説明

配管の残留応力改善装置

【課題】屈曲管部の外周面を加熱することもできる配管の残留応力改善装置を提供する。
【解決手段】レーザヘッド部6と、円周方向移動手段と、回動手段と、管軸方向移動手段と、駆動制御装置とを備え、この駆動制御装置では、屈曲管部2Bの曲率半径の小さい側の外周面にレーザ光23Aを照射するときには、前記回動手段によって前記レーザヘッド部を前記屈曲管部の外周面から離反させるように回動させ、且つ、レーザヘッド部を直管部方向側へ移動させることにより、レーザヘッド部と屈曲管部の外表面との干渉を防止し、屈曲管部の曲率半径の大きい側の外周面にレーザ光を照射するときには、回動手段によってレーザヘッド部を前記屈曲管部の外周面に接近するように回動させ、且つ、レーザヘッド部を屈曲管部方向側へ移動させることにより、レーザヘッド部が屈曲管部の外周面から離れ過ぎてしまうのを防止するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配管の残留応力改善装置に関し、特に溶接などによって配管の内周面に生じる引っ張りの残留応力を低減(除去も含む)するために使用される配管の残留応力改善装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所その他の大型プラントなどにおいて配管を設置する場合に問題となるのは,その配管の内周面に生じる引っ張りの残留応力である。例えば溶接によって配管同士を接続すると、当該配管の溶接部には残留応力が発生し、この残留応力によって配管に応力腐食割れ(SCC)が発生して、配管の寿命が短くなる可能性がある。従って、溶接などによって配管に発生した残留応力は、低減することが望ましい。
【0003】
配管の残留応力を低減するための配管の残留応力改善装置としては、例えば特許文献1に記載の装置などが知られている。この装置は、配管の外周側に位置するアーク発生リングと、そのリングを挟むように配置されたリングコイルとを備えたものである。リングコイルによって磁場が発生されると、アーク発生リングと配管との間にアークが発生して、配管が加熱される。配管が加熱されることによって、配管の残留応力が低減される。
【0004】
また、配管の残留応力を低減するための配管の残留応力改善装置としては、高周波誘導加熱装置なども広く一般に知られている。
【0005】
【特許文献1】特開2001−150178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の配管の残留応力改善装置は大掛かりである。特に高周波誘導加熱装置では、誘導加熱コイルに高周波電力を供給する必要があるため、所要の供給電力が非常に大きくなり、しかも、加熱対象配管の内周面を冷却する必要があることから、そのための設備も必要になる。
【0007】
また、加熱対象の配管としては直管部のみを有するものだけでなく、L字状の屈曲管部(エルボ管部)も有する場合がある。従って、直管部の外周面のみを加熱することができる装置だけでなく、屈曲管部の外周面も加熱することができる装置の開発も望まれていた。
【0008】
従って本発明は上記の事情に鑑み、配管の外周面を加熱して同配管の残留応力を低減(除去も含む)することができ、しかも装置構成が比較的コンパクトであり、また、屈曲管部の外周面を加熱することもできる配管の残留応力改善装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の配管の残留応力改善装置は、直管部を有する配管の外周面にレーザ光を照射して前記配管を加熱する配管の残留応力改善装置であって、
前記レーザ光を出射する1つ又は複数のレーザヘッドを保持するレーザヘッド部と、
前記レーザヘッドを前記レーザヘッド部とともに前記直管部の外周面に沿って且つ前記直管部の管軸を中心とする円周方向に沿って移動させる円周方向移動手段とを備え、
且つ、前記配管は前記直管部と、この直管部に続く屈曲管部とを有するものであり、
前記レーザヘッド部を、前記レーザヘッド部の前記管軸方向の後方側に位置する回動軸を回動中心として前記管軸を含む面内で回動させることにより、前記レーザヘッド部の前記管軸方向の前方側を前記屈曲管部の外周面に対して接近、離反可能な回動手段と、
前記レーザヘッド部を前記管軸方向に沿って移動させることにより、前記屈曲管部の外周面におけるレーザ光の照射位置を調整可能な管軸方向移動手段と、
前記屈曲管部の曲率半径の小さい側の外周面に前記レーザ光を照射するときには、前記回動手段によって前記レーザヘッド部を前記屈曲管部の外周面から離反させるように回動させ、且つ、前記レーザヘッド部を直管部方向側へ移動させることにより、前記レーザヘッド部と前記屈曲管部の外表面との干渉を防止し、前記屈曲管部の曲率半径の大きい側の外周面に前記レーザ光を照射するときには、前記回動手段によって前記レーザヘッド部を前記屈曲管部の外周面に接近するように回動させ、且つ、前記レーザヘッド部を屈曲管部方向側へ移動させることにより、前記レーザヘッド部が前記屈曲管部の外周面から離れ過ぎてしまうのを防止するように制御する駆動制御装置とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の配管の残留応力改善装置によれば、レーザ光を出射する1つ又は複数のレーザヘッドを保持するレーザヘッド部と、レーザヘッドをレーザヘッド部とともに直管部の外周面に沿って直管部の管軸を中心とする円周方向に沿って移動させる円周方向移動手段とを備えことを特徴とするものであるため、レーザ光により配管の外周面を加熱して同配管の残留応力を低減(除去)することができ、しかも、従来のものに比べて装置構成がコンパクトであるため、比較的狭い限定された空間に設置して施工することもでき、コストダウンを図ることもできる。
また、本発明の配管の残留応力改善装置によれば、前記回動手段を備えたことを特徴としており、この回動手段によってレーザヘッド部を、レーザヘッド部の管軸方向の後方側に位置する回動軸を回動中心として管軸を含む面内で回動させることにより、レーザヘッド部の管軸方向の前方側を屈曲管部の外周面に対して接近、離反することが可能なことから、屈曲管部の外周面、即ち、屈曲管部の腹側(曲率半径の小さい側)や背側(曲率半径の大きい側)の外周面などとレーザヘッド部との干渉を防止しながら、同外周面に接近して、同外周面にレーザ光を照射することができる。従って、屈曲管部の外周面を効率的に加熱して屈曲管部の残留応力を低減することができ、屈曲管部に好適な配管の残留応力改善装置を実現することができる。
また、本発明の配管の残留応力改善装置によれば、前記管軸方向移動手段を備えたことを特徴としており、この管軸方向移動手段によってレーザヘッド部を管軸方向へ移動させることにより、屈曲管部の外周面におけるレーザ光の照射位置を適宜調整することができることから、より確実にレーザヘッド部と屈曲管部の腹側や背側の外周面などとの干渉を防止しながら、同外周面に接近して、同外周面にレーザ光を照射することができる。従って、屈曲管部の外周面をより効率的に加熱して屈曲管部の残留応力を低減することができ、屈曲管部により好適な配管の残留応力改善装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づき詳細に説明する。
【0012】
<実施の形態例1>
図1は本発明の実施の形態例1に係る配管の残留応力改善装置の構成を一部破断して示す平面図、図2は前記配管の残留応力改善装置の構成を一部破断して示す側面図(図1のA方向矢視図)、図3(a)は図1のB方向矢視図、図3(b)は図1のC方向矢視図、図4は前記配管の残留応力改善装置に備えた反射方向調整手段の作用効果を示す説明図である。また、図5はマルチタイプのレーザヘッドの構成例を示す図である。
【0013】
図1〜図3に示す本実施の形態例1の配管の残留応力改善装置1は、直管である配管2(即ち直管部のみを有する配管)の内周面に溶接(溶接部26参照)などによって生じた引っ張りの残留応力を低減(除去も含む)するために用いられるものであり、リングレール3、回転走行台車5、レーザヘッド7を保持するレーザヘッド部6などを備えている。
【0014】
図1〜図4に示すように、リングレール3は配管2の周囲を取り囲むようにして配管2の外周面2aに取り付けられている。リングレール3は半円形状のリングレール部材3A,3Bに2分割されており、これらのリングレール部材3A,3Bの間に配管2を挟んだ状態でボルト4などの連結手段によってリングレール3A,3Bを連結することにより、円形状(リング状)に形成されている。
【0015】
回転走行台車5は、リングレール3に係合しつつ、このリングレール3を軌道として走行移動する。即ち、回転走行台車5は、配管2の外周面2aに沿って配管(直管部)2の管軸2b(仮想軸)を中心とする円周方向(θ方向:以下単に円周方向という)に走行移動する。
【0016】
詳述すると、リングレール3の外周面3aには歯車3bが形成される一方、回転走行台車5には歯車8が軸受9に支持されて回転自在に設けられており、これらの歯車3bと歯車8とが噛合している。そして、歯車8は回転走行台車5に設けられた周方向駆動モータ10の回転軸に連結されている。従って、周方向駆動モータ10が回転すると、歯車8が歯車3bと噛合しながら回転しつつ歯車8に沿って円周方向に走行移動する。その結果、歯車8とともに回転走行台車5全体が、円周方向に走行移動する。
【0017】
また、回転走行台車5には円周方向に対して前後左右の4箇所にそれぞれ一対の周方向ガイドローラ11a,11bが回転自在に設けられており、これらの周方向ガイドローラ11a,11bが、リングレール3の円周方向に対する左右両端部3c,3dをそれぞれ挾持している。従って、回転走行台車5はこれらの周方向ガイドローラ11a,11bとリングレール3の左右両端部3c,3dとに案内されて円滑に円周方向に走行移動することができる。
【0018】
上述したリングレール3と回転走行台車5により、レーザヘッド部6を円周方向に移動させる円周方向移動手段が構成されている。
【0019】
回転走行台車5の管軸2bの方向(以下単に管軸方向という)の側面には、平面視(図1参照)が矩形状で且つ正面視(図3(b)参照)がコ字状の支持フレーム12が設けられている。そして、レーザヘッド部6は管軸方向に長い直方体状であり、支持フレーム12の中央部に配置され、管軸方向に移動可能に設けられている。詳述すると、支持フレーム12には管軸方向と平行にリニアレール13と、ボールねじ軸(おねじ)14とが取り付けられている。ボールねじ14は軸受15を介して回転自在に支持フレーム12に支持されている。また、リニアレール13とボールねじ軸14は、レーザヘッド部6に対して円周方向の一方側と他方側とにそれぞれ配置されている。
【0020】
また、レーザヘッド部6の前記一方側の側面にはリニアブッシュ16が取り付けられており、このリニアブッシュ16がリニアレール13に管軸方向へ摺動可能に装着されている。レーザヘッド部6の前記他方側の側面にはボールナット(めねじ)17が取り付けられており、このボールナット17とボールねじ軸14とが螺合している。また、ボールねじ軸14は回転走行台車5に設けられた軸方向駆動モータ18の回転軸に連結されている。
【0021】
従って、軸方向駆動モータ18によってボールねじ軸14が回転駆動されると、ボールナット17がボールねじ軸14にそって管軸方向(Z方向)に移動し、その結果、ボールナット17とともにレーザヘッド部6全体が管軸方向に移動する。また、このときレーザヘッド部6はリニアレール13とリニアブッシュ16とに案内されて管軸方向に円滑に移動することができる。図1にはレーザヘッド部6が管軸方向の前方へ移動したときの状態を一点鎖線で示している。
【0022】
上述の軸方向駆動モータ18とボールねじ軸14とボールナット17とにより、レーザヘッド部6を管軸方向に沿って移動させる管軸方向移動手段が構成されている。
【0023】
また、支持フレーム12の管軸方向の前面にはローラ21が回転自在に設けられており、これらのローラ21は配管2の外表面2a上を円周方向に転動するようになっている。従って、回転走行台車5とともに支持フレーム12やこれに支持されたレーザヘッド部6などが円周方向に移動するとき、ローラ21がこれらの荷重を支持しつつ配管2の外周面2a上を円周方向に転動することによって、前記円周方向の移動が円滑に行われる。
【0024】
レーザヘッド部6に設けられたレーザヘッド7は、光ファイバ25を介して図示しないYAGレーザ発振装置などのレーザ発振装置に接続されている。従って、前記レーザ発振装置から出力されたレーザ光は、光ファイバ25によってレーザヘッド7まで伝送された後、レーザヘッド7から出射されて配管2の外周面2aに照射される(例えば図2のハッチング部分に照射される)。
【0025】
また、レーザヘッド部6には管軸方向(レーザヘッド部6の長手方向)に平行に配置されたリニアモータ19の固定部19Aと、このリニアモータ固定部19Aに沿って管軸方向に移動するリニアモータ19の可動部19Bとが設けられており、このリニアモータ可動部19Bにレーザヘッド7が取り付けられている。従って、レーザヘッド7はリニアモータ19によって管軸方向(レーザヘッド部6の長手方向:γ方向)にオシレート移動することができる。
【0026】
即ち、上述のリニアモータ19により、レーザヘッド7を管軸方向に沿ってオシレート移動するオシレート手段を構成している。なお、必ずしもこれに限定するものではなく、オシレート手段としてはレーザヘッド7を管軸方向に沿ってオシレート移動することができるものでればよく、例えば前述の管軸方向移動手段をオシレート手段として用いることもできる。
【0027】
そして、リニアモータ固定部19Aには、レーザヘッド部6に設けられた傾斜駆動モータ22の回転軸が連結されている。従って、傾斜駆動モータ22によってリニアモータ固定部19Aが回動されると、リニアモータ可動部19Bとともにレーザヘッド7が、リニアモータ固定部19Aを回動軸として同回動軸回りに回動(β方向に回動)することにより、管軸方向に対して右方向又は左方向に傾斜する。このとき、リニアモータ固定部19Aは管軸方向に平行であるため、レーザヘッド7の向きが管軸2bと直交する面(仮想面)内で調整されて、レーザヘッド7から出射されるレーザ光の出射方向が前記面内で調整されることになる。
【0028】
即ち、上述の傾斜駆動モータ22とリニアモータ19は、レーザヘッド6の向きを管軸2bと直交する面内で調整することによって、レーザ光の出射方向を管軸2bと直交する面内で調整することにより、配管2の外周面2aで反射したレーザ光がレーザヘッド7に戻らないようにレーザ光の反射方向を調整する反射方向調整手段を構成している。
【0029】
例えば、図4(a)に示すように反射方向調整手段でレーザヘッド7の向き(レーザ光23Aの出射方向)を調整しない場合には、配管2の外周面2aで反射したレーザ光23Aの反射光23Bがレーザヘッド7に戻ってきてしまうのに対し、図4(b)に示すように反射方向調整手段でレーザヘッド7の向き(レーザ光23Aの出射方向)を調整した場合には、配管2の外周面2aで反射したレーザ光23Aの反射光23Bがレーザヘッド7に戻らないようにすることができる。
【0030】
なお、この場合、必ずしも管軸2bと直交する面内でレーザヘッド7の向き(レーザ光の出射方向)を調整する場合に限定するものではなく、管軸2bと交差する面(仮想面)内でレーザヘッド7の向き(レーザ光23Aの出射方向)を調整して反射光23Bがレーザヘッド7に戻らないようにすればよい。
【0031】
また、この場合、必ずしも反射方向調整手段によって反射方向を調整可能にする場合に限定するものではなく、固定であってよい。即ち、予めレーザヘッド6の向きを管軸2bと直交(交差でもよい)する面内で調整することによって、レーザ光23Aの出射方向を管軸2bと直交(交差でもよい)する面内で調整することにより、配管2の外周面2aで反射したレーザ光がレーザヘッド7に戻らないように構成しておいてもよい。
【0032】
また、上記ではレーザヘッド部6に設けるレーザヘッド7がオシレートタイプのものになっているが、これに限定するものではなく、レーザヘッド部6に設けるレーザヘッド7は、管軸方向に沿って複数個配置したマルチタイプのものであってもよい。例えば、図5に示すマルチタイプのものでは、レーザヘッド部6に管軸方向(レーザヘッド部6の長手方向)と平行に設けたスライド部材24に複数(図示例では11個)のレーザヘッド7が摺動可能に設けられている。各レーザヘッド7は、それぞれレーザ光23Aを伝送する光ファイバ25を介して図示しないレーザ発振装置に接続されている。また、複数のレーザヘッド7の相互間隔はスライド部材24に沿って摺動させることにより、図5(a)に示すように広くしたり、図5(b)に示すように狭くしたり適宜調節することができる。
【0033】
このようなマルチタイプにおいて、レーザヘッド7をβ方向に移動(回動)させる場合には、例えば複数のレーザヘッド7に共通の軸(例えばスライド部材24)を傾斜駆動モータなどの反射方向調整手段(回動手段)で回動させることによって全レーザヘッド7を同時に回動するようにしてもよく、各レーザヘッド7に個別に傾斜駆動モータなどの反射方向調整手段(回動手段)を設けて各レーザヘッド7を個別に回動させるようにしてもよい。
【0034】
また、図示は省略するが、θ,Z,γ及びβの各方向の移動位置や回動位置は、これらの移動位置や回動位置を検出するロータリエンコーダやリニアエンコーダなどの位置センサの位置検出信号に基づいて、駆動制御装置により、配管2の外周面2aに対して所定の位置となるように制御される。また、前記駆動制御装置では、レーザ発振装置から発振されるレーザ光23Aの出力ひいては、レーザヘッド7から出射されて配管2の外周面2aに照射されるレーザ光23Aの照射強度も制御するようになっている。
【0035】
以上のように、本実施の形態例1の配管の残留応力改善装置1によれば、レーザ光23Aを出射する1つ又は複数のレーザヘッド7を保持するレーザヘッド部6と、レーザヘッド7をレーザヘッド部6とともに配管2(直管部)の外周面に沿って管軸2bを中心とする円周方向に沿って移動させる円周方向移動手段(リングレール3、回転走行台車5)とを備えことを特徴とするものであるため、レーザ光23Aにより配管2の外周面2aを加熱して配管2の残留応力を低減(除去)することができ、しかも、従来のものに比べて装置構成がコンパクトであるため、比較的狭い限定された空間に設置して施工することもでき、コストダウンを図ることもできる。
【0036】
更に、本実施の形態例1の配管の残留応力改善装置1によれば、レーザヘッド7の向きを管軸2bと交差する面内で調整することによってレーザ光23Aの出射方向を同面内で調整することにより、配管2の外周面2aで反射したレーザ光23A(反射光23B)が、レーザヘッド7に戻らないように構成したことを特徴とするため、レーザ光23Aの反射によってレーザヘッド7(レーザヘッド7に備えたレンズなど)が損傷するのを防止することができる。
【0037】
特に、本実施の形態例1の配管の残留応力改善装置1では、反射方向調整手段(傾斜駆動モータ22、リニアモータ19)を備えたことを特徴としており、この反射方向調整手段によってレーザ光23Aの反射方向を調整することが可能であることから、レーザ光23Aの反射によるレーザヘッド7(レーザヘッド7に備えたレンズなど)の損傷を、より確実に防止することができる。
【0038】
<実施の形態例2>
図6は本発明の実施の形態例2に係る配管の残留応力改善装置の構成を一部破断して示す平面図、図7は前記配管の残留応力改善装置の構成を一部破断して示す側面図(図6のD方向矢視図)である。なお、これらの図において上記実施の形態例1(図1〜図4参照)と同様の部分については同一の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0039】
図6及び図7に示す本実施の形態例2の配管の残留応力改善装置41は、直管部2Aと、この直管部2Aに続くL字状(円弧状)の屈曲管部(エルボ管部)2Bとを有する配管2において、特に屈曲管部2Bの内周面に溶接(溶接部42参照)などによって生じた引っ張りの残留応力を低減(除去も含む)するために用いて好適なものである。但し、本配管の残留応力改善装置41は屈曲管部2Bの残留応力を低減するのみならず、直管部2Aの残留応力を低減することもできる。
【0040】
図6及び図7に示すように、本配管の残留応力改善装置41でも、リングレール3は上記実施の形態例1の場合と同様、屈曲管部2Aの近傍において、直管部2Aの外周面2aに装着されている。
【0041】
そして、本配管の残留応力改善装置41では、上記実施の形態例1の配管の残留応力改善装置1におけるレーザヘッド部6に代えてレーザヘッド部43と、このレーザヘッド部43を支持する支持部材44とを備えている。上記実施の形態例1では支持フレーム12の中央部にレーザヘッド部6を配置しているが(図1参照)、本実施の形態例2ではレーザヘッド部43は支持フレーム12から離れた位置、即ち、上記実施の形態例1に比べて配管2から離れた位置に配設されており、支持部材44が支持フレーム12の中央部に配置されている。
【0042】
従って、リニアレール13とボールねじ軸14は支持部材44に対して、配管2の直管部2Aの管軸2b(仮想軸)を中心とする円周方向(θ方向:以下単に円周方向という)の一方側と他方側とにそれぞれ配置されている。また、リニアブッシュ16は支持部材44の前記一方側の側面に取り付けられており、ボールナット17は支持部材44の前記他方側の側面に取り付けられている。
【0043】
支持部材44は配管2の直管部2Aの径方向に所定の長さを有し、先端側が屈曲したL字状のものである。そして、この支持部材44の先端部にレーザヘッド部44を取り付けることにより、レーザヘッド部43と配管2の外周面2aとの距離ひいては、レーザヘッド部44に保持されたレーザヘッド45と、配管2の外周面2aとの距離が所定の距離に設定されている。この所定の距離は配管2の径、後述するレーザヘッド45の向き(レーザ光23Aの出射方向)、屈曲管部2Bの外周面2aにおけるレーザ光の照射位置などによって適宜設定すればよい。
【0044】
レーザヘッド部43は管軸方向に長い直方体状のものである。レーザヘッド部43に設けられたレーザヘッド48は、光ファイバ25を介して図示しないYAGレーザ発振装置などのレーザ発振装置に接続されている。従って、前記レーザ発振装置から出力されたレーザ光23Aは、光ファイバ25によってレーザヘッド48まで伝送された後、レーザヘッド48から出射されて屈曲管部2Bの外周面2aに照射される。
【0045】
また、レーザヘッド部43に設けられたレーザヘッド48はオシレートタイプのものである。即ち、レーザヘッド部43には管軸2bの方向(以下単に管軸方向という)に平行(レーザヘッド部43の長手方向に平行)に配置されたリニアモータ46の固定部46Aと、このリニアモータ固定部46Aに沿って管軸方向に移動するリニアモータ46の可動部46Bとが設けられており、このリニアモータ可動部46Bにレーザヘッド48が傾斜駆動モータ45を介して取り付けられている。
【0046】
従って、レーザヘッド48はリニアモータ46により、傾斜駆動モータ45とともに管軸方向(レーザヘッド部43の長手方向:γ方向)にオシレート移動することができる。即ち、上述のリニアモータ46により、レーザヘッド48を管軸方向に沿ってオシレート移動するオシレート手段を構成している。なお、必ずしもこれに限定するものではなく、オシレート手段としてはレーザヘッド48を管軸方向に沿ってオシレート移動することができるものでればよく、例えば軸方向駆動モータ18とボールねじ軸14とボールナット17とから構成される管軸方向移動手段をオシレート手段として用いることもできる。
【0047】
そして更に、レーザヘッド48は傾斜駆動モータ45によってα方向に回動されるようになっている。即ち、傾斜駆動モータ45は、その回転軸45aの軸方向が管軸2bを含む面(仮想面)と直交しており、この回転軸45aを回動軸として同回動軸回りにレーザヘッド48を回動させる(α方向に回動させる)。その結果、レーザヘッド48の向きを管軸方向の前方側(屈曲管部方向側)へ向けて、レーザヘッド48から出射されるレーザ光23Aの出射方向を管軸方向の前方側へ向けることができるため、レーザ光23Aを、レーザヘッド部43(レーザヘッド48)よりも管軸方向の前方に位置する屈曲管部2Bの外周面2aに照射することができる。
【0048】
即ち、上述の傾斜駆動モータ45は、レーザヘッド48の向きを管軸2bを含む面(仮想面)内で調整することによってレーザ光23Aの出射方向を同面内で調整することにより、レーザ光23Aを、レーザヘッド48よりも管軸方向の前方に位置する屈曲管部2Bの外周面2aに照射するようにレーザ光23Aの出射方向を調整する出射方向調整手段を、構成している。
【0049】
なお、この場合、必ずしも出射方向調整手段によって調整可能にする場合に限定するものではなく、固定であってもよい。即ち、予め、レーザヘッド48の向きを管軸2bを含む面内で調整することによってレーザ光23Aの出射方向を同面内で調整することにより、レーザ光23Aを、レーザヘッド48よりも管軸方向の前方に位置する屈曲管部2Bの外周面2aに照射するように構成しておいてもよい。
【0050】
また、リニアモータ固定部46Aには、レーザヘッド部43に設けられた傾斜駆動モータ49の回転軸が連結されている。従って、傾斜駆動モータ49によってリニアモータ固定部46Aが回動されると、リニアモータ可動部46Bとともにレーザヘッド48が、リニアモータ固定部46Aを回動軸として同回動軸回りに回動(β方向に回動)することにより、管軸方向に対して右方向又は左方向に傾斜する。このとき、リニアモータ固定部46Aは管軸方向に平行であるため、レーザヘッド48の向きが管軸2bと直交する面(仮想面)内で調整されて、レーザヘッド48から出射されるレーザ光23Aの出射方向が同面内で調整されることになる。
【0051】
即ち、上述の傾斜駆動モータ49とリニアモータ46とにより、レーザヘッド48の向きを管軸2bと直交(交差でもよい)する面内で調整することによってレーザ光23Aの出射方向を同面内で調整することにより、配管2の外周面2aで反射したレーザ光23Aがレーザヘッド7に戻らないようにレーザ光23Aの反射方向を調整する反射方向調整手段を、構成している。
【0052】
なお、かかる反射方向調整手段は、特に直管部2Aの外周面2aにレーザ光23Aを照射する場合に有効である。つまり、直管部2Aの外周面2aにレーザ光23Aを照射する際、傾斜駆動モータ45によってレーザヘッド48を管軸方向の前方に傾斜させずにレーザ光23Aを照射する場合には、前記反射方向調整手段によってレーザ光23Aの出射方向を調整することにより、当該レーザ光23Aの反射光がレーザヘッド48に戻ってくるのを防止することができる(図4参照)。
【0053】
また、この場合、必ずしも反射方向調整手段によって調整可能にする場合に限定するものではなく、固定であってもよい。即ち、予め、レーザヘッド48の向きを管軸2bと直交(交差でもよい)する面内で調整することによってレーザ光23Aの出射方向を同面内で調整することにより、直管部2Aの外周面2aで反射したレーザ光23Aがレーザヘッド48に戻らないように構成しておいてもよい。
【0054】
また、上記ではレーザヘッド部43に設けるレーザヘッド48がオシレートタイプのものになっているが、これに限定するものではなく、レーザヘッド部43に設けるレーザヘッド48は管軸方向に沿って複数個配置したマルチタイプのものにしてもよい。例えば、前述のような図5に示すマルチタイプのものでもよい。なお、図5において、レーザヘッド6はレーザヘッド48に置き換える。
【0055】
このようなマルチタイプにおいて、レーザヘッド48をβ方向に移動(回動)させる場合には、例えば複数のレーザヘッド48に共通の軸(例えばスライド部材24)を傾斜駆動モータなどの反射方向調整手段(回動手段)で回動させることによって全レーザヘッド48を同時に回動するようにしてもよく、各レーザヘッド48に個別に傾斜駆動モータなどの反射方向調整手段(回動手段)を設けて、各レーザヘッド48を個別に回動させるようにしてもよい。
【0056】
また、このようなマルチタイプにおいて、レーザヘッド48をα方向に移動(回動)させる場合には、各レーザヘッド48に傾斜駆動モータ45を設けて各レーザヘッド48を個別に移動(回動)させるようにしてもよく、回動可能に設けたレーザヘッド48を全て適宜の連結手段で連結して、例えば1台の傾斜駆動モータ45で全レーザヘッド48を同時にする移動(回動)させるようにしてもよい。
【0057】
また、図示は省略するが、θ,Z,γ,β及びαの各方向の移動位置や回動位置は、これらの移動位置や回動位置を検出するロータリエンコーダやリニアエンコーダなどの位置センサの位置検出信号に基づいて、駆動制御装置により、配管2(直管部22A、屈曲管部22B)の外周面2aに対して所定の位置となるように制御される。また、前記駆動制御装置では、レーザ発振装置から発振されるレーザ光23Aの出力ひいては、レーザヘッド48から出射されて配管2の外周面2aに照射されるレーザ光23Aの照射強度も制御するようになっている。
【0058】
特に、屈曲管部2Bの外周面2aにレーザ光23Aを照射する場合、図7のように管軸方向の各位置から斜めにレーザ光23Aを照射すると、管軸方向の後方側(直管部方向側)と前方側(屈曲管部方向側)とではレーザ光23Aの照射距離が異なるため、屈曲管部2Bの外周面2aの各位置における照射強度が異なってしまうことがある。
【0059】
そこで、出射方向調整手段としての駆動制御装置では、各位置の照射強度を均一にするようにレーザ発振装置から発振されるレーザ光23Aの出力を調整する。即ち、レーザヘッド48がオシレートタイプの場合には、レーザヘッド48の各オシレート位置でレーザヘッド48から出射されるレーザ光23Aの屈曲管部2Bの外周面2aにおける照射強度が均一になるようにレーザ発振器からのレーザ光23Aの出力を調整する。また、レーザヘッド48がマルチタイプの場合には、複数のレーザヘッド48からそれぞれ出射されるレーザ光23Aの屈曲管部2Bの外周面2aにおける照射強度が均一になるように各レーザ発振装置からのレーザ光23Aの出力を調整する。
【0060】
また、駆動制御装置では、軸方向駆動モータ18などから構成される管軸方向移動手段を制御して、レーザヘッド部43(レーザヘッド48)の管軸方向の位置を調整することにより、例えば屈曲管部2Bの腹側(曲率半径の小さい側:図7の下側)の外周面2aにレーザ光23Aを照射するときの照射位置や、屈曲管部2Bの背側(曲率半径の大きい側:図7の上側)の外周面2aにレーザ光23Aを照射するときの照射位置などを調整する。
【0061】
以上のことから、本実施の形態例2の配管の残留応力改善装置41によれば上記実施の形態例1の配管の残留応力改善装置1と同様の作用効果が得られる他、次のような作用効果が得られる。
【0062】
即ち、本実施の形態例2の配管の残留応力改善装置41によれば、レーザヘッド48の向きを管軸2aを含む面内で調整することによってレーザ光23Aの出射方向を同面内で調整することにより、レーザ光23Aを、レーザヘッド48よりも管軸方向の前方に位置する屈曲管部2Bの外周面2aに照射する構成としたことを特徴とするため、屈曲管部2Bの外周面2aへのレーザ光23Aの照射が可能となり、屈曲管部2Bの残留応力を低減(除去)することができる。即ち、屈曲管部2Bに好適な配管の残留応力改善装置を実現することができる。
【0063】
特に、本実施の形態例2の配管の残留応力改善装置41では、出射方向調整手段(傾斜駆動モータ45)を備えたことを特徴としており、この出射方向調整手段によってレーザ光23Aの出射方向を調整することが可能であることから、屈曲管部2Bの外周面2aへのレーザ光23Aの照射を、より確実に行うことができて、屈曲管部2Bの残留応力の低減(除去)を、より確実に行うことができる。即ち、より屈曲管部2Bに好適な配管の残留応力改善装置を実現することができる。
【0064】
また、本実施の形態例2の配管の残留応力改善装置41によれば、管軸方向移動手段(軸方向駆動モータ18、ボールねじ軸14、ボールナット17)を備えたことを特徴としており、この管軸方向移動手段によってレーザヘッド部43を管軸方向へ移動させることにより、屈曲管部2Bの外周面におけるレーザ光23Aの照射位置を適宜調整することができることから、例えば屈曲管部2Bの腹側の外周面2aと、屈曲管部2Bの背側の外周面2とにレーザ光23Aを確実に照射することができる。
【0065】
また、本実施の形態例2の配管の残留応力改善装置41によれば、出力調整手段(駆動制御装置)を備えたことを特徴としており、この出力調整手段によって各オシレート位置でレーザヘッド48(オシレートタイプ)から出射されるレーザ光23Aの屈曲管部2Bの外周面2aにおける照射強度を均一にすることが可能であることから、より的確且つ効率的に屈曲管部2Bの外周面2aをレーザ光23Aによって加熱することができる。
【0066】
或いは、本実施の形態例2の配管の残留応力改善装置41によれば、出力調整手段(駆動制御装置)を備えたことを特徴としており、この出力調整手段によって複数のレーザヘッド48(マルチタイプ)からそれぞれ出射されたレーザ光23Aの屈曲管部2Bの外周面2aにおける照射強度を均一にすることができることから、より的確且つ効率的に屈曲管部2Bの外周面2aをレーザ光23Aによって加熱することができる。
【0067】
<実施の形態例3>
図8は本発明の実施の形態例3に係る配管の残留応力改善装置の構成を示す側面図である。
【0068】
図8に示す本実施の形態例3の配管の残留応力改善装置61は、直管部2Aと、この直管部2Aに続くL字状(円弧状)の屈曲管部(エルボ管部)2Bとを有する配管2において、特に屈曲管部2Bの内周面に溶接(溶接部66参照)などによって生じた引っ張りの残留応力を低減(除去も含む)するために用いて好適なものである。但し、本配管の残留応力改善装置61は屈曲管部2Bの残留応力を低減するのみならず、直管部2Aの残留応力を低減することもできる。
【0069】
図8に示すように、配管の残留応力改善装置61は、リングレール3、回転走行台車5、レーザヘッド62を保持するレーザヘッド部63などを備えている。
【0070】
リングレール3は、屈曲管部2Bの近傍において、直管部2Aの周囲を取り囲むようにして直管部2Aの外周面2aに取り付けられている。回転走行台車5は、リングレール3の周面に沿って走行する。即ち、回転走行台車5は、リングレール3に係合しつつ、このリングレール3を軌道として走行することにより、直管部2Aの外周面2aに沿って直管部2Aの管軸2b(仮想軸)を中心とする円周方向(θ方向:以下単に円周方向という)に走行移動する。リングレール3の外周面3aには歯車3bが形成されており、この歯車3bと、回転走行台車5に設けた図示しない歯車とが噛合している。なお、リングレール3及び回転走行台車5の具体的な構成については、上記実施の形態例1のリングレール3及び回転走行台車5と同様であるため、ここでの図示及び詳細な説明は省略する。
【0071】
上述のリングレール3と回転走行台車5により、レーザヘッド部63を円周方向に移動させる円周方向移動手段が構成されている。
【0072】
回転走行台車5の管軸2bの方向(以下単に管軸方向という)の後方側には、回転走行台車5の管軸方向の前方側(屈曲管部方向側)に設けられたレーザヘッド部63などのとの重量バランスをとるためにバランスウエイト64が設けられている。
【0073】
回転走行台車5にはリニアモータ64が取り付けられている。リニアモータ64は回転走行台車5の外周面5aに固定されたリニアモータ固定部64Aと、このリニアモータ固定部64Aに沿って管軸方向に移動する前後(管軸方向)スライドとしてのリニアモータ可動部64Bとを有してなるものである。即ち、リニアモータ64は、レーザヘッド部63(レーザヘッド62)を管軸方向(Z方向)に沿って移動させる管軸方向移動手段を構成している。
【0074】
リニアモータ可動部64Bの先端部には側面視がコ字状の支持部材65が接続されており、この支持部材65にリニアモータ67が取り付けられている。リニアモータ67の固定部67Aはその長手方向が直管部2Aの半径方向(以下単に半径方向という)に沿うようにして支持部材65に固定されている。リニアモータ67の可動部67Bは、リニアモータ固定部67Bに沿って半径方向(L方向)に移動する。即ち、リニアモータ64は、レーザヘッド部63(レーザヘッド62)を半径方向(L方向)に沿って移動させる径方向移動手段を構成している。
【0075】
更に、リニアモータ可動部67Bには側面視がコ字状の支持部材69が接続されており、この支持部材69にリニアモータ68が取り付けられている。リニアモータ68の固定部68Aはその長手方向が半径方向に沿うようにして支持部材69に固定されている。リニアモータ68の可動部68Bはリニアモータ固定部68Bに沿って半径方向(L方向)に移動する。
【0076】
レーザヘッド部63は管軸方向に長い直方体状のものであり、管軸方向の後方側(直管部方向側)の端部には管軸方向に長い長孔70が形成された連結部71が突設されている。一方、リニアモータ可動部68Bには連結軸72を有する連結部73が突設されている。そして、長孔70に連結軸72が、長孔70の長手方向に摺動可能に挿通されて、リニアモータ可動部68B(連結部73)とレーザヘッド部63(連結部71)とが連結されている。
【0077】
また、支持部材69の直管部2A側の面には管軸方向に沿ってレーザヘッド部6まで延びた連結部材74が接続されている。連結部材74の途中には直管部2Aの外周面2a上を円周方向に沿って転動するガイドローラ75が、回転自在に設けられている。そして、連結部材74の管軸方向前方側の端部には回動軸76を介して、レーザヘッド部63の直管部2A側の面に突設された連結部77が連結されている。回動軸76(連結部77)は、レーザヘッド部63の管軸方向の後方側(基端側)に位置している。
【0078】
従って、リニアモータ可動部68Bがリニアモータ固定部68Aに沿って半径方向に移動すると、レーザヘッド部63がその基端側に位置する回動軸76を回動中心として回動(α方向に回動)するため、レーザヘッド部63の管軸方向の前方側(先端側)が屈曲管部2Bの外周面2bに対して接近又は離反する。この場合、回動軸76はその軸方向が、管軸2bを含む面(仮想面)と直交しているため、レーザヘッド部63は管軸2bを含む面内で回動することになる。
【0079】
即ち、上述のリニアモータ68と連結部71の連結軸72と連結部71の長孔70と連結部材74と連結部77の回動軸76とにより、レーザヘッド部63を、レーザヘッド部63の管軸方向の後方側に位置する回動軸76を回動中心として管軸2bを含む面内で回動させることにより、レーザヘッド部63の管軸方向の前方側(屈曲管部方向側)を屈曲管部2Aの外周面2bに対して接近、離反可能な回動手段を構成している。
【0080】
レーザヘッド部63に設けられたレーザヘッド62は、光ファイバ78を介して図示しないYAGレーザ発振装置などのレーザ発振装置に接続されている。従って、前記レーザ発振装置から出力されたレーザ光23Aは、光ファイバ78によってレーザヘッド62まで伝送された後、レーザヘッド62から出射されて屈曲管部2Aの外周面2aに照射される(例えば図8のハッチング部分に照射される)。
【0081】
また、レーザヘッド部63にはレーザヘッド部63の長手方向に平行に配置されたリニアモータ79の固定部79Aと、このリニアモータ固定部79Aに沿って前記長手方向に移動するリニアモータ79の可動部79Bとが設けられており、このリニアモータ可動部79Bにレーザヘッド62が取り付けられている。従って、レーザヘッド62はリニアモータ79によって前記長手方向(γ方向)にオシレート移動することができる。
【0082】
即ち、上述のリニアモータ79により、レーザヘッド62を前記長手方向に沿ってオシレート移動するオシレート手段を構成している。
【0083】
また、リニアモータ固定部79Aには、レーザヘッド部63に設けられた傾斜駆動モータ80の回転軸が連結されている。従って、傾斜駆動モータ80によってリニアモータ固定部79Aが回動されると、リニアモータ可動部79Bとともにレーザヘッド62が、リニアモータ固定部79Aを回動軸として同回動軸回りに回動(β方向に回動)し、管軸方向に対して右方向又は左方向に傾斜する。
【0084】
このとき、前記回動手段によってレーザヘッド部63が回動されずにリニアモータ固定部79Aが管軸方向に平行であれば、レーザヘッド62の向きが管軸2bと直交する面(仮想面)内で調整されて、レーザヘッド62から出射されるレーザ光23Aの出射方向が同面内で調整されることになる。また、前記回動手段によってレーザヘッド部63が回動されていれば、レーザヘッド62の向きが管軸2bと交差する面(仮想面)内で調整されて、レーザヘッド62から出射されるレーザ光23Aの出射方向が同面内で調整されることになる。何れにしても、上述の傾斜駆動モータ80とリニアモータ79とにより、レーザヘッド62の向きを管軸2bと交差(直交の場合も含む)する面内で調整することによってレーザ光23Aの出射方向を同面内で調整することにより、配管2(直管部2A,屈曲管部2B)の外周面2aで反射したレーザ光23Aがレーザヘッド62に戻らないようにレーザ光23Aの反射方向を調整する反射方向調整手段を構成している(図4参照)。
【0085】
なお、この場合、必ずしも反射方向調整手段によって反射方向を調整可能にする場合に限定するものではなく、固定であってよい。即ち、予め、レーザヘッド63の向きを管軸2bと交差する面内で調整することによってレーザ光23Aの出射方向を同面内で調整することにより、配管2の外周面2aで反射したレーザ光23Aがレーザヘッド62に戻らないように構成しておいてもよい。
【0086】
また、上記ではレーザヘッド部63に設けるレーザヘッド62がオシレートタイプのものになっているが、これに限定するものではなく、レーザヘッド部63に設けるレーザヘッド62は管軸方向に沿って複数個配置したマルチタイプのものであってもよい。例えば、前述のような図5に示すマルチタイプのものでもよい。なお、図5において、レーザヘッド6はレーザヘッド62に置き換える。
【0087】
このようなマルチタイプにおいて、レーザヘッド7をβ方向に移動(回動)させる場合には、例えば複数のレーザヘッド62に共通の軸(例えばスライド部材24)を傾斜駆動モータなどの反射方向調整手段(回動手段)で回動させることによって全レーザヘッド62を同時に回動するようにしてもよく、各レーザヘッド62に個別に傾斜駆動モータなどの反射方向調整手段(回動手段)を設けて各レーザヘッド62を個別に回動させるようにしてもよい。
【0088】
また、図示は省略するが、θ,Z,L,γ,β及びαの各方向の移動位置や回動位置は、これらの移動位置や回動位置を検出するロータリエンコーダやリニアエンコーダなどの位置センサの位置検出信号に基づいて、駆動制御装置により、配管2(直管部22A、屈曲管部22B)の外周面2aに対して所定の位置となるように制御される。また、前記駆動制御装置では、レーザ発振装置から発振されるレーザ光23Aの出力ひいては、レーザヘッド62から出射されて配管2(直管部2A,屈曲管部2B)の外周面2aに照射されるレーザ光23Aの照射強度も制御するようになっている。
【0089】
特に、駆動制御装置では、リニアモータ68などから構成される回動手段や、リニアモータ64から構成される管軸方向移動手段を制御して、レーザヘッド部63の回動位置や管軸方向の位置を調整することにより、レーザヘッド部63(レーザヘッド62)と屈曲管部2Bの外周面2aとの相対位置関係を調整する。
【0090】
例えば図8に示すように、屈曲管部2Bの腹側(曲率半径の小さい側:図8の下側)の外周面2aにレーザ光23Aを照射するときには、前記回動手段によってレーザヘッド部63を屈曲管部2Aの外周面2aから離反させるように回動させ、且つ、レーザヘッド部63を管軸方向後方側(直管部方向側)へ移動させることにより、レーザヘッド部63と屈曲管部2Aの外表面2aとの干渉を防止する。また、屈曲管部2Bの背側(曲率半径の大きい側:図8の上側)の外周面2aにレーザ光23Aを照射するときには、前記回動手段によってレーザヘッド部63を屈曲管部2Aの外周面2aに接近するように回動させ、且つ、レーザヘッド部63を管軸方向前方側(屈曲管部方向側)へ移動させることにより、レーザヘッド部63(レーザヘッド62)が屈曲管部2Bの外周面2aから離れ過ぎてしまうのを防止する。
【0091】
以上のことから、本実施の形態例3の配管の残留応力改善装置61によれば上記実施の形態例1の配管の残留応力改善装置1と同様の作用効果が得られる他、次のような作用効果が得られる。
【0092】
即ち、本実施の形態例3の配管の残留応力改善装置61によれば、回動手段(リニアモータ68、連結部71、連結軸72、連結部71の長孔70、連結部材74、連結部77の回動軸76)を備えたことを特徴としており、この回動手段によってレーザヘッド部63を、レーザヘッド部63の管軸方向の後方側に位置する回動軸76を回動中心として管軸2bを含む面内で回動させることにより、レーザヘッド部63の管軸方向の前方側を屈曲管部2Bの外周面に対して接近、離反することが可能なことから、屈曲管部2Bの外周面、即ち、屈曲管部2Bの腹側や背側の外周面2aなどとレーザヘッド部63との干渉を防止しながら、同外周面2aに接近して、同外周面2aにレーザ光23Aを照射することができる。従って、屈曲管部2Bの外周面2aを効率的に加熱して屈曲管部2Bの残留応力を低減することができ、屈曲管部2Bに好適な配管の残留応力改善装置を実現することができる。
【0093】
また、本実施の形態例3の配管の残留応力改善装置61によれば、管軸方向移動手段(リニアモータ64)を備えたことを特徴としており、この管軸方向移動手段によってレーザヘッド部63を管軸方向へ移動させることにより、屈曲管部2Bの外周面2aにおけるレーザ光23Aの照射位置を適宜調整することができることから、より確実にレーザヘッド部63と屈曲管部2Bの腹側や背側の外周面2aなどとの干渉を防止しながら、同外周面2aに接近して、同外周面2aにレーザ光3Aを照射することができる。従って、屈曲管部2Bの外周面2aをより効率的に加熱して屈曲管部2bの残留応力を低減することができ、屈曲管部2Bにより好適な配管の残留応力改善装置を実現することができる。
【0094】
なお、上記実施の形態例1〜3における各方向(θ,Z,L,γ,β,α)への移動手段、調整手段、回動手段は、必ずしも上記のような駆動モータとボールねじの組合せやリニアモータなどに限定するものでなく、それぞれの方向への移動、調整、回動などが可能なものであればよく、例えばラック・アンド・ピニオンなど、各種の移動手段、調整手段、回動手段を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は配管の残留応力改善装置に関するものであり、溶接などによって配管の直管部や屈曲管部に生じる残留応力を、前記直管部や屈曲管部の外周面にレーザ光を照射して加熱することにより低減する場合に適用して有用なものである。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の実施の形態例1に係る配管の残留応力改善装置の構成を一部破断して示す平面図である。
【図2】前記配管の残留応力改善装置の構成を一部破断して示す側面図(図1のA方向矢視図)である。
【図3】(a)は図1のB方向矢視図、(b)は図1のC方向矢視図である。
【図4】前記配管の残留応力改善装置に備えた反射方向調整手段の作用効果を示す説明図である。
【図5】マルチタイプのレーザヘッドの構成例を示す図である。
【図6】本発明の実施の形態例2に係る配管の残留応力改善装置の構成を一部破断して示す平面図である。
【図7】前記配管の残留応力改善装置の構成を一部破断して示す側面図(図6のD方向矢視図)である。
【図8】本発明の実施の形態例3に係る配管の残留応力改善装置の構成を示す側面図である。
【符号の説明】
【0097】
1 配管の残留応力改善装置
2 配管(直管)
2A 直管部
2B 屈曲管部
2a 外周面
2b 管軸
3 リングレール
3A,3B リングレール部材
3a 外周面
3b 歯車
3c,3d 端部
4 ボルト
5 回転走行台車
6 レーザヘッド部
7 レーザヘッド
8 歯車
9 軸受
10 周方向駆動モータ
11a,11b 周方向ガイドローラ
12 支持フレーム
13 リニアレール
14 ボールねじ軸
15 軸受
16 リニアブッシュ
17 ボールナット
18 軸方向駆動モータ
19 リニアモータ
19A リニアモータ固定部
19B リニアモータ可動部
21 ローラ
22 傾斜駆動モータ
23A レーザ光
23B 反射光
24 スライド部材
25 光ファイバ
26 溶接部
41 配管の残留応力改善装置
42 溶接部
43 レーザヘッド部
44 支持部材
45 傾斜駆動モータ
45a 回転軸
46 リニアモータ
46A リニアモータ固定部
46B リニアモータ可動部
48 レーザヘッド
49 傾斜駆動モータ
61 配管の残留応力改善装置
62 レーザヘッド
63 レーザヘッド部
64 リニアモータ
64A リニアモータ固定部
64B リニアモータ可動部
65 支持部材
66 溶接部
67 リニアモータ
67A リニアモータ固定部
67B リニアモータ可動部
68 リニアモータ
68A リニアモータ固定部
68B リニアモータ可動部
69 支持部材
70 長孔
71 連結部
72 連結軸
73 連結部
74 連結部材
75 ガイドローラ
76 回動軸
77 連結部
78 光ファイバ
79 リニアモータ
79A リニアモータ固定部
79B リニアモータ可動部
80 傾斜駆動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直管部を有する配管の外周面にレーザ光を照射して前記配管を加熱する配管の残留応力改善装置であって、
前記レーザ光を出射する1つ又は複数のレーザヘッドを保持するレーザヘッド部と、
前記レーザヘッドを前記レーザヘッド部とともに前記直管部の外周面に沿って且つ前記直管部の管軸を中心とする円周方向に沿って移動させる円周方向移動手段とを備え、
且つ、前記配管は前記直管部と、この直管部に続く屈曲管部とを有するものであり、
前記レーザヘッド部を、前記レーザヘッド部の前記管軸方向の後方側に位置する回動軸を回動中心として前記管軸を含む面内で回動させることにより、前記レーザヘッド部の前記管軸方向の前方側を前記屈曲管部の外周面に対して接近、離反可能な回動手段と、
前記レーザヘッド部を前記管軸方向に沿って移動させることにより、前記屈曲管部の外周面におけるレーザ光の照射位置を調整可能な管軸方向移動手段と、
前記屈曲管部の曲率半径の小さい側の外周面に前記レーザ光を照射するときには、前記回動手段によって前記レーザヘッド部を前記屈曲管部の外周面から離反させるように回動させ、且つ、前記レーザヘッド部を直管部方向側へ移動させることにより、前記レーザヘッド部と前記屈曲管部の外表面との干渉を防止し、前記屈曲管部の曲率半径の大きい側の外周面に前記レーザ光を照射するときには、前記回動手段によって前記レーザヘッド部を前記屈曲管部の外周面に接近するように回動させ、且つ、前記レーザヘッド部を屈曲管部方向側へ移動させることにより、前記レーザヘッド部が前記屈曲管部の外周面から離れ過ぎてしまうのを防止するように制御する駆動制御装置とを備えたことを特徴とする配管の残留応力改善装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−24261(P2009−24261A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230179(P2008−230179)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【分割の表示】特願2004−222223(P2004−222223)の分割
【原出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】