説明

配線基板およびその製造方法

【課題】導体膜を有する配線基板において、導体膜の表面に傾斜や凹凸を設けることなく、導体膜に発生する膨れやピンホールの発生を適切に防止する配線基板を提供する。
【解決手段】表面に、導体よりなる下地層11、銅よりなる銅層12、13、金よりなる金層14を順次積層して形成してなる導体膜10を有する配線基板1であって、銅層12、13は、下地層11の側から銅メッキよりなる第1の層12、銅メッキよりなる第2の層13を順次形成してなるものであり、第1の層12の内部には、下地層11と第1の層12との間に発生するガスを抜くためのガス抜き通路15が、第1の層12における下地層11側の面から第2の層13側の面まで形成されており、ガス抜き通路15は、第1の層12における第2の層13側の面にて、第2の層13によって閉塞されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体膜を有する配線基板およびそのような配線基板の製造方法に関し、特に、当該導体膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、配線基板の表面に設けられる導体膜に対しては、ワイヤボンディングなどが施されるため、ボンディング性の確保が求められている。このような導体膜は、タングステンなどの導体よりなる下地層、銅よりなる銅層、金よりなる金層が順次積層して形成されてなるものが一般的である。
【0003】
ここで、従来では、導体膜のボンディング性を向上させるために、導体膜の表面に傾斜をつけたり(たとえば、特許文献1参照)、導体膜の表面を凹凸にしてアンカー効果によって密着性を上げたり(たとえば特許文献2、3、4参照)するなどの手法が提案されている。
【特許文献1】特開平9−289276号公報
【特許文献2】特開2003−243443号公報
【特許文献3】特開平4−288843号公報
【特許文献4】特開平5−90327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記したような導体膜の表面に傾斜や凹凸を設ける手法では、ボンディング時のワイヤを介した超音波のパワーが導体膜に伝わりにくくなるなどの問題がある。そのため、導体膜の表面すなわち金層は平坦であることが好ましいが、表面が平坦である導体膜を形成する場合、導体膜に膨れやピンホールといった弊害が発生することが知られている。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、導体膜を有する配線基板において、導体膜の表面に傾斜や凹凸を設けることなく、導体膜に発生する膨れやピンホールの発生を適切に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、導体膜に発生する膨れやピンホールが、下地層と銅層との間に残存するメッキ液やペーストの溶剤が気化したガスに起因することに着目し、このガスを取り除いてやればよいと考えた。請求項1に記載の発明は、このような考えに基づいて創出されたものである。
【0007】
すなわち、請求項1に記載の発明では、表面に、導体よりなる下地層(11)、銅よりなる銅層(12、13)、金よりなる金層(14)を順次積層して形成してなる導体膜(10)を有する配線基板であって、銅層(12、13)は、下地層(11)の側から銅よりなる第1の層(12)、銅よりなる第2の層(13)を順次形成してなるものであり、第1の層(12)の内部には、下地層(11)と第1の層(12)との間に発生するガスを抜くためのガス抜き通路(15、16)が、第1の層(12)における下地層(11)側の面から第2の層(13)側の面まで形成されており、ガス抜き通路(15、16)は、第1の層(12)における第2の層(13)側の面にて、第2の層(13)によって閉塞されていることを特徴とする。
【0008】
それによれば、下地層(11)を形成した後、銅層(12、13)の第1の層(12)を形成し、続いて第2の層(13)を形成するが、下地層(11)と第1の層(12)との間に発生するガスは、第1の層(12)を形成したときに、第1の層(12)における下地層(11)側の面からガス抜き通路(15、16)を通って第2の層(13)側の面に抜けていき、取り除かれる。そして、このガス抜き通路(15、16)は第2の層(13)により閉塞されるので、その上の表面となる金層(14)の平坦性には影響しない。よって、本発明によれば、導体膜(10)の表面に傾斜や凹凸を設けることなく、導体膜(10)に発生する膨れやピンホールの発生を適切に防止することができる。
【0009】
ここで、請求項2に記載の発明のように、ガス抜き通路は、第1の層(12)の面に沿って規則的に配置され、第1の層(12)の層厚方向に貫通する貫通孔(15)であるものとしてもよい。それによれば、この貫通孔(15)を介して適切にガス抜きを行うことができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明のように、第1の層(12)は第2の層(13)よりも、層を構成する銅粒子の平均粒径が大きく、粒界における隙間が大きいものとし、第1の層(12)の粒界における隙間を、ガス抜き通路として構成してもよい。
【0011】
それによれば、銅層(12、13)の形成において、メッキ条件などを変更することにより粒界の隙間の大きさを調整できるため、ガス抜き通路を有する第1の層(12)と第2の層(13)とを容易に形成できる。
【0012】
請求項4、請求項5に記載の発明は、表面に、導体よりなる下地層(11)、銅よりなる銅層(12、13)、金よりなる金層(14)を順次積層して形成してなる導体膜(10)を有する配線基板を製造する方法であって、銅層(12、13)の形成は、下地層(11)の側から銅メッキよりなる第1の層(12)、銅メッキよりなる第2の層(13)を順次形成するものであって、第1の層(12)の内部に、下地層(11)と第1の層(12)との間に発生するガスを抜くためのガス抜き通路(15)を、第1の層(12)における下地層(11)側の面から第2の層(13)側の面まで形成するようにした配線基板の製造方法であり、さらに以下のような特徴を備えるものである。
【0013】
請求項4に記載の製造方法では、ガス抜き通路(15)の形成工程では、下地層(11)の表面に、第1の層(12)を形成する銅メッキにおいて層厚方向に貫通するピンホールを発生させるための起点を形成した状態で、第1の層(12)を形成することによって、当該起点にて当該ピンホールを形成し、このピンホールをガス抜き通路(15)とし、その後、第1の層(12)の上に、ピンホールを閉塞するように第2の層(13)を形成することを特徴とする。
【0014】
それによれば、ガス抜き通路(15)として、第1の層(12)の層厚方向に貫通するピンホールが形成され、下地層(11)と第1の層(12)との間に発生するガスは、第1の層(12)を形成したときに、当該ピンホールを通って抜けていき、取り除かれる。そして、当該ピンホールは第2の層(13)により閉塞されるので、その上の金層(14)の平坦性には影響しない。よって、本発明によれば、導体膜(10)に発生する膨れやピンホールの発生を適切に防止することができる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明では、ガス抜き通路(16)の形成工程では、下地層(11)の表面に、第1の層(12)を形成する銅メッキの核(17)を複数個分散させて配置した状態で、当該銅メッキを行って第1の層(12)を形成することで、第1の層(12)の内部において核(17)を起点とした粒成長によって隣り合う核(17)の間を層厚方向に延びる粒界を形成し、この粒界の隙間をガス抜き通路(16)とし、その後、第1の層(12)の上に、当該粒界を閉塞するように第2の層(13)を形成することを特徴とする。
【0016】
それによれば、ガス抜き通路(16)として、第1の層(12)の層厚方向に貫通する粒界が形成され、下地層(11)と第1の層(12)との間に発生するガスは、第1の層(12)を形成したときに、当該粒界の隙間を通って抜けていき、取り除かれる。そして、当該粒界の隙間は第2の層(13)により閉塞されるので、その上の表面となる金層(14)の平坦性には影響しない。よって、本発明によれば、導体膜(10)の表面に傾斜や凹凸を設けることなく、導体膜(10)に発生する膨れやピンホールの発生を適切に防止することができる。
【0017】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る配線基板1の概略断面構成を示す図であり、図2は、図1に示される配線基板1における導体膜10の拡大断面図である。
【0020】
本実施形態の配線基板1は、アルミナなどのセラミック基板、プリント基板などの樹脂基板、あるいは金属基板などであり、複数の層が積層されてなる多層基板であってもよいし、1層よりなる単層基板であってもかまわない。
【0021】
ここでは、配線基板1の上には電子部品20が搭載されている。この電子部品20は、ICチップ、モールドパッケージ、コンデンサなど配線基板1に実装可能なものであれば特に限定されるものではないが、ここではICチップとして示してある。
【0022】
そして、配線基板1は導体膜10を有するものであり、この導体膜10は配線基板1の表面(図1中の上面)に設けられている。この導体膜10は、配線基板1上の電子部品20や図示しない外部の部品と配線基板1とを電気的・機械的に接続するためのものであり、この導体膜10に対しては、ワイヤボンディング、バンプ接合、はんだ接合、導電性接着剤による接合などが行われる。
【0023】
ここでは、導体膜10に対してはワイヤボンディングがなされており、電子部品20と導体膜10とは、金やアルミニウムなどよりなるボンディングワイヤ30により結線され、電気的・機械的に接続されている。
【0024】
図2に示されるように、導体膜10は、導体よりなる下地層11と銅よりなる銅層12、13と金よりなる金層14とを備えて構成されたものであり、配線基板1の表面に、下地層11、銅層12、13、金層14が順次積層されて形成されたものである。
【0025】
下地層11は、配線基板1と銅層12、13との接続性を確保するものであり、たとえばタングステンなどの導体ペーストを塗布・硬化することにより形成された一般的なものとすることができる。
【0026】
銅層12、13は、下地層11の上に形成されており、下地層11の側から銅よりなる第1の層12、銅よりなる第2の層13を順次形成してなる2層構造よりなるものである。ここでは、第1の層12および第2の層13は、無電解メッキや電気メッキにより形成された銅メッキの層よりなる。銅層12、13の厚さは、第1の層12と第2の層13との合計厚さとして、たとえば1〜5μm程度である。
【0027】
ここで、図2に示されるように、第1の層12の内部には、第1の層12を形成するときに下地層11と第1の層12との間に発生するガスを抜くためのガス抜き通路15が、第1の層12における下地層11側の面から第2の層13側の面まで延びるように形成されている。
【0028】
本実施形態では、ガス抜き通路15は、第1の層12の層厚方向に貫通する貫通孔15である。つまり、ガス抜き通路としての貫通孔15によって、第1の層12における下地層11側の面から第2の層13側の面とが連通している。
【0029】
この貫通孔15は複数個設けられ、これら複数個の貫通孔15は、第1の層12の面に沿って平面的に規則的に配置されている。その貫通孔15の具体的な平面配置の一例については後述の図2(b)を参照のこと。ここでは、各貫通孔15は、直径1μm以下のピンホールであり、ガス抜きの効果を十分発揮するためには、貫通孔15の直径は0.3μm以上であることが望ましい。
【0030】
そして、第1の層12の上には第2の層13が銅メッキの層として形成されており、ガス抜き通路としての貫通孔15は、第1の層12における第2の層13側の面にて、第2の層13により被覆されて閉塞されている。
【0031】
この第2の層13が貫通孔15を被覆していることにより、第1の層12の表面における貫通孔15による凹凸は第2の層13の表面には継承されず、銅層12、13の表面すなわち第2の層13の表面は平坦となっている。
【0032】
そして、その第2の層13の表面に設けられている金層14は平坦な膜とされており、この金層14が導体膜10の表面を構成しているため、本実施形態では、導体膜10の表面は平坦である。この金層14は、無電解メッキや電気メッキにより形成された金メッキの層よりなり、その厚さはたとえば0.1μm〜0.数μm程度である。
【0033】
次に、本実施形態の配線基板1の製造方法について述べる。本実施形態では、導体膜10の形成について独自の工夫を持たせたものであり、それ以外の配線基板1の部分については、一般的な製造方法に準じて形成される。そのため、ここでは導体膜10の形成方法について述べる。図3は、本実施形態における導体膜10の形成方法を断面的に示す工程図である。
【0034】
本実施形態の導体膜10は、配線基板1の表面に、導体よりなる下地層11、銅メッキよりなる銅層12、13、金メッキよりなる金層14を順次積層して形成してなる。まず、下地層11を、上述したように、タングステンなどの導体ペーストを塗布・硬化することにより形成する。
【0035】
次に、銅層12、13の形成工程では、下地層11の側から銅メッキよりなる第1の層12、銅メッキよりなる第2の層13を順次形成する。第1の層12の形成工程では、図3(a)に示されるように、第1の層12の内部に、ガス抜き通路15を、第1の層12における下地層11側の面から第2の層13側の面まで形成する。
【0036】
ここでは、ガス抜き通路として第1の層12の層厚方向に貫通する貫通孔15を形成する。この貫通孔の形成においては、まず、下地層11の表面に、第1の層12を形成する銅メッキにおいて層厚方向に貫通するピンホールを発生させるための起点を形成する。この起点は、図示しないが、下地層11の表面に形成されたキズまたは異物である。
【0037】
たとえば、キズとしては、下地層11の表面を針などの治具を突き刺したりすることで形成されたささくれや孔などである。また、異物としては、配線基板1と同じ材質の小片、たとえばアルミナセラミック基板の場合はアルミナ片などであり、この異物をスプレーやピンセットなどで下地層11の表面に乗せる。これらキズや異物よりなる上記起点の大きさは、ガス抜き通路としての貫通孔15の直径程度である。
【0038】
そして、このように下地層11の表面に上記起点を形成した状態で、銅メッキを行い第1の層12を形成する。すると、この銅メッキにおいては、起点ではメッキが付かないため、起点にてピンホールが形成され、このピンホールが上記ガス抜き通路としての貫通孔15となる。ここまでの状態が、図3(a)に示される。
【0039】
ここで、複数個の貫通孔15は、第1の層12に対して平面的にランダムに配置されていてもよいが、本実施形態では、上述したように平面的に規則的に配置している。具体的には、図3(b)に示されるように、マトリクス状の規則的な配置がなされている。
【0040】
この場合、隣り合うピンホールとしての貫通孔15の間隔(最短距離)は、たとえば1〜10μm程度である。なお、規則的な配置としては、このようなマトリクス状の配置以外にも、一定の周期性を有する規則的な配置であればよい。
【0041】
また、第1の層12を構成する銅メッキの厚さとしては、たとえば銅層12、13全体の厚さの20%以下である。具体的には、銅層12、13全体では、上述したように1〜5μmであるが、この場合、第1の層12の厚さは0.1〜1μm程度である。そして、当該銅メッキを行った後、たとえば900℃でシンター処理を行う。こうして、第1の層12ができあがる。
【0042】
次に、図3(c)に示されるように、第1の層12の上に銅メッキを行い、さらに上記同様にシンター処理を行うことによって第2の層13を形成し、この第2の層13によって、ガス抜き通路15としてのピンホールを閉塞する。このとき、第2の層13を構成する銅メッキがガス抜き通路15の内部まで充填されてもよい。
【0043】
その後、この第2の層13の上に金メッキを行い、金層14を形成する。こうして、本実施形態の導体膜10ができあがる。
【0044】
ところで、上述したように、従来では、下地層の上に銅層、金層を順次積層してなる導体膜を形成する場合、導体膜に膨れやピンホールが発生し、これが導体膜の表面の平坦化を阻害している。
【0045】
図4は、本発明者が推定したところの膨れやピンホールの発生メカニズムを示す概略断面図である。下地層11の上に銅層12を形成する場合、下地層11と銅層12との間にメッキ液Lが残存し(図4(a)参照)、このメッキ液Lが蒸発してガスとなり、このガスによってボイドBが形成される(図4(b)参照)。そして、このボイドBが膨張するなどにより、導体膜の膨れやピンホールにつながる。このボイドBはたとえば1〜5μm程度の大きさである。
【0046】
本実施形態の製造方法においても、第1の層12の形成時には、第1の層12を銅メッキにより形成するが、そのメッキ液が下地層11と第2の層12との界面に残りやすい。これは、下地層11の表面では凹凸が大きいのでメッキ液が当該凹凸の凹部にたまりやすいためである。
【0047】
なお、第1の層12の表面は下地層11に比べて大幅に平坦であるため、第1の層12の上に第2の層13を形成するときのメッキ液は、第1の層12の表面に残りにくく、残ったとしても問題にはならない程度の量である。
【0048】
そして、この下地層11と第2の層12との界面に残るメッキ液が、第1の層12を形成するときに行われる加熱によって蒸発してガスになる。この加熱は、本実施形態のように銅メッキにより銅層12、13を形成する場合には、上記シンター処理のときの加熱であり、たとえば900℃程度である。
【0049】
ここで、本実施形態では、第1の層12の内部には、下地層11と第1の層12との間に発生する上記ガスを抜くためのガス抜き通路としての貫通孔15が、第1の層12における下地層11側の面から第2の層13側の面まで形成されている。
【0050】
そのため、下地層11を形成した後、上記第1の層12を形成するためのシンター処理のときに下地層11と第1の層12との界面に発生するガスは、当該界面を伝って最寄りの貫通孔15に到達し、第1の層12における下地層11側の面から貫通孔15を通って第2の層13側の面にて外部へ抜けていき、取り除かれる。
【0051】
また、この貫通孔15は、第2の層13により閉塞されるので、その上の金層14の平坦性には影響せず、金層14すなわち導体膜10の表面は平坦化されたものとなる。よって、本実施形態によれば、導体膜10の表面に傾斜や凹凸を設けることなく、導体膜10に発生する膨れやピンホールの発生を適切に防止することができる。
【0052】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係る配線基板の要部を示す概略断面図であり、導体膜10の拡大断面図である。本実施形態は、上記第1実施形態に比べて、ガス抜き通路16を第1の層12内部の粒界により構成したことが相違するものであり、ここでは、その相違点を中心に述べることとする。
【0053】
図5に示されるように、本実施形態においても、銅層12、13は、下地層11の側から銅メッキよりなる第1の層12、銅メッキよりなる第2の層13が順次形成されており、第1の層12の内部には、下地層11と第1の層12との間に発生するガスを抜くためのガス抜き通路16が、第1の層12における下地層11側の面から第2の層13側の面まで形成されている。
【0054】
ここで、本実施形態では、下地層11の表面に、第1の層12を形成する銅メッキの核17が複数個分散させて配置されている。この核17は、当該銅メッキの起点となる部材であり、具体的には銅などの金属粉である。
【0055】
そして、本実施形態では、このように核17を配置した状態で、当該銅メッキを行って第1の層12が形成されており、第1の層12の内部においては、核17を起点とした粒成長によって隣り合う核17の間を層厚方向に延びる粒界が形成されている。そして、この粒界の隙間がガス抜き通路16として構成されている。
【0056】
ここで、当該金属粉の粒径としては、たとえば第1の層12の厚さの10分の1から5分の1程度であり、また、金属粉の配置間隔としては、第1の層12の厚さの2倍程度が望ましい。この程度の粒径や配置間隔とすることで、金属粉の間隔が埋まり、粒界が形成されやすい。一例として、第1の層12の厚さが5μm程度のとき、核17の粒径は0.5〜1μm、上記配置間隔は8〜12μm程度である。
【0057】
そして、本実施形態においても、第1の層12の上には第2の層13が銅メッキの層として形成されており、粒界の隙間としてのガス抜き通路16は、第1の層12における第2の層13側の面にて、第2の層13により閉塞されている。それにより、銅層12、13の表面すなわち第2の層13の表面は平坦となっており、導体膜10の表面となる金層14は平坦である。
【0058】
次に、本実施形態の配線基板1の製造方法について、上記第1実施形態とは異なる部分、すなわち、導体膜10の形成方法について述べる。図6は、本実施形態における導体膜10の形成方法を断面的に示す工程図である。
【0059】
本方法では、図6(a)に示されるように、配線基板1の表面に、下地層11を形成した後、下地層11の表面に、第1の層12を形成する銅メッキの核17を複数個分散させて配置する。この核17の配置方法は、上記第1実施形態における異物の配置と同様、スプレーやピンセットなどにより行う。
【0060】
次に、この核17を配置した状態で、銅メッキを行って第1の層12を形成する。すると、図6(b)に示されるように、核17を起点として銅メッキが粒成長していく。そして、図6(c)に示されるように、第1の層12の内部において当該粒成長によって隣り合う核17の間を層厚方向に延びる粒界が形成される。そして、この粒界の隙間をガス抜き通路16とする。
【0061】
続いて、上記同様にシンター処理を行うと、第1の層12ができあがる。その後、第1の層12の上に、当該粒界を閉塞するように第2の層13を銅メッキにより形成する。さらに、シンター処理、金メッキによる金層14の形成を行う。こうして、上記図5に示される本実施形態の導体膜10ができあがる。
【0062】
ところで、上記製造方法によれば、ガス抜き通路16として、第1の層12の層厚方向に貫通する粒界が形成されるので、第1の層12のシンター処理のときに下地層11と第1の層12との間に発生するガスは、当該粒界の隙間としてのガス抜き通路16を通って抜けていき、取り除かれる。
【0063】
このように、粒界の隙間としてのガス抜き通路16は、上記第1実施形態の貫通孔15と同様のガス抜き機能を発揮する。その後、当該粒界の隙間は第2の層13により閉塞されるので、その上の表面となる金層14の平坦性には影響しない。よって、本実施形態によっても、導体膜10の表面に傾斜や凹凸を設けることなく、導体膜10に発生する膨れやピンホールの発生を適切に防止することができる。
【0064】
また、本実施形態の製造方法では、上述のように、核17を用いて粒界を積極的に形成するため、第1の層12の形成後には、第1の層12の表面に凹凸が発生する場合がある。その場合において、当該凹凸を無くして第1の層12の表面を平坦化する方法について、図7を参照して述べる。図7は当該平坦化方法を示す工程図である。
【0065】
図7(a)に示されるように、上記シンター処理後の第1の層12の表面は凹凸が発生している。この場合、一つの方法として、図7(b)に示されるように、金属、セラミックまたは樹脂などよりなり平坦面を有するプレス治具100を用い、その平坦面を第1の層12の表面に当てて荷重を加え、第1の層12の表面を平坦化する。
【0066】
また、他の方法として、図7(c)に示されるように、研磨材200を用いて、第1の層12の表面を研磨することにより、当該表面を平坦化する。こうして、図7(d)に示されるように、第1の層12の表面が平坦面となり、その上に、第2の層13、金層14を形成すればよい。
【0067】
(第3実施形態)
上記第2実施形態(図5参照)では、ガス抜き通路16を第1の層12の内部に形成された粒界の隙間により構成したが、上記第2実施形態のように核17を用いることに代えて、銅メッキ条件を調整することによりガス抜き通路となる粒界を形成するようにしてもよい。なお、本実施形態における構成要素の符号は、上記図2を参照のこと。
【0068】
本実施形態では、第1の層12は第2の層13よりも、層を構成する銅粒子の平均粒径が大きく、粒界における隙間が大きいものである。そして、この第1の層12の粒界における隙間がガス抜き通路として構成されているものである。
【0069】
銅メッキにおける銅粒子の平均粒径は、メッキ条件により調整が可能であり、また、平均粒径が大きいほど粒界の隙間も大きくなる。つまり、本実施形態によれば、銅層12、13の形成において、メッキ条件を変更することにより粒界の隙間の大きさを調整すれば、ガス抜き通路を有する第1の層12と、このガス抜き通路を閉塞する第2の層13とを容易に形成することができる。
【0070】
具体的には、第1の層12と第2の層13とで、シンター処理の温度・時間を変更することで粒成長を制御する。シンターの温度が高いほど、また、シンター処理の加熱時間が長いほど、銅メッキ層の平均粒径は大きくなる。
【0071】
そこで、両層12、13では、第1の層12のシンター処理を長時間・高温にて実施し、第2の層13のシンター処理を短時間・低温にて実施する。それにより、第1の層12の方が第2の層13よりも、層を構成する銅粒子の平均粒径が大きく、粒界における隙間が大きいものとなる。
【0072】
また、メッキの種類を変えることで粒成長を制御するようにしてもよい。具体的には、メッキ液の濃度が小さいほど銅メッキ層の平均粒径は大きくなる。そこで、第1の層12の方を、第2の層13よりも低い濃度のメッキ液により形成すれば、第1の層12の方が第2の層13よりも、層を構成する銅粒子の平均粒径が大きく、粒界における隙間が大きいものとなる。
【0073】
(第4実施形態)
図8は、本発明の第4実施形態に係る導体膜10の形成方法を断面的に示す工程図である。本実施形態も銅層12、13は、下地層11の側から銅よりなる第1の層12、銅よりなる第2の層13を順次形成してなるが、本実施形態では、第1の層12および第2の層13を、銅の導体ペーストを塗布・硬化することにより形成している。
【0074】
そして、本実施形態では、第1の層12を形成する導体ペースト中の銅粒子の平均粒径を、第2の層13を形成する導体ペースト中の銅粒子の平均粒径よりも大きいものとする。それにより、本実施形態においても、第1の層12は第2の層13よりも、層を構成する銅粒子の平均粒径が大きく、粒界における隙間が大きいものとなり、第1の層12の粒界における隙間がガス抜き通路を構成しているものとなる。
【0075】
具体的な製造方法について述べると、まず、図8(a)に示されるように、下地層11を形成し、その上に、印刷メッシュ版300を用いた印刷法により、第1の層12となる導体ペースト12aを塗布する。
【0076】
そして、この導体ペースト12aを加熱して硬化することで第1の層12を形成し(図8(c)参照)、その後、その上に、同様に印刷メッシュ版を用いて、導体ペーストを供給・塗布し、これを硬化して第2の層13を形成する(図8(d)参照)。その後は、金メッキによって上記同様に金層14を形成すれば、本実施形態の導体膜ができあがる。
【0077】
ここで、導体ペーストの塗布においては、図8(b)に示されるように、スキージ320によって、印刷メッシュ版300のメッシュ310を介して導体ペースト12aを下地層11上に塗布する。そのため、メッシュ310を通り抜けて下地層11に塗布される導体ペースト12a中の銅粒子の大きさは、メッシュ310の粗さにより調整できる。
【0078】
そこで、本実施形態においては、第1の層12となる導体ペースト12aの塗布と、第2の層13となる導体ペーストの塗布とでは、用いられる印刷メッシュ版のメッシュの粗さを、第1の層12の方が大きいものを用いるようにする。それによって、第1の層12の方が第2の層13よりも、層を構成する銅粒子の平均粒径が大きくなり、結果、粒界における隙間が大きいものとなる。
【0079】
(他の実施形態)
なお、上記第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせてもよい。具体的には、ピンホールにより形成されたガス抜き通路15と、核17により形成されたガス抜き通路16とが混在するようにしてもよい。
【0080】
また、上記第1実施形態および第2実施形態と第3実施形態とを組み合わせてもよい。具体的には、上記第3実施形態に示したようなメッキ条件の調節を、上記第1実施形態や上記第2実施形態にて行うようにしてもよい。
【0081】
また、上記第1実施形態では、ガス抜き通路としての貫通孔15を、銅層の第1の層12におけるピンホールとして構成したが、たとえば、第1の層12を形成した後、その表面から針などを突き刺すことにより当該貫通孔15を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の第1実施形態に係る配線基板の概略断面図である。
【図2】図1に示される配線基板における導体膜の拡大断面図である。
【図3】第1実施形態における導体膜の形成方法を示す工程図である。
【図4】膨れやピンホールの発生の推定メカニズムを示す概略断面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る配線基板の要部を示す概略断面図である。
【図6】第2実施形態における導体膜の形成方法を示す工程図である。
【図7】第2実施形態における第1の層の表面の平坦化方法を示す工程図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る導体膜の形成方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0083】
1 配線基板
10 導体膜
11 下地層
12 銅層の第1の層
13 銅層の第2の層
14 金層
15 ガス抜き通路としての貫通孔
16 ガス抜き通路としての粒界の隙間
17 核

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に、導体よりなる下地層(11)、銅よりなる銅層(12、13)、金よりなる金層(14)を順次積層して形成してなる導体膜(10)を有する配線基板であって、
前記銅層(12、13)は、前記下地層(11)の側から銅よりなる第1の層(12)、銅よりなる第2の層(13)を順次形成してなるものであり、
前記第1の層(12)の内部には、前記下地層(11)と前記第1の層(12)との間に発生するガスを抜くためのガス抜き通路(15、16)が、前記第1の層(12)における前記下地層(11)側の面から前記第2の層(13)側の面まで形成されており、
前記ガス抜き通路(15、16)は、前記第1の層(12)における前記第2の層(13)側の面にて、前記第2の層(13)によって閉塞されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記ガス抜き通路は、前記第1の層(12)の面に沿って規則的に配置され、前記第1の層(12)の層厚方向に貫通する貫通孔(15)であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記第1の層(12)は前記第2の層(13)よりも、層を構成する銅粒子の平均粒径が大きく、粒界における隙間が大きいものであり、
前記第1の層(12)の粒界における隙間が前記ガス抜き通路を構成していることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項4】
表面に、導体よりなる下地層(11)、銅よりなる銅層(12、13)、金よりなる金層(14)を順次積層して形成してなる導体膜(10)を有する配線基板を製造する配線基板の製造方法であって、
前記銅層(12、13)の形成は、前記下地層(11)の側から銅メッキよりなる第1の層(12)、銅メッキよりなる第2の層(13)を順次形成するものであって、前記第1の層(12)の内部に、前記下地層(11)と前記第1の層(12)との間に発生するガスを抜くためのガス抜き通路(15)を、前記第1の層(12)における前記下地層(11)側の面から前記第2の層(13)側の面まで形成するものであり、
前記ガス抜き通路(15)の形成工程では、前記下地層(11)の表面に、前記第1の層(12)を形成する銅メッキにおいて層厚方向に貫通するピンホールを発生させるための起点を形成した状態で、前記第1の層(12)を形成することによって、前記起点にて前記ピンホールを形成し、このピンホールを前記ガス抜き通路(15)とし、
その後、前記第1の層(12)の上に、前記ピンホールを閉塞するように前記第2の層(13)を形成することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
表面に、導体よりなる下地層(11)、銅よりなる銅層(12、13)、金よりなる金層(14)を順次積層して形成してなる導体膜(10)を有する配線基板を製造する配線基板の製造方法であって、
前記銅層(12、13)の形成は、前記下地層(11)の側から銅メッキよりなる第1の層(12)、銅メッキよりなる第2の層(13)を順次形成するものであって、第1の層(12)の内部に、前記下地層(11)と前記第1の層(12)との間に発生するガスを抜くためのガス抜き通路(16)を、前記第1の層(12)における前記下地層(11)側の面から前記第2の層(13)側の面まで形成するものであり、
前記ガス抜き通路(16)の形成工程では、前記下地層(11)の表面に、前記第1の層(12)を形成する銅メッキの核(17)を複数個分散させて配置した状態で、当該銅メッキを行って前記第1の層(12)を形成することで、前記第1の層(12)の内部において前記核(17)を起点とした粒成長によって隣り合う前記核(17)の間を層厚方向に延びる粒界を形成し、この粒界の隙間を前記ガス抜き通路(16)とし、
その後、前記第1の層(12)の上に、前記粒界を閉塞するように前記第2の層(13)を形成することを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−147126(P2010−147126A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−320595(P2008−320595)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】