説明

配線基板およびその実装構造体

【課題】
本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板を提供するものである。
【解決手段】
本発明の一形態にかかる配線基板4は、貫通孔P1が形成された樹脂層7aと、該貫通孔内P1に配された貫通導体8aと、樹脂層7aと貫通導体8aとの間に介された介在膜9Aとを備え、該介在膜9aは、樹脂層7aに当接した第1酸化チタン膜14aと、該第1酸化チタン膜14aよりも前記貫通導体8a側に配され、第1酸化チタン膜14aに当接したチタン膜15とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(たとえば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器及びその周辺機器)等に使用される配線基板およびその実装構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における実装構造体としては、配線基板に電子部品を実装したものが使用されている。
【0003】
配線基板に関して、特許文献1には、絶縁性樹脂を含む絶縁層(樹脂層)と、該絶縁層を貫通するスルーホールの内壁に被着しためっき層(スルーホール導体)と、を備えた構成が開示されている。
【0004】
ところで、配線基板内の水分に起因して、スルーホール導体に含まれる導電材料がイオン化することがあり、この場合、隣接するスルーホール導体間に電界が印加されると、イオン化した導電材料が隣接するスルーホール導体に向って樹脂層内に侵入することがある(イオンマイグレーション)。
【0005】
その結果、該樹脂層に侵入した導電材料が隣接するスルーホール導体に達すると、隣接するスルーホール導体同士が短絡し、配線基板の電気的信頼性が低下しやすくなる。それ故、スルーホール導体間の絶縁性を向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−101183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板およびその実装構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態にかかる配線基板は、貫通孔が形成された樹脂層と、該貫通孔内に配された貫通導体と、前記樹脂層と前記貫通導体との間に介された介在膜とを備え、該介在膜は、前記樹脂層に当接した第1酸化チタン膜と、該第1酸化チタン膜よりも前記貫通導体側に配され、前記第1酸化チタン膜に当接したチタン膜とを有する。
【0009】
本発明の一形態にかかる実装構造体は、上述した配線基板と、前記配線基板に搭載され、前記貫通導体と電気的に接続された電子部品とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態にかかる配線基板によれば、貫通導体と樹脂層との間に介された介在膜が酸化チタン膜を有しているため、イオン化した導電材料の樹脂層内への侵入を酸化チタン膜によって低減することにより、貫通導体同士の絶縁性を高めることができる。一方、該介在膜がチタン膜を有しているため、酸化チタン膜と貫通導体との接着強度を高めることにより、貫通導体の信頼性を高めることができる。それ故、貫通導体同士の絶縁性及び貫通導体の信頼性を高めることができ、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板を得るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る実装構造体の厚み方向に沿った断面図であり、図1(b)は、図1(a)のR1部分の拡大図である。
【図2】図2は、図1(a)のR2部分の拡大図である。
【図3】図3(a)及び図3(b)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であり、図3(c)は、図3(b)のR3部分の拡大図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する、図3(b)のR3部分に相当する部分の拡大図である。
【図5】図5(a)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であり、図5(b)は、図5(a)のR4部分の拡大図である。
【図6】図6(a)及び図6(b)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【図7】図7(a)は、本発明の第1実施形態の変形例に係る実装構造体において、図1(a)のR1部分に相当する部分の拡大図であり、図7(b)は、本発明の第2実施形態に係る実装構造体において、図1(a)のR1部分に相当する部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下に、本発明の第1実施形態に係る配線基板を含む実装構造体を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1(a)に示した実装構造体1は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置又はその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2と、電子部品2がバンプ3を介してフリップチップ実装された平板状の配線基板4と、を含んでいる。
【0014】
電子部品2は、例えばIC又はLSI等の半導体素子であり、母材が、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム又は炭化珪素等の半導体材料により形成されている。
【0015】
バンプ3は、例えば鉛、錫、銀、金、銅、亜鉛、ビスマス、インジウム又はアルミニウム等を含む半田等の導電材料により構成されている。
【0016】
配線基板4は、コア基板5と、該コア基板5の上下に配された一対の配線層6と、を含んでいる。
【0017】
コア基板5は、配線基板4の強度を高めつつ一対の配線層6間の導通を図るものであり、図1(a)及び(b)に示すように、厚み方向に貫通する第1貫通孔P1が複数形成された平板状の第1樹脂層7aと、第1貫通孔P1内に配された筒状の第1貫通導体8aと、第1樹脂層7aと第1貫通導体8aとの間に介された第1介在膜9aと、第1貫通導体8aの内部に配された柱状の絶縁体10と、を含んでいる。
【0018】
第1樹脂層7aは、コア基板5の主要部をなして剛性を高めるものであり、第1樹脂材
料部11aと、該第1樹脂材料部11a内に含有された複数の無機絶縁粒子12と、該第1樹脂材料部11aにより被覆された基材13と、を含んでいる。
【0019】
この第1樹脂層7aは、厚みが例えば0.08mm以上1.2mm以下に設定され、平
面方向への熱膨張率が例えば5ppm/℃以上30ppm/℃以下に設定され、厚み方向への熱膨張率が例えば15ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定され、厚み方向への熱膨張率が平面方向への熱膨張率の例えば1.5倍以上3倍以下に設定され、ヤング率が例えば5GPa以上30GPa以下に設定されている。
【0020】
なお、第1樹脂層7aの厚みは、第1樹脂層7aを厚み方向に沿って切断し、その研摩面若しくは破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、厚み方向に沿った長さを測定し、その平均値を算出することにより測定される。また、第1樹脂層7aの熱膨張率は、市販のTMA装置を用いてJISK7197‐1991に準じた測定方法により測定される。また、第1樹脂層7aのヤング率は、MTSシステムズ社製Nano Indentor XP/DCMを用いて測定される。以下、各部材の厚み、熱膨張率及びヤング率は、特にことわりがない場合、第1樹脂層7aと同様に測定する。
【0021】
第1樹脂層7aに含まれる第1樹脂材料部11aは、第1樹脂層7aの主要部をなすも
のであり、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂又はポリエーテルケトン樹脂等の樹脂材料を含むものを使用することができる。この第1樹脂材料部11aは、各方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば0.1GPa以上5GPa以下に設定されている。
【0022】
第1樹脂材料部11a内に含有された複数の無機絶縁粒子12は、無機絶縁フィラーを構成し、第1樹脂層7aの熱膨張率を低減するとともに第1樹脂層7aの剛性を高めるものであり、例えば酸化ケイ素を含む無機絶縁材料を用いることができる。なお、該無機絶縁材料は、酸化ケイ素に加えて、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム又は炭酸カルシウム等を含有するものを用いても構わない。また、無機絶縁粒子12は、酸化ケイ素を65重量%以上100重量%以下含有することが望ましい。
【0023】
この無機絶縁粒子12は、例えば球状に形成されており、粒径が例えば0.5μm以上5.0μm以下に設定され、第1樹脂材料部11a内における含有量が例えば50体積%以上85体積%以下に設定され、各方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上7ppm/℃以下に設定されている。
【0024】
なお、無機絶縁粒子12の粒径は、第1樹脂層7aの研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で観察し、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影し、該拡大した断面にて各粒子の最大径を測定することにより測定される。また、第1樹脂層7aの第1樹脂材料部11a内における無機絶縁粒子12の含有量(体積%)は、第1樹脂層7aの研摩面を電界放出型電子顕微鏡で撮影し、画像解析装置等を用いて、第1樹脂材料部11a及び無機絶縁粒子12の面積の合計値に対して無機絶縁粒子12の占める面積比率(面積%)を10箇所の断面にて測定し、その測定値の平均値を算出して含有量(体積%)とみなすことにより測定される。
【0025】
第1樹脂材料部11aに被覆された基材13は、第1樹脂層7aの剛性を高めるものであり、平面方向への熱膨張率が厚み方向よりも小さいため、配線基板4と電子部品2との平面方向への熱膨張率の差を低減し、配線基板4の反りを低減できる。この基材13としては、無機絶縁繊維13aが縦横に織り込まれてなる織布を使用することができ、無機絶縁繊維13aとしては、例えばガラス繊維を使用することができる。
【0026】
第1樹脂層7aを厚み方向に貫通する第1貫通孔P1は、例えば円柱状に形成されてお
り、平面方向に沿った断面積が300μm以上40000μm以下に設定されている。
【0027】
第1貫通孔P1内に配された第1貫通導体8aは、コア基板5上下の配線層6同士を電気的に接続するものであり、銅(導電率7.74x10m・Ω、熱伝導率401W/(
m・K)、熱膨張率16.5ppm/℃、ヤング率130GPa)を含む金属材料により形成されたものを用いることができる。このように導電率と熱伝導率に優れた金属材料を用いることにより、第1貫通導体8aの信号伝送特性を高めるとともに、電子部品2から後述する導電層16及び第2貫通導体8bを介して伝わった熱を外部へ効率良く放散させることができる。この第1貫通導体8aは、厚みが2μm以上30μm以下に設定されている。
【0028】
第1樹脂層7aと第1貫通導体8aとの間に介された第1介在膜9aは、第1樹脂層7aに当接した第1酸化チタン膜14aと、該第1酸化チタン膜14aよりも第1貫通導体8a側に配され、第1酸化チタン膜14aに当接したチタン膜15と、を有する。この第1介在膜9aは、厚みが例えば10nm以上100nm以下に設定されており、厚みが第1貫通導体8aの厚みの例えば0.0003倍以上0.05倍以下に設定されている。
【0029】
第1酸化チタン膜14aは、絶縁物である酸化チタン(チタンの酸化物)を例えば99.9重量%以上100重量%未満含有しており、例えば酸化チタンに加えて鉄を0.01重量%未満含有しても構わない。この酸化チタンは、二酸化チタンを例えば50重量%以上100重量%未満含有しており、例えば二酸化チタンに加えて、Ti、TiO、TiO、TiO、TiO又はTiO等を含有しても構わない。
【0030】
チタン膜15は、チタン(導電率2.34x10m・Ω、熱伝導率21.9W/(m
・K)、熱膨張率8.6ppm/℃、ヤング率106GPa)を例えば99.9重量%以上100重量%未満含有しており、例えばチタンに加えて鉄を0.01重量%未満含有しても構わない。
【0031】
なお、第1酸化チタン膜14a及びチタン膜15の判別は、第1介在膜9aを厚み方向に沿って切断し、その研摩面若しくは破断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、透過性を示すか否かで行うことができる。また、その観察時にEPMA(電子線マイクロアナライザ)を用いることにより、第1酸化チタン膜14a及びチタン膜15の化学組成の分析及び厚みの算出を行うことができる。後述する第2介在膜9bにおいても、第1酸化チタン膜14a及びチタン膜15の判別、化学組成の分析及び厚みの算出は、第1介在膜9aにおけるものと同様に行う。
【0032】
第1貫通導体8aの内部に配された絶縁体10は、後述する第2貫通導体8bの支持面を形成するものであり、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂又はビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料により形成されたものを使用することができる。
【0033】
一方、コア基板5の上下には、上述した如く、一対の配線層6が形成されている。配線層6は、図1(a)及び図2に示すように、第1樹脂層7a上に積層され、厚み方向に貫
通する第2貫通孔P2が複数形成された第2樹脂層7bと、第1樹脂層7a上又は第2樹
脂層7b上に形成された導電層16と、第2貫通孔P2内に配され、導電層16に電気的に接続された第2貫通導体8bと、第2樹脂層7bと第2貫通導体8bとの間に介された第2介在膜9bと、を含んでいる。
【0034】
第2樹脂層7bは、導電層16を支持する支持部材として機能するだけでなく、導電層
16同士の短絡を防ぐ絶縁部材として機能するものであり、第2樹脂材料部11bと、該第2樹脂材料部11b内に含有された無機絶縁粒子12と、を含んでいる。
【0035】
この第2樹脂層7bは、厚みが例えば3μm以上50μm以下に設定され、ヤング率が例えば5GPa以上40GPa以下に設定されている。
【0036】
第2樹脂絶縁部7b1に含まれる第2樹脂材料部11bとしては、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂又はポリエーテルケトン樹脂等により形成されたものを使用することができる。
【0037】
第2樹脂材料部11b内に含有された無機絶縁粒子12としては、上述した第1樹脂層7aに含まれる無機絶縁粒子12と同様のものを用いることができる。
【0038】
導電層16は、厚み方向に互いに離間するとともに第1樹脂層7a上及び第2樹脂層7
b上に間隙を空けて配置されており、銅により形成されたものを使用することができる。
【0039】
第2貫通導体8bは、厚み方向に互いに離間した導電層16同士を相互に接続するものであり、例えば配線基板4の平面方向に沿った断面が円形であるとともに該断面の面積がコア基板5に向って小さくなる柱状に形成されており、第1貫通導体8aと同様に、銅により形成されたものを使用することができる。この第2貫通導体8bは、配線基板4の平面方向に沿った断面積が300μm以上700μm以下に設定されている。
【0040】
第2樹脂層7bと第2貫通導体8bとの間に介された第2介在膜9bは、第2樹脂層7bに当接した第1酸化チタン膜14aと、該第1酸化チタン膜14aよりも第2貫通導体8b側に配され、第1酸化チタン膜14aに当接したチタン膜15と、を有する。
【0041】
この第1酸化チタン膜14a及びチタン膜15は、上述したコア基板5に含まれる第1酸化チタン膜14a及びチタン膜15と同様の構成を有している。
【0042】
ところで、第1樹脂層7aの第1樹脂材料部11aを構成する樹脂材料又は絶縁体10を構成する樹脂材料に含まれる水分が第1貫通導体8aに接触すると、第1貫通導体8aを構成する金属材料がイオン化することがある。
【0043】
また、第1貫通導体8a、導電層16及び第2貫通導体8bは、互いに電気的に接続されることにより、例えば接地用配線、電力供給用配線又は信号用配線として機能する1組の配線部を構成している。このように、第1貫通導体8aは、例えば接地用配線、電力供給用配線又は信号用配線としての機能を有することから、隣接する第1貫通導体8aと異なる電圧になる場合があり、隣接する第1貫通導体8a間で電界が発生することがある。
【0044】
一方、本実施形態の配線基板4においては、図1(a)に示すように、第1樹脂層7aと第1貫通導体8aとの間に介された第1介在膜9aは、第1樹脂層7aに当接した第1酸化チタン膜14aを有している。
【0045】
ここで、第1酸化チタン膜14aを構成する酸化チタンは、第1貫通導体8aを構成する金属材料の酸化物と比較して、イオン化しにくく化学的に安定であり、且つ、緻密で強固な結晶構造を有する不動態被膜を形成している。それ故、イオン化した第1貫通導体8aの金属材料が第1酸化チタン膜14aを通過しにくいため、隣接する第1貫通導体8a間で電界が発生した場合に、該イオン化した金属材料が第1樹脂層7aに侵入することを
低減することができる。また、第1樹脂層7aに含まれる水分が第1酸化チタン膜14aを通過しにくいため、該水分に起因した第1貫通導体8aの金属材料のイオン化を低減することができる。
【0046】
したがって、第1貫通導体8aの金属材料のイオン化を低減しつつ、イオン化した金属材料が第1樹脂層7aに侵入することを低減することにより、隣接した第1貫通導体8a間のイオンマイグレーションを低減し、ひいては配線基板4の電気的信頼性を向上させることができる。
【0047】
さらに、本実施形態の配線基板4においては、第1介在膜9aは、第1酸化チタン膜14aよりも第1貫通導体8a側に配され、第1酸化チタン膜14aに当接したチタン膜15を有している。
【0048】
ここで、チタン膜15を構成するチタンのヤング率(115.7GPa)は、第1酸化チタン膜14aを構成する二酸化チタンのヤング率(289.4GPa)よりも小さいため、チタン膜15は第1酸化チタン膜14aよりも柔軟性が高い。それ故、チタン膜15が第1貫通導体8aと第1酸化チタン膜14aとの間に介されることによって、第1貫通導体8aと第1酸化チタン膜14aとが直接当接している場合と比較して、第1貫通導体8aと第1酸化チタン膜14aとの間に印加される応力を緩和して、第1貫通導体8aと第1酸化チタン膜14aとの剥離を低減することができるため、該剥離に起因した第1貫通導体8aのクラックを低減できる。また、チタン膜15が第1酸化チタン膜14aに印加される応力を緩和することにより、第1酸化チタン膜14aにクラックが生じることを低減できるため、該クラックが第1貫通導体8aに向って伸長することを低減できる。
【0049】
したがって、第1貫通導体8aと第1酸化チタン膜14aとの剥離を低減しつつ、第1酸化チタン膜14aのクラックを低減することにより、第1貫通導体8aの断線を低減し、ひいては配線基板4の電気的信頼性を向上させることができる。
【0050】
また、上述したように、本実施形態の配線基板4においては、チタン膜15は第1酸化チタン膜14aに当接しており、チタン膜15と第1酸化チタン膜14aとの界面領域において、チタンと酸化チタンとが互いに分散して混合されることにより、チタン膜15と第1酸化チタン膜14aとを強固に接着させることができる。それ故、第1貫通導体8aと第1酸化チタン膜14aとの剥離を低減することができる。
【0051】
また、本実施形態の配線基板4においては、前記界面領域で、酸化チタンの含有量が第1酸化チタン膜14aからチタン膜15に向って減少するように設定されているとともに、チタンの含有量が第1酸化チタン膜14aからチタン膜15に向って増加するように設定されている。その結果、チタン膜15と第1酸化チタン膜14aとをより強固に接着させることができる。
【0052】
なお、第1介在膜9aの前記界面領域において、チタンと酸化チタンとが互いに拡散して混合されていることは、TEMを用いた断面観察によって確認される。また、第1介在膜9aの前記界面領域におけるチタンと酸化チタンとの含有量の変化は、EPMAを用いた分析によって測定される。後述する第2介在膜9bの前記界面領域においても、チタンと酸化チタンとの拡散の確認と、チタン及び酸化チタンの含有量の変化は、第1介在膜9aの場合と同様に行う。
【0053】
また、本実施形態の配線基板4において、チタン膜15は、第1酸化チタン膜14aよりも厚みが大きく設定されている。その結果、第1貫通導体8aと第1酸化チタン膜14aとの間に印加される応力をより緩和することができる。また、チタン膜15は熱伝導率
が第1酸化チタン膜14aよりも高いため、チタン膜15の厚みを第1酸化チタン膜14aよりも大きくすることにより、電子部品2の熱をより拡散させることができる。
【0054】
この場合、チタン膜15は、厚みが例えば40nm以上100nm以下に設定されており、厚みが第1酸化チタン膜14a(第1樹脂材料部11aとの当接部)の厚みの例えば2倍以上5倍以下に設定されている。また、第1酸化チタン膜14aは、厚みが例えば10nm以上40nm以下に設定されている。
【0055】
また、本実施形態の配線基板4においては、チタン膜15は、第1貫通導体8aに当接している。ここで、金属材料同士は互いに拡散しやすいことから、第1貫通導体8aとチタン膜15との境界領域においては、互いに金属材料が拡散して混合しやすい。それ故、第1貫通導体8aとチタン膜15とが強固に接着されるため、第1貫通導体8aと第1酸化チタン膜14aとの剥離を低減することができる。
【0056】
この第1貫通導体8aとチタン膜15との界面領域においては、例えば、銅とチタンとの銅チタン拡散混合層が形成されており、該銅チタン拡散混合層は、厚みが例えば1nm以上5nm以下に設定されている。なお、銅チタン拡散混合層は、TEMを用いて配線基板4の断面を観察することにより確認することができる。
【0057】
また、本実施形態の配線基板4においては、第1酸化チタン膜14aは、無機絶縁繊維13a及び第1樹脂材料部11aに当接しており、無機絶縁繊維13aとの当接部の厚みが第1樹脂材料部11aとの当接部の厚みよりも小さく設定されている。
【0058】
その結果、水分を含みやすくイオンマイグレーションが生じやすい第1樹脂材料部11aとの当接部においては、第1酸化チタン膜14aの厚みが大きいため、第1貫通導体8aの金属材料による第1酸化チタン膜14aの通過を低減することができる。さらに、無機絶縁繊維13aとの当接部においては第1酸化チタン膜14aの厚みが小さく設定されていることから、第1酸化チタン膜14aとチタン膜15との間に凹凸を形成することができ、該凹凸のアンカー効果により、第1酸化チタン膜14aとチタン膜15との接着強度を高めることができる。また、第1樹脂材料部11aよりも硬い無機絶縁繊維13aとの当接部において、チタン膜15よりも硬い第1酸化チタン膜14aを薄くしつつ、第1酸化チタン膜14aよりも柔らかいチタン膜15を厚くすることにより、無機絶縁繊維13aによって第1介在膜9aに印加される応力をチタン膜15によって緩和し、第1介在膜9aのクラックを低減することができる。
【0059】
なお、第1酸化チタン膜14aは、第1樹脂材料部11aとの当接部の厚みが例えば10nm以上40nm以下に設定され、無機絶縁繊維13aとの当接部の厚みが例えば1nm以上10nm以下に設定され、無機絶縁繊維13aとの当接部の厚みが第1樹脂材料部11aとの当接部の厚みの例えば0.1倍以上0.9倍以下に設定されている。
【0060】
一方、本実施形態の配線基板4においては、第1酸化チタン膜14aは無機絶縁粒子12及び第1樹脂材料部11aに当接しており、無機絶縁粒子12との当接部の厚みが第1樹脂材料部11aとの当接部の厚みよりも小さく設定されている。その結果、上述した無機絶縁繊維13aの場合と同様に、第1貫通導体8aの金属材料による第1酸化チタン膜14aの通過を低減しつつ、第1酸化チタン膜14aとチタン膜15との接着強度を高めることができる。
【0061】
なお、第1酸化チタン膜14aは、第1樹脂材料部11aとの当接部の厚みが例えば10nm以上40nm以下に設定され、無機絶縁粒子12との当接部の厚みが例えば1nm以上10nm以下に設定され、無機絶縁粒子12との当接部の厚みが第1樹脂材料部11
aとの当接部の厚みの例えば0.1倍以上0.9倍以下に設定されている。
【0062】
一方、本実施形態の配線基板4においては、図2に示すように、第2樹脂層7bと第2貫通導体8bとの間に介された第2介在膜9bは、上述した第1樹脂層7aと第2貫通導体8aとの間に介された第1介在膜9aと同様の構成及び作用効果を有している。なお、第2樹脂層7bが無機絶縁繊維13aを含んでいないため、第2樹脂層7bと第2貫通導体8bとの間に介された第2介在膜9bは、無機絶縁繊維13aとの関係において、第1介在膜9aと相違する。
【0063】
かくして、上述した実装構造体1は、配線基板4を介して供給される電源や信号に基づいて電子部品2を駆動若しくは制御することにより、所望の機能を発揮する。
【0064】
次に、上述した実装構造体1の製造方法を説明する。
【0065】
(コア基板の作製)
(1)図3(a)に示すように、第1樹脂層7aと該第1樹脂層7aの上下に配された
金属箔16xとからなる金属張積層板5xを準備する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0066】
未硬化の第1樹脂材料部11a、無機絶縁粒子12及び基材13を含む複数の樹脂シートを積層して第1樹脂層前駆体を形成し、該第1絶縁層前駆体の上下に金属箔16xを積層して積層体を形成した後、該積層体を厚み方向に加熱加圧することにより、該第1樹脂材料部11aを熱硬化させて第1樹脂層7aを形成するとともに、上述した金属張積層板5xを作製する。なお、未硬化は、ISO472:1999に準ずるA‐ステージ又はB‐ステージの状態である。
【0067】
なお、金属箔16xは、例えば銅、鉄ニッケル合金又は鉄ニッケルコバルト合金等の金属材料により形成されたものを使用することができる。
【0068】
(2)図3(b)及び(c)に示すように、例えばレーザー加工又はドリル加工を用いて、金属張積層板5xを厚み方向に貫通する第1貫通孔P1を形成し、該第1貫通孔P1内に第1樹脂層7aを露出させる。
【0069】
(3)図4(a)に示すように、第1介在膜9aを第1貫通孔P1内に形成する。具体的には例えば以下のように行う。
【0070】
スパッタリング法又は蒸着法を用いて、第1貫通孔P1内に露出した第1樹脂層7aの表面にチタンを被着させる。ここで、第1樹脂層7aは樹脂分子の一部が酸化されていることから、第1樹脂層7aの表面に被着したチタンが該酸化した樹脂分子によって酸化されるため、第1酸化チタン膜14aが形成される。この第1酸化チタン膜14aの厚みが10nm以上40nm以下に達すると、第1貫通孔P1側に被着されたチタンが第1酸化チタン膜14aによって第1樹脂層7aから保護されるため、該チタンの酸化が抑制されることとなり、第1酸化チタン膜14aの形成が停止する。したがって、第1酸化チタン膜14aの形成が停止する厚みよりも厚く、チタンを第1樹脂層7aの表面に被着させることにより、第1酸化チタン膜14aよりも第1貫通孔P1側にチタン膜15を形成することができる。以上のようにして、第1酸化チタン膜14a及びチタン膜15を有する第1介在膜9aを形成することができる。
【0071】
また、チタンの被着は、気圧が1.0×10−2Pa以上10Pa以下に設定された真空条件下で行う。その結果、第1貫通孔P1側におけるチタンの酸化を抑制することがで
き、第1貫通孔P1内にチタン膜15を露出させることができる。
【0072】
なお、スパッタリング法としては、マグネトロンスパッタリング法を用いることが望ましい。その結果、より低圧下でスパッタリングを行うことができるため、スパッタリング時に放出される金属粒子の平均自由行程を大きくすることができ、細長形状の第1貫通孔P1の内壁全体を被膜しやすることができる。
【0073】
また、蒸着法としては、イオンプレーティング法又はイオンアシスト法を用いることが望ましい。その結果、イオンプレーティング法又はイオンアシスト法を用いた場合、電荷を帯びた金属粒子を蒸着させるため、細長形状の第1貫通孔P1の内壁へ効率良く被覆させることができる。
【0074】
(4)図4(b)、図5(a)及び図5(b)に示すように、第1貫通導体8aを第1貫通孔P1内に形成する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0075】
まず、図4(b)に示すように、スパッタリング法又は蒸着法を用いて、第1貫通孔P1内に露出した介在膜9aに金属材料を被着させることにより、第1貫通導体下地膜8axを第1貫通孔P1内に形成する。このようにスパッタリング法又は蒸着法を用いることにより、第1介在膜9aと第1貫通導体下地膜8axとの密着強度を高めることができる。
【0076】
ここで、(3)の工程における真空条件は、第1介在膜9aの形成時から第1貫通導体下地膜8axが形成されるまでの間、維持されている。その結果、第1貫通孔P1側からのチタンの酸化を抑制することにより、第1貫通孔P1側に配されたチタン膜15を維持しつつ、第1貫通導体下地膜8axを形成することができ、ひいてはチタン膜15を第1貫通導体下地膜8axに当接させることができる。このチタン膜15の第1貫通孔P1側に位置する表面は、第1貫通導体下地膜8axによって保護される。
【0077】
次に、図5(a)及び(b)に示すように、電気めっき法を用いて、第1貫通導体下地膜8axに金属材料を被着させることにより、第1貫通導体下地膜8axを含む円筒状の第1貫通導体8aを形成する。この金属材料を被着させる際に、チタン膜15は上述したように第1貫通導体下地膜8axによって保護されているため、電気めっき法に用いられるめっき液からチタン膜15を保護することができ、ひいては該めっき液に起因したチタン膜15の酸化を抑制することができる。その結果、第1貫通導体下地膜8axに当接されたチタン膜15を維持することにより、第1貫通導体8aに当接されたチタン膜15を形成することができる。
【0078】
なお、第1貫通導体下地膜8axは、第1貫通導体8aを構成する金属材料との同一の金属材料により構成されている。この第1貫通導体下地膜8axは、第1介在膜9a保護の観点から、厚みが第1介在膜9aの厚みよりも大きいことが望ましい。
【0079】
(5)図6(a)に示すように、第1貫通導体8aの内部に絶縁体10を形成し、第1樹脂層7aの上下に導電層15を形成する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0080】
まず、円筒状の第1貫通導体8aの内部に樹脂材料等を充填し、絶縁体10を形成する。次に、導電材料を絶縁体10の露出部に被着させた後、従来周知のフォトリソグラフィー技術、エッチング等により、銅箔16xをパターニングして導電層16を形成する。
【0081】
以上のようにして、コア基板5を作製することができる。
【0082】
(配線基板の作製)
(6)図6(b)に示すように、コア基板5の上下に一対の配線層6を形成することにより、配線基板4を作製する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0083】
まず、未硬化の樹脂を導電層16上に配置し、樹脂を加熱して流動密着させつつ、更に加熱して樹脂を硬化させることにより、導電層16上に第2樹脂層7bを形成する。次に、(2)の工程と同様に、第2樹脂層7bに第2貫通孔P2を形成し、第2貫通孔P2内に導電層16の少なくとも一部を露出させる。次に、(3)及び(4)の工程と同様に、第2貫通孔P2内に第2介在膜9b及び第2貫通導体8bを形成するとともに、例えばセミアディティブ法、サブトラクティブ法又はフルアディティブ法等により、第2樹脂層7bの上面に導電層16を形成する。
【0084】
以上のようにして、配線基板4を作製することができる。なお、本工程を繰り返すことにより、配線層6において第2樹脂層7b及び導電層16を多層化させることができる。
【0085】
(実装構造体の作製)
(7)最上層の導電層16上面にバンプ3を形成するとともにバンプ3を介して配線基板4に電子部品2をフリップチップ実装する。
【0086】
以上のようにして、図1(a)に示した実装構造体1を作製することができる。
【0087】
なお、上述した第1実施形態において、電子部品に半導体素子を用いた構成を例に説明したが、電子部品としてはコンデンサ等を用いても構わない。
【0088】
また、上述した第1実施形態において、電子部品を配線基板にフリップチップ実装した構成を例に説明したが、電子部品を配線基板にワイヤボンディング実装しても構わない。
【0089】
また、上述した第1実施形態において、第2絶縁層を1層含む配線層を備えた構成を例に説明したが、配線層は第2絶縁層を何層含んでも構わない。
【0090】
また、上述した第1実施形態において、第1樹脂層は、第1樹脂材料部、無機絶縁粒子及び基材を含む構成を例に説明したが、第1樹脂層は第1樹脂材料部を含んでいればよく、無機絶縁粒子を含まなくても構わないし、基材を含まなくても構わないし、第1樹脂材料に被覆された金属板を更に含んでいても構わない。
【0091】
また、上述した第1実施形態において、無機絶縁繊維からなる基材を用いた構成を例に説明したが、基材を構成する繊維は、無機絶縁繊維でなくてもよく、例えばポリイミド樹脂又はポリアミド樹脂からなる有機繊維を用いても構わない。ここで、有機繊維を用いた場合、第1樹脂材料部よりも酸化されにくい材料からなる有機繊維を用いることにより、第1酸化チタン膜の厚みを、有機繊維との当接部において小さくすることができる。
【0092】
また、上述した第1実施形態において、基材として織布を用いた構成を例に説明したが、基材は繊維により構成されていればよく、繊維を一方向に配列したものや不織布を用いても構わない。
【0093】
また、上述した第1実施形態において、第1貫通孔の内壁に筒状の第1貫通導体を被着させ、該第1貫通導体内に絶縁体を充填した構成を例に説明したが、絶縁体を形成することなく、第1貫通孔内に第1貫通導体を充填しても構わない。
【0094】
また、上述した第1実施形態において、チタン膜は、厚みが第1酸化チタン膜よりも大
きく設定された構成を例に説明したが、介在膜がチタン膜を有していればよく、第1酸化チタン膜の厚みが例えば10nm以上40nm以下に設定され、チタン膜の厚みが例えば5nm以上100nm以下に設定され、チタン膜の厚みが第1酸化チタン膜(第1樹脂材料部との当接部)の厚みの例えば0.5倍以上10倍以下に設定されていても構わない。また、図7(a)に示すように、チタン膜15´の厚みは第1酸化チタン膜14a´の厚みよりも小さくても構わない。
【0095】
また、上述した第1実施形態において、第1酸化チタン膜は、第1樹脂材料との当接部における厚みが、無機絶縁粒子との当接部及び無機絶縁繊維との当接部における厚みよりも、大きく設定された構成を例に説明したが、介在膜が第1酸化チタン膜を有していればよく、図7(a)に示すように、第1酸化チタン膜14a´の厚みが第1樹脂層7a´の厚み方向に渡って同一に設定されていても構わない。この場合、例えば、基材に含まれる繊維13a´として、第1樹脂材料部11a´と同一の樹脂材料からなる有機繊維を用いることや、第1樹脂層7a´として、第1樹脂材料部11a´における無機絶縁粒子12´の含有量が少ない第1樹脂層7a´を用いることにより、第1樹脂層7a´の厚み方向に渡って厚みが同一の第1酸化チタン膜14a´を形成することができる。
【0096】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る配線基板を含む実装構造体を、図7(b)に基づいて詳細に説明する。なお、上述した第2実施形態と同様の構成に関しては、記載を省略する。
【0097】
第2実施形態は、第1実施形態と異なり、第1介在膜9aAは、チタン膜15A及び第1酸化チタン膜14aAに加え、チタン膜15Aよりも第1貫通導体8aA側に配され、第1貫通導体8aAに当接された第2酸化チタン膜14bAを更に有している。
【0098】
それ故、イオン化した第1貫通導体8aAの金属材料が第2酸化チタン膜14bAを通過しにくいため、隣接する第1貫通導体8aA間で電界が発生した場合に、該イオン化した金属材料が第1樹脂層7aAに侵入することを低減することができる。また、第1樹脂層7aAに含まれる水分が第2酸化チタン膜14bAを通過しにくいため、該水分に起因した第1貫通導体8aAの金属材料のイオン化を低減することができる。
【0099】
この第2酸化チタン膜14bAは、例えば厚み方向及び周回方向に渡ってチタン膜15Aを被覆している。この第2酸化チタン膜14bAの厚みは、例えば10nm以上40nm以下に設定されている。また、第2酸化チタン膜14bAの厚みは、例えば、第1酸化チタン膜14aA(第1樹脂材料11aAとの当接部)の厚みと略同一に設定されており、すなわち、第1酸化チタン膜14aA(第1樹脂材料11aAとの当接部)の厚みの例えば0.8倍以上1.2倍以下に設定されている。
【0100】
第2酸化チタン膜14bAは、例えば以下のようにして形成することができる。上述した第1実施形態に係る配線基板の製造方法において、(3)の工程において、チタン膜15Aの厚みを40nm以上100nm以下に形成した後、(4)の工程の前に、一度大気に晒して第1貫通孔P1A側からチタン膜15Aの表面を酸化させる。その結果、第1酸化チタン膜14aAと同様に、第2酸化チタン膜14bAが形成される。
【0101】
一方、第2実施形態は、第1実施形態と異なり、第1酸化チタン膜14aAは、第1樹脂材料部11aAに当接しているとともに、第1介在膜9aAの無機絶縁繊維13aAとの当接部に第1孔部C1Aが形成されており、チタン膜15Aの一部は、第1孔部C1Aに充填されているとともに無機絶縁繊維13aAに当接している。
【0102】
その結果、水分を含みやすい第1樹脂材料部11aAとの当接部においては、第1酸化チタン膜14aによって、第1貫通導体8aの金属材料による第1介在膜9aAの通過を低減することができる。さらに、無機絶縁繊維13aAとの当接部においてはチタン膜15Aの一部が第1孔部C1Aに充填されていることから、第1実施形態よりも大きい凹凸を第1酸化チタン膜14aAとチタン膜15Aとの間に形成することができ、該凹凸のアンカー効果を高めることができる。また、柔軟性が高くクラックの生じにくいチタン膜15Aを剛性の高い無機絶縁繊維13aAに当接させるとともに、剛性が高くクラックが生じやすい第1酸化チタン膜14aAを柔軟性の高い第1樹脂材料部11aAに当接させることにより、第1介在膜9aAのクラックを低減することができる。
【0103】
また、無機絶縁繊維13aAと第1樹脂材料部11aAとの境界領域においては、第1酸化チタン膜14aAが、無機絶縁繊維13aA及び第1樹脂材料部11aAの双方に当接している。
【0104】
その結果、無機絶縁繊維13aAと第1樹脂材料部11aAとの剥離に起因してイオンマイグレーションが生じやすい該境界領域において、第1酸化チタン膜14aAによって、第1貫通導体8aAの金属材料による第1介在膜9aAの通過を低減することができ、ひいては隣接する第1貫通導体8aA間のイオンマイグレーションを低減することができる。
【0105】
チタン膜15Aの一部が充填された第1孔部C1Aは、例えば以下のようにして形成することができる。まず、(2)の工程にて、第1貫通孔P1内壁をプラズマ処理又はデスミア処理することによって、第1貫通孔P1側における無機絶縁繊維13aAの端部に付着した、第1樹脂材料部11aAの樹脂残渣を除去する。次に、(3)の工程にて、チタンを被着させて第1介在膜9aAを形成する。その結果、無機絶縁繊維13aAの第1貫通孔P1に露出した表面への樹脂残滓の付着が抑制されているため、無機絶縁繊維13aAに被着されたチタンの酸化を抑制し、チタン膜15Aの一部が充填された第1孔部C1Aを形成することができる。
【0106】
一方、第2実施形態は、第1実施形態と異なり、第1酸化チタン膜14aAは、第1樹脂材料部11aAに当接しているとともに、第1介在膜9aAの無機絶縁粒子12Aとの当接部に第2孔部C2Aが形成されており、チタン膜15Aの一部は、第2孔部C2Aに充填されているとともに無機絶縁粒子12Aに当接している。その結果、上述した無機絶縁繊維13aAの場合と同様に、第1貫通導体8aの金属材料による第1介在膜9aAの通過を低減しつつ、第1酸化チタン膜14aAとチタン膜15Aとの接着強度を高めるとともに、第1介在膜9aAのクラックを低減することができる。
【0107】
また、無機絶縁粒子12Aと第1樹脂材料部11aAとの境界領域においては、第1酸化チタン膜14aAが、無機絶縁粒子12A及び第1樹脂材料部11aAの双方に当接している。その結果、上述した無機絶縁繊維13aAの場合と同様に、隣接する第1貫通導体8aA間のイオンマイグレーションを低減することができる。
【0108】
チタン膜15Aの一部が充填された第2孔部C2Aは、例えば以下のようにして形成することができる。
【0109】
まず、(2)の工程において、第1貫通孔P1内壁をプラズマ処理又はデスミア処理する。これにより、第1貫通孔P1の内壁から第1樹脂材料部11aAを部分的に除去することができるため、無機絶縁粒子12Aを第1樹脂層7aAから突出させて、第1貫通孔P1内に無機絶縁粒子12Aの表面を大きく露出させる。次に、(3)の工程において、チタンを被着させることにより、無機絶縁粒子12Aの第1貫通孔P1内に露出した表面
に被着されたチタンの酸化を抑制し、チタン膜15Aの一部が充填された第1孔部C2Aを形成することができる。
【0110】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組み合わせ等が可能であり、第1実施形態と第2実施形態との各構成を互いに置換することができ、例えば、第1実施形態の第1酸化チタン膜の構成を第2実施形態の第1酸化チタン膜に適用しても構わない。
【符号の説明】
【0111】
1 実装構造体
2 電子部品
3 バンプ
4 配線基板
5 コア基板
6 配線層
7a 第1樹脂層
7b 第2樹脂層
8a 第1貫通導体
8b 第2貫通導体
9a 第1介在膜
9b 第2介在膜
10 絶縁体
11a 第1樹脂材料部
11b 第2樹脂材料部
12 無機絶縁粒子
13 基材
13a 無機絶縁繊維
14a 第1酸化チタン膜
15 チタン膜
16 導電層
P1 第1貫通孔
P2 第2貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成された樹脂層と、該貫通孔内に配された貫通導体と、前記樹脂層と前記貫通導体との間に介された介在膜とを備え、
該介在膜は、前記樹脂層に当接した第1酸化チタン膜と、該第1酸化チタン膜よりも前記貫通導体側に配され、前記第1酸化チタン膜に当接したチタン膜とを有することを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記チタン膜は、前記貫通導体に当接していることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板において、
前記介在膜は、前記チタン膜よりも前記貫通導体側に配され、前記貫通導体に当接した第2酸化チタン膜を更に有することを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項1に記載の配線基板において、
前記介在膜は、前記第1酸化チタン膜と前記チタン膜との界面領域において、酸化チタンの含有量が前記第1酸化チタン膜から前記チタン膜に向かって減少するように設定されているとともに、チタンの含有量が前記第1酸化チタン膜から前記チタン膜に向かって増加するにように設定されていることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項1に記載の配線基板において、
前記第1酸化チタン膜は、厚みが前記チタン膜よりも小さく設定されていることを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項1に記載の配線基板において、
前記樹脂層は、前記第1酸化チタン膜に当接された繊維と、該繊維を被覆する樹脂材料部とを含んでおり、
前記第1酸化チタン膜は、前記繊維との当接部の厚みが前記樹脂材料部との当接部の厚みよりも小さく設定されていることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
請求項1に記載の配線基板において、
前記樹脂層は、前記介在膜に当接された繊維と、該繊維を被覆する樹脂材料部とを含んでおり、
前記第1酸化チタン膜は、前記樹脂材料部に当接しているとともに、前記介在膜の前記繊維との当接部に孔部が形成されており、
前記チタン膜の一部は、前記孔部に充填されているとともに前記繊維に当接していることを特徴とする配線基板。
【請求項8】
請求項1に記載の配線基板において、
前記樹脂層は、前記第1酸化チタン膜に当接された無機絶縁粒子と、該無機絶縁粒子を被覆する樹脂材料部とを含んでおり、
前記第1酸化チタン膜は、前記無機絶縁粒子との当接部の厚みが前記樹脂材料部との当接の厚みよりも小さく設定されていることを特徴とする配線基板。
【請求項9】
請求項1に記載の配線基板において、
前記樹脂層は、前記介在膜に当接した無機絶縁粒子と、該無機絶縁粒子を被覆する樹脂材料部とを含んでおり、
前記第1酸化チタン膜は、前記樹脂材料部に当接しているとともに、前記介在膜と前記無機絶縁粒子との当接部に孔部が形成されており、
前記チタン膜の一部は、前記孔部に充填されているとともに前記無機絶縁粒子に当接していることを特徴とする配線基板。
【請求項10】
請求項1に記載の配線基板において、
前記スルーホール導体は、銅を含むことを特徴とする配線基板。
【請求項11】
請求項1に記載の配線基板と、
前記配線基板に搭載され、前記貫通導体と電気的に接続された電子部品と
を備えたことを特徴とする実装構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−233691(P2011−233691A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102178(P2010−102178)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】