μｍの遮光層を形成し、遮光フィルムを得た。なお、遮光フィルム全体の厚さは３７μｍであった。得られた遮光フィルムについて、上記方法により、遮光性及び光沢度を測定した。結果を表１に示す。
【００６３】
（比較例２）
実施例１で使用した第２遮光層塗工液と同じ組成の塗工液を、実施例１と同様のカーボンブラック含有ポリエステルフィルムの両面に塗布し、１００℃で２分間乾燥し、厚さ２μｍの第１遮光層を形成し、次に、第１遮光層の表面に、実施例１で使用した第１遮光層塗工液と同じ組成の塗工液を塗布し、１００℃で２分間乾燥し、厚さ４μｍの第２遮光層を形成することにより遮光フィルムを得た。なお、遮光フィルム全体の厚さは３７μｍであった。得られた遮光フィルムについて、上記方法により、遮光性及び光沢度を測定した。結果を表１に示す。
【００６４】
【表１】
【００６５】
表１より、実施例１〜３の遮光フィルムは、比較例１，２の遮光フィルムと比較して、遮光性に優れていることがわかる。これは、実施例１〜３の遮光フィルムが、第１遮光層に多くのカーボンブラックを有し、狭い範囲に集中的にカーボンブラックが存在することにより、より遮光性が高くなったものと考えられる。そして、実施例１〜３の遮光フィルムは、比較例１，２の遮光フィルムと比較して、光沢度にも優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【００６６】
本発明は、カメラ、ビデオカメラ、複写機、現像機等の各種光学機器の遮光部材として好適に利用することができる。
【技術分野】
【０００１】
本発明は遮光フィルム及びその製造方法に関し、更に詳しくは、カメラ、ビデオカメラ、複写機、現像機等の各種光学機器の遮光部材として有用であり、遮光性に優れるとともに薄型化に適し、更に光沢度の低い遮光フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【０００２】
近時、カメラはポケットサイズにまで小型化され、デジタル技術の発達によりデジタルカメラが普及し、このデジタルカメラは薄型化、コンパクト化が進み、名刺サイズのものや携帯電話にカメラ機能を付加したものまで出てきている。また、ビデオカメラも小型化、軽量化が進んでいるが、カメラ同様、デジタル化により更なる小型化に加え、高性能化が進んでいる。
【０００３】
このように、カメラやビデオカメラの小型化により、それらを構成する部品にも小型化、軽量化が要求されるようになってきている。例えば、シャッターや絞りなどの遮光部材には金属が使用されていたが、小型化、軽量化及び低コスト化に伴い、合成樹脂フィルムが用いられることが多くなってきている。このような中で、光学機器に用いられる遮光フィルムとしては、カーボンブラックを混入させたポリエステルフィルムにサンドブラストによって表面を粗面化し、さらに、電子伝導型の導電剤を塗布したもの（特許文献１）が提案されている。また、基材フィルムの少なくとも片面にバインダー樹脂、平均粒径１μｍ以下の黒色微粉末、平均粒径０．５〜１０μｍの有機フィラー及び平均粒径０．１〜１０μｍの滑剤とからなる遮光層を設けたもの（特許文献２）や、基材フィルムの少なくとも片面に、Ｔｇ４０℃以上、軟化点８０℃以上の熱可塑性樹脂からなるバインダー樹脂、平均粒径１μｍ以下の黒色微粉末、平均粒径０．５〜１０μｍの有機フィラー及び平均粒径０．１〜１０μｍの滑剤とからなる遮光層を設けたもの（特許文献３）が提案されている。これ以外にも、例えば、パラ系芳香族ポリアミドからなるフィルム材であって光学濃度が２以上の羽根材の少なくとも片面に、遮光性及び耐溶剤性を有する墨インクを塗工し、さらに重ねて潤滑性を有する黒色塗装を施して、光学濃度が８以上になるようにした厚さ５０〜２００μｍ程度の遮光羽根（特許文献４）が提案されている。
【特許文献１】特開平１−１２５０３号公報
【特許文献２】特開平７−３１９００４号公報
【特許文献３】特開２００３−２９３１４号公報
【特許文献４】特開平１０−３１２００号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
特許文献１に記載の発明は、カーボンブラックを混入させたポリエステルフィルムにより遮光性を得ているため、ポリエステルフィルムに配合するカーボンブラックの量を多くする必要がある。カーボンブラックの使用量が増えると、フィルムの機械的及びその他の物性が変化し、フィルムの平面性やコスト面で不利である。また、サンドブラストにより表面が粗面化してあるため、フィルム同士の摺り合わせ等により表面の凹凸がつぶれやすく、長期使用後にフィルム表面に光沢が生じてしまうという問題があった。
【０００５】
一方、遮光フィルムの薄型化はカメラやビデオカメラの高性能化に寄与する。例えばカメラのシャッターやビデオカメラの絞り等に薄型化した遮光フィルムを使用すれば、軽量であるため、シャッターや絞りを駆動させるために必要な電力を低く抑えることができるだけでなく、カメラやビデオカメラ自体の薄型化、コンパクト化が可能となる。さらには、薄型化することにより断面での光の反射を抑えることができるため、シャッターや絞りとしての信頼性を向上させることができる。
【０００６】
しかしながら、特許文献２及び特許文献３に記載の遮光フィルムや特許文献４に記載の遮光羽根は、その薄型化及び遮光性の点から見ると、必ずしも十分満足しうるものではなかった。薄型化は基材フィルム及び遮光層を従来使用しているものよりもさらに薄くする必要があるが、遮光層を薄くすると、遮光性が低下することに加え、遮光層表面の光沢度が高くなり、その表面に光源（ライトや太陽等）が写る現象（写り込み）が発生するという問題があった。
【０００７】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、遮光性に優れるとともに薄型化に適し、更に光沢度の低い、遮光層表面への写り込みの発生を低減した遮光フィルム及びその製造方法を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【０００８】
上記課題を達成するため、本発明によって以下の遮光フィルム及びその製造方法が提供される。
【０００９】
［１］ 基材フィルム（基材）と、前記基材の少なくとも一方の面に配設された遮光層とを備えた遮光フィルムであって、前記遮光層が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、且つその全体の厚さが１５μｍ以下であり、前記遮光層が、その厚さ方向において、前記基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が前記基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高く、全体の厚さが４０μｍ以下の遮光フィルム。
【００１０】
［２］ 前記基材の両面に前記遮光層が配設され、片面の前記遮光層の厚さが８μｍ以下である［１］に記載の遮光フィルム。
【００１１】
［３］ 前記フィラーが有機樹脂粒子及び／又は無機粒子である［１］又は［２］に記載の遮光フィルム。
【００１２】
［４］ 前記遮光層の、前記基材に接する面に近い領域が、バインダー樹脂及び黒色顔料を含有する第１遮光層により構成され、前記遮光層の、前記表面に近い領域が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有する第２遮光層により構成され、前記第１遮光層に含有される黒色顔料の濃度が、前記第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度より高く、前記第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度が３質量％以上である［１］〜［３］のいずれかに記載の遮光フィルム。
【００１３】
［５］ 前記バインダー樹脂が、ガラス転移温度（Ｔｇ）１０〜１５０℃のポリエステル樹脂を含有する［１］〜［４］のいずれかに記載の遮光フィルム。
【００１４】
［６］ 光学濃度が５．０以上であり、光沢度が６．０％以下である［１］〜［５］のいずれかに記載の遮光フィルム。
【００１５】
［７］ 基材フィルム（基材）の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂及び水分散性の黒色顔料を含有する第１遮光層塗工液を塗布、乾燥し、全体の厚さが１〜６μｍの第１遮光層を得る工程と、前記第１遮光層の表面に、バインダー樹脂、水分散性の黒色顔料及びフィラーを含有し、前記黒色顔料の濃度が前記第１遮光層塗工液における黒色顔料の濃度より低い第２遮光層塗工液を、塗布、乾燥し、全体の厚さが６〜１０μｍの第２遮光層を得る工程とを有し、前記バインダー樹脂が水溶性又は水分散性であり、前記第１遮光層と前記第２遮光層とから形成される遮光層の厚さを１５μｍ以下とする遮光フィルムの製造方法。
【００１６】
［８］ 前記基材の両面に前記第１遮光層塗工液及び第２遮光層塗工液を塗布し、片面の全体の厚さを８μｍ以下とし、片面の第１遮光層の厚さを０．５〜３μｍとし、片面の第２遮光層の厚さを３〜６μｍとする［７］に記載の遮光フィルムの製造方法。
【００１７】
［９］ 前記バインダー樹脂が、ガラス転移温度（Ｔｇ）１０〜１５０℃のポリエステル樹脂を含有する［７］又は［８］に記載の遮光フィルムの製造方法。
【００１８】
［１０］ 光学濃度が５．０以上であり、光沢度が６．０％以下である遮光フィルムを作製する［７］〜［９］のいずれかに記載の遮光フィルムの製造方法。
【００１９】
［１１］ 前記黒色顔料がカーボンブラックである［７］〜［１０］に記載の遮光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【００２０】
本発明の遮光フィルムによれば、基材フィルム（基材）に配設される遮光層が、その厚さ方向において、基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高いため、遮光層の厚さを１５μｍ以下と薄くしても、遮光性に優れたものとなる。そして、遮光フィルム全体の厚さを４０μｍ以下という薄いものとすることができる。また、遮光層にフィラーが含まれるため、光沢度が低く、遮光層表面の写りこみの発生を低減することができる。これにより、本発明の遮光フィルムは、薄型化、コンパクト化が要求される光学機器用のシャッター、絞り等の材料として好適に用いることができる。また、本発明の遮光フィルムの製造方法は、上記本発明の遮光フィルムを効率的に製造することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２１】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【００２２】
本発明の遮光フィルムの一実施形態は、基材フィルム（基材）と、基材の少なくとも一方の面に配設された遮光層とを備えた遮光フィルムであって、遮光層が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、且つその全体の厚さが１５μｍ以下であり、遮光層が、その厚さ方向において、基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高く、全体の厚さが４０μｍ以下の遮光フィルムである。以下、その詳細について説明する。
【００２３】
本実施の形態の遮光フィルムは、その一方の面又は両面に配設される遮光層が、その厚さ方向において、基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高いものである。黒色顔料の遮光層の厚さ方向における濃度分布は、基材に接する側の面から表面に向かって連続的に低くなってもよいし、断続的に表面側の濃度が低くなってもよい。断続的に表面側の黒色顔料の濃度が低くなる場合とは、例えば、遮光層が、基材に接する面に近い領域を構成する層（第１遮光層）と、表面に近い領域を構成する層（第２遮光層）との２層から形成され、第１遮光層に含有される黒色顔料の濃度が、第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度より高くなっている場合である。ここで、「遮光層の、厚さ方向における、基材に接する面に近い領域」というときは、黒色顔料の濃度が遮光層内で厚さ方向に連続的に変わっている場合には、遮光層の基材に接する面から遮光層の厚さの１／２に相当する位置までをいい、遮光層が２層から構成されている場合には、基材に接する側の層（第１遮光層）をいう。また、「遮光層の、厚さ方向における、表面に近い領域」というときは、黒色顔料の濃度が遮光層内で厚さ方向に連続的に変わっている場合には、遮光層の表面から遮光層の厚さの１／２に相当する位置までをいい、遮光層が２層から構成されている場合には、表面側の層（第２遮光層）をいう。また、遮光層が３層以上の層から構成される場合には、「遮光層の、厚さ方向における、表面に近い領域」は、遮光層の最も表面側に位置する層をいい、「遮光層の、厚さ方向における、基材に接する面に近い領域」は、遮光層の最も表面側に位置する層を除いたその他の層をいう。また、「遮光層の全体の厚さ」というときは、基材の一方の面（片面）にのみ遮光層が配設されている場合には、その遮光層の厚さを意味し、基材の両面に遮光層が配設されている場合には、両方の遮光層の厚さを合計した厚さを意味する。また、同様に、「第１遮光層の全体の厚さ」というときは、基材の一方の面（片面）にのみ遮光層が配設されている場合には、その遮光層を構成する第１遮光層の厚さを意味し、基材の両面に遮光層が配設されている場合には、両方の遮光層を構成する第１遮光層の厚さを合計した厚さを意味する。さらに、「第２遮光層の全体の厚さ」という場合も上記第１の遮光層の場合と同様である。
【００２４】
これにより、本実施形態の遮光フィルムは、遮光層の全体の厚さを１５μｍ以下と薄くしても、遮光性に優れたものとなり、遮光フィルム全体の厚さを４０μｍ以下という薄いものとすることができる。そして、遮光層の表面側の領域の黒色顔料が少なくなる分だけ、表面側の領域フィラーを多く添加することが可能となるため、光沢度が低く、遮光層表面の写りこみの発生を低減することができる。
【００２５】
遮光層の全体の厚さは、１５μｍ以下であり、８〜１４μｍが好ましい。遮光層を基材の片面にのみ配設する場合には、上記遮光層の厚さ（遮光層全体の厚さ）は１０〜１４μｍが好ましい。片面にのみ配設された遮光層が、第１遮光層（基材に接する側の層）と第２遮光層（表面側の層）との２層から構成されている場合には、第１遮光層の厚さは、１〜６μｍが好ましく、１〜５μｍが更に好ましい。また、第２遮光層の厚さは、６〜１０μｍが好ましく、７〜１０μｍが更に好ましい。また、遮光層を基材の両面に配設する場合には、一方の面（片面）に配設される遮光層の全体の厚さとしては、８μｍ以下が好ましく、４〜８μｍが更に好ましく、５〜７μｍが特に好ましい。両面に配設された遮光層のそれぞれが、第１遮光層（基材に接する側の層）と第２遮光層（表面側の層）との２層から構成されている場合には、その中の片面の遮光層を構成する第１遮光層の厚さは、０．５〜３μｍが好ましく、０．５〜２．５μｍが更に好ましい。また、第２遮光層の厚さは、３〜６μｍが好ましく、４〜５μｍが更に好ましい。
【００２６】
遮光層に含有される黒色顔料の濃度は、全体として、３〜６０質量％であることが好ましく、５〜５５質量％であることが更に好ましい。３質量％より少ないと、遮光性及び導電性が低下することがあり、６０質量％より多いと塗膜強度が低下することがあり、また、コスト高となる。遮光層が第１遮光層（基材に接する側の層）と第２遮光層（表面側の層）との２層から構成されている場合には、第１遮光層に含有される黒色顔料の濃度は３０〜６０質量％であることが好ましく、４５〜５５質量％であることが更に好ましい。また、第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度は３質量％以上であることが好ましく、４〜１０質量％であることが更に好ましい。
【００２７】
上述のように、本発明の遮光フィルムにおいて、遮光層は、その遮光層中の黒色顔料の濃度が基材側で高くなるように構成すれば、１層から構成されてもよいし、２層以上から構成されてもよいが、生産性、遮光性、光沢度及び薄型化の観点より２層以上であることが好ましい。上述のように、遮光層が第１遮光層（基材に接する側の層）と第２遮光層（表面側の層）との２層から構成されている場合には、第１遮光層には遮光性を高めるために黒色顔料の濃度を、塗膜強度が維持できる範囲で、できるだけ高く保つことが好ましい。そのため、第１遮光層が、バインダー樹脂及び黒色顔料を含有する層であることが好ましく、バインダー樹脂及び黒色顔料のみを含有する層であることが更に好ましい。そして、第１の遮光層の表面に設ける第２遮光層が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有する層であることが好ましい。この様に構成することにより、第１遮光層がフィラーを含有しない分だけ黒色顔料の濃度を高くすることが可能になり、薄い層でありながら遮光性を向上させることが可能になる。そして、第２遮光層にフィラーを含有させることにより、表面にフィラーが露出する状態となり、光沢度を低くし、遮光層表面に写り込みの発生を低減することが可能となる。フィラーは遮光層の表面に露出させることにより光沢度を低くしているため、基材側に位置する第１遮光層には含有させる必要がない。そして、第２遮光層に含有されるフィラーとしては、球状の有機樹脂粒子、特にアクリル系樹脂粒子が摺動性及び耐磨耗性の面から好ましい。
【００２８】
遮光層を２層以上にした場合の、各層のバインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーの配合させ方は、上述した形態に限定されない。例えば、遮光層を２層とした場合には、第１遮光層（基材に接する側の層）にバインダー樹脂と黒色顔料を含有させ（フィラーを含有させない）、第２遮光層（表面側の層）にバインダー樹脂と有機フィラーを含有させる（黒色顔料を含有させない）ことができる。また、遮光層を２層とした場合に、第１遮光層にバインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有させ、第２遮光層にバインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有させ、第２遮光層の黒色顔料濃度より第１遮光層の黒色顔料濃度を高くするようにしてもよい。更に、遮光層を３層にして、第１遮光層（基材に接する側の層）にバインダー樹脂と黒色顔料を含有させ（フィラーを含有させない）、中間遮光層（第１遮光層と第２遮光層に挟まれた中間に位置する遮光層）にバインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有させ、第２遮光層（表面側の層）にバインダー樹脂と有機フィラーを含有させる（黒色顔料を含有させない）ことができる。
【００２９】
本実施形態の遮光フィルムは、光学濃度が５．０以上であることが好ましく、光沢度が６．０％以下であることが好ましい。光学濃度が５．０より小さいと遮光性において不十分のことがある。光沢度が６．０％を超えると、遮光層表面の写りこみの発生低減効果が低下することがある。遮光フィルムの光学濃度は光学濃度計（マクベス社製ＴＤ−９０４）を用いて測定した値である。光沢度は、光沢度計（村上色彩技術研究所製、ＧＭＸ−２０２）を用いて鏡面光沢度を測定して得られた値である。
【００３０】
本実施形態の遮光フィルムは、その厚さが４０μｍ以下であり、３０〜４０μｍが好ましい。４０μｍ超であると、要求されている薄型化という点で満足できるものではない。また断面での光反射防止性が低下するため、シャッターや絞りとしての高性能化の妨げになるので好ましくない。
【００３１】
本実施形態の遮光フィルムにおいて、基材フィルム（基材）としては、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミド、液晶ポリマー等の合成樹脂フィルム等が用いられるが、特にポリエステルフィルムがコストと性能とのバランスに優れているので好適である。また、基材フィルムは透明なものはもちろん、発泡ポリエステルフィルムや、カーボンブラック等の黒色顔料や他の顔料を含有させた合成樹脂フィルムを使用することもできる。この場合、その基材フィルムはその用途により適当なものを選ぶことができる。例えば、より高い遮光性が必要な場合には黒色顔料含有の合成樹脂フィルムを、そうでない場合には透明もしくは発泡した合成樹脂フィルムを使用することができる。基材フィルムの厚みは使用目的や利用分野等により様々であるが、より薄型化を目指すという本発明の目的からすれば、５〜２５μｍが好ましく、更に好ましくは１２〜２５μｍである。
【００３２】
本実施形態の遮光フィルムにおいて、バインダー樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリ（メタ）アクリル酸系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリブチラール樹脂、セルロース系樹脂、ポリスチレン／ポリブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられ、これらの１種又は２種以上を混合して用いることができる。本発明で用いるバインダー樹脂は遮光層の薄型化と高遮光性を得るために使用する黒色顔料の粒径をできるだけ小さく、かつ均一に分散させるためにも、水溶性又は水分散性の樹脂を用いるのが好ましい。さらに、バインダー樹脂としては、平面性、摺動性及び耐熱性の面から、Ｔｇ（ガラス転移温度）は１０℃以上が好ましく、更に好ましくは１０〜１５０℃、特に好ましくは１５〜１４０℃である。軟化点温度は８０℃以上が好ましく、更に好ましくは８０〜３００℃であり、特に好ましくは８５〜２９０℃であり、最も好ましいのは９０〜２９０℃である。
【００３３】
バインダー樹脂としてはポリエステル樹脂を用いるのが更に好ましい。本発明者らは、ポリエステル樹脂をバインダー樹脂として用いる時には、硬度及び耐傷性に優れるとともに、平面性に優れた遮光フィルムが得られることを見出した。前記ポリエステル樹脂は、従来公知の製造方法によりポリオールと多塩基酸を触媒の下で反応させて容易に得ることができる。ポリオールとしては、例えば、１，３−プロパンジオール、１，４−ブタンジオール、１，６−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール又はテトラエチレングリコールを挙げることができる。多塩基酸としては、芳香族ジカルボン酸、不飽和脂肪族ジカルボン酸、これらの低級アルキルエステル、これらの酸無水物等を挙げることができる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等を挙げることができる。不飽和脂肪族ジカルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等を挙げることができる。
【００３４】
なお、本実施形態において、Ｔｇは、示差走査熱量測定（ＤＳＣ）により測定されたものであり、軟化点温度は、針入度法または環球法により測定されたものである。
【００３５】
この遮光層中のバインダー樹脂の含有量は、バインダー樹脂と後述する黒色顔料及びフィラーの合計質量に対し、２０〜６０質量％であることが好ましく、２５〜５５質量％であることが更に好ましい。この範囲より少ないと、基材フィルムと遮光層との接着性が低下し、またこの範囲より多いと、遮光性と薄型化及び遮光層表面の光沢度のバランスを取るのが困難になる。
【００３６】
また、前記バインダーは架橋剤により架橋させてもよい。この場合用いられる架橋剤は、バインダー樹脂の官能基と反応性を有する架橋剤を適宜選択すればよく、例えば、水溶性の尿素樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン系化合物等が挙げられる。架橋剤の配合割合は、通常、バインダー樹脂成分１００質量部に対し、５〜１５質量部の範囲である。この範囲より架橋剤の使用量が少ないと塗膜強度や耐熱性の向上が期待できないし、この範囲を超えて配合してもさらなる向上が期待できない。
【００３７】
本実施形態の遮光フィルムにおいて、黒色顔料としては、従来公知の各種のもの、例えば、カーボンブラックや、チタンブラック等の無機顔料やアニリンブラック等の有機顔料等を用いることができる。黒色顔料の平均粒径は好ましくは１μｍ以下であり、更に好ましくは０．５μｍ以下である。その下限値は、通常、０．０１μｍ程度である。平均粒径がこの範囲より大きくなると、光沢度は十分に低くなるが、遮光性が低下するので好ましくない。このような顔料を凝集させずに、均一に分散させることにより、高遮光性と薄型化に対応することが可能になる。このような顔料としては、黒色顔料を水性溶媒に予め分散したものを用いるのが好ましい。
【００３８】
本発明においては、黒色顔料としてカーボンブラックを用いることが更に好ましい。本発明者らは、カーボンブラックを黒色顔料として用いる時には、遮光性が特に優れた遮光フィルムが得られることを見出した。遮光層中に含有させる黒色顔料は、遮光層表面側よりも遮光層基材側の方が黒色顔料の濃度を高くする必要がある。このようにすることにより、本発明の特徴である十分な遮光層を有することができ、しかもその分、遮光層表面側のフィラー添加量を多くすることができるので、光沢度を十分に低くすることが可能になり、しかも薄膜化が可能になる。黒色顔料の含有量は、遮光層中、３〜６０質量％であることが好ましく、５〜５５質量％であることが更に好ましい。黒色顔料をこのような範囲にすることにより、遮光フィルムの導電性及び塗膜強度を良好に維持しながら、遮光性に優れたものとすることができる。この範囲より少ないと、遮光性及び導電性が低下し、この範囲より多いと塗膜強度が低下し、またコスト高になる。
【００３９】
本実施形態の遮光フィルムにおいて、フィラーとしては、有機樹脂粒子及び／又は無機粒子を用いることができる。このようなフィラーを含有させることにより塗膜表面に凹凸をつけることができ、その結果光沢度を低下させることができる。
【００４０】
本実施形態の遮光フィルムにおいて用いられる有機樹脂粒子としては、各種の合成樹脂粒子、例えば、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ベンゾグアナミン／メラミン／ホルムアルデヒド樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂等が挙げられ、また、無機粒子としては、例えば合成シリカ、天然シリカ、カオリン、タルク、クレー、炭酸カルシウム、チタニア、アルミナ、ジルコニア、ゼオライト、硫酸バリウム、水酸化マグネシウム、リン酸カルシウム、ガラス等の粉末からなるものが挙げられる。これらのフィラーは１種又は２種以上を混合して用いることができる。また、前記フィラーの形状は球状品でも粉砕品であってもよいが、球状品を使用することにより、静摩擦係数が低くなり、摺動性が向上するので好ましい。フィラーの含有量は、遮光層中、５〜７０質量％、好ましくは１０〜６５質量％であり、この範囲を逸脱すると、表面の光沢度が増加したり、摺動性が低下することがある。フィラーの平均粒径は、０．１〜７μｍ、好ましくは０．２〜６μｍであり、この範囲より大きいと薄膜化が困難となることがあり、小さいとフィルム表面の光沢度が高くなることがある。また、平均粒径の異なる数種類のフィラーを混合して用いることもできる。例えば、遮光層表面に入射する光の角度が低角度から高角度に至るまであらゆる角度に対して光沢度が低くなるように、１μｍ未満のフィラーと、１〜６μｍのフィラーとを混合することが特に好ましい。さらには、フィラーは黒色あるいは濃い色に着色されていてもよい。尚、フィラーの平均粒子径は、上記黒色顔料の平均粒子径の測定方法と同じ測定方法で測定した値である。
【００４１】
本実施形態の遮光フィルムにおいて、遮光層には、上述したバインダー樹脂、黒色顔料、フィラーに加えて、必要に応じて公知の各種添加剤が含有されてもよい。添加剤としては、滑剤、カップリング剤等のフィラーの表面処理剤、界面活性剤、静電防止剤、潤滑剤、消泡剤等を挙げることができる。
【００４２】
これら添加剤の中で、滑剤としては、従来公知の各種のもの、例えば、ポリエチレン等の炭化水素系滑剤、ステアリン酸等の脂肪族系滑剤、ステアリルアルコール等のアルコール系滑剤、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤、シリコン系樹脂粒子、含フッ素樹脂粒子、架橋ポリメチルメタクリレー粒子、架橋ポリスチレン粒子等が挙げられる。また、滑剤の形状は球状であってもなくてもよいが、球状の方が摺動性、光沢度の面から好ましい。滑剤の含有量は遮光層中、５〜２０質量％、好ましくは７〜１５質量％であり、この範囲を逸脱すると、摺動性及び光沢度が不十分となる。また、滑剤の平均粒径は、０．１〜３μｍ、好ましくは０．１５〜２μｍであり、この範囲より平均粒径が大きいと薄型化が困難となり、かつ摺動効果が低下するし、この範囲より小さいと、光沢度が高くなってしまい、写り込み防止性に劣るようになる。
【００４３】
以上のように、本発明の遮光フィルムは、遮光性と薄型化を同時に満足できるものであり、しかも光沢度が低く、遮光層表面に写り込みが発生するのを防止することができることにより、薄型で高性能な光学機器用シャッター、絞り等の光学機器用遮光部材を得ることができるものとして好適なものである。薄型化できることから、遮光部材の断面での光の反射を防止しやすくなるため、より精密性等が要求される光学機器にも十分に対応できるものである。また、本発明の遮光フィルムにおいては、遮光層中の黒色顔料の含有量を調節することにより、薄型化を維持しつつ、遮光性に優れ、なお且つ光沢度が低く、遮光層表面に写り込みが発生するのを防止することができるので、多種の光学機器用遮光材に対応することができる。
【００４４】
次に、本発明の遮光フィルムの製造方法の一の実施形態について説明する。
【００４５】
本発明の遮光フィルムの製造方法の一実施形態は、基材フィルム（基材）の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂及び黒色顔料を含有する第１遮光層塗工液を塗布、乾燥し、厚さ２〜６μｍの第１遮光層を得る工程と、第１遮光層の表面に、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、黒色顔料の濃度が第１遮光層塗工液における黒色顔料の濃度より低い第２遮光層塗工液を、塗布、乾燥し、厚さ６〜１０μｍの第２遮光層を得る工程とを有し、第１遮光層と前記第２遮光層とから形成される遮光層の厚さを１５μｍ以下とするものである。この方法により、遮光層が２層（第１遮光層と第２遮光層）からなる遮光フィルムを製造することができる。
【００４６】
まず、基材の一方の面又は両方の面にバインダー樹脂及び黒色顔料を含有する第１遮光層塗工液を塗布する。第１遮光層塗工液は、バインダー樹脂及び黒色顔料を溶媒に溶解又は分散し、必要に応じて各種添加剤を添加して混合したものである。溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合物等を用いることができる。本実施形態において、基材、バインダー樹脂、黒色顔料及び各種添加剤は上記本発明の遮光フィルムの説明において挙げたものを使用することができる。特に、黒色顔料については、カーボンブラックが水分散性であるため、塗工液全体に均一に分散させることができる点で好ましい。これは、第２遮光層塗工液に含有される黒色顔料についても同様である。また、バインダー樹脂については、水溶性又は水分散性であることが、塗工液全体に均一に分散させることができる点で好ましい。これは、第２遮光層塗工液に含有されるバインダー樹脂についても同様である。そして、第１遮光層塗工液中の各配合物の配合量は、乾燥させて第１遮光層を形成したときに、上記本発明の遮光フィルムにおける第１遮光層の各配合物の含有量となるように調製することが好ましい。
【００４７】
ここで、遮光層形成に先立って、必要に応じ、遮光層と基材フィルムの接着性向上のために常用されている表面処理を基材に施すこともできる。このような表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線処理、電子線処理、放射線処理等のような表面活性化処理；サンドマット処理、ヘアライン処理等の粗面化処理のような物理的処理；オゾン処理、化学薬品処理のような化学的表面処理；ポリエステル、ポリアミド、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂や紫外線硬化性樹脂等からなるアンカー層を形成するアンカー処理等が挙げられる。
【００４８】
次に、第１遮光層塗工液を塗布した基材を乾燥させて第１遮光層を形成する。乾燥方法は特に限定されず、公知の方法を使用できるが、熱風乾燥が好ましい。乾燥後の第１遮光層の厚さは、遮光層を基材の片面にのみ配設する場合には、１〜６μｍとし、１〜５μｍとすることが好ましい。また、遮光層を基材の両面に配設する場合には、第１遮光層の全体の厚さは、１〜６μｍである。遮光層を基材の両面に配設する場合、片面の第１遮光層の厚さを０．５〜３μｍとすることが好ましく、０．５〜２．５μｍとすることが更に好ましい。
【００４９】
次に、第１遮光層の表面に、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、黒色顔料の濃度が第１遮光層塗工液における黒色顔料の濃度より低い第２遮光層塗工液を塗布する。第２遮光層塗工液は、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを溶媒に溶解又は分散し、必要に応じて各種添加剤を添加して混合したものである。溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合物等を用いることができる。第２遮光層塗工液中の各配合物の配合量は、乾燥させて第２遮光層を形成したときに、上記本発明の遮光フィルムにおける第２遮光層の各配合物の含有量となるように調製することが好ましい。
【００５０】
次に、第２遮光層塗工液を塗布した基材を乾燥させて第１遮光層及び第２遮光層からなる遮光層を形成し、本実施の形態の遮光フィルムを得ることができる。乾燥方法は特に限定されず、公知の方法を使用できるが、熱風乾燥が好ましい。乾燥後の第２遮光層の厚さは、遮光層を基材の片面にのみ配設する場合には、６〜１０μｍとし、７〜１０μｍとすることが好ましい。また、遮光層を基材の両面に配設する場合には、第２遮光層の全体の厚さは、６〜１０μｍとする。遮光層を基材の両面に配設する場合、片面の第１遮光層の厚さを０．５〜３μｍとすることが好ましい。
【００５１】
そして、第１遮光層と第２遮光層とから形成される遮光層の厚さ（遮光層の全体の厚さ）を１５μｍ以下とし、８〜１４μｍとすることが好ましい。遮光層を基材の片面にのみ配設する場合には、遮光層の全体の厚さは、７〜１４μｍが好ましい。また、遮光層を基材の両面に配設する場合には、一層分の厚さ（片面の厚さ）としては、８μｍ以下が好ましく、４〜８μｍが更に好ましく、５〜７μｍが特に好ましい。
【００５２】
得られた遮光フィルムは、光学濃度が５．０以上であることが好ましく、光沢度が６．０％以下であることが好ましい。光学濃度が５．０より小さいと遮光性において不十分のことがある。光沢度が６．０％を超えると、遮光層表面の写りこみの発生低減効果が低下することがある。
【実施例】
【００５３】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【００５４】
（１）遮光性：
マクベス社製の光学濃度計ＴＤ−９０４にて遮光フィルムの光学濃度を測定した。光学濃度が５以下の場合を良好「○」とし、光学濃度が５より大きい場合を不良「×」とした。
【００５５】
（２）光沢度（％）：
光沢度計（村上色彩技術研究所製 ＧＭＸ−２０２）にて６０°の光沢度を測定した。光沢度が６％以下の場合を良好「○」とし、光沢度が６％より大きい場合を不良「×」とした。
【００５６】
（３）厚さ（μｍ）：
紙厚測定器（シチズン社製 ＭＥＩ−１０）にて３点測定しその平均値を求めた。
【００５７】
（実施例１）
厚さ２５μｍのカーボンブラック含有ポリエステルフィルムの両面に、下記処方（組成）の第１遮光層塗工液を塗布し、１００℃で２分間乾燥して厚さ２μｍの第１遮光層を形成後、この第１遮光層上に、下記処方（組成）の第２遮光層塗工液を塗布し、１００℃で２分間乾燥して厚さ４μｍの第２遮光層を形成することにより遮光フィルムを得た。なお、遮光フィルム全体の厚さは３７μｍであった。得られた遮光フィルムについて、上記方法により、遮光性及び光沢度を測定した。結果を表１に示す。
【００５８】
第１遮光層塗工液：
バインダー樹脂；ポリエステルエマルジョン（固形分２５％の水分散体）
（数平均分子量＝（１５０００）、Ｔｇ＝２０℃） ４０．９質量部
黒色顔料；カーボンブラック水分散体（固形分３１％の水分散体）
（粒径＝（０．３）μｍ） ３５．１質量部
メチルエチルケトン； １９．２質量部
水； ４．８質量部
【００５９】
第２遮光層塗工液：
バインダー樹脂；ポリエステルエマルジョン（固形分３４％の水分散体）
（数平均分子量＝（１５０００）、Ｔｇ＝６７℃） ２６．０質量部
黒色顔料；カーボンブラック水分散体（固形分３１％の水分散体）
（粒径＝（０．３）μｍ） ６．０質量部
フィラー；ベンゾグアナミン／メラミン／ホルムアルデヒド樹脂
（粒径＝０．４μｍ） ３．０質量部
フィラー；ベンゾグアナミン／メラミン／ホルムアルデヒド樹脂
（粒径＝２．５μｍ） ８．８質量部
フィラー；ベンゾグアナミン／メラミン／ホルムアルデヒド樹脂
（粒径＝４．５μｍ） ５．０部質量
カップリング剤；（（チッソ社製） サイラエースＳ５１０） ０．２質量部
エチルアルコール； ２１．５質量部
水； ２９．５質量部
【００６０】
（実施例２）
第１遮光層の厚さを１μｍ、第２遮光層の厚さを５μｍとした以外は、実施例１と同様の方法で遮光フィルムを得た。なお、遮光フィルム全体の厚さは３７μｍであった。得られた遮光フィルムについて、上記方法により、遮光性及び光沢度を測定した。結果を表１に示す。
【００６１】
（実施例３）
第１遮光層の厚さを３μｍ、第２遮光層の厚さを４μｍとした以外は、実施例１と同様の方法で遮光フィルムを得た。なお、遮光フィルム全体の厚さは３９μｍであった。得られた遮光フィルムについて、上記方法により、遮光性及び光沢度を測定した。結果を表１に示す。
【００６２】
（比較例１）
実施例１で使用した第１遮光層塗工液５０質量部と第２遮光層塗工液１００質量部を混ぜて均一にし、塗工液Ａを得た。得られた塗工液Ａを、実施例１と同様のカーボンブラック含有ポリエステルフィルムの両面に塗布し、１００℃で２分間乾燥し、厚さ６μｍの遮光層を形成し、遮光フィルムを得た。なお、遮光フィルム全体の厚さは３７μｍであった。得られた遮光フィルムについて、上記方法により、遮光性及び光沢度を測定した。結果を表１に示す。
【００６３】
（比較例２）
実施例１で使用した第２遮光層塗工液と同じ組成の塗工液を、実施例１と同様のカーボンブラック含有ポリエステルフィルムの両面に塗布し、１００℃で２分間乾燥し、厚さ２μｍの第１遮光層を形成し、次に、第１遮光層の表面に、実施例１で使用した第１遮光層塗工液と同じ組成の塗工液を塗布し、１００℃で２分間乾燥し、厚さ４μｍの第２遮光層を形成することにより遮光フィルムを得た。なお、遮光フィルム全体の厚さは３７μｍであった。得られた遮光フィルムについて、上記方法により、遮光性及び光沢度を測定した。結果を表１に示す。
【００６４】
【表１】
【００６５】
表１より、実施例１〜３の遮光フィルムは、比較例１，２の遮光フィルムと比較して、遮光性に優れていることがわかる。これは、実施例１〜３の遮光フィルムが、第１遮光層に多くのカーボンブラックを有し、狭い範囲に集中的にカーボンブラックが存在することにより、より遮光性が高くなったものと考えられる。そして、実施例１〜３の遮光フィルムは、比較例１，２の遮光フィルムと比較して、光沢度にも優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【００６６】
本発明は、カメラ、ビデオカメラ、複写機、現像機等の各種光学機器の遮光部材として好適に利用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項１】
基材フィルム（基材）と、前記基材の少なくとも一方の面に配設された遮光層とを備えた遮光フィルムであって、
前記遮光層が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、且つその全体の厚さが１５μｍ以下であり、
前記遮光層が、その厚さ方向において、前記基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が前記基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高く、
全体の厚さが４０μｍ以下の遮光フィルム。
【請求項２】
前記基材の両面に前記遮光層が配設され、片面の前記遮光層の厚さが８μｍ以下である請求項１に記載の遮光フィルム。
【請求項３】
前記フィラーが有機樹脂粒子及び／又は無機粒子である請求項１又は２に記載の遮光フィルム。
【請求項４】
前記遮光層の、前記基材に接する面に近い領域が、バインダー樹脂及び黒色顔料を含有する第１遮光層により構成され、
前記遮光層の、前記表面に近い領域が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有する第２遮光層により構成され、
前記第１遮光層に含有される黒色顔料の濃度が、前記第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度より高く、前記第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度が３質量％以上である請求項１〜３のいずれかに記載の遮光フィルム。
【請求項５】
前記バインダー樹脂が、ガラス転移温度（Ｔｇ）１０〜１５０℃のポリエステル樹脂を含有する請求項１〜４のいずれかに記載の遮光フィルム。
【請求項６】
光学濃度が５．０以上であり、光沢度が６．０％以下である請求項１〜５のいずれかに記載の遮光フィルム。
【請求項７】
基材フィルム（基材）の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂及び水分散性の黒色顔料を含有する第１遮光層塗工液を塗布、乾燥し、全体の厚さが１〜６μｍの第１遮光層を得る工程と、
前記第１遮光層の表面に、バインダー樹脂、水分散性の黒色顔料及びフィラーを含有し、前記黒色顔料の濃度が前記第１遮光層塗工液における黒色顔料の濃度より低い第２遮光層塗工液を、塗布、乾燥し、全体の厚さが６〜１０μｍの第２遮光層を得る工程とを有し、
前記バインダー樹脂が水溶性又は水分散性であり、
前記第１遮光層と前記第２遮光層とから形成される遮光層の厚さを１５μｍ以下とする遮光フィルムの製造方法。
【請求項８】
前記基材の両面に前記第１遮光層塗工液及び第２遮光層塗工液を塗布し、片面の全体の厚さを８μｍ以下とし、片面の第１遮光層の厚さを０．５〜３μｍとし、片面の第２遮光層の厚さを３〜６μｍとする請求項７に記載の遮光フィルムの製造方法。
【請求項９】
前記バインダー樹脂が、ガラス転移温度（Ｔｇ）１０〜１５０℃のポリエステル樹脂を含有する請求項７又は８に記載の遮光フィルムの製造方法。
【請求項１０】
光学濃度が５．０以上であり、光沢度が６．０％以下である遮光フィルムを作製する請求項７〜９のいずれかに記載の遮光フィルムの製造方法。
【請求項１１】
前記黒色顔料がカーボンブラックである請求項７〜１０に記載の遮光フィルムの製造方法。
【請求項１】
基材フィルム（基材）と、前記基材の少なくとも一方の面に配設された遮光層とを備えた遮光フィルムであって、
前記遮光層が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有し、且つその全体の厚さが１５μｍ以下であり、
前記遮光層が、その厚さ方向において、前記基材に接する面に近い領域の黒色顔料の濃度が前記基材に接しない面（表面）に近い領域の黒色顔料の濃度より高く、
全体の厚さが４０μｍ以下の遮光フィルム。
【請求項２】
前記基材の両面に前記遮光層が配設され、片面の前記遮光層の厚さが８μｍ以下である請求項１に記載の遮光フィルム。
【請求項３】
前記フィラーが有機樹脂粒子及び／又は無機粒子である請求項１又は２に記載の遮光フィルム。
【請求項４】
前記遮光層の、前記基材に接する面に近い領域が、バインダー樹脂及び黒色顔料を含有する第１遮光層により構成され、
前記遮光層の、前記表面に近い領域が、バインダー樹脂、黒色顔料及びフィラーを含有する第２遮光層により構成され、
前記第１遮光層に含有される黒色顔料の濃度が、前記第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度より高く、前記第２遮光層に含有される黒色顔料の濃度が３質量％以上である請求項１〜３のいずれかに記載の遮光フィルム。
【請求項５】
前記バインダー樹脂が、ガラス転移温度（Ｔｇ）１０〜１５０℃のポリエステル樹脂を含有する請求項１〜４のいずれかに記載の遮光フィルム。
【請求項６】
光学濃度が５．０以上であり、光沢度が６．０％以下である請求項１〜５のいずれかに記載の遮光フィルム。
【請求項７】
基材フィルム（基材）の少なくとも一方の面に、バインダー樹脂及び水分散性の黒色顔料を含有する第１遮光層塗工液を塗布、乾燥し、全体の厚さが１〜６μｍの第１遮光層を得る工程と、
前記第１遮光層の表面に、バインダー樹脂、水分散性の黒色顔料及びフィラーを含有し、前記黒色顔料の濃度が前記第１遮光層塗工液における黒色顔料の濃度より低い第２遮光層塗工液を、塗布、乾燥し、全体の厚さが６〜１０μｍの第２遮光層を得る工程とを有し、
前記バインダー樹脂が水溶性又は水分散性であり、
前記第１遮光層と前記第２遮光層とから形成される遮光層の厚さを１５μｍ以下とする遮光フィルムの製造方法。
【請求項８】
前記基材の両面に前記第１遮光層塗工液及び第２遮光層塗工液を塗布し、片面の全体の厚さを８μｍ以下とし、片面の第１遮光層の厚さを０．５〜３μｍとし、片面の第２遮光層の厚さを３〜６μｍとする請求項７に記載の遮光フィルムの製造方法。
【請求項９】
前記バインダー樹脂が、ガラス転移温度（Ｔｇ）１０〜１５０℃のポリエステル樹脂を含有する請求項７又は８に記載の遮光フィルムの製造方法。
【請求項１０】
光学濃度が５．０以上であり、光沢度が６．０％以下である遮光フィルムを作製する請求項７〜９のいずれかに記載の遮光フィルムの製造方法。
【請求項１１】
前記黒色顔料がカーボンブラックである請求項７〜１０に記載の遮光フィルムの製造方法。
【公開番号】特開２００８−１１４４６３（Ｐ２００８−１１４４６３Ａ）
【公開日】平成２０年５月２２日（２００８．５．２２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−２９９４４６（Ｐ２００６−２９９４４６）
【出願日】平成１８年１１月２日（２００６．１１．２）
【出願人】（０００１０８４５４）ソマール株式会社 (81)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２０年５月２２日（２００８．５．２２）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年１１月２日（２００６．１１．２）
【出願人】（０００１０８４５４）ソマール株式会社 (81)
【Ｆターム（参考）】
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