説明

配線基板及びその製造方法

【課題】配線基板の製造方法において、配線回路間の短絡を防止することである。
【解決手段】配線基板10を製造する方法において、コネクタ端子部に置かれる絶縁基板16に、銀ペーストで複数のリード配線層31〜37を形成し、リード配線層を形成した絶縁基板16に導電性ペーストを被覆して導電層20を形成するとともに、コネクタ端子部の回路基板本体側に形成される導電層を凹凸状にして、各々リード配線層の間に凹部42を形成し、凹凸状に形成された導電層におけるコネクタ端子部の回路基板本体側に絶縁性ペーストを被覆して保護層22を形成するとともに、凹部42におけるコネクタ端子部の先端側を露出させて絶縁溝44を形成し、各々リード配線層の間に形成された導電層をレーザ加工により所定幅で除去して絶縁路46〜49を形成し、絶縁路を絶縁溝44に接続させて各々リード配線層を絶縁する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板及びその製造方法に係り、特に、回路基板本体と、回路基板本体に連結されるコネクタ端子と、を備える配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラなどの各種電子機器に組み込まれるプリント配線基板は、小型化、薄型化、軽量化及び多機能化並びに部品コストの低減などが益々要求されている。そして、部品コストの低減に有利な配線基板として、例えば、メンブレン配線基板が広く利用されている。
【0003】
特許文献1には、絶縁樹脂基板に銀ペーストで銀回路を形成し、銀回路のコネクタ端部にカーボンを印刷し、コネクタ端部以外の部位にレジスト層を印刷して配線基板を製造する方法が記載されている。
【0004】
特許文献2には、絶縁樹脂基板に銀ペーストで銀回路を形成し、銀回路におけるコネクタ端部以外の部位にレジスト層を形成し、コネクタ端部に導電層を形成し、銀回路における銀パターンの各間に存在する導電層をレーザ光照射で除去して配線基板を製造する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平8−236241号公報
【特許文献2】特開2003−209338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載された配線基板の製造方法によれば、コネクタ端部のように銀回路における銀パターン間隔が狭小化する部位では、カーボンを印刷する際にインクの滲み等で銀回路パターン間が短絡する可能性がある。特許文献2に記載された配線基板の製造方法では、銀回路が露出しないように導電層をレジスト層と部分的にオーバーラップさせて形成することにより段差が生じるので、レーザ光照射で導電層を除去する際に段差部位でレーザ光の焦点がずれてスポット径が広がり、導電層を十分除去しきれずに銀回路が短絡する場合等がある。
【0006】
そこで本発明の目的は、配線回路の短絡を防止することができる配線基板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る配線基板の製造方法は、回路基板本体と、前記回路基板本体に連結されるコネクタ端子と、を備える配線基板を製造する配線基板の製造方法において、コネクタ端子部に置かれる絶縁基板に、銀ペーストで複数のリード配線層を形成するリード配線層形成工程と、前記リード配線層を形成した絶縁基板に導電性ペーストを被覆して導電層を形成するとともに、前記コネクタ端子部の回路基板本体側に形成される導電層を凹凸状にして、前記各々リード配線層の間に凹部を形成する導電層形成工程と、凹凸状に形成された導電層における前記コネクタ端子部の回路基板本体側に絶縁性ペーストを被覆して保護層を形成するとともに、前記凹部における前記コネクタ端子部の先端側を露出させて絶縁溝を形成する保護層形成工程と、前記各々リード配線層の間に形成された導電層をレーザ加工により所定幅で除去して絶縁路を形成し、前記絶縁路を前記絶縁溝に接続させて前記各々リード配線層を絶縁するレーザ加工工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記導電性ペーストは、少なくとも表面が銀よりもイオン化傾向の小さい貴金属で形成された導電性粉末からなる導電性フィラを含有することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記導電性ペーストは、カーボン粉末を含む導電性フィラを含有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記絶縁基板は、前記導電層よりもレーザ光の吸収が少ない合成樹脂で成形されることを特徴とする。
【0011】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記複数のリード配線層は、千鳥状に配列されて絶縁基板に形成されることを特徴とする。
【0012】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記コネクタ端子部の先端側に形成される前記複数のリード配線層の間隔は、前記コネクタ端子部の回路基板本体側に形成される前記複数のリード配線層の間隔より小さいことを特徴とする。
【0013】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記導電層が被覆された複数のリード配線層は、コネクタに接続されることを特徴とする。
【0014】
本発明に係る配線基板の製造方法において、前記絶縁溝は、前記絶縁路の幅より大きく形成されることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る配線基板は、回路基板本体と、前記回路基板本体に連結されるコネクタ端子と、を備える配線基板において、コネクタ端子部に置かれる絶縁基板に、銀ペーストで複数のリード配線層を形成し、前記リード配線層を形成した絶縁基板に導電性ペーストを被覆して導電層を形成するとともに、前記コネクタ端子部の回路基板本体側に形成される導電層を凹凸状にして、前記各々リード配線層の間に凹部を形成し、凹凸状に形成された導電層における前記コネクタ端子部の回路基板本体側に絶縁性ペーストを被覆して保護層を形成するとともに、前記凹部における前記コネクタ端子部の先端側を露出させて絶縁溝を形成し、前記各々リード配線層の間に形成された導電層をレーザ加工により所定幅で除去して絶縁路を形成し、前記絶縁路を前記絶縁溝に接続させることにより前記各々リード配線層を絶縁して製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る配線基板及びその製造方法によれば、レーザ加工で除去されるリード配線層間に形成された導電層の厚みを略一定にできるので、レーザ光の焦点ずれが抑えられる。それにより、リード配線層間に形成された導電層をレーザ加工でより確実に除去できるので、配線回路の短絡を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。図1は、配線基板10の構成を示す図である。配線基板10は、回路基板本体12と、回路基板本体12に連結されるコネクタ端子14と、を備えている。なお、回路基板本体12に設けられる配線回路等は省略する。
【0018】
コネクタ端子14は、絶縁基板16と、絶縁基板16に設けられる銀配線回路18と、銀配線回路18が設けられた絶縁基板16を被覆する導電層20と、導電層20の一部を覆う保護層22と、を含んで構成される。
【0019】
絶縁基板16は、例えば、矩形のリボン状を有しており、柔軟性を有するフレキシブルな絶縁性合成樹脂フィルム等で構成される。
【0020】
銀配線回路18は、絶縁基板16に形成される複数のリード配線層31〜37を含んで構成される。リード配線層31〜37は、銀含有材料で絶縁基板16に形成される。リード配線層31〜37の先端は、外部コネクタ端子と電気的に接続されるため略円形状または略楕円状に形成される。なお、図1では、7本のリード配線層が示されているが、リード配線層の本数は、特に、7本に限定されることはない。
【0021】
銀配線回路18は、第1群のリード配線層31、33、35、37と、第2群のリード配線層32、34、36とから構成される。第1群のリード配線層31、33、35、37と、第2群のリード配線層32、34、36とは、いわゆる千鳥状に略並行に配列されており、第2群リード配線層32、34、36の先端が第1群リード配線層31、33、35、37の先端より突出して交互配置される。このように、リード配線層31〜37を千鳥状に配列させることより、コネクタ端子14をより小さく形成することができる。勿論、他の条件次第では、リード配線層31〜37の配列は、千鳥状に限定されることはない。また、リード配線層31〜37は、コネクタ端子14の先端側における各々リード配線層の配線間隔が、コネクタ端子14の回路基板本体側における各々リード配線層の配線間隔より小さくなるように形成されることが好ましい。
【0022】
導電層20は、銀配線回路18が設けられた絶縁基板16に被覆され、イオンマイグレーション等のマイグレーションを抑える機能を有している。リード配線層31〜37を形成する銀含有材料はマイグレーションを発生させやすいので、リード配線層31〜37を導電層20で覆うことによりマイグレーションの発生を防止することができる。導電層20は、少なくとも表面が銀よりもイオン化傾向の小さい貴金属で形成された導電性材料やカーボン材料等の耐マイグレーション性を有する材料で形成される。
【0023】
導電層20は、コネクタ端子14の回路基板本体12側では、凹凸状に形成される。凹凸状に形成された導電層20の凸部40は、各々リード配線層31〜37を覆うように形成され、凹部42は、各々リード配線層31〜37の間に下地である絶縁基板16が露出するように形成される。ここで、凹凸状とは、例えば、櫛歯状等の形状であるが、特に、櫛歯状に限定されることはない。また、凹凸状とは、矩形状だけでなく、円形状や楕円形状等の曲率を有する形状であってもよい。
【0024】
保護層22は、凹凸状に形成された導電層20におけるコネクタ端子14の回路基板本体側に被覆され、絶縁保護等の機能を有している。保護層22は、絶縁保護等のため絶縁性材料により形成される。保護層22は、凹凸状に形成された導電層20におけるコネクタ端子14の先端側を露出させて被覆され、保護層22で覆われずに露出した凹部42には、各々リード配線層31〜37の間を絶縁するための絶縁溝44が形成される。
【0025】
各々リード配線層31〜37の間には、各々リード配線層31〜37の間を絶縁するための絶縁路46〜49が所定幅で形成される。絶縁路46〜49は、例えば、第2群のリード配線層32、34,36における各々リード配線層の間に設けられ、更に、分岐して、第1群のリード配線層31、33、35、37と第2群のリード配線層32、34、36との間に設けられる。そして、絶縁路46〜49をコネクタ端子14の回路基板本体12側で絶縁溝44と接続させることにより、各々リード配線層31〜37の間の絶縁が確保される。
【0026】
次に、配線基板10の製造方法について説明する。
【0027】
図2は、配線基板10の製造方法を示すフローチャートである。配線基板10の製造方法は、絶縁基板16に複数のリード配線層31〜37を形成するリード配線層形成工程(S10)と、導電層20を形成する導電層形成工程(S12)と、保護層22を形成する保護層形成工程(S14)と、導電層20をレーザ加工して絶縁路46〜49を形成するレーザ加工工程(S16)と、を備えている。
【0028】
リード配線層形成工程(S10)は、コネクタ端子部14aに置かれる絶縁基板16に、銀ペーストで複数のリード配線層31〜37を形成する工程である。図3は、絶縁基板16に複数のリード配線層31〜37を形成した状態を示す図であり、図3(a)は平面図、図3(b)はA−A線に沿った断面図である。
【0029】
絶縁基板16には、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)やポリイミド樹脂(PI)等の合成樹脂で成形した絶縁性合成樹脂フィルムが用いられる。絶縁基板16は、導電層20よりもレーザ光の吸収が少ない合成樹脂フィルムで成形されることが好ましい。後述するように、レーザ加工により導電層20を所定幅で除去して絶縁路46〜49を形成するため、レーザ加工中における絶縁基板16の損傷を抑えることができるからである。銀ペーストには、プリント配線基板の製造で一般的に使用されている銀ペースト材料を用いることができる。また、銀ペーストには、銀インク等も含まれる。
【0030】
リード配線層31〜37は、例えば、絶縁基板16に銀ペーストをスクリーン印刷等することにより形成される。リード配線層31〜37の先端50の外径は、例えば、0.16mmであり、リード配線層31〜37の幅(W)は、例えば、0.1mmから0.2mmである。リード配線層31〜37は千鳥状に配列され、配線ピッチ(P)は、例えば、0.3mmである。
【0031】
また、コネクタ端子14の先端側におけるリード配線層31〜37の間隔(D1)が、コネクタ端子14の回路基板本体12側におけるリード配線層31〜37の間隔(D2)より小さくなるように銀配線回路18が設けられる。リード配線層31〜37の間隔(D1)は、例えば、0.1mmであり、リード配線層31〜37の間隔(D2)は、例えば、0.5mmである。
【0032】
導電層形成工程(S12)は、リード配線層31〜37を形成した絶縁基板16に導電性ペーストを被覆して導電層20を形成するとともに、コネクタ端子部14aの回路基板本体12側に形成される導電層20を凹凸状にして、各々リード配線層31〜37の間に凹部42を形成する工程である。図4は、導電層20を被覆した状態を示す図であり、図4(a)は平面図、図4(b)はA−A線に沿った断面図である。
【0033】
導電性ペーストは、導電性フィラと、バインダとを含有している。導電性フィラには、少なくとも表面が銀よりもイオン化傾向の小さい貴金属、例えば、白金(Pt)や金(Au)からなる導電粉末やカーボン粉末等が用いられる。なお、導電性ペーストには、導電性インク等も含まれる。導電性ペーストは、例えば、スクリーン印刷等により複数のリード配線層で31〜37を形成した絶縁基板16に被覆される。そして、コネクタ端子部14aの回路基板本体12側の端に設けられる導電層20は凹凸状に形成され、リード配線層31〜37を覆う凸部40と、各々リード配線層31〜37の間に絶縁基板16を露出させる凹部42と、を形成するようにスクリーン印刷等される。
【0034】
保護層形成工程(S14)は、凹凸状に形成された導電層20におけるコネクタ端子部14aの回路基板本体12側に絶縁性ペーストを被覆して保護層22を形成するとともに、凹部42におけるコネクタ端子部14aの先端側を露出させて絶縁溝44を形成する工程である。図5は、保護層22を被覆した状態を示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)はA−A線に沿った断面図である。
【0035】
絶縁性ペーストには、ソルダーレジスト等が用いられる。ソルダーレジストには、プリント配線基板の製造で一般的に使用されているレジスト材料を用いることができる。ソルダーレジスト等は、例えば、スクリーン印刷等で凹凸状に形成された導電層20の一部に被覆される。また、保護層22は、凹凸状に形成された導電層20におけるコネクタ端子部14aの先端側を露出させて被覆されるので、凹部42には、各々リード配線層31〜37の間を絶縁するための絶縁溝44が形成される。
【0036】
レーザ加工工程(S16)は、各々リード配線層31〜37の間に形成された導電層20をレーザ加工により所定幅で除去して絶縁路46〜49を形成し、絶縁路46〜49を絶縁溝44に接続させて各々リード配線層31〜37を絶縁する工程である。図6は、レーザ加工後の状態を示す図であり、図6(a)は平面図であり、図6(b)はA−A線に沿った断面図である。
【0037】
各々リード配線層31〜37の間に形成された導電層20をレーザ加工により所定幅除去することにより、絶縁路46〜49が形成され、各々リード配線層31〜37が絶縁される。例えば、絶縁路46は、リード配線層31とリード配線層32との間に形成され、絶縁溝44に接続される。それにより、リード配線層31が絶縁される。そして、例えば、絶縁路47は、リード配線層32とリード配線層34の間に形成される第1路47aと、第1路47aから分岐し、リード配線層32とリード配線層33との間に形成される第2路47bと、第1路47aから分岐し、リード配線層33とリード配線層34との間に形成される第3路47cとで形成される。そして、第2路47bと、第3路47cとを各々絶縁溝44に接続させることにより、リード配線層32とリード配線層33とが絶縁される。
【0038】
絶縁路47は、第1路47aがリード配線層32とリード配線層34の間の略中央部に形成され、第2路47bがリード配線層32とリード配線層33との間の略中央部に形成され、第3路47cがリード配線層33とリード配線層34との間の略中央部に形成されることが好ましい。第1路47aをリード配線層32とリード配線層34とから略等距離にある部位に形成し、第2路47bをリード配線層32とリード配線層33とから略等距離にある部位に形成し、第3路47cをリード配線層33とリード配線層34とから略等距離にある部位に形成することにより、レーザ加工中にリード配線層32、33、34の一部が除去されることを抑えることができるからである。また、絶縁路47の幅は、第1路47aと第2路47bと第3路47cとで略同じとすることが好ましい。そして、絶縁路48が絶縁路47と同様に形成され、絶縁路49が絶縁路46と同様に形成されて、リード配線層34〜37が絶縁される。
【0039】
ここで、絶縁路46〜49が形成される部位における導電層20の厚みは略一定であるので、レーザ加工中に段差等でレーザ光の焦点がずれてスポット径が広がることにより、レーザ加工される導電層20と近接するリード配線層31〜37が除去されることや、スポット径が広がることによる単位面積当りのエネルギの低下で絶縁路46〜49が形成される部位の導電層20が残留することが抑制される。レーザ加工には、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等を用いたレーザトリミング装置を使用することができる。
【0040】
なお、絶縁溝44は、レーザ光のスポット径よりも大きく形成されることが好ましい。レーザ加工中、絶縁路46〜49を絶縁溝44に接続するときに、レーザ光が保護層22に接触することにより保護層22の境界における段差でレーザ光の焦点がずれてスポット径が広がることを回避できるからである。また、絶縁溝44は、絶縁路46〜49の幅より大きく形成されることが好ましい。レーザ加工時に、絶縁路46〜49を絶縁溝44により接続しやすくなるからである。以上により、回路基板本体12に連結されるコネクタ端子14が製造されて、配線基板10の製造が完了する。
【0041】
上記構成によれば、絶縁路の形成においてレーザ加工で除去される導電層の厚みを略一定にできるのでレーザ光の焦点ずれが抑えられ、リード配線層間の導電層をより確実に除去することができる。それにより、配線回路間の短絡がより確実に防止されるので、配線ピッチを狭小化した配線基板を製造することができる。また、レーザ加工中にレーザの焦点距離を変更せずに加工できるので、配線基板の生産性がより向上する。
【0042】
上記構成によれば、導電性ペーストに、少なくと表面が銀よりもイオン化傾向の小さい貴金属からなる導電粉末やカーボン粉末からなる導電フィラを含有させることにより、耐マイグレーション性をより向上させることができる。
【0043】
上記構成によれば、絶縁基板を、導電層よりもレーザ光吸収の少ない材料で成形することにより、レーザ加工工程での絶縁基板の損傷を抑えることができる。
【0044】
上記構成によれば、複数のリード配線層を千鳥状に配列させて絶縁基板に形成することにより、コネクタ端子をより小さくすることができる。
【0045】
(実施例)
3種類の製造方法で配線基板を製造し、配線基板に設けられるコネクタ端子の端子間絶縁抵抗性を評価した。まず、実施例1における配線基板の製造方法について説明する。実施例1の製造方法で製造された配線基板の構成は、上記図1に示した構成と同じである。
【0046】
リード配線層形成工程(S10)で、絶縁基板16であるポリエチレンテレフタレート(PET)基板に銀ペーストをスクリーン印刷して乾燥させ、千鳥状に配列させた複数のリード配線層31〜37を形成した。ポリエチレンテレフタレート(PET)基板には、帝人デュポンフィルム株式会社製のポリエチレンテレフタレートフィルム(型番:HSL、厚さ:100μm)を使用した。銀ペーストには、東洋紡株式会社製の銀を主成分とする導電性インク(型番:DX−351H−30)を使用した。そして、リード配線層31〜37の幅は0.1mmとし、リード配線層31〜37の先端部は直径0.16mmの略円形状とした。また、コネクタ端子部14aの先端側におけるリード配線層31〜37の間隔を0.3mmとし、コネクタ端子部14aの回路基板本体12側(コネクタ端子部根元)におけるリード配線層31〜37の間隔を0.5mmとし、回路基板本体12側のリード配線層31〜37を櫛歯状に形成して櫛歯配線とした。
【0047】
導電層形成工程(S12)で、リード配線層31〜37を形成したポリエチレンテレフタレート(PET)基板に導電性カーボンペーストをスクリーン印刷して、導電層20である導電性カーボン層を形成した。導電性カーボンペーストには、モリテックス株式会社製の導電性カーボンペースト(型番581SS)を使用した。そして、コネクタ端子部14aの回路基板本体12側における0.5mmピッチで櫛歯状に形成されたリード配線層31〜37の部位には、導電性カーボン層が櫛歯状に形成されるように導電性カーボンペーストをスクリーン印刷した。ここで、導電性カーボン層の凸部40である櫛歯部ではリード配線層31〜37が被覆され、導電性カーボン層の凹部42である櫛歯部と櫛歯部との間では、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板が露出するように導電性カーボンペーストをスクリーン印刷した。
【0048】
保護層形成工程(S14)で、櫛歯状に形成された導電性カーボン層におけるコネクタ端子部14aの回路基板本体12側を覆うようにソルダーレジストをスクリーン印刷して、保護層22であるレジスト層を形成した。ソルダーレジストには、日立化成工業株式会社製のソルダーレジスト(型番;SN9000)を使用した。また、レジスト層は、櫛歯状に形成された導電性カーボン層におけるコネクタ端子部14aの先端側を露出させてスクリーン印刷等で被覆され、レジスト層で覆われずに露出した櫛歯部と櫛歯部との間に、各々リード配線層31〜37の間を絶縁するための絶縁溝44を形成した。
【0049】
レーザ加工工程(S16)で、各々リード配線層31〜37の間に形成された導電性カーボン層を所定幅でレーザ加工により除去して絶縁路46〜49を形成した。そして、絶縁路46〜49を各々絶縁溝44に接続させることにより、各リード配線層31〜37の間にギャップを設けて絶縁した。
【0050】
次に、比較例1における配線基板の製造方法について説明する。
【0051】
図7は、比較例1の製造方法で製造した配線基板におけるコネクタ端子の構成を示す図である。コネクタ端子が設けられるポリエチレンテレフタレート(PET)基板60に銀ペーストをスクリーン印刷して乾燥させ、千鳥状に配列させた複数の銀配線層61〜67を形成した。銀配線層61〜67の幅(X1)は、0.05mmとし、銀配線層61〜67のピッチ(X2)は、0.3mmピッチとした。次に、銀配線層61〜67に導電性カーボンペーストをスクリーン印刷して導電性カーボン層68を形成した。導電性カーボン層68の幅(X3)は、0.20mmとした。さらに、コネクタ端子部以外をソルダーレジストでスクリーン印刷してレジスト層69を形成した。なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、銀ペースト、導電性カーボンペースト及びソルダーレジストは、実施例1で使用した材料と同じものを使用した。
【0052】
次に、比較例2における配線基板の製造方法について説明する。
【0053】
図8は、比較例2の製造方法で製造した配線基板におけるコネクタ端子の構成を示す図である。コネクタ端子が設けられるポリエチレンテレフタレート(PET)基板70に銀ペーストをスクリーン印刷して乾燥させ、千鳥状に配列させた複数の銀配線層71〜77を形成した。銀配線層71〜77の幅(Y1)は、0.05mmとし、銀配線層71〜77のピッチ(Y2)は、0.3mmピッチとした。銀配線層71〜77の先端部を直径0.16mmの略円形状に形成した。次に、銀配線層71〜77の接点部以外の箇所にソルダーレジストをスクリーン印刷してレジスト層78を形成した。そして、露出した銀配線層71〜77と、レジスト層78の一部とが被覆されるように導電性カーボンペーストをスクリーン印刷して導電性カーボン層79を形成した。その後、レーザ加工によって銀配線層71〜77の間と、レジスト層78の一部とに被覆された導電性カーボン層を除去して、各々銀配線層71〜77を絶縁する絶縁領域80を形成した。なお、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、銀ペースト、導電性カーボンペースト及びソルダーレジストは、実施例1で使用した材料と同じものを使用した。
【0054】
次に、実施例1及び比較例1,2の製造方法で製造した配線基板について、コネクタ端子をコネクタに嵌め込み、絶縁抵抗測定器を用いて抵抗値の測定を実施した。抵抗値の測定は、実施例1で製造した配線基板についてはリード配線層31、33、35、37を正極とし、リード配線層32、34、36を負極として測定し、比較例1で製造した配線基板についてはリード配線層61、63、65、67を正極とし、リード配線層62、64、66を負極として測定し、比較例2で製造した配線基板についてはリード配線層71、73、75、77を正極とし、リード配線層72、74、76を負極として測定した。なお、サンプル数(N)は、いずれの配線基板もN=5とし、1.0×10Ω以上の絶縁抵抗を合格とした。
【0055】
図9は、配線基板の絶縁抵抗測定結果を示す図である。比較例1の製造方法で製造された配線基板では、全てのサンプルで1.0×10Ωより低い絶縁抵抗値が測定された。これは、導電性インクの滲み、印刷の位置ズレによる短絡が発生したことによるものである。比較例2の製造方法で製造された配線基板では、5体のサンプル中、1体のサンプルで1.0×10Ωより低い絶縁抵抗値が測定された。比較例2の製造方法では、導電性カーボン層79を銀配線層71〜77が形成されたポリエチレンテレフタレート(PET)基板70に被覆するときに、銀配線層71〜77を露出させないようにレジスト層78の一部にオーバーラップさせて導電性カーボン層79を被覆している。そのため、レーザ加工で銀配線層71〜77の間に形成された導電性カーボン層を除去して絶縁領域80を形成するときに、レジスト層78の境界に形成された段差によりレーザ光の焦点がずれてスポット径が広がり導電性カーボン層を十分に除去することができなかったことによるものである。
【0056】
これに対して、実施例1の製造方法で製造された配線基板では、全てのサンプルにおいて1.0×10Ω以上の絶縁抵抗値が得られた。実施例1の製造方法によれば、リード配線層31〜37のピッチ(P)が0.3mmのコネクタ端子を有する配線基板を製造できることを確認できた。また、実施例1の製造方法によれば、ソルダーレジストをスクリーン印刷後にレーザ加工を安定して行うことができるので、導電性カーボン層を確実に除去してリード配線層間のショートを防止できることを確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る実施の形態において、配線基板の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明に係る実施の形態において、絶縁基板に複数のリード配線層を形成した状態を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、導電層を被覆した状態を示す図である。
【図5】本発明に係る実施の形態において、保護層を被覆した状態を示す図である。
【図6】本発明に係る実施の形態において、レーザ加工後の状態を示す図である。
【図7】比較例1の製造方法で製造した配線基板におけるコネクタ端子の構成を示す図である。
【図8】比較例2の製造方法で製造した配線基板におけるコネクタ端子の構成を示す図である。
【図9】本発明に係る実施の形態において、配線基板の絶縁抵抗測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0058】
10 配線基板
12 回路基板本体
14 コネクタ端子
14a コネクタ端子部
16 絶縁基板
18 銀配線回路
20 導電層
22 保護層
31〜37 リード配線層
40 凸部
42 凹部
44 絶縁溝
46〜49 絶縁路
47a 第1路
47b 第2路
47c 第3路
50 リード配線層の先端部
60、70 ポリエチレンテレフタレート(PET)基板
61〜67、71〜77 銀配線層
68、79 導電性カーボン層
69、78 レジスト層
80 絶縁領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板本体と、前記回路基板本体に連結されるコネクタ端子と、を備える配線基板を製造する配線基板の製造方法において、
コネクタ端子部に置かれる絶縁基板に、銀ペーストで複数のリード配線層を形成するリード配線層形成工程と、
前記リード配線層を形成した絶縁基板に導電性ペーストを被覆して導電層を形成するとともに、前記コネクタ端子部の回路基板本体側に形成される導電層を凹凸状にして、前記各々リード配線層の間に凹部を形成する導電層形成工程と、
凹凸状に形成された導電層における前記コネクタ端子部の回路基板本体側に絶縁性ペーストを被覆して保護層を形成するとともに、前記凹部における前記コネクタ端子部の先端側を露出させて絶縁溝を形成する保護層形成工程と、
前記各々リード配線層の間に形成された導電層をレーザ加工により所定幅で除去して絶縁路を形成し、前記絶縁路を前記絶縁溝に接続させて前記各々リード配線層を絶縁するレーザ加工工程と、
を備えることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板の製造方法において、
前記導電性ペーストは、少なくとも表面が銀よりもイオン化傾向の小さい貴金属で形成された導電性粉末からなる導電性フィラを含有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の配線基板の製造方法において、
前記導電性ペーストは、カーボン粉末を含む導電性フィラを含有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1つに記載の配線基板の製造方法において、
前記絶縁基板は、前記導電層よりもレーザ光の吸収が少ない合成樹脂で成形されることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の配線基板の製造方法において、
前記複数のリード配線層は、千鳥状に配列されて絶縁基板に形成されることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1つに記載の配線基板の製造方法において、
前記コネクタ端子部の先端側に形成される前記複数のリード配線層の間隔は、前記コネクタ端子部の回路基板本体側に形成される前記複数のリード配線層の間隔より小さいことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の配線基板の製造方法において、
前記導電層で被覆された複数のリード配線層は、コネクタに接続されることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の配線基板の製造方法において、
前記絶縁溝は、前記絶縁路の幅より大きく形成されることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
回路基板本体と、前記回路基板本体に連結されるコネクタ端子と、を備える配線基板において、
コネクタ端子部に置かれる絶縁基板に、銀ペーストで複数のリード配線層を形成し、
前記リード配線層を形成した絶縁基板に導電性ペーストを被覆して導電層を形成するとともに、前記コネクタ端子部の回路基板本体側に形成される導電層を凹凸状にして、前記各々リード配線層の間に凹部を形成し、
凹凸状に形成された導電層における前記コネクタ端子部の回路基板本体側に絶縁性ペーストを被覆して保護層を形成するとともに、前記凹部における前記コネクタ端子部の先端側を露出させて絶縁溝を形成し、
前記各々リード配線層の間に形成された導電層をレーザ加工により所定幅で除去して絶縁路を形成し、前記絶縁路を前記絶縁溝に接続させることにより前記各々リード配線層を絶縁して製造されることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−212151(P2009−212151A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−51102(P2008−51102)
【出願日】平成20年2月29日(2008.2.29)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】