説明

避難地図表示装置および避難地図表示プログラム

【課題】災害状況に応じた迂回路の選択を支援し、ユーザが迅速に避難できるようにする。
【解決手段】避難地図表示装置4であって、定期的に当該避難地図表示装置4の現在位置を計測する位置計測手段70と、道路の通行止めに関する道路情報または災害情報を受信して記憶手段10、20に登録する登録手段40と、記憶手段10、20に登録された道路情報および災害情報と現在時刻とを比較し、通行止めとなっている場所が存在するか否かを判別する判別手段40と、通行止めとなっている場所が存在する場合、現在位置と、通行止めとなっている場所とを含む地図情報を地図情報記憶手段30から取得し、当該地図情報上に現在位置と通行止めとなっている場所とを設定した避難地図を生成する生成手段40と、避難地図を表示する表示手段50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、災害または工事により通行不可な場所を地図上に表示する避難地図表示装置および避難地図表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、大規模地震等の火災発生時においては、現住所付近または就労先付近で緊急に避難する広域避難場所が地域毎に決められており、被災者はあらかじめ決められた場所に避難する。また、居住場所が大きく損壊して居住の継続が不可能となった場合には、地域で指定されている避難所へ移動して居住できるようになっている。
【0003】
このような広域避難場所や避難所に関する情報は、自治体のWeb等で公開されている。また、広域避難場所や避難所までどのような経路で移動すれば、最短時間で避難できるかは、日常生活での避難訓練などを通じて習得することができる。非特許文献1では、状況適応的な避難ストラテジーを立案し、迅速な避難行動を遂行するための検討がなされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「日本災害情報学会 第11回研究発表大会 予稿集」、2009年10月24日・25日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大規模地震などによる災害発生時には、例えば、家屋倒壊や火事などが発生するため、平常時に習得した避難経路を移動(通行)できるとは限らない。あるいは、工事等の都合によって、避難経路に当たるルートが行き止まりになったっている可能性もある。このように、平常時に習得した非難経路を移動できなくなった場合には、自治体あるいは災害ボランティア団体等が把握している災害情報に基づき、それぞれの地域の災害状況に応じた迂回路を適切に選択する必要がある。
【0006】
しかしながら、地域の道路状況や災害状況などの情報は、災害が発生した後に取得しようと試みても、情報のアクセス先が分からなかったり、あるいは通信回線がダメージを受ける等、様々な理由によって迅速に目的とする情報に辿り着けるとは限らないという問題がある。
【0007】
また、一刻も早く避難しなければならない状況において、移動に必要な情報が入手できなければ被災する可能性が刻々と高まるとともに、心理的に大きな負担を強いられるという問題もある。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、災害状況に応じた迂回路の選択を支援し、ユーザが迅速に避難できるようにする避難地図表示装置および避難地図表示プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、避難地図表示装置であって、定期的に当該避難地図表示装置の現在位置を計測する位置計測手段と、工事による道路の通行止めに関する道路情報または災害による道路の通行止めに関する災害情報を受信し、記憶手段に登録する登録手段と、前記記憶手段に登録された道路情報および災害情報と現在時刻とを比較し、通行止めとなっている場所が存在するか否かを判別する判別手段と、通行止めとなっている場所が少なくとも1つ存在する場合、前記位置計測手段が取得した現在位置と、前記通行止めとなっている場所とを含む地図情報を地図情報記憶手段から取得し、当該地図情報上に現在位置と通行止めとなっている場所とを設定した避難地図を生成する生成手段と、前記避難地図を表示する表示手段と、を備える。
【0010】
本発明は、前記避難地図表示装置としてコンピュータを機能させるための避難地図表示プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、災害状況に応じた迂回路の選択を支援し、ユーザが迅速に避難できるようにする避難地図表示装置および避難地図表示プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る避難地図表示システムの全体構成図である。
【図2】避難地図表示装置の構成例である。
【図3】避難地図表示装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】道路情報および災害情報の一例を示す図である。
【図5】避難地図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係るシステムの全体構成図である。図示するシステムでは、避難地図表示装置4は、通信ネットワーク3を介して道路状況記録サーバ1と、災害状況記録サーバ2と接続されている。
【0015】
道路状況記録サーバ1は、例えば自治体等が運用するサーバであって、当該自治体が管轄する地域の道路工事に関する情報を管理し、記憶するとともに、当該情報を通信ネットワーク3を介して避難地図表示装置4に送信・配信する。災害状況記録サーバ2は、例えば災害ボランティア等が運用するサーバであって、当該災害ボランティアが把握している災害に関する情報を管理し、記憶するとともに、当該情報を通信ネットワーク3を介して避難地図表示装置4に送信・配信する。
【0016】
避難地図表示装置4は、過般型の情報端末であり、ユーザが携帯しているものとする。なお、図1では、1つの避難地図表示装置4を示しているが、避難地図表示装置4は複数あってもよい。
【0017】
図2は、避難地図表示装置4の構成例である。図示する避難地図表示装置4は、道路状況記憶部10と、災害状況記憶部20と、地図情報記憶部30と、制御部40と、ディスプレイ(表示装置)50と、タイマ60と、位置計測部70とを備える。
【0018】
道路状況記憶部10には、道路状況記録サーバ1から送信される、工事等による道路の通行止めに関する道路情報が記憶(登録)される。災害状況記憶部20には、災害状況記録サーバ2から送信される、災害にる道路の通行止めに関する災害情報が記憶(登録)される。なお、道路状況記憶部10の道路情報と、災害状況記憶部20の災害情報とを、1つの記憶部に記憶(登録)することとしてもよい。地図情報記憶部30には、あらかじめ全国の地図情報が記憶されているものとする。
【0019】
制御部40(登録手段、判別手段、生成手段)は、道路情報または災害情報を道路状況記録サーバ1または災害状況記録サーバ2から受信し、道路状況記憶部10または災害状況記憶部20に登録する。また、制御部40は、道路状況記憶部10または災害状況記憶部20に登録された道路情報および災害情報と現在時刻とを比較し、通行止めとなっている場所が存在するか否かを判別する。また、制御部40は、通行止めとなっている場所が少なくとも1つ存在する場合、位置計測部70が取得した現在位置と、通行止めとなっている場所とを含む地図情報を地図情報記憶部30から取得し、当該地図情報上に現在位置と通行止めとなっている場所とを設定した避難地図を生成する。
【0020】
ディスプレイ50は、制御部40の制御により、避難地図を表示する。タイマ60は、時刻を計測する。位置計測部70は、所定のタイミングで定期的に当該避難地図表示装置4の現在位置を計測する。例えば、位置計測部70は、GPS(Global Positioning System)を用いて位置情報(緯度、経度)を計測する。
【0021】
避難地図表示装置4は、例えば、CPUと、メモリと、HDD等の外部記憶装置と、入力装置と、出力装置とを備えた汎用的なコンピュータシステムを用いることができる。このコンピュータシステムにおいて、CPUがメモリ上にロードされた避難地図表示装置4用のプログラムを実行することにより、避難地図表示装置4の各機能が実現される。
【0022】
また、避難地図表示装置4用のプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク、CD−ROM、MO、DVD−ROMなどのコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶することも、ネットワークを介して配信することもできる。
【0023】
図3は、本実施形態の避難地図表示装置4の動作を示すフローチャートである。
【0024】
位置計測部70は、所定のタイミングで定期的に当該避難地図表示装置4の現在位置(緯度、経度)を計測し、計測した現在位置を図示しない記憶部に記憶し、更新する。したがって、記憶部には、避難地図表示装置4の最新の現在位置が記憶されている。
【0025】
そして、制御部40は、通信制御部90を用いて道路工事に関する道路情報、または、災害に関する災害情報を受信すると(S11:YES)、受信した道路情報または災害情報を対応する記憶部10、20に記憶・登録する(S12)。すなわち、道路情報を受信した場合は道路状況記憶部10に記憶し、災害情報を受信した場合は災害状況記憶部20に記憶する。なお、道路情報は、道路状況記録サーバ1から通信ネットワーク3を介して避難地図表示装置4に送信される。また、災害情報は、災害状況記録サーバ2から通信ネットワーク3を介して避難地図表示装置4に送信される。
【0026】
道路情報には、工事によるイベントが発生する(または発生した)時刻、道路状況(イベント)、イベント発生位置(場所、区間)などが含まれる。道路状況としては、例えば、「通行止め(工事)」、「通行止め解消」などがある。また、災害情報には、災害によるイベントが発生する(または発生した)時刻、災害状況(イベント)、イベント発生位置(場所、区間)などが含まれる。災害状況としては、例えば、「通行止め(倒壊)」、「通行止め(火災)」、「通行止め解消」などがある。本実施形態では、イベント発生位置として、緯度および経度を用いるものとする。
【0027】
そして、制御部40は、タイマ60から現在時刻を取得する(S13)。そして、制御部40は、道路状況記憶部10に記憶された各道路情報のイベント発生時刻とS13で取得した現在時刻とを比較し、現在も通行止めの場所(区間)が存在するか否かを判別する。また、制御部40は、災害状況記憶部20に記憶された各災害情報のイベント発生時刻とS13で取得した現在時刻とを比較し、現在も通行止めの場所(区間)が、少なくとも1つ存在するか否かを判別する(S14)。すなわち、通行止めの状況が、現在も継続しているか否かを判別する。
【0028】
図4は、S14の処理を説明するために、道路状況記憶部10に記憶された道路情報101と、災害状況記憶部20に記憶された災害情報102とを、時系列に1つの表で表わしたものである。制御部40は、道路状況記憶部10の道路情報101について、「通行止め(工事)」の道路情報のイベント発生位置と同じイベント発生位置の道路情報を検索し、図示する例では「状態解消」の道路情報を取得する。そして、制御部40は、現在時刻と、2つの道路情報のイベント発生時刻とを比較する。図示する例では、時刻「01.08.30」に通行止めが発生し、時刻「01.15.30」に通行止めが解消する。したがって、現在時刻が「01.08.30」〜「01.15.30」の間の場合、当該イベント発生位置では、通行止めの状態であると判別し、現在時刻が「01.15.30」以降の場合は、当該イベント発生位置では、通行止めの状態は解消していると判別する。
【0029】
また、制御部40は、災害状況記憶部20の各災害情報102について、例えば「通行止め(倒壊)」の災害情報のイベント発生位置と同じイベント発生位置の災害情報を検索し、図示する例では「状態解消」の災害情報は存在しないものとする。したがって、この場合は、通行止めの状態は解消していなく、制御部40は、現在時刻と、当該災害情報のイベント発生時刻とを比較し、現在時刻が「01.15.30」以降の場合は、当該イベント発生位置では、通行止めの状態であると判別する。
【0030】
通行止めの場所が存在しない場合(S14:NO)、制御部40は、S11に戻り以降の処理を繰り返し行う。一方、現時点において通行止めの場所が、少なくとも1つ存在する場合(S14:YES)、制御部40は、S14で通行止めの状態であると判別した道路情報および災害情報のイベント発生位置(緯度、経度)を参照し(S15)、位置計測部70が記憶部に記憶した現在位置と、当該イベント発生位置とを含む地図情報を地図情報記憶部30から取得する。そして、制御部40は、取得した地図情報上に現在位置とイベント発生位置(通行止めとなっている場所)とを設定した避難地図を生成する(S16)。例えば、制御部40は、現在位置を中心とした避難地図を生成することとしてもよい。
【0031】
そして、制御部40は、生成した避難地図をディスプレイ50に出力し、ディスプレイ50は、避難地図を表示する(S17)。図5は、ディスプレイ50に表示される避難地図200の一例を示すものである。図示する例では、通行止め(倒壊)と、通行止め(火災)と、現在位置とが避難地図200上に表示されている。
【0032】
以上説明した本実施形態では、道路状況記録サーバ1および災害状況記録サーバ2から配信される道路情報および災害情報に基づいて、現時点において通行止めとなっている場所(区間)が存在するか否かを判別し、通行止めとなっている場所を示す避難情報を生成し、表示する。
【0033】
これにより、本実施形態では、ユーザ(利用者)が、現在位置から近傍の避難所までに最適な移動経路を発案するにあたり、自治体または災害ボランティア団体等が把握している道路情報または災害情報に基づいて、それぞれの地域の災害状況に応じた迂回路を適切に選択できるようになるため、災害状況に応じた迅速な避難ができるようになり、被災する可能性を低く抑えることができる。すなわち、ユーザの災害状況に応じた迂回路の選択を支援し、ユーザが迅速に避難できるようにすることができる。また、ユーザの心理的な負担を軽減することができる。
【0034】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 :道路状況記録サーバ
2 :災害状況記録サーバ
3 :通信ネットワーク
4 :避難地図表示装置
10:道路状況記憶部
20:災害状況記憶部
30:地図状況記憶部
40:制御部
50:ディスプレイ
60:タイマ
70:位置計測部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
避難地図表示装置であって、
定期的に当該避難地図表示装置の現在位置を計測する位置計測手段と、
工事による道路の通行止めに関する道路情報または災害による道路の通行止めに関する災害情報を受信し、記憶手段に登録する登録手段と、
前記記憶手段に登録された道路情報および災害情報と現在時刻とを比較し、通行止めとなっている場所が存在するか否かを判別する判別手段と、
通行止めとなっている場所が少なくとも1つ存在する場合、前記位置計測手段が取得した現在位置と、前記通行止めとなっている場所とを含む地図情報を地図情報記憶手段から取得し、当該地図情報上に現在位置と通行止めとなっている場所とを設定した避難地図を生成する生成手段と、
前記避難地図を表示する表示手段と、を備えること
を特徴とする避難地図表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の避難地図表示装置であって、
前記道路情報および前記災害情報には時刻が含まれ、
前記判別手段は、
前記記憶手段に登録された通行止め解消の道路情報の時刻より前記現在時刻が後の場合は、当該道路情報の通行止めは解消したと判別し、通行止め解消の道路情報の時刻より前記現在時刻が前の場合または通行止め解消の道路情報が前記記憶手段に登録されていない場合、当該道路情報の通行止めの場所は存在すると判別するとともに、
前記記憶手段に登録された通行止め解消の災害情報の時刻より前記現在時刻が後の場合は、当該災害情報の通行止めは解消したと判別し、通行止め解消の災害情報の時刻より前記現在時刻が前の場合または通行止め解消の災害情報が前記記憶手段に登録されていない場合、当該災害情報の通行止めの場所は存在すると判別すること
を特徴とする避難地図表示装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の避難地図表示装置としてコンピュータを機能させるための避難地図表示プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−88600(P2012−88600A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236302(P2010−236302)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】