説明

配線基板、多層配線基板及び電子装置、並びにこれらの製造方法

【課題】 絶縁基板の表面に形成された電極配線が腐食する可能性および電極配線同士が短絡する可能性を抑制した配線基板および多層配線基板、ならびに多層配線基板の製造方法を提供することにある。また、信頼性に優れた電子装置を提供することにある。
【解決手段】 絶縁基板1の表面に複数の電極配線2を備える配線基板において、電極配線2は、絶縁基板1の表面に形成された金属配線層2aを含み、金属配線層2aの幅方向にわたって、金属配線層2aを被覆する絶縁部4を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子や水晶振動子等の電子部品を搭載するための配線基板、多層配線基板及び電子装置、並びにこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体素子や水晶振動子等の電子部品を搭載するための配線基板は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体等の電気絶縁材料からなる絶縁基板の表面に、タングステンやモリブデン等の金属粉末メタライズから成る配線導体を配設することにより構成されている。
【0003】
このような配線基板は、絶縁基板用のセラミックグリーンシートのいくつかに、スクリーン印刷法等の印刷手段により配線導体用のメタライズペーストを印刷塗布した後、これらのセラミックグリーンシートを複数枚積層し、高温で焼成することにより形成される。
【0004】
そして、このような配線基板は、電子部品を搭載するとともに、電子部品の各電極を半田やボンディングワイヤ等の電気的接続手段を介して、各電極に対応する各配線導体に電気的に接続することにより電子装置として形成される。そして、電子装置は、必要に応じて、電子部品を金属やセラミックス、ガラス等からなる蓋体、あるいはポッティング樹脂で覆われて封止される。
【0005】
また、配線基板は、配線導体が酸化腐食するのを有効に防止するとともに、配線導体と電子部品との接合、および配線導体と金(Au)ワイヤや半田バンプ等の電気的接続、および配線導体と外部の回路基板との接合を強固なものとすること等を目的として、通常、配線導体の絶縁基板の外表面に露出する部分は、耐蝕性に優れる金属層が被着されており、例えば、このような金属層として、ニッケルめっき層および金めっき層等からなるめっき層が配線導体の露出する表面に順次被着されている。
【0006】
配線導体の表面にめっき層を効率良く被着するため、絶縁基板の表面にて複数の配線導体同士を電気的に接続するめっき導通用パターンを形成しておき、電解めっき法により複数の配線導体の露出する表面にめっき層を被着するということが行われている。そして、複数の配線導体の露出した表面にめっき層を被着した後、切削装置等を用いた切削加工等により、めっき導通用パターンの一部を分断するように切削除去することにより、複数の配線導体同士が電気的に独立される(特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平7−122838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、めっき導通用パターンを分断するように切削除去した際、この切削面においてメタライズ層とニッケルめっき層と金めっき層とが接した状態で露出することとなり、異種金属間の局部電池作用により切削面に腐食が発生するという問題を有していた。
【0009】
また、近年の電子装置の高密度化に伴い、配線基板において、配線導体同士が高密度に形成されており、切削加工等によりめっき導通用パターンを切削除去する際、この切削面において、切削装置の切削刃等によりニッケルめっき層や金めっき層が切削方向にひきのばされ、針状の突起を形成してしまい、隣接する配線導体同士を短絡させてしまうことがあるという問題を有していた。
【0010】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み案出されたもので、その目的は、絶縁基板の表面に形成された電極配線が腐食する可能性および電極配線同士が短絡する可能性を抑制した配線基板および多層配線基板、ならびに多層配線基板の製造方法を提供することにある。また、信頼性に優れた電子装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の配線基板は、絶縁基板の表面に複数の電極配線を備える配線基板において、前記電極配線は、前記絶縁基板の表面に形成された金属配線層を含み、該金属配線層の幅方向にわたって、該金属配線層を被覆する絶縁部を有することを特徴とするものである。
【0012】
また、好ましくは、前記絶縁部は、一対の絶縁部を含み、該一対の絶縁部は前記金属配線層の延設方向に予め定める間隔をあけて設けられることを特徴とするものである。
【0013】
本発明の多層配線基板は、本発明の配線基板の前記金属配線層上で、且つ前記絶縁部に隣接した領域に金属被覆層が形成され、前記金属配線層が、前記絶縁部により被覆された領域内にて、該絶縁部とともに切断されることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の多層配線基板は、本発明の配線基板の前記金属配線層上で、且つ前記一対の絶縁部のそれぞれに隣接した領域に金属被覆層が形成され、前記金属配線層が、前記一対の絶縁部間の領域にて切断されることを特徴とするものである。
【0015】
また、好ましくは、前記複数の金属配線層がメタライズ層からなり、前記金属被覆層が金を含んでなることを特徴とするものである。
【0016】
また、好ましくは、前記絶縁部と前記絶縁基板との色調が異なることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の電子装置は、本発明の多層配線基板の表面に電子部品が搭載され、搭載された電子部品は、前記電極配線と電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0018】
本発明の多層配線基板の製造方法は、絶縁基板の表面に複数の電極配線を備える多層配線基板の製造方法において、前記絶縁基板表面に金属配線層を形成し、形成された金属配線層上に、該金属配線層の幅方向にわたって該金属配線層を被覆する絶縁部を形成し、前記金属配線層上で、且つ前記絶縁部に隣接した領域に電解めっきによって金属被覆層を形成し、前記金属配線層を、前記絶縁部により被覆された領域内にて、該絶縁部とともに切断することを特徴とするものである。
【0019】
また、好ましくは、前記絶縁部は、一対の絶縁部を含み、該一対の絶縁部は前記金属配線層の延設方向に予め定める間隔をあけて設けられているとともに、前記金属配線層が、前記一対の絶縁部間の領域にて切断されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明の配線基板は、電極配線が、絶縁基板の表面に形成された金属配線層を含み、該金属配線層の幅方向にわたって、金属配線層を被覆する絶縁部を有することから、電解めっき法により金属配線層の露出する表面に金属被膜層を被着させた際、絶縁部により被覆された領域には金属被膜層が被覆されない。
【0021】
したがって、絶縁部に沿って金属配線層を切削加工等により切削除去する際、金属配線層の切削面においては、絶縁基板と金属配線層と絶縁部とが隣接して露出され、メタライズ層、ニッケルめっき層、金めっき層等といった異なる金属層が隣接した状態で露出されることがなく、切削面において異種金属間の局部電池作用による腐食が発生する可能性を抑制することができる。
【0022】
また、絶縁部と金属配線層とを切削除去する際、絶縁部により被覆された領域にはニッケルめっき層や金めっき層等の金属被膜層が被着形成されていないので、切削面においては、切削加工等による金属被膜層ののびによる針状の突起が発生することがなく、隣接する電極配線同士がこの針状の突起により短絡する可能性を抑制することができる。
【0023】
また、好ましくは、絶縁部は、一対の絶縁部を含み、一対の絶縁部は金属配線層の延設方向に予め定める間隔をあけて設けられることから、電解めっき法により金属配線層の露出する表面に金属被覆層を被着させた際、一対の絶縁部間の金属配線層の露出した領域には金属被覆層が被着される。
【0024】
したがって、絶縁部に沿って金属配線層を切削加工等により切削除去する際、一対の絶縁部間を介して金属配線層と絶縁部との位置を良好認識させることができ、切削加工等により金属配線層と絶縁部とを良好に切削除去することができ、金属被膜層が被着された複数の電極配線を効率良く電気的に独立させることができる。
【0025】
本発明の多層配線基板は、配線基板の金属配線層上で、且つ絶縁部に隣接した領域に金属被覆層が形成され、金属配線層が、絶縁部により被覆された領域内にて、絶縁部とともに切断されていることから、切削面においては、金属配線層または金属被膜層の異なる金属が隣接して露出する領域がないとともに、切削加工等による金属被覆層ののびによる針状の突起が発生していないので、電極配線の腐食や電極配線間の短絡の可能性を抑制し、信頼性に優れた多層配線基板とすることができる。
【0026】
本発明の多層配線基板は、金属配線層上で、且つ一対の絶縁部のそれぞれに隣接した領域に金属被覆層が形成され、金属配線層が、一対の絶縁部間の領域にて切断されることから、電極配線の切削面においては、金属配線層または金属被膜層の異なる金属が隣接する領域がないとともに、切削加工等による金属被膜層ののびによる針状の突起が発生していないので、電極配線の腐食や電極配線間の短絡の可能性を抑制し、信頼性に優れた多層配線基板とすることができる。
【0027】
また、好ましくは、複数の金属配線層がメタライズ層からなり、金属被覆層が金を含んでなることから、メタライズ層に比較して、のびの発生しやすい金を金属被覆層に用いても、切削加工の際に金ののびによる針状の突起の発生を抑制し、電極配線同士の短絡を抑制することができる。
【0028】
また、好ましくは、前記絶縁部と前記絶縁基板との色調が異なることから、金属配線層と絶縁部とを切削除去する際、絶縁基板と金属配線層と絶縁部との色調の違いにより切削深さを目視や画像認識装置により良好に認識させやすくなり、金属配線層を良好に切削除去して、複数の電極配線を効率良く電気的に独立させることができる。
【0029】
本発明の電子装置は、本発明の多層配線基板の表面に電子部品が搭載され、搭載された電子部品は、電極配線と電気的に接続されていることから、多層配線基板が、切削面における腐食や短絡の可能性を抑制したものとされているので、信頼性に優れた電子装置とすることができる。
【0030】
本発明の多層配線基板の製造方法は、絶縁基板の表面に複数の電極配線を備える多層配線基板の製造方法において、絶縁基板表面に金属配線層を形成し、形成された金属配線層上に、金属配線層の幅方向にわたって金属配線層を被覆する絶縁部を形成し、金属配線層上で、且つ絶縁部に隣接した領域に電解めっきによって金属被覆層を形成する。そして形成された金属配線層を、絶縁部により被覆された領域内にて、絶縁部とともに切断することから、絶縁部により電解めっき法により金属被覆層が被着されていない領域を金属配線層上に形成することができるので、絶縁部および金属配線層を切削除去した際、切断面において異なる金属層が接して露出する領域がないとともに、金属被覆層ののびによる針状の突起の発生を抑制することができ、多層配線基板に腐食や短絡の可能性を抑制したものとすることができる
また、好ましくは、絶縁部は、一対の絶縁部を含み、一対の絶縁部は金属配線層の延設方向に予め定める間隔をあけて設けられているとともに、金属配線層が、一対の絶縁部間の領域にて切断されることから、一対の絶縁部間の金属配線層の露出した領域には金属被覆層が被着されるので、絶縁部に沿って金属配線層を切削加工等により切削除去する際、一対の絶縁部間を介して金属配線層と絶縁部との位置を良好認識させることができ、切削加工等により金属配線層と絶縁部とを良好に切削除去することができ、金属被膜層が被着された複数の電極配線を効率良く電気的に独立させた多層配線基板とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の実施形態を以下に詳細に説明する。図1は、本発明の実施の形態である多層配線基板を示す平面図であり、図2(a)は、図1の多層配線基板の切断面線A−A’における断面図であり、図2(b)は、図2(a)のB部における要部拡大断面図である。これらの図に示すように、多層配線基板は、絶縁基板1、電極配線2、金属配線層2a、金属被膜層2b、2c、導通用導体3、および絶縁部4を有する。
【0032】
本発明の配線基板は、絶縁基板1の表面に複数の電極配線2を備えており、電極配線2が、絶縁基板1の表面に形成された金属配線層2aを含む。金属配線層2aの幅方向にわたって、金属配線層2aを被覆する絶縁部4が設けられている。
【0033】
なお、多層配線基板は、図1および図2のように、金属配線層2a上に金属被膜層2b,2cを被着した状態のものを示す。すなわち、金属配線層2aに金属被膜層2b,2cを被着していない状態を配線基板とし、金属配線層2aに金属被膜層2b,2cを被着した状態を多層配線基板とする。
【0034】
本発明の絶縁基板1は、セラミックスからなり、例えば、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体等の電気絶縁材料から成る。絶縁基板1が、酸化アルミニウム質焼結体から成る場合には、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、カルシア(CaO)、マグネシア(MgO)等の原料粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して泥漿状となすとともにこれを従来周知のドクターブレード法やカレンダーロール法等を採用し、シート状に成形することによってセラミックグリーンシート(セラミック生シート)を得、次にセラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施すとともに必要に応じて複数枚積層し、高温(約1500〜1800℃)で焼成することによって製作される。
【0035】
電極配線2は、電子部品を外部に電気的に接続するための導電路である。例えば、図2に示すように、金属配線層2aの絶縁基板1の外部表面に露出した部分には、金属被覆層2b,2cが被着されている。金属配線層2aは、タングステンやモリブデン、銅、銀等の金属粉末メタライズから成り、絶縁基板1用のセラミックグリーンシートにスクリーン印刷法等の印刷手段により金属配線層2a用のメタライズペーストを印刷塗布し、絶縁基板1用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって所定の領域に被着形成される。金属配線層2a用のメタライズペーストは、主成分の金属粉末に有機バインダー、有機溶剤、必要に応じて分散剤等を加えてボールミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで製作される。セラミックグリーンシートの焼結挙動に合わせたり、焼結後の積層基板との接合強度を高めたりするためにガラスやセラミックスの粉末を添加しても良い。
【0036】
また、絶縁基板1の表面および内部に形成された金属配線層2aは、必要に応じて絶縁基板1を厚み方向に貫通する貫通導体5により電気的に接続されている。このような貫通導体5は、金属配線層2aを形成するためのメタライズペーストの印刷塗布に先立って絶縁基板1用のセラミックグリーンシートに金型やパンチングによる打ち抜き方法またはレーザ加工等の加工方法により貫通導体用の貫通孔を形成し、この貫通導体用の貫通孔に貫通導体5用のメタライズペーストをスクリーン印刷法等の印刷手段により充填しておくとともにこれを絶縁基板1用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって各領域に形成される。貫通導体用のメタライズペーストは金属配線層2a用のメタライズペーストと同様にして作製されるが、有機バインダーや有機溶剤の量により充填に適した粘度に調製される。
【0037】
金属被膜層2b,2cは、金属配線層2aの絶縁基板1の外部表面に露出された部分に、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)等の耐蝕性に優れる金属を1〜20μm程度の厚みで被着させておくことにより形成される。金属被膜層2b,2cは、金属配線層2aが酸化腐食するのを有効に防止できるとともに、電極配線2と電子部品との固着または電極配線2とボンディングワイヤや半田バンプ等の電気的接続、電極配線2と外部電気回路板の配線導体との接合を強固なものとすることができる。例えば、金属配線層2aの露出する表面に、金属配線層2bとして厚さ1〜10μm程度のNiめっき層を被着させ、金属配線層2bの表面に、金属配線層2cとして厚さ0.1〜3μm程度のAuめっき層を順次被着させている。
【0038】
なお、金属被膜層2b,2cは、2層に限定されるものではなく、1層または3層以上の金属被覆層からなるものであっても構わない。例えば、金属配線層2aの絶縁基板1の外部表面に露出された部分に、Niめっき層とPdめっき層とAuめっき層とを順次被着させた多層配線基板、Niめっき層とPdめっき層とCuめっき層とを順次被着させた多層配線基板、Niめっき層とAuめっき層とAgめっき層とを順次被着させた多層配線基板であっても良く、金属配線層2aの露出した表面にその他の金属からなる金属被覆層を被着させた多層配線基板であっても構わない。
【0039】
導通用導体3は、複数の電極配線2を電気的に接続するため、絶縁基板1の表面に設けられる。この導通用導体3が導電路となって複数の電極配線2を電気的に接続することで、電解めっき法により、金属配線層2aの絶縁基板1の外部表面に露出された部分に、金属被膜層2b,2cを被着することができる。なお、導通用導体3は、上述した金属配線層2aと同様な方法により絶縁基板1の表面の所定の領域に被着形成することができる。
【0040】
電極配線2は、導通用導体3により絶縁基板1の表面に電気的に短絡した状態で形成されるので、配線基板をめっき浴に浸漬した後、電解めっき法により金属配線層2aの絶縁基板1の外部表面に露出された部分に金属被膜層2b,2cを被着形成することができ、絶縁基板1の表面に金属配線層2aと金属被膜層2b,2cとが積層されてなる電極配線2を形成することができる。
【0041】
また、導通用導体3は、電解めっき法により電極配線2に金属被覆層2b,2cを被着形成するために配設されているが、電極配線2の全ての金属被覆層2b,2cを電解めっき法により被着させている必要はなく、金属被膜層2b,2cを薄く被着形成させたい場合等、必要に応じて金属配線層2a上に順次被着される金属被覆層のいくつかを無電解めっき法等により被着させていても構わない。例えば、電解めっき法により金属配線層2a上に金属被膜層2bを被着した後、無電解めっき法により金属被膜層2b上に金属被膜層2cを被着させたものであっても構わない。
【0042】
絶縁部4は、導通用導体3の幅方向にわたって金属配線層2aの導通用導体3の表面を、被覆するように設けられる。なお、ここでいう導通用導体3の幅方向とは、導通用導体3が電極配線2間に延設されて延びる方向(以下では、延設方向という)に交差する方向であり、電極配線2間に配設された導通用導体3の幅の方向のことである。すなわち、絶縁部4により被覆されることにより幅方向にわたって導通用導体3が露出していない領域を有していることを示している。また、絶縁部4の延設方向長さは、後述する導通用導体3と絶縁部4とを切削除去する際の切削領域Nの延設方向長さよりも長くなるように設けておけば良く、例えば、切削加工により導通用導体3と絶縁部4とを切削除去する際の切削刃等の幅よりも広くなるように設定しておけば良い。なお、ここでいう切削領域Nとは、図1および図2に一点鎖線により示された領域であって、後に導通用導体3と絶縁部4とを切削除去する領域である。
【0043】
絶縁部4は、酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、炭化珪素質焼結体等の電気絶縁材料から成り、絶縁基板1用のセラミックグリーンシート上に印刷された導通用導体3用のメタライズペーストを、幅方向にわたって被覆するようにスクリーン印刷法等の印刷手段により、絶縁部4用のセラミックペーストを印刷塗布し、そのセラミックペーストを絶縁基板1用のセラミックグリーンシートと同時焼成することによって所定の領域に被着される。
【0044】
絶縁部4用のセラミックペーストは、主成分のセラミック粉末に有機バインダー、有機溶剤、必要に応じて分散剤等を加えてボールミル、三本ロールミル、プラネタリーミキサー等の混練手段により混合および混練することで製作される。
【0045】
なお、絶縁部4は、絶縁基板1とともに同時に焼成して形成されるため、絶縁基板1と実質的に同一成分からなることが好ましい。すなわち、絶縁基板1が酸化アルミニウム質焼結体からなる場合は、絶縁基板1は酸化アルミニウム質焼結体からなり、絶縁基板1が窒化アルミニウム質焼結体からなる場合は、絶縁部4は窒化アルミニウム質焼結体からなることが好ましい。
【0046】
これにより、配線基板をめっき浴に浸漬し、金属配線層2aの露出した表面に電解めっき法により金属被覆層2b,2cを被着させて多層配線基板とした際、導通用導体3の絶縁部4が被覆された領域には、金属被覆層2b,2cが被着されず、絶縁部4と導通用導体3と絶縁基板1とが厚み方向に隣接して配設しており、この領域においては、異なる金属層が隣接する領域が存在しないこととなる。そして、絶縁部4が被覆された領域の延設方向長さよりも短い切削領域Nにおいて、導通用導体3と絶縁部4とを切削除去することで、複数の電極配線2が電気的に独立することとなる。
【0047】
図3および図4は、図1および図2に示される切削領域Nにおいて導通用導体3と絶縁部4とを切削除去した状態の多層配線基板を示す図である。図3は、導通用導体3と絶縁部4とを切削除去した状態の多層配線基板を示す平面図である。また、図4(a)は、図3の切断面線C−C’における断面図であり、図4(b)は、図4(a)のD部における要部拡大断面図である。なお、図4に示すように、導通用導体3と絶縁部4とを切削除去する際、絶縁基板1の表層の一部が切削除去されていても構わない。
【0048】
これにより、多層配線基板を絶縁部4に沿って導通用導体3を切削除去した際、切削面においては、絶縁基板1と導通用導体3と絶縁部4とが順次積層された状態で露出されており、金属配線層2aまたは金属被覆層2b,2cの異なる金属層が隣接して露出されることがなく、切削面に異種金属層による腐食が発生する可能性を抑制することができる。
【0049】
また、導通用導体3と絶縁部4とを切削除去する際、切削領域Nには金属被覆層2b,2cが形成されていないので、切削加工等により切削面に金属被覆層2b,2cののびによる針状の突起が発生することがなく、隣接する電極配線2同士が短絡する可能性を抑制することができる。すなわち、絶縁部4には、のびが発生しやすい金等からなる金属被覆層2b,2cが配設されておらず、絶縁部4により被覆された領域に配設されているメタライズ層からなる導通用導体3は、切削加工等によるのびが発生しにくいので、切削加工により隣接する電極配線2同士が短絡する可能性を抑制することができる。従って、多層配線基板に腐食や短絡が発生する可能性を抑制したものとすることができる。なお、導通用導体3および絶縁部4を切削除去する方法としては、研削加工や切削加工により切削除去する方法に限らず、これら以外の方法を用いても良い。
【0050】
次に本発明の他の実施形態について説明する。本実施形態は、図1などに示した配線基板および多層配線基板とは、特に絶縁部4の構成が異なっており、共通する構成についての詳細な説明は省略する。
【0051】
本実施形態では、絶縁部4は、少なくとも一対の絶縁部4を含み、一対の絶縁部4は導通用導体3の延設方向に予め定める間隔を空けて設けられていても良い。図5は、本実施形態の多層配線基板を示す平面図であり、図6(a)は、図5の配線基板の切断面線E−E’における断面図であり、図6(b)は、図5(a)のF部における要部拡大断面図である。なお、この場合においても、上述と同様に、金属配線層2aに金属被膜層2b,2cを被着していない状態を配線基板とし、金属配線層2aに金属被膜層2b,2cを被着した状態を多層配線基板とする。
【0052】
図5および図6において、一対の絶縁部4の導通用導体3の延設方向に予め定める間隔は、切削領域Nの延設方向長さよりも短く設定されている。すなわち、導通用導体3の延設方向に予め定める間隔は、切削加工により導通用導体3と絶縁部4とを切削除去する際の切削刃等の幅よりも短くなるように設定しておけば良い。なお、一対の絶縁部4の全体の長さ(一対の絶縁部4のそれぞれの延設方向の長さと一対の絶縁部4の導通用導体3の延設方向に予め定める間隔とを合計した全体の長さ)は、導通用導体3と絶縁部4とを切削除去する際の切削領域Nの延設方向長さよりも長くなるように設けておけば良い。
【0053】
これにより、配線基板をめっき浴に浸漬し、金属配線層2aの露出した表面に電解めっき法により金属被覆層2b,2cを被着させて多層配線基板とした際、導通用導体3の絶縁部4が被覆された領域には、金属被覆層2b,2cが被着されず、絶縁部4と導通用導体3と絶縁基板1とが厚み方向に隣接して配設しており、この領域においては、異なる金属層が隣接する領域が存在しないこととなる。なお、導通用導体3の一対の絶縁部4間においては、露出する部分に金属被覆層2b,2cが被着される。
【0054】
図7および図8は、図5および図6に示される切削領域Nにおける導通用導体3と絶縁部4とを切削除去した状態の多層配線基板を示す図である。図7は、導通用導体3と絶縁部4とを切削除去した状態を示す平面図である。また、図8(a)は、図7の切断面線G−G’における断面図であり、図8(b)は、図8(a)のH部における要部拡大断面図である。多層配線基板を絶縁部4に沿って導通用導体3を切削除去した際、切削面においては、絶縁基板1と導通用導体3と絶縁部4とが順次積層された状態で露出されており、異なる金属層が隣接して露出されることがない。切削面において、金属配線層2aまたは金属被覆層2b,2cの異なる金属層が隣接して露出されることがないので、切削面に異種金属層による腐食が発生する可能性を抑制することができる。
【0055】
また、導通用導体3と絶縁部4とを切削除去すれば良く、切削面には金属被覆層2b,2cが形成されていないので、切削加工等により切削面に金属被覆層ののびによる針状の突起が発生することがなく、隣接する電極配線2同士が短絡する可能性を抑制することができる。
【0056】
また、絶縁基板1に対して電解めっき法を行った際に一対の絶縁部4間の領域には金属被覆層2b,2cが被着されることとなるので、一対の絶縁部4間によって、切削すべき位置を良好認識させることができ、良好に切削加工等により導通用導体3を切削除去することができ、金属被覆層2b、2cが被着された複数の電極配線2を効率良く電気的に独立させることができる。従って、多層配線基板に腐食や短絡が発生する可能性を抑制したものとすることができる。
【0057】
また、絶縁部4と絶縁基板1との色調が異なるように形成することが好ましい。これにより、導通用導体3と絶縁部4とを切削除去する際、絶縁基板1と絶縁部4との色調の違いにより切削深さを目視や画像認識装置により良好に認識させやすくなり、導通用導体3を良好に切削除去して、複数の電極配線を効率良く電気的に独立させることができる。すなわち、切削深さが導通用導体3に達しておらず、導通用導体3が完全に切削除去できていない状態(複数の電極配線2が電気的に接続されたままの状態)にしてしまうことや、深く切削しすぎることにより、絶縁基板1の内部に形成されている金属配線層2aを切削除去して、電極配線2が電気的に短絡してしまうことを抑制することができる。
【0058】
このような絶縁基板1と異なる色調の絶縁部4は、絶縁部4に絶縁基板1に添加されている顔料とは異なる色調となる顔料を添加したり、絶縁基板1に添加されている顔料を添加しない等をしておけば良い。例えば、絶縁基板1が白色である場合、絶縁部4用のセラミックペーストにクロム等の粉末を添加しておくことにより、絶縁基板1用のセラミックグリーンシートとともに焼成した際、白色の絶縁基板1の表面に暗色の絶縁部4を形成することができる。なお、目視や画像認識装置で絶縁基板1と絶縁部4とを良好に認識させるために、絶縁基板1と絶縁部4とのコントラスト比は20%以上とすることが好ましい。
【0059】
また、本発明の他の実施形態としては、図9Aおよび図9Bに示すように、導通用導体3同士を連結部6により電気的に接続した構成であっても構わない。図9A(a)は、本発明の他の実施形態である多層配線基板を示す平面図であり、図9A(b)は、図9A(a)に示す多層配線基板における絶縁部4を図示しない状態の平面図である。なお、連結部6は、導通用導体3の一部であり、導通用導体3と同様にして形成される。導通用導体3が連結部6を介して接続されることで、複数の金属配線層2aおよび導通用導体3に印加される電流のばらつきを小さくし、電極配線2の金属被覆層2b,2cの厚みばらつきを小さくすることができる。また、図9B(c)は、図9A(a)の多層配線基板を切削領域Nにおいて導通用導体3、絶縁部4および連結部6を切削除去した状態の多層配線基板を示す平面図である。切削除去により、多層配線基板を腐食や短絡が発生する可能性を抑制したものとすることができる。また、図9A(a)に示すように、導通用導体3とともに、連結部6の表面にも絶縁部4を形成し、連結部6と絶縁部4とを同一ライン上に形成しておくことで、導通用導体3と連結部6と絶縁部4とを一筆書き状に切削除去することができるので、複数の電極配線2を効率良く電気的に独立させることができる。なお、図9A(b)においては、複数の電極配線2を良好に電気的に独立させるため、連結部6の幅は、切削領域Nの延設方向長さよりも狭く、例えば、切削加工により導通用導体3と絶縁部4とを切削除去する際の切削刃等の幅よりも狭くしている。
【0060】
本発明のさらに他の実施形態である電子装置は、上述の多層配線基板の表面に電子部品が搭載され、搭載された電子部品は、電極配線2と電気的に接続されている。これにより、多層配線基板は、切削面における腐食や短絡の可能性を抑制したものとされているので、信頼性に優れた電子装置とすることができる。
【0061】
なお、電子部品としては、IC(Integrated Circuit)チップやLSI(Large Scale Integrated Circuit)チップ等の半導体素子、水晶振動子や圧電振動子等の圧電素子、各種センサ等が搭載される。電子部品の搭載は、電子部品がフリップチップ型の半導体素子である場合には、はんだバンプや金バンプ、または導電性樹脂(異方性導電樹脂等)を介して、半導体素子の電極と電極配線2とを電気的に接続することにより行なわれる。また、電子部品がワイヤボンディング型の半導体素子である場合には、ガラス、樹脂、ろう材等の接合材により多層配線基板表面に半導体素子を固定した後、ボンディングワイヤを介して半導体素子の電極と電極配線2とを電気的に接続することにより行なわれる。また、電子部品が水晶振動子等の圧電素子である場合には、導電性樹脂により圧電素子の固定および圧電素子の電極と電極配線2との電気的な接続を行なう。
【0062】
そして、電子部品は、必要に応じて封止される。封止はエポキシ樹脂等のポッティング樹脂により電子部品を覆うことにより行なったり、電子部品を覆うようにして載置した樹脂や金属、セラミックス等からなる蓋体をガラス、樹脂、ろう材等の接着剤により配線基板に取着することにより行われる。
【0063】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更を施すことは何ら差し支えない。例えば、絶縁基板1は、平板形状以外のものであっても良く、例えば、絶縁基板1の上面または下面に電子部品を収納するための凹部(キャビティ)を備えているものであっても構わない。また、図1〜図9においては、電極配線2は、絶縁基板1の一方主面と他方主面とに形成されているが、絶縁基板1の側面に形成したものであっても構わない。また、配線基板は、1つの配線基板に、複数種類の金属被覆層2b,2cが被着された電極配線2を備えるものであっても良い。例えば、配線基板が、金属配線層2a上にNiめっき層とAuめっき層とが順次被着された複数の電極配線2と金属配線層2a上にNiめっき層とAgめっき層とが順次被着された複数の電極配線2とを備えるものであっても良い。このような配線基板は、同じ金属被覆層を被着させる複数の電極配線2のいくつかを電気的に接続する第1の導通用導体と、残りの複数の電極配線2を電気的に接続する第2の導通用導体とをそれぞれ形成しておき、それぞれの導通用導体に幅方向にわたって被覆する絶縁部4を形成しておけば良い。これにより、第1の導通用導体に電気的に接続された電極配線2の金属被覆層2b,2cと第2の導通用導体に電気的に接続された電極配線2の金属被覆層2b,2cとを異なる種類に構成とすることができる。また、電極配線2に限るものではなく、絶縁基板1の表面に被着されている金属配線層2a等のメタライズ層上に電解めっき法により金属被覆層2b,2cを被着した後、電気的に独立させる場合に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態である多層配線基板を示す平面図である
【図2】(a)図1の多層配線基板の切断面線A−A’における断面図であり、(b)図2(a)のB部における要部拡大断面図である。
【図3】切削領域Nにおいて導通用導体3と絶縁部4とを切削除去した状態の多層配線基板を示す平面図である。
【図4】(a)図3の多層配線基板の切断面線C−C’における断面図であり、(b)図4(a)のD部における要部拡大断面図である。
【図5】他の実施形態の多層配線基板を示す平面図である。
【図6】(a)図5の多層配線基板の切断面線E−E’における断面図であり、(b)図6(a)のF部における要部拡大断面図である。
【図7】切削領域Nにおいて導通用導体3と絶縁部4とを切削除去した状態の多層配線基板を示す平面図である。
【図8】(a)図7の多層配線基板の切断面線G−G’における断面図であり、(b)図8(a)のH部における要部拡大断面図である。
【図9A】(a)本発明の他の実施形態である多層配線基板を示す平面図であり、(b)図9A(a)に示す配線基板における絶縁部4を図示しない状態の平面図である。
【図9B】(c)図9A(a)の多層配線基板を切削領域Nにおいて導通用導体3、絶縁部4および連結部6を切削除去した状態の配線基板を示す平面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 絶縁基板
2 電極配線
2a 金属配線層
2b、2c 金属被膜層
3 導通用導体
4 絶縁部
5 貫通導体
6 連結部
N 切削領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の表面に複数の電極配線を備える配線基板において、
前記電極配線は、前記絶縁基板の表面に形成された金属配線層を含み、
該金属配線層の幅方向にわたって、該金属配線層を被覆する絶縁部を有することを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記絶縁部は、一対の絶縁部を含み、該一対の絶縁部は前記金属配線層の延設方向に予め定める間隔をあけて設けられることを特徴とする請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載した配線基板の前記金属配線層上で、且つ前記絶縁部に隣接した領域に金属被覆層が形成され、
前記金属配線層が、前記絶縁部により被覆された領域内にて、該絶縁部とともに切断されることを特徴とする多層配線基板。
【請求項4】
請求項2に記載した配線基板の前記金属配線層上で、且つ前記一対の絶縁部のそれぞれに隣接した領域に金属被覆層が形成され、
前記金属配線層が、前記一対の絶縁部間の領域にて切断されることを特徴とする多層配線基板。
【請求項5】
前記複数の金属配線層がメタライズ層からなり、前記金属被覆層が金を含んでなることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の多層配線基板。
【請求項6】
前記絶縁部と前記絶縁基板との色調が異なることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の多層配線基板。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれかに記載の多層配線基板の表面に電子部品が搭載され、搭載された電子部品は、前記電極配線と電気的に接続されていることを特徴とする電子装置。
【請求項8】
絶縁基板の表面に複数の電極配線を備える多層配線基板の製造方法において、
前記絶縁基板表面に金属配線層を形成し、
形成された金属配線層上に、該金属配線層の幅方向にわたって該金属配線層を被覆する絶縁部を形成し、
前記金属配線層上で、且つ前記絶縁部に隣接した領域に電解めっきによって金属被覆層を形成し、
前記金属配線層を、前記絶縁部により被覆された領域内にて、該絶縁部とともに切断することを特徴とする多層配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁部は、一対の絶縁部を含み、該一対の絶縁部は前記金属配線層の延設方向に予め定める間隔をあけて設けられているとともに、
前記金属配線層が、前記一対の絶縁部間の領域にて切断されることを特徴とする請求項8に記載の多層配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【公開番号】特開2008−91560(P2008−91560A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269808(P2006−269808)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】