説明

配線基板およびその実装構造体

【課題】本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板およびその実装構造体を提供するものである。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る配線基板4は、ランド15と、ランド15上に形成された樹脂層10と、該樹脂層10を厚み方向に貫通してランド15の一部を露出するビア孔Vと、該ビア孔V内に形成されたビア導体12とを備え、ランド15は、導体膜18と、該導体膜18におけるビア導体12側の一主面に形成された被覆膜19とを有し、ビア導体12は、ビア孔Vの内壁およびビア孔Vに露出したランド15の一部に被着した下地膜17と、該下地膜17上に形成された導体部20とを有し、導体膜18および導体部20は、被覆膜19および下地膜17よりも導電率が高く、被覆膜19は、導体膜18よりもヤング率が大きく、且つ、下地膜17よりも厚みが大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(たとえば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器およびその周辺機器)に使用される配線基板およびその実装構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における実装構造体としては、配線基板に電子部品を実装したものが使用されている。
【0003】
配線基板に関して、特許文献1には、ランドと、該ランド上に形成された有機絶縁層と、該有機絶縁層を厚み方向に貫通して前記ランドに接続したビアスタッドとを備えた構成が記載されている。
【0004】
ところで、電子部品の実装時や作動時の熱が配線基板に加わると、ビアスタッドと有機絶縁層との熱膨張率の違いに起因して、ランド上に形成されたビアスタッドと有機絶縁層との平面方向の熱膨張が異なるため、ランドとビアスタッドとの接続部の近傍にてランドに引っ張り応力が発生してクラックが生じることがあり、配線基板の電気的信頼性が低下しやすくなる。それ故、配線基板の電気的信頼性を向上させることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−23065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板およびその実装構造体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る配線基板は、ランドと、前記ランド上に形成された樹脂層と、該樹脂層を厚み方向に貫通して前記ランドの一部を露出するビア孔と、該ビア孔内に形成されたビア導体とを備え、前記ランドは、導体膜と、該導体膜における前記ビア導体側の一主面に形成された被覆膜とを有し、前記ビア導体は、前記ビア孔の内壁および前記ビア孔に露出した前記ランドの一部に被着した下地膜と、該下地膜上に形成された導体部とを有し、前記導体膜および前記導体部は、前記被覆膜および前記下地膜よりも導電率が高く、前記被覆膜は、前記導体膜よりもヤング率が大きく、且つ、前記下地膜よりも厚みが大きい。
【0008】
本発明の一実施形態に係る実装構造体は、上記配線基板と、該配線基板に実装された電子部品とを備える。
【発明の効果】
【0009】
上記構成によれば、ランドが、導体膜と該導体膜におけるビア導体側の主面に形成された被覆膜とを有し、導体膜は被覆膜よりも導電率が高く、被覆膜は導体膜よりもヤング率が高いため、導体膜によってランドの導電率を高めつつ、被覆膜によってランドのビア導体側の主面の強度を高めることができ、ひいては配線基板の電気的信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の一実施形態にかかる実装構造体の断面図である。
【図2】図2(a)は、図1のR1部分の拡大図であり、図2(b)は、図2(a)におけるランド15の上面図である。
【図3】図3(a)および(b)は、図1(a)に示す実装構造体の製造工程を説明する拡大図である。
【図4】図4(a)ないし(d)は、図3(b)のR2部分における実装構造体の製造工程を説明する拡大図である。
【図5】図5は、本発明の他の実施形態にかかる実装構造体の断面図である。
【図6】図6(a)は、本発明の実施例の対象となる構造を示す断面図であり、図6(b)は、図6(a)のR3部分の拡大図である。
【図7】図7(a)は、本発明の実施例のNo.1の構造における歪みの演算結果を示す断面図であり、図7(b)は、図7(a)の矢印Xが示す箇所における、本発明の実施例のNo.1〜5の歪みおよび寿命比の演算結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る配線基板を含む実装構造体を図1に基づいて詳細に説明する。
【0012】
図1に示す実装構造体1は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置またはその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2と、該電子部品2に接続されたバンプ3と、該バンプ3を介して電子部品2をフリップチップ実装した配線基板4とを含んで構成されている。
【0013】
電子部品2は、例えばICまたはLSI等の半導体素子を用いることができる。該半導体素子は、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウムまたは炭化珪素等の半導体材料によって形成することができ、厚みが、例えば0.1mm以上1mm以下に設定されている。
【0014】
バンプ3は、例えば鉛、錫、銀、金、銅、亜鉛、ビスマス、インジウムまたはアルミニウム等を含む半田等の導電材料によって形成することができる。
【0015】
配線基板4は、コア基板5とコア基板5の上下に形成された一対の配線層6とを含んでいる。
【0016】
コア基板5は、配線基板4の剛性を高めるものであり、基体7と、該基体7を厚み方向に貫通する筒状のスルーホール導体8と、該スルーホール導体8の内部に配された柱状の絶縁体9とを含んでいる。
【0017】
基体7は、コア基板5の主要部をなして剛性を高めるものであり、例えば、樹脂と該樹脂に被覆された基材と樹脂に被覆された無機絶縁フィラーとを含んでいる。この基体7は、厚みが例えば0.1mm以上1mm以下に設定され、平面方向への熱膨張率が例えば5ppm/℃以上30ppm/℃以下に設定され、厚み方向への熱膨張率が例えば15ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば5GPa以上30GPa以下に設定されている。
【0018】
なお、基体7の熱膨張率は、市販のTMA装置を用いてJISK7197‐1991に準じた測定方法により測定される。また、基体7のヤング率は、MTSシステムズ社製Nano Indentor XP/DCMを用いて測定される。以下、各部材の熱膨張率およびヤング率は、基体7と同様に測定される。
【0019】
基体7の樹脂は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂またはポリエーテルケトン樹脂等の樹脂材料を用いることができる。
【0020】
基体7の基材は、繊維により構成された織布若しくは不織布または繊維を一方向に配列したものを使用することができる。繊維としては、例えばガラス繊維、樹脂繊維、炭素繊維または金属繊維等を用いることができる。
【0021】
基体7の無機絶縁フィラーは、複数の無機絶縁粒子からなり、該無機絶縁粒子は、例えば酸化ケイ素を含むものを用いることができる。この無機絶縁粒子は、平面方向および厚み方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上7ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば20GPa以上30GPa以下に設定されている。
【0022】
スルーホール導体8は、コア基板5の上下の配線層6を電気的に接続するものであり、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケルまたはクロム等の導電材料によって形成することができる。
【0023】
絶縁体9は、後述するビア導体12の支持面を形成するものであり、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料によって形成することができる。
【0024】
一方、コア基板5の上下には、上述した如く、一対の配線層6が形成されている。配線層6は、コア基板5上に積層された複数の樹脂層10と、コア基板5上、樹脂層10同士の間および樹脂層10上に配された複数の導電層11と、樹脂層10を厚み方向に貫通して導電層11の一部を露出したビア孔Vと、該ビア孔V内に形成されて導電層11に接続したビア導体12とを含んでいる。
【0025】
樹脂層10は、導電層11を支持する支持部材として機能するだけでなく、導電層11同士の短絡を防ぐ絶縁部材として機能するものであり、平板状のフィルム層13と、該フィルム層13よりもコア基板5側に配された接着層14とを含んでいる。この樹脂層10は、厚みが例えば5μm以上40μm以下に設定されている。
【0026】
フィルム層13は、接着層14よりもヤング率が高いとともに平面方向の熱膨張率が小さく、これにより、樹脂層10の剛性を高めるとともに平面方向における熱膨張率を低減するものである。このフィルム層13は、コア基板5側にて接着層14に当接して被着されており、コア基板5と反対側にて導電層11および他の樹脂層10の接着層14に当接して被着されており、例えば、樹脂と該樹脂に被覆された無機絶縁フィラーとを含んでいる。また、フィルム層13は、厚みが例えば2μm上20μm以下に設定され、平面方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上15ppm/℃以下に設定され、厚み方向への熱膨張率が例えば60ppm/℃以上150ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば2.5GPa以上10GPa以下に設定されている。
【0027】
フィルム層13の樹脂は、例えばポリイミド樹脂またはポリイミドベンゾオキサゾール樹脂等の熱可塑性樹脂によって形成することができ、各樹脂分子鎖の長手方向がフィルム層13の平面方向に平行である構造を有するフィルム状である。このような樹脂を用いることにより、フィルム層13のヤング率を高めるとともに平面方向への熱膨張率を小さくすることができる。
【0028】
フィルム層13の無機絶縁フィラーは、複数の無機絶縁粒子からなり、該無機絶縁粒子は、上述した基体7に含まれたものと同様のものを用いることができる。該無機絶縁粒子は、フィルム層13における含有量が例えば0.5体積%以上3体積%以下に設定されている。
【0029】
なお、フィルム層13における無機絶縁粒子の含有量(体積%)は、フィルム層13の複数の断面それぞれにて、フィルム層13に対して無機絶縁粒子の占める面積比率(面積%)を測定し、その測定値の平均値を算出して含有量(体積%)とみなすことにより測定される。以下、各部材における無機絶縁フィラーの含有量は、フィルム層13と同様に測定される。
【0030】
接着層14は、フィルム層13よりもヤング率が低く、厚み方向に隣接したフィルム層13それぞれに当接して被着することによって、該フィルム層13同士を接着するだけでなく、導電層11の側面およびコア基板5と反対側の一主面に当接して被着することによって、導電層11を固定するものである。この樹脂層14は、ヤング率の観点から無機絶縁フィラーを含まないことが望ましいが、無機絶縁フィラーを含んでも構わない。また、接着層14は、厚みが例えば2μm以上20μm以下に設定され、平面方向および厚み方向への熱膨張率が例えば140ppm/℃以上200ppm/℃以下に設定され、ヤング率が例えば0.05GPa以上5GPa以下に設定されている。
【0031】
接着層14の樹脂は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、またはアミド樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。
【0032】
導電層11は、接地用配線、電力供給用配線または信号用配線として機能するものであり、配線基板4の内層にて基体7または樹脂層10上に形成され、コア基板5と反対側の一主面にビア導体12が接続したランド15と、配線基板4の最外層にて樹脂層10上に形成され、バンプ3が接続したパッド16と、を含んでいる。なお、導電層11は、厚みが例えば3μm以上20μm以下に設定されている。
【0033】
ランド15は、図2(a)に示すように、フィルム層13のコア基板5と反対側の一主面に当接して被着した下地膜17と、該下地膜17上に形成された導体膜18と、該導体膜18のコア基板5と反対側の一主面に形成された被覆膜19とを含んでいる。また、パッド16は、ランド15と同様に下地膜17と導体膜18とを含んでいるが、被覆膜19は含んでいない。このランド15およびパッド16は、例えば円柱状に形成されている。
【0034】
下地膜17は、導電層11をフィルム層14に接着させるためのものであり、ニッケル、クロムまたはニッケルクロム合金からなる。このような金属材料を用いると、金属粒子がイオン化して遊離しにくいため、下地膜17とフィルム層13との接着強度を高めることができる。この下地膜17は、厚みが例えば20nm以上100nm以下に設定され、平面方向および厚み方向への熱膨張率が例えば10ppm以上15ppm以下に設定され、ヤング率が例えば170GPa以上210GPa以下に設定され、導電率が例えば0.8×10/m・Ω以上20×10/m・Ω以下に設定されている。
【0035】
導体膜18は、下地膜17および被覆膜19よりも導電率が高いとともに厚みが大きく、導電層11の導電性を高めるものであり、高導電率である銅からなる。この導体膜18は、厚みが例えば2μm以上30μm以下に設定され、平面方向および厚み方向への熱膨張率が例えば16ppm以上18ppm以下に設定され、ヤング率が例えば100GPa以上130GPa以下に設定され、導電率が例えば60×10/m・Ω程度に設定されている。
【0036】
被覆膜19は、導体膜18よりもヤング率が高い金属材料によって形成することができ、ニッケル、クロムまたはニッケルクロム合金からなる。この被覆膜19は、厚みが例えば50nm以上150nm以下に設定され、平面方向および厚み方向への熱膨張率が例えば7ppm以上20ppm以下に設定され、ヤング率が例えば170GPa以上210GPa以下に設定され、導電率が例えば0.8×10/m・Ω以上20×10/m・Ω以下に設定されている。
【0037】
ビア孔Vは、コア基板5に向って幅が狭いテーパー状に形成されており、ビア導体12が充填されている。
【0038】
ビア導体12は、樹脂層10を介して厚み方向に離間した導電層11同士を相互に接続するものであり、コア基板5に向って幅が狭いテーパー状のビア孔V内に充填されている。このビア導体12は、ビア孔Vの内壁(樹脂層10の一部)およびビア孔Vの底面(導電層11の一部)に当接して被着した下地膜17と、該下地膜17上に形成された導体部20とを含んでいる。なお、ビア導体12は、例えば、厚み方向に複数重なるように配列したスタックビアをなしている。
【0039】
ビア導体12の下地膜17は、該ビア導体12のコア基板5と反対側に配された導電層11の下地膜17と一体的に形成されており、該導電層11の下地膜17と同様の機能、材料および厚みを有する。
【0040】
ビア導体12の導体部20は、ビア孔V内の下地膜17に取り囲まれた領域に充填されているとともに、該ビア導体12のコア基板5と反対側に配された導電層11の導体膜18と一体的に形成されており、該導電層11の導体膜18と同様の機能および材料を有する。
【0041】
ところで、樹脂層10の接着層14は、平面方向の熱膨張率がビア導体12よりも大きい。それ故、電子部品2の実装時や作動時の熱が配線基板4に印加されると、ビア導体12と接着層14との熱膨張率の違いに起因して、ランド15上に形成されたビア導体12と接着層14との平面方向の熱膨張が異なるため、ランド15とビア導体12との接続部の近傍にてランド15に引っ張り応力が印加されやすい。
【0042】
一方、本実施形態においては、ランド15が、導体膜18と導体膜18におけるビア導体12側の一主面に形成された被覆膜19とを有し、導体膜18は被覆膜19よりも導電率が高く、被覆膜19は導体膜18よりもヤング率が高いため、導体膜18によってランド15の導電率を高めつつ、被覆膜19によってランド15におけるビア導体12側の一主面の強度を高めることができる。それ故、ランド15の導電性を担保しつつ、上述した引っ張り応力に対するランド15の強度を高めることができるため、配線基板4の電気的信頼性を向上させることができる。
【0043】
さらに、被覆膜19の厚みが下地膜17の厚みよりも大きいため、導体膜18におけるビア導体12側の一主面に形成された被覆膜19の厚みを大きくして、ランド15の上述した引っ張り応力に対する強度を高めつつ、ビア孔Vに露出したランド15の一部に被着した下地膜17の厚みを小さくして、ランド15とビア導体12との接続部における導電性を高めることができる。なお、被覆膜19の厚みは、下地膜17の厚みの例えば1.5倍以上3倍以下に設定されている。
【0044】
また、ビア導体12は、導体部20よりもヤング率の高い下地膜17を有するため、下地膜17の厚みを小さくすることによって、ビア導体12とビア孔Vの内壁との間の応力を低減し、ビア導体12とビア孔Vとの剥離を低減できる。
【0045】
また、被覆膜19は、下地膜17と同一の金属からなることが望ましい。その結果、被覆膜19と下地膜17との接続強度を高めることができ、ひいては、ランド15とビア導体12との接続信頼性を高めることができる。
【0046】
また、本実施形態において、被覆膜19は、図2(a)および(b)に示すように、導体膜18におけるビア導体12側の一主面に部分的に形成されており、導体膜18におけるビア導体12側の一主面の端部は、被覆膜19から露出して露出部21をなしている。その結果、ランド15と接着層14との熱膨張率の違いに起因した応力が集中しやすい導電層11の端部に、被覆膜19よりもヤング率の小さい導体膜18を配することによって、該応力による接着層14のクラックを低減することができる。
【0047】
露出部21は、図2(b)に示すように、ランド15の外周に沿って形成されており、外周全体に渡って形成されていることが望ましいが、ランド15の外周の少なくとも一部に形成されていても構わない。なお、露出部21は、平面視におけるランド15の縁からの幅が例えば2μm以上10μm以下に設定されている。
【0048】
また、後述する実施例に示したように、ランド部15においては、応力が集中する領域がテーパー状であるビア孔Vの内壁の直下に位置すると推測されるため、被覆膜19は、少なくともビア孔Vの内壁の直下に形成されていることが望ましい。
【0049】
かくして、上述した実装構造体1は、配線基板4を介して供給される電源や信号に基づいて電子部品2を駆動若しくは制御することにより、所望の機能を発揮する。
【0050】
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、図3から図4に基づいて説明する。
【0051】
(1)図3(a)に示すように、コア基板5を準備する。具体的には、例えば以下のように行う。
【0052】
まず、例えば未硬化の樹脂シートを複数積層するとともに最外層に銅箔を積層し、該積層体を加熱加圧して硬化させることにより、基体7を作製する。なお、未硬化は、ISO472:1999に準ずるA‐ステージまたはB‐ステージの状態である。次に、例えばドリル加工やレーザー加工等により、基体7を厚み方向に貫通したスルーホールを形成する。次に、例えば無電解めっき法、電気めっき法、蒸着法、CVD法またはスパッタリング法等により、スルーホールの内壁に導電材料を被着させて、スルーホール導体8を形成する。次に、スルーホール導体8の内部に、樹脂材料等を充填し、絶縁体9を形成する。次に、導電材料を絶縁体9の露出部に被着させた後、従来周知のフォトリソグラフィー技術、エッチング等により、銅箔をパターニングして導電層11を形成する。
【0053】
以上のようにして、コア基板5を作製することができる。
【0054】
(2)図3(b)に示すように、コア基板5の上下に配線層6を形成し、配線基板4を作製する。具体的には例えば以下のように行う。
【0055】
まず、未硬化の接着層前駆体を介して、フィルム層13を導電層11上に配置して積層体を形成した後、該積層体を加熱加圧することによって、接着層前駆体を硬化させて接着層14としつつ、導電層11上に樹脂層10を形成する。次に、例えばYAGレーザー装置または炭酸ガスレーザー装置により、樹脂層10にビア孔Vを形成し、ビア孔V内に導電層11の少なくとも一部を露出させる。次に、スパッタリング装置、蒸着装置またはCVD装置等を用いて、フィルム層13の一主面とビア孔Vの内壁および底面に下地膜17を被着させた後、電気めっき法を用いたセミアディティブ法によって、ビア導体12および導電層11を形成する。なお、下地膜17を被着させた後、スパッタリング装置、蒸着装置またはCVD装置等を用いて銅からなる膜を下地膜17に被着させてから、電気めっき法を用いたセミアディティブ法によって、ビア導体12および導電層11を形成することが望ましい。
【0056】
このようにして、樹脂層10、導電層11およびビア導体12を形成することができる。かかる工程を繰り返すことによって、樹脂層10および導電層11を複数層有する配線層6を形成することができる。
【0057】
ここで、本実施形態において、ランド15および該ランド15のコア基板5と反対側の一主面に接続したビア導体12の形成方法について、以下、詳細に説明する。
【0058】
まず、図4(a)に示すように、樹脂層10を厚み方向に貫通するビア導体12を形成する際に、該樹脂層10の露出した一主面に、ビア導体12と一体的に下地膜17および導体膜18を形成する。
【0059】
次に、図4(b)に示すように、スパッタリング装置、蒸着装置またはCVD装置等を用いて、導体膜18の露出した一主面に被覆膜19を被着させることによって、ランド15を形成する。なお、被覆膜19を形成する際に、所望の形状のマスクを用いることによって、露出部21を形成することができる。
【0060】
次に、図4(c)に示すように、上述した如く、樹脂層10をランド15上に形成した後、該樹脂層10にビア孔Vを形成し、該ビア孔V内にランド15の被覆膜19を露出させる。
【0061】
次に、図4(d)に示すように、上述した如く、フィルム層13の一主面とビア孔Vの内壁および底面に下地膜17を被着させた後、セミアディティブ法によって、ビア導体12およびパッド16を形成する。なお、下地膜17を形成する際に、成膜時の出力および時間を調整することによって、下地膜17を被覆膜19よりも薄く形成することができる。
【0062】
以上のようにして、配線基板4を作製することができる。
【0063】
(3)配線基板4にバンプ3を介して電子部品2をフリップチップ実装することにより、図1に示す実装構造体1を作製することができる。
【0064】
本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【0065】
例えば、上述した本発明の実施形態においては、配線層が樹脂層を2層有する構成を例に説明したが、配線層が樹脂層を1層または3層以上有していても構わない。また、樹脂層は、フィルム層と接着層とを有するものに限定されない。例えば、樹脂層は、液状の樹脂のコーティングまたはフィルム状の樹脂の圧着により形成された1層の樹脂層であってもよい。このような樹脂層は、例えばエポキシ樹脂またはシアネート樹脂等の熱硬化性樹脂によって形成することができ、低熱膨張化の観点から無機絶縁フィラーを含むことが望ましい。
【0066】
また、上述した本発明の実施形態においては、電子部品を配線基板の上面にフリップチップ実装した構成を例に説明したが、電子部品を配線基板の上面にワイヤボンディング実装しても構わない。
【0067】
また、上述した本発明の実施形態においては、被覆膜を有するランドが、基体上および樹脂層上に形成された構成を例に説明したが、ランドは、少なくとも1つが被覆膜を有していればよい。例えば、電子部品2の実装による応力が集中しやすいパッドに隣接するランドのみが、被覆膜を有していても構わないし、スタックビアにしたときに応力が集中しやすい基体上に形成されたランドのみが、被覆膜を有していても構わない。
【0068】
また、上述した本発明の実施形態においては、下地膜のヤング率が導体部よりも大きい構成を例に説明したが、下地膜のヤング率が導体部よりも小さくても構わない。この場合、ビア導体と導電層との接続部の近傍に印加される応力を低下することができる。このような下地膜は、例えばチタンによって形成することができる。
【0069】
また、上述した本発明の実施形態においては、ビア孔内に被覆膜が露出した構成を例に説明したが、図5に示すように、被覆膜19Aは、導体膜18Aにおけるビア導体12Aの主面に部分的に形成されており、導体膜18Aにおけるビア導体12A側の一主面は、ビア孔VA内にて被覆膜19Aから露出してビア導体12Aと接続していても構わない。この場合、導電層11Aとビア導体12Aとの接続部に被覆膜19Aを介在させないことによって、導電層11Aとビア導体12Aとの接続部における導電性を高めることができる。なお、被覆膜19Aは、例えば導電層11Aとビア導体12Aとの接続部の外周に沿って形成される。
【0070】
このような導電層11Aおよびビア導体12Aを形成する方法として、ビア孔VAを形成する際にレーザー照射によって樹脂層10Aとともに被覆膜19Aも除去して導体膜18Aをビア孔VA内に露出させた後にビア導体12Aを形成する方法を用いても構わないし、エッチングによって被覆膜19Aの一部を除去した後にこの部分にビア孔VAを形成する方法を用いても構わない。
【実施例】
【0071】
本実施例では、被覆膜の有無が、ランドの歪みとその歪みによって生じたクラックでランドが断線するまでの時間に与える影響を検討した。
【0072】
ランドの歪みおよびランドが断線するまでの時間は、図6(a)、(b)および表1に示したNo.1〜5について、それぞれシミュレーションによって演算した。この演算は、「Ansys」という市販のソフトを用いて行い、ランドが断線するまでの時間は、相対値(以下、寿命比という)として出力した。なお、ランドの歪みは、各部位の寸法および物性(線膨張係数、ヤング率、ポアソン比)によって演算され、寿命比は、算出された歪の値をCoffin Mansonの式によって演算されたものである。
【0073】
【表1】

【0074】
まず、No.1について、図7(a)に示すように、ランド15´の歪みを演算したところ、矢印Xの示す箇所、すなわちランド15´におけるビア導体12´との接続部近傍において、最も大きく歪む結果が得られた。このように大きく歪む箇所に最も大きい応力が負荷されると推測される。なお、図7(a)において、矢印Xの示す箇所は、テーパー状であるビア孔V´の内壁の直下に配されている。
【0075】
次に、No.1〜5それぞれについて、矢印Xの示す箇所における歪みおよび配線基板の寿命を演算して比較した。
【0076】
その結果、図7(b)に示すように、被覆膜19´を形成したNo.2〜5は、被覆膜19´を形成していないNo.1と比較して、ランド15´の歪みが低減し、配線基板の寿命が増加していた。
【0077】
さらに、No.2よりも被覆膜19Bの厚みを大きくしたNo.3は、No.2と比較して、ランド15´の歪みが低減し、配線基板の寿命が増加していた。
【0078】
さらに、被覆膜19´の材料をチタンとしたNo.4、5は、被覆膜19´の材料をニッケルクロム合金としたNo.2、3と比較して、ランド15´の歪みが低減し、配線基板の寿命が増加していた。
【0079】
以上、ランド15´に被覆膜19´を形成することによって、ランド15´のクラックを低減し、配線基板の電気的信頼性を向上させることができると推測される。
【符号の説明】
【0080】
1 実装構造体
2 電子部品
3 バンプ
4 配線基板
5 コア基板
6 配線層
7 基体
8 スルーホール導体
9 絶縁体
10 樹脂層
11 導電層
12 ビア導体
13 フィルム層
14 接着層
15 ランド
16 パッド
17 下地膜
18 導体膜
19 被覆膜
20 導体部
21 露出部
V ビア孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ランドと、前記ランド上に形成された樹脂層と、該樹脂層を厚み方向に貫通して前記ランドの一部を露出するビア孔と、該ビア孔内に形成されたビア導体とを備え、前記ランドは、導体膜と、該導体膜における前記ビア導体側の一主面に形成された被覆膜とを有し、前記ビア導体は、前記ビア孔の内壁および前記ビア孔に露出した前記ランドの一部に被着した下地膜と、該下地膜上に形成された導体部とを有し、前記導体膜および前記導体部は、前記被覆膜および前記下地膜よりも導電率が高く、前記被覆膜は、前記導体膜よりもヤング率が大きく、且つ、前記下地膜よりも厚みが大きいことを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、前記下地膜は、前記導体部よりもヤング率が大きいことを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項2に記載の配線基板において、前記被覆膜は、前記下地膜と同一の金属からなることを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項2に記載の配線基板において、前記導体膜および前記導体部は、銅からなり、前記被覆膜および前記下地膜は、ニッケル、クロムまたはニッケルクロム合金からなることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項1に記載の配線基板において、前記被覆膜は、前記導体膜における前記一主面に部分的に形成されており、前記導体膜における前記一主面の端部は、前記被覆膜から露出していることを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項1に記載の配線基板において、前記被覆膜は、前記導体膜における前記一主面に部分的に形成されており、前記導体膜における前記一主面の一部は、ビア孔内にて前記被覆膜から露出して前記ビア導体と接続していることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
請求項1に記載の配線基板において、前記下地膜は、前記導体部よりもヤング率が低いことを特徴とする配線基板。
【請求項8】
請求項7に記載の配線基板において、前記導体膜および前記導体部は、銅からなり、前記被覆膜は、ニッケル、クロムまたはニッケルクロム合金をからなり、前記下地膜は、チタンからなることを特徴とする配線基板。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の配線基板と、該配線基板に実装された電子部品とを備えたことを特徴とする実装構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−8873(P2013−8873A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141077(P2011−141077)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(304024898)京セラSLCテクノロジー株式会社 (213)
【Fターム(参考)】