説明

部品保持装置及び部品配置装置

【課題】複雑な機構や構造を用いることなく、部品を非接触で位置決め保持する。
【解決手段】超音波振動を発生する保持面が水平方向に対向配置される、少なくとも2つの超音波振動子203を設け、該超音波振動子203の保持面の間で、部品118を超音波振動により非接触で挟持する。この部品保持装置を、部品ホルダ200内に積層された部品118を分離するための部品セパレータの出口や、部品118を移載するためのヘッド113のチャック機構に配設することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品保持装置及び部品配置装置に係り、特に、電子部品をプリント基板又は液晶やディスプレイパネル基板等に自動的に実装する電子部品実装装置に用いるのに好適な、部品を非接触で位置決め保持可能な部品保持装置、及び、この部品保持装置を用いた部品配置装置に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ部品等の電子部品を回路基板や部品テープ等の対象物に配置する電子部品配置装置として、特許文献1に記載されたものがある。これは、その図2に示される如く、部品ホルダ1の排出口1bから部品セパレータ2の取り込み部2bに取り込まれたチップ部品ECを吸着保持した状態で、この部品セパレータ2を所定角度(図では時計方向に90°)回転させ、回転後に前記の吸着保持を解くことによって、チップ部品ECを自重落下させて、回路基板CSの所定位置に配置するものである。
【0003】
【特許文献1】特開2000−156597号公報(図2)
【非特許文献1】吉本他「超音波振動を利用した非接触チャックに関する研究(浮上物体に加わる保持力の発生要因について)」日本機械学会論文集(C編)73巻728号(2007−4)252−258頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術は、部品ECが落下しないようにセパレータ2で吸着保持しているので、セパレータに接触した時に部品に傷が付く。又、セパレータ2を回転させる度に摩耗を生ずる。更に、回転する部品セパレータ2は、吸着機構を持ち、回転する部分に吸着エアを伝える機構(経路)が必要なため、ロータリージョイント等の回転部にエアを伝達する複雑な機構が必要であるという問題もあった。
【0005】
一方、非特許文献1には、超音波で振動する平面上に物体を置いた場合、物体がスクイーズ効果により振動面上に浮上すると共に、振動面内に物体を止める保持力が働くことを利用した非接触チャックが記載されている。しかしながら、非特許文献1に記載されたチャックは物体を浮上させるものであり、正確な位置決めは困難であった。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、超音波振動を利用して非接触で部品を確実に位置決め保持して、配置できるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、超音波振動を発生する保持面が水平方向に対向配置される、少なくとも2つの超音波振動子を有し、該超音波振動子の保持面の間で、部品を超音波振動により非接触で挟持するようにされていることを特徴とする部品保持装置により、前記課題を解決したものである。
【0008】
ここで、前記対向する保持面の上下の位置を、ずらして配置することができる。
【0009】
本発明は、又、前記の部品保持装置が、部品ホルダ内に積層された部品を分離するための部品セパレータの出口に配設されていることを特徴とする部品配置装置を提供するものである。
【0010】
或いは、前記の部品保持装置が、部品を積載するためのヘッドのチャック機構に配設されていることを特徴とする部品配置装置を提供するものである。
【0011】
ここで、前記チャック機構の上部にも、下方に向けて超音波を発生する超音波振動子を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対向する超音波振動子の保持面の間で、部品を超音波振動により非接触で位置決め保持することができるので、部品に傷や摩耗等のダメージを与えることが無い。又、可動部が無く、複雑な機構や構造が必要ないので、故障や耐久性が低いといった問題が少なく、組立やメンテナンスも容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、電子部品実装装置の概略図であり、同図に示すように、電子部品実装装置100は、中央部から少し後方で左右方向に延在する回路基板搬送路115と、装置100の前部(図示の下側)に配設され、回路基板110に実装される部品118を供給する部品供給部111と、装置100の前部に配設されたX軸移動機構(X軸ガントリと称する)112とY軸移動機構(Y軸ガントリと称する)114を備えている。
【0015】
X軸ガントリ112は、部品を吸着する吸着ノズル113aを備えた搭載ヘッド部113をX軸方向に移動させ、またY軸ガントリ114は、X軸ガントリ112並びに搭載ヘッド部113をY軸方向に移動させる。又、搭載ヘッド部113は、吸着ノズル113aを垂直方向(Z軸方向)に昇降可能に移動させるZ軸移動機構を備え、又、吸着ノズルをノズル軸(吸着軸)を中心に回転させるθ軸移動機構を備えている。又、搭載ヘッド部113には、支持部材に取付けるようにして、回路基板110上に形成された基板マークを撮像する基板認識カメラ117が搭載されている。又、部品供給部111の側部には、吸着ノズル113aに吸着された部品を下方から撮像する部品認識カメラ116が配置されている。
【0016】
図2は電子部品実装装置100の制御系の構成を示している。120は、装置全体を制御するマイクロコンピュータ(CPU)、並びにRAM、ROMなどからなるコントローラ(制御手段)であり、これに以下の121〜131の構成が接続され、それぞれを制御している。
【0017】
X軸モータ121は、X軸ガントリ112の駆動源で、搭載ヘッド部113をX軸方向に移動させ、又、Y軸モータ122は、Y軸ガントリ114の駆動源で、X軸ガントリ112をY軸方向に駆動し、それにより搭載ヘッド部113はX軸方向とY軸方向に移動可能となる。
【0018】
Z軸モータ123は、吸着ノズル113aを昇降させるZ軸駆動機構(不図示)の駆動源で、吸着ノズル113aをZ軸方向(高さ方向)に昇降させる。又、θ軸モータ124は、吸着ノズル113aのθ軸回転機構(不図示)の駆動源で、吸着ノズル113aをそのノズル中心軸(吸着軸)を中心にして回転させる。
【0019】
画像認識装置127は、吸着ノズル113aに吸着された部品118の画像認識を行なうもので、A/D変換器127a、メモリ127b及びCPU127cから構成される。そして、吸着された部品118を撮像した部品認識カメラ116から出力されるアナログの画像信号を、A/D変換器127aによりデジタル信号に変換してメモリ127bに格納し、CPU127cが、その画像データに基づいて吸着された部品の認識を行なう。即ち、画像認識装置127は、部品中心と吸着角度を演算し、部品の吸着姿勢を認識する。又、画像認識装置127は、基板認識カメラ117で撮像された基板マークの画像を処理して基板マーク位置を演算する。
【0020】
又、画像認識装置127は、部品認識カメラ116で撮像された部品118の画像データと基板認識カメラ117で撮像された基板マークデータを処理して、両方の補正データを制御手段120へ転送する。
【0021】
キーボード128とマウス129は、部品データなどのデータを入力するために用いられる。
【0022】
記憶装置130は、フラッシュメモリなどで構成され、キーボード128とマウス129により入力された部品データ、及び不図示のホストコンピュータから供給される部品データ等を格納するのに用いられる。
【0023】
表示装置(モニタ)131は、部品データ、演算データ、及び部品認識カメラ116で撮像した部品118の画像等をその表示面131aに表示する。
【0024】
次に部品供給部111の部品セパレータの構造について、図3を使用して説明を行なう。
【0025】
部品セパレータを構成する部品ホルダ200は、中が中空で、S字状に湾曲したパイプになっており、実装するための電子部品118が自重落下するような状態で収納されている。
【0026】
部品ホルダ200の下部の部品排出部には、本発明に係る部品把持機構が取付けられている。この部品把持機構は、対向して取り付けられた左側部品把持機構201と右側部品把持機構202とを有する。左側部品把持機構201と右側部品把持機構202との間隔Dは、部品118の寸法に、例えば片側50μmの隙間を持った位置関係としている。
【0027】
各部品把持機構201、202には、それぞれ超音波振動子203が取り付けられており、該超音波振動子203を振動させることにより、部品把持機構は超音波振動を起こす。超音波振動を起こすことにより、非特許文献1に記載されたように、水平方向に浮揚させる力が働く。
【0028】
この超音波による浮揚現象は、撓み振動及び縦振動の放射面近傍において板状物体を浮揚させる。本発明は、この近距離場超音波浮揚を利用し、材質に関わらず平らな底面を持つ物体が、放射面の極く近傍、距離にして数10μm〜数100μm、波長に対し1/100〜1/1000の距離で浮揚する現象を利用している。
【0029】
超音波振動子203の構造について説明する。
【0030】
右側超音波振動子の接続図を図4に示す。超音波振動子203は、積層型のランジュバン型振動子を使用することができる。ランジュバン型振動子は、分極した圧電セラミックス204と電極205を、図4に示すように積層配置し、金属ブロック206で挟み、図示しないボルトで締め付けて一体化したものである。電極205は、交流電源207に接続してある。圧電セラミックス204は、交流電圧を印加すると逆圧電効果により伸縮が生じる。ランジュバン型振動子において、圧電セラミックス204は振動子の軸方向に分極されており、縦振動モードで振動する。一般にランジュバン型振動子は機械的品質係数Qmが高いため、周波数のスパンの狭い共振ピークを持つ。
【0031】
振動子の先端サイズAを直径2mmとすると、印加電圧20Vで共振周波数33kHzの振動をする。
【0032】
次に、部品供給動作について説明を行なう。
【0033】
まず、部品の把持の動作について説明する。
【0034】
右側部品把持機構202の拡大図を、図5に示す。右側部品把持機構202を超音波振動させることにより、右側部品把持機構202の先端部202aは、振動する。振動の分布は、点線208のような状態となる。この超音波振動により部品118は浮上し、右側部品把持機構202から非接触で浮上するような状態となる。
【0035】
部品把持機構を両側で対向するような配置で構成しているので、図6に示す如く、右側部品把持機構202と左側部品把持機構201の超音波振動でお互いに部品を押付け合うような状態となり、非接触で部品118を中央に位置決め把持することができる。
【0036】
次に部品が落下しない原理について説明する。
【0037】
右側部品把持機構202の角部では、図7に示す如く、中央部に比べて振動が集中するため、空気膜圧によって、右側部品把持機構202内にある電子部品118がはみ出さないよう保持する力208aが働く。このような現象は、「スクイーズ膜効果」と呼ばれている。この「スクイーズ膜効果」の右側部品把持機構202の下側角部の空気膜圧によって、部品118は落下せずに保持することができる。一方、部品把持機構202の上側で発生する「スクイーズ膜効果」では、図8に示す如く、供給する電子部品118aだけ落下させ、次に供給する電子部品118bを落下させないようにするための保持力として力が働く。
【0038】
この第1実施形態によれば、部品セパレータの出口で、部品ホルダ200内に積層された部品118を非接触で確実に分離することができる。
【0039】
なお、第1実施形態では、部品ホルダ200がS字状とされていたが、部品ホルダの形状はこれに限定されず、直管状であっても良い。
【0040】
次に、図9を参照して、部品を移載するためのヘッド113のチャック機構に適用した本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、吸着ノズル113aの先端(下端)に配設される。
【0041】
吸着ノズル113aには、部品を把持するための把持爪が付いている。把持爪は、固定側把持爪210と可動側把持爪211とからなっており、可動側把持爪211の上部は、水平移動軸受の可動子213とレール212とにそれぞれ連結されており、水平方向に動作可能となっていて、電子部品の大きさによって、把持爪210、211の先端210a、211aの間隔Dを、図示しない機構によって可変できるような構成となっている。
【0042】
固定側把持爪210と可動側把持爪211の間の上部には、ストッパー214が取付けられている。
【0043】
固定側把持爪210、可動側把持爪211、ストッパー214の構成について、図10(可動側把持爪211の例)を使用して説明する。それぞれの先端部の根元には、第1実施形態と同様に圧電セラミックス204を電極205で挟み込んだランジュバン型振動子203が取付けられている。従って、振動子203によって、固定側把持爪先端210a、可動側把持爪先端211a、ストッパー先端214aが縦振動モードで振動する。
【0044】
部品を把持する原理は、第1実施形態と同様なので説明は割愛する。
【0045】
次に、部品を吸着する動作について説明する。
【0046】
部品供給装置の部品供給部111に置かれている電子部品118の上方へ搭載ヘッド部113を移動する。搭載ヘッド部113のZ軸駆動機構(不図示)の駆動源で、吸着ノズル113aをZ軸方向(高さ方向)に下降させる。この時、超音波振動子203は通電されていないので動作はしておらず超音波振動は発生していない。固定側把持爪先端210a、可動側把持爪先端211aを、図11のように部品118の横側になる位置まで下降した後に超音波振動子203に通電を行ない、超音波振動を発生させる。左右の振動子それぞれの浮揚現象によって電子部品118を押付け合い、部品118を中央位置に掴むことができる。
【0047】
この時、図12のようにストッパー214の振動子203に通電し、部品118を非接触で下方向に押し付ける力を発生させる。図13の先端部の拡大図のように、ストッパー先端214aの力により、電子部品118は下側に押し付けられるが、固定側把持爪先端210aと、可動側把持爪先端211aの「スクイーズ膜効果」により、部品118が落下することは無い。
【0048】
電子部品118を把持した状態で、搭載ヘッド部113のZ軸駆動機構(不図示)の駆動源で吸着ノズル113aをZ軸方向(高さ方向)に上昇させて、画像認識装置127の位置等へ移動を行なう。
【0049】
なお、吸着ノズル113aから部品118を下ろす際には、全ての超音波振動子203の通電をOFFとして、電子部品118を自重で自由落下させたり、あるいは、ストッパー214の超音波振動子203の通電を強めて、搭載時に押付力を発生させることも可能である。
【0050】
次に電子部品118を把持爪内に上下方向で位置決めする方法を示す第3実施形態について、図14を使用して説明を行なう。
【0051】
本実施形態では、固定側把持爪210の先端210aと可動側把持爪211の先端211aの高さをずらして配置する。その場合のずらす量は、固定側把持爪先端210aと可動側把持爪先端211aの重なる部分の寸法が、部品118の高さと一致するようにする。
【0052】
これにより、固定側把持爪210の「スクイーズ膜効果」によって上側を押さえ、可動側把持爪211の「スクイーズ膜効果」によって下側を押え、部品を上下方向に位置決めすることができる。以上のような構成によって上下方向の部品の位置決め固定を行なう。
【0053】
なお、第3実施形態においては、本発明が第2実施形態のチャック機構に適用されていたが、第3実施形態の構成を第1実施形態の部品セパレータの出口に適用することも可能である。更に、左右の超音波振動子の上下位置を可変として、部品118の高さに合わせて調整可能とすることもできる。
【0054】
なお、前記実施形態においては、本発明が電子部品実装装置の電子部品の保持に適用されていたが、本発明の適用対象はこれに限定されず、電子部品実装装置以外の装置の電子部品以外の一般部品の保持や配置にも同様に適用できることは明らかである。超音波振動子の種類も、ランジュバン型振動子に限定されない。水平方向に対向配置する振動子の数も2つに限定されず、3つ以上であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明が適用される電子部品実装装置の全体構成を示す斜視図
【図2】同じく制御系の構成を示すブロック図
【図3】本発明に係る部品把持機構の第1実施形態が配設された部品セパレータの構成を示す断面図
【図4】第1実施形態における超音波振動子の構成を示す断面図
【図5】同じく部品保持の原理を示す断面図
【図6】同じく部品が保持されている状態を示す部品セパレータの断面図
【図7】第1実施形態における部品分離の原理を示す断面図
【図8】同じく部品が分離されている状態を示す部品セパレータの断面図
【図9】吸着ノズルの先端に配設される本発明の第2実施形態の構成を示す断面図
【図10】第2実施形態における超音波振動子の構成を示す断面図
【図11】同じく部品を掴む状態を示す断面図
【図12】同じく部品を保持している状態を示す断面図
【図13】同じく部品保持の原理を示す断面図
【図14】本発明の第3実施形態の構成を示す断面図
【符号の説明】
【0056】
100…電子部品実装装置
111…部品供給部
113…搭載ヘッド部
113a…吸着ノズル
118…部品
200…部品ホルダ
201…左側部品把持機構
202…右側部品把持機構
203…超音波振動子
210…固定側把持爪
211…可動側把持爪
214…ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動を発生する保持面が水平方向に対向配置される、少なくとも2つの超音波振動子を有し、
該超音波振動子の保持面の間で、部品を超音波振動により非接触で挟持するようにされていることを特徴とする部品保持装置。
【請求項2】
前記対向する保持面の上下の位置が、ずらして配置されていることを特徴とする請求項1に記載の部品保持装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の部品保持装置が、部品ホルダ内に積層された部品を分離するための部品セパレータの出口に配設されていることを特徴とする部品配置装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の部品保持装置が、部品を積載するためのヘッドのチャック機構に配設されていることを特徴とする部品配置装置。
【請求項5】
前記チャック機構の上部にも、下方に向けて超音波を発生する超音波振動子が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の部品配置装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図14】
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【図3】
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【図6】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−123854(P2009−123854A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−295107(P2007−295107)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】