説明

配線基板

【課題】高密度化に対応した導体ポストを備える配線基板を提供する。
【解決手段】配線基板10は、導体層12と、その上に積層されたソルダーレジスト層13と、層13に設けられた貫通孔131の下方に配置された導体層12aに導通される導体ポスト16と、を備え、ソルダーレジスト層13は熱硬化性樹脂を含み、導体ポスト16は、スズ、銅又は半田を主体とすると共に、貫通孔131内に位置する下部導体ポスト161と、下部導体ポスト161上に位置して、層13より外側に張り出してなる上部導体ポスト162と、を有し、下部導体ポスト161は、その外側面161cに外側合金層165cを備え、導体ポスト16は、外側合金層165cを介して、層13の貫通孔131の内側面131cに密着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板に関する。更に詳しくは、導体ポストを有する配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高密度実装の手法として、例えば、C4(Controlled Collapse Chip Connection)工法が採用されている。C4工法で利用される配線基板は表面がソルダーレジスト層で覆われ、ソルダーレジスト層に必要に応じて穿孔された開口部に立設されたバンプ(導体ポスト)と、配線基板内の導体層と、が電気的に接続されることで、配線基板内外が導通される構造となっている。このようなC4工法で用いられる配線基板に代表されるように、バンプを利用した接続が行われる配線基板においては、高密度化の進行で、昨今のバンプピッチは最小145μmにも達している。しかし、今後も更なる高密度化が進行することが予測され、より狭いバンプピッチ(次々世代でのバンプチップとして、例えば、100μm)が必要となると考えられる。このように、バンプピッチが狭くなるに連れて、ソルダーレジスト層に穿孔される前記開口部の径も小さくなると考えられるが、一方で、必要とされるバンプの高さは今後も維持されると考えられる。即ち、より高いアスペクト比を有する形状のバンプが必要とされると考えられる。
尚、本発明の係る従来技術として下記特許公報1〜3が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7216424号明細書
【特許文献2】米国特許第6229220号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/0029110号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記高密度化に対応した高アスペクト比のバンプの形成には困難を伴う。即ち、一般的なバンプ形成方法としては、半田印刷法及びボール搭載法が知られている。
半田印刷法は、スクリーンマスク22を介在させ、スキージ21を用いてペースト半田30を印刷してバンプを形成する方法である。図7に例示されるように、ソルダーレジスト層13の厚さが薄く、且つ、ソルダーレジスト層13に開口された貫通孔131の大きさが十分である場合には、ペースト半田30を導体層12a上に正常に印刷することができる。
しかし、ソルダーレジスト層13の厚さが大きい場合や、ソルダーレジスト層13に形成された貫通孔131の径が小さい場合には、マスク22自体の製作が難しく、また、その精度を十分に確保し難い。更に、マスク22を形成できたとしても、マスク22に開口される貫通孔131の径が小さいために、マスク22内での目詰まりを起こし易く、ペースト半田30を印刷し難いという問題がある。また、図8に例示されるように、ペースト半田30を印刷できたとしても、印刷されたペースト半田30が導体層12aと接し難いなどの問題がある。
【0005】
一方、ボール搭載法は、予め形成された半田ボール40を導出目的の導体層12a上に接合して、その半田ボール40をバンプとして利用する方法である。図9に例示されるように、ソルダーレジスト層13の厚さが薄く、且つ、ソルダーレジスト層13に開口された貫通孔131の大きさが十分である場合には、半田ボール40を導体層12aと接続することができる。
しかし、ソルダーレジスト層13の厚さが大きい場合や、ソルダーレジスト層13に形成された貫通孔131の径が小さい場合には、貫通孔131の径に合わせた半田ボール40を用いると十分なバンプ高さを確保することができない。一方、図10に例示されるように、バンプの高さを確保するために、半田ボール40の径を大きくすると、半田ボール40の曲率が小さくなるために、ソルダーレジスト層13下の導体層12aに半田ボール40が接することができなくなる(いわゆる「はじき」)という問題がある。また、隣接する半田ボール40同士が接続されてしまう(いわゆる「ブリッジ」)という不具合を生じるおそれもある。
【0006】
これらの従来汎用されている方法に代替し得る方法としてバンプをめっき形成する方法が考えられる。しかし、この方法では、通常、めっき液は樹脂層に対する浸食性を有するために、フォトリソ法を用いて形成されるソルダーレジスト層が十分な耐食性を発揮できない。また、バンプをめっき形成する場合のバンプの概形を決定することとなる型枠層を用いる必要があるものの、この型枠層に形成する開口部と、前記ソルダーレジスト層に形成された開口部と、を十分に一致させて形成することが困難となるという問題がある。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、高密度化に対応した導体ポストを備える配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は以下に示す通りである。
〈1〉導体層と、該導体層上に積層されたソルダーレジスト層と、該ソルダーレジスト層に設けられた貫通孔の下方に配置された導体層に導通される導体ポストと、を備える配線基板であって、
前記ソルダーレジスト層は熱硬化性樹脂を含み、
前記導体ポストは、スズ、銅又は半田を主体とすると共に、前記貫通孔内に位置する下部導体ポストと、該下部導体ポスト上に位置して、前記ソルダーレジスト層より外側に張り出してなる上部導体ポストと、を有し、
前記下部導体ポストは、その外側面に外側合金層を備え、
前記導体ポストは、前記外側合金層を介して、前記ソルダーレジスト層の該貫通孔の内側面に密着されていることを特徴とする配線基板。
〈2〉前記外側合金層は、パラジウム及び銅を含む前記〈1〉に記載の配線基板。
〈3〉前記下部導体ポストの下端面に下端合金層を備える前記〈1〉又は〈2〉に記載の配線基板。
〈4〉前記下端合金層は、パラジウム及び銅を含む前記〈3〉に記載の配線基板。
〈5〉前記下端合金層は、更に、ニッケル及び金を含む前記〈4〉に記載の配線基板。
〈6〉前記外側合金層は、前記下端合金層よりも厚い前記〈3〉乃至〈5〉のうちいずれかに記載の配線基板。
【発明の効果】
【0008】
本発明の配線基板によれば、導体ポスト16の高密度化に対応できる。即ち、従来に比べてアスペクト比(幅に対する高さの割合)が大きな導体ポスト16が形成された配線基板10とすることができる。これにより、ピッチが小さくともソルダーレジスト層の表面から十分な高さを有する導体ポスト16を用いることができる。更に、この導体ポスト16を用いて、配線基板10とこの配線基板10に実装される部品との間で信頼性の高い接続を行うことができる。
外側合金層165cがパラジウム及び銅を含む場合は、ソルダーレジスト層13の貫通孔131の内壁面131cと下部導体ポスト161との間の接合強度に優れ、導体ポスト16の接合強度が従来より優れた配線基板10とすることができる。
下部導体ポスト161の下端面161bに下端合金層165bを備える場合は、導体ポスト161と導体層12aとの接合強度により優れた配線基板10とすることができる。
下端合金層165bがパラジウム及び銅を含む場合は、導体ポスト161と導体層12aとの接合強度に特に優れた配線基板10とすることができる。
下端合金層165bが、更に、ニッケル及び金を含む場合は、導体ポスト161と導体層12aとの接合強度にとりわけ優れた配線基板10とすることができる。
外側合金層165cが下端合金層165bよりも厚い場合は、導体ポスト161と導体層12との接合強度により優れた配線基板10とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本配線基板を説明する模式的な断面図である。
【図2】本配線基板に配設された導体ポストを説明する模式的な断面図である。
【図3】本配線基板に配設された導体ポストを説明する模式的な断面図である。
【図4】本配線基板の製造方法を説明する模式的な工程図である。
【図5】本配線基板の製造方法を説明する図4に続く模式的な工程図である。
【図6】本配線基板の製造方法を説明する図5に続く模式的な工程図である。
【図7】従来の製造方法を説明する模式的な説明図である。
【図8】従来の製造方法における問題点を説明する模式的な説明図である。
【図9】従来の製造方法を説明する模式的な他の説明図である。
【図10】従来の製造方法における問題点を説明する模式的な他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について、図1〜6を参照しながら以下詳細に説明する。
本発明の配線基板10は、導体層12と、該導体層12上に積層されたソルダーレジスト層13と、該ソルダーレジスト層13に設けられた貫通孔131の下方に配置された導体層12aに導通される導体ポスト16と、を備える配線基板10であって、
前記ソルダーレジスト層13は熱硬化性樹脂を含み、
前記導体ポスト16は、スズ、銅又は半田を主体とすると共に、前記貫通孔131内に位置する下部導体ポスト161と、該下部導体ポスト161上に位置して、前記ソルダーレジスト層13より外側に張り出してなる上部導体ポスト162と、を有し、
前記下部導体ポスト161は、その外側面161cに外側合金層165cを備え、
前記導体ポスト16は、前記外側合金層165cを介して、前記ソルダーレジスト層13の該貫通孔131の内側面131cに密着されていることを特徴とする。
【0011】
前記「配線基板(10)」は、導体層12と、ソルダーレジスト層13と、導体ポスト16と、を備える。
このうち、前記「導体層(12)」は、配線基板10において導体回路等として機能される層である。これらの導体層12は、一連(即ち、連続した一枚)の導体からなってもよく、同一平面内に配設された複数の導体からなってもよい。また、導体層12のうち、後述するソルダーレジスト層13に穿設された貫通孔131の下方に配置された導体層は導体層12aである。この導体層12aは、導体層12内の独立した1つの導体であってもよく、連続する導体の一部であってもよい。また、導体層12の形状等は特に限定されない。また、その材質も特に限定されないが、銅、銅合金、アルミニウム及びアルミニウム合金等であることが好ましく、このうち、通常、銅が用いられる。
【0012】
前記「ソルダーレジスト層(13)」は、導体層12上に積層された層である。通常、ソルダーレジスト層13は、この配線基板に部品を実装する際に利用されるリフロー工程において、半田が意図しない部位へ付着することを防止するための層として機能される。このソルダーレジスト層13は、導体層12との間に絶縁層等の他の層を介在していてもよい。
更に、本発明の配線基板のソルダーレジスト層13は熱硬化性樹脂を含む。ソルダーレジスト層13が熱硬化性樹脂を含むことにより、リフロー工程における不要な半田の付着を防止しながら、めっき液に対する耐性(特に耐アルカリ性)を付与できる。これにより、ソルダーレジスト層13下の導体層12aの表面に無電解めっき又は電解めっきの少なくとも一方を形成することが可能となる。
このソルダーレジスト層13の厚さは特に限定されないが、1μm以上100μm以下であることが好ましい。ソルダーレジスト層13の厚さがこの範囲である場合には、本発明の構成を有することによる前記種々の効果をより得易いからである。このソルダーレジスト層13の厚さは5μm以上50μm以下がより好ましく、10μm以上40μm以下が特に好ましい。
【0013】
前記熱硬化性樹脂の種類は特に限定されないが、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、シアネート樹脂及びポリアミド樹脂等が挙げられる。これらのなかでも特にエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、などのノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変成した脂環式エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ソルダーレジスト層13に含まれる熱硬化性樹脂の量は特に限定されないが、通常、ソルダーレジスト層13を構成する有機材料中に最も多く(体積として最も多く含まれる)含まれる。即ち、ソルダーレジスト層13を構成する有機材料において熱硬化性樹脂が主体となっている。より具体的には、ソルダーレジスト層13を構成する有機材料を100体積%において熱硬化性樹脂は50体積%を超え(100体積%であってもよい)で含まれることが好ましい。このソルダーレジスト層13を構成する有機材料中における熱硬化性樹脂の含有量は特に限定されないが、より好ましくは50体積%を超え且つ100体積%以下とすることができ、更に好ましくは80体積%以上且つ100体積%以下とすることができる。また、ソルダーレジスト層13に含むことができる熱硬化性樹脂以外の他の有機材料としては、ゴム及び熱可塑性樹脂等が挙げられる。

【0014】
また、ソルダーレジスト層には、上記熱硬化性樹脂を含む有機材料以外に充填剤(シリカ、アルミナ等の各種フィラー、通常、無機材料である)等が含まれてもよい。充填剤が含まれる場合、ソルダーレジスト層13全体を100質量%とした場合に、充填剤は70質量%以下である。
【0015】
また、ソルダーレジスト層13は、貫通孔131を有し、この貫通孔131の下方には導体層12aが位置されている。そして、貫通孔131を介して、導体層12aは導体ポスト16と接続されて、ソルダーレジスト層13外へと導通される。
貫通孔131の平面形状は特に限定されず、円形状であってもよく、四角形等の多角形状であってもよく、更にその他の形状であってもよいが、円形状が好ましい。また、この貫通孔131の大きさも特に限定されないが、通常、導体層12aの一部のみが露出される大きさ(即ち、導体層12aの全部が露出されないことが好ましい)である。更に、通常、貫通孔131の開口の大きさは下部導体ポスト161に等しく、貫通孔131の深さはソルダーレジスト層13の深さに等しい。また、貫通孔131の直径が小さいほど本発明の効果をより得やすく、より具体的には、貫通孔131の平面形状が円形状である場合、その直径d161は10μm以上300μm以下であると共に、深さ(ソルダーレジスト層13の厚さ)は1μm以上100μm以下であることが好ましい。このような貫通孔131を備える配線基板10では、本発明の効果をより得易い。この直径d161は10μm以上150μm以下であると共に、深さは5μm以上50μm以下であることがより好ましく、直径は10μm以上100μm以下であると共に、深さは10μm以上40μm以下であることが特に好ましい。
【0016】
前記「導体ポスト(16)」は、ソルダーレジスト層13に設けられた貫通孔131の下方に配置された導体層12aに導通される導体である。そして、導体ポスト16は、貫通孔131の下方に配置された導体層12aをソルダーレジスト層13外へ導出する導体として機能できる。
また、導体ポスト16は、スズ、銅又は半田を主体とする導体である。導体ポスト16が、スズを主体とするとは、導体ポスト全体を100質量%とした場合に、95質量%以上(好ましくは97質量%以上、100質量%であってもよい)のSnを含むことを意味する。また、Sn以外の他の金属元素を含む場合、他の金属元素としては、Cu、Ag、Zn、In、Bi、Sb及びPb等が挙げられ、これらは1種のみが含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。但し、後述する外側合金層165c及び下端合金層165bを除いて導体ポスト16には、他の元素としてPdは含まれない。
同様に、導体ポスト16が、銅を主体とするとは、導体ポスト全体を100質量%とした場合に、95質量%以上(好ましくは97質量%以上、100質量%であってもよい)のCuを含むことを意味する。また、Cu以外の他の金属元素を含む場合、他の金属元素としては、Sn等が挙げられ、これらは1種のみが含まれてもよく、2種以上が含まれてもよい。但し、後述する外側合金層165c及び下端合金層165bを除いて導体ポスト16には、他の元素としてPdは含まれない。
【0017】
更に、導体ポスト16が、半田を主体とするとは、Sn、Ag、Cu、Zn、Al、Ni、Ge、Bi、In、Pb及びAuの群から選ばれる2種以上の金属元素の合計含有量が、導体ポスト全体を100質量%とした場合に、95質量%以上(好ましくは97質量%以上、100質量%であってもよい)であることを意味する。より具体的には、導体ポスト16を構成する半田として、SnPb半田、SnBi半田、SnAgCu半田、SnZnBi半田、SnCu半田、SnAgInBi半田、SnZnAl半田、SnCuNiGe半田等が挙げられる。前記半田を構成する金属元素以外の他の金属元素を含んでもよいが、後述する外側合金層165c及び下端合金層165bを除いて導体ポスト16には、他の元素としてPdは含まれない。尚、導体ポスト16の融点は、通常、180℃以上250℃以下である。
【0018】
また、導体ポスト16は、貫通孔131内に位置する下部導体ポスト161と、下部導体ポスト161上に位置して、ソルダーレジスト層13より外側に張り出してなる上部導体ポスト162と、を有する形状を成している。ソルダーレジスト層13より外側に張り出してなるとは、換言すれば、ソルダーレジスト層13の外側へ向かって上部導体ポスト162が突出していることを意味する。これにより、導体ポスト16は、配線基板10の表面から突出して、部品を実装できる構成となっている。
この上部導体ポスト162の形状(平面形状及び側面形状等を含む)は特に限定されないが、例えば、平面形状は円形状、四角形状等とすることができる。また、側面形状(側断面の形状)は、略円形状、半円形状、四角形状等とすることができる。
【0019】
尚、図3に示すように、導体ポスト16は、下部導体ポスト161の上端面161aと、上部導体ポスト162の下端面162bとは、通常、同じ形状である。特に、平面形状が円形状である場合には、下部導体ポスト161の上端面161aの直径d161と、上部導体ポスト162の下端面162bの直径d162とが同じである。このため、上部導体ポスト162の下端面162bと、ソルダーレジスト層13の外表面132とは密着されていない。
更に、上部導体ポスト162の平面形状が円形状である場合には、通常、上部導体ポスト162の下端面162bの直径d162は、上部導体ポスト162の最大径L162よりも小さく形成される。
【0020】
前記「外側合金層(165c)」は、下部導体ポスト161の外側面161cに備える合金層である。この合金層とは、導体ポスト16を主体的に構成するスズ、銅又は半田以外の金属成分(例えば、Pd、Ni及びAuから選ばれる少なくとも1種の金属元素)が拡散して含有された導体部分を意味し、導体ポスト16の断面をEPMAにより1000倍以上に拡大して観察した場合に1層の合金層を認めることができる。
外側合金層165cの厚さは、図3に示すように、下部導体ポスト161の高さを3等分した中央部を更に5等分する4本の等分線T165cの平均値長さである。
【0021】
また、合金層に拡散された金属元素(以下、単に「拡散金属元素」)としては、例えば、導体ポスト16がスズ(Sn)を主体とする場合には、Pd、Cu及びNi等が拡散金属元素として挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらのなかでも、Pdが含まれることが好ましい。
更に、例えば、導体ポスト16が銅(Cu)を主体とする場合には、Pd、Sn、Ni等が拡散金属元素として挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらのなかでも、Pdが含まれることが好ましい。
また、例えば、導体ポスト16が半田を主体とする場合には、半田を構成する金属元素(半田金属元素)として含有されるSn、Ag、Cu、Zn、Al、Ni、Ge、Bi、In、Pb、Auの群から選ばれる2種以上の金属元素以外の金属元素であって、Pd、Ni等が拡散金属元素として挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらのなかでも、特に半田金属元素としてPdが含まれず、且つ、拡散金属元素として、Pdが含有されることが好ましい。
【0022】
また、本発明の配線基板10は、前記外側合金層165c以外に、下部導体ポスト161の下端面161bに下端合金層165bを備えることが好ましい。この下端合金層165bを備え、更には、導体ポスト16が下端合金層16を介して導体層12aと密着されることで接合強度向上効果を特に得易い。
【0023】
下端合金層165bは、下部導体ポスト161の下端面161bに備える合金層である。この合金層は、前記外側合金層165cと同様に、導体ポスト16を主体的に構成するスズ、銅又は半田以外の金属成分(例えば、Pd、Ni及びAuから選ばれる少なくとも1種の金属元素)が拡散して含有された導体部分を意味し、導体ポスト16の断面をEPMAにより1000倍以上に拡大して観察した場合に1層の合金層を認めることができる。
下端合金層165bの厚さとは、前記外側合金層165cにおけると同様に、下部導体ポスト161の幅を3等分した中央部を更に5等分する4本の等分線の平均値長さである。
【0024】
また、合金層内における拡散金属元素としては、例えば、導体ポスト16がスズ(Sn)を主体とする場合には、Pd、Cu、Ni、Au及びAg等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらのなかでも、特にPd、Cu、Ni及びAuが好ましく、更にはPd及びCuが特に好ましい。
更に、例えば、導体ポスト16が銅(Cu)を主体とする場合には、Pd、Sn、Ni、Au及びAg等が拡散金属元素として挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらのなかでも、特にPd、Ni及びAuが好ましい。
また、例えば、導体ポスト16が半田を主体とする場合には、半田を構成する半田金属元素として含有されるSn、Ag、Cu、Zn、Al、Ni、Ge、Bi、In、Pb及びAuの群から選ばれる2種以上の金属元素以外の金属元素であって、Pd、Ni及びAu等が拡散金属元素として挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよいが、これらのなかでも、特に半田金属元素としてPdが含まれず、且つ、拡散金属元素として、Pdが含有されることが好ましく、更には、半田金属元素としてPd、Ni及びAuが含まれず、且つ、拡散金属元素として、Pd、Ni及びAuが含有されることが好ましい。
【0025】
更に、合金層165(外側合金層165c及び下端合金層165b)のうちの外側合金層165cは、合金層165のうちの下端合金層165bよりも厚いものとすることが好ましい。これにより、より優れた接合強度を有する導体ポスト16とすることができる。
【0026】
前記合金層165に含まれ得るパラジウムは、無電解めっき層14の形成を促すために予め施される処理に起因する成分であり、通常、パラジウムを含む触媒として塗布され、ソルダーレジスト層13に穿孔された貫通孔131の内側面131cに形成される無電解めっき層14(図6の工程PR9後における形態等を参照)に含まれることとなる。そして、この無電解めっき層14は、後述する加熱等の処理により導体ポスト16の一部となるため、下部導体ポスト161の外側面161cにパラジウムが含まれることとなり、導体ポスト16の一部としてソルダーレジスト層13に穿孔された貫通孔131の内側面131cとの接合強度を強化する機能を発揮できる。また、配線基板10の製造過程で無電解めっき層14と導体ポスト16とがこれらの界面において合金化(拡散金属元素の拡散を生じて合金層が形成されること)されるような加熱が施される(即ち、導体ポスト16の融点以上であれば良いが、例えば、250℃以上の加温)ことにより、配線基板10内において、無電解めっき層14自体は存在しなくなり、導体ポスト16の外側面を構成する外側合金層165c(図3参照)として、その内部にパラジウムが含有されることとなる。
【0027】
更に、前記下部導体ポスト161のうちの導体層12aとの密着部位である下端合金層165bには、ニッケル及び金を含むことができる。この下端合金層165bに、ニッケル及び金が含まれることにより、下部導体ポスト161と導体層12aとの接合強度が向上される。このニッケル及び金は、後述する配線基板の製造方法における介在層17を形成することにより、下端合金層165bに含有させることができる。
この下端合金層165bには、ニッケル及び金以外にも、他の成分を含有することができる。他の成分としては、パラジウム等が挙げられる。特に導体ポスト16がスズ又は半田を主体とする場合、この下端合金層165bに、ニッケル及び金が同時に含有されることにより、下端合金層165bにおいて、接合強度の低下要因となる成分(例えば、Cu6:Sn5の組成比で各金属元素が含まれる成分)の形成を効果的に抑制できる。その結果、より優れた接合強度を有する導体ポスト16が得られる。
【0028】
また、配線基板は、ソルダーレジスト層、導体層及び導体ポスト以外にも他の構成を備えることができる。他の構成としては、コア基板、絶縁層、内装部品等が挙げられる。
このうち、コア基板は、絶縁材料から構成され、通常、板状体である。また、配線基板10の厚さ方向における中心部をなすことができる。コア基板を構成する絶縁材料としては絶縁性樹脂が好ましく、例えば、エポキシ樹脂やビスマレイミド−トリアジン樹脂等が挙げられる。また、コア基板には、補強材(ガラス繊維等の補強繊維)及び充填剤(シリカ、アルミナ等の各種フィラー)等が含まれてもよい。即ち、例えば、コア基板としては、ガラス繊維強化エポキシ樹脂等の繊維強化樹脂板、ビスマレイミド−トリアジン樹脂板等の耐熱性樹脂板などを用いることができる。また、このコア基板は、複層化されていてもよく、更には、内部に導体層(内層パターン)を有していてもよい。また、絶縁層は、コア基板上に積層された導体層間を絶縁する機能を有する層である。この絶縁層は、前記コア基板を構成する絶縁材料と同様の絶縁材料から構成できる。
【0029】
更に、本発明の配線基板は、その内部に収容部を備える場合には、収容部内に内装部品を有することができる。
収容部の平面形状は特に限定されず、例えば、略四角形(四角形、角部が面取りされた四角形等が含まれる)であってもよく、略円形(真円形状、楕円形状等が含まれる)などであってもよい。また、前記内装部品としては、コンデンサ、インダクタ、フィルタ、抵抗及びトランジスタ等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、コンデンサが好ましく、特に積層セラミックコンデンサが好適である。更に、収容部内に内装された内装部品と収容部との間隙には、内装部品とコア基板との熱膨張係特性を緩和する機能を有する絶縁材が充填されてなる充填部を有することができる。通常、充填部は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂等の樹脂からなるか、又は、これらの樹脂とシリカ及びアルミナ等の低熱膨張性セラミック;チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム及びチタン酸鉛等の誘電性セラミック;窒化アルミナ、窒化ホウ素、炭化硅素、窒化珪素等の耐熱性セラミック;ホウケイ酸系ガラス等のガラスなどの無機材料からなる無機フィラーと、の混合物からなる。
【0030】
[2]配線基板の製造方法
本発明の配線基板を製造する場合、その製造方法は特に限定されないが、以下の方法で得ることができる。即ち、ソルダーレジスト層形成工程PR1と、第1貫通孔穿設工程PR2と、無電解めっき層形成工程PR4と、フォトレジスト層形成工程PR5と、第2貫通孔穿設工程PR6と、導体ポスト形成工程PR7と、フォトレジスト層除去工程PR8と、導体ポスト加熱工程PR10と、をこの順に備える配線基板の製造方法により得ることができる。
【0031】
前記「ソルダーレジスト層形成工程(PR1)」は、表面に導体層12を備えた素基板20のその表面(導体層12は、素基板20の当該表面の全面に形成されていてもよいが、通常、当該表面の一部に形成されている)に、熱硬化性樹脂を含むソルダーレジスト層13を形成する工程である。素基板20の構成は特に限定されないが、導体層12以外に、コア基板及び絶縁層等を備えることができる。即ち、例えば、ガラスエポキシをコア11とした両面銅張り板の表面導体層がパターニングされてなる導体層12を備える基板を素基板20として利用できる。更に、例えば、ガラスエポキシをコアとした両面銅張り板をコア基板とし、その表面に順次ビルドアップされた絶縁層及び各絶縁層の層間で接続された導体層を備え、且つ、最表面にパターニングされた導体層12が配置された素基板20を用いることができる。
【0032】
素基板20上にソルダーレジスト層13を形成する方法は特に限定されず、(1)液状のソルダーレジスト組成物を素基板20の表面に塗布した後、必要に応じて乾燥、硬化(半硬化)を行って得ることができる。更に、(2)ソルダーレジスト層13となるドライフィルムを素基板20の表面に貼着した後、必要に応じて乾燥、硬化(半硬化)を行って得ることができる。また、前記(1)の方法を利用する場合には、液状のソルダーレジスト組成物は、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布方法により素基板20上に塗布できる。尚、ソルダーレジスト層13の厚さについては、前述の通りである。
【0033】
前記「第1貫通孔穿設工程(PR2)」は、ソルダーレジスト層13に第1貫通孔131を穿設する工程である。この工程では、フォトリソグラフィー法を用いて第1貫通孔131を形成してもよく、また、レーザー穿孔法を用いて第1貫通孔131を形成してもよい。尚、第1貫通孔131については、前述のソルダーレジスト層13に形成された貫通孔131における記載をそのまま適用できる。
【0034】
前記「無電解めっき層形成工程(PR4)」は、第1貫通孔穿設工程PR2後であり、且つ、フォトレジスト層形成工程PR5前に、第1貫通孔131内に、パラジウムを含む触媒を塗布してから銅を含む無電解めっき層14を形成する工程である。これにより、無電解めっき層14が形成され、後述する工程10を経て、下部導体ポスト161の外側面131cにパラジウムが含まれた外側合金層165cを得ることができる。
【0035】
前記パラジウムを含む触媒は、塩化パラジウムと塩酸と塩酸との混合液にアルカリを組み合わせたPdCl水溶液や、塩化パラジウムと塩化第一スズと塩酸とを組み合わせたSn−Pdコロイド溶液等の液体を必要な表面に塗布、又は、基板を浸漬することでこれらの溶液を付着させた後、乾燥させることで形成できる。
また、前記無電解めっき層14は、銅、ニッケル及びスズ等のうちの少なくとも1種を含む導電性金属から構成できる。この無電解めっき層14としては、銅からなる無電解銅めっき層14であることが好ましい。無電解銅めっき層14は、銅塩(CuSO等)、還元剤(ホルムアルデヒド等)、錯化剤(ロッシェル塩、EDTA等)、pH調整剤(NaOH、KOH等)、添加剤(ポリエチレングリコール、ジピリジル等)などを含む無電解銅めっき液に浸漬することにより形成できる。
【0036】
前記「フォトレジスト層形成工程(PR5)」は、これまでに得られた素基板20を覆うようにフォトレジスト層15を形成する工程である。即ち、少なくとも第1貫通孔131が穿孔されたソルダーレジスト層13上に、直接的に、又は、他の層を介して間接的に、フォトレジスト層15を形成する工程である。
フォトレジスト層15を形成する方法は特に限定されず、(1)液状のフォトレジスト組成物を、ソルダーレジスト層13上の表面に直接的に又は他の層を介して間接的に、塗布した後、必要に応じて乾燥、硬化(半硬化)を行って得ることができる。更に、(2)フォトレジスト層15となるドライフィルムを、ソルダーレジスト層13上の表面に直接的に又は他の層を介して間接的に、貼着した後、必要に応じて乾燥、硬化(半硬化)を行って得ることができる。前記(1)の方法を利用する場合には、液状のフォトレジスト組成物は、回転塗布、流延塗布、ロール塗布等の適宜の塗布方法により塗布できる。一方、前記(2)の方法を利用する場合には、ドライフィルムを押圧して密着させることができる。この場合には、バッチ式プレス機で行ってもよいが、製造ラインを流通させながら押圧を行うことができるために、ローラー式プレス機等を用いることができる。
【0037】
前記フォトレジスト層15の厚さは特に限定されないが、1μm以上500μm以下であることが好ましい。フォトレジスト層15の厚さがこの範囲である場合には、上部導体ポスト162をソルダーレジスト層13より外側へ十分に張り出して形成できると共に、導体ポスト16を介した外部との良好な接続を得ることができる。このソルダーレジスト層13の厚さは5μm以上300μm以下がより好ましく、10μm以上100μm以下が特に好ましい。
【0038】
前記「第2貫通孔穿設工程(PR6)」は、フォトリソグラフィー法を用いて第1貫通孔131に連通されると共に、第1貫通孔131と略同径(通常、第1貫通孔の孔径Aと、第2貫通孔の孔径Bと、の比A/Bにおいて0.8以上1.0未満の範囲)の第2貫通孔151をフォトレジスト層15に穿設する工程である。前記第2貫通孔151は、フォトレジスト層15に穿孔された貫通孔であり、ソルダーレジスト層13まで貫通された孔である。また、第2貫通孔151は、導体ポスト16のうち、下部導体ポスト161上に位置して、ソルダーレジスト層13より外側に張り出してなる上部導体ポスト162を形成するための型枠となる孔である。
【0039】
前記「導体ポスト形成工程(PR7)」は、第1貫通孔131及び第2貫通孔151の両孔内に、スズ、銅又は半田を主体とする導体ポスト16をめっき形成する工程である。この工程PR7では、どのようなめっき形成手段を用いてもよい。即ち、例えば、電解めっきで導体ポスト16を形成してもよく、無電解めっきで導体ポスト16を形成してもよい。この導体ポスト形成工程PR7では、導体ポスト16をめっき形成するために、前述のように、スズ、銅又は半田を主体とする導体となる。スズ、銅又は半田を主体とすることについては、前記導体ポスト16における同記載についての説明をそのまま適用できる。
【0040】
前記「フォトレジスト層除去工程(PR8)」は、フォトレジスト層15を除去する工程である。即ち、フォトレジスト層15を除去すると共に、導体ポスト16を基板上に露出させる工程PR8である。フォトレジスト層15の除去はどのような方法で行ってもよく、例えば、レーザーや熱を加える等して焼失させて(アッシングして)もよく、また、溶剤等により溶解除去してもよい。特にフォトレジストとして、ポジ型フォトレジストを用いた場合には、溶剤により簡便に除去することができる。
【0041】
前記「導体ポスト加熱工程(PR10)」は、フォトレジスト層除去工程PR8の後に、導体ポスト16を加熱(リフローを含む)する工程である。この導体ポスト加熱工程PR10は、導体ポスト形成工程PR7において、第1貫通孔131及び第2貫通孔151の両孔内に、スズ等からなる導体ポスト16をめっき形成した場合に効果的に機能する工程である。
リフロー時の最高到達温度は、導体ポストの融点よりも30℃以上高いことが好ましく、この導体ポスト加熱工程PR10を行うことにより、導体ポスト形成工程PR7以前に、無電解めっき層14及び介在層17等が予め形成されていた場合に、導体ポスト16の表面にこれらの層を構成する成分が取り込まれた合金層165を形成できる。合金層165が形成されることにより、導体ポスト16がより強固に配設された配線基板10を得ることができる。
【0042】
更に、この導体ポスト加熱工程PR10を行うことにより、工程PR10以前の工程までに形成された導体ポスト16の形状を補正することができる。即ち、この加熱により、導体ポスト16が適度に溶解されると共に、溶解された上部導体ポスト162は、その表面張力によって上部導体ポスト162の形状の歪みを補正でき、丸みを帯びさせることができる。更には、セルフアライメント効果により、導体層12aと軸中心を合わせるように上部導体ポスト162の位置を補正できる。これらの作用により、より信頼性に優れた導体ポスト16を有する配線基板10を得ることができる。
また、図6の工程PR9後として例示されるように、上部導体ポスト162の下端面162bとソルダーレジスト層13の表面132との間に、無電解めっき層14が形成されている場合には、特にこれらの間での密着性を向上させることができる。
【0043】
導体ポスト加熱工程PR10における加熱条件などは、最高到達温度が導体ポスト16の融点以上であれば良く、特に限定されないが、例えば、窒素雰囲気下において、温度100℃以上400℃以下にリフローし導体ポスト16を加熱溶融するものであることが好ましい。この範囲の温度であれば、前記合金層165の形成を適度に促進しつつ、前記セルフアライメント効果をも得ることができる。この温度は150℃以上300℃以下がより好ましく、180℃以上260℃以下が特に好ましい。
【0044】
本発明の配線基板の製造方法では、前記各工程以外にも他の工程を備えることができる。他の工程としては、介在層形成工程PR3等が挙げられる。これらの工程は、1種のみ用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記「介在層形成工程(PR3)」は、無電解めっき層形成工程PR4前に、第1貫通孔131内に露出された導体層12aの表面に、ニッケル及び金を含む導電性の介在層17を形成する工程である。無電解めっき層14を形成する前に、下地層としてこの介在層17を、無電解めっき層14と導体層12aとの間に介在させることにより、無電解めっき層14が合金層165となる際の接合強度を低下させる要因となる成分(例えば、Cu6:Sn5の組成比で各金属元素が含まれる成分等)の形成を効果的に抑制できる。その結果、より優れた接合強度を有する導体ポスト16を有する配線基板10を得ることができる。この介在層17は、例えば、無電解ニッケルめっきを施し、無電解ニッケルめっき層を形成した後、無電解金めっきを施すことで、無電解ニッケルめっき層上に無電解金めっき層を形成して得ることができる。
【0046】
この工程PR3で形成する介在層17は、ニッケル及び金を含む導電性を有する材料からなればよく、その組成などは特に限定されないが、例えば、介在層17を無電解ニッケルめっき層及び無電解金めっき層により形成する場合、各層それぞれに含まれるニッケル及び金の含有量は、無電解ニッケルめっき層全体を100質量%とした場合に、ニッケルは90〜95質量%であることが好ましい。さらに介在層17における無電解金めっき層全体を100質量%とした場合に、金は95〜100質量%であることが好ましい。この範囲では、前記接合強度を低下させる要因となる成分の形成を効果的に抑制できる。
また、介在層17の厚さも特に限定されないが、1μm以上20μm以下であることが好ましい。介在層17の厚さがこの範囲である場合には、前記接合強度を低下させる要因となる成分の形成をより効果的に抑制できる。この介在層17の厚さは3μm以上15μm以下がより好ましく、6μm以上12μm以下が特に好ましい。
【0047】
本発明の方法では、前記各工程以外にも、他の工程を備えることができる。他の工程としては、デスミア工程が挙げられる。デスミア工程は、第1貫通孔131を形成した後、及び、第2貫通孔151を形成した後、等に行うことができる。このデスミア工程を行うことで、貫通孔内の残留物除去することができる。
更に、図6の工程PR9として例示されるように、無電解めっき層14のうち表面に導体ポスト16が形成されず、無電解めっき層14が表面に露出したままの不要な部位をエッチング等により除去する無電解めっき層除去工程PR9が挙げられる。
これらの各工程は、1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【実施例】
【0048】
以下、本発明の配線基板10について実施例により具体的に説明する。但し、本発明は本実施例において利用する条件等に拘束されるものではない。
【0049】
(1)配線基板10
本実施例で製造する配線基板10(図1参照)は、コア基板11の一面側に積層された導体層12と、この導体層12上に積層されたソルダーレジスト層13と、ソルダーレジスト層13に設けられた貫通孔131の下方に配置された導体層12aに導通される導体ポスト16と、を備える。
コア基板11は、厚さ0.8mmのガラスエポキシ(ガラス繊維を芯材として含むエポキシ樹脂)からなる。また、導体層12は、コア基板11の一面に貼着された、厚さ12μmの銅箔をパターニングしてなる。
更に、ソルダーレジスト層13は、厚さ21μmであり、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂(ソルダーレジスト層13は、40質量%のシリカからなるフィラーと、60質量%の有機材料とを含む、更に、有機材料は、エポキシ樹脂をその全体100体積%に対して、80体積%含有する)を含む。ソルダーレジスト層13に穿孔された貫通孔131は、口径64μmの円形状であり、ソルダーレジスト層13の層下の導体層12aまで表裏に貫通されている。
【0050】
導体ポスト16は、貫通孔131内を充塞してなり、直径(d161)64mm且つ高さ21μmである下部導体ポスト161と、この下部導体ポスト161の上に位置する下端面直径(d162)64mm、最大径(L162)74mm、且つ高さ(最も高い位置)58μmの上部導体ポスト162と、からなる。
また、下部導体ポスト161は、外側161cに平均厚さ2μmの外側合金層165cを備え、且つ、下端161bに平均厚さ1μmの下端合金層165bを備える。即ち、外側合金層165cは下端合金層165bの2倍と厚く形成されている。
更に、導体ポスト(合金層165を含む)は、その全体を100質量%とした場合に95質量%のスズを含む。残部は、合金層165を構成する成分として含まれたパラジウム、銅、ニッケル及び金である。
【0051】
以下、この配線基板10の製造方法を図4〜6を用いて説明する。尚、各工程における製造途中の基板についての各々異なる名称を用いるのは煩雑であるため、配線基板10となる以前の各工程における基板は全て素基板20という。
図4に示す、工程PR1以前の素基板20を用意する。この素基板20は、厚さ0.8mmのガラスエポキシ(ガラス繊維を芯材として含むエポキシ樹脂)からなるコア基板11と、コア基板11の一面に貼着された厚さ12μmの銅箔がパターニングされてなる導体層12と、を備える。
【0052】
(2)ソルダーレジスト層形成工程PR1
前記(1)の素基板20の導体層12を備える側の表面に、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂を含むフィルム状ソルダーレジスト層形成用組成物を貼着した後、加熱硬化させ、厚さ21μmの熱硬化性樹脂を含むソルダーレジスト層13を得る。
【0053】
(3)第1貫通孔穿設工程PR2
前記(2)で得られたソルダーレジスト層13に表面側からレーザーを照射し、直径60μmの第1貫通孔131を穿孔する。これにより、ソルダーレジスト層13下の導通が必要な導体層12aが露出される。また、その後、貫通孔131内のスミアを除去するためにデスミア処理を行う。
【0054】
(4)介在層形成工程PR3
前記(3)までに得られたデスミア処理済みの素基板20のソルダーレジスト層13下の露出された導体層12aの表面に、無電解ニッケルめっきにより無電解ニッケルめっき層を形成した後、無電解金めっきにより無電解金めっき層を形成することにより、ニッケル及び金を含む導電性の介在層17を形成する。得られる介在層17は、無電解ニッケルめっき層全体を100質量%とした場合にニッケルを93質量%、無電解金めっき層全体を100質量%とした場合、金を100質量%、各々含有し、厚さが10μmである。
【0055】
(5)無電解めっき層形成工程PR4
前記(4)までに得られた介在層17を備える素基板20の表面(ソルダーレジスト層13を備える側)の全面(貫通孔131内を含む)に、スズ塩及び塩化ナトリウム等を含むパラジウム触媒溶液に素基板20を浸漬した後、乾燥させて、パラジウムを含む触媒核を形成する。次いで、ニッケル塩、硫酸銅、水酸化ナトリウム、キレート剤、錯化剤等を含む無電解Cuメッキ液に前記触媒核を形成した素基板20を浸漬した後、乾燥させて、無電解めっき層14を形成する。得られる無電解銅めっき層14は、厚さが0.7μmである。
【0056】
(6)フォトレジスト層形成工程PR5
前記(5)までに得られた素基板20の無電解銅めっき層14が形成された表面に、ドライフィルム式の厚さが75μmのフォトレジスト層15を圧着する。
【0057】
(7)第2貫通孔穿設工程PR6
前記(6)までに得られた素基板20の表面にフォトレジスト層15が積層された積層体に、フォトリソグラフィー法を用いて第1貫通孔131に連通され、且つ、第1貫通孔131と同径の第2貫通孔151を穿設する。即ち、露光工程及び現像工程等を経て第2貫通孔151を形成する。これにより、フォトレジスト層15下の無電解銅めっき層14の表面(一部表面)が第2貫通孔151内に露出される。
【0058】
(8)導体ポスト形成工程PR7
前記(7)までに得られた第2貫通孔151がフォトレジスト層15に形成された積層体を、無電解めっき液に浸漬して、電解めっきを行い、第1貫通孔131及び第2貫通孔151の両孔内をスズめっきで充塞して、導体ポスト16を形成する。
【0059】
(9)フォトレジスト層除去工程PR8
前記(8)までに得られた導体ポスト16が形成された積層体の表面からフォトレジスト層15をアミン系剥離液に浸漬して除去する。
【0060】
(10)無電解めっき層除去工程PR9
前記(9)までに得られた導体ポスト16を備える素基板20におけるソルダーレジスト層13の表面に露出している無電解層めっき層14の不要部分を、硫酸・過酸化水素系溶液を吹き付け、エッチングすることにより除去する。
【0061】
(11)導体ポスト加熱工程PR10
前記(10)までに得られた無電解銅めっき層14の不要部が除去された素基板20を所定のリフロー炉にて導体ポストの融点以上の温度で加熱溶融するリフローを行った。詳細なリフロー条件は、最高温度240℃、融点以上の温度を50秒間保持した。これにより、図6に示すように、介在層17、無電解銅めっき層14及びスズめっきの各部の界面で合金化(金属元素の拡散)が促進されて、導体ポスト16は一体的な1つの導体となると共に、外側合金層165c及び下端合金層165bが形成される。更に、セルフアライメント効果により、導体ポスト16は、導体層12aの中心軸上に寄ると共に、溶解されたスズの表面張力により、より綺麗な円形状に成形される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は電子部品関連分野において広く利用できる。また、本発明の配線基板等は、マザーボード等の通常の配線基板、フリップチップ用配線基板、CSP用配線基板及びMCP用配線基板等の半導体素子搭載用配線基板、アンテナスイッチモジュール用配線基板、ミキサーモジュール用配線基板、PLLモジュール用配線基板及びMCM用配線基板等のモジュール用配線基板等に利用される。
【符号の説明】
【0063】
10;配線基板、
11;コア基板(コア)、
12;導体層、12a;貫通孔の下方に配置された導体層、
13;ソルダーレジスト層、131;貫通孔(第1貫通孔)、132;ソルダーレジスト層の外表面、131c;貫通孔の内側面、
14;無電解めっき層、
15;フォトレジスト層、151;第2貫通孔、
16;導体ポスト、161;下部導体ポスト、162;上部導体ポスト、162b;上部導体ポストの下端面、161a;下部導体ポストの上端面、161b;下部導体ポストの下端面、161c;下部導体ポストの外側面、165;合金層、165b;下端合金層、165c;外側合金層、
161;下部導体ポストの上端径、d162;上部導体ポストの下端径、L162;上部導体ポストの最大径、
17;介在層、
20;素基板、
30;ペースト半田、
40;半田ボール、
PR1;ソルダーレジスト層形成工程、
PR2;第1貫通孔穿設工程、
PR3;介在層形成工程、
PR4;無電解めっき層形成工程、
PR5;フォトレジスト層形成工程、
PR6;第2貫通孔穿設工程、
PR7;導体ポスト形成工程、
PR8;フォトレジスト層除去工程、
PR9;無電解めっき層除去工程、
PR10;導体ポスト加熱工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体層と、該導体層上に積層されたソルダーレジスト層と、該ソルダーレジスト層に設けられた貫通孔の下方に配置された導体層に導通される導体ポストと、を備える配線基板であって、
前記ソルダーレジスト層は熱硬化性樹脂を含み、
前記導体ポストは、スズ、銅又は半田を主体とすると共に、前記貫通孔内に位置する下部導体ポストと、該下部導体ポスト上に位置して、前記ソルダーレジスト層より外側に張り出してなる上部導体ポストと、を有し、
前記下部導体ポストは、その外側面に外側合金層を備え、
前記導体ポストは、前記外側合金層を介して、前記ソルダーレジスト層の該貫通孔の内側面に密着されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記外側合金層は、パラジウム及び銅を含む請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記下部導体ポストの下端面に下端合金層を備える請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記下端合金層は、パラジウム及び銅を含む請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
前記下端合金層は、更に、ニッケル及び金を含む請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
前記外側合金層は、前記下端合金層よりも厚い請求項3乃至5のうちいずれかに記載の配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−129369(P2012−129369A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279708(P2010−279708)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】