説明

部品選択方法、部品選択装置、CAD装置及び部品選択プログラム

【課題】内部部品の選択操作を簡単に行うことを課題とする。
【解決手段】部品選択装置1は、複数の部品からなる三次元モデルを画面に表示する表示部2と、画面に表示されるカーソルの位置を入力する入力部3と、カーソルの位置が三次元モデル上にあるか否かを判断する判断部4とを有する。部品選択装置1は、カーソルの位置が三次元モデル上にある場合、カーソルの位置を通過する画面の法線上に存在する複数の部品を抽出する抽出部5をさらに有する。部品選択装置1は、カーソルの位置が三次元モデル上にあるときに入力される外部からの指示の有無を検出する検出部6をさらに有する。部品選択装置1は、指示の有無に基づき、抽出された複数の部品のうち、画面の最前に存在する部品を当該画面から削除する削除部7をさらに有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品選択方法、部品選択装置、CAD装置及び部品選択プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、部品や製品などの各種設計の作業効率を高めるために設計支援用アプリケーション(Application)が利用されている。このような設計支援用アプリケーションの一例としては、三次元CAD(Computer Aided Design)やデジタルモックアップ(DMU:Digital Mock−Up)などが挙げられる。なお、以下では、設計支援用アプリケーションを設計支援アプリと略記する。
【0003】
かかる設計支援アプリを使用する際には、三次元モデル(Model)の内部に存在する部品を選択する操作が以降に派生する操作を行うための基本操作として使用される。このように三次元モデル(Model)の内部に存在する部品を以下では「内部部品」と呼ぶ。一例としては、三次元モデルの内部にハーネス(harness)などを配置する場合、三次元モデルに隠されている機構構造を設定する場合や機構構造のモータのパラメータを変更する場合などが挙げられる。このように、表層としての外装に覆われる内部部品のみならず、内部にあっても露出を避けてカバーが使用される内部部品についても、選択操作が実行される。
【0004】
ところが、三次元モデルを所定の視点方向から画面表示したとき、三次元モデルに含まれる部品は、三次元モデルの表側に近いほど画面の手前に、言い換えれば三次元モデルの裏側に近いほど画面の奥に配置された状態で仮想的に表現される。このため、設計支援アプリでは、三次元モデルの表側から遠い内部部品の手前にそれよりも表側の近くに存在する部品が表示される。それゆえ、手前側に表示される部品が奥側の部品の表示の妨げとなる。仮に、三次元モデルに含まれる部品を透明表示したとしてもそれぞれの部品が前後に重ね表示されることに変わりはない。このため、設計支援アプリでは、操作者によってカーソル(cursor)指定がなされても前後の部品のいずれの部品が選択されたのかが判別できない。
【0005】
このように奥側の内部部品の選択操作が困難な状況下で内部部品を選択するためには、操作者は、手前部品の非表示、断面表示、部品検索などの機能を用いて、内部部品を選択可能な状態にする必要がある。しかし、いずれの機能を使用する場合においても、操作者は、内部部品が選択可能な状態となるまでに予備操作、すなわち部品選択を行うために前段階としてなされる操作を行う必要があるので、内部部品の選択操作が煩雑となる。
【0006】
これらの機能を1つずつ説明すると、手前部品の非表示とは、画面上で手前側に表示される部品を選択し、その部品を非表示にする機能を指す。かかる機能を使用する場合には、操作者は、手前側に表示される部品を非表示にする設定を行って奥側に存在する内部部品を手前に露出させる操作を目的の内部部品が現れるまで繰り返し行う必要がある。
【0007】
また、断面表示とは、表示中の視点方向とは異なる方向で三次元モデルを切断した場合の内部構造を断面図として表示する機能を指す。かかる機能を使用する場合には、操作者は、断面図を表示させるための操作、例えば入力デバイス(Input Device)を介してタブ(tub)を表示させた上で断面図の表示コマンド(command)を指定する操作を行う必要がある。
【0008】
また、部品検索とは、操作者が選択しようとする部品の名前などの検索キーを用いて検索を行う機能を指す。例えば、部品構成ツリーを用いる場合には、操作者は、三次元モデルが含む部品の階層構成が登録された部品構成ツリーを表示させる指示操作を行った上でその中から目的の内部部品の名称と同じものを探し出して指定する操作が必要となる。また、検索画面を用いる場合には、操作者は、検索を行うための検索画面を呼び出す操作を行った上で部品の名称を検索キーワードとして入力する操作を行い、その検索キーワードをもとに得られた検索結果の中から目的の内部部品を指定する操作を行う必要がある。さらに、部品一覧リストを使用する場合には、操作者は、カーソルで指定した部品よりも奥側に存在する部品を一覧形式で生成させる指示操作を行う。そして、操作者は、設計支援アプリに生成させた部品一覧リストの中から目的の内部部品の名称と同じものを探し出して指定する操作が必要となる。これらの3種の部品検索を行う場合には、操作者が得られる情報は、部品の名称だけとなり、実際の部品の形状を確認せずに選択を行わねばならないので、誤った部品を選択してしまうおそれがある。
【0009】
これらのことから、内部部品の選択操作を支援するための技術として、図形オブジェクト表示制御装置が提案されている。この図形オブジェクト表示制御装置は、画面上に表示した操作タブレット(tablet)上でマウス(mouse)のポインタ(pointer)が所定の方向に移動された場合に手前側に位置する図形オブジェクト(object)を非表示にする。この図形オブジェクト表示制御装置によれば、操作タブレット上でのマウス操作により、裏側に隠れている図形オブジェクトを顕にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−57359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の図形オブジェクト表示制御装置は、依然として、内部部品が選択可能な状態となるまでの予備操作が複雑であるので、内部部品の選択操作が煩雑であるという問題が残る。
【0012】
これを説明すると、目的の内部部品の手前側に存在する部品を非表示にするには、操作者は、三次元モデルが表示される三次元モデル画像上の部品からカーソルの照準をはずし、操作タブレット上にカーソルを合わせる必要がある。その後、目的の内部部品が表示された時には、操作者は、操作タブレットから目的の内部部品までカーソルを戻す必要がある。このように、操作者は、画面上で目的の内部部品が所在する位置及び操作タブレットの間でカーソルを往復させるという複雑な予備操作を行わねばならない。
【0013】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、内部部品の選択操作を簡単に行うことができる部品選択方法、部品選択装置、CAD装置及び部品選択プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願の開示する部品選択方法は、複数の部品からなる三次元モデルを画面に表示する工程と、前記画面に表示されるカーソルの位置を入力する工程と、前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にあるか否かを判断する工程とを含む。前記部品選択方法は、前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にある場合、前記カーソルの位置を通過する前記画面の法線上に存在する複数の部品を抽出する工程をさらに含む。前記部品選択方法は、前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にあるときに入力される外部からの指示の有無を検出する工程をさらに含む。前記部品選択方法は、前記指示の有無に基づき、前記抽出された複数の部品のうち、前記画面の最前に存在する部品を当該画面から削除する工程をさらに含む。
【発明の効果】
【0015】
本願の開示する部品選択方法の一つの態様によれば、内部部品の選択操作を簡単に行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、実施例1に係る部品選択装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、実施例2に係るCAD装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、カーソル移動量データの一例を示す図である。
【図4】図4は、ハイライト部品座標データの一例を示す図である。
【図5】図5は、選択対象部品リストの一例を示す図である。
【図6】図6は、選択対象外部品リストの一例を示す図である。
【図7A】図7Aは、三次元モデル画像の一例を示す図である。
【図7B】図7Bは、三次元モデル画像の一例を示す図である。
【図7C】図7Cは、三次元モデル画像の一例を示す図である。
【図7D】図7Dは、三次元モデル画像の一例を示す図である。
【図7E】図7Eは、三次元モデル画像の一例を示す図である。
【図8】図8は、ホイール操作に伴う非表示化部品の再表示および手前側部品の非表示化を説明するための説明図である。
【図9】図9は、実施例2に係る全体処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、実施例2に係るマウス移動処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、実施例2に係るホイール操作処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】図12は、実施例2に係るタイムアウト処理の手順を示すフローチャートである。
【図13】図13は、実施例3に係る部品選択プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願が開示する部品選択方法、部品選択装置、CAD装置及び部品選択プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例は開示の技術を限定するものではない。
【実施例1】
【0018】
図1は、実施例1に係る部品選択装置の構成を示すブロック図である。図1に示す部品選択装置1は、表示部2と、入力部3と、判断部4と、抽出部5と、検出部6と、削除部7とを有する。
【0019】
このうち、表示部2は、複数の部品からなる三次元モデルを画面に表示する。入力部3は、画面に表示されるカーソルの位置を入力する。また、判断部4は、カーソルの位置が三次元モデル上にあるか否かを判断する。
【0020】
抽出部5は、カーソルの位置が前記三次元モデル上にある場合、カーソルの位置を通過する画面の法線上に存在する複数の部品を抽出する。検出部6は、カーソルの位置が三次元モデル上にあるときに入力される外部からの指示の有無を検出する。また、削除部7は、指示の有無に基づき、抽出された複数の部品のうち、画面の最前に存在する部品を画面から削除する。
【0021】
このように、部品選択装置1では、カーソルの位置が三次元モデル上にあり、外部からの指示入力がない場合には、部品選択の意思がない状況であると推定する。このような状況下で、部品選択装置1は、三次元モデル上でカーソルの法線方向に位置する複数の部品のうち手前の部品を非表示とする。このため、部品選択装置1では、操作者が部品選択を行うために前段階として特段の操作を意識的に行わずとも、無意識のうちに目的の内部部品が手前に表示される。それゆえ、操作者は、内部部品が選択可能な状態となるまでに複雑な予備操作を行う必要がない。したがって、本実施例に係る部品選択装置1によれば、内部部品の選択操作を簡単に行うことが可能になる。
【実施例2】
【0022】
[CAD装置の構成]
続いて、実施例2に係るCAD装置10について説明する。図2は、実施例2に係るCAD装置の構成を示すブロック図である。このCAD装置10は、部品や製品などの設計を支援するアプリケーションであるCADシステム15が搭載されたコンピュータであり、図2に示すように、入力部11と、表示部12と、記憶部13と、制御部14とを有する。
【0023】
このうち、入力部11は、各種情報、例えば後述のCADシステム15に対する指示入力を受け付ける入力デバイスであり、例えば、キーボードやマウスなどである。なお、後述の表示部12も、マウスと協働して、ポインティングデバイス機能を実現する。また、表示部12は、各種の情報、例えば三次元モデル画像を表示する表示デバイスであり、例えば、モニタ、ディスプレイやタッチパネルなどである。
【0024】
記憶部13は、例えば、フラッシュメモリ(flash memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスクなどの記憶装置である。なお、記憶部13は、上記の種類の記憶装置に限定されるものではなく、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)であってもよい。
【0025】
この記憶部13は、制御部14で実行される各種プログラム、例えばOS(Operating System)やCAD(Computer Aided Design)システム15などを記憶する。さらに、記憶部13は、先のプログラムの実行に必要なデータ、例えば三次元モデル及びその部分部品の製図情報であるCADデータなどを記憶する。このほか、記憶部13は、カーソル移動量データ13aと、ハイライト部品座標データ13bと、選択対象部品リスト13cと、選択対象外部品リスト13dとを記憶する。
【0026】
カーソル移動量データ13aは、マウスカーソルの移動量を示すデータである。このカーソル移動量データ13aは、後述の操作情報取得部15aによって移動量の加算または消去が行われる。例えば、操作者が入力部11を介してマウスカーソルを移動させた場合には、その移動量が操作情報取得部15aによって累積加算される。このマウスカーソルの移動量が所定値を超えた場合には、後述の表示制御部15dによって三次元モデルの表側に近い部品を非表示とする非表示制御がなされる。このとき、それまでに累積加算された移動量は操作情報取得部15aによってクリアされる。
【0027】
図3は、カーソル移動量データの一例を示す図である。図3の例では、1ピクセル(pixel)を移動量「1」として計測が行われた場合のカーソル移動量の累積加算値を示す。この図3に示す例では、前回に移動量がクリアされた後にマウスカーソルが32ピクセル分の距離を移動したことを示す。なお、ここでは、マウスによってポインティングデバイス機能が実現される場合を説明したが、タッチパッドなどの他の入力デバイスによりポインティングデバイス機能が実現される場合にも同様に適用できる。
【0028】
ハイライト部品座標データ13bは、表示部12の表示画面上におけるハイライト部品の座標及び最終更新時間を示すデータである。ここで言うハイライト部品とは、マウスカーソルが載置されている部品であり、ある時点で表示中の三次元モデル画像上で操作者が入力部11を介して選択することをCADシステム15が認める部品を指す。このハイライト部品は、CADシステム15によって選択が認められない他の部品を表示する輝度よりも高い輝度でハイライト表示される。このハイライト部品にマウスカーソルの照準が合わせられた状態で左クリックや「Enter」キー操作などの特定の操作がなされた場合には、ハイライト部品の選択がCADシステム15で有効と判断される。
【0029】
このハイライト部品座標データ13bとして保持する座標の一態様としては、水平方向の座標をX座標とし、垂直方向の座標をY座標とした場合の座標(x,y)を使用する。例えば、マウスカーソルが移動されるか、マウスホイールが回転移動されるか、或いは後述の表示制御部15dによって手前側の部品の非表示制御がなされた場合には、表示画面でハイライト表示される部品が他の部品に変更された可能性がある。この場合、ハイライト部品の座標として、ハイライト部品が有する形状で重心位置となる座標が操作情報取得部15aによって更新される。なお、座標の原点としては、画面内または画面外の任意の点を使用することができる。
【0030】
このように、ハイライト部品の座標を記憶部13に保持するのは、特定の操作コマンドにより操作者がカーソル移動を行っていないにもかかわらずにマウスカーソルが移動した場合に、その操作コマンドが実行される前の位置にマウスカーソルを戻すためである。例えば、三次元モデルに対する拡大または縮小を行うズーム機能が使用される場合には、「ctrl」キーの押下とともにマウス移動がなされるので、ズーム機能の使用前後でマウスカーソルの位置が変わってしまう。また、三次元モデルの視点方向、いわゆる注視点を変更する場合には、「ctrl」キー及びマウスホイールを押下した状態でマウス移動がなされるので、この場合も注視点の変更前後でマウスカーソルの位置が変わってしまう。それゆえ、CAD装置10では、ズーム機能の使用や視点方向の変更などの操作コマンドが行われた場合に、操作コマンド使用前のマウスカーソル位置へ戻せるようにハイライト部品の座標を逐次保持する。
【0031】
このハイライト部品座標データ13bとして保持する最終更新時間の一態様としては、時刻が使用される。ここで、最終更新時間とは、操作情報取得部15a又は表示制御部15dによるデータ更新が行われた最後の時刻であり、マウスカーソルの移動操作、マウスホイールの回転移動操作、或いは後述の表示制御部15dによる非表示制御が最後に行われた時刻を指す。この最終更新時間は、表示制御部15dが手前側の部品の非表示制御を行う判断基準の1つとして使用される。
【0032】
図4は、ハイライト部品座標データの一例を示す図である。図4に示す例では、ハイライト部品の重心位置が座標(331,251)であることを示す。さらに、図4に示す例では、最後にマウスカーソルの移動操作、マウスホイールの回転移動操作または非表示制御が行われたのが18時31分29秒153・・・であることを示す。なお、ここでは、ハイライト部品の座標として重心位置の座標を採用する場合を説明したが、ハイライト部品もしくはその周辺の任意の座標をハイライト部品座標データ13bとして登録することとしてもよい。また、ここでは、最終更新時間として時刻を登録することとしたが、外部装置との間で整合が取れる客観的な時間である必要はなく、CAD装置10へのログイン時を基点として計測する経過時間などローカルな時間であってもかまわない。
【0033】
選択対象部品リスト13cは、マウスカーソルの位置を起点としてそこから三次元モデルの投影面の法線方向に所在する部品のうち選択操作の対象として表示させる部品のリストを示すデータである。この選択対象部品リスト13cに登録されている部品は、表示制御部15dによって表示対象とされる。なお、以下では、マウスカーソルの位置を基点としてそこから三次元モデルの投影面の法線方向に所在する部品群を「カーソル所在部品」と呼ぶこととする。
【0034】
図5は、選択対象部品リストの一例を示す図である。図5に示す「No.」は、本リスト内における部品の連番を示す。この「No.」には、本リストに登録される部品のうち三次元モデルの表側に近い部品から昇順に連番が採番される。また、図5に示す「部品ID」は、部品を一意に特定するための識別子である。図5に示す例で言えば、図中の部品IDを持つ3つの部品が後述の表示制御部15dによる表示対象とされ、「No.」の小さい部品ID「10010」、部品ID「26739」、部品ID「12084」の順に画面の手間側から各部品が表示される。
【0035】
選択対象外部品リスト13dは、カーソル所在部品のうち選択操作の対象から除外して非表示とする部品のリストを示すデータである。この選択部品リスト13dに登録されている部品は、表示制御部15dによって非表示とされる。
【0036】
図6は、選択対象外部品リストの一例を示す図である。図6に示す「No.」は、本リスト内における部品の連番を示す。この「No.」には、三次元モデルの表側に近い部品から昇順に連番が採番される。図6に示す「部品ID」は、部品を一意に特定するための識別子である。また、図6に示す「表示フラグ」は、選択対象外とした部品を再び選択対象として表示させるか否かを示すフラグである。
【0037】
この表示フラグは、フラグがOFFである場合、すなわち「0」である場合には部品を非表示とし、一方、フラグがONである場合、すなわち「1」である場合には部品を表示対象に復帰することを示す。この表示フラグは、マウスホイールの回転に連動してフラグのONまたはOFFが後述の部品リスト更新部15cによって切り替えられる。例えば、マウスホイールの下方向への回転量が所定量を超える度に、フラグがOFFである部品のうち連番が最後尾である部品のフラグが1つずつONに設定される。また、マウスホイールの上方向への回転量が所定量を超える度に、フラグがONである部品のうち連番が先頭である部品のフラグが1つずつOFFに設定される。つまり、CAD装置10では、マウスホイールを下方向に回転させる操作が行われた場合に、元々は画面の手前に存在していたが非表示となっている部品を再び表示するように表示フラグの切り替えを行う。また、CAD装置10では、マウスホイールを上方向に回転させる操作が行われた場合に、画面の最も手前に存在する部品を非表示とするように表示フラグの切り替えを行う。
【0038】
図6に示す例で言えば、表示フラグが全てOFFである場合には図中の部品IDを持つ3つの部品が後述の表示制御部15dによる非表示対象とされるが、この例では「No.3」の部品ID「12084」の表示フラグがONである。このため、「No.1」の部品ID「58201」及び「No.2」の部品ID「33657」の部品は非表示対象とされるものの、「No.3」の部品ID「12084」の部品は表示対象とされる。さらに、図6に示す例を図5に示した例と併せて説明すると、部品ID「12084」、部品ID「10010」、部品ID「26739」、部品ID「12084」の順に画面の手前側から各部品が表示される。
【0039】
制御部14は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などの集積回路、または、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などの電子回路である。
【0040】
この制御部14は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、これらによって種々の処理を実行する。制御部14は、図2に示すように、三次元モデルの設計を支援するアプリケーションであるCADシステム15を搭載し、CADシステム15が操作情報取得部15aと、部品情報取得部15bと、部品リスト更新部15cと、表示制御部15dとを有する。
【0041】
操作情報取得部15aは、入力部11に含まれるマウスの操作情報を取得する処理部である。このマウスの操作情報の一例として、操作情報取得部15aは、マウスカーソルの移動量やハイライト部品の座標位置などを取得する。
【0042】
これを説明すると、操作情報取得部15aは、マウスカーソルの移動を検出した場合には、前回に計測を終了した地点の画素から移動が終了するまでの軌跡に存在する画素数を足し合わせることにより移動量を計測する。このとき、操作情報取得部15aは、マウスカーソルが同一の画素を複数回通過したとしてもそれぞれの通過イベント個別に画素数を足し合わせる。そして、操作情報取得部15aは、記憶部13にカーソル移動量データ13aとして記憶された移動量に今回計測した移動量を加算する更新を行う。
【0043】
また、操作情報取得部15aは、マウスカーソルの移動が検出されるか、或いは後述の表示制御部15dによって手前側の部品の非表示制御がなされた場合に、マウスカーソルが載置されたハイライト部品の重心位置の座標を取得する。そして、操作情報取得部15aは、記憶部13にハイライト部品座標データ13bとして記憶された重心位置の座標を今回取得した重心位置の座標に更新する。このとき、操作情報取得部15aは、記憶部13にハイライト部品座標データ13bとして記憶された記憶された最終更新時刻をタイムスタンプ等から得られた現在時刻に書き換える更新をさらに行う。なお、非表示制御は、マウスホイールを回転させる操作によって発動される場合と、最終更新時間からの経過時間が所定時間を超えて実行される場合との複数のケースが含まれる。
【0044】
部品情報取得部15bは、カーソル所在部品の部品情報を取得する処理部である。一例としては、部品情報取得部15bは、マウスカーソルの移動が検出された場合に、記憶部13に記憶されたCADデータを参照して、移動後のマウスカーソルの位置を起点としてそこから三次元モデルの投影面の法線方向に所在する部品の部品IDを取得する。このようにしてカーソル所在部品の部品IDを取得する際には、部品情報取得部15bは、表示画面から奥行き方向にかけての深度を表示順序としてさらに取得する。
【0045】
部品リスト更新部15cは、記憶部13に記憶された選択対象部品リスト13c及び選択対象外部品リスト13dの更新を行う処理部である。この部品リスト更新部15cでは、操作者によってマウスを介してなされるマウスカーソルの操作履歴から、操作者が目的とする部品が現段階では画面の手前側に表示されておらず、その部品を選択する意思がないことを推定する。そして、操作者に手前側の部品を選択する意思がないと推定した場合には、部品リスト更新部15cは、選択対象部品リスト13cに登録された手前側の部品を選択対象外部品リスト13dへ移行登録する。これによって、目的とする内部部品の表示を妨げていた部品が後述の表示制御部15dによって非表示対象とされる。このようにして、部品リスト更新部15cは、目的とする内部部品が画面の手前に現れるまで手前側の部品の非表示制御を繰り返し実行させる。
【0046】
ここで、かかる部品選択の意思推定について説明する。操作者に部品選択の意思がある場合には、操作者は、目的とする部品上にマウスカーソルの照準を合わせた上でクリック操作を行うことにより選択操作を実行する。よって、操作者は、目的の部品が存在する箇所及びその周辺にマウスカーソルを移動したとしても、目的の部品がその手前側に存在する部品などで遮られている場合には選択操作を実行しない。つまり、マウスカーソルが目的の部品が存在する箇所及びその周辺を素通りしたり、或いは静止したりしている場合には、その位置に目的の部品が存在するものの、手前側に存在する部品を選択する意思がないものと推定できる。
【0047】
このような知見に基づき、部品リスト更新部15cは、マウスカーソルの移動が検出された場合には、記憶部13にカーソル移動量13aとして記憶されたカーソルの移動量が所定の閾値、例えば50ピクセル以上であるか否かを判定する。このとき、カーソルの移動量が50ピクセル以上である場合には、部品リスト更新部15cは、マウスカーソルが目的の部品が存在する箇所及びその周辺を素通りしており、手前側に存在する部品を選択する意思がないものと推定する。
【0048】
また、部品リスト更新部15cは、マウスカーソル及びマウスホイールのいずれの操作もなされていない場合には、記憶部13にハイライト部品座標データ13bとして記憶された最終更新時間と、現在時刻との差を計算することにより静止時間を算出する。そして、部品リスト更新部15cは、このようして算出した静止時間が所定の閾値、例えば3秒以上であるか否かを判定する。このとき、静止時間が3秒以上である場合には、部品リスト更新部15cは、マースカーソルが目的の部品が存在する箇所及びその周辺に停止しており、手前側に存在する部品を選択する意思がないものと推定する。
【0049】
このようにして部品選択の意思がないと推定した場合には、部品リスト更新部15cは、記憶部13に記憶された選択対象部品リスト13cのうち先頭に登録されている部品IDを削除するとともにその部品IDを選択対象外部品リスト13dの最後尾に登録する。その上で、部品リスト更新部15cは、部品情報取得部15bに取得させたカーソル所在部品の部品IDのうち選択対象外部品リスト13dに登録されている部品IDを除外したものを選択対象部品リスト13cへ登録する。ただし、選択対象部品リスト13cに部品IDが1つしか登録されていない場合、或いは画面の最も裏側にある部品IDが先頭にある場合には、部品リスト更新部15cは、選択対象部品リスト13cから選択対象外部品リスト13dへの移行登録は行わない。
【0050】
これによって、手前側に存在していた部品が非表示対象となり、その奥側に存在する部品が表示対象となる。なお、ここでは、カーソルの移動量と比較する閾値を50ピクセルとし、また、静止時間と比較する閾値を3秒とした場合を説明したが、これらの閾値には任意の数値を設定することができる。例えば、操作者が自身の希望する値を入力することにより閾値を設定してもよいし、CADシステム15の開発段階で開発者が試験により得た経験的な値を設定することとしてもよい。
【0051】
一方、部品リスト更新部15cは、カーソルの移動量が所定の閾値未満である場合には、手前側に存在する部品を選択する意思が残されているものと推定する。この場合には、カーソル位置が移動することによりカーソル所在部品が変化した可能性がある。このため、部品リスト更新部15cは、部品情報取得部15bに取得させたカーソル所在部品の部品IDのうち選択対象外部品リスト13dに登録されている部品IDを除外したものを選択対象部品リスト13cへ登録する。
【0052】
ここで、図7A〜図7Eを用いて、三次元モデル画像上でのカーソル操作と連動させながら部品リスト更新部15cの処理内容を説明する。なお、ここでは、マウスカーソルの操作が図7A〜図7Eの順に遷移する場合を想定して以下の説明を行う。
【0053】
図7A〜図7Eは、三次元モデル画像の一例を示す図である。図7A〜図7Eに示す符号70A〜70Eは、ATM(現金自動預け入れ払い機:Automated Teller Machine)の三次元モデル画像を示す。図7A〜図7Eに示す符号Cはマウスカーソルを示す。図7A、図7B及び図7Eに示す符号70aは、ATMの部分部品である側面パネルである。図7Cに示す符号70bは、ATMの内部部品である横フレームである。図7Dに示す符号70cは、ATMの内部部品であるねじである。
【0054】
また、図7A〜図7Eに示す符号13cは、先に説明した選択対象部品リストである。これら図7A〜図7Eに示す選択対象部品リスト13cでは、説明の便宜上、図5で示した部品IDの代わりに部品名を表記するものとし、連番を省略している。なお、図7A〜図7Eに示す選択対象部品リスト13cは、図5と同様に、リストの先頭に近付くほど画面の手前側に存在する部品がリスト登録されるものとする。さらに、図7A〜図7Eに示す符号13dは、先に説明した選択対象外部品リストである。これら図7A〜図7Eに示す選択対象外部品リスト13dでは、説明の便宜上、図6で示した部品IDの代わりに部品名を表記するものとし、連番及び表示フラグを省略している。なお、図7A〜図7Eに示す選択対象外部品リスト13dは、図6と同様に、リストの先頭に近付くほど画面の手前側に存在する部品がリスト登録されるものとする。
【0055】
図7Aに示す例では、マウスカーソルCがATMの三次元モデル上に載置されておらず、空白部分に載置されている。この段階では、カーソル所在部品はなく、選択対象部品リスト13c及び選択対象外部品リスト13dのいずれにも部品は登録されてない。ここから、操作者によってマウスカーソルCが側面パネル70aへ近付けられるものとする。
【0056】
図7Bに示すように、マウスカーソルCが側面パネル70aに移動されると、部品リスト更新部15cは、マウスカーソルCの位置を起点としてそこから三次元モデルの投影面の法線方向に所在する部品を部品情報取得部15bに取得させる。このようにマウスカーソルCが初めて三次元モデルに載置された段階では、選択対象外部品リスト13dには部品の登録がない。このため、部品リスト更新部15cは、部品情報取得部15bにカーソル所在部品として取得させた側面パネル70a、横フレーム70b及びねじ70cを表示順序にしたがって選択対象部品リスト13cへ登録する。このようにして選択対象部品リスト13cの先頭に側面パネル70aが登録されると、後述の表示制御部15dによって側面パネル70aの表示輝度を他の部品の表示輝度よりも高くするハイライト表示が実行される。その後、マウスカーソルCが移動されず、マウスカーソルCの静止時間が所定の閾値を超えたものとする。
【0057】
図7Cに示すように、マウスカーソルCの静止時間が所定の閾値を超えると、部品リスト更新部15cは、選択対象部品リスト13cのうち先頭にある側面パネル70aを削除するとともにその側面パネル70aを選択対象外部品リスト13dの最後尾に登録する。このような移行登録が行われると、選択対象外部品リスト13dへ登録された側面パネル70aを非表示とする非表示制御が後述の表示制御部15dによって実行される。これによって、選択対象部品リスト13cの先頭に繰り上がった横フレーム70bが手前側に表示される。このように横フレーム70bが最も手前側に表示される場合には、横フレーム70bの表示輝度を他の部品の表示輝度よりも高くするハイライト表示が表示制御部15dによって実行される。その後、マウスカーソルCが移動されず、マウスカーソルCの静止時間が所定の閾値を超えたものとする。
【0058】
図7Dに示すように、マウスカーソルCの静止時間が所定の閾値を超えると、部品リスト更新部15cは、選択対象部品リスト13cのうち先頭にある横フレーム70bを削除するとともにその横フレーム70bを選択対象外部品リスト13dの最後尾に登録する。このような移行登録が行われると、選択対象外部品リスト13dへ登録された横フレーム70bを非表示とする非表示制御が後述の表示制御部15dによって実行される。これによって、選択対象部品リスト13cの先頭に繰り上がったねじ70cが手前側に表示される。このようにねじ70cが最も手前側に表示される場合には、ねじ70cの表示輝度を他の部品の表示輝度よりも高くするハイライト表示が表示制御部15dによって実行される。その後、マウスカーソルCが移動して三次元モデルが存在しない空白部分に載置されるものとする。
【0059】
図7Eに示すように、マウスカーソルCが空白部分に載置されると、部品情報取得部15bによって取得されるカーソル所在部品がなくなる。この場合には、部品リスト更新部15bは、選択対象部品リスト13c及び選択対象外部品リスト13dから全ての部品を削除する。
【0060】
また、部品リスト更新部15cは、マウスホイールが回転操作された場合には、選択対象外部品リスト13dの表示フラグを更新する。これを説明すると、部品リスト更新部15cは、マウスホイールの下方向への回転量が所定量に達する度に、表示フラグがOFFである部品のうち連番が最後尾である部品のフラグを1つずつONに設定する。また、部品リスト更新部15cは、マウスホイールの上方向への回転量が所定量に達する度に、表示フラグがONである部品のうち連番が先頭である部品のフラグを1つずつOFFに設定する。
【0061】
表示制御部15dは、表示部12の表示制御を行う処理部である。例えば、部品リスト更新部15cによって選択対象部品リスト13cから選択対象外部品リスト13dへの移行登録が行われた場合には、表示制御部15dは、選択対象外部品リスト13dへ登録された部品IDの部品を非表示とする。すなわち、表示制御部15dは、表示部12で表示されている三次元モデル画像からそれまでに表示させていた非表示対象の部品を透明化または半透明化する。かかる非表示とともに、表示制御部15dは、選択対象部品リスト13cの先頭に繰り上がった部品IDの部品の表示輝度を他の部品の表示輝度よりも高くするハイライト表示を実行する。
【0062】
また、表示制御部15dは、部品リスト更新部15cによって選択対象外部品リスト13dの表示フラグが更新された場合には、更新後の表示フラグの設定状況に基づき、非表示化された部品の再表示または手前側部品の非表示化を行う。例えば、表示フラグがOFFからONに更新された場合には、表示制御部15dは、表示フラグがONに更新された部品の非表示を解除することによりその部品を再表示させるとともに表示フラグがONである先頭の部品をハイライト表示させる。一方、表示フラグがONからOFFに更新された場合には、表示制御部15dは、表示フラグがOFFに更新された部品を非表示化するとともに表示フラグがONである先頭の部品をハイライト表示させる。
【0063】
ここで、図8を用いて、三次元モデル画像上でのホイール操作と連動させながら部品リスト更新部15cの処理内容を説明する。図8は、ホイール操作に伴う非表示化部品の再表示および手前側部品の非表示化を説明するための説明図である。図8に示す符号80a〜80cは、ATMの三次元モデル画像を示す。図8に示す符号Cは、マウスカーソルを示す。図8に示す符号70aは、ATMの部分部品である側面パネルである。図8に示す70bは、ATMの内部部品である横フレームである。図8に示す符号70cは、ATMの内部部品であるねじである。
【0064】
図8に示す三次元モデル画像80aでは、元々はねじ70cの手前に存在していた横フレーム70b及び側面パネル70aが非表示となっている。このとき、マウスホイールの下方向への回転量が所定量、例えば1/16回転に達すると横フレーム70bの表示フラグがONに更新される。このため、表示制御部15dは、三次元モデル画像80bに示すように、横フレーム70bの非表示化を解除するとともに再表示された横フレーム70bをハイライト表示させる。その後、マウスホイールが下方向へさらに1/16回転すると、側面パネル70aの表示フラグがONに更新される。このため、表示制御部15dは、三次元モデル画像80cに示すように、側面パネル70aの非表示化を解除するとともに再表示された側面パネル70aをハイライト表示させる。
【0065】
一方、図8に示す三次元モデル画像80cでは、画面の手前から順に側面パネル70a、横フレーム70b、ねじ70cが表示されている。このとき、マウスホイールの上方向への回転量が所定量、例えば1/16回転に達すると側面パネル70aの表示フラグがOFFに更新される。このため、表示制御部15dは、三次元モデル画像80bに示すように、側面パネル70aを非表示化するとともに横フレーム70bをハイライト表示させる。その後、マウスホイールが上方向へさらに1/16回転すると、横フレーム70bの表示フラグがOFFに更新される。このため、表示制御部15dは、三次元モデル画像80aに示すように、横フレーム70bを非表示化するとともにねじ70cをハイライト表示させる。
【0066】
また、表示制御部15dは、マウス移動を伴う特定の操作コマンドを受け付けた場合には、操作コマンドを実行した後のカーソル位置を記憶部13にハイライト部品座標データ13bとして記憶されたハイライト部品の座標に戻す。このような操作コマンドの一例としては、「ctrl」キーの押下とともにマウス移動がなされるズームの調節コマンドや「ctrl」キー及びマウスホイールを押下した状態でマウス移動がなされる視点方向の変更コマンドが該当する。
【0067】
これによって、特定の操作コマンドが実行された場合でもカーソル位置が移動することがなくなり、操作者の意識がカーソルから途切れるのを防止できる。なお、ここでは、マウスホイールの回転量と比較する閾値を1/16回転とした場合を説明したが、これらの閾値には任意の数値を設定することができる。例えば、操作者が自身の希望する値を入力することにより閾値を設定してもよいし、CADシステム15の開発段階で開発者が試験により得た経験的な値を設定することとしてもよい。
【0068】
なお、上記の操作情報取得部15a、部品情報取得部15b、部品リスト更新部15c及び表示制御部15dの各機能は、既知のCADシステム15にアドオンすることで実現される。また、CADシステム15は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション、携帯電話、PHS端末、移動体通信端末またはPDAなどの情報処理装置に搭載することができる。
【0069】
[処理の流れ]
次に、本実施例に係るCAD装置10の処理の流れについて説明する。なお、ここでは、CAD装置10が実行する(1)全体処理を説明した後に、全体処理に含まれるサブフローとして(2)マウス移動処理、(3)ホイール操作処理、(4)タイムアウト処理を説明する。
【0070】
(1)全体処理
図9は、実施例2に係る全体処理の手順を示すフローチャートである。図9に示す全体処理は、CAD装置10でCADシステム15が起動されている場合に再帰的に行われる処理である。
【0071】
図9に示すように、マウスカーソルの移動が検出された場合(ステップS101 Yes)には、CADシステム15は、後述する「マウス移動処理」を行い(ステップS102)、上記のステップS101へ戻る。また、マウスホイールの回転が検出された場合(ステップS103 Yes)には、CADシステム15は、後述する「ホイール操作処理」を行い(ステップS104)、上記のステップS101へ戻る。
【0072】
また、マウスカーソルの移動およびマウスホイールの回転がいずれも検出されない場合(ステップS101 NoかつステップS103 No)には、部品リスト更新部15cは、マウスカーソルの静止時間を算出する(ステップS105)。
【0073】
このとき、マウスカーソルの静止時間が所定の閾値以上である場合(ステップS106 Yes)には、CADシステム15は、後述する「タイムアウト処理」を行い(ステップS107)、ステップS101へ戻る。一方、静止時間が所定の閾値未満である場合(ステップS106 No)には、ステップS101に戻る。このようにして、CADシステム15は、上記のステップS101〜S107までの処理を繰り返し行う。
【0074】
(2)マウス移動処理
続いて、本実施例に係るマウス移動処理について説明する。図10は、実施例2に係るマウス移動処理の手順を示すフローチャートである。このマウス移動処理は、図9に示したステップS101でマウスカーソルの移動が検出された場合に起動される処理である。
【0075】
図10に示すように、カーソル操作が他の入力操作と複合した特定の操作コマンドである場合(ステップS201 Yes)に、操作情報取得部15aは、ハイライト部品座標データ13bの最終更新時刻を現在時刻に書き換える更新を行う(ステップS202)。
【0076】
そして、表示制御部15dは、操作コマンドの入力が継続する限り(ステップS203 Yes)、バックグラウンドで操作コマンドに対応する処理を実行する。その後、操作コマンドの入力が終了すると(ステップS203 No)、表示制御部15dは、操作コマンドを実行した後のカーソル位置を記憶部13にハイライト部品座標データ13bとして記憶されたハイライト部品の座標に復元し(ステップS204)、処理を終了する。
【0077】
一方、特定の操作コマンドでない場合(ステップS201 No)には、操作情報取得部15aは、カーソルの移動軌跡から移動量を計測し、計測した移動量を記憶部13にカーソル移動量データ13aとして記憶された移動量に加算する(ステップS205)。
【0078】
このとき、カーソルの移動量が所定の閾値以上である場合(ステップS206 Yes)には、部品リスト更新部15cは、選択対象部品リスト13cから選択対象外部品リスト13dへの移行登録を行う(ステップS207)。つまり、部品リスト更新部15cは、選択対象部品リスト13cのうち先頭に登録されている部品IDを削除するとともにその部品IDを選択対象外部品リスト13dの最後尾へ登録する。
【0079】
その後、部品リスト更新部15cは、部品情報取得部15bに取得させたカーソル所在部品の部品IDのうち選択対象外部品リスト13dに登録されていない部品IDを除外したものを選択対象部品リスト13cへ登録する(ステップS208)。
【0080】
そして、表示制御部15dは、選択対象外部品リスト13dへ登録された部品IDの部品を非表示とし、選択対象部品リスト13cの先頭に繰り上がった部品IDの部品の表示輝度を他の部品の表示輝度よりも高くするハイライト表示を行う(ステップS209)。続いて、操作情報取得部15aは、カーソル移動量データ13aのカーソルの移動量をクリアする(ステップS210)。その後、操作情報取得部15aは、記憶部13に記憶されたハイライト部品座標データ13bに対して、ハイライト部品の座標の更新を行うとともに最終更新時刻を現在時刻に書き換える更新を行い(ステップS211)、処理を終了する。
【0081】
一方、カーソルの移動量が所定の閾値未満である場合(ステップS206 No)には、部品リスト更新部15cは、カーソル位置の移動によりカーソル所在部品が変化した可能性があるので、選択対象部品リスト13cの更新を行う(ステップS212)。つまり、部品情報取得部15bに取得させたカーソル所在部品の部品IDのうち選択対象外部品リスト13dに登録されている部品IDを除外したものを選択対象部品リスト13cへ登録する。
【0082】
その後、操作情報取得部15aは、記憶部13に記憶されたハイライト部品座標データ13bに対して、ハイライト部品の座標の更新を行うとともに最終更新時刻を現在時刻に書き換える更新を行い(ステップS211)、処理を終了する。
【0083】
(3)ホイール操作処理
次に、本実施例に係るホイール操作処理について説明する。図11は、実施例2に係るホイール操作処理の手順を示すフローチャートである。このホイール操作処理は、図9に示したステップS103でマウスホイールの回転が検出された場合に起動される処理である。
【0084】
図11に示すように、部品リスト更新部15cは、マウスホイールの回転方向及び回転量に基づき、選択対象外部品リスト13dの表示フラグを更新する(ステップS301)。例えば、部品リスト更新部15cは、マウスホイールの下方向への回転量が所定量に達する度に、表示フラグがOFFである部品のうち連番が最後尾である部品のフラグを1つずつONに設定する。また、部品リスト更新部15cは、マウスホイールの上方向への回転量が所定量に達する度に、表示フラグがONである部品のうち連番が先頭である部品のフラグを1つずつOFFに設定する。
【0085】
続いて、表示制御部15dは、更新後の表示フラグの設定状況に基づき、非表示化された部品の再表示または手前側部品の非表示化を行う(ステップS302)。例えば、表示フラグがOFFからONに更新された場合には、表示制御部15dは、表示フラグがONに更新された部品の非表示を解除することによりその部品を再表示させるとともに表示フラグがONである先頭の部品をハイライト表示させる。一方、表示フラグがONからOFFに更新された場合には、表示制御部15dは、表示フラグがOFFに更新された部品を非表示化するとともに表示フラグがONである先頭の部品をハイライト表示させる。
【0086】
その後、操作情報取得部15aは、記憶部13に記憶されたハイライト部品座標データ13bに対して、ハイライト部品の座標の更新を行うとともに最終更新時刻を現在時刻に書き換える更新を行い(ステップS303)、処理を終了する。
【0087】
(4)タイムアウト処理
次に、本実施例に係るタイムアウト処理について説明する。図12は、実施例2に係るタイムアウト処理の手順を示すフローチャートである。このタイムアウト処理は、図9に示したステップS106でマウスカーソルの静止時間が所定の閾値以上である場合に起動される処理である。
【0088】
図12に示すように、部品リスト更新部15cは、選択対象部品リスト13cのうち先頭に登録されている部品IDを削除するとともにその部品IDを選択対象外部品リスト13dの最後尾へ登録する(ステップS401)。
【0089】
その後、部品リスト更新部15cは、部品情報取得部15bに取得させたカーソル所在部品の部品IDのうち選択対象外部品リスト13dに登録されていない部品IDを除外したものを選択対象部品リスト13cへ登録する(ステップS402)。
【0090】
そして、表示制御部15dは、選択対象外部品リスト13dへ登録された部品IDの部品を非表示とし、選択対象部品リスト13cの先頭に繰り上がった部品IDの部品の表示輝度を他の部品の表示輝度よりも高くするハイライト表示を行う(ステップS403)。続いて、操作情報取得部15aは、カーソル移動量データ13aのカーソルの移動量をクリアする(ステップS404)。
【0091】
その後、操作情報取得部15aは、記憶部13に記憶されたハイライト部品座標データ13bに対して、ハイライト部品の座標の更新を行うとともに最終更新時刻を現在時刻に書き換える更新を行い(ステップS405)、処理を終了する。
【0092】
[実施例2の効果]
上述してきたように、本実施例に係るCAD装置10では、操作者が部品選択を行うために前段階として特段の操作を意識的に行わずとも、無意識のうちに目的の内部部品が手前に表示される。それゆえ、操作者は、内部部品が選択可能な状態となるまでに複雑な予備操作を行う必要がない。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、内部部品の選択操作を簡単に行うことが可能である。さらに、手前側の部品の非表示を進めることにより最も奥側に存在する部品を表示させることができるので、内部部品のみならず、三次元モデル画像の視点方向の変更に制約がある場合でも裏側部分にある部品を手軽に選択できる。
【0093】
また、本実施例に係るCAD装置10では、マウスカーソルが載置された部品であって選択対象部品リスト13cの先頭に繰り上がった部品の表示輝度を他の部品の表示輝度よりも高くするハイライト表示を実行する。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、カーソル位置の周辺に複数の部品が密集している場合でもカーソルが指し示す部品を明示することが可能である。
【0094】
さらに、本実施例に係るCAD装置10では、マウス移動を伴う特定の操作コマンドを受け付けた場合には、操作コマンドを実行した後のカーソル位置を記憶部13にハイライト部品座標データ13bとして記憶されたハイライト部品の座標に戻す。したがって、本実施例に係るCAD装置10によれば、特定の操作コマンドが実行された場合でもカーソル位置が移動することがなくなり、操作者の意識がカーソルから途切れるのを防止することが可能である。
【実施例3】
【0095】
さて、これまで開示の装置に関する実施例について説明したが、本発明は上述した実施例以外にも、種々の異なる形態にて実施されてよいものである。そこで、以下では、本発明に含まれる他の実施例を説明する。
【0096】
例えば、上記の実施例2では、選択対象部品リスト13c及び選択対象外部品リスト13dの両方を用いて表示制御を行う場合を説明したが、開示の装置はこれに限定されるものではない。例えば、開示の装置では、部品情報取得部15bに取得させたカーソル所在部品から選択対象外部品リスト13dに登録された部品を除外することにより、非表示対象とする手前側の部品を特定することもできる。
【0097】
また、上記の実施例2では、カーソル所在部品として、マウスカーソルの位置を起点としてそこから三次元モデルの投影面の法線方向に所在する部品の部品情報を部品情報取得部15bに取得させる場合を説明したが、開示の装置はこれに限定されるものではない。例えば、開示の装置では、マウスカーソルの位置を起点として三次元モデルの投影面に交わる法線と直交する方向に向かってその法線から所定の距離以内に存在する部品をカーソル所在部品として部品情報を取得するようにしてもよい。
【0098】
また、上記の実施例2では、CADシステム15に搭載された操作情報取得部15a、部品情報取得部15b、部品リスト更新部15c及び表示制御部15dの部品選択補助機能を常時使用する場合を説明したが、開示の装置はこれに限定されるものではない。例えば、開示の装置では、操作者に部品選択補助機能のONまたはOFFを選択させることもできる。
【0099】
また、図示した各装置の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、操作情報取得部15a、部品情報取得部15b、部品リスト更新部15c又は表示制御部15dの全部または一部の機能をCAD装置10の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしてもよい。そして、CAD装置10のCADシステム15が外部装置を呼び出すことにより、部品選択補助機能を発揮することとしてもよい。また、操作情報取得部15a、部品情報取得部15b、部品リスト更新部15c又は表示制御部15dの一部を別の装置がそれぞれ有し、ネットワーク接続されて協働することで、上記の設計支援装置10の機能を実現するようにしてもよい。
【0100】
[部品選択プログラム]
また、上記の実施例で説明した各種の処理は、予め用意されたプログラムをパーソナルコンピュータやワークステーションなどのコンピュータで実行することによって実現することができる。そこで、以下では、図13を用いて、上記の実施例と同様の機能を有する部品選択プログラムを実行するコンピュータの一例について説明する。なお、図13は、実施例3に係る部品選択プログラムを実行するコンピュータの一例について説明するための図である。
【0101】
図13に示すように、実施例3におけるコンピュータ100は、操作部110aと、マイク110bと、スピーカ110cと、ディスプレイ120と、通信部130とを有する。さらに、このコンピュータ100は、CPU150と、ROM160と、HDD(Hard Disk Drive)170と、RAM(Random Access Memory)180と有する。これら110〜180の各部はバス140を介して接続される。
【0102】
ROM160には、上記の実施例2で示した操作情報取得部15aと、部品情報取得部15bと、部品リスト更新部15cと、表示制御部15dとを搭載したCADシステム15と同様の機能を発揮する制御プログラムが予め記憶される。つまり、ROM160には、図13に示すように、操作情報取得プログラム160aと、部品情報取得プログラム160bと、部品リスト更新プログラム160cと、表示制御プログラム160dとを含むCADプログラム161が記憶される。なお、これらのプログラム160a〜160dについては、図2に示したCAD装置10の各構成要素と同様、適宜統合又は分離しても良い。
【0103】
そして、CPU150が、これらのプログラム160a〜160dを含むCADプログラム161をROM160から読み出して実行する。これによって、CPU150は、図13に示すように、CADプログラム161については、操作情報取得プロセス150a及び部品情報取得プロセス150bを含むCADシステム151として機能するようになる。さらに、CADプログラム161は、部品リスト更新プロセス150c及び表示制御プロセス150dを含むCADシステム151として機能するようになる。なお、各プロセス150a〜150dは、図2に示した、操作情報取得部15aと、部品情報取得部15bと、部品リスト更新部15cと、表示制御部15dとにそれぞれ対応する。
【0104】
そして、HDD170には、図示しない三次元モデル及びその部分部品の製図情報であるCADデータが設けられる。
【0105】
そして、CPU150は、HDD170からCADデータを読み出してカーソル移動量データ180a、ハイライト部品座標データ180b、選択対象部品リスト180c及び選択対象外部品リスト180dを生成し、生成したデータをRAM180に格納する。さらに、CPU150は、RAM180に格納されたカーソル移動量データ180aと、ハイライト部品座標データ180bと、選択対象部品リスト180cと、選択対象外部品リスト180dとを用いて、部品選択の補助機能を実現する。
【符号の説明】
【0106】
1 部品選択装置
2 表示部
3 入力部
4 判断部
5 抽出部
6 検出部
7 削除部
10 CAD装置
11 入力部
12 表示部
13 記憶部
13a カーソル移動量データ
13b ハイライト部品座標データ
13c 選択対象部品リスト
13d 選択対象外部品リスト
14 制御部
15 CADシステム
15a 操作情報取得部
15b 部品情報取得部
15c 部品リスト更新部
15d 表示制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品からなる三次元モデルを画面に表示する工程と、
前記画面に表示されるカーソルの位置を入力する工程と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にあるか否かを判断する工程と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にある場合、前記カーソルの位置を通過する前記画面の法線上に存在する複数の部品を抽出する工程と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にあるときに入力される外部からの指示の有無を検出する工程と、
前記指示の有無に基づき、前記抽出された複数の部品のうち、前記画面の最前に存在する部品を当該画面から削除する工程と、
を具備する部品選択方法。
【請求項2】
前記抽出された複数の部品のうち前記画面の最前に存在する部品の表示輝度を他の部品の表示輝度よりも高くする工程をさらに含んだことを特徴とする請求項1に記載の部品選択方法。
【請求項3】
前記カーソルの位置を記録する工程と、
前記三次元モデルの拡大率を調節する指令を検出する工程と、
前記指令が検出された場合に、前記拡大率が調節された後のカーソル位置を前記拡大率が調節される前のカーソル位置に戻す工程と
をさらに含んだことを特徴とする請求項1または2に記載の部品選択方法。
【請求項4】
複数の部品からなる三次元モデルを画面に表示する表示部と、
前記画面に表示されるカーソルの位置を入力する入力部と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にあるか否かを判断する判断部と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にある場合、前記カーソルの位置を通過する前記画面の法線上に存在する複数の部品を抽出する抽出部と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にあるときに入力される外部からの指示の有無を検出する検出部と、
前記指示の有無に基づき、前記抽出された複数の部品のうち、前記画面の最前に存在する部品を当該画面から削除する削除部と、
を具備する部品選択装置。
【請求項5】
複数の部品からなる三次元モデルを画面に表示する表示部と、
前記画面に表示されるカーソルの位置を入力する入力部と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にあるか否かを判断する判断部と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にある場合、前記カーソルの位置を通過する前記画面の法線上に存在する複数の部品を抽出する抽出部と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にあるときに入力される外部からの指示の有無を検出する検出部と、
前記指示の有無に基づき、前記抽出された複数の部品のうち、前記画面の最前に存在する部品を当該画面から削除する削除部と、
を具備するCAD装置。
【請求項6】
複数の部品からなる三次元モデルを画面に表示する手順と、
前記画面に表示されるカーソルの位置を入力する手順と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にあるか否かを判断する手順と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にある場合、前記カーソルの位置を通過する前記画面の法線上に存在する複数の部品を抽出する手順と、
前記カーソルの位置が前記三次元モデル上にあるときに入力される外部からの指示の有無を検出する手順と、
前記指示の有無に基づき、前記抽出された複数の部品のうち、前記画面の最前に存在する部品を当該画面から削除する手順と、
をコンピュータに実行させる部品選択プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−141699(P2011−141699A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1578(P2010−1578)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】