説明

部品接合用治具

【課題】簡易な構造で複数の部品を位置決めできると共に、各部品の接合面に均一な押圧力を付与できる部品接合用治具を提供する。
【解決手段】部品接合用治具10は、トレイ20と、トレイ20の凹部21内に位置決めされて配置されるベース銅2の上に載置可能であると共に、トレイ20の凹部21に嵌合して配置される第1治具30と、第1治具30の第1くり抜き孔部31内に位置決めされてベース銅2の上に順次積層して配置される第1半田3及び基板4の上に載置可能であると共に、第1治具30の第1くり抜き孔部31に嵌合して配置される第2治具40と、第2治具40の第2くり抜き孔部41内に位置決めされて基板4の上に順次積層して配置される第2半田5及びチップ6の上に載置可能であると共に、第2治具40の第2くり抜き孔部41に嵌合して配置される錘50と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品接合用治具に関し、特に、電子装置を構成する複数の部品を半田により接合するための部品接合用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部品を半田を介して順次積層し、これら複数の部品を半田により溶着接合して構成された電子装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような電子装置を構成する複数の部品を半田により溶着接合する場合、各部品は、治具を用いて位置決めされる。また、接合用の半田が複数段を呈して使用される場合には、複数の治具が積み重ねられて、半田による溶着接合が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−134570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術においては、半田による溶着接合作業における部品の位置ずれを防止すべく、治具の位置をずれないようにする等の工夫が必要であり、そのため治具の構造が複雑化するといった課題があった。
【0006】
また、前記特許文献1に記載の技術では、炉の熱により昇華する昇華剤を治具間に介装するように使用して還元ガスが流通する空間を作っているため、設置場所によって昇華剤の熱による変化に違いが生じた場合には、部品が傾いたり加圧治具による部品への押圧力に偏りが生じたりして、良好な半田付けが行われない虞がある。さらに、加圧治具は、部品としてのチップの一部しか押圧していないため、半田の溶融時に該半田が部品の接合面に均一に流動せず、部品に傾きが生じたり、時として、溶融する半田が部品の接合面から外にはみ出したりする、といった不具合が発生する虞がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で複数の部品を位置決めできると共に、各部品の接合面に均一な押圧力を付与できる部品接合用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、電子装置を構成する複数の部品を半田により接合するための部品接合用治具であって、前記半田を溶融して前記複数の部品を接合するための溶着炉内に前記複数の部品を搬送するための、凹部を有するトレイと、前記トレイの前記凹部内に位置決めされて配置される第1部品の上に載置可能であると共に、前記トレイの前記凹部に嵌合して配置され、第1くり抜き孔部を有する第1治具と、前記第1治具の前記第1くり抜き孔部内に位置決めされて前記第1部品の上に順次積層して配置される第1半田及び第2部品の上に載置可能であると共に、前記第1治具の前記第1くり抜き孔部に嵌合して配置され、第2くり抜き孔部を有する第2治具と、前記第2治具の前記第2くり抜き孔部内に位置決めされて前記第2部品の上に順次積層して配置される第2半田及び第3部品の上に載置可能であると共に、前記第2治具の前記第2くり抜き孔部に嵌合して配置される第3治具と、を備えることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、トレイの凹部に嵌合して第1治具を配置し、第1治具の第1くり抜き孔部に嵌合して第2治具を配置し、第2治具の第2くり抜き孔部に嵌合して第3治具を配置する構造としたため、治具の位置決めが容易であると共に、部品接合用治具全体を簡素化できる。そして、トレイに複数の治具を嵌め込みながら、各部品と半田とが交互に位置決めされて積層され、半田の溶融時に各部品の動きを簡易な構造で抑制することができる。
また、治具の一部が錘として作用するため、各部品の接合面に均一な押圧力を付与でき、半田の溶融時に該半田を各部品の接合面に均一に流動させて各部品を接合することができる。これにより、半田の流動が偏るために部品が傾いたり半田が部品の接合面からはみ出したりすることを防止することができる。
すなわち、簡易な構造で複数の部品を位置決めできると共に、各部品の接合面に均一な押圧力を付与できる部品接合用治具を提供することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の部品接合用治具において、前記第1治具は、複数の第1くり抜き孔部と、前記複数の第1くり抜き孔部の間に位置する第1隔壁部とを有し、前記第2治具は、複数の第2くり抜き孔部と、前記複数の第2くり抜き孔部の間に位置する第2隔壁部とを有し、前記第2治具の前記第2隔壁部は、前記第1治具の前記第1隔壁部の少なくとも一部を跨いで前記第2部品の一部を押圧可能な押圧部を有することを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、第2治具の第2隔壁部のうちの押圧部が、厚みが大きくなると共に、第3治具と協働して第2部品を押圧することが可能となり、第2部品の接合面に対してより均一な押圧力を付与することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の部品接合用治具において、前記第1治具の外周部に、前記第1くり抜き孔部と外部とを連通させる切欠き部が形成されており、前記第2治具の前記押圧部に、鉛直方向の貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、溶着炉内の還元ガスを、切欠き部や貫通孔を通して部品接合用治具内に良好に導入して各部品に提供できる。また、半田やランド等の表面の酸化物が還元された場合に生じるガスを、切欠き部や貫通孔を通して逃がすことができる。これにより、良好な半田付けが可能となる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の部品接合用治具において、前記第1治具及び前記第2治具の下端面の外周には、全周に面取り部が形成されていることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、第1治具は、トレイの凹部にスムーズに嵌合して配置されるため、第1治具がトレイの凹部の開口縁部に引っ掛かって斜めに傾いてセットされることは無い。また、第2治具は、第1治具の第1くり抜き孔部にスムーズに嵌合して配置されるため、第2治具が第1治具の第1くり抜き孔部の開口縁部に引っ掛かって斜めに傾いてセットされることは無い。
これにより、第1部品と第1治具との隙間に第1半田や第2部品が潜り込んだり、第2部品と第2治具との隙間に第2半田や第3部品が潜り込んだりすることによって部品の位置がずれたり半田が部品の接合面からはみ出したりすることを防止することができる。
また、溶着炉内の還元ガスを、面取り部の形成により生じた空間を通して部品接合用治具内に良好に導入して各部品に提供できると共に、半田やランド等の表面の酸化物が還元された場合に生じるガスを、面取り部の形成により生じた空間を通して逃がすことができ、良好な半田付けが可能となる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の部品接合用治具において、前記トレイ、前記第1治具及び前記第2治具は、カーボンを含む素材から形成されていることを特徴とする。
【0017】
この発明によれば、カーボンは軽量で熱膨張率が低いことから、トレイに対する治具の組付けや取外しなどの取扱いが容易となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構造で複数の部品を位置決めできると共に、各部品の接合面に均一な押圧力を付与できる部品接合用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電子装置としての半導体装置の一例を示す概略断面図である。
【図2】図1に示す半導体装置を構成する複数の部品と、これらを半田により接合するための本発明の一実施形態に係る部品接合用治具とを併せて示す概略分解斜視図である。
【図3】図1に示す半導体装置を構成する複数の部品が部品接合用治具にセットされた状態を示す概略断面図である。
【図4】第1治具の概略斜視図である。
【図5】第1治具がトレイの凹部内にセットされる様子を示す説明図である。
【図6】第2治具の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、電子装置としての半導体装置の一例を示す概略断面図である。
【0021】
図1に示すように、半導体装置1は、ベース銅(第1部品)2の上に、一対の板状の第1半田3,3を介して一対の基板(第2部品)4,4がそれぞれ接合され、また、一つの基板4の上に、平面上で隣接して配置される2枚の板状の第2半田5,5(図2参照)を介して2個の半導体素子であるチップ6がそれぞれ接合されて構成されている。ベース銅2は、放熱用金属板としての機能を有している。基板4としては、例えば、セラミックス基板の表裏両面に金属板としての銅板が接合されてなるDCB(Direct Copper Bonding)基板が使用される。
【0022】
図2は、図1に示す半導体装置を構成する複数の部品と、これらを半田により接合するための本発明の一実施形態に係る部品接合用治具とを併せて示す概略分解斜視図である。図3は、図1に示す半導体装置を構成する複数の部品が部品接合用治具にセットされた状態を示す概略断面図である。なお、図3は、図2のA−A線から見た断面を示している。
【0023】
図2及び図3に示すように、部品接合用治具10は、半田を溶融して複数の部品を接合するための溶着炉(図示せず)内に前記複数の部品を搬送するためのトレイ20を備えている。トレイ20は、略矩形板状を呈しており、縦横に例えば5個ずつ並んだ複数の凹部21を有している。したがって、一度に複数個の半導体装置1の作製に対応できる。
【0024】
また、部品接合用治具10は、トレイ20の凹部21内に位置決めされて配置されるベース銅2の上に載置可能であると共に、トレイ20の凹部21に嵌合して配置され、第1くり抜き孔部31を有する第1治具30と、第1治具30の第1くり抜き孔部31内に位置決めされてベース銅2の上に順次積層して配置される第1半田3及び基板4の上に載置可能であると共に、第1治具30の第1くり抜き孔部31に嵌合して配置され、第2くり抜き孔部41を有する第2治具40と、を備えている。
【0025】
トレイ20、第1治具30及び第2治具40は、カーボンを含む素材から形成されている。このように構成すれば、カーボンは軽量で熱膨張率が低いことから、トレイ20に対する第1治具30及び第2治具40の組付けや取外しなどの取扱いが容易となる。
【0026】
また、部品接合用治具10は、第2治具40の第2くり抜き孔部41内に位置決めされて基板4の上に順次積層して配置される第2半田5及びチップ6の上に載置可能であると共に、第2治具40の第2くり抜き孔部41に嵌合して配置される第3治具としての錘50を備えている。
【0027】
錘50の材質は、適切な押圧力を付与できるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボンを含む素材から形成されていてもよいし、金属から形成されていてもよい。錘50は、第2半田5やチップ6の個数と同じ個数だけ使用される。
【0028】
図4は、第1治具の概略斜視図である。図4に示すように、第1治具30は、略矩形枠状を呈しており、外枠をなす外周部32と、一対の第1くり抜き孔部31,31と、一対の第1くり抜き孔部31,31の間に位置する第1隔壁部33とを有している。
【0029】
第1隔壁部33の中央付近には、略矩形の中央切欠き部34が形成されている。また、外周部32には、第1くり抜き孔部31と部品接合用治具10の外部とを連通させる切欠き部35が形成されている。切欠き部35は、ここでは、外周部32の第1隔壁部33と平行な辺に相当する部分の中央付近が低くなるように削られて形成された段差部である。
【0030】
また、第1治具30の下端面の外周には、全周に面取り部36(図3及び図4参照)が形成されている。すなわち、第1治具30の側面には、所定高さの位置から下方に行くに従って中央側に寄るテーパが形成され、このテーパが面取り部36を構成している。
【0031】
図5は、第1治具がトレイの凹部内にセットされる様子を示す説明図である。面取り部36のテーパ角度αは、第1治具30の外周部32の一辺がトレイ20の凹部21の底面に達するまでセットされた状態で、図5に示すように、外周部32の前記一辺に対向する辺が矢印方向に移動する際にトレイ20の凹部21の開口端縁22(図2及び図3参照)に引っ掛かって斜めに傾いてセットされることの無い角度に設定されている。なお、図5中の二点差線の部分は、第1治具30の下端面の外周が面取り部36によって除去された角部分を示す。
【0032】
図6は、第2治具の概略斜視図である。図6に示すように、第2治具40は、略矩形枠状を呈しており、外枠をなす外周部42と、第2くり抜き孔部41,41…と、これらの第2くり抜き孔部41,41…の間に位置する第2隔壁部43とを有している。
【0033】
第2隔壁部43は、第1治具30の第1隔壁部33の上方に位置される主壁43aと、それ以外の副壁43bとから構成されている。主壁43aは、第1治具30の第1隔壁部33の少なくとも一部を跨いで基板4の一部(ここでは中央寄りの部分)を押圧可能な押圧部として機能するものである。
【0034】
主壁43aの厚さ方向の断面(図3参照)は門形状を呈しており、第1治具30の第1隔壁部33と第2治具40の主壁43aとの間には、隙間44(図3参照)が形成されている。そして、主壁43aの中央付近には、鉛直方向に沿って貫通する貫通孔45が形成されている。なお、貫通孔45は、ここでは、平面視して長孔形状を呈しているが、これに限定されるものではなく、例えば複数の円形孔から構成されていてもよい。
【0035】
また、第2治具40の下端面の外周にも、全周に面取り部46(図3及び図6参照)が形成されている。すなわち、第2治具40の側面には、所定高さの位置から下方に行くに従って中央側に寄るテーパが形成され、このテーパが面取り部46を構成している。
【0036】
面取り部46のテーパ角度は、第2治具40の外周部42の一辺が基板4の上面に達するまでセットされた状態で、外周部42の前記一辺に対向する辺が第1治具30の第1くり抜き孔部31の開口端縁37(図3及び図4参照)に引っ掛かって斜めに傾いてセットされることの無い角度に設定されている(図5の説明と同様)。
【0037】
次に、前記のように構成された部品接合用治具10を用いて、半導体装置1を構成する複数の部品2,4,6を半田により接合する方法について説明する。
【0038】
図1及び図2に示すように、まず、半導体装置1の構成部品の1つであるベース銅2が、ロボット等の搬送手段によりチャックされ保持されて運ばれ、トレイ20の凹部21内に位置決めされて配置される。
【0039】
ベース銅2がトレイ20上に載置されると、次いで、該トレイ20の凹部21の内側面をガイドとして、第1治具30がベース銅2上に載置される。
【0040】
このとき、第1治具30の下端面の外周には比較的大きな面取り部36(図4参照)が形成されているため、第1治具30は、傾くこと無くトレイ20の凹部21内にスムーズに嵌合して配置される。これにより、後で配置される第1半田3や基板4がベース銅2と第1治具30との隙間に潜り込むことによって基板4の位置がずれたり第1半田3が基板4の接合面からはみ出したりすることを防止することができる。
【0041】
こうして第1治具30がトレイ20の凹部21内に嵌合しつつ、ベース銅2上に載置された後、一対の第1半田3,3がベース銅2上に載置され、続いて、一対の基板4,4が第1半田3,3上に載置される。
【0042】
このとき、第1半田3,3と基板4,4とは、第1治具30の第1くり抜き孔部31内に嵌め込まれるようにして位置決めされて配置される。
【0043】
基板4,4が第1治具30の第1くり抜き孔部31内に位置決めされて配置されると、次いで、第1治具30の第1くり抜き孔部31の内側面をガイドとして、第2治具40が基板4上に載置される。
【0044】
このとき、第2治具40の下端面の外周にも比較的大きな面取り部46が形成されているため、第2治具40は、傾くこと無く第1治具30の第1くり抜き孔部31にスムーズに嵌合して配置される。これにより、後で配置される第2半田5やチップ6が基板4と第2治具40との隙間に潜り込むことによって、チップ6の位置がずれたり第2半田5がチップ6の接合面からはみ出したりすることを防止することができる。
【0045】
こうして第2治具40が第1治具30の第1くり抜き孔部31に嵌合しつつ、基板4上に載置された後、第2半田5が基板4上に載置され、続いて、チップ6が第2半田5上に載置される。
【0046】
このとき、第2半田5とチップ6とは、第2治具40の第2くり抜き孔部41内に嵌め込まれるようにして位置決めされて配置される。
【0047】
以上の如く複数の部品と該複数の部品間に半田が配置されると、次いで、第2治具40の第2くり抜き孔部41の内側面をガイドとして、錘50がチップ6上に載置される。
【0048】
この状態で、トレイ20が溶着炉(図示せず)内へと搬送される。溶着炉内にて第1半田3及び第2半田5が溶融し、ベース銅2、基板4、チップ6が一体に溶着接合される。
【0049】
このとき、溶着炉内では、第1半田3及び第2半田5の溶着性を良好にするためチッソガスなどの還元ガスが充満される。この還元ガスは、第1治具30の面取り部36や切欠き部35、第2治具40の面取り部46や貫通孔45、及び第1治具30の第1隔壁部33と第2治具40の主壁43aとの間に形成される隙間44等の空間を通して、部品接合用治具10内に良好に導入されて各部品に提供される。また、半田やランド等の表面の酸化物が還元された場合に生じるガスが、前記空間を通して逃がされる。これにより、良好な半田付けが可能となる。
【0050】
また、本実施形態は、還元ガスの効果を高めるため、治具30,40に還元ガスが流通する空間を形成して各部品の表面が酸化されないような対応を図っており、従来のような昇華剤を使用して空間を作るという対応を不要にしている。
【0051】
さらに、第1半田3や第2半田5から形成される半田接合層の厚みを均一にするためにチップ6上に錘50が載置されており、該錘50による押圧力は、チップ6の第2半田5との接合面に対しては全面に均一に作用している。本実施形態では、第2治具40の第2隔壁部43のうち、中央部に位置する押圧部としての主壁43a(図6参照)が、厚みが大きくなると共に、錘50と協働して基板4を押圧することが可能となり、基板4の第1半田3との接合面に対して、より均一な押圧力を付与することができる。
【0052】
このようにして半田付け作業が完了すると、錘50、第2治具40、及び第1治具30がトレイ20から取り外され、次いで、完成品となった半導体装置1がトレイ20から取り出される。
【0053】
前記したように、本実施形態の部品接合用治具10は、トレイ20と、トレイ20の凹部21内に位置決めされて配置されるベース銅2の上に載置可能であると共に、トレイ20の凹部21に嵌合して配置される第1治具30と、第1治具30の第1くり抜き孔部31内に位置決めされてベース銅2の上に順次積層して配置される第1半田3及び基板4の上に載置可能であると共に、第1治具30の第1くり抜き孔部31に嵌合して配置される第2治具40と、第2治具40の第2くり抜き孔部41内に位置決めされて基板4の上に順次積層して配置される第2半田5及びチップ6の上に載置可能であると共に、第2治具40の第2くり抜き孔部41に嵌合して配置される錘50と、を備えている。
【0054】
このような本実施形態によれば、トレイ20の凹部21に嵌合して第1治具30を配置し、第1治具30の第1くり抜き孔部31に嵌合して第2治具40を配置し、第2治具40の第2くり抜き孔部41に嵌合して第3治具としての錘50を配置する構造としたため、各治具の位置決めが容易であると共に、部品接合用治具10全体を簡素化できる。そして、トレイ20に複数の治具を嵌め込みながら、ベース銅2、基板4、チップ6の各部品と半田とが交互に位置決めされて積層され、半田の溶融時に各部品の動きを簡易な構造で抑制することができる。
また、治具の一部が錘として作用するため、各部品の接合面に均一な押圧力を付与でき、半田の溶融時に該半田を各部品の接合面に均一に流動させて各部品を接合することができる。これにより、半田の流動が偏るために部品が傾いたり半田が部品の接合面からはみ出したりすることを防止することができる。
すなわち、簡易な構造で複数の部品を位置決めできると共に、各部品の接合面に均一な押圧力を付与できる部品接合用治具10を提供することができる。
【0055】
以上、本発明について、実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、前記実施形態に記載した構成を適宜組み合わせ乃至選択することを含め、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0056】
例えば、前記実施形態では、第1部品としてのベース銅2、第2部品としての基板4、第3部品としてのチップ6が半田により接合される構成となっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、半田により接合される複数の部品の種類及び個数、並びに積層数は、適宜設定され得る。例えば第1〜第4部品が半田により接合される場合、錘50に代えて第3くり抜き孔部を有する第3治具が使用され、さらに、第3治具の第3くり抜き孔部内に位置決めされて第3部品の上に順次積層して配置される第3半田及び第4部品の上に載置可能であると共に、第3治具の第3くり抜き孔部に嵌合して配置される錘が使用される。
【0057】
また、前記実施形態では、還元ガスが流通する空間を形成するために治具30,40に切欠き部や貫通孔が設けられているが、これらの切欠き部や貫通孔の形状や設置数は、適宜設定され得る。
【符号の説明】
【0058】
1 半導体装置
2 ベース銅(第1部品)
3 第1半田
4 基板(第2部品)
5 第2半田
6 チップ(第3部品)
10 部品接合用治具
20 トレイ
21 凹部
30 第1治具
31 第1くり抜き孔部
32 外周部
33 第1隔壁部
35 切欠き部
36 面取り部
40 第2治具
41 第2くり抜き孔部
42 外周部
43 第2隔壁部
43a 主壁(押圧部)
44 隙間
45 貫通孔
46 面取り部
50 錘(第3治具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置を構成する複数の部品を半田により接合するための部品接合用治具であって、
前記半田を溶融して前記複数の部品を接合するための溶着炉内に前記複数の部品を搬送するための、凹部を有するトレイと、
前記トレイの前記凹部内に位置決めされて配置される第1部品の上に載置可能であると共に、前記トレイの前記凹部に嵌合して配置され、第1くり抜き孔部を有する第1治具と、
前記第1治具の前記第1くり抜き孔部内に位置決めされて前記第1部品の上に順次積層して配置される第1半田及び第2部品の上に載置可能であると共に、前記第1治具の前記第1くり抜き孔部に嵌合して配置され、第2くり抜き孔部を有する第2治具と、
前記第2治具の前記第2くり抜き孔部内に位置決めされて前記第2部品の上に順次積層して配置される第2半田及び第3部品の上に載置可能であると共に、前記第2治具の前記第2くり抜き孔部に嵌合して配置される第3治具と、
を備えることを特徴とする部品接合用治具。
【請求項2】
前記第1治具は、複数の第1くり抜き孔部と、前記複数の第1くり抜き孔部の間に位置する第1隔壁部とを有し、
前記第2治具は、複数の第2くり抜き孔部と、前記複数の第2くり抜き孔部の間に位置する第2隔壁部とを有し、
前記第2治具の前記第2隔壁部は、前記第1治具の前記第1隔壁部の少なくとも一部を跨いで前記第2部品の一部を押圧可能な押圧部を有することを特徴とする請求項1に記載の部品接合用治具。
【請求項3】
前記第1治具の外周部に、前記第1くり抜き孔部と外部とを連通させる切欠き部が形成されており、前記第2治具の前記押圧部に、鉛直方向の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の部品接合用治具。
【請求項4】
前記第1治具及び前記第2治具の下端面の外周には、全周に面取り部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の部品接合用治具。
【請求項5】
前記トレイ、前記第1治具及び前記第2治具は、カーボンを含む素材から形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の部品接合用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−238638(P2012−238638A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−105001(P2011−105001)
【出願日】平成23年5月10日(2011.5.10)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】