説明

選択的グリコシダーゼ阻害剤およびその使用

本出願は、グリコシダーゼを選択的に阻害するためのイモアルジトール(immoalditol)化合物、そのプロドラッグ、およびその化合物またはプロドラッグを含む医薬組成物に関する。本出願は、O−GlcNAcaseの欠乏または過剰発現、O−GlcNAcの蓄積または欠乏に関係する疾患および障害を処置するためのイモアルジトール化合物の使用にも関する。そうした疾患および障害には神経変性疾患、タウオパシー、癌および心臓障害が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、グリコシダーゼを選択的に阻害する化合物およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
核と細胞質の両方の広範な細胞タンパク質は、O−グリコシド結合を介して結合する単糖類2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド(β−N−アセチルグルコサミン)を付加することによって翻訳後に修飾される。この修飾は一般に、O−結合N−アセチルグルコサミンまたはO−GlcNAcと称される。β−N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)を多くの核細胞質タンパク質の特定のセリンおよびトレオニン残基と翻訳後に結合させるのに関与する酵素は、O−GlcNAcトランスフェラーゼ(OGT)である2〜5。O−GlcNAcaseとして公知6、7の第2の酵素は、翻訳後修飾を取り除いてタンパク質を放出し、O−GlcNAc−修飾をタンパク質の寿命の間に複数回起こる動的サイクルにしている
【0003】
O−GlcNAc修飾タンパク質は、例えば転写9〜12、プロテアソーム分解13および細胞内シグナル伝達14を含む広範囲の重要な細胞機能を制御する。O−GlcNAcは多くの構造タンパク質でも見出される15〜17。例えば、これは、ニューロフィラメントタンパク質18、19、シナプシン6、20、シナプシン特異的クラスリン集合タンパク質AP−3およびアンキリンG14を含むいくつかの細胞骨格タンパク質において見出されている。O−GlcNAc修飾は脳内に豊富にあることが分かっている21、22。これは、アルツハイマー病(AD)および癌を含む複数の病因に明らかに関与するタンパク質でも見出されている。
【0004】
例えば、ADならびにダウン症候群、ピック病、C型ニーマンピック病および筋萎縮性側索硬化症(ALS)を含むいくつかの関連タウオパシーは、1つには、神経原線維のもつれ(NFT)の発生を特徴とすることが確認されている。これらのNFTは、ペア対になったらせん状フィラメント(PHF)の凝集体であり、異常な形態の細胞骨格タンパク質「タウ」を含む。タウは通常、ニューロン内でのタンパク質および栄養素の分配に必須である微小管の主要細胞ネットワークを安定化させる。しかし、AD患者においては、タウは過剰リン酸化されてその正常な機能を破壊し、PHFを生成し最終的には凝集してNFTを生成する。ヒトの脳においてタウの6つのイソ型が見出されている。AD患者においては、タウの6つのイソ型のすべてがNFT中に見出されており、これらはすべて著しく過剰リン酸化されている23、24。健全な脳組織中のタウはリン酸基を2個または3個しかもっていないが、AD患者の脳内で見られるタウは、平均8個のリン酸基をもっている25、26。AD患者の脳内のNFTレベルと認知症の重症度との間の明らかな並行関係は、ADにおけるタウの機能障害について重要な役割を強く支持している27、28。タウのこの過剰リン酸化の正確な原因は不明のままである。したがって、a)タウの過剰リン酸化の分子生理学的基礎を解明し29;b)それがアルツハイマー病の進行を止めるか、さらにはそれを逆転させるのを期待して、タウの過剰リン酸化を制限できるストラテジーを特定する方向への多大な努力がなされている30〜33。これまで、いくつかの方面からの証拠は複数のキナーゼの上方調節がタウの過剰リン酸化に関与している可能性があることを示唆しているが21、34、35、ごく最近では、この過剰リン酸化についての別の根拠が提起されている21
【0005】
特に、タウのリン酸塩レベルは、タウ上のO−GlcNAcのレベルによって制御されるということが最近示されている。タウ上のO−GlcNAcの存在は、O−GlcNAcレベルをタウリン酸化レベルと相関させる研究に刺激を与えている。この分野での最近の関心は、O−GlcNAc修飾が、多くのタンパク質上で、やはりリン酸化されることが公知であるアミノ酸残基で起こることが見出されたという観察によるものである36〜38。この観察と一致することであるが、リン酸化レベルの増大はO−GlcNAcレベルの低下をもたらし、逆にO−GlcNAcレベルの増大はリン酸化レベルの低下と相関することが分かっている39。O−GlcNAcとリン酸化の間のこの相互関係は、「Yin−Yangの仮説」40と称されており、この仮説は、酵素OGTがタンパク質からリン酸基を取り除くように作用するホスファターゼと機能的複合体を形成するという最近の発見41によって強力な生化学面からの支持を得ている。リン酸化と同様に、O−GlcNAcは、タンパク質の寿命の間で複数回取り除き再取込みできる動的修飾である。示唆的であるが、O−GlcNAcaseをコードする遺伝子が、ADと関連する染色体座に位置づけられている7、42。ヒトADの脳内において、過リン酸化されたタウは、健全なヒト脳に見られるそれより著しく低いレベルのO−GlcNAcを有する21。ごく最近、ADに罹患しているヒト脳からの可溶性タンパク質のO−GlcNAcレベルは、健全な脳からのそれより著しく低いことが示されている21。さらに、罹患した脳からのPHFは、O−GlcNAc修飾が完全に欠如していることが示唆されている21。このタウの低グリコシル化の分子的機序は分かっていないが、それは、キナーゼの活性の増大および/またはO−GlcNAcをプロセシングするのに関与する酵素の1つの機能不全が原因である可能性がある。後者の見方を支持するものであるが、マウスからのPC−12神経細胞と脳組織切片の両方において、タウO−GlcNAcレベルを高めるために非選択性N−アセチルグルコサミニダーゼ(N-acetylglucosamindase)阻害剤を使用すると、リン酸化レベルが低下することが確認されている21。これらの結果全般の意味は、AD患者の健全なO−GlcNAcレベルをO−GlcNAcaseの作用を阻害することなどにより維持することによって、タウの過リン酸化ならびにNFTの生成およびその下流作用を含むタウ過リン酸化の付随作用のすべてを阻止できるはずである。しかし、β−ヘキソサミニダーゼを適切に機能させることが非常に重要なので、O−GlcNAcaseの作用を阻止するADの治療のためのどのような潜在的治療的介入についても、ヘキソサミニダーゼAおよびBの両方の同時阻害を回避しなければならない。
【0006】
ニューロンはグルコースを貯蔵しないので、脳は血液から供給されるグルコースを当てにしてその必須の代謝機能を維持する。注目すべきことだが、脳内でのグルコースの取込みおよび代謝は加齢と共に低下することが示されている43。AD患者の脳内では、グルコース利用の著しい低下が起こり、これは神経変性の潜在的原因であると考えられている44。AD脳内におけるこのグルコース供給の低下の根拠45〜47は、グルコース輸送の低下48、49、インスリンのシグナル伝達の機能障害50、51および血流量の低下52のいずれかによると考えられる。
【0007】
グルコース代謝機能障害を考慮に入れると、細胞中に入るすべてのグルコースのうち2〜5%はヘキソサミン生合成経路の方へ脇にそれ、それによってこの経路の最終産生物、ウリジンジホスフェート−N−アセチルグルコサミン(UDP−GlcNAc)の細胞濃度が制御されることは注目に値する53。UDP−GlcNAcは核細胞質酵素O−GlcNAcトランスフェラーゼ(OGT)の基質であり2〜5、これは、GlcNAcを多くの核細胞質タンパク質の特定のセリンおよびトレオニン残基に翻訳後に付加するように作用する。OGTは、テトラトリコペプチド反復配列(TPR)ドメイン57、58を介して、その基質54、55および結合パートナー41、56の多くを認識する。上記したように、O−GlcNAcase6、7は、この翻訳後修飾を取り除いてタンパク質を放出し、O−GlcNAc−修飾をタンパク質の寿命の間に複数回起こる動的サイクルにしている。O−GlcNAcは、タウおよび神経フィラメント60を含む公知のリン酸化部位10、37、38、59上の複数のタンパク質において見出されている。さらに、OGTは、それを細胞内UDP−GlcNAc基質濃度に対して、したがってグルコース供給に対して非常に敏感にする異常な動的挙動を示す41
【0008】
ヘキソサミン生合成経路の公知の特性、OGTの酵素特性およびO−GlcNAcとリン酸化との間の相互関係と一致することであるが、脳内でのグルコース利用能の低下は、タウ過リン酸化をもたらすことが分かっている44。したがって、グルコース輸送および代謝の漸進的な機能障害は、その原因が何であれ、O−GlcNAcの低下およびタウ(および他のタンパク質)の過リン酸化をもたらす。したがって、O−GlcNAcaseの阻害は、健康な個体ならびにADまたは関連する神経変性疾患に苦しむ患者の脳内でのグルコース代謝の加齢関連の機能障害を埋め合わせるはずである。
【0009】
これらの結果は、タウO−GlcNAcレベルを制御する機序における異常は、NFTおよび関連した神経変性の形成において非常に重要である可能性がある。治療的に有用な介入としてタウ過リン酸化を阻止することを強く支持61する研究が最近なされており、その研究によれば、ヒトタウを担持するトランスジェニックマウスをキナーゼ阻害剤で処置しても、そのマウスは典型的な運動障害33を起こさず、他の場合32、低レベルの不溶性タウを示すことが分かっている。これらの研究は、この疾患のマウスモデルにおける、タウリン酸化レベルの低下とAD様の行動的症状の緩和との間の明確な関連性を提供している。実際、タウ過リン酸化の薬理学的調節は、ADおよび他の神経変性障害を処置するための有効な治療方策として広く認められている62
【0010】
最近の研究63は、ADおよび関連タウオパシーの治療のためにタウ過リン酸化を制限する小分子O−GlcNAcase阻害剤の治療可能性を支持している。具体的には、O−GlcNAcase阻害剤thiamet−Gは、病理学的関連部位の培養PC−12細胞におけるタウリン酸化の低下に関与している63。さらに、健康なSDラットにthiamet−Gを経口投与すると、ラットの皮質と海馬の両方におけるThr231、Ser396およびSer422のタウのリン酸化の低下に影響を及ぼす63
【0011】
O−GlcNAcタンパク質修飾のレベルが高いと、虚血、出血、血液量過多性ショックおよびカルシウムパラドックスによって引き起こされるストレスを含む心臓組織におけるストレスの病原性の影響に対する保護がもたらされることを示す多くの証拠もある。例えば、グルコサミンの投与によるヘキソサミン生合成経路(HBP)の活性化は、虚血/再かん流64〜70、外傷性出血71〜73、血液量過多性ショック74およびカルシウムパラドックス64、75の動物モデルにおいて保護効果を発揮することが実証されている。さらに、これらの心臓保護作用が、高いレベルのタンパク質O−GlcNAc修飾によって媒介されることが有力な証拠によって示されている64、65、67、70、72、75〜78。O−GlcNAc修飾は、パーキンソン病およびハンチントン病を含む様々な神経変性疾患において役割を果たすという証拠もある79
【0012】
ヒトは、複合糖質から末端β−N−アセチルグルコサミン残基を切断する酵素をコードする3つの遺伝子を有している。これらのうちの最初の遺伝子は、酵素O−糖タンパク質2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシダーゼ(O−GlcNAcase)をコードする。O−GlcNAcaseは、原核生物の病原体からヒトまでの多様な有機体からの酵素を含むグリコシドヒドロラーゼのファミリー84のメンバーである(グリコシドヒドロラーゼのファミリー分類については、URL:http://afmb.cnrs-mrs.fr/CAZY/.27、28のCoutinho,P.M.& Henrissat, B.(1999年)、炭水化物−活性酵素サーバーを参照されたい)。O−GlcNAcaseは、翻訳後修飾タンパク質のセリンおよびトレオニン残基のO−GlcNAcを加水分解するように作用する1、6、7、80、81。多くの細胞内タンパク質上のO−GlcNAcの存在と一致することだが、酵素O−GlcNAcaseは、2型糖尿病14、82、AD16、21、83および癌22、84を含むいくつかの疾患の病因において役割を果たしているように見える。O−GlcNAcaseはもっと早い段階で単離されていたようであるが18、19、タンパク質のセリンおよびトレオニン残基からO−GlcNAcを切断する作用におけるその生化学的役割が理解されるまでに約20年かかっている。最近になって、O−GlcNAcaseはクローン化され、部分的に特性評価されており20、ヒストンアセチルトランスフェラーゼとしての追加的活性を有すると示唆されている20。しかし、この酵素の触媒的機序についてはほとんど分かっていない。
【0013】
残りの2つの遺伝子、HEXAおよびHEXBは、複合糖質からの末端β−N−アセチルグルコサミン残基の加水分解的切断の触媒作用をする酵素をコードする。HEXAおよびHEXBの遺伝子産生物は主に、2つの二量体アイソザイム、ヘキソサミニダーゼAおよびヘキソサミニダーゼBをそれぞれもたらす。ヘキソサミニダーゼA(αβ)、ヘテロ二量体アイソザイムはα−およびβ−サブユニットを含む。ヘキソサミニダーゼB(ββ)、ホモ二量体アイソザイムは2つのβ−サブユニットを含む。この2つのサブユニット、α−およびβ−は高いレベルの配列同一性を有する。これらの酵素はどちらもグリコシドヒドロラーゼのファミリー20のメンバーとして分類され、通常リソソーム中に局在している。これらのリソソームのβ−ヘキソサミニダーゼが適切に機能することはヒトの発育にとって極めて重要であり、これは、ヘキソサミニダーゼAおよびヘキソサミニダーゼB85の機能不全にそれぞれ由来する悲劇的な遺伝病であるテイサックス病およびサンドホフ病という事実によって浮き彫りにされている。これらの酵素欠乏は、リソソームにおいて糖脂質および複合糖質の蓄積を引き起こし、神経機能の障害および変形をもたらす。生物レベルでのガングリオシドの蓄積の悪影響はまだ明らかになっていない86
【0014】
これらのβ−N−アセチル−グルコサミニダーゼの生物学的重要性の結果として、グリコシダーゼの小分子阻害剤87〜90は、生物学的過程おけるこれらの酵素の役割を解明するためと、潜在的な治療用途を開発するための両方の手段として多大な注目を集めている91。小分子を用いたグリコシダーゼ機能の制御は、量を迅速に変えるかまたは完全に治療から手を引くことができることを含む遺伝子ノックアウト試験に優る、いくつかの利点を提供する。
【0015】
しかし、O−GlcNAcaseを含む哺乳動物のグリコシダーゼの機能を阻止するための阻害剤の開発における大きな課題は、より高度の真核生物の組織中に存在する多くの機能的に関連する酵素である。したがって、複合表現型は、そうした機能的に関連する酵素の同時阻害から生じるので、特定の1つの酵素細胞および生命体の生理学的役割の研究において非選択性阻害剤を使用することは複雑なことである。β−N−アセチルグルコサミニダーゼの場合、O−GlcNAcase機能を阻止するように作用する既存の化合物は非特異的であり、リソソームのβ−ヘキソサミニダーゼを阻害するように強力に作用する。
【0016】
細胞内と組織内の両方におけるO−GlcNAc翻訳後修飾の試験で用いられている、β−N−アセチル−グルコサミニダーゼのかなり特性評価されている阻害剤のいくつかは、ストレプトゾトシン(STZ)、2’−メチル−α−D−グルコピラノ−[2,1−d]−Δ2’−チアゾリン(NAG−チアゾリン)およびO−(2−アセトアミド−2−デオキシ−D−グルコピラノシリデン)アミノN−フェニルカルバメート(PUGNAc)である14、92〜95
【0017】
β島細胞に対して特に有害な影響を有しているので、STZは長い間、糖尿病誘発性化合物として用いられてきた96。STZは、細胞DNAのアルキル化96、97と酸化窒素を含むラジカル種の生成98の両方を介してその細胞毒性作用を発揮する。得られるDNA鎖切断は、ポリ(ADP−リボース)ポリメラーゼ(PARP)の活性化を促進し99、細胞NAD+レベルを消耗させる正味の影響を及ぼし、最終的には細胞死に至る100、101。その代わりに、他の研究者は、STZ毒性は、β島細胞内で高度に発現するO−GlcNAcaseの不可逆的阻害の結果であると提案している92、102。しかし、この仮説には、2つの独立した研究グループによって疑問が投げ掛けられている103、104。タンパク質上の細胞O−GlcNAcレベルは、多くの形態の細胞ストレスに応答して増大するので105、STZは、O−GlcNAcaseに対する何らかの特異的および直接の作用によってではなくむしろ、細胞ストレスを誘発することによって、タンパク質上に高いO−GlcNAc−修飾レベルをもたらすことが可能なようである。実際、Hanoverと共同研究者は、STZが、O−GlcNAcaseの不十分だがある程度選択的な阻害剤として機能することを示しており106、他の研究者によって、STZがO−GlcNAcaseを不可逆的に阻害するように作用することが提案されているが107、この作用様式の明らかな実証はなされていない。最近、STZがO−GlcNAcaseを不可逆的に阻害することはないことが示されている108
【0018】
NAG−チアゾリンは、ファミリー20ヘキソサミニダーゼ90、109、さらに最近ではファミリー84のO−GlcNAcaseの強力な阻害剤であることが分かっている108。その効能にもかかわらず、複雑な生物学的関連においてNAG−チアゾリンを使用するマイナス面は、それが選択性に欠けており、したがって多くの細胞過程を混乱させるという点である。
【0019】
PUGNAcは、同じく選択性の欠如の問題がある別の化合物であるが、ヒトO−GlcNAcase6、110とファミリー20ヒトβ−ヘキソサミニダーゼ111の両方の阻害剤としての使用に歓迎されている。Vasellaと共同研究者によって開発されたこの分子は、Canavalia ensiformis、Mucor rouxiiからのβ−N−アセチル−グルコサミンおよびウシの腎臓からのβ−ヘキソサミニダーゼの強力な競合的阻害剤であることが分かっている88。外傷性出血のラットモデルにおいてPUGNAcを投与すると、炎症性サイトカインTNF−αおよびIL−6の血中濃度が減少することが実証されている112。リンパ球活性化の細胞ベースのモデルでPUGNAcを投与すると、サイトカインIL−2の産生が減少することも実証されている113。最近の研究によれば、動物モデルで、PUGNAcを、左冠状動脈閉塞後の心筋梗塞面積を減少させるのに用いることができることが示されている114。外傷性出血のラットモデルにおいて、PUGNAc、O−GlcNAcaseの阻害剤の投与によるO−GlcNAcレベルの増大は心臓機能を改善するという事実が特に重要である112、115。さらに、虚血/再かん流傷害の細胞モデルにおける、新生児ラットの心室筋細胞を用いたPUGNAcでの処置によるO−GlcNAcレベルの増大は、未処置細胞と比較して細胞の生存率を向上させ、壊死およびアポトーシスを減少させる116
【0020】
最近になって、虚血/再かん流および酸化的ストレスを含む細胞ストレスの細胞ベースのモデルにおいて、選択的O−GlcNAcase阻害剤NButGTは、保護活性を示すことが提案されている117。この研究は、タンパク質O−GlcNAcレベルを高めそれによって心臓組織におけるストレスの病原性作用を防ぐためのO−GlcNAcase阻害剤の使用を提案している。
【0021】
2006年9月8日付けのWO2006/092049のもとで公開されている2006年3月1日出願の国際特許出願PCT/CA2006/000300および2008年3月6日付けのWO2008/025170のもとで公開されている2007年8月31日出願のPCT/CA2007/001554(これらを参照により本明細書に組み込む)は、O−GlcNAcaseの選択的阻害剤を記載している。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、1つには、グリコシダーゼを選択的に阻害するための化合物、その化合物のプロドラッグ、その化合物およびプロドラッグの使用、化合物またはその化合物のプロドラッグを含む医薬組成物ならびにO−GlcNAcaseの欠乏もしくは過剰発現および/またはO−GlcNAcの蓄積もしくは欠乏に関連する疾患および障害を処置するための方法を提供する。
【0023】
一態様では、本発明は式(I)の化合物:
【0024】
【化1】

(式中、各Rは独立にHまたはC(O)Rであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであってよく;各Rは任意選択で独立に非介在型置換基であってよく、ただし、各RがHであり、RがHであり、RがHであり、RがOHである場合、Rは、H、C(O)CH、C(O)CHCH、C(O)(CHCH、C(O)(CHCH、C(O)(CHCH、C(O)(CHCH、C(O)(CH10CH、C(O)C≡CH、C(O)CH=CH、C(O)C(CH)=CH、C(O)(CHOH、C(O)(1,3−ベンゾジオキソール−4−イルメチル)、C(O)(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)、C(O)CH(3−インドリル)、C(O)(CH(フェニル)、C(O)(2,3−ジクロロフェニル)、C(O)(2,3−ジヒドロキシフェニル)、C(O)(2,3−ジヒドロキシ−4−メチルフェニル)、C(O)(2−メチル−3−ニトロフェニル)、C(O)(2,3−ジメトキシフェニル)、C(O)(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)、C(O)(2,6−ジヒドロキシフェニル)、C(O)(2,3−ジメチルフェニル)、C(O)(2−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)、C(O)(2−ナフチル)、C(O)(4−ヒドロキシ−2−キノリル)、C(O)(4−ベンゾイルフェニル)、C(O)(6−クロロ−2H−クロメン−3−イル)、C(O)(1−ナフチル)、C(O)(フェニル)、C(O)(3−ジメチルアミノフェニル)、C(O)(4−ジメチルアミノフェニル)、C(O)(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)、C(O)(7−ジエチルアミノ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)、S(O)(1−ナフチル)、S(O)(5−ジメチルアミノ−1−ナフチル)、S(O)(フェニル)、S(O)(CHCH、C(O)(CHNHSO(5−ジメチルアミノ−1−ナフチル)、(CHNHSO(5−ジメチルアミノ−1−ナフチル)、C(O)(CH(3−インドリル)、C(O)(5−インドリル)、C(O)(CH)(1−ナフチル)、C(O)(CH)(2−ナフチル)、C(O)(2−メチルチオ(フェニル))、C(O)(E−(3−トリフルオロメチルフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(3−クロロフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(3−ブロモフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(4−メチルフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(4−ジメチルアミノフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(3−アセトキシ−4−メトキシフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(3−インドリル−2−エテニル))、C(O)(3−(1−ベンジルインドリル))、C(O)((9−オキソ−9H−フルオレン)−2−イル)、C(O)CH(CHCH)((CHCH)、C(O)CHOH、C(O)(cis−4−アミノシクロヘキシル)、(CHNH、(CHOHを除外するという条件であり、かつ/または、各RがHであり、RがHであり、RがC(O)CHであり、RがOHである場合、Rは、H、CH、CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHO(CHO(CH、(CHO(CHO(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CH、(CH、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、CH(4−(ジメチルアミノ)フェニル)、1,3−ベンゾジオキソール−4−イルメチル、CH(5−(4−クロロフェニル)−2−フラニル)、CH(4−ヒドロキシフェニル)、CH(4−(2−ピリジル)フェニル)を除外するという条件であり、かつ/または、各RがHであり、RがHであり、RがC(O)CHであり、RがHである場合、Rは、HおよびCHを除外するという条件であり、かつ/または、各RがHであり、RがHであり、RがC(O)((1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン)−1−イル)であり、RがOHである場合、Rは、H、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CH10CH、(CH11CHを除外するという条件であり、かつ/または、各RがHであり、RがHであり、RがHであり、RがOHである場合、Rは、(CHCH、(CHCH、(CHCHおよび(CHCHを除外するという条件であり、かつ/または、式(I)は以下の化合物:5−{[((2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−ピロリジン−2−イルメチル)−アミノ]−メチレン}−1,3−ジメチル−ピリミジン−2,4,6−トリオン(CAS # 763122−23−2)、(2R,2’R,3R,3’R,4R,4’R,5R,5’R)−2,2’−[イミノビス(メチレン)]ビス[5−(ヒドロキシメチル)]−3,4−ピロリジンジオール(CAS # 231618−81−8)、(2R,3R,4R,5R)−1−ブチル−2−[(ジブチルアミノ)メチル]−5−(ヒドロキシメチル)−3,4−ピロリジンジオール(CAS # 172936−43−5)、(2R,3R,4R,5R)−2−(アジドメチル)−1−ブチル−5−(ヒドロキシメチル)−3,4−ピロリジンジオール(CAS # 172936−41−3)、メチル 2−(((2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−2−イル)メチルカルバモイル)−1H−インドール−5−カルボキシレート(CAS # 876751−91−6)、および(R)−α−アミノ−N−[[(2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−ピロリジニル]メチル]−4−オキソ−1(4H)−ピリジンプロパンアミド(CAS # 876751−85−8)、(2R,3R,4R,5R)−2−(アジドメチル)−5−(ヒドロキシメチル)−3,4−ピロリジンジオール(CAS # 765308−83−6)を除外するという条件である)
または薬学的に許容されるその塩を提供する。
【0025】
他の実施形態では、化合物は式(II):
【0026】
【化2】

(式中、各Rは独立にHまたはC(O)R11であり;Rは非介在型置換基であり;R10は非介在型置換基であり;nは0〜10の整数であり;各R11は任意選択で独立に非介在型置換基であり;ただし、各RがHであり、R10がHであり、n=0である場合、Rは、CH、CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CH10CH、C≡CH、CH=CH、C(CH)=CH、(CHOH、1,3−ベンゾジオキソール−4−イルメチル、1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル、CH(3−インドリル)、(CH(フェニル)、2,3−ジクロロフェニル、2,3−ジヒドロキシフェニル、2,3−ジヒドロキシ−4−メチルフェニル、2−メチル−3−ニトロフェニル、2,3−ジメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル、2,6−ジヒドロキシフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル、2−ナフチル、4−ヒドロキシ−2−キノリル、4−ベンゾイルフェニル、6−クロロ−2H−クロメン−3−イル、1−ナフチル、フェニル、3−ジメチルアミノフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、2−オキソ−2H−クロメン−3−イル、7−ジエチルアミノ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル、(CHNHSO(5−ジメチルアミノ−1−ナフチル)、(CH(3−インドリル)、5−インドリル、CH(1−ナフチル)、CH(2−ナフチル)、2−メチルチオ(フェニル)、E−(3−トリフルオロメチルフェニル−2−エテニル)、E−(3−クロロフェニル−2−エテニル)、E−(3−ブロモフェニル−2−エテニル)、E−(4−メチルフェニル−2−エテニル)、E−(4−ジメチルアミノフェニル−2−エテニル)、E−(3−アセトキシ−4−メトキシフェニル−2−エテニル)、E−(3−インドリル−2−エテニル)、3−(1−ベンジルインドリル)、(9−オキソ−9H−フルオレン)−2−イル、CH(CHCH)((CHCH)、CHOH、cis−4−アミノシクロヘキシルを除外するという条件であり、かつ/または、各RがHであり、RがCHであり、n=0である場合、R10は、H、CH、CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHO(CHO(CH、(CHO(CHO(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CH、(CH、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、CH(4−(ジメチルアミノ)フェニル)、1,3−ベンゾジオキソール−4−イルメチル、CH(5−(4−クロロフェニル)−2−フラニル)、CH(4−ヒドロキシフェニル)、CH(4−(2−ピリジル)フェニル)を除外するという条件であり、かつ/または、各RがHであり、Rが(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン)−1−イルであり、n=0である場合、R10は、H、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CH10CH、(CH11CHを除外するという条件であり、かつ/または式(II)は、以下の化合物:メチル2−(((2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−2−イル)メチルカルバモイル)−1H−インドール−5−カルボキシレート(CAS # 876751−91−6)および(R)−α−アミノ−N−[[(2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−ピロリジニル]メチル]−4−オキソ−1(4H)−ピリジンプロパンアミド(CAS # 876751−85−8)を除外するという条件である)
で示される。
【0027】
他の実施形態では、非介在型置換基はアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニルまたはアリールアルキニルであってよく、あるいはそれはP、O、S、N、F、Cl、Br、IまたはBから選択される1つもしくは複数のヘテロ原子を含むことができる。非介在型置換基は任意選択で置換されていてよい。
【0028】
他の実施形態では、化合物はプロドラッグであってよく;化合物はO−糖タンパク質2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシダーゼ(O−GlcNAcase)を選択的に阻害することができ;化合物はO−GlcNAcase(例えば、哺乳動物のO−GlcNAcase)と選択的に結合することができ;化合物は2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド(O−GlcNAc)の切断を選択的に阻害することができ;化合物は哺乳動物のβ−ヘキソサミニダーゼを実質的に阻害することができない。
【0029】
他の態様では、本発明は、本発明による化合物を薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0030】
他の態様では、本発明は、被験体に有効量の式(I)の化合物
【0031】
【化3】

(式中、
各Rは独立にHまたはC(O)Rであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであってよく;各Rは任意選択で独立に非介在型置換基であってよい)
または薬学的に許容されるその塩を投与することによってO−GlcNAcaseを選択的に阻害するか、それを必要とする被験体のO−GlcNAcaseを阻害するか、O−GlcNAcのレベルを増大させるか、あるいは神経変性疾患、タウオパシー、癌またはストレスの治療を必要とする被験体の神経変性疾患、タウオパシー、癌またはストレスを処置する方法を提供する。上記状態は、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認識機能障害を有する筋萎縮性側索硬化症(ALSci)、嗜銀性グレイン認知症、ブルーイト病(Bluit disease)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ボクサー認知症、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、染色体17と関連したパーキンソニズムを伴う前頭側頭認知症(FTDP−17)、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、グアドループパーキンソニズム、ハレルフォルデン−スパッツ病(脳内の1型鉄蓄積を伴う神経変性)、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、ニーマン−ピック病(C型)、淡蒼球−橋脳−黒質退行変性、グアムのパーキンソン認知症複合、ピック病(PiD)、脳炎後パーキンソニズム(PEP)、プリオン病(クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)、致死性家族性不眠症およびクールー病を含む)、進行性スーパーコルチカル(supercortical)グリオーシス、進行性核上麻痺(PSP)、リチャードソン症候群、亜急性硬化性全脳炎、神経原線維型認知症、ハンチントン病またはパーキンソン病であってよい。ストレスは、心臓障害、例えば虚血;出血;血液量減少性ショック;心筋梗塞症;介入心臓学的手法;心臓バイパス術;線溶療法;血管形成術またはステント留置術によるものであってよい。
【0032】
他の態様では、本発明は、被験体に有効量の式(I)の化合物
【0033】
【化4】

(式中、各Rは独立にHまたはC(O)Rであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであってよく;各Rは任意選択で独立に非介在型置換基であってよい)
または薬学的に許容されるその塩を投与することによって、神経変性疾患、タウオパシー、癌またはストレスを除くO−GlcNAcase媒介状態の治療を必要とする被験体の神経変性疾患、タウオパシー、癌またはストレスを除くO−GlcNAcase媒介状態を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態では、その状態は、炎症性またはアレルギー性疾患、例えばぜんそく、アレルギー性鼻炎、過敏性肺病、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、遅延型過敏症、アテローム性動脈硬化症、間質性肺炎(ILD)(例えば、特発性肺線維症、または関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎もしくは皮膚筋炎に伴うILD);全身性アナフィラキシーもしくは過敏性反応、薬物アレルギー、虫刺されアレルギー;自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症(myastenia gravis)、糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、同種移植の拒絶反応もしくは移植片対宿主疾患を含む移植片拒絶反応;炎症性腸炎、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞媒介乾癬を含む)および炎症性皮膚疾患、例えば皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、じんましん;血管炎(例えば、壊死性、皮膚性および過敏性血管炎);好酸球性筋炎(eosinphilic myotis)および好酸球性筋膜炎(eosiniphilic fasciitis);移植片拒絶反応、特に、これらに限定されないが、固形臓器移植、例えば心臓、肺、肝臓、腎臓および膵臓移植(例えば、腎臓と肺の同種移植);てんかん;疼痛;脳卒中、例えば脳卒中に続く神経防護作用であってよい。
【0034】
他の実施形態では、RもしくはRはHもしくはC(O)CHであってよく、RはHであってよいか、またはRはOHもしくはOC(O)CHであってよい。投与すると、被験体のO−GlcNAcのレベルが増大する。被験体はヒトであってよい。
【0035】
他の態様では、本発明は、医薬品の調製における、有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩:
【0036】
【化5】

(式中、各Rは独立にHまたはC(O)Rであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであってよく;各Rは任意選択で独立に非介在型置換基であってよい)
の使用を提供する。その医薬品は、O−GlcNAcaseを選択的に阻害するため、O−GlcNAcのレベルを増大させるため、O−GlcNAcaseによって調節される状態を処置するため、神経変性疾患、タウオパシー、癌またはストレスを処置するためであってよい。
【0037】
他の態様では、本発明は、a)第1の試料を試験化合物と接触させ;
b)第2の試料を式(I)の化合物
【0038】
【化6】

(式中、各Rは独立にHまたはC(O)Rであってよく;Rは非介在型(非介在型)置換基であってよく;Rは、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであってよく;各Rは任意選択で独立に非介在型置換基であってよい)
と接触させ、c)第1および第2の試料中のO−GlcNAcaseの阻害のレベルを判定する(試験化合物が、式(I)の化合物と比較して、同等以上のO−GlcNAcase阻害を示す場合、その試験化合物はO−GlcNAcaseの選択的阻害剤である)ことによって、O−GlcNAcaseの選択的阻害剤をスクリーニングするための方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明のこの概要は、必ずしも本発明のすべての特徴を説明するものではない。
【0040】
本発明は、1つには、O−糖タンパク質2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシダーゼ(O−GlcNAcase)を阻害できる新規化合物を提供する。いくつかの実施形態では、O−GlcNAcaseはラット、マウスまたはヒトO−GlcNAcaseなどの哺乳動物のO−GlcNAcaseである。いくつかの実施形態では、β−ヘキソサミニダーゼはラット、マウスまたはヒトβ−ヘキソサミニダーゼなどの哺乳動物のβ−ヘキソサミニダーゼである。
【0041】
いくつかの実施形態では、本発明による化合物は、O−GlcNAcaseを阻害するのに驚くべき予想外の選択性を示す。いくつかの実施形態では、本発明による化合物は、驚くべきことに、β−ヘキソサミニダーゼよりもO−GlcNAcaseに対してより選択性がある。いくつかの実施形態では、この化合物は、哺乳動物のβ−ヘキソサミニダーゼよりも哺乳動物のO−GlcNAcaseの活性を選択的に阻害する。いくつかの実施形態では、O−GlcNAcaseの選択的阻害剤はβ−ヘキソサミニダーゼを実質的には阻害しない。O−GlcNAcaseを「選択的に」阻害する化合物は、O−GlcNAcaseの活性または生物学的機能を阻害するが、β−ヘキソサミニダーゼの活性または生物学的機能は実質的には阻害しない化合物である。例えば、いくつかの実施形態では、O−GlcNAcaseの選択的阻害剤は、ポリペプチドからの2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド(O−GlcNAc)の切断を選択的に阻害する。いくつかの実施形態では、O−GlcNAcaseの選択的阻害剤はO−GlcNAcaseと選択的に結合する。いくつかの実施形態では、O−GlcNAcaseの選択的阻害剤は、タウタンパク質の過リン酸化を阻害し、かつ/またはNFTの生成を阻害する。「阻害する(inhibit)」、「阻害」または「阻害する(inhibiting)」という用語は、10%〜90%の任意の値または30%〜60%もしくは100%超の任意の整数値での減少、あるいは1倍、2倍、5倍、10倍もしくはそれ以上の減少を意味する。阻害するということは、完全な阻害を必要とするわけではないことを理解されたい。いくつかの実施形態では、O−GlcNAcaseの選択的阻害剤は、細胞、組織または器官(例えば、脳、筋肉または心臓(心)組織における)および動物における、O−GlcNAcレベル、例えばO−GlcNAc修飾ポリペプチドまたはタンパク質レベルを高めるかまたは増進させる。「高める(elevating)」または「増進させる(enhancing)」という用語は、10%〜90%の任意の値または30%〜60%もしくは100%超の任意の整数値での増大、あるいは1倍、2倍、5倍、10倍、15倍、25倍、50倍、100倍もしくはそれ以上の増大を意味する。いくつかの実施形態では、O−GlcNAcaseの選択的阻害剤は、100〜100000の範囲もしくは1000〜100000の範囲の本明細書で説明する選択性比、または少なくとも100、200、500、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、5000、6000、7000、10,000、25,000、50,000、75,000または上記範囲内もしくはおおよそその範囲の任意の選択性比の値を示す。
【0042】
本発明の化合物は、具体的にはO−GlcNAcase酵素との相互作用によって、インビボでのO−GlcNAc修飾ポリペプチドまたはタンパク質上のO−GlcNAcレベルを高める。これは、O−GlcNAcase活性の阻害を必要とするかまたはそれに応答する状態を処置するのに有効である。
【0043】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、タウリン酸化およびNFT生成の減少をもたらす薬剤として有用である。いくつかの実施形態では、したがって、これらの化合物はアルツハイマー病および関連タウオパシーを処置するのに有用である。いくつかの実施形態では、これらの化合物は、タウリン酸化を低減し、タウO−GlcNAcレベルが増大する結果としてNFT生成を低減することによって、アルツハイマー病および関連タウオパシーを処置することができる。いくつかの実施形態では、これらの化合物は、O−GlcNAc修飾ポリペプチドまたはタンパク質上のO−GlcNAc修飾のレベルの増大をもたらす。したがって、そうしたO−GlcNAc修飾の増大に応答する障害を処置することに有用である。その障害には、これらに限定されないが、神経変性、炎症性、心臓血管性および免疫阻害性の疾患が含まれる。いくつかの実施形態では、これらの化合物は、グリコシダーゼ酵素の活性を阻害する能力に関係する他の生物学的活性の結果としても有用である。他の実施形態では、本発明の化合物は、細胞および生物レベルでのO−GlcNAcの生理学的役割の試験における有益な手段である。
【0044】
他の実施形態では、本発明は、獣医学的被験体およびヒト被験体などの動物被験体において、タンパク質O−GlcNAc修飾のレベルを増進させるまたは高める方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、獣医学的被験体およびヒト被験体などの動物被験体において、O−GlcNAcase酵素を選択的に阻害する方法を提供する。他の実施形態では、本発明は、獣医学的被験体およびヒト被験体などの動物被験体において、タウポリペプチドのリン酸化を阻害するかまたはNFTの生成を阻害する方法を提供する。
【0045】
特定の実施形態では、本発明は、一般に式(I)で表される化合物
【0046】
【化7】

ならびにその塩、プロドラッグおよび立体異性体を提供する。
【0047】
式(I)において、各Rは独立にHまたはC(O)Rであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであってよく;Rは非介在型置換基であってよく;Rは、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであってよく;各Rは任意選択で独立に非介在型置換基であってよい。
【0048】
上記式(I)において、それぞれの任意選択で置換された部分は、1つまたは複数の非介在型置換基で置換されていてよい。例えば、それぞれの任意選択で置換された部分は、1つもしくは複数の無機置換基;ホスホリル;ハロ;=O;=NR;OR;1つもしくは複数のP、N、O、S、N、F、Cl、Br、IもしくはBを任意選択で含み、ハロで任意選択で置換されたC1〜10アルキルまたはC2〜10アルケニル;CN;任意選択で置換されたカルボニル;NR;C=NR;任意選択で置換された炭素環または複素環;あるいは、任意選択で置換されたアリールまたはヘテロアリールで置換されていてよい。Rはアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであってよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、式(I)で示したRは、水素であっても水素以外の1〜20個の原子を含む置換基であってもよい。いくつかの実施形態では、RはHまたはC(O)Rであってよく、Rはアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アリールまたはヘテロアリールであってよい。いくつかの実施形態では、RはHまたはC(O)CHであってよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、式(I)で示したRは、水素または任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アリールもしくはヘテロアリールであってよい。いくつかの実施形態では、RはHまたはCHであってよい。
【0051】
いくつかの実施形態では、式(I)で示したRは、水素、任意選択で置換されたアルキルまたはC(O)Rであってよく、Rはアルキル、分岐状アルキルまたはシクロアルキルであってよい。いくつかの実施形態では、Rは、H、CHまたはC(O)CHであってよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、式(I)で示したRは、水素または任意選択で置換されたアルキルであってよい。いくつかの実施形態では、RはHまたはCHであってよい。
【0053】
いくつかの実施形態では、式(I)で示したRは、水素、任意選択で置換されたアルキル、ORまたはC(O)Rであってよく、Rはアルキル、分岐状アルキルまたはシクロアルキルであってよい。いくつかの実施形態では、Rは、H、CH、OHまたはOC(O)CHであってよい。
【0054】
本発明の他の実施形態では、式(I)による化合物は、式(II):
【0055】
【化8】

で示す化合物を含むことができる。
【0056】
上記式中、各Rは独立にHまたはC(O)R11であり;Rは非介在型置換基であり;R10は非介在型置換基であり;nは0〜10の整数であり;各R11は任意選択で独立に非介在型置換基である。いくつかの実施形態では、RはHまたはC(O)CHであってよい。
【0057】
本発明の特定の実施形態では、式(I)による化合物は、表1に示す化合物を含む。
【0058】
【表1−1】

【0059】
【表1−2】

【0060】
【表1−3】

本発明の他の実施形態では、式(I)による化合物は、表2に示す化合物の1つまたは複数を含む。
【0061】
【表2−1】

【0062】
【表2−2】

【0063】
【表2−3】

本発明の他の実施形態では、表1に示す化合物の1つまたは複数は、具体的には式(I)に示す化合物から除かれる。本発明の他の実施形態では、表1に示す化合物の1つまたは複数の特定の立体異性体または鏡像異性体は、具体的には式(I)に示す化合物から除かれる。本発明の他の実施形態では、表1に示す化合物の1つまたは複数の特定の前駆体は、具体的には式(I)に示す化合物から除かれる。
【0064】
当業者は理解されるように、上記式(I)は代わりに以下のように表すこともできる:
【0065】
【化9】

本明細書で用いる単数形の「a」、「and」および「the」は、文脈において別段の明らかな指示のない限り複数の指示被験体を含む。例えば、「(1つの)化合物(a compound)」はそうした化合物のうちの1つまたは複数を指すが、「酵素(the enzyme)」は、特定の酵素ならびに当業者に公知の他のファミリーメンバーおよびその均等物を含む。
【0066】
本出願を通して、「化合物」または「化合物(複数)」という用語は本明細書で論じる化合物を指し、アシル保護された誘導体を含む化合物の前駆体および誘導体ならびにその化合物、前駆体および誘導体の薬学的に許容されるその塩を含むものとする。本発明は、化合物のプロドラッグ、その化合物および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物、ならびにその化合物のプロドラッグおよび薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、本発明の化合物のすべては少なくとも1つのキラル中心を含む。いくつかの実施形態では、本発明による化合物を含む処方物、製剤および組成物は、立体異性体の混合物、個々の立体異性体、および鏡像異性体混合物ならびに複数の立体異性体の混合物を含む。一般に、化合物は、所望程度の任意のキラル純度で供給されてよい。
【0068】
一般に、「非介在型置換基」は、その存在が、O−GlcNAcase酵素の活性を調節する式(I)または式(II)の化合物の能力を破壊しない置換基である。具体的には、置換基の存在は、O−GlcNAcase酵素の活性のモジュレーターとしての化合物の有効性を破壊しない。
【0069】
適切な非介在型置換基には、H、アルキル(C1〜10)、アルケニル(C2〜10)、アルキニル(C2〜10)、アリール(5〜12員)、アリールアルキル、アリールアルケニルまたはアリールアルキニル(そのそれぞれはO、S、P、N、F、Cl、Br、IまたはBから選択されるヘテロ原子1つもしくは複数を任意選択で含んでよく、そのそれぞれは例えば=Oでさらに置換されていてよい);または任意選択で置換された形態のアシル、アリールアシル、アルキル−アルケニル−、アルキニル−もしくはアリールスルホニル、およびアルキル、アルケニル、アルキニルもしくはアリール部分中にヘテロ原子を含むその形態が含まれる。他の非介在型置換基には、=O、=NR、ハロ、CN、CF、CHF、NO、OR、SR、NR、N、COORおよびCONRが含まれる。ただし、RはHまたはアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールもしくはヘテロアリールである。置換された原子がCである場合、置換基は、上記に挙げた置換基に加えて、ハロ、OOCR、NROCR(RはHまたは上記した置換基である)を含むことができる。
【0070】
「アルキル」は、炭素原子と水素原子だけからなり、不飽和を含まず、例えば1〜10個の炭素原子を含み、分子の残り部分と単結合で結合している直鎖状または分岐状炭化水素鎖基を指す。本明細書において別段の具体的な言及のない限り、そのアルキル基は、本明細書で説明する1つまたは複数の置換基で任意選択で置換されていてよい。本明細書において別段の具体的な言及のない限り、その置換はアルキル基の任意の炭素上で起こり得ることを理解されたい。
【0071】
「アルケニル」は、炭素原子と水素原子だけからなり、少なくとも1つの二重結合を含み、例えば2〜10個の炭素原子を含み、分子の残り部分と単結合または二重結合で結合している直鎖状または分岐状炭化水素鎖基炭素を指す。本明細書において別段の具体的な言及のない限り、そのアルケニル基は、本明細書で説明する1つまたは複数の置換基で任意選択で置換されていてよい。本明細書において別段の具体的な言及のない限り、その置換はアルケニル基の任意の炭素上で起こり得ることを理解されたい。
【0072】
「アルキニル」は、炭素原子と水素原子だけからなり、少なくとも1つの三重結合を含み、例えば2〜10個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状炭化水素鎖基を指す。本明細書において別段の具体的な言及のない限り、そのアルケニル基は、本明細書で説明する1つまたは複数の置換基で任意選択で置換されていてよい。
【0073】
「アリール」は、例えば5〜12員を含むフェニルまたはナフチル基を指す。本明細書において別段の具体的な言及のない限り、「アリール」という用語は、本明細書で説明する1つまたは複数の置換基で任意選択で置換されたアリール基を含むことを意味する。
【0074】
「アリールアルキル」は式−Rの基を指し、Rは本明細書で説明するアルキル基であり、Rは本明細書で説明する1つまたは複数のアリール部分である。アリール基は本明細書で説明するように任意選択で置換されていてよい。
【0075】
「アリールアルケニル」は式−Rの基を指し、Rは本明細書で説明するアルケニル部分であり、Rは本明細書で説明する1つまたは複数のアリール基である。アリール基およびアルケニル基は本明細書で説明するように任意選択で置換されていてよい。
【0076】
「アシル」は式−C(O)Rの基を指し、Rは本明細書で説明するアルキル基である。アルキル基は本明細書で説明するように任意選択で置換されていてよい。
【0077】
「アリールアシル」は式−C(O)Rの基を指し、Rは本明細書で説明するアリール基である。アリール基は本明細書で説明するように任意選択で置換されていてよい。
【0078】
「シクロアルキル」は、炭素原子と水素原子だけからなり、例えば3〜15個の炭素原子を有し、飽和しており、分子の残り部分と単結合で結合している安定な単環式、二環式または三環式の炭化水素基を指す。本明細書において別段の具体的な言及のない限り、「シクロアルキル」という用語は、本明細書で説明するように任意選択で置換されたシクロアルキル基を含むことを意味する。
【0079】
「環構造」は、任意選択で置換されていてよいシクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたは任意の環構造を意味する。
【0080】
「任意選択の」または「任意選択で」は、その後に説明される状況の事象が生じても生じなくてもよく、その説明が、前記事象または状況が起こる場合とそれが起こらない場合を含むことを意味する。例えば、「任意選択で置換されたアルキル」は、アルキル基が置換されていても置換されていなくてもよく、その説明が置換されたアルキル基と置換されていないアルキル基の両方を含むことを意味する。任意選択で置換されたアルキル基の例には、これらに限定されないが、メチル、エチル、プロピル等、およびシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等のシクロアルキルが含まれ;任意選択で置換されたアルケニル基の例には、アリル、クロチル、2−ペンテニル、3−ヘキセニル、2−シクロペンテニル、2−シクロヘキセニル、2−シクロペンテニルメチル、2−シクロヘキセニルメチル等が含まれる。いくつかの実施形態では、任意選択で置換されたアルキルおよびアルケニル基はC1〜6アルキルまたはアルケニルを含む。
【0081】
「ハロ」はブロモ、クロロ、フルオロ、ヨード等を指す。いくつかの実施形態では、適切なハロゲンはフッ素または塩素を含む。
【0082】
アミノ基は、C1〜10アルキル(例えば、メチル、エチルプロピル等)を含む任意選択で選択されたアルキル基;任意選択で置換されたアルケニル基、例えばアリル、クロチル、2−ペンテニル、3−ヘキセニル等、または任意選択で置換されたシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル等を含む任意選択で置換されたアルキル基などの基で1回かまたは2回置換されていてもよい(第2または第3アミンを形成する)。これらの場合、C1〜6アルキル、アルケニルおよびシクロアルキルが好ましい。アミン基は、芳香族または複素環基、アラルキル(例えば、フェニルC1〜4アルキル)またはヘテロアルキル、例えばフェニル、ピリジン、フェニルメチル(ベンジル)、フェネチル、ピリジニルメチル、ピリジニルエチル等で任意選択で置換されていてもよい。複素環基は1〜4個のヘテロ原子を含む5または6員環であってよい。
【0083】
アミノ基は、任意選択で置換されたC2〜4アルカノイル、例えばアセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル等またはC1〜4アルキルスルホニル(例えば、メタンスルホニル、エタンスルホニル等)またはカルボニルもしくはスルホニル置換芳香族または複素環、例えばベンゼンスルホニル、ベンゾイル、ピリジンスルホニル、ピリジンカルボニル等で置換されていてよい。複素環は本明細書で説明する通りである。
【0084】
任意選択で置換されたカルボニル基またはスルホニル基の例には、本明細書で説明するアルキル、アルケニルおよび5〜6員の単環式芳香族基(例えば、フェニル、ピリジル等)などの様々なヒドロカルビルから形成された基の任意選択で置換された形態の基が含まれる。
【0085】
治療指標
本発明は、直接間接を問わず、O−GlcNAcase酵素により、またはO−GlcNAc修飾タンパク質レベルにより調節される状態、例えば、O−GlcNAcase酵素の阻害によって、またはO−GlcNAc修飾タンパク質レベルの増大によって利益を受ける状態を処置する方法を提供する。そうした状態には、これらに限定されないが、タウオパシー、例えばアルツハイマー病、神経変性疾患、心臓血管性疾患、炎症に関連した疾患、免疫抑制に関連した疾患および癌が含まれる。本発明の化合物は、O−GlcNAcaseの欠乏もしくは過剰発現またはO−GlcNAcの蓄積もしくは減少に関連する疾患または障害、あるいは、グリコシダーゼ阻害治療に応答する任意の疾患または障害を処置するのにも有用である。そうした疾患および障害には、これらに限定されないが、神経変性障害、例えばアルツハイマー病(AD)および癌が含まれる。そうした疾患および障害は、酵素OGTの蓄積もしくは欠乏に関係する疾患または障害も含むことができる。その修飾の異常調節によって疾患または病変がもたらされる、O−GlcNAc残基によって修飾されたタンパク質を発現する標的細胞を保護または処置する方法も含まれる。本明細書で用いる「処置する(treating)」という用語は、治療、予防および改善を含む。
【0086】
他の実施形態では、本発明は、獣医学的被験体およびヒト被験体などの動物被験体において、タンパク質O−GlcNAc修飾のレベルを増進させるかまたは高める方法を提供する。このO−GlcNAcレベルの増大は、アルツハイマー病の予防または治療;他の神経変性疾患(例えば、パーキンソン病、ハンチントン病)の予防または治療;神経保護的効果の提供;心臓組織への損傷の予防;および炎症または免疫抑制に伴う疾患の治療に有用である。
【0087】
他の実施形態では、本発明は、獣医学的被験体およびヒト被験体などの動物被験体において、O−GlcNAcase酵素を選択的に阻害する方法を提供する。
【0088】
他の実施形態では、本発明は、獣医学的被験体およびヒト被験体などの動物被験体において、タウポリペプチドのリン酸化を阻害するか、またはNFTの生成を阻害する方法を提供する。したがって、本発明の化合物は、ADおよび他のタウオパシーを試験または処置するのに用いることができる。
【0089】
一般に、本発明の方法は、本発明による化合物をそれを必要とする被験体に投与することによって、または、細胞もしくは試料を本発明による化合物、例えば治療有効量の式(I)による化合物を含む医薬組成物と接触させることによって実施される。より具体的には、それらは、O−GlcNAcタンパク質修飾の制御が関係する障害、または本明細書で説明する任意の状態を処置するのに有用である。被験体となる疾患には、アルツハイマー病(AD)、および微小管関連タンパク質タウの異常な過リン酸化が疾病病因に関与する関連神経変性タウオパシーが含まれる。いくつかの実施形態では、これらの化合物を、タウ上で高いレベルのO−GlcNAcを維持することによってタウの過リン酸化を阻止するために用い、それによって治療利益を提供することができる。
【0090】
毒性タウ種の蓄積に関連する病変(例えば、アルツハイマー病および他のタウオパシー)の治療における化合物の有効性は、確立された細胞118〜120および/または疾患のトランスジェニック動物モデル32、33において、その化合物が毒性タウ種の生成を阻止する能力を試験することによって確認することができる。
【0091】
本発明の化合物で治療できるタウオパシーには、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認識機能障害を有する筋萎縮性側索硬化症(ALSci)、嗜銀性グレイン認知症、ブルーイト病、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ボクサー認知症、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、染色体17(FTDP−17)と関連したパーキンソニズムを伴う前頭側頭認知症、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、グアドループパーキンソニズム、ハレルフォルデン−スパッツ病(脳内の1型鉄蓄積を伴う神経変性)、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、ニーマン−ピック病(C型)、淡蒼球−橋脳−黒質退行変性、グアムのパーキンソン認知症複合、ピック病(PiD)、脳炎後パーキンソニズム(PEP)、プリオン病(クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)、致死性家族性不眠症およびクールー病を含む)、進行性スーパーコルチカルグリオーシス、進行性核上麻痺(PSP)、リチャードソン症候群、亜急性硬化性全脳炎および神経原線維型認知症が含まれる。
【0092】
本発明の化合物は細胞を刺激するかまたは細胞分化を促進する組織損傷またはストレス、に関係する状態の治療にも有用である。したがって、いくつかの実施形態では、本発明の化合物は、これらに限定されないが、虚血;出血;血液量減少性ショック;心筋梗塞症;介入心臓学的手法;心臓バイパス術;線溶療法;血管形成術およびステント留置術を含む心臓組織におけるストレスを伴う様々な状態または医療処置において治療利益を提供するのに用いることができる。
【0093】
細胞ストレス(虚血、出血、血液量減少性ショック、心筋梗塞症および他の心臓血管性障害を含む)に伴う病変の治療における化合物の有効性は、その化合物が、確立された細胞ストレスアッセイ105、116、117において細胞傷害を防止する能力ならびに虚血再かん流70、114および外傷性出血72、112、115の動物モデルにおいて、組織損傷を防止し、機能回復を促進する能力を試験することによって確認することができる。
【0094】
O−GlcNAcase活性を選択的に阻害する化合物は、これらに限定されないが、炎症性またはアレルギー性疾患、例えばぜんそく、アレルギー性鼻炎、過敏性肺病、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、遅延型過敏症、アテローム性動脈硬化症、間質性肺炎(ILD)(例えば、特発性肺線維症、または関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎もしくは皮膚筋炎に伴うILD);全身性アナフィラキシーもしくは過敏性反応、薬物アレルギー、虫刺されアレルギー;自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎,同種移植の拒絶反応もしくは移植片対宿主疾患を含む移植片拒絶反応;炎症性腸炎、例えばクローン病および潰瘍性大腸炎;脊椎関節症;強皮症;乾癬(T細胞媒介乾癬を含む)および炎症性皮膚疾患、例えば皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、じんましん;血管炎(例えば、壊死性、皮膚性および過敏性血管炎);好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎および癌を含む炎症を伴う疾患の治療に用いることができる。
【0095】
さらに、タンパク質O−GlcNAc修飾のレベルに影響を及ぼす化合物は、化学療法、放射線治療、高度の創傷治癒および熱傷処置、自己免疫疾患のための治療もしくは他の薬物治療(例えば、コルチコステロイド治療)または自己免疫疾患および免疫抑制を引き起こすグラフト/移植拒絶反応の治療で使用される従来薬の組合せを施された個体におけるなどの免疫抑制;あるいは受容体機能における先天性欠損もしくは他の原因に起因する免疫抑制を伴う疾患の治療に用いることができる。
【0096】
本発明の化合物は、パーキンソン病およびハンチントン病を含む神経変性疾患の治療に有用である。治療できる他の状態は、O−GlcNAc翻訳後タンパク質修飾のレベルによって引き起こされるか、それによって影響を受けるか、または他の任意の仕方でそれと関連するものである。本発明の化合物は、そうした状態、特に、これらに限定されないが、それに対してタンパク質上のO−GlcNAcレベルとの関係が確立されている以下のもの、すなわち:移植片拒絶反応、特にこれらに限定されないが、心臓、肺、肝臓、腎臓および膵臓移植(例えば、腎臓と肺の同種移植)などの固形臓器移植;癌、特にこれらに限定されないが、乳癌、肺癌、前立腺癌、膵臓癌、結腸癌、直腸癌、膀胱癌、腎臓癌、卵巣癌;ならびに非ホジキンリンパ腫および黒色腫;てんかん、疼痛または脳卒中(例えば、脳卒中に続く神経防護作用のため)の治療に有用であると期待される。
【0097】
医薬組成物および獣医用組成物、投薬量および投与
本発明によるかまたは本発明による使用のための化合物を含む医薬組成物は、本発明の範囲内であるものとする。いくつかの実施形態では、有効量の式(I)の化合物を含む医薬組成物が提供される。
【0098】
それらが、ヒトを含む動物において薬理学的活性を有するので、式(I)の化合物ならびにその薬学的に許容される塩、立体異性体、溶媒和物および誘導体は有用である。いくつかの実施形態では、本発明による化合物は被験体に投与された場合、血漿中で安定である。
【0099】
いくつかの実施形態では、本発明によるかまたは本発明による使用のための化合物を、そうした併用療法がO−GlcNAcase活性を調節する、例えば神経変性、炎症性、心臓血管性もしくは免疫阻害性疾患または本明細書で説明する任意の状態を処置するのに有用な他の任意の活性薬剤または医薬組成物と併用して提供することができる。いくつかの実施形態では、本発明によるかまたは本発明による使用のための化合物は、アルツハイマー病の予防または治療に有用な1つまたは複数の薬剤と併用して提供することができる。そうした薬剤の例には、これらに限定されないが、
・ アセチルコリンエステラーゼ阻害剤(AChEI)、例えばAricept(登録商標)(Donepezil)、Exelon(登録商標)(リバスチグミン)、Razadyne(登録商標)(Razadyne ER(登録商標)、Reminyl(登録商標)、Nivalin(登録商標)、ガランタミン)、Cognex(登録商標)(タクリン)、ジメボン、ヒューペルジンA、フェンセリン、Debio−9902SR(ZT−1SR)、ザナペジル(TAK0147)、ガンスチグミン、NP7557等;
・ NMDA受容体アンタゴニスト、例えばNamenda(登録商標)(Axura(登録商標)、Akatinol(登録商標)、Ebixa(登録商標)、メマンチン)、ジメボン、SGS−742、Neramexane、Debio−9902SR(ZT−1SR)等;
・ γ−セクレターゼ阻害剤および/またはモジュレーター、例えばFlurizan(商標)(タレンフルビル、MPC−7869、R−フルルビプロフェン)、LY450139、MK0752、E2101、BMS−289948、BMS−299897、BMS−433796、LY−411575、GSI−136等;
・ β−セクレターゼ阻害剤、例えばATG−Z1、CTS−21166等;
・ α−セクレターゼ活性化因子、例えばNGX267等;
・ アミロイド−β凝集および/または線維化阻害剤、例えばAlzhemed(商標)(3APS、トラミプロセート、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸)、AL−108、AL−208、AZD−103、PBT2、Cereact、ONO−2506PO、PPI−558等;
・ タウ凝集阻害剤、例えばメチレンブルー等;
・ 微小管安定剤、例えばAL−108、AL−208、パクリタキセル等;
・ RAGE阻害剤、例えばTTP488等;
・ 5−HT1a受容体アンタゴニスト、例えばキサリプロデン、レコゾタン等;
・ 5−HT4受容体アンタゴニスト、例えばPRX−03410等;
・ キナーゼ阻害剤、例えばSRN−003−556、アムフリンダミド(amfurindamide)、LiCl、AZD1080、NP031112、SAR−502250等;
・ヒト化モノクローン抗−Aβ抗体、例えばバピネオズマブ(AAB−001)、LY2062430、RN1219、ACU−5A5等;
・ アミロイドワクチン、例えばAN−1792、ACC−001
・ 神経保護薬、例えばセレブロライシン、AL−108、AL−208、ヒューペルジンA等;
・ L型カルシウムチャンネルアンタゴニスト、例えばMEM−1003等;
・ ニコチン性受容体アンタゴニスト、例えばAZD3480、GTS−21等;
・ ニコチン性受容体アゴニスト、例えばMEM3454、ネフィラセタム等;
・ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)γアゴニスト、例えばAvandia(登録商標)(ロシグリタゾン)等;
・ ホスホジエステラーゼIV(PDE4)阻害剤、例えばMK−0952等;
・ ホルモン補充療法、例えばエストロゲン(Premarin)等;
・ モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤、例えばNS2330、ラサギリン(Azilect(登録商標))、TVP−1012等;
・ AMPA受容体モジュレーター、例えばAmpalex(CX516)等;
・ 神経成長因子またはNGF増強物質、例えばCERE−110(AAV−NGF)、T−588、T−817MA等;
・ 下垂体による黄体形成ホルモン(LH)の放出を防止する薬剤、例えばロイプロリド(leuoprolide)(VP−4896)等;
・ GABA受容体モジュレーター、例えばAC−3933、NGD97−1、CP−457920等;
・ベンゾジアゼピン受容体逆アゴニスト、例えばSB−737552(S−8510)、AC−3933等;
・ ノルアドレナリン放出剤、例えばT−588、T−817MA等
が含まれる。
【0100】
本発明によるかまたは本発明による使用のための化合物とアルツハイマー病薬剤の組合せは本明細書で説明する例に限定されず、アルツハイマー病の治療に有用な任意の薬剤との組合せを含むことを理解されたい。本発明によるかまたは本発明による使用のための化合物と他のアルツハイマー病薬剤の組合せは、別個かまたは一緒に投与することができる。1つの薬剤の投与は、他の薬剤の投与に先行するか、それと同時かまたはその後であってよい。
【0101】
他の実施形態では、化合物は被験体に投与した後に化合物を放出する「プロドラッグ」かまたは保護した形態として供給することができる。例えば、化合物は体液中、例えば血流中で加水分解して切り離され、それによって活性化合物を放出するか、あるいは体液中で酸化または還元されてその化合物を放出する保護基を担持することができる。したがって、「プロドラッグ」は、生理学的条件下かまたは加溶媒分解によって生物学的に活性な本発明の化合物に転換される化合物を示すことを意味する。したがって、「プロドラッグ」という用語は、薬学的に許容される本発明の化合物の代謝前駆体を指す。プロドラッグは、それを必要とする被験体に投与されたときは不活性であってよいが、インビボで転換されて活性な本発明の化合物となる。プロドラッグは一般に、例えば血液中での加水分解によって、インビボで急速に変換されて本発明の親化合物を生成する。プロドラッグ化合物はしばしば、溶解性、組織適合性または被験体における遅延放出の利点を提供する。
【0102】
「プロドラッグ」という用語は、そうしたプロドラッグが被験体に投与されたときインビボで本発明の活性化合物を放出する共有結合した任意の担体を含むことも意味する。本発明の化合物のプロドラッグは、本発明の化合物中に存在する官能基を、その改変部が慣行的な操作かまたはインビボで切断されて本発明の親化合物となるような仕方で改変することによって調製することができる。プロドラッグは、ヒドロキシ、アミノまたはメルカプト基が、本発明の化合物のプロドラッグを哺乳動物被験体に投与したとき切断されて遊離ヒドロキシ、遊離アミノまたは遊離メルカプト基をそれぞれ生成する任意の基と結合する本発明の化合物を含む。プロドラッグの例には、これらに限定されないが、本発明の化合物中のアルコールの酢酸、ギ酸および安息香酸エステル誘導体、ならびにアミン官能基のアセトアミド、ホルムアミドおよびベンズアミド誘導体などが含まれる。
【0103】
プロドラッグについての考察は、「Smith and Williams’ Introduction to the Principles of Drug Design」、H.J.Smith, Wright、第2版, London(1988年);Bundgard, H.、 Design of Prodrugs (1985年)、7〜9、21〜24頁(Elsevier、Amsterdam);ThePractice of Medicinal Chemistry、 Camille G. Wermuthら、31章、(Academic Press、1996年);ATextbook of Drug Design and Development、 P. Krogsgaard-Larson および H. Bundgaard編5章、113 191頁(HarwoodAcademic Publishers、1991年);Higuchi, T.ら、 「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、A.C.S.Symposium Series、14巻;またはBioreversible Carriers in Drug Design編 Edward B. Roche、AmericanPharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年に見出すことができる。これらのすべてを参照により本明細書に組み込む。
【0104】
本発明の化合物の適切なプロドラッグ形態は、RがC(O)R(Rは任意選択で置換されたアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたはヘテロアリールである)である実施形態を含む。これらの場合、エステル基は、インビボで加水分解されて(例えば、体液中で)、RがHである活性化合物を放出することができる。本発明の好ましいプロドラッグの実施形態は、Rの1つかまたはその両方がC(O)CHであり、RがOC(O)CHである式(I)の化合物を含む。
【0105】
本発明によるかまたは本発明による使用のための化合物は、リポソーム、補助剤または任意の薬学的に許容される担体、賦形剤もしくは添加剤の存在下、哺乳動物、例えばヒト、ウシ、ヒツジなどの被験体に投与するのに適した形態で、単独か、または他の化合物と一緒に提供することができる。望むなら、本発明による化合物を用いた治療は、本明細書で説明する治療指標のために、より伝統的な既存の治療法と一緒にすることができる。本発明による化合物は、連続的(chronically)かまたは断続的に投与することができる。「連続的(chronic)」投与とは、当初の治療効果(活性)を長期間維持するように、緊急モード(acutemode)とは逆に連続モードで化合物を投与することを指す。「断続的(intermittent)」投与は、中断なしに連続的に実施するのではなく、むしろ実際は、周期的に実施される治療である。本明細書で用いる「投与」、「投与できる(administrable)」または「投与する(administering)」という用語は、治療を必要とする被験体に本発明の化合物を提供することを意味することを理解すべきである。
【0106】
「薬学的に許容される担体、賦形剤または添加剤」には、これらに限定されないが、例えば米国食品医薬品局または他の政府機関によって、ヒトまたは家畜において使用が許容されるものとして承認されている任意の補助剤、担体、添加剤、流動促進剤、甘味剤、賦形剤、防腐剤、染料/着色剤、香味増進剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤、安定剤、等張剤、溶媒または乳化剤が含まれる。
【0107】
本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で投与することができる。そうした場合、本発明による医薬組成物は、そうした化合物の塩、好ましくは当業界で公知の生理学的に許容される塩を含むことができる。いくつかの実施形態では、本明細書で用いる「薬学的に許容される塩」という用語は、特にその塩の形態が、その活性成分の遊離形態または他の従来開示されている塩の形態と比較して、活性成分に向上した薬物速度論的特性を付与する塩の形態で用いられる式Iの化合物を含む活性成分を意味する。
【0108】
「薬学的に許容される塩」には、酸付加塩と塩基付加塩の両方が含まれる。「薬学的に許容される酸付加塩」は、遊離塩基の生物学的な有効性および特性を保持しており、生物学的かまたはそれ以外で望ましくないということはなく、かつ、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸、および酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸などの有機酸を用いて形成される塩を指す。
【0109】
「薬学的に許容される塩基付加塩」は、遊離酸の生物学的な有効性および特性を保持しており、生物学的かまたはそれ以外で望ましくないということはない塩を指す。これらの塩は、無機塩基または有機塩基を遊離酸に加えて調製する。無機塩基から誘導される塩には、これらに限定されないが、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩などが含まれる。好ましい無機塩は、アンモニウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩である。有機塩基から誘導される塩には、これらに限定されないが、天然由来の置換アミン、環状アミンの塩、および塩基性イオン交換樹脂を含む第1、第2および第3アミン、置換アミン、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リシン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N−エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などの塩が含まれる。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0110】
したがって、「薬学的に許容される塩」という用語は、これらに限定されないが、酢酸塩、ラクトビオン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、リンゴ酸塩、重炭酸塩、マレイン酸塩、重硫酸塩、マンデル酸塩、酸性酒石酸塩、メシラート、ホウ酸塩、メチルブロミド、ブロミド、メチル亜硝酸塩、エデト酸カルシウム、メチル硫酸塩、カンシル酸塩、ムコ酸塩、炭酸塩、ナプシル酸塩、クロリド、硝酸塩、クラブラン酸塩、N−メチルグルカミン、クエン酸塩、アンモニウム塩、ジヒドロクロリド、オレイン酸塩、エデト酸塩、シュウ酸塩、エジシル酸塩、パモン酸塩(エンボン酸塩)、エストル酸塩、パルミチン酸塩、エシル酸塩、パントテン酸塩、フマル酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、グルセプチン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、グルコン酸塩、サリチル酸塩、グルタミン酸塩(glutame)、ステアリン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、硫酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、塩基性酢酸塩、ヒドラダミン、コハク酸塩、臭化水素酸塩、タンニン酸塩、塩酸塩、酒石酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、テオクル酸塩、アイオダイド、トシレート、イソチオン酸塩、トリエチオダイド、乳酸塩、パノエート(panoate)、吉草酸塩などを含むすべての許容される塩を包含する。
【0111】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、溶解または加水分解特性を改変するための調剤として用いることができ、また、持続放出またはプロドラッグ処方物で用いることができる。また、本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウム、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、亜鉛などのカチオン、ならびにアンモニア、エチレンジアミン、N−メチル−グルタミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレン−ジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチル−アミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンおよびテトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの塩基から形成されるものを含むことができる。
【0112】
薬剤処方物は一般に、製剤の投与方式、例えば、注射、吸入、局所投与、洗浄(lavage)、または選択された治療に適した他の方式で許容される1つまたは複数の担体を含む。適切な担体は、そうした投与方式で用いるのに当業界で公知のものである。
【0113】
適切な医薬組成物は当業界で公知の手段で処方することができ、その投与方式および用量は専門医によって判断される。非経口投与のためには、化合物を滅菌水もしくは生理食塩水、またはビタミンKに使用されるものなどの非水溶性化合物の投与に用いられる薬学的に許容される媒体中に溶解することができる。腸内投与のためには、化合物を錠剤、カプセル剤で投与するかまたは液体に溶解して投与することができる。錠剤(table)もしくはカプセル剤は、腸溶コーティングするか、または持続放出用処方物であってよい。適切な多くの処方物が公知であり、それらには、放出される化合物をカプセル化したポリマーまたはタンパク質微粒子、軟膏剤、ゲル剤、ヒドロゲル剤または局所もしくは局部に化合物を投与するために使用できる液剤が含まれる。持続放出パッチまたはインプラントを、長期間にわたって放出させるために用いることができる。専門医に公知の多くの手法は、Remington:theScience & Practice of Pharmacy by Alfonso Gennaro、第20版、Williams &Wilkins(2000年)に記載されている。非経口投与のための処方物は、例えば添加剤、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物由来のオイルまたは水素化ナフタレンを含むことができる。生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマーまたはポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンコポリマーを、化合物の放出を制御するために使用することができる。調節化合物のための他の潜在的に有用な非経口送達系には、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み型注入系およびリポソームが含まれる。吸入用処方物は添加剤、例えばラクトースを含むか、または、例えばポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル、グリコレートおよびデオキシコレートを含む水溶液であるか、あるいは点鼻剤の形態またはゲル剤として投与するための油性液剤であってよい。
【0114】
本発明による化合物または医薬組成物は、経口または非経口、例えば筋肉内、腹腔内、静脈内、嚢内注射もしくは注入、皮下注射、経皮もしくは経粘膜経路で投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明によるかまたは本発明での使用のための化合物または医薬組成物は、インプラント、グラフト、プロテーゼ、ステントなどの医療用装置または器具を用いて投与することができる。インプラントは、そうした化合物または組成物を含み、それを放出するように工夫することができる。例としては、その化合物を長期にわたって放出するようになされたポリマー材料でできたインプラントが挙げられる。化合物は、単独か、または薬学的に許容される担体との混合物で、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤などの固体処方物;シロップ剤、注射液などの液体処方物;注射液、点眼剤(drops)、坐剤、ペッサリーとして投与することができる。いくつかの実施形態では、本発明によるかまたは本発明での使用のための化合物または医薬組成物は、吸入噴霧、経鼻、経膣、経直腸、舌下または局所経路で投与することができ、投与の各経路に適した慣用的な非毒性の薬学的に許容される担体、補助剤および媒体を含む適切な投薬単位の処方物で、単独かまたは一緒に処方することができる。
【0115】
本発明の化合物は、マウス、ラット、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコおよびサルを含む動物の治療に使用することができる。しかし、本発明の化合物は、鳥類(例えば、ニワトリ)などの他の生命体で使用することもできる。本発明の化合物はヒトにおいて使用するのも効果的である。「被験体」あるいは「患者」とも称される用語は、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを称するものとし、それは治療、観察または実験の対象物である。しかし、本発明の化合物、方法および医薬組成物を動物の治療に用いることができる。したがって、本明細書で用いる「被験体」は、ヒト、ヒト以外の霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ等であってよい。被験体は、O−GlcNAcase活性の調節を必要とする状態を有していると疑われるかまたはその危険があるものである。
【0116】
本発明による化合物の「有効量」は、治療有効量または予防有効量を含む。「治療有効量」は、必要な投薬量および期間で、O−GlcNAcaseの阻害、O−GlcNAcレベルの増大、タウリン酸化または本明細書で説明する任意の状態の阻害などの所望の治療結果を達成するのに有効な量を指す。化合物の治療有効量は、個体の病状、年齢、性別および体重、ならびに化合物が個体において所望の応答を引き出す能力などの因子によって変わってくる。投薬レジメンは最適の治療応答が得られるように調節することができる。治療有効量は、治療上有益な効果の方が、化合物の任意の有毒または有害な影響を上回る場合もあてはまる。「予防有効量」は、必要な投薬量および期間で、O−GlcNAcaseの阻害、O−GlcNAcレベルの増大、タウリン酸化または本明細書で説明する任意の状態の阻害などの所望の予防結果を達成するのに有効な量を指す。一般に、予防的用量は被験体が病気にかかる前かまたはその病期の早期段階で用いられ、したがって、予防有効量は多分治療有効量より少なくてよい。化合物の治療または予防有効量に適した範囲は、0.1nM〜0.1M、0.1nM〜0.05M、0.05nM〜15μMまたは0.01nM〜10μMの範囲の任意の整数値であってよい。
【0117】
他の実施形態では、O−GlcNAcase活性の調節を必要とする状態を治療または予防するのに、適切な投薬レベルは一般に約0.01〜500mg/kg被験体体重/日であり、単回(singe)用量または複数回用量で投与することができる。いくつかの実施形態では、投薬レベルは約0.1〜約250mg/kg/日となる。特定の任意の患者のための具体的な用量レベルおよび投薬頻度は変えることができ、それは、使用する具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用期間、年齢、体重、全体的な健康、性別、食事、投与の方式および時間、排出速度、薬物併用、具体的な状態の重症度ならびに治療を受ける患者を含む様々な因子に依存することになることを理解されよう。
【0118】
投薬量は、緩和される状態の重症度によって変えることができることに留意すべきである。特定の任意の被験体のために、具体的な投薬レジメンは、個々の必要性およびその組成物の投与の管理または監督者の専門的な判断に応じて時間と共に調節することができる。本明細書で示す投薬範囲は単なる例示に過ぎず、投薬範囲を限定するものではなく、これは、医師が選択することができる。組成物中の活性化合物中の量は、被験体の病状、年齢、性別および体重などの因子に応じて変えることができる。投薬レジメンは最適の治療応答が得られるように調節することができる。例えば、単一のボーラスを投与するか、複数の分割用量を時間かけて投与するか、あるいは、治療状況の緊急性によって指示されるように、その用量を比例的に増減させることができる。投与を容易にし投薬を均一にするために、投薬単位形態で非経口組成物を処方することが有益である。一般に、本発明の化合物は、実質的な毒性をもたらすことなく使用すべきであり、本明細書で説明するように、化合物は治療で使用するための適切な安全性プロファイルを示す。本発明の化合物の毒性は、標準的な技術を用いて、例えば細胞培養物または実験動物で試験し、治療指数、すなわちLD50(個体数の50%致死用量)とLD100(個体数の100%致死用量)の比を測定することによって判定することができる。しかし、重症の病状などの状況によっては、かなり過剰な組成物を投与する必要がある場合がある。
【0119】
他の使用およびアッセイ
式(I)の化合物は、グリコシダーゼ酵素、好ましくはO−GlcNAcase酵素の活性を調節する化合物のためのアッセイをスクリーニングするのに用いることができる。試験化合物がモデル基質からのO−GlcNAcのO−GlcNAcase依存性切断を阻害する能力は、本明細書で説明するかまたは当業者に公知の任意のアッセイを用いて測定することができる。例えば、当業界でも公知の蛍光またはUVベースのアッセイを用いることができる。「試験化合物」は天然由来または人工的由来の任意の化合物である。試験化合物は、これらに限定されないが、ペプチド、ポリペプチド、合成有機分子、天然由来の有機分子および核酸分子を含むことができる。試験化合物は、例えば、O−GlcNAcのO−GlcNAcase−依存性切断の阻害を妨害するか、式(I)の化合物によって誘発される任意の生物学的応答を妨害することによって、式(I)の化合物などの公知の化合物と「競合する」ことができる。
【0120】
一般に、試験化合物は、式(I)の化合物または他の参照化合物と比較した場合、10%〜200%または500%を超える調節率(modulation)を示すことができる。例えば、試験化合物は、10%〜200%の少なくとも任意の正もしくは負の整数の調節率、30%〜150%の少なくとも任意の正もしくは負の整数の調節率、60%〜100%の少なくとも任意の正もしくは負の整数の調節率、または100%を超える少なくとも任意の正もしくは負の整数の調節率を示すことができる。負のモジュレーターである化合物は、公知の化合物に対して調節率を概ね減少させるが、正のモジュレーターである化合物は、公知の化合物に対して調節率を概ね増加させる。
【0121】
一般に、試験化合物は、天然物もしくは合成(または半合成)抽出物の両方または当業界で公知の方法による化学ライブラリーの多くのライブラリーから特定される。薬物の発見および開発分野の技術者は、試験抽出物または化合物の正確な供給源が本発明の方法にとってそれほど重要ではないことを理解されよう。したがって、化学的抽出物または化合物を実質的にいくらでも、本明細書で説明する例示的方法を用いてスクリーニングすることができる。そうした抽出物または化合物の例には、これらに限定されないが、植物、菌類、原核生物または動物をベースとした抽出物、発酵ブロスおよび合成化合物、ならびに既存化合物を改変したものが含まれる。多くの方法を、これらに限定されないが、単糖類、脂質、ペプチドおよび核酸をベースとした化合物を含むどんな数の化合物のランダムなまたは有方向性の合成(例えば、半合成または全合成)をもたらすのにも利用することができる。合成化合物ライブラリーは市販されている。あるいは、細菌、菌類、植物および動物抽出物の形態の天然化合物のライブラリーは、Biotics(Sussex,UK)、Xenova(Slough,UK)、Harbor Branch Oceanographic Institute(Ft.Pierce,FL,USA)およびPharmaMar,MA,USAを含むいくつかの供給源から市場で入手することができる。さらに、天然ライブラリーおよび合成により生産されたもののライブラリーは、望むなら、当業界で公知の方法、例えば標準的な抽出および分別方法により作製される。さらに、望むなら、任意のライブラリーまたは化合物を、標準的な化学的、物理的または生化学的方法を用いて容易に改変することができる。
【0122】
粗抽出物が、O−GlcNAcのO−GlcNAcase−依存性切断を阻害するかまたは式(I)の化合物によって誘発された任意の生物学的応答を調節することが分かった場合、観測結果に関与する化学成分を単離するために、陽性の主要抽出物(positive lead extract)のさらなる分別が必要である。したがって、抽出、分別および精製工程の目的は、O−GlcNAcase−阻害活性を有する粗抽出物中の化学物質の注意深い特性評価および同定である。化合物の混合物における活性を検出するための本明細書で説明する同じアッセイを、活性成分を精製し、その誘導体を試験するのに用いることができる。そうした不均一抽出物の分別および精製方法は当業界で公知である。望むなら、治療に有用な薬剤であることが分かっている化合物は、当業界で公知の方法で化学的に改変することができる。治療、予防、診断に役立つかまたは他の価値があることが確認された化合物は続いて、本明細書で説明するかまたは当業界で公知の適切な動物モデルを用いて分析することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、これらの化合物は、O−GlcNAcaseの欠乏、O−GlcNAcaseの過剰発現、O−GlcNAcの蓄積、O−GlcNAcの減少に関連する疾患または障害を研究し、O−GlcNAcaseの欠乏もしくは過剰発現またはO−GlcNAcの蓄積もしくは減少に関連する疾患および障害の治療を研究するための動物モデルの開発に有用である。そうした疾患および障害には、アルツハイマー病および癌を含む神経変性疾患が含まれる。
【0124】
本発明の様々な他の実施形態および実施例を本明細書で説明する。これらの実施形態および実施例は例示的なものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0125】
以下の実施例は本発明の実施形態を例示しようとするものであり、それを限定するものと解釈されるべきではない。
【0126】
(実施例1)
一般構造式Aを有する本発明の化合物を公知の合成方法121、122によって調製する。例えば、Liu、Liangら(スキーム1)の合成経路に従って、適切なアルデヒドを用いて公知の中間体2123を還元的アミノ化して所望のN−置換物質A121、122を得る。
【0127】
【化10】

(実施例2)
一般構造式BおよびCを有する本発明の化合物も公知の合成方法121、122によって調製される。例えば、Liu、Liangら(スキーム2)の合成経路に従って、公知の中間体1124を適切なカルボン酸または酸クロリドでカップリングして所望のアミドB121、122を得る。Bを適切なアルデヒドで還元的アミノ化して所望のN−置換物質C121を得る。
【0128】
【化11】

(実施例3)
一般構造式D、EおよびFを有する本発明の化合物をスキーム3に記載した順に従って調製する。したがって、中間体1124から出発して、適切なアルデヒドで還元的アミノ化して構造式Cを得る。Cを適切なカルボン酸または酸クロリドでカップリングして所望のアミドD121、122を得る。適切なアルデヒドを用いてDを第2の還元的アミノ化により構造式F121を得る。
【0129】
【化12】

(実施例4)
一般構造式GおよびHを有する本発明の化合物をスキーム4に記載した順に従って調製する。したがって、中間体Dから出発して、適切なアルデヒドで還元的アミノ化して構造式Gを得る。続いて、Gを適切なアルデヒドで還元的アミノ化して構造式Hを得る。
【0130】
【化13】

(実施例5)
一般構造式Lを有する本発明の化合物をスキーム5に記載した順に従って調製する。したがって、中間体2123から出発して、第2アミンをBoc−保護してIを得る。Iの第1アルコールを選択的にトシル化してJを得る。Jのトシル基を適切なアルコールで置換してKを得、Boc基をTFAで脱保護して所望の物質Lを得る。
【0131】
【化14】

(実施例6)
一般構造式Q、RおよびTを有する本発明の化合物をスキーム6に記載した順に従って調製する。したがって、中間体Jから出発して、トシル基をアジド置換してMを得、次いで水素化してNを得る。適切なアルデヒドでNを還元的アミノ化してOを得、次いでこれをTFAで脱保護して所望の化合物Qを得る。あるいは、Oを適切なアルデヒドで第2の還元的アミノ化をしてPを得、次いでこれをTFAで脱保護してビス−アルキル化生成物Rを得る。中間体Nを適切なカルボン酸でカップリングしてSを得、次いでこれをTFAで脱保護して生成物Tを得る。
【0132】
【化15】

(実施例7)
一般構造式Vを有する本発明の化合物をスキーム7に記載した順に従って調製する。したがって、中間体Jの適切なジアルキル亜鉛試薬との反応によりUを得る。次いでUのBoc基をTFAで脱保護して所望の構造式Vを得る。
【0133】
【化16】

(実施例8)
O−GlcNAcase活性の阻害についてのK値を測定するためのアッセイ
動態解析のための実験手順:基質(0.5mM)としてpNP−GlcNAcを用いて、PBS緩衝液(pH7.4)中で酵素反応を実施し、これを、Peltier温度調節器を備えたCary 3E UV−VIS分光光度計を用いて、37℃、400nmで連続的にモニターする。反応物を500μL石英キュベット中で約5分間予熱し、続いてシリンジで10μL酵素を加える(最終酵素濃度0.002mg/mL)。反応速度を、1分目と3分目の間の反応進行曲線の線形領域の線形回帰により測定する。それぞれの場合、Kの1/5〜5倍の阻害剤濃度範囲を使用する。
【0134】
上記アッセイで試験すると、化合物2はO−GlcNAcaseの阻害について0.85μMのK値を示した。上記アッセイで試験すると、本明細書で記載する化合物の多くは、O−GlcNAcaseの阻害について1nM〜50μMの範囲のK値を示す。K値はすべてDixonプロットの線形回帰を用いて測定する。
【0135】
(実施例9)
β−ヘキソサミニダーゼ活性の阻害についてのK値を測定するためのアッセイ
動態解析のための実験手順:すべての酵素アッセイは、停止アッセイ手順を用いた400nmでの吸収測定により判定して放出4−ニトロフェノレートの量を測定することによって、37℃で3通り実施する。シリンジで酵素(3μL)を加えて反応物(50μL)の反応を開始させる。β−ヘキソサミニダーゼの時間依存アッセイにより、その酵素はアッセイの期間にわたって緩衝液(50mMクエン酸塩、100mM NaCl、0.1%BSA、pH4.25)中で安定であることが分かった。β−ヘキソサミニダーゼは、0.036mg/mLの濃度(基質として0.5mMの濃度でpNP−GlcNAcを含む)で使用する。阻害剤を5〜1/5倍のKの範囲の5つの濃度で試験する。K値はDixonプロットによるデータの線形回帰により判定する。
【0136】
アッセイで試験すると、本明細書で記載する化合物の多くは、β−ヘキソサミニダーゼの阻害について1μM〜10mMの範囲のK値を示す。
【0137】
β−ヘキソサミニダーゼに対するO−GlcNAcaseの阻害についての選択性比は次のように定義される:
I(β−ヘキソサミニダーゼ)/KI(O−GlcNAcase)
一般に、本明細書で説明する化合物は、約10〜100000の範囲の選択性比を示すはずである。したがって、多くの本発明化合物は、O−GlcNAcaseの阻害について、β−ヘキソサミニダーゼより高い選択性を示す。
【0138】
本発明を1つまたは複数の実施形態に関して説明してきたが、特許請求の範囲で規定するような本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更および改変を加えることができることは当業者に明らかであろう。
【0139】
【数1】

【0140】
【数2】

【0141】
【数3】

【0142】
【数4】

【0143】
【数5】

全ての引用文献は、本明細書中に参考として援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩であって、
【化17】

式中、各Rは独立にHまたはC(O)Rであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであり;
各Rは任意選択で独立に非介在型置換基であり;
ただし、各RがHであり、RがHであり、RがHであり、RがOHである場合、Rは、H、C(O)CH、C(O)CHCH、C(O)(CHCH、C(O)(CHCH、C(O)(CHCH、C(O)(CHCH、C(O)(CH10CH、C(O)C≡CH、C(O)CH=CH、C(O)C(CH)=CH、C(O)(CHOH、C(O)(1,3−ベンゾジオキソール−4−イルメチル)、C(O)(1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル)、C(O)CH(3−インドリル)、C(O)(CH(フェニル)、C(O)(2,3−ジクロロフェニル)、C(O)(2,3−ジヒドロキシフェニル)、C(O)(2,3−ジヒドロキシ−4−メチルフェニル)、C(O)(2−メチル−3−ニトロフェニル)、C(O)(2,3−ジメトキシフェニル)、C(O)(2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)、C(O)(2,6−ジヒドロキシフェニル)、C(O)(2,3−ジメチルフェニル)、C(O)(2−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)、C(O)(2−ナフチル)、C(O)(4−ヒドロキシ−2−キノリル)、C(O)(4−ベンゾイルフェニル)、C(O)(6−クロロ−2H−クロメン−3−イル)、C(O)(1−ナフチル)、C(O)(フェニル)、C(O)(3−ジメチルアミノフェニル)、C(O)(4−ジメチルアミノフェニル)、C(O)(2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)、C(O)(7−ジエチルアミノ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル)、S(O)(1−ナフチル)、S(O)(5−ジメチルアミノ−1−ナフチル)、S(O)(フェニル)、S(O)(CHCH、C(O)(CHNHSO(5−ジメチルアミノ−1−ナフチル)、(CHNHSO(5−ジメチルアミノ−1−ナフチル)、C(O)(CH(3−インドリル)、C(O)(5−インドリル)、C(O)(CH)(1−ナフチル)、C(O)(CH)(2−ナフチル)、C(O)(2−メチルチオ(フェニル))、C(O)(E−(3−トリフルオロメチルフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(3−クロロフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(3−ブロモフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(4−メチルフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(4−ジメチルアミノフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(3−アセトキシ−4−メトキシフェニル−2−エテニル))、C(O)(E−(3−インドリル−2−エテニル))、C(O)(3−(1−ベンジルインドリル))、C(O)((9−オキソ−9H−フルオレン)−2−イル)、C(O)CH(CHCH)((CHCH)、C(O)CHOH、C(O)(cis−4−アミノシクロヘキシル)、(CHNH、(CHOHを除外するという条件であるか、または、各RがHであり、RがHであり、RがC(O)CHであり、RがOHである場合、Rは、H、CH、CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHO(CHO(CH、(CHO(CHO(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CH、(CH、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、CH(4−(ジメチルアミノ)フェニル)、1,3−ベンゾジオキソール−4−イルメチル、CH(5−(4−クロロフェニル)−2−フラニル)、CH(4−ヒドロキシフェニル)、CH(4−(2−ピリジル)フェニル)を除外するという条件であるか、または、各RがHであり、RがHであり、RがC(O)CHであり、RがHである場合、RはHおよびCHを除外するという条件であるか、または、
各RがHであり、RがHであり、RがC(O)((1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン)−1−イル)であり、RがOHである場合、Rは、H、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CH10CH、(CH11CHを除外するという条件であるか、または、
各RがHであり、RがHであり、RがHであり、RがOHである場合、Rは、(CHCH、(CHCH、(CHCHおよび(CHCHを除外するという条件であるか、または、式(I)は以下の化合物:5−{[((2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−ヒドロキシメチル−ピロリジン−2−イルメチル)−アミノ]−メチレン}−1,3−ジメチル−ピリミジン−2,4,6−トリオン(CAS # 763122−23−2)、(2R,2’R,3R,3’R,4R,4’R,5R,5’R)−2,2’−[イミノビス(メチレン)]ビス[5−(ヒドロキシメチル)]−3,4−ピロリジンジオール(CAS # 231618−81−8)、(2R,3R,4R,5R)−1−ブチル−2−[(ジブチルアミノ)メチル]−5−(ヒドロキシメチル)−3,4−ピロリジンジオール(CAS # 172936−43−5)、(2R,3R,4R,5R)−2−(アジドメチル)−1−ブチル−5−(ヒドロキシメチル)−3,4−ピロリジンジオール(CAS # 172936−41−3)、メチル 2−(((2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−2−イル)メチルカルバモイル)−1H−インドール−5−カルボキシレート(CAS # 876751−91−6)、および(R)−α−アミノ−N−[[(2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−ピロリジニル]メチル]−4−オキソ−1(4H)−ピリジンプロパンアミド(CAS # 876751−85−8)、(2R,3R,4R,5R)−2−(アジドメチル)−5−(ヒドロキシメチル)−3,4−ピロリジンジオール(CAS # 765308−83−6)を除外するという条件である、化合物または薬学的に許容されるその塩。
【請求項2】
がOHまたはOC(O)CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がHまたはC(O)CHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
式(II)で示される、請求項1に記載の化合物
【化18】

(式中、
各Rは独立にHまたはC(O)R11であり;
は非介在型置換基であり;
10は非介在型置換基であり;
nは0〜10の整数であり;
各R11は任意選択で独立に非介在型置換基であり;
ただし、各RがHであり、R10がHであり、n=0である場合、Rは、CH、CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CH10CH、C≡CH、CH=CH、C(CH)=CH、(CHOH、1,3−ベンゾジオキソール−4−イルメチル、1,3−ベンゾジオキソール−5−イルメチル、CH(3−インドリル)、(CH(フェニル)、2,3−ジクロロフェニル、2,3−ジヒドロキシフェニル、2,3−ジヒドロキシ−4−メチルフェニル、2−メチル−3−ニトロフェニル、2,3−ジメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3−メチルフェニル、2,6−ジヒドロキシフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル、2−ナフチル、4−ヒドロキシ−2−キノリル、4−ベンゾイルフェニル、6−クロロ−2H−クロメン−3−イル、1−ナフチル、フェニル、3−ジメチルアミノフェニル、4−ジメチルアミノフェニル、2−オキソ−2H−クロメン−3−イル、7−ジエチルアミノ−2−オキソ−2H−クロメン−3−イル、(CHNHSO(5−ジメチルアミノ−1−ナフチル)、(CH(3−インドリル)、5−インドリル、CH(1−ナフチル)、CH(2−ナフチル)、2−メチルチオ(フェニル)、E−(3−トリフルオロメチルフェニル−2−エテニル)、E−(3−クロロフェニル−2−エテニル)、E−(3−ブロモフェニル−2−エテニル)、E−(4−メチルフェニル−2−エテニル)、E−(4−ジメチルアミノフェニル−2−エテニル)、E−(3−アセトキシ−4−メトキシフェニル−2−エテニル)、E−(3−インドリル−2−エテニル)、3−(1−ベンジルインドリル)、(9−オキソ−9H−フルオレン)−2−イル、CH(CHCH)((CHCH)、CHOH、cis−4−アミノシクロヘキシルを除外するという条件であるか、または、各RがHであり、RがCHであり、n=0である場合、R10は、H、CH、CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHO(CHO(CH、(CHO(CHO(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CHNH、(CH、(CH、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、(CHNHC(O)OBu、CH(4−(ジメチルアミノ)フェニル)、1,3−ベンゾジオキソール−4−イルメチル、CH(5−(4−クロロフェニル)−2−フラニル)、CH(4−ヒドロキシフェニル)、CH(4−(2−ピリジル)フェニル)を除外するという条件であるか、または、各RがHであり、Rが(1,2−ジヒドロシクロブタベンゼン)−1−イルであり、n=0である場合、R10は、H、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CHCH、(CH10CH、(CH11CHを除外するという条件であるか、または、式(II)は以下の化合物:メチル 2−(((2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)ピロリジン−2−イル)メチルカルバモイル)−1H−インドール−5−カルボキシレート(CAS # 876751−91−6)、および(R)−α−アミノ−N−[[(2R,3R,4R,5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)−2−ピロリジニル]メチル]−4−オキソ−1(4H)−ピリジンプロパンアミド(CAS # 876751−85−8)を除外するという条件である)。
【請求項5】
がHまたはC(O)CHである、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
前記非介在型置換基が、アルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニル、分岐状アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリールアルケニル、アリールアルキニルおよびヘテロアリールアルキニル(heteroarylalkylnyl)からなる群の1つまたは複数から選択され、そのそれぞれは、1つもしくは複数のヘテロ原子または追加の非介在型置換基で任意選択で置換されていてよい、請求項1から5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記非介在型置換基がP、O、S、N、F、Cl、Br、IおよびBから選択される1つまたは複数のヘテロ原子を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記非介在型置換基が任意選択で置換されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
表1に示す化合物の1つまたは複数を除外するという条件である、請求項1から8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
プロドラッグである、請求項1または4に記載の化合物。
【請求項11】
O−糖タンパク質2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシダーゼ(O−GlcNAcase)を選択的に阻害する、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
O−GlcNAcaseと選択的に結合する、請求項1から11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
2−アセトアミド−2−デオキシ−β−D−グルコピラノシド(O−GlcNAc)の切断を選択的に阻害する、請求項1から12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
前記O−GlcNAcaseが哺乳動物のO−GlcNAcaseである、請求項12に記載の化合物。
【請求項15】
哺乳動物のβ−ヘキソサミニダーゼを実質的には阻害しない、請求項1から14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の化合物を薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物。
【請求項17】
O−GlcNAcaseを選択的な阻害を必要とする被験体のO−GlcNAcaseを選択的に阻害する方法であって、該被験体に有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与するステップを含む方法であって、
【化19】

式中、
各Rは独立にHまたはC(O)Rであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであり;
各Rは任意選択で独立に非介在型置換基である、方法。
【請求項18】
O−GlcNAcのレベルを高めることを必要とする被験体のO−GlcNAcのレベルを高める方法であって、該被験体に有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法であって、
【化20】

式中、
各Rは独立にHまたはC(O)Rであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであり;
各Rは任意選択で独立に非介在型置換基である、方法。
【請求項19】
O−GlcNAcaseによって調節される状態の治療を必要とする被験体におけるO−GlcNAcaseによって調節される状態を処置する方法であって、該被験体に有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法であって、
【化21】

式中、
各Rは独立にHまたはC(O)Rであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであり;
各Rは任意選択で独立に非介在型置換基である、方法。
【請求項20】
前記状態が、炎症性疾患、アレルギー、ぜんそく、アレルギー性鼻炎、過敏性肺病、過敏性肺炎、好酸球性肺炎、遅延型過敏症、アテローム性動脈硬化症、間質性肺炎(ILD)、特発性肺線維症、関節リウマチ、全身性紅斑性狼瘡、強直性脊椎炎、全身性硬化症、シェーグレン症候群、多発性筋炎もしくは皮膚筋炎に伴うILD、全身性アナフィラキシーもしくは過敏性反応、薬物アレルギー、虫刺されアレルギー、自己免疫疾患、関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、全身性紅斑性狼瘡、重症筋無力症、糸球体腎炎、自己免疫性甲状腺炎、移植片拒絶反応、同種移植の拒絶反応、移植片対宿主疾患、炎症性腸炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、脊椎関節症、強皮症、乾癬、T細胞媒介乾癬、炎症性皮膚疾患、皮膚炎、湿疹、アトピー性皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、じんましん、血管炎、壊死性、皮膚性および過敏性血管炎、好酸球性筋炎、好酸球性筋膜炎、固形臓器移植拒絶反応、心臓移植拒絶反応、肺移植拒絶反応、肝臓移植拒絶反応、腎臓移植拒絶反応、膵臓移植拒絶反応、腎臓同種移植、肺同種移植、てんかん、疼痛、脳卒中、神経防護作用からなる群の1つまたは複数から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
神経変性疾患、タウオパシー癌およびストレスからなる群から選択される状態の治療を必要とする被験体における神経変性疾患、タウオパシー癌およびストレスからなる群から選択される状態を処置する方法であって、前記被験体に有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩を投与することを含む方法であって、
【化22】

式中、
各Rは独立にHまたはC(O)Rであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであり;
各Rは任意選択で独立に非介在型置換基である、方法。
【請求項22】
前記状態が、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、認識機能障害を有する筋萎縮性側索硬化症(ALSci)、嗜銀性グレイン認知症、ブルーイト病、大脳皮質基底核変性症(CBD)、ボクサー認知症、石灰化を伴うびまん性神経原線維変化病、ダウン症候群、家族性英国型認知症、家族性デンマーク型認知症、染色体17(FTDP−17)と関連したパーキンソニズムを伴う前頭側頭認知症、ゲルストマン−シュトロイスラー−シャインカー病、グアドループパーキンソニズム、ハレルフォルデン−スパッツ病(脳内の1型鉄蓄積を伴う神経変性)、多系統萎縮症、筋強直性ジストロフィー、ニーマン−ピック病(C型)、淡蒼球−橋脳−黒質退行変性、グアムのパーキンソン認知症複合、ピック病(PiD)、脳炎後パーキンソニズム(PEP)、プリオン病(クロイツフェルト−ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト−ヤコブ病(vCJD)、致死性家族性不眠症およびクールー病を含む)、進行性スーパーコルチカルグリオーシス、進行性核上麻痺(PSP)、リチャードソン症候群、亜急性硬化性全脳炎、神経原線維型認知症、ハンチントン病およびパーキンソン病からなる群の1つまたは複数から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記ストレスが心臓障害である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記心臓障害が、虚血;出血;血液量減少性ショック;心筋梗塞症;介入心臓学的手法;心臓バイパス術;線溶療法;血管形成術およびステント留置術からなる群の1つまたは複数から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
がHまたはC(O)CHである、請求項17から24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
がN(CHである、請求項17から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物が、表1に示す化合物の1つまたは複数からなる群から選択される、請求項17から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記投与が前記被験体のO−GlcNAcのレベルを増大させる、請求項17から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記被験体がヒトである、請求項17から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
医薬品の調製における、有効量の式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩の使用であって、
【化23】

式中、
各Rは独立にHまたはC(O)Rであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであり;
各Rは任意選択で独立に非介在型置換基である、使用。
【請求項31】
前記医薬品が、O−GlcNAcaseを選択的に阻害する、O−GlcNAcのレベル増大させる、O−GlcNAcaseによって調節される状態を処置する、あるいは、神経変性疾患、タウオパシー、癌またはストレスを処置するためのものである、請求項30に記載の使用。
【請求項32】
O−GlcNAcaseの選択的阻害剤をスクリーニングするための方法であって、
a)第1の試料を試験化合物と接触させるステップと;
b)第2の試料を、式(I)の化合物であって、
【化24】

式中、
各Rは独立にHまたはC(O)Rであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、C(O)R、C(NR)NRまたは任意選択で置換されたアルキル、分岐状アルキル、シクロアルキル、アルケニル、分岐状アルケニル、シクロアルケニル、アルキニルもしくは分岐状アルキニルであり;
は非介在型置換基であり;
は、H、OR、OC(O)R、NRC(O)R、NRまたは任意選択で置換されたアルキルであり;
各Rは任意選択で独立に非介在型置換基である、化合物
と接触させるステップと、
c)第1および第2の試料中のO−GlcNAcaseの阻害のレベルを測定するステップと
を含み、
該試験化合物が、式(I)の化合物と比較してO−GlcNAcaseの阻害と同等以上の阻害を示した場合、該試験化合物が該O−GlcNAcaseの選択的阻害剤である方法。

【公表番号】特表2012−502884(P2012−502884A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−526360(P2011−526360)
【出願日】平成21年9月16日(2009.9.16)
【国際出願番号】PCT/CA2009/001302
【国際公開番号】WO2010/037207
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(507293413)サイモン フレイザー ユニバーシティ (4)
【Fターム(参考)】