説明

配線基板及びその製造方法

【課題】導体とビア電極との接続の信頼性に優れた配線基板を提供する。
【解決手段】配線基板10は、板状の基材層12を有する。基材層12は、例えば、セラミック等からなる基材14と、Ag等からなる第1導体16、ビア電極18とを有し、1つの基材層12と他の基材層12とは、各基材層12を構成する基材14が一体化されることによって積層されている。配線基板10の上面には、基材層12の一主面12aに設けられた第1導体16の一主面16a及び第1導体16を通って基材層12に貫設されたビア電極18の一端面18aが露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板及びその製造方法に関し、一層詳細には、導体を有する基材層が積層されてなる配線基板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、積層配線基板におけるビア電極は、セラミックグリーンシートに貫通孔を穿設した後、その貫通孔に導体ペーストを充填したり、その内壁に導体ペーストを塗布したりすることによって形成される。その後、セラミックグリーンシートの表面に、貫通孔内の導体ペーストと接続されるように配線となる導体ペーストをスクリーン印刷等の方法により塗布した後、積層し焼成することで配線基板が得られる。
【0003】
このような方法では、配線となる導体とビア電極との接続が、ビア電極等の端面のみでなされているため、電気的な接続の信頼性に欠けるという問題があった。そこで、配線となる導体にビア電極を貫通させて接続する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−40662号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示された配線基板は、ビア電極の端部が、配線の表面よりも外側に突出していると共に、ビア電極と配線の表面との間に円環形状の接続面を備えている。これにより、配線とビア電極との接続が端面のみでなされる場合よりも、接続の信頼性が増す。
【0006】
しかしながら、この配線基板では、基材層の表面に配線が盛り上がった構造であるため、配線と基材の熱膨張差によって配線が剥離し易く、電子部品や端子を接続した際の接続強度が低下することが考えられる。
【0007】
また、セラミックグリーンシートの表面に導体ペーストを印刷して配線を形成する方法では、導体ペーストがセラミックグリーンシートの表面に突出するため、積層し焼成して得られる配線基板に変形が生じ易い。特に特許文献1の配線基板の場合、ビア電極の端部が外側に突出しているため、配線基板の変形は益々大きくなる。その結果、セラミックの基材と配線との間に隙間やクラックが生じる場合があり、結局、配線とビア電極等との接続の信頼性が低下する懸念がある。
【0008】
さらに、ビア電極の端部が配線の表面よりも外側に突出しているため、配線基板の表面の平坦度が低下する。この場合、配線基板に半導体素子等の電子部品を実装する際に、位置ずれや傾きが生じる恐れがあり、また、実装のための半田印刷を均一に行うことが困難になる。
【0009】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、導体とビア電極との接続の信頼性に優れた配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の本発明に係る配線基板は、板状の基材層からなる配線基板であって、前記基材層は、基材と、前記基材層の一主面に設けられた第1導体と、前記第1導体を通って前記基材層に貫設されるビア電極とを有し、前記基材層の一主面と、前記第1導体の一主面とが、同一平面を形成していることを特徴とする。
【0011】
基材層の一主面と第1導体の一主面とが同一平面を形成していることで、第1導体の側面が基材に埋設されているため、第1導体と基材とが一体化(接合)された面積が大きく、第1導体が剥離し難くなる。従って、第1導体の剥離に伴う断線等の懸念が払拭され、配線基板に電子部品や端子を接続した場合の接続強度が高められる。さらに、基材層の平坦化により、第1導体への電子部品の確実な実装や、電子部品の実装のための正確な半田印刷が可能となる。また、基材層の平坦性が高まるため、例えば、積層した際の配線基板の変形が小さくなる。その結果、基材と第1導体との間に隙間やクラックが生じ難くなり、第1導体とビア電極との接続の信頼性も向上する。
【0012】
また、第1の本発明に係る配線基板において、前記ビア電極の一端面と、前記基材層の一主面とが、同一平面を形成し、前記ビア電極の他端面と、前記基材層の他主面とが、同一平面を形成していることが好ましい。ビア電極も含めて基材層の平坦性を高めることにより、例えば、積層して得られる配線基板の変形が抑えられ、その結果、第1導体とビア電極との接続の信頼性を向上させることができる。
【0013】
この場合、第1の本発明に係る配線基板において、前記基材層の他主面に第2導体が設けられるとともに、前記ビア電極が前記第2導体を通って貫設され、且つ前記基材層の他主面と、前記第2導体の一主面とが、同一平面を形成している構成としてもよい。基材層の一主面と他主面とに、それぞれ第1導体と第2導体とを設けた場合であっても、平坦な基材層とすることで、配線基板の変形が抑えられ、第1導体及び第2導体とビア電極とを確実に接続することができる。
【0014】
さらに、第1の本発明に係る配線基板において、前記ビア電極と、前記第1導体とは、その材質又は面粗度が異なるようにしてもよい。ビア電極と第1導体との材質や面粗度が異なることから、ビア電極の位置を検知することができ、積層の際の位置決めや、配線基板の検査を容易に行うことができる。
【0015】
またさらに、第1の本発明に係る配線基板において、前記基材をセラミック焼結体とすることが好ましい。この場合、例えば、セラミック焼結体は、導体よりも低熱膨張性であるから、導体と基材とに熱膨張差が生じた場合であっても、基材層の一主面と平行な方向への導体の膨張を制限する。その結果、ビア電極が締め付けられる力が作用するため、導体とビア電極との接続が効果的に維持される。
【0016】
なお、第1の本発明に係る配線基板において、前記基材層が積層されている構成としてもよい。
【0017】
第2の本発明に係る配線基板の製造方法は、基体上に導体成形体を形成する導体成形工程と、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記導体成形体を被覆するように供給するスラリー供給工程と、前記スラリーを硬化させてセラミック成形体を得るセラミック成形工程と、前記セラミック成形体に対し、その一部を構成する導体成形体を通る貫通孔を穿設する穿孔工程と、前記貫通孔の少なくとも壁面に導体ペーストを充填するビア充填工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
このような構成によれば、セラミック焼結体からなる基材層の一主面と、第1導体の一主面とが同一平面を形成し、基材層の他主面と、第2導体の一主面とが同一平面を形成している基材層とすることが容易である。また、穿孔工程において、導体成形体の側面がセラミック成形体に埋設された形態を有しているため、導体成形体が剥がれ難く、確実に貫通孔を穿設することができる。なお、貫通孔の壁面に導体ペーストを充填(塗布)した場合、スルーホールビア電極が形成され、貫通孔を全て充填した場合、スルーホールのないビア電極が形成される。
【0019】
この場合、第2の本発明に係る配線基板の製造方法において、前記穿孔工程は、前記基体と、硬化した前記スラリーとによって前記導体成形体が挟持された状態の前記セラミック成形体に対し、前記基体ごと前記貫通孔を穿設するようにしてもよい。穿孔工程において、上記のように導体成形体の側面がセラミック成形体に埋設されるとともに、導体成形体が基体に被覆された状態のまま、基体ごと貫通孔を穿設することにより、導体成形体の剥がれをより確実に防止することができる。
【0020】
また、第2の本発明に係る配線基板の製造方法において、レーザ加工によって前記貫通孔を穿設することが好ましい。レーザ加工は、導体成形体や、セラミック成形体の欠けやクラックの発生が少ないためである。この場合、基体の露呈している表面側から貫通孔を穿設するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明に係るセラミック基板によれば、導体とビア電極との接続の信頼性に優れた配線基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1Aは、第1実施形態に係る配線基板を示す概略断面図であり、図1Bは、図1Aに示す配線基板の要部拡大断面図である。
【図2】図2Aは、第2実施形態に係る配線基板の基材層の要部拡大断面図である。図2Bは、第2実施形態に係る配線基板の要部拡大断面図である。
【図3】図3Aは、第3実施形態に係る配線基板の基材層の要部拡大断面図である。図3Bは、第3実施形態に係る配線基板の要部拡大断面図である。図3Bは、第3実施形態に係る配線基板の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図4】図4は、配線基板の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】図5Aはフイルム上に導体ペーストによる導体成形体を形成した状態を示す断面図であり、図5Bは鋳込み型内にフイルムを設置した後、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図5Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図6】図6Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフイルムごと離型した状態を示す断面図であり、図6Bはフイルムから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図7】図7Aはフイルム上に導体ペーストによる導体成形体を形成した状態を示す断面図であり、図7Bは鋳込み型内にフイルムを他のフイルム及びスペーサと共に設置した、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図7Cは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図8】図8Aは鋳込み型から第1セラミック成形体をフイルム、他のフイルム及びスペーサごと離型した状態を示す断面図であり、図8Bはフイルム、他のフイルム及びスペーサから第1セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図9】図9Aは基体上に導体ペーストによる導体成形体を形成した状態を示す断面図であり、図9Bは導体成形体を被覆するように基体上にスラリーを塗布した状態を示す断面図である。
【図10】図10Aは基体上にスラリーを塗布する方法の一例を示す斜視図であり、図10Bはその側面図である。
【図11】図11Aは基体上に塗布したスラリーを硬化した状態を示す断面図であり、図11Bは基体を剥離して第1セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図12】図12Aは第1セラミック成形体にレーザLを照射した状態を示す断面図であり、図12Bは第1セラミック成形体に貫通孔を形成した状態を示す断面図であり、図12Cは第1セラミック成形体の下面にクリーンペーパを敷いた状態を示す断面図であり、図12Dは、貫通孔に導体ペーストを充填し、クリーンペーパを剥離した状態を示す断面図である。
【図13】図13Aは第1セラミック成形体にフイルムの上面からレーザLを照射した状態を示す断面図であり、図13Bはフイルムと第1セラミック成形体とに貫通孔を形成した状態を示す断面図であり、図13Cは第1セラミック成形体の下面にクリーンペーパを敷いた状態を示す断面図であり、図13Dは、貫通孔に導体ペーストを充填し、フイルムとクリーンペーパを剥離した状態を示す断面図である。
【図14】図14Aはフイルムを鋳込み型内に設置した後、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図14Bは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第2セラミック成形体とした状態を示す断面図であり、図14Cは鋳込み型から第2セラミック成形体をフイルムごと離型し、さらに、フイルムから第2セラミック成形体を離型した状態を示す断面図である。
【図15】図15Aは基体上にスラリーを塗布した状態を示す断面図であり、図15Bは基体上に塗布したスラリーを硬化した状態を示す断面図であり、図15Cは基体を剥離して第2セラミック成形体とした状態を示す断面図である。
【図16】図16は導体成形体を有する第1セラミック成形体と導体成形体を有しない第2セラミック成形体を積層してセラミック積層体とした状態を示す断面図である。
【図17】図17Aは導体成形体が形成された2つのフイルムを対向させて鋳込み型内に設置した後、鋳込み型内にスラリーを注入した状態を示す断面図であり、図17Bは鋳込み型内に注入されたスラリーを硬化して第3セラミック成形体とした状態を示す断面図であり、図17Cは鋳込み型から第3セラミック成形体を離型した状態を示す断面図であり、図17Dは第3セラミック成形体に貫通孔を形成し、該貫通孔に導体ペーストを充填した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
先ず、第1実施形態に係る配線基板10について図1A、図1Bを参照しながら説明する。
【0024】
図1は、配線基板10の縦断面図である。配線基板10は、板状の基材層12が積層された構成を有する。基材層12は、例えば、セラミック等からなる基材14と、Ag等からなる第1導体16、ビア電極18とを有し、1つの基材層12と他の基材層12とは、各基材層12を構成する基材14が一体化されることによって積層されている。なお、図1に示す配線基板10では、最下層20は、第1導体16とビア電極18を有しない構成、すなわち、基材14のみからなる構成であるが、必ずしもそのような構成でなくても構わない。例えば、配線基板10は、基材層12が最下層まで積層された構成、或いは、基材層12の単一層からなる構成としてもよい。又、基材層12は適宜必要な層に配置すれば良いことは言うまでも無い。
【0025】
配線基板10の上面には、最上層の基材層12の一主面12aに設けられた第1導体16の一主面16a及び第1導体16を通って基材層12に貫設されたビア電極18の一端面18aが露出している。この露出した第1導体16及びビア電極18に対し、例えば半田等を介して半導体素子等の電子部品や端子が接続される。また、ビア電極18の他端面18bは、1つ下層に位置する他の基材層12に設けられた第1導体16に接続されている。
【0026】
最上層の基材層12を除く、他の基材層12に設けられた第1導体16及びビア電極18は、露出せずに内部に埋設されている。ただし露出していない点以外は、最上層の基材層12と同様である。すなわち、各基材層12の一主面12aに第1導体16の一主面16a及びビア電極18の一端面18aが位置し、ビア電極18の他端面18bは、その1つ下層に位置する他の基材層12の第1導体16に接続されている。
【0027】
図1Bは、最上層の基材層12のビア電極18が設けられた部分を拡大した一部拡大断面図である。基材層12の一主面12aと、第1導体16の一主面16aとは、同一平面を形成している。従って、第1導体16の一主面16a以外の部分は、基材層12に埋設され一体化されている。すなわち、第1導体16の側面16bは、基材層12の内壁面12bと接合され、第1導体16の他主面16cは、基材層12の内底面12cと接合されている。
【0028】
また、ビア電極18は、第1導体16を通って基材層12に貫設され、その外周面18cが第1導体16の孔壁面16d及び基材層12の孔壁面12dに接合された構成を有し、第1導体16の一主面16aにその一端面18aが露出し、基材層12の他主面12bに他端面18bが位置している。この場合、ビア電極18の一端面18aと、基材層12の一主面12aとが、同一平面を形成し、ビア電極18の他端面18bと基材層12の他主面12bとが同一平面を形成していることが好ましい。
【0029】
さらに、ビア電極18の材料と、第1導体16の材料とは、異なる材質のものを用いてもよいし、同一のものを用いてもよい。また、ビア電極18の一端面18aと、第1導体16の一主面16aの面粗度が異なるようにしてもよい。さらに、ビア電極18の形状は、例えば、円柱形状としてもよいし、一端面18aから他端面18bに向かって減径又は増径する断面台形形状としてもよい。
【0030】
なお、図1Bでは、最上層の基材層12を例示したが、上記したように、第1導体16の一主面16a及びビア電極18の一端面18aが露出せずに内部に埋設されている点を除き、その他の基材層12も同一の構成を有している。
【0031】
基材層12の厚みは、5000μm以下が好ましく、例えば、50〜5000μm、100〜3000μm、150〜2000μmとすることができる。また、基材14は、特に限定されないが、樹脂やセラミックを用いることができ、なかでもセラミックがより好ましい。セラミック材料としては、低温焼結性セラミックから高温焼結を要するものまで、各種のセラミック材料を用いることができる。第1導体16の厚みは、基材層12の厚みよりも小さく、その下限を、例えば、1μm以上、5μm以上、10μm以上とすることができ、その上限を、例えば、200μm以下、150μm以下、100μm以下とすることができる。ビア電極18のビア径は、例えば、50〜1000μmとすることができる。
【0032】
本実施形態に係る配線基板10は、基本的には以上のような構成を有する。次にその作用効果について説明する。
【0033】
本実施形態では、第1導体16の一主面16aと、基材層12の一主面12aとが同一平面を形成していることから、基材層12の一主面12aの平坦性が高い。さらに、ビア電極18の一端面18aと、基材層12の一主面12aとが同一平面を形成し、ビア電極18の他端面18bと基材層12の他主面12bとが同一平面を形成するようにすれば、より一層基材層12の平坦性が高くなる。そのため、基材層12が積層してなる配線基板10の変形が極めて小さくなる。従って、基材14と第1導体16との間に隙間やクラックが生じ難くなり、第1導体16とビア電極18との接続の信頼性が向上する。
【0034】
また、第1導体16の側面16bが基材14に埋設されているため、第1導体16と基材14とが一体化(接合)された面積が大きく、第1導体16が剥離し難くなる。従って、第1導体16の剥離に伴う断線等の懸念が払拭される。このことは、配線基板10に電子部品や端子を接続した場合の接続強度の向上にも寄与する。さらに、例えば、ビア電極18の形状が、一端面18aから他端面18bに向かって減径又は増径する断面台形形状の場合、第1導体16とビア電極18とが一体となってリベット形状となり、より一層第1導体16の剥離を低減することができる。
【0035】
しかも、例えば、基材14としてセラミックを用いた場合、一般的に、セラミックは導体よりも低熱膨張性であるから、配線基板10の動作時に発熱して第1導体16と基材14とに熱膨張差が生じると、基材層12の一主面12aと平行な方向への第1導体16の膨張が制限される。その結果、第1導体16によってビア電極18が締め付けられる力が作用し、第1導体16とビア電極18との接続がより一層確実になる。
【0036】
また、ビア電極18の材料と第1導体16の材料とに異なる材質のものを用いた場合や、ビア電極18の一端面18aと第1導体16の一主面16aの面粗度を異なるようにした場合には、例えば、X線検査装置や、光学顕微鏡を用いることによって、ビア電極18の位置を検知することができ、積層の際の位置決めや、配線基板10の検査を容易に行うことができる。
【0037】
さらに、基材層12の平坦化により、第1導体16への電子部品の確実な実装や、電子部品の実装のための正確な半田印刷が可能となる。
【0038】
次に、第2実施形態の配線基板30に係る基材層12について図2A、図2Bを参照して説明する。第1実施形態に係る基材層12と同一の部分には、同一の符号を付し、共通する構成については、その説明を省略する。
【0039】
図2Aに示すように、第2実施形態に係る基材層12は、ビア電極18の代わりに、スルーホールビア電極22が設けられた点で図1Bに示した第1実施形態に係る基材層12と異なる。
【0040】
スルーホールビア電極22は、円筒形状を有し、一端部22aが基材層12の一主面12aに露出し、その外周面22cが第1導体16の孔壁面16d及び基材層12の孔壁面12dに接合された構成を有している。この場合、図2Bに示すように、スルーホールビア電極22の他端部22bは、他の基材層12に同様に形成されたスルーホールビア電極22の一端部22aに当接し、スルーホール24が延在するように積層される。この配線基板30によれば、スルーホール24内に電子部品や配線を実装し得るようになる。
【0041】
また、ビア電極18の場合と同様に、スルーホールビア電極22の一端面22aと、第1導体16の一主面16aとが、同一平面を形成し、スルーホールビア電極22の他端面22bと基材層12の他主面12bとが同一平面を形成していることが好ましい。また、スルーホールビア電極22の形状は、例えば、上記の通り円筒形状としてもよいし、一端面22aから他端面22bに向かって減径又は増径する断面台形形状にスルーホール24が設けられた形状としてもよい。
【0042】
この第2実施形態においても、スルーホールビア電極22が設けられた点以外は、図1Bに示した基材層12と同様の構成、及びその構成に基づく作用効果を有する。
【0043】
次に、第3実施形態の配線基板40、50に係る基材層28について図3A〜図3Cを参照して説明する。第1実施形態に係る配線基板10と同一の部分には、同一の符号を付し、共通する構成については、その説明を省略する。
【0044】
図3Aに示すように、第3実施形態に係る基材層28は、その他主面28bに第2導体26が設けられた点で図1Bに示した第1実施形態に係る基材層12と異なる。この場合、基材層28の他主面28bと、第2導体26の一主面26aとが、同一平面を形成している。従って、第2導体26の一主面26a以外の部分は、基材14に埋設され一体化されている。すなわち、第2導体26の側面26bは、基材層28の内壁面28eと接合され、第2導体26の他主面26cは、基材層28の内底面28fと接合されている。
【0045】
また、ビア電極18は、第1導体16及び第2導体26を通って基材層28に貫設され、その外周面18cが第1導体16の孔壁面16d、第2導体26の孔壁面26d及び基材層28の孔壁面28dに接合された構成を有し、第2導体26の一主面26aに他端面18bが位置している。この場合、ビア電極18の一端面18aと、基材層28の一主面28aとが、同一平面を形成し、ビア電極18の他端面18bと、基材層28の他主面28bとが同一平面を形成していることが好ましい。
【0046】
基材層28の一主面28aと他主面28bとに、それぞれ第1導体16と第2導体26とを設けた場合であっても、上記のように、第1導体16と第2導体26は、いずれも基材層28の一主面28aと他主面28bとから突出せず面一であることから、基材層28を積層してなる配線基板40の変形が抑えられる。さらに、ビア電極18の一端面18aとビア電極18の他端面18bについても、いずれも基材層28の一主面28aと他主面28bとから突出させずに面一とすることにより、より一層配線基板40の変形が抑えられる。その結果、第1導体16及び第2導体26とビア電極18とを確実に接続することができる。
【0047】
この場合、例えば、図3Bに示す配線基板40のように、第2導体26が他の基材層28の第1導体16と当接するように積層されてもよいし、また、図3Cに示す配線基板50のように、基材層28と、他の基材層としてビア電極18のみが設けられた基材層32とが交互に積層されてもよい。さらに、この実施形態において、ビア電極18として、スルーホールビア電極22を形成してもよい。
【0048】
この第3実施形態においても、他主面28bに第2導体26が設けられた点以外は、図1Bに示した第1実施形態に係る基材層12と同様の構成、及びその構成に基づく作用効果を有する。
【0049】
次に、第1実施形態に係る配線基板10の製造方法について、基材14としてセラミックを用いた例を挙げ、図4〜図16を参照して説明する。
【0050】
図4に示すように、本実施形態に係る配線基板10の製造方法は、後に第1導体16となる導体成形体34(図5A参照)を形成する導体成形工程S1と、後に基材14となるセラミック粉末を含むスラリー36(図5B参照)を、前記導体成形体34を被覆するように供給するスラリー供給工程S2と、スラリー36を硬化させて第1セラミック成形体38(図6A参照)を得るセラミック成形工程S3と、前記第1セラミック成形体38に対し、その一部を構成する導体成形体34を通る貫通孔42(図12B参照)を穿設する穿孔工程S4と、前記貫通孔42の少なくとも壁面に、後にビア電極18となる導体ペースト44(図12D参照)を充填するビア充填工程S5とを含む。その後、基材層12となる第1セラミック成形体38を積層し、得られたセラミック積層体46(図16参照)を焼成することによって、導体成形体34による第1導体16が基材14の表層と内部に埋設され、ビア電極18によって第1導体16間が接続された配線基板10が完成する。
【0051】
ここで、第1セラミック成形体38の2つの作製方法(第1作製方法及び第2作製方法:導体成形工程S1〜セラミック成形工程S3)について図5A〜図13Dを参照しながら説明する。
【0052】
[セラミック成形:第1作製方法]
第1作製方法は、先ず、図5Aに示すように、フイルム48上に導体ペースト52を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフイルム48上に導体成形体34を形成する(導体成形工程S1)。フイルム48は、表面にシリコーン離型剤がコートされたPET(ポリエチレンテレフタレート)である。離型剤については、導体成形体34を形成した後に、導体成形体34を形成していない表面に付着した分を除去してもよいし、予め離型剤を導体成形体34が形成されるパターンと同じパターンで印刷してもよい。導体ペースト52の加熱硬化時における収縮、歪を抑制するために、予めフイルム48に温度150℃で10分以上のアニール処理を施すことが好ましい。
【0053】
その後、図5Bに示すように、導体成形体34が鋳込み型54の成形空間に向くようにしてフイルム48を鋳込み型54内に設置し、スラリー36を鋳込み型54内に鋳込んだ(スラリー供給工程S2)後に、室温硬化、加熱硬化、乾燥硬化等により硬化(セラミック成形工程S3)する。これによって、図5Cに示すように、第1セラミック成形体38が得られる。この場合、図6Aに示すように、フイルム48上に第1セラミック成形体38が設置された状態になっているため、第1セラミック成形体38をフイルム48から離型することによって、図6Bに示すように、導体成形体34が埋設された第1セラミック成形体38が得られる。
【0054】
この場合、スラリー36に熱硬化性樹脂前駆体を含んでいるため、スラリー36の硬化時における乾燥収縮に伴う導体成形体34周りの部分の変形は小さい。従って、第1セラミック成形体38のうち、導体成形体34の周りの部分の変形も小さく、第1セラミック成形体38の一主面(導体成形体34の一主面が露出された面)の平坦性も良好となる。
【0055】
また、フイルム48の導体成形体34が形成されていない表面には、離型剤がコートされていないことから、第1セラミック成形体38とフイルム48とは、互いに強固に付着する。すなわち、図6Aに示すように第1セラミック成形体38がフイルム48によって支持される。従って、鋳込み型54から取り出した後に、図6Aの形態とすることによって、第1セラミック成形体38の取り扱いが容易になる。
【0056】
第1セラミック成形体38の鋳込み型54からの離型性を良好にするために、図7A〜図8Bに示すようにしてもよい。すなわち、図7Aに示すように、フイルム48上に導体ペースト52を印刷法によってパターン形成した後、硬化してフイルム48上に導体成形体34を形成する。
【0057】
その後、図7Bに示すように、導体成形体34が形成されたフイルム48を鋳込み型54内に設置する際に、フイルム48の導体成形体34が形成された面と他のフイルム56とを対向させ、さらに、フイルム48と他のフイルム56の間にスペーサ58を挟んで設置する。そして、スペーサ58にて形成される空間内にスラリー36を流し込んだ後に硬化して、第1セラミック成形体38を得るようにしてもよい(図7C参照)。この場合、図8Aに示すように、第1セラミック成形体38がフイルム48、他のフイルム56及びスペーサ58にて囲まれた状態となっているため、第1セラミック成形体38が鋳込み型54に不要に付着することなく、簡単に鋳込み型54から離型することができる。
【0058】
さらに、導体成形体34が形成されるフイルム48の表面に塗布された離型剤の剥離力と、他のフイルム56の表面に塗布された離型剤の剥離力とを異なるようにすれば、必ずどちらかのフイルム48(又は56)が剥がれ易くなり、フイルム48(又は56)からの離型も容易になる。図8Bに、フイルム48、他のフイルム56及びスペーサ58から第1セラミック成形体38を離型した状態を示す。
【0059】
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
【0060】
[導体ペースト52:第1作製方法]
導体ペースト52としては、バインダとしてエポキシ、フェノール等の未硬化物を含有するものが好ましいが、とりわけ、レゾール型フェノール樹脂を含有するものが好ましい。また、金属粉末については、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Rhといった金属の単体又は合金、金属間化合物を用いることができるが、同時焼成されるセラミック部材に要求される特性、すなわち、焼成時の酸素分圧、温度、焼成収縮温度特性を考慮し、適宜選択される。焼成収縮温度特性については金属粉末組成だけではなく、金属粉末の粒径、比表面積、凝集度によっても適宜制御される。導体ペースト52中のバインダ分量については、例えば、Ag粉末の場合、金属粉末重量の1%〜10%の範囲を使用するが、セラミック部材の焼成収縮率、スクリーン印刷時の印刷性を考慮し、3〜6%の範囲が好ましい。
【0061】
導体ペースト52は、上述したように、印刷後、加熱硬化させるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えば、第1実施形態で使用するレゾール型フェノール樹脂の場合、120℃で10分〜60分硬化させる。
【0062】
導体ペースト52による導体成形体34が形成されたフイルム48(この場合、PETフィルム)を鋳込み型54に設置するが、PETフイルムを鋳込み型54に設置する際、PETフイルムのうねりを抑制するため、所望の平行度、平坦度を有する型板に真空吸着、糊付け、静電吸着等の手段により吸着させる。
【0063】
なお、後述するビア電極18の形成に用いる導体ペースト44(図12D参照)は、導体成形体34に用いる導体ペースト52と同じものを用いても良いし、例えば、貫通孔42に流れ込み易くなるように粘度を調整した別のものを用いてもよい。この場合、別の導体ペースト44として、銀ペースト等を用いることができる。
【0064】
[鋳込み型54(金型):第1作製方法]
型板は、吸着手段に応じた板部材を使用する。例えば真空吸着の場合は、金属、セラミック、樹脂等の材質は関係なく、多孔質板や吸着用孔を多数あけた板を使用し、糊付けの場合は、糊との反応性がなく、後に溶剤等で糊を拭き取る際にも変質を起こさない材質の板を使用し、静電吸着の場合は、PETと静電吸着し易い材料でできた板を使用することが好ましい。
【0065】
鋳込み型54は、内部にスラリー36が流通する経路を有し、鋳込み硬化後のスラリー36が所望の厚みの板状となるように、型板間に、導体成形体34が形成されたフイルム48、他のフイルム56及びスペーサ58を設置して、フイルム48及び他のフイルム56を平行に対向した形態を有し、且つ、フイルム48と他のフイルム56との間に適当な間隔が設定されるようにすることが好ましい。
【0066】
フイルム48、他のフイルム56、スペーサ58は、PETフイルム、離型剤をコートした金属板、ガラス板、セラミック板、紙、あるいはテフロン(登録商標)樹脂板等を用いることができる。但し、第1セラミック成形体38からの剥離が容易になるように可撓性を備えたものを用いることが好ましい。
【0067】
そして、この鋳込み型54に、反応硬化する樹脂を含有するスラリー36を流し込み、硬化させる。
【0068】
[スラリー36:第1作製方法]
スラリー36は、用途に応じ、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電セラミック材料、各種誘電体セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミニウムナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含んだセラミックス粉末を無機成分と、例えば分散剤とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応が誘起される有機化合物とからなる。
【0069】
このスラリー36は、無機成分粉末の他、有機分散媒、ゲル化剤を含み、粘性や硬化反応調整のための分散剤、触媒を含んでもよい。有機分散媒は反応性官能基を有していてよく、あるいは有していなくともよい。しかし、この有機分散媒は、反応性官能基を有することが特に好ましい。
【0070】
反応性官能基を有する有機分散媒としては、以下を例示することができる。
【0071】
すなわち、反応性官能基を有する有機分散媒は、ゲル化剤と化学結合し、スラリー36を硬化可能な液状物質であること、及び鋳込みが容易な高流動性のスラリー36を形成できる液状物質であることの2つを満足する必要がある。
【0072】
ゲル化剤と化学結合し、スラリー36を硬化するためには、反応性官能基、すなわち、水酸基、カルボキシル基、アミノ基のようなゲル化剤と化学結合を形成し得る官能基を分子内に有していることが必要である。分散媒は少なくとも1の反応性官能基を有するものであれば足りるが、より十分な硬化状態を得るためには、2以上の反応性官能基を有する有機分散媒を使用することが好ましい。2以上の反応性官能基を有する液状物質としては、例えば多価アルコール、多塩基酸が考えられる。なお、分子内の反応性官能基は必ずしも同種の官能基である必要はなく、異なる官能基であってもよい。また、反応性官能基はポリグリセリンのように多数あってもよい。
【0073】
一方、注型が容易な高流動性のスラリー36を形成するためには、可能な限り粘性の低い液状物質を使用することが好ましく、特に、20℃における粘度が20cps以下の物質を使用することが好ましい。既述の多価アルコールや多塩基酸は水素結合の形成により粘性が高い場合があるため、たとえスラリー36を硬化することが可能であっても反応性分散媒として好ましくない場合がある。従って、多塩基酸エステル、多価アルコールの酸エステル等の2以上のエステル基を有するエステル類を前記有機分散媒として使用することが好ましい。また、多価アルコールや多塩基酸も、スラリー36を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。エステル類は比較的安定ではあるものの、反応性が高いゲル化剤とであれば十分反応可能であり、粘性も低いため、上記2条件を満たすからである。特に、全体の炭素数が20以下のエステルは低粘性であるため、反応性分散媒として好適に用いることができる。
【0074】
スラリー36に含有されていてもよい反応性官能基を有する有機分散媒としては、具体的には、エステル系ノニオン、アルコールエチレンオキサイド、アミン縮合物、ノニオン系特殊アミド化合物、変性ポリエステル系化合物、カルボキシル基含有ポリマー、マレイン系ポリアニオン、ポリカルボン酸エステル、多鎖型高分子非イオン系、リン酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸Na、マレイン酸系化合物を例示できる。また、非反応性分散媒としては、炭化水素、エーテル、トルエン等を例示できる。
【0075】
[ゲル化剤:第1作製方法]
スラリー36中に含有されるゲル化剤は、分散媒に含まれる反応性官能基と反応して硬化反応を引き起こすものであり、以下を例示することができる。
【0076】
すなわち、ゲル化剤の20℃における粘度が3000cps以下であることが好ましい。具体的には、2以上のエステル基を有する有機分散媒と、イソシアネート基、及び/又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤とを化学結合させることによりスラリー36を硬化することが好ましい。
【0077】
具体的には、この反応性のゲル化剤は、分散媒と化学結合し、スラリー36を硬化可能な物質である。従って、ゲル化剤は、分子内に、分散媒と化学反応し得る反応性官能基を有するものであればよく、例えば、モノマー、オリゴマー、架橋剤の添加により三次元的に架橋するプレポリマー(例えば、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等)等のいずれであってもよい。
【0078】
一般に、平均分子量が大きなプレポリマー及びポリマーは、粘性が高いため、本実施例では、これらより分子量が小さいもの、具体的には平均分子量(GPC法による)が2000以下のモノマー又はオリゴマーを使用することが好ましい。なお、ここでの「粘度」とは、ゲル化剤自体の粘度(ゲル化剤が100%の時の粘度)を意味し、市販のゲル化剤希釈溶液(例えば、ゲル化剤の水溶液等)の粘度を意味するものではない。
【0079】
ゲル化剤の反応性官能基は、反応性分散媒との反応性を考慮して適宜選択することが好ましい。例えば反応性分散媒として比較的反応性が低いエステル類を用いる場合は、反応性が高いイソシアネート基(−N=C=O)、及び/又はイソチオシアネート基(−N=C=S)を有するゲル化剤を選択することが好ましい。
【0080】
イソシアネート類は、ジオール類やジアミン類と反応させることが一般的であるが、ジオール類は既述の如く高粘性のものが多く、ジアミン類は反応性が高すぎて注型前にスラリー36が硬化してしまう場合がある。
【0081】
このような観点からも、エステルからなる反応性分散媒と、イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤との反応によりスラリー36を硬化することが好ましく、より充分な硬化状態を得るためには、2以上のエステル基を有する反応性分散媒と、イソシアネート基、及び/又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤との反応によりスラリー36を硬化することが好ましい。また、ジオール類、ジアミン類も、スラリー36を大きく増粘させない程度の量であれば、強度補強のために使用することは有効である。
【0082】
イソシアネート基及び/又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤としては、例えば、MDI(4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート)系イソシアネート(樹脂)、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)系イソシアネート(樹脂)、TDI(トリレンジイソシアネート)系イソシアネート(樹脂)、IPDI(イソホロンジイソシアネート)系イソシアネート(樹脂)、イソチオシアネート(樹脂)等を挙げることができる。
【0083】
また、反応性分散媒との相溶性等の化学的特性を考慮して、前述した基本化学構造中に他の官能基を導入することが好ましい。例えば、エステルからなる反応性分散媒と反応させる場合には、エステルとの相溶性を高めて、混合時の均質性を向上させる点から、親水性の官能基を導入することが好ましい。
【0084】
なお、ゲル化剤分子内に、イソシアネート基又はイソチオシアネート基以外の反応性官能基を含有させてもよく、イソシアネート基とイソチオシアネート基が混在してもよい。さらには、ポリイソシアネートのように、反応性官能基が多数存在してもよい。
【0085】
スラリー36には、上述した成分以外に、消泡剤、界面活性剤、焼結助剤、触媒、可塑剤、特性向上剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0086】
上述したスラリー36は、以下のように作製することができる。
(a)分散媒に無機物粉体を分散してスラリー36とした後、ゲル化剤を添加する。
(b)分散媒に無機物粉体及びゲル化剤を同時に添加して分散することによりスラリー36を製造する。
【0087】
注型時及び塗布時の作業性を考慮すると、20℃におけるスラリー36の粘度は3000cps以下であることが好ましく、2000cps以下であることがより好ましい。スラリー36の粘度は、既述した反応性分散媒やゲル化剤の粘度の他、粉体の種類、分散剤の量、スラリー36の濃度(スラリー36全体の体積に対する粉体体積%)によっても調整することができる。
【0088】
但し、スラリー36の濃度は、通常は、25〜75体積%のものが好ましく、乾燥収縮によるクラックを少なくすることを考慮すると、35〜75体積%のものがさらに好ましい。有機成分として分散媒、分散剤、反応硬化物、反応触媒を有する。このうち、例えば分散媒とゲル化剤もしくはゲル化剤相互の化学反応により硬化する。
【0089】
[セラミック成形:第2作製方法]
次に、第2作製方法について図9A〜図12Cを参照しながら説明する。
【0090】
先ず、図9Aに示すように、基体60の上面に導体ペースト52を例えば印刷法によってパターン形成し、さらに、このパターン形成された導体ペースト52を加熱硬化して、基体60上に導体成形体34を形成する。なお、基体60は、上述したフイルム48と同様に、表面にシリコーン離型剤がコートされたPET(ポリエチレンテレフタレート)を用いることができる。
【0091】
その後、図9Bに示すように、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー36を、導体成形体34を被覆するように基体60上に塗布する。塗布方法としては、ディスペンサー法や、図10A及び図10Bに示す方法やスピンコート法等がある。図10A及び図10Bに示す方法は、一対のガイド板62a及び62bの間に基体60(導体成形体34が形成された基体60)を設置し、その後、スラリー36を、導体成形体34を被覆するように基体60上に塗布した後、ブレード状の治具64を一対のガイド板62a及び62bの上面を滑らせて(摺り切って)、余分なスラリー36を取り除く方法である。一対のガイド板62a及び62bの高さを調整することによって、スラリー36の厚みを容易に調整することができる。
【0092】
その後、図11Aに示すように、基体60上に塗布されたスラリー36を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)させ、さらに、図11Bに示すように、基体60を剥離、除去することによって第1セラミック成形体38が完成する。この場合も、第1セラミック成形体38の一主面(導体成形体34の一主面が露出された面)の平坦性は良好となる。
【0093】
ここで、各構成部材の好ましい態様について説明する。
【0094】
[導体ペースト52:第2作製方法]
第1作製方法と同様であるため、重複する記載を省略するが、第2作製方法における導体ペースト52は、樹脂と銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)系の金属の少なくとも1種類の粉末を含む。導体ペースト52に使用される樹脂は、熱硬化性樹脂前駆体であることが好ましい。この場合、熱硬化性樹脂前駆体は、自己反応性のレゾール型フェノール樹脂であることが好ましい。
【0095】
導体ペースト52は、上述したように、印刷後、加熱硬化されるが、硬化条件は、硬化剤の種類により異なり、例えば、第2作製方法で使用するレゾール型フェノール樹脂の場合、温度80〜150℃、時間10分〜60分で硬化させることができる。
【0096】
[スラリー36:第2作製方法]
第1作製方法と同様であるため、重複する記載を省略するが、第2作製方法におけるスラリー36に含まれるセラミック粉末は、用途に応じて、アルミナ、安定化ジルコニア、各種圧電体セラミック材料、各種誘電セラミック材料、といった酸化物セラミックスをはじめ、シリコンナイトライド、アルミニウムナイトライドといった窒化物セラミックス、シリコンカーバイド、タングステンカーバイドといった炭化物セラミックス粉末やバインダとしてのガラス成分を含む。
【0097】
スラリー36に含まれる熱硬化性樹脂前駆体は、イソシアネート基又はイソチオシアネート基を有するゲル化剤と、水酸基を有する高分子とを有する。
【0098】
上述した塗布方法のうち、ディスペンサー法や図10A及び図10Bに示す方法にてスラリー36を基体60上に塗布する場合、スラリー36の粘度は比較的高いことが好ましい。スラリー36の粘度は第1作製方法と同様でもよいが、スラリー36が低粘度だと、塗布した後の保形性が低く、流動による厚みばらつきが発生し易い。そのため、スラリー36の粘度は2000cps〜20000cpsが好ましい。
【0099】
そこで、水酸基を有する高分子として分子量の大きい樹脂を用いることで、スラリー36の粘度を高くできる。一例としてブチラール樹脂は分子量が大きいため、スラリー36の粘度を高くするには好適である。もちろん、高分子の分子量でスラリー36の粘度の制御が可能となることから、塗布方法に応じて、高分子として使用する樹脂を適宜選択すればよい。
【0100】
上述したブチラール樹脂は、一般に、ポリビニルアセタール樹脂であるが、その中には原料のポリビニルアルコール樹脂に由来するOH基が残るので、このOH基がゲル化剤のイソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応するものと考えられる。
【0101】
特に、イソシアネート基又はイソチオシアネート基と反応に必要な量を超えてブチラール樹脂を添加すると、反応後に残ったブチラール樹脂は熱可塑性樹脂として作用するので、熱硬化性樹脂の欠点である、硬化後の接着性が悪くなるという特性を改善することができる。その結果、例えば、後述する図16に示すように、第1セラミック成形体38を複数積層してセラミック積層体46を構成する場合に、各第1セラミック成形体38の接着性が良好となることから、製造過程において第1セラミック成形体38が剥離するという不都合を回避でき、複数の第1セラミック成形体38のセラミック積層体46による配線基板10の歩留まりを向上させることができる。
【0102】
水酸基を有する高分子としては、その他、エチルセルロース系樹脂、ポリエチレングリコール系樹脂、あるいはポリエーテル系樹脂を好ましく用いることができる。
【0103】
次に、上記したセラミック成形体の作製方法による作用効果について説明する。
【0104】
従来においては、セラミックグリーンシート(セラミック成形体)の作製には、本実施形態で用いられる熱硬化性樹脂ではなく、熱可塑性樹脂が用いられてきた。その場合、熱可塑性樹脂を含むスラリー36の乾燥収縮時に導体成形体34との界面で隙間やクラックが発生したり、セラミックグリーンシートが凹凸形状になったりする。一方、本実施の形態では、スラリー36に熱硬化性樹脂前駆体を含ませて、乾燥時に熱硬化性樹脂前駆体を硬化させて三次元網目構造を生成させ、収縮を小さくすることで前記問題は解決され、配線基板10の平坦性が向上する。従って、セラミック焼結体からなる基材14とする基材層12の一主面12aと、第1導体16の一主面16aとを同一平面上に位置させることが容易である。
【0105】
この場合、スラリー36に使用する溶剤に、熱硬化性樹脂前駆体が硬化する温度での蒸気圧が小さいものを選定し、熱硬化時の溶剤乾燥による収縮を小さくすることが望ましい。室温で硬化する樹脂を用いた場合は、特に作業や装置が簡単になる。
【0106】
ポリウレタン樹脂は、硬化後の弾性を制御し易く、柔軟な成形体も可能となる等の利点を有する。後工程での取り扱いを考えると、あまり硬い成形体は適さない場合があり、熱硬化性樹脂は三次元網目構造をとるので一般に硬いが、ポリウレタン樹脂は、柔軟性のある成形体も可能で、特にテープ状の成形体は、柔軟性が要求される場合が多いため望ましい。また、スラリー性状の制御のため、熱可塑性樹脂を含ませてもよい。後述するように、第1セラミック成形体38には、ビア電極18形成のための孔加工が施されるが、ポリウレタン樹脂を用いているため加工性に優れる。従って、ビア電極18の寸法精度や位置精度が極めて高くなり、配線基板10としての信頼性に優れる。
【0107】
従来においては、熱可塑性樹脂を含む導体ペースト52が、スラリー36を塗布する際に、スラリー36の溶剤に溶解して、導体形状が崩れる。一方、本実施の形態においては、導体ペースト52に熱硬化性樹脂前駆体を含ませているため、耐溶剤性が向上し、導体形状の崩れは生じない。従って、第1導体16の形状精度や位置精度に優れた配線基板10が得られることから、配線基板10としての信頼性に優れる。
【0108】
熱硬化性樹脂前駆体は、硬化後は三次元の網目構造となり、元に戻らないため、硬化後は、溶剤への再溶解性がなくなり、一般に、熱可塑性樹脂よりも耐溶剤性が高い。
【0109】
熱硬化性樹脂前駆体の中では、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂が硬化前プレポリマーの分子量の制御ができ、ペースト性状のコントロールが可能なため、好適である。なお、熱可塑性樹脂をペースト性状の制御のために、熱硬化性樹脂と一緒に含めるようにしてもよい。
【0110】
特に、エポキシ樹脂、フェノール樹脂は、硬化剤が必要なく、加熱するだけで硬化するタイプがあり、導体ペースト52の効率的な使用に適する。つまり、硬化剤の添加が必要な他の熱硬化性樹脂前駆体は、導体ペースト52を印刷する前に、硬化剤を混合する必要があるが、混合すると保存がきかない。従って、印刷後に残った導体ペースト52を回収して保存する必要のある印刷法によって導体ペースト52を印刷する場合は、硬化剤を混合する必要がない熱硬化型エポキシ樹脂、熱硬化型フェノール樹脂が好適である。
【0111】
従来において、熱可塑性樹脂をバインダとするセラミック成形体は、該セラミック成形体の密度ばらつきが発生し易く、そのために、焼成後のセラミック焼結体の寸法ばらつきが大きく、埋設された導体成形体34の焼成寸法のばらつきも大きくなる。一方、本実施の形態においては、熱硬化性樹脂前駆体をバインダに使用して導体成形体34を埋設した第1セラミック成形体38を得ることにより、焼成ばらつきの小さい配線基板10を得ることができる。
【0112】
例えば第1セラミック成形体38の焼成後の寸法は、第1セラミック成形体38のうち、導体成形体34を除く部分の生密度により主に決まる。これは配線基板10の基材14を構成するセラミック焼結体の構造は空隙が非常に少ないのに対し、第1セラミック成形体38の上記部分は空隙が多いため、その空隙量の多少が、焼成中の収縮量を決めるからである。
【0113】
従来の熱可塑性樹脂をバインダとして含むスラリー36は、溶媒を乾燥してセラミック成形体を得るが、乾燥する際の塗工比(スラリー36体積と成形後の成形体体積の比)が大きく、この大きな塗工比が成形体密度のばらつきの原因となる。しかし、本実施の形態のように、熱硬化性樹脂前駆体をスラリー36のバインダとして使用した場合は、溶剤を含んだままでも硬化するため、塗工比を小さくすることができ、生密度のばらつきを小さくすることができる。その結果、焼成後の寸法ばらつきが小さくなり、埋設した第1導体16の寸法ばらつきも小さくすることができる。従って、セラミック焼結体を基材14とする基材層12の一主面12aと、第1導体16の一主面16aとを同一平面上に位置させることが容易になる。
【0114】
次に、穿孔工程S4、ビア充填工程S5及び、その後の積層、焼成工程について、図12A〜図16を参照して説明する。
【0115】
図12Aに示すように、第1セラミック成形体38に対し、ビア電極18を形成するための貫通孔42を穿設する孔加工を行う(穿孔工程S4)。孔加工は、NCパンチで開ける方法、金型で打ち抜く方法(パンチプレス法)、レーザを用いて開ける方法などが挙げられる。なかでも、金型で打ち抜く方法、レーザを用いる方法が好ましい。導体成形体34やセラミック成形体の欠けや破損が生じ難く、孔加工精度にも優れる点で好ましい。レーザを用いて孔加工を行う場合、例えば、炭酸ガスレーザ、YAGレーザ等種々のレーザが適用できるが、なかでも炭酸ガスレーザが好適である。
【0116】
レーザで貫通孔42を穿設する場合、その孔径は、ビア電極18の径が50〜1000μmとなるように調整することが好ましい。このような範囲であれば、レーザによって高精度、且つ配線に対応したビアのピッチで貫通孔42を穿設できるとともに、貫通孔42へ導体ペースト44の充填も容易になる。
【0117】
また、貫通孔42は、レーザLを当てる側、すなわち貫通孔42に対するレーザLの入口側の孔径よりも出口側の孔径が小さくなり易い。従って、導体成形体34側からレーザLを当てて加工することにより、貫通孔42に導体ペースト44を充填して得られるビア電極18の形状が、第1セラミック成形体38において、基材層12の一主面12aから他主面12bに向かって減径する断面台形形状になるように孔加工をすることができる。その結果、導体成形体34による第1導体16とビア電極18とが一体となってリベット形状となり、より一層第1導体16の剥離を低減することができる。
【0118】
次いで、図12Cに示すように、第1セラミック成形体38の導体成形体34が設けられていない側に、導体ペースト44の漏れ防止のためのクリーンペーパ66を敷いた後、貫通孔42に導体ペースト44を例えばスクリーン印刷によって充填し、硬化させる(ビア充填工程S5)。その後、クリーンペーパ66を剥がすことで第1セラミック成形体38を完成させる。
【0119】
また、図13Aに示すように、フイルム48(基体60)と、硬化したスラリー36とによって導体成形体34が挟持された状態の第1セラミック成形体38に対し、フイルム48の露呈している上面から、レーザLを当て、フイルム48ごと貫通孔42を穿設するようにしてもよい。この場合、フイルム48が導体成形体34を押さえているので、レーザLによる孔加工の際に、導体成形体34が飛散することを防止することができる。但し、フイルム48ごと貫通孔42を穿設する場合には、第1セラミック成形体38の孔径よりもフイルム48の孔径が大となり易いため、マスク等を用いるようにしてもよい。
【0120】
次いで、上記した方法と同様に、図13Cに示すように、第1セラミック成形体38の導体成形体34が設けられていない側に、導体ペースト44の漏れ防止のためのクリーンペーパ66を敷いた後、フイルム48の上から貫通孔42に導体ペースト44を例えばスクリーン印刷によって充填し、硬化させる(ビア充填工程S5)。その後、フイルム48及びクリーンペーパ66を剥がすことで第1セラミック成形体38が完成する。
【0121】
ここで、ビア電極18(の一端面18a)と第1導体16(の一主面16a)との材質又は面粗度を異なるようにするには、例えば、ビア電極18となる導体ペースト44と第1導体16となる導体ペースト52とに異なる金属を用いたり、金属粉末の粒径、比表面積、凝集度の異なる金属粉末を用いたりするとよい。
【0122】
一方、図14Aに示すように、導体成形体34が形成されていないフイルム48を鋳込み型54内に設置し、スラリー36を鋳込み型54内に鋳込んだ後に、図14Bに示すように、スラリー36を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)する。その後、フイルム48を離型することによって、図14Cに示すように、導体成形体34を有しない第2セラミック成形体68が得られる。また、第2セラミック成形体68の作製方法として、図15Aに示すように、導体成形体34が形成されていない基体60上に、熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリー36を塗布する方法を用いてもよい。塗布方法は、上述したように、ディスペンサー法や、図10A及び図10Bに示す方法やスピンコート法等を用いることができる。その後、図15Bに示すように、基体60上に塗布されたスラリー36を硬化(室温硬化や乾燥硬化等)させ、さらに、図15Cに示すように、基体60を剥離、除去することによって第2セラミック成形体68が完成する。第2セラミック成形体68についても、図7A〜図8Bの作製方法を採用してもよい。
【0123】
次に、図16に示すように、例えば複数の第1セラミック成形体38と、1つの第2セラミック成形体68を積層して、セラミック積層体46とする。このとき、セラミック積層体46の一主面に、第1セラミック成形体38の一主面、すなわち導体成形体34が露出している面が上面となるように積層する。第1セラミック成形体38の一主面の平坦性が良好となっていることから、セラミック積層体46における一主面(導体成形体34の一主面が露出された面)の平坦性も良好となる。
【0124】
このセラミック積層体46において、複数の第1セラミック成形体38及び第2セラミック成形体68は、スラリー36に含まれる溶剤の一部が残存していてもよい。この場合、硬化後の第1セラミック38及び第2セラミック成形体68は柔軟性を有する。従って、一般に硬くて脆い熱硬化性樹脂前駆体をバインダに使用しても、柔軟性のあるテープ成形体として工程間を搬送させることができ、複数の第1セラミック成形体38及び第2セラミック成形体68を積層しても、積層間に空隙が生じる等の不具合は生じない(積層性の向上)。なお、積層の際の圧力、温度は、デラミネーションや積層体の変形、積層ずれを勘案して適宜設定される。
【0125】
以上のようにして、セラミック積層体46を得た後、図1Aに示すように、導体成形体34が埋め込まれたセラミック積層体46を焼成することによって、セラミック焼結体からなる基材14に複数の第1導体16が三次元構造に埋設され、第1導体16間がビア電極18によって接続された配線基板10が完成する。
【0126】
この場合、焼成前におけるセラミック積層体46の一主面の平坦性が良好となっていることから、焼成後におけるセラミック焼結体を基材14とする基材層12の一主面12aも平滑で平坦な面となり、しかも、基材層12の一主面12aと第1導体16の一主面16aとが同一平面上に存在する形態となる。
【0127】
そして、基材層12の一主面12aに露出する第1導体16上に電子部品が実装される。
【0128】
なお、第2実施形態の配線基板10に係る基材層12、すなわち、ビア電極18の代わりにスルーホールビア電極22を設ける場合には、例えば、第1実施形態のビア充填工程S5において、貫通孔42に充填する導体ペースト44の濃度や充填量等を調整することにより、貫通孔42の孔壁面にのみ導体ペースト44が付着するようにすればよい。
【0129】
次に、第3実施形態に係る配線基板10の製造方法について図17A〜図17Dを参照して説明する。なお、第1実施形態に係る配線基板10の製造方法と、同一の構成については、同一の符号を付し、共通する工程については、その説明を省略する。
【0130】
図17Aに示すように、導体成形体34を形成したフイルム48と、同様に導体成形体34を形成した他のフイルム56とを用意し、フイルム48とフイルム56の表面のうち、導体成形体34が形成された面を互いに対向させて鋳込み型54に設置する。従って、フイルム48に形成された導体成形体34と、フイルム56に形成された導体成形体34とが、対向するようになっている。その後、スラリー36を鋳込み型54内に鋳込んだ後に、図17Bに示すように、硬化(室温硬化や乾燥硬化等)して第3セラミック成形体70を得る。
【0131】
その後、図17Cに示すように、フイルム48とフイルム56に挟持された第3セラミック成形体70を鋳込み型54から離型する。そして、例えば、フイルム48の上面から、レーザLを当て、フイルム48、フイルム56ごと貫通孔42を穿設する。貫通孔42は、フイルム48に形成された(後に第1導体16となる)導体成形体34と、フイルム56に形成された(後に第2導体26となる)導体成形体34とを貫通するように穿設される。
【0132】
次いで、上記した方法と同様に、例えば、フイルム48側に、導体ペースト44の漏れ防止のためのクリーンペーパ66を敷いた後、フイルム56の上から貫通孔42に導体ペースト44を例えばスクリーン印刷によって充填し、硬化させる。その後、フイルム48、フイルム56及びクリーンペーパ66を剥離することで第3セラミック成形体70が完成する。
【0133】
その後、例えば複数の第3セラミック成形体70と、1つの第2セラミック成形体68を積層して、セラミック積層体46とし、焼成することによって、基材層28の一主面28aに第1導体16、他主面28bに第2導体26が設けられ、それぞれが互いにビア電極18によって接続された基材層28が積層された配線基板10が得られる。第3実施形態においては、上記したように、第3セラミック成形体70と、導体を有しない第2セラミック成形体68に貫通孔42を穿設してビア電極18となる導体ペースト44を充填した、第3セラミック成形体70間の接続用セラミック成形体を作製し、第3セラミック成形体70と、前記接続用セラミック成形体とを交互に積層して焼成することによっても配線基板10を得ることができる。
【実施例】
【0134】
(実施例1〜3)
実施例では、第3実施形態で示した一主面28aに第1導体16、他主面28bに第2導体26を有する基材層28からなる配線基板を作製した。先ず、グリーンシート(第3セラミック成形体70)成形用のスラリー36は、主成分原料としてBaTiO3からなる誘電体組成物粉末と多塩基酸エステルからなる揮発性の溶剤とをボールミル混合して準備した。
【0135】
パターン形成用の導体ペースト52は、平均粒子径0.8μmからなるAg粉末100重量部とフェノール樹脂4重量部とをテルピネオールを溶剤として、トリロールミルで混合することにより調製した。
【0136】
また、ビア充填用の導体ペースト44は、平均粒子径0.2μmからなるAg粉末100重量部、ポリビニルブチラール樹脂6重量部、DOP(フタル酸ジオクチル)3重量部を、テルピネオールを溶剤として、トリロールミルで混合することにより調製した。
【0137】
次に、パターン形成用の導体ペースト52を120mm角に切り出したポリエチレンテレフタレート(PET)のフイルム48、56上にスクリーン印刷法によりφ2mm×厚み0.01mmのドット900個のパターンを形成した。その後、導体ペースト52を120℃×30分で硬化させて導体成形体34が形成されたフイルム48、56を得た。
【0138】
次いで、厚み2.0mmで開口部100mm角×外形120mm角の枠の上下に導体成形体34が形成されたフイルム48、56を導体パターンが対向する向きに鋳込み型内に設置する。そして、100重量部のグリーンシート成形用のスラリー36にポリイソシアネート8重量部とポリエチレングリコール3重量部とを加えて攪拌機ですばやく混合し、前記鋳込み型54の枠開口部に注入して、スラリー36を硬化させた。しかる後、鋳込み型54から両面にフイルム48、56が配置された導体成形体34を含む第3セラミック成形体70を取り出した。その後、片方のフイルム48を剥離した後乾燥し、導体成形体34が形成された第3セラミック成形体70を得た。
【0139】
続いて、得られた第3セラミック成形体70を使って、φ2.0mmのドット状の導体成形体34の中央部にフイルム56側から炭酸ガスレーザでφ0.10mmの貫通孔42を形成し、スクリーン印刷法により導体ペースト44を用いてビア充填を行った。フイルム56を剥離後、所定の焼成温度で焼結して実施例1の基材層28を得た。また、実施例1と貫通孔径のみ異なる、φ0.14mmとφ0.18mmの貫通孔42とした実施例2、3の基材層28を得た。
【0140】
(実施例4〜6)
実施例1〜3の炭酸ガスレーザに代わり、プレスパンチによって、貫通孔42を形成した。第3セラミック成形体70のφ2mmのドット状の導体成形体34の中央部にプレスパンチによりφ0.25mmの貫通孔42を形成し、スクリーン印刷法により導体ペースト44を用いてビア充填を行った。フイルム48を剥離後、所定の焼成温度で焼結して実施例4の基材層28を得た。また、実施例4と貫通孔42の径のみ異なる、φ0.40mmとφ0.55mmの貫通孔42とした実施例5、6の基材層28を得た。
【0141】
(比較例1〜6)
主成分原料としてBaTiO3からなる誘電体組成物粉末100重量部とバインダ樹脂としてポリビニルブチラール8重量部と可塑剤としてDOP4重量部とトルエンを主成分とする溶剤とをボールミルで混合してシート成形用のスラリーを得た。得られたスラリーを使って、ドクターブレード法により、厚み0.5mmのグリーンシートを成形し、このグリーンシートから縦横100mm角のグリーンシートを切り出した後、4枚積層した。
【0142】
パターン形成用の導体ペーストは、平均粒子径1μmからなるAg粉末100重量部とポリビニルブチラール4重量部とDOP2重量部とを、テルピネオールを溶剤として、トリロールミルで混合することにより得た。
【0143】
次いで、炭酸ガスレーザによりφ0.1mmの貫通孔を形成し、スクリーン印刷法によりビア電極となる導体ペーストを貫通孔に充填した。その後、φ2mm×厚み0.01mmのドット900個のパターンをビア電極が中央部で覆われるように形成し、所定の焼成温度で焼結して比較例1の配線基板を得た。また、比較例1と貫通孔径のみ異なる、φ0.14mmとφ0.18mmの貫通孔とした比較例2、3の配線基板を得た。なお、ビア充填用の導体ペーストは、実施例と同じ物を用いた。
【0144】
続いて、φ2mm×厚み0.01mmのドット900個のパターンを形成した0.5mmのグリーンシート2枚と、導体のない0.5mmのグリーンシートを2枚、計4枚をパターンが配線基板の上下面に露呈するように積層した。さらに、φ2mmのドットの中央部にφ0.25mm、φ0.40mm,φ0.55mmの貫通孔をプレスパンチにより形成した。その後、スクリーン印刷法によりビア電極となる導体ペーストを貫通孔に充填し、所定の焼成温度で焼結して比較例4〜6の配線基板を得た。
【0145】
(評価)
実施例1〜6及び比較例1〜6の配線基板に対して、−45℃と125℃を各30分、500サイクルの冷熱試験後、以下の評価を行った。
【0146】
実施例1〜6と比較例1〜6に対して、配線基板の上下面に表れる電極間で4端子プローブ法による抵抗測定を行った。各配線基板について計900箇所測定した。実施例1及び比較例1は55mΩ以上、実施例2及び比較例2は50mΩ以上、実施例3及び比較例3は45mΩ以上、実施例4及び比較例4は40mΩ以上、実施例5及び比較例5は35mΩ以上、実施例6及び比較例6は30mΩ以上を不良箇所とした。評価結果を表1に示す。
【0147】
【表1】

【0148】
その結果、実施例1〜6には、不良箇所が生じなかった。一方、比較例1〜6では、不良が生じた。従って、実施例1〜6、すなわち、本発明に係る基材層28からなる配線基板は、ビア電極18と第1及び第2導体16、26との接続の信頼性に優れることが示された。
【0149】
なお、本発明に係る配線基板は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0150】
10、30、40、50…配線基板 12、28…基材層
12a、28a…基材層の一主面 12b、28b…基材層の他主面
14…基材 16…第1導体
16a…第1導体の一主面 18…ビア電極
18a…ビア電極の一端面 18b…ビア電極の他端面
20…最下層 22…スルーホールビア電極
26…第2導体 34…導体成形体
36…スラリー 38…第1セラミック成形体
42…貫通孔 44、52…導体ペースト
46…セラミック積層体 48、56…フイルム
54…鋳込み型 60…基体
68…第2セラミック成形体 70…第3セラミック成形体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の基材層からなる配線基板であって、
前記基材層は、
基材と、
前記基材層の一主面に設けられた第1導体と、
前記第1導体を通って前記基材層に貫設されるビア電極とを有し、
前記基材層の一主面と、前記第1導体の一主面とが、同一平面を形成していることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板において、
前記ビア電極の一端面と、前記基材層の一主面とが、同一平面を形成し、
前記ビア電極の他端面と、前記基材層の他主面とが、同一平面を形成していることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1又は2記載の配線基板において、
前記基材層の他主面に第2導体が設けられるとともに、前記ビア電極が前記第2導体を通って貫設され、且つ前記基材層の他主面と、前記第2導体の一主面とが、同一平面を形成していることを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の配線基板において、
前記ビア電極と、前記第1導体とは、その材質又は面粗度が異なることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の配線基板において、
前記基材は、セラミック焼結体であることを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の配線基板において、
前記基材層が積層されていることを特徴とする配線基板。
【請求項7】
基体上に導体成形体を形成する導体成形工程と、
熱硬化性樹脂前駆体とセラミック粉末と溶剤とが混合されたスラリーを、前記導体成形体を被覆するように供給するスラリー供給工程と、
前記スラリーを硬化させてセラミック成形体を得るセラミック成形工程と、
前記セラミック成形体に対し、その一部を構成する導体成形体を通る貫通孔を穿設する穿孔工程と、
前記貫通孔の少なくとも壁面に導体ペーストを充填するビア充填工程と、
を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項8】
請求項7記載の配線基板の製造方法において、
前記穿孔工程は、前記基体と、硬化した前記スラリーとによって前記導体成形体が挟持された状態の前記セラミック成形体に対し、前記基体ごと前記貫通孔を穿設することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項9】
請求項7又は8記載の配線基板の製造方法において、
レーザ加工によって前記貫通孔を穿設することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項10】
請求項9記載の配線基板の製造方法において、
前記基体の露呈している表面側から前記貫通孔を穿設する工程を含むことを特徴とする配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2012−216583(P2012−216583A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79224(P2011−79224)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】