説明

部品位置決め方法および部品位置決め用治具

【課題】所定の位置に対する部品の位置決めについて、装置構成の大型化や複雑化を招くことなく、十分な部品位置保持力および部品位置精度を得ることができる部品位置決め方法を提供する。
【解決手段】所定の位置に対する位置決め対象である部品(ワーク1)を、ロボット10に支持された状態で所定の範囲内で移動可能に設けられる移動治具(部品基準治具20)に固定した状態で支持し、部品基準治具20を移動させることにより、ワーク1の位置決めを行う部品位置決め方法であって、前記所定の位置に対して固定された状態で設けられる固定治具(サポート治具30)を用い、部品基準治具20およびサポート治具30のそれぞれに、互いに嵌合した状態で部品基準治具20をサポート治具30に対して所定の精度で位置決めする嵌合部(位置決めピン25、位置決め穴部35)を設け、これら嵌合部同士が嵌合した状態で、ワーク1の位置決めを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品の溶接や機械加工や組立て等の作業時等に、部品を所定の位置に位置決めするための部品位置決め方法および部品位置決め用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車部品等の製作工程において、部品の溶接や機械加工や組立て等の作業のために、部品が所定の位置に位置決めされた状態で、溶接等の作業が行われるシステムが用いられている。かかるシステムにおいては、例えば、ロボットによる自動作業等によって溶接等の加工を受ける部品が、所定の位置に位置決めされる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1には、組立工程等において部品(ワーク)を所定の位置に位置決め固定するための構成として、複数のアーム等からなる移動手段によって三次元方向に移動自在とされる位置決め手段と固定手段とを備える構成が開示されている。ここで、位置決め手段は、ワークに設けられた位置決め部に係合して、ワークを所定位置に位置決めし、固定手段は、ワークに設けられた固定部でワークを支持するとともに、ワークを所定位置に固定する。
【0004】
また、従来、多種類の部品の製作工程において、部品を所定の位置に位置決めするための構成として、次のような構成(以下「従来構成」という。)が用いられている。すなわち、図9に示すように、従来構成においては、位置決めされる部品としてのワーク101が、ロボット110により支持された状態で所定の位置に位置決めされる。つまり、従来構成では、ロボット110の先端部において支持固定されたワーク101が、ロボット110によって溶接等の加工を受ける所定の位置まで運ばれて位置決めされる。
【0005】
具体的には、ワーク101は、部品基準治具120を介してロボット110により支持される。図9では、ワーク101は、所定の形状を有する板状の部材である。ロボット110は、複数のアームを有するいわゆるロボットアームとして構成される。ロボット110の先端部に、部品基準治具120が設けられる。部品基準治具120は、ロボット110の動作により、三次元方向に自在に(相当程度の自由度をもって)移動可能とされる。
【0006】
部品基準治具120は、ワーク101を支持するための支持面121を有する。部品基準治具120は、支持面121に対して、ワーク101を位置決めした状態で固定する。支持面121には、ワーク101を部品基準治具120に対して位置決めするためのピン状の位置決め突部122が設けられる。これに対し、ワーク101には、孔部101aが設けられる。つまり、位置決め突部122が孔部101aに挿入されることにより、ワーク101が支持面121上において部品基準治具120に対して位置決めされる。支持面121上において位置決めされた状態のワーク101は、クランプ機構等の固定手段(図示略)により、部品基準治具120に対して固定される。
【0007】
このような構成により、ロボット110の動作によって部品基準治具120が移動させられることで、部品基準治具120に対して位置決めされた状態で固定されたワーク101が、所定の位置に位置決めされる。ここで、ロボット110は、例えば部品基準治具120に設けられるいわゆるツールセンターポイント(TCP)等の位置基準を用いることにより、部品基準治具120を、ワーク101が位置決めされる所定の位置に対応する位置に位置決めする。そして、停止した状態のロボット110によって所定の位置に位置決めされたワーク101に対して、溶接等の作業が行われる。
【0008】
このような従来構成によれば、ロボット110の可動範囲内であればどこでも(高い自由度で)部品基準治具120を配置することができる。つまり、例えば部品の種類等によってワーク101が位置決めされる所定の位置が異なる場合、その異なる複数の所定の位置に対して、ロボット110の可動範囲内で柔軟に対応することができる。このため、ロボット110によるワーク101の位置決めのための設備について高い汎用性が得られる。
【0009】
ところで、所定の位置に対する部品の位置決めについては、部品が位置決めされた状態を保持する力(部品位置保持力)が必要とされる。つまり、部品位置保持力は、位置決めされた部品が加工等を受けることで部品に作用する力に抗して、部品の位置を保持する力である。部品位置保持力は、例えば、位置決めされた部品が溶接を受ける場合は、溶接による部品の変形にともなって生じる力等に対抗する力であり、位置決めされた部品が機械加工を受ける場合は、その機械加工時に部品に作用する力等に対抗する力である。
【0010】
また、所定の位置に対する部品の位置決めについては、位置決めされた状態の部品に対して行われる作業の種類等に応じて、相当程度の精度(部品位置精度)が要求される。例えば、位置決めされた状態の部品に対してアーク溶接が行われる場合、百分の数mm程度の誤差範囲(バラツキ)の部品位置精度が要求されることがある。
【0011】
このような所定の位置に対する部品の位置決めについての部品位置保持力および部品位置精度について、前述したような従来構成(図9参照)では、次のような問題がある。すなわち、従来構成においては、部品位置保持力が、ロボット110の停止状態(ワーク101の位置決め状態)において、前記のとおり部品基準治具120等に設けられる位置基準に作用する負荷に対するロボット110の剛性(支持剛性)に依存する。つまり、位置決めされた状態のワーク101の支持が、ロボット110のみによって行われる。このため、従来構成では、部品位置保持力が弱く、十分な部品位置保持力が得られない場合がある。従来構成において十分な部品位置保持力を得るために、ロボット110の剛性を高くすることが考えられる。しかし、ロボット110の高剛性化を図ることは、装置構成の大型化や複雑化を招く原因となる。
【0012】
また、従来構成においては、部品位置精度が、ロボット110の動作についての繰り返し精度に依存する。つまり、ロボット110の動作によって、異なる複数の停止位置の間におけるワーク101の移動が繰り返し行われる場合、各停止位置に対する位置精度が、所定の誤差範囲内でばらつく。このため、従来構成では、部品位置精度がわるく、十分な部品位置精度が得られない場合がある。具体的には、従来構成では、部品位置精度が、例えば±0.2mm以上の誤差範囲となる。
【0013】
以上のように、従来構成においては、部品位置保持力および部品位置精度の面で問題がある。このため、従来構成は、部品に対する溶接等の作業中に、大きな部品位置保持力が必要とされる部品や、高い部品位置精度が要求される部品の位置決めには不向きである。
【特許文献1】特開平6−304788号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、所定の位置に対する部品の位置決めについて、装置構成の大型化や複雑化を招くことなく、十分な部品位置保持力および部品位置精度を得ることができる部品位置決め方法および部品位置決め用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0016】
すなわち、請求項1においては、所定の位置に対する位置決め対象である部品を、ロボットに支持された状態で所定の範囲内で移動可能に設けられる移動治具に固定した状態で支持し、前記移動治具を移動させることにより、前記部品の位置決めを行う部品位置決め方法であって、前記部品が位置決めされる前記所定の位置に対して固定された状態で設けられる固定治具を用い、前記移動治具および前記固定治具のそれぞれに、互いに嵌合した状態で前記移動治具を前記固定治具に対して所定の精度で位置決めする嵌合部を設け、前記嵌合部同士が嵌合した状態で、前記部品の位置決めを行うものである。
【0017】
請求項2においては、前記嵌合部のうち、前記移動治具に設けられる前記嵌合部、および前記固定治具に設けられる前記嵌合部の少なくとも一方の前記嵌合部を、複数の前記所定の位置に対応させて複数設けるものである。
【0018】
請求項3においては、前記固定治具に、前記嵌合部同士が嵌合した状態で、前記移動治具を前記固定治具に固定するためのクランプ機構を設けるものである。
【0019】
請求項4においては、所定の位置に対する位置決め対象である部品の位置決めを行うための部品位置決め用治具であって、ロボットに支持された状態で所定の範囲内で移動可能に設けられ、前記部品を固定した状態で支持する移動治具と、前記移動治具の移動により前記部品が位置決めされる前記所定の位置に対して固定された状態で設けられる固定治具と、を備え、前記移動治具および前記固定治具は、互いに嵌合した状態で前記移動治具を前記固定治具に対して所定の精度で位置決めする嵌合部を有し、前記嵌合部同士が嵌合した状態で、前記部品の位置決めを行うものである。
【0020】
請求項5においては、前記移動治具および前記固定治具の少なくとも一方は、前記嵌合部を、複数の前記所定の位置に対応して複数有するものである。
【0021】
請求項6においては、前記固定治具は、前記嵌合部同士が嵌合した状態で、前記移動治具を前記固定治具に固定するためのクランプ機構を有するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、所定の位置に対する部品の位置決めについて、装置構成の大型化や複雑化を招くことなく、十分な部品位置保持力および部品位置精度を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は、位置決めされる部品がロボットにより支持された状態で所定の位置に位置決めされる構成において、ロボットに部品を支持するための移動治具に対して、ロボットとは別の位置において固定された状態で設けられる固定治具を設け、この固定治具に対して移動治具を位置決めさせることで、ロボットによる部品の支持および位置決め精度をサポートしようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0024】
図1に示すように、本実施形態では、位置決めされる部品としてのワーク1が、ロボット10に支持された状態で所定の位置に位置決めされる。つまり、ロボット10の先端部において支持固定されたワーク1が、ロボット10によって所定の位置まで運ばれて位置決めされる。
【0025】
ここで、ワーク1が位置決めされる所定の位置(以下「ワーク基準位置」という。)は、例えば、ワーク1に対する他の部品の溶接(アーク溶接等)や、ワーク1に対する機械加工や、ワーク1に対する他の部品の組立て等の、ワーク1に対する所定の作業が行われるに際し、ワーク1について規定される位置である。つまり、ワーク1は、ロボット10の動作によってワーク基準位置に位置決めされ、ロボット10に支持された状態で、例えば他のロボット(ロボット10以外のロボット)による自動作業による溶接等の加工を受ける。
【0026】
ワーク1は、部品基準治具20を介してロボット10により支持される。本実施形態では、ワーク1は、所定の形状を有する板状の部材である。部品基準治具20は、ロボット10の先端部に設けられる。部品基準治具20は、ロボット10の動作により、三次元方向に自在に(相当程度の自由度をもって、以下同じ)移動可能とされる。
【0027】
ロボット10は、複数のアームを有するいわゆるロボットアーム(多関節ロボット)として構成される。本実施形態では、ロボット10は、複数のアームとして、ロボット10の基部側から先端側にかけて、第一アーム11、第二アーム12、および第三アーム13を有する。これらの複数のアームは、例えば互いの端部同士がモータ等の駆動源によって回動可能に連結されること等により、多関節ロボットを構成する。
【0028】
ロボット10において、第一アーム11、第二アーム12、および第三アーム13を有する構成であるロボットアーム部は、基部10aにより支持される。すなわち、図1に示すように、ロボットアーム部の基部側の端部(第一アーム11の一端部)は、基部10aに連結される。基部10aは、ロボット10が配置される床面2に対して固定された状態で設けられる。
【0029】
本実施形態のロボット10は、基部10aを基点部として、様々な位置および角度に姿勢制御され得るフレキシブルなロボットアームとして構成される。そして、ロボット10においては、ロボットアーム部の先端部(第三アーム13の先端部)に、部品基準治具20が設けられる。かかる構成により、部品基準治具20が、ロボット10の動作により、三次元方向に自在に移動可能とされる。
【0030】
部品基準治具20は、ワーク1を支持するための支持面21を有する。部品基準治具20は、支持面21に対して、ワーク1を位置決めした状態で固定する。支持面21には、ワーク1を部品基準治具20に対して位置決めするための位置決め突部22が設けられる。位置決め突部22は、支持面21において突出形成されるピン状の部分である。位置決め突部22に対し、ワーク1には、孔部1aが設けられる。つまり、位置決め突部22が孔部1aに挿入されることにより、ワーク1が支持面21上において部品基準治具20に対して位置決めされる。支持面21上において位置決めされた状態のワーク1は、クランプ機構等の固定手段(図示略)により、部品基準治具20に対して固定される。
【0031】
なお、部品基準治具20に対してワーク1を位置決めおよび固定するための構成は、本実施形態に限定されない。部品基準治具20に対するワーク1の位置決めおよび固定に際しては、前述したような位置決め突部22等の代わりに、あるいはこれに加えて、例えば、マグネットによる磁力やエア吸引による吸引力等が用いられてもよい。
【0032】
ロボット10の動作は、所定の動作プログラムに基づいて制御される。ロボット10の動作の制御においては、ロボット10の位置基準(ロボット10に設定される座標系の基準点)として、いわゆるツールセンターポイント(TCP)が設定される。TCPが設定される位置は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、TCPは、例えば部品基準治具20において位置決め突部22の基部に設定される(図1中、点C参照)。つまり、TCPは、ロボット10に対して部品基準治具20を介して位置決めされた状態で支持固定されるワーク1についての基準位置となる。
【0033】
このように設定されるTCPの位置が認識されることによって、ロボット10の位置(姿勢)が認識されながら、所定の動作プログラムに基づいてロボット10の動作が制御される。ここで、ロボット10の動作の制御は、ロボット10の動作プログラムについてあらかじめ教示されたティーチングデータ等に基づいて行われる。このようにして制御されるロボット10の動作により、ロボット10の先端部に設けられる部品基準治具20の位置が制御され、部品基準治具20に固定されるワーク1がワーク基準位置に対して位置決めされる。
【0034】
このように、本実施形態に係る部品位置決め方法は、ワーク基準位置に対する位置決め対象であるワーク1を、ロボット10に支持された状態で所定の範囲内で移動可能に設けられる部品基準治具20に固定した状態で支持し、部品基準治具20を移動させることにより、ワーク1の位置決めを行うものである。すなわち、本実施形態では、部品基準治具20が、ロボット10に支持された状態で所定の範囲内で移動可能に設けられ、ワーク1を固定した状態で支持する移動治具として機能する。
【0035】
また、本実施形態では、ロボット10が、部品基準治具20を支持するとともに部品基準治具20を所定の範囲内で移動可能とする移動手段として機能する。なお、ロボット10の構成は、本実施形態に限定されない。部品基準治具20を支持するとともに移動させる移動手段であるロボットとしては、部品基準治具20を三次元方向に自在に移動可能とする構成を備えるものであれば、一般的な産業用ロボット等、周知の構成のものが適宜用いられる。
【0036】
そして、本実施形態に係る部品位置決め方法においては、ロボット10の動作によって移動する部品基準治具20に支持固定されるワーク1が位置決めされるワーク基準位置に対して、所定の位置関係にて固定された状態で設けられるサポート治具30が用いられる。すなわち、本実施形態では、サポート治具30が、部品基準治具20の移動によりワーク基準位置に対して固定された状態で設けられる固定治具として機能する。つまり、サポート治具30は、部品基準治具20を介してワーク1の位置決めがなされるワーク基準位置との関係において固定された状態で設けられる。
【0037】
このように、本実施形態に係る部品位置決め用治具は、ワーク基準位置に対するワーク1の位置決めを行うためのものであり、部品基準治具20と、サポート治具30とを備える。
【0038】
部品基準治具20は、基部23を有する。本実施形態では、基部23は、略直方体状(厚板状)の外形を有する。基部23は、連結部24を介してロボット10に連結される。基部23は、ロボット10に対して一側(図1において下側)の板面側から連結部24によって連結される。連結部24は、第三アーム13の先端部に設けられる。つまり、部品基準治具20は、第三アーム13の先端部に設けられる連結部24によって基部23が支持される構成により、ロボット10におけるロボットアーム部の先端部(第三アーム13の先端部)に設けられる。また、部品基準治具20においては、基部23の他側(連結部24側と反対側、図1において上側)の板面側に、前記のとおりワーク1を支持するための支持面21が形成される。
【0039】
部品基準治具20において、基部23は、ロボット10に対して、板面に対して略垂直方向(図1において上下方向)を回転軸方向として回動可能に支持される。つまり、ロボット10は、ロボットアーム部の先端部に回動可能な手首軸を有し、この手首軸により、基部23が回動可能に支持される。このように、本実施形態では、部品基準治具20は、ロボット10の動作による移動に加えて所定の回転軸(ロボット10の手首軸)による回動が可能に設けられる。
【0040】
サポート治具30は、治具本体31と、この治具本体31を支持する支持部32とを有する。本実施形態では、治具本体31は、略直方体状の外形を有する。支持部32は、床面2に立設される柱状の部分であり、床面2に対して治具本体31を支持する。
【0041】
また、サポート治具30は、前記のとおり部品基準治具20の移動によりワーク基準位置に対して固定された状態で設けられる。すなわち、ワーク基準位置は、例えば、床面2との関係において、床面2上における所定の位置を基準とする三次元座標で定まる。したがって、この場合、サポート治具30は、床面2との関係において固定された状態で設けられることにより、ワーク基準位置との関係において固定された状態となる。言い換えると、サポート治具30は、ワーク基準位置に対する相対的な位置が一定の状態で設けられる。
【0042】
したがって、本実施形態では、サポート治具30において、支持部32が床面2に対して固定された状態で設けられるとともに、治具本体31が支持部32に対して固定された状態で設けられることにより、サポート治具30が床面2に対して固定された状態で設けられる。これに対し、部品基準治具20は、前記のとおり床面2に固定された状態で設けられる基部10aを基点部として動作するロボット10により、三次元方向に自在に移動可能に設けられる。
【0043】
なお、ここでは、ワーク基準位置に対して固定された状態で設けられるサポート治具30について、床面2との関係を例に説明したが、床面2はワーク基準位置を規定する他のもの(部分)に代えることができる。つまり、サポート治具30は、ワーク基準位置との相対的な位置関係が一定の状態(ワーク基準位置との関係において固定された状態)で設けられる。
【0044】
このように、本実施形態の治具は、ワーク基準位置に対して固定された状態で設けられるサポート治具30に対して、移動可能な部品基準治具20が位置決めされるように構成されている。これにより、ロボット10によって位置決めされた状態のワーク1の支持および位置決め精度がサポートされる。ここで、サポート治具30に対する部品基準治具20の位置決めには、部品基準治具20とサポート治具30との一部同士の嵌合作用が用いられる。
【0045】
すなわち、本実施形態の部品位置決め方法においては、部品基準治具20およびサポート治具30のそれぞれに、互いに嵌合した状態で部品基準治具20をサポート治具30に対して所定の精度で位置決めする嵌合部が設けられる。そして、これら嵌合部同士が嵌合した状態で、ワーク1の位置決めが行われる。
【0046】
具体的には、図1〜図3に示すように、部品基準治具20は、ワーク1の位置決めを行うための嵌合部(以下「位置決め嵌合部」という。)として、位置決めピン25を有する。位置決めピン25は、部品基準治具20において、基部23の側面から支持面21に略平行な方向に突出するように設けられる。位置決めピン25は、断面形状が円形あるいは多角形の棒状の部分である。このように、部品基準治具20において設けられる位置決めピン25は、位置決め嵌合部として嵌合突部を形成する部分である。
【0047】
部品基準治具20の位置決めピン25に対し、サポート治具30は、位置決め嵌合部として、位置決め穴部35を有する。位置決め穴部35は、位置決めピン25が挿入される穴部である。したがって、位置決め穴部35は、位置決めピン25の断面形状に対応する形状を有する。位置決め穴部35は、サポート治具30において、治具本体31の一側面に開口するように形成される。このように、サポート治具30において設けられる位置決め穴部35は、位置決め嵌合部として嵌合凹部を形成する部分である。
【0048】
そして、部品基準治具20が有する位置決めピン25が、サポート治具30において形成される位置決め穴部35に挿入されることで、部品基準治具20およびサポート治具30のそれぞれが有する嵌合部同士、つまり位置決めピン25と位置決め穴部35(治具本体31)とが嵌合した状態となる。したがって、本実施形態では、位置決めピン25が位置決め穴部35に差し込まれた状態が、部品基準治具20およびサポート治具30のそれぞれが有する嵌合部同士が嵌合した状態となる。
【0049】
本実施形態では、位置決めピン25と位置決め穴部35の嵌合方向、つまり位置決めピン25の位置決め穴部35に対する挿入方向は、略水平方向(床面2に対して略平行な方向)である。言い換えると、治具本体31が有する位置決め穴部35は、略水平方向(床面2に対して略平行な方向)に形成される。したがって、本実施形態では、前記のとおり支持面21に略平行な方向に突出する位置決めピン25が位置決め穴部35に差し込まれた状態においては、ワーク1を支持する支持面21は、略水平方向(床面2に対して略平行な方向)となる。
【0050】
位置決めピン25および位置決め穴部35は、互いに嵌合した状態で部品基準治具20をサポート治具30に対して所定の精度で位置決めする。ここで、部品基準治具20のサポート治具30に対する位置決め(以下「治具位置決め」という。)についての精度は、位置決め穴部35の径(穴径)と位置決めピン25の径(ピン径)との差(穴径−ピン径)による。そして、治具位置決めについての所定の精度は、ロボット10の動作についての位置精度の誤差範囲(バラツキ)に対して十分に小さい誤差範囲である。具体的には、例えば、ロボット10の動作についての位置精度の誤差範囲が±0.2mm程度である場合、治具位置決めについての所定の精度(穴径−ピン径)は、0.05mm程度に設定される。
【0051】
位置決めピン25と位置決め穴部35とは、ロボット10の動作によって嵌合する。つまり、部品基準治具20がロボット10によって移動させられることにより、位置決めピン25が、固定された状態の治具本体31の位置決め穴部35に差し込まれる。このように、位置決めピン25と位置決め穴部35とが嵌合した状態で、ワーク1の位置決め(ワーク基準位置に対する位置決め)が行われる。
【0052】
ここで、ワーク1の位置決め状態に対応する、位置決めピン25と位置決め穴部35との嵌合状態としては、例えば、位置決めピン25の先端が位置決め穴部35の底部に当接した状態等、位置決めピン25の挿入方向への移動が規制されることで位置決めピン25の位置決め穴部35に対する挿入が完了した状態が用いられる。そして、位置決めピン25と位置決め穴部35との嵌合状態となることでワーク基準位置に位置決めされたワーク1に対して、溶接等の作業が行われる。
【0053】
したがって、位置決めピン25および位置決め穴部35は、互いに嵌合した状態で、ワーク1がワーク基準位置に位置するように(TCPがワーク基準位置に対応する位置に位置するように)設けられる。つまり、位置決めピン25および位置決め穴部35が設けられる位置や、位置決めピン25の形状・寸法や、位置決め穴部35の深さ等は、ワーク基準位置に合わせて設計される。
【0054】
ここで、位置決めピン25が位置決め穴部35に挿入された状態での部品基準治具20の位置は、例えば位置決めピン25の形状によって適宜設定される。したがって、位置決めピン25としては、一直線状に限らず、例えば図3において右側の位置決めピン25(25e)のように、屈曲形成された棒状の部分であってもよい。また、位置決め穴部35の位置は、治具本体31において位置決め穴部35が形成される位置や、治具本体31を支持する支持部32の高さ等によって適宜設定される。
【0055】
また、ロボット10の動作による位置決めピン25の位置決め穴部35に対する挿入に際しては、位置決めピン25の先端部は、位置決め穴部35に対する挿入が容易となる形状とされる。具体的には、例えば、図4に示すように、位置決めピン25の先端部に、テーパ部25tが形成される。テーパ部25tは、位置決めピン25の先端側にかけて縮径するテーパ形状の部分である。
【0056】
このように、位置決めピン25においてテーパ部25tが形成されることで、位置決めピン25の位置決め穴部35への挿入に際し、ロボット10の動作による位置決めピン25の位置決め穴部35に対する位置ズレが許容され、挿入が容易となる。なお、位置決めピン25の位置決め穴部35に対する挿入が容易となる形状は、テーパ部25tのようなテーパ形状に限定されない。
【0057】
また、位置決めピン25および位置決め穴部35については、互いに嵌合した状態で、ワーク基準位置に位置決めされた状態のワーク1が加工等を受けることに対して、十分な支持剛性が得られるように、形状(ピン径等)や材料等が設定される。位置決めピン25、および位置決め穴部35を形成する治具本体31を構成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えば鉄系の金属等、前記のような支持剛性が得られ、前述したような治具位置決めについての所定の精度を得るための加工が容易なものが採用される。
【0058】
以上のように、本実施形態の部品位置決め用治具においては、部品基準治具20およびサポート治具30は、互いに嵌合した状態で部品基準治具20をサポート治具30に対して所定の精度で位置決めする嵌合部(位置決め嵌合部)として、位置決めピン25および位置決め穴部35を有する。そして、部品位置決め用治具は、位置決めピン25と位置決め穴部35とが嵌合した状態で、ワーク1の位置決めを行う。
【0059】
なお、本実施形態では、位置決め嵌合部について、部品基準治具20側に設けられる嵌合部(位置決めピン25)が嵌合突部であり、サポート治具30側に設けられる嵌合部(位置決め穴部35)が嵌合凹部であるが、逆であってもよい。つまり、位置決め嵌合部としては、部品基準治具20側に位置決め穴部35のような嵌合凹部が設けられ、サポート治具30側に位置決めピン25のような嵌合突部が設けられてもよい。
【0060】
すなわち、位置決め嵌合部についての嵌合形状は、特に限定されない。位置決め嵌合部についての嵌合形状としては、ロボット10の動作による部品基準治具20の移動によって、部品基準治具20およびサポート治具30のそれぞれに設けられる嵌合部同士の嵌合およびその解除ができるような嵌合作用が得られる形状であればよい。
【0061】
また、位置決めピン25と位置決め穴部35との嵌合方向(位置決めピン25の位置決め穴部35に対する挿入方向)は、特に限定されない。位置決めピン25と位置決め穴部35との嵌合方向としては、本実施形態のような略水平方向のほか、例えば下方向等であってもよい。
【0062】
以上のような本実施形態の部品位置決め方法および部品位置決め用治具によれば、ワーク基準位置に対するワーク1の位置決めについて、装置構成の大型化や複雑化を招くことなく、十分な部品位置保持力(ワーク1が位置決めされた状態を保持する力)および部品位置精度(ワーク1のワーク基準位置に対する位置決め精度)を得ることができる。
【0063】
すなわち、本実施形態の構成においては、部品位置保持力が、治具構造に依存する。つまり、部品位置保持力が、部品基準治具20に設定されるTCPに作用する負荷に対する治具の剛性、詳しくは位置決めピン25と位置決め穴部35とが互いに嵌合した状態の部品基準治具20およびサポート治具30の剛性(支持剛性)に依存する。このため、本実施形態の構成では、従来構成のように部品位置保持力がロボットの剛性に依存する場合との比較において、部品位置保持力が強く、十分な部品位置保持力が得られる。
【0064】
また、本実施形態の構成においては、部品位置精度が、治具位置決めについての所定の精度に依存する。つまり、部品位置精度が、位置決め穴部35の径(穴径)と位置決めピン25の径(ピン径)との差(穴径−ピン径)に依存する。このため、本実施形態の構成では、従来構成のように部品位置精度がロボットの繰り返し精度に依存する場合との比較において、部品位置精度がよく、十分な部品位置精度が得られる。
【0065】
このように、本実施形態の構成は、従来構成に対して簡易な構成の治具を追加することで、装置構成の大型化や複雑化を招くことなく、部品位置保持力が強く、部品位置精度がよいワーク1の位置決めを実現するものである。なお、本実施形態の構成によれば、例えば、強い部品位置保持力や高い部品位置精度が必要とされない場合等においては、ロボット10単体で(サポート治具30を用いることなく)ワーク1の位置決めを行うことも可能である。
【0066】
また、本実施形態の部品位置決め方法においては、位置決め嵌合部のうち、部品基準治具20に設けられる嵌合部である位置決めピン25が、複数のワーク基準位置に対応して複数設けられている。つまり、本実施形態の部品位置決め用治具においては、部品基準治具20は、位置決めピン25を、複数のワーク基準位置に対応して複数有する。
【0067】
本実施形態では、図2および図3に示すように、部品基準治具20において、位置決めピン25が四本設けられている。具体的には、部品基準治具20において、基部23の四つの側面のそれぞれに一本の位置決めピン25が設けられることにより、四本の位置決めピン25が設けられる。したがって、図2に示すように、部品基準治具20に設けられる四本の位置決めピン25は、四方に向けて突出する。
【0068】
四本の位置決めピン25は、治具本体31に嵌合した状態のTCPの位置が、各位置決めピン25で互いに異なるように設けられる。そして、その各位置決めピン25が治具本体31に嵌合した状態でのTCPの位置は、それぞれ異なる四つのワーク基準位置に対応する。つまり、四つの位置決めピン25については、四つの異なるワーク基準位置に対応して、基部23において設けられる位置や形状や寸法が設定される。言い換えると、四本の位置決めピン25のうち、位置決め穴部35に対する嵌合に用いられる位置決めピン25によって、四つの異なるワーク基準位置に対してワーク1が位置決めされる。
【0069】
このように、部品基準治具20において複数設けられる位置決めピン25は、次のようにして用いられる。ここで、部品基準治具20が有する四本の位置決めピン25を区別するため、便宜上、図5および図6に示すように、四本の位置決めピン25それぞれについて、25A、25B、25C、および25Dの符号を付す。
【0070】
図5は、四本の位置決めピン25のうち、位置決めピン25Bが用いられることで、ワーク1のワーク基準位置に対する位置決めが行われる状態を示している。つまり、図5においては、四本の位置決めピン25のうちの位置決めピン25Bが位置決め穴部35に差し込まれることで、治具位置決め、つまりワーク1の位置決めが行われる状態が示されている。
【0071】
これに対し、図6は、ワーク1の位置決めに、四本の位置決めピン25のうち、位置決めピン25Bと反対側(基部23における反対側の側面)に設けられる位置決めピン25Dが用いられる状態を示している。つまり、かかる状態では、四本の位置決めピン25のうちの位置決めピン25Dが位置決め穴部35に差し込まれることで、ワーク1の位置決めが行われる。
【0072】
位置決めピン25Bによる位置決め状態(図5)から、位置決めピン25Dによる位置決め状態(図6)への位置決め状態の変更は、次のようにして行われる。すなわち、図5に示す位置決めピン25Bによる位置決め状態において、ロボット10の動作により、位置決めピン25Bが位置決め穴部35から引き抜かれる。そして、前述したようなロボット10の手首軸の回動による基部23の回動、およびロボット10のロボットアーム部の動作により、基部23の位置および姿勢が変えられるとともに位置決めピン25Dが位置決め穴部35に差し込まれる。ここでは、位置決めピン25Dは、位置決めピン25Bに対して反対側に設けられることから、基部23は、ロボット10の手首軸の回動によって約180°回転させられる。
【0073】
このように、位置決めピン25Bによる位置決め状態(図5)から位置決めピン25Dによる位置決め状態(図6)へ位置決め状態が変更されることで、部品基準治具20において設定されるTCPの位置が、点C1から点C2に移動する。つまり、これらの各位置決め状態によれば、各TCPの位置(点C1、点C2)に対応するワーク基準位置にワーク1が位置決めされる。同様に、他の位置決めピン25Aおよび位置決めピン25Cが用いられることで、それぞれ異なるワーク基準位置に対応することができる。なお、図5および図6においては、便宜上、ワーク1の図示を省略している。
【0074】
このように、位置決めピン25が複数のワーク基準位置に対応して複数設けられることで、複数のワーク基準位置に対し、一つのサポート治具30で対応することが可能となる。これにより、複数種類のワーク1に対する汎用性が向上する。本実施形態では、一つのサポート治具30で、四つのワーク基準位置に対応することができる。複数のワーク基準位置は、例えば、ワーク1が自動車部品であって、異なる車種間でワーク1に対応する部品の形状や寸法が異なる場合に必要とされる。
【0075】
なお、本実施形態では、位置決め嵌合部の構成として、一つのサポート治具30(位置決め穴部35)に対して、複数の位置決めピン25が設けられる構成が採用されているが、サポート治具30側が複数設けられてもよい。この場合、例えば図7に示すような態様となる。
【0076】
図7は、部品基準治具20において一本の位置決めピン25が設けられるのに対し、位置決め穴部35、つまりサポート治具30において位置決め穴部35を形成する治具本体31が、三箇所に設けられる場合の態様を示している。かかる態様では、位置決めピン25が差し込まれる位置決め穴部35として、位置決め穴部35A(図7において右側のサポート治具30)が用いられる場合と、位置決め穴部35B(同図上側のサポート治具30)が用いられる場合と、位置決め穴部35C(同図左側のサポート治具30)が用いられる場合との各場合で、それぞれ異なるワーク基準位置に対応することができる。
【0077】
また、位置決め嵌合部の構成としては、位置決めピン25および位置決め穴部35のいずれもが複数設けられる構成であってもよい。すなわち、本実施形態の部品位置決め方法においては、位置決め嵌合部のうち、部品基準治具20に設けられる嵌合部である位置決めピン25、およびサポート治具30に設けられる嵌合部である位置決め穴部35の少なくとも一方の嵌合部が、複数のワーク基準位置に対応して複数設けられる。つまり、本実施形態の部品位置決め用治具においては、部品基準治具20およびサポート治具30の少なくとも一方は、位置決めピン25または位置決め穴部35を、複数のワーク基準位置に対応して複数有する。
【0078】
ここで、位置決め嵌合部が複数設けられるに際しては、本実施形態では、例えば、基部23における一つの側面に複数の位置決めピン25が設けられたり、一体の治具本体31に複数の位置決め穴部35が形成されたりしてもよい。ただし、複数の嵌合部は、各嵌合部による嵌合状態が他の嵌合部と干渉しないように設けられる。
【0079】
このように、位置決め嵌合部が任意の位置に複数設けられることで、ロボット10のフレキシブルな動作を利用しつつ、複数のワーク基準位置に任意に対応することが可能となる。
【0080】
また、本実施形態の位置決め構成においては、好ましくは次のような構成が備えられる。すなわち、サポート治具30に、位置決めピン25と位置決め穴部35同士が嵌合した状態で、部品基準治具20をサポート治具30に固定するためのクランプ機構が設けられる。具体的には、図8に示すように、本実施形態では、クランプ機構40として、クランプ部41と、クランプ部41を動作させるシリンダ機構部42とを備える構成が設けられる。
【0081】
クランプ部41は、サポート治具30において、治具本体31の一側面(本実施形態では下側面)に対して、回動可能に設けられる。クランプ部41は、図8に示す回動軸方向視で略L字状の形状を有し、その略L字状の形状の一端部が、軸支部41bによって治具本体31に対して回動可能に支持される。
【0082】
クランプ部41は、位置決め穴部35に差し込まれた状態(以下「挿入状態」という。)の位置決めピン25に対して係合することで、挿入状態の位置決めピン25を治具本体31に対して固定(クランプ)する。このため、位置決めピン25は、クランプ部41による係合を受けるための係止部26を有する。係止部26は、棒状の位置決めピン25の外周面において突出形成される部分である。
【0083】
すなわち、クランプ部41は、位置決めピン25の係止部26に係合することで、挿入状態の位置決めピン25を治具本体31に対して固定する。ここで、クランプ部41は、係止部26に対する係止面41aと有し、係止部26は、クランプ部41に対する係止面26aを有する。そして、クランプ部41の係止部26に対する係合は、クランプ部41が軸支部41bを支点として回動することで、クランプ部41の係止面41aが、係止部26の係止面26aに接触係合することで行われる。つまり、クランプ部41の係止面41aおよび係止部26の係止面26aは、クランプ部41の回動によって、挿入状態の位置決めピン25の治具本体31に対する固定が、係止面41a・26aを介して行われるように形成される。
【0084】
このように、クランプ機構40においては、クランプ部41が軸支部41bを支点として回動することで、クランプ部41が挿入状態の位置決めピン25の係止部26に係合する。かかる係合状態では、挿入状態の位置決めピン25が、係止部26を介して治具本体31とクランプ部41とに挟まれることで、治具本体31に対して固定された状態となる(図8(b)参照)。
【0085】
クランプ部41は、シリンダ機構部42により回動させられる。シリンダ機構部42は、シリンダ部43と、このシリンダ部43に対して一部が出没可能に設けられるロッド部44とを有する。つまり、シリンダ機構部42は、シリンダ部43に対するロッド部44の往復移動によって伸縮する。シリンダ機構部42は、例えば油圧シリンダやエアシリンダとして構成される。
【0086】
シリンダ機構部42の伸縮動作が、クランプ部41の回動動作に用いられる。すなわち、ロッド部44の先端部は、クランプ部41に対して連結部44aを介して連結される。連結部44aは、シリンダ機構部42の伸縮動作(ロッド部44の往復移動)が、クランプ部41の回動動作として伝達されるように、ロッド部44をクランプ部41に連結させる。なお、シリンダ部43は、治具本体31に対して図示せぬ支持部を介して固定された状態で設けられる。
【0087】
以上のようにクランプ機構40を備える構成においては、まず、図8(a)に示すように、ロボット10(図1参照)の動作によって位置決めピン25が位置決め穴部35に差し込まれ(矢印X1参照)、ワーク1についての位置決めが行われる。かかる位置決めが行われた後、図8(b)に示すように、シリンダ機構部42の動作(伸長動作)によって、クランプ部41が軸支部41bを支点として係止部26に対して係合する方向に回動させられる(矢印X2参照)。そして、係止面41a・26aを介してクランプ部41が係止部26に係合することで、挿入状態の位置決めピン25が治具本体31に対して固定された状態となる。
【0088】
一方、位置決めピン25が位置決め穴部35から引き抜かれる際には、シリンダ機構部42の動作(収縮動作)によって、クランプ部41が係止部26に係合する方向と反対方向に回動させられ、クランプ部41の係止部26に対する係合が解除される。このように、本構成においては、シリンダ機構部42の伸縮動作によって、クランプ部41による挿入状態の位置決めピン25の固定状態とその解除状態とが操作される。
【0089】
なお、本実施形態では、クランプ部41を動作させるための構成として、シリンダ機構部42が用いられているが、これに限定されない。つまり、クランプ部41を動作させるための構成としては、モータ等の駆動源を用いる構成であってもよい。
【0090】
このように、本実施形態の部品位置決め用治具においては、好ましい構成として、サポート治具30は、位置決めピン25と位置決め穴部35同士が嵌合した状態で、部品基準治具20をサポート治具30に固定するためのクランプ機構40を有する。
【0091】
本実施形態の構成において、クランプ機構40が設けられることで、位置決めピン25が位置決め穴部35から抜けようとする方向の力に対する保持力を向上させることができる。これにより、位置決めピン25と位置決め穴部35との嵌合方向(位置決めピン25の位置決め穴部35に対する挿入方向)について、様々な方向(例えば上方向等でも)に容易に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の一実施形態に係る部品位置決め用治具の構成を示す図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく側面図。
【図4】位置決めピンの先端部を示す部分拡大図。
【図5】部品位置決め状態の一例を示す図。(a)は平面図。(b)は側面図。
【図6】同じく他の例を示す図。
【図7】治具構成についての別態様を示す図。
【図8】クランプ機構の構成の一例を示す図。
【図9】従来の位置決め構成を示す図。
【符号の説明】
【0093】
1 ワーク(部品)
10 ロボット
20 部品基準治具(移動治具)
25 位置決めピン(嵌合部)
30 サポート治具(固定治具)
31 治具本体
35 位置決め穴部(嵌合部)
40 クランプ機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の位置に対する位置決め対象である部品を、ロボットに支持された状態で所定の範囲内で移動可能に設けられる移動治具に固定した状態で支持し、前記移動治具を移動させることにより、前記部品の位置決めを行う部品位置決め方法であって、
前記部品が位置決めされる前記所定の位置に対して固定された状態で設けられる固定治具を用い、
前記移動治具および前記固定治具のそれぞれに、互いに嵌合した状態で前記移動治具を前記固定治具に対して所定の精度で位置決めする嵌合部を設け、
前記嵌合部同士が嵌合した状態で、前記部品の位置決めを行うことを特徴とする部品位置決め方法。
【請求項2】
前記嵌合部のうち、前記移動治具に設けられる前記嵌合部、および前記固定治具に設けられる前記嵌合部の少なくとも一方の前記嵌合部を、複数の前記所定の位置に対応させて複数設けることを特徴とする請求項1に記載の部品位置決め方法。
【請求項3】
前記固定治具に、前記嵌合部同士が嵌合した状態で、前記移動治具を前記固定治具に固定するためのクランプ機構を設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の部品位置決め方法。
【請求項4】
所定の位置に対する位置決め対象である部品の位置決めを行うための部品位置決め用治具であって、
ロボットに支持された状態で所定の範囲内で移動可能に設けられ、前記部品を固定した状態で支持する移動治具と、
前記移動治具の移動により前記部品が位置決めされる前記所定の位置に対して固定された状態で設けられる固定治具と、を備え、
前記移動治具および前記固定治具は、互いに嵌合した状態で前記移動治具を前記固定治具に対して所定の精度で位置決めする嵌合部を有し、
前記嵌合部同士が嵌合した状態で、前記部品の位置決めを行うことを特徴とする部品位置決め用治具。
【請求項5】
前記移動治具および前記固定治具の少なくとも一方は、
前記嵌合部を、複数の前記所定の位置に対応して複数有する、
ことを特徴とする請求項4に記載の部品位置決め用治具。
【請求項6】
前記固定治具は、
前記嵌合部同士が嵌合した状態で、前記移動治具を前記固定治具に固定するためのクランプ機構を有する、
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の部品位置決め用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−76020(P2010−76020A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−245044(P2008−245044)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】