説明

酵素の新規なクラス:スルフィレドキシンの適用

Cys-SO2#191H (スルフィンシステイン酸)の還元、およびCys-SO2#191H形のペルオキシレドキシン(Prx)のチオール誘導体への還元を触媒する新規なクラスの酵素、スルフィレドキシン(Srx)の適用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cys-SO2H (システイン−スルフィン酸)誘導体の還元、特にCys-SO2Hの形のペルオキシレドキシン(Prx)のチオール誘導体への還元を触媒するスルフィレドキシン(Srx)の酵素の新規なクラスの適用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質においては、酸化還元活性を有するシステインのある特定のチオール基(Cys-SH)は、過酸化水素(H2O2)を用いてスルフェン酸(Cys-SOH)に酸化され得る。後者は不安定であるので、これはいずれの近傍のチオール基と反応してジスルフィドブリッジ(C-S-S-C)を形成するか、または近づくことができる近傍のチオール基が存在しない場合にはCys-SOH化合物は安定なスルフィン酸(Cys-SO2H)もしくはシステイン酸(Cys-SO3H)にさらに酸化され得る。
【0003】
ペルオキシレドキシン(Prx)は、酸化還元活性を有するこのようなシステインを含有する抗酸化酵素である。例えば、2-Cys Prxは、サブユニット当たり酸化還元活性を有する2つのシステインを有する逆方向ホモダイマーである。これらは、過酸化水素の還元を触媒する。
【0004】
これらの酵素の触媒部位は、酸化還元活性を有する2つのシステイン(N-末端過酸化(peroxydatic)システイン(CysP)およびC-末端還元(resolving)システイン(CysR))を含む。
【0005】
より具体的には、これらのペルオキシレドキシンの触媒部位は(Wood ZAら, Science, 2003, 300, 650〜653;Woodら, Trends in Biochemical Sciences, 2003, 28, 1, 32〜40):
- CysP-SHのCysP-SOH (スルフェン酸)へのH2O2による酸化;
- Prxの第二のサブユニットのCysPとCysRとの間のジスルフィドブリッジの形成(CysP-S-S-CysR) (遅いプロセス):
- 通常の細胞性還元剤、例えばグルタチオンまたはチオレドキシン(Trx)によるこのジスルフィドブリッジの、出発物質Cys-SHを得るような還元
を含む。
【0006】
ある場合には、Prxは、CysP-SOHのスルフィン酸(CysP-SO2H)への超酸化により不活性化され得る。この超酸化反応は、現在まで、不可逆であると考えられていた(Wood ZAら, Science, 2003, 300, 650〜653)。最近になって(Woo HAら, Science, 2003, 300, 653〜656;Georgiou G.ら, Science, 2003, 300, 592〜594)、哺乳動物の2-システインペルオキシレドキシン(2-Cys Prx)の場合にCys-スルフィン酸のCys-SH化合物への逆戻りがインビボで示され、このことは、まだ同定されていない特異的なレダクターゼの存在を示唆する。より具体的には、これらの著者らは、哺乳動物細胞を35Sで代謝性標識することにより、細胞がH2O2に曝されたときに産生されるペルオキシジンIのスルフィン酸の形が触媒的に活性なチオール形に迅速に還元されることを示している。これらの著者らは、この研究の間に観察されたスルフィン酸の還元は、まだ同定されていない特異的酵素の介在を必要とすると考えている。哺乳動物のPrxがH2O2-媒介シグナリングを制御するならば、それらの可逆性不活性化は制御プロセスにおいて用いることができるだろう。
【0007】
ペルオキシレドキシン(Chaeら, P.N.A.S., 1994, 91, 7022〜7026)は、多くの種(微生物、植物および哺乳動物を含む高等生物)において、細胞の増殖、分化およびアポトーシスに導くシグナリングカスケードを調節するH2O2レベルをコントロールする遍在する抗酸化剤である(Fujii J.ら, Redox Rep., 2002, 7, 123〜130)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、今回、CysP-SO2H Prxを還元する酵素のファミリーを同定した。これは、次のモチーフ:FXGCHR (X = GまたはS)を有する少なくとも1つの触媒部位を含みかつ約8〜14 kDaの分子量を有するタンパク質が含まれる。
【0009】
この酵素は真核生物において保存されており、以下、スルフィレドキシン(Srx)と称する。酵母において、特にサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)において、これはSrx1と呼ばれ、13 kDaの分子量を有する。ヒトにおいては、この酵素はhSrx1と呼ばれ、13.6 kDaの分子量を有する。
【0010】
スルフィレドキシンのポリペプチド配列と同一のポリペプチド配列および対応するヌクレオチド配列は、以下のアクセッション番号:S. cerevisiae:YKL086W、Homo sapiens:AAH47707、CAC28314、M. musculus:AB24939、AAH11325、Arabidopsis thaliana;AAD21682、AAO42977、Oryza sativa:BAA95812、Schizosaccharomyces pombe:SPBC106.02c、Thermosynechococcus. elongatus:BAC07716、Drosophila melanogaster:AAF48773、Nostoc sp. (PCC7120):NP_488186の下でNCBIまたはGenBank配列データベースで見られる。
【0011】
一方、NCBIまたはGenBank配列データベースにおいては、これらのポリペプチド配列のものとされる機能はない。
【0012】
本発明者らは、今回、これらの種々のタンパク質の間の共通点:上記の触媒部位と機能:CysP-SO2H Prxの還元の触媒作用を見出した。
スルフィレドキシン(Srx)により触媒される反応を図1にまとめる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
よって、本発明の主題は、次のモチーフ:FXGCHR (X = GまたはS)を有する少なくとも1つの触媒部位を含むスルフィレドキシン(Srx)とよばれるタンパク質の、ペルオキシレドキシン(Prx)のスーパーオキシド形Prx-CysP-SO2H (ペルオキシレドキシンシステインスルフィン酸)のチオール誘導体(SH)への還元を触媒するための使用である。
【0014】
よってスルフィレドキシンは、ペルオキシレドキシンの抗酸化機能において非常に重要な役割を有し、システイン−スルフィン酸の形成により修飾されたタンパク質の修復または制御に関与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上記の使用の有利な実施形態によると、該スルフィレドキシンは、微生物、植物または高等生物のスルフィレドキシンであり、これは一般に、80〜170のアミノ酸と次のモチーフ:FXGCHR (X = GまたはS)を有する少なくとも1つの触媒部位とを有する。これらは互いに、次のパーセンテージ同一性および類似性を有する。
・酵母/ヒト:32%同一性および67%類似性
・酵母/植物:23%同一性および39%類似性
・酵母/マウス:31%同一性および51%類似性
・酵母/菌類:80%同一性および90%類似性。
【0016】
本発明によると、参照配列(エス・セレビシエSrx1の配列に相当する配列番号1)と比較したある配列の同一性は、上記で規定するような触媒領域に対応する配列を、これらの間で最大の一致を得るようにして整列させたときに同一であるアミノ酸残基のパーセンテージの関数として評価される。
【0017】
配列番号1の参照配列と少なくともX%の同一性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質は、本発明において、配列番号1の100アミノ酸当たり(100-X)までの変更を含み得るタンパク質として規定される。本発明の目的において、「変更」の用語は、参照配列へのアミノ酸の連続もしくは散在する欠失、置換または挿入を含む。この定義は、類推によって核酸分子にも適用する。
【0018】
配列番号1の参照配列と比較した配列の類似性は、これらの配列を、これらの間で最大の一致を得るようにして整列させたときに、同類置換の観点で同一であるかまたは異なるアミノ酸残基のパーセンテージの関数として評価される。本発明の目的のために、「同類置換」の用語は、あるアミノ酸の、類似の化学的特性(サイズ、電荷または極性)を有しかつタンパク質の機能的特性を通常は改変しない別のアミノ酸での置換を意味することを意図する。
【0019】
配列番号1の配列と少なくともX%の類似性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質は、本発明において、参照配列の100アミノ酸当たり(100-X)までの非同類変更を含み得る配列であるタンパク質として定義される。本発明の目的のために、「非同類変更」の用語は、配列番号1の配列におけるアミノ酸の欠失、非同類置換または連続もしくは散在する挿入を含む。
【0020】
上記のスルフィレドキシンは、その配列が、図2および3に示されるかまたは配列表に示される配列番号1〜10の配列にそれぞれ相当するタンパク質から特に選択される。S. cerevisiae:配列番号1;C. albicans:配列番号2;S. pombe:配列番号3;H. sapiens:配列番号4;M. musculus:配列番号5;D. melanogaster:配列番号6;A. thaliana:配列番号7;T. elongatus:配列番号8;Nostoc sp.:配列番号9およびOryza sativa:配列番号10。
【0021】
本発明の主題は、次の配列:FXGCHR (X = S)により規定されることを特徴とする、Srxの触媒部位に相当する単離ペプチドでもある。
【0022】
本発明の主題は、配列番号1〜3、5〜6および8〜10からなる群より選択される配列またはペプチドFXGCHR (X = S)により規定されるSrxタンパク質で動物を適切に免疫化することにより得られることを特徴とする抗-Srx抗体でもある。
上記の抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれかである。
【0023】
本発明の主題は、配列番号1〜3および5〜10の配列からなる群より選択される配列により規定されるタンパク質の有効量と、任意に少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤とを含むことを特徴とする医薬品でもある。
【0024】
本発明の主題は、上記で規定されるタンパク質の、Prx/Srx抗酸化システムに障害が認められる癌、神経変性疾患および神経筋疾患の治療用の抗酸化医薬品を製造するための使用でもある。
【0025】
本発明の主題は、Prx/Srx抗酸化システムの関与を評価するために:
(1) 生物学的試料の細胞をインビトロで過酸化水素(H2O2)と接触させ、
(2) 工程(1)による前記接触の後1〜4時間の間に、形成されたPrx-CysP-SO2Hを検出し、そして
(3) 工程(1)による前記接触の4時間後から、Prx-CysP-SO2Hの量とPrx-CysP-SHの量との比を確認する
ことを含むことを特徴とする、癌、加齢、神経変性疾患および神経筋疾患に関連する疾患をスクリーニングする方法でもある。
上記の生物学的試料は特に血液細胞からなる。
【0026】
Prx-CysP-SO2H/Prx-CysP-SHの比>1は、Srxの機能不全に関連するPrx/Srx抗酸化システム障害の徴候である。
【0027】
よって、このような方法は、Prx/Srx抗酸化システムが正常に機能しているか否かを評価することを可能にする。疾患の病因に関与する機構での知見は、特に不良なPrx/Srx抗酸化システムの場合に、その状況に最も適する治療を選択することを可能にする。
【0028】
変形として、上記のスクリーニング方法は:
A. 適切な生物学的試料、特に血液細胞の全RNAを用いる、スルフィレドキシンのジェノタイピング
を含む。
より具体的には、該方法は、
(1) 適切な生物学的試料から全RNAを抽出し、
(2) 次の2つのプライマ:
GTCCCGCGGCGGCGGCGACG (配列番号11)
AGCAGGTGCCAAGGAGGCTG (配列番号12)
(これらの配列は、ヒトスルフィレドキシンORF (GenBank No. AAH47707)のそれぞれ上流および下流に位置する)
を用いるRNAの増幅により特異的スルフィレドキシンcDNAを作製し、
(3) そのヌクレオチド配列を確認し、そして
(4) 分析されるべき生物学的試料の種と同じ種に由来する上記で規定されるようなSrxタンパク質をコードするDNA配列に関して比較する
ことを含む。
【0029】
B. ヒトの生物学的試料から作製された全cDNAからのヒトスルフィレドキシン(hSrx1)をコードするmRNAの、参照試料との比較によるいずれの適切な手段による相対的定量
参照試料は、特に、正常なコントロール個体から得られた試料である。
【0030】
本発明によると、上記の定量に先立って、該方法は、全RNA抽出工程を含む。
この実施形態の有利な配置によると、上記の定量は:
(a1) 適切なプライマ、特にランダムヘキサヌクレオチドプライマを用いる逆転写により全RNAからcDNAを作製し;
(a2) 次のプライマ対:
GTCCCGCGGCGGCGGCGACG (配列番号11)
AGCAGGTGCCAAGGAGGCTG (配列番号12)
の存在下に、蛍光レポーターの存在下に前記cDNAを増幅させ、そして同時または連続的に、
(a3) 蛍光シグナルを測定することによりアンプライマ(またはアンプリコン)の量を検出する
ことを含む。
【0031】
mRNAの増幅はRT-PCRにより行なわれる。逆転写およびPCR増幅工程は、別々である(この場合、定量は定量的PCRにより行なわれる)か、またはこれらを一緒にする(この場合、定量は定量的RT-PCRにより行なわれる)かのいずれかである。
好ましくは、該定量は、例えば18SリボソームRNAサブユニットのような内部標準を用いて行なわれる。
【0032】
この実施形態の別の有利な形態によると、蛍光レポーターは、二本鎖DNAに結合する剤および蛍光プローブからなる群より選択される。
【0033】
好ましくは、上記の定量は、シグナルの増加が反応の間に産生されるアンプライマーの量に直接比例する限りはリアルタイムで行なわれ、すなわち放射される蛍光シグナルの検出と定量とを増幅プロセスの間に行う。
【0034】
リアルタイム定量的PCRおよびRT-PCRの一般的な原理、ならびにアンプライマーの定量的検出の種々の方法:二本鎖DNAに結合する剤(インターカレート剤:エチジウムブロミド、SYBR Green I、YO-PRO-1;小溝に結合する剤:Hoechst 33258)を用いるか、蛍光プローブを用いる、すなわち:DNAポリメラーゼ(TaqMan (商標))の5'ヌクレアーゼ活性によるプローブの加水分解、2つのプローブ(Hybprobes)、分子ビーコンおよびスコーピオンプライマのハイブリダイゼーションが当業者に知られており、これらは特にPoitrasら, Reviews in Biology and Biotechnology, 2002, 2, 1〜11に記載されている。TaqMan (商標)型のプローブを用いるリアルタイム定量的PCRおよびRT-PCRは、それぞれ、Heid C.ら(Genome Research, 1996, 6, 986〜994)およびGibson U.ら(Genome Research, 1996, 6, 995-1001)に特に記載される。
【0035】
この実施形態の有利な形態によると、上記の蛍光レポーターがプローブである場合に、該プローブは次の配列:
TTAATTGAATTCATGGGGCTGCGTGCAGGAGG (配列番号13)および
TTTTCCTTTTGCGGCCGCCTACTACTGCAAGTCTGGTGTGGATG (配列番号14)
により規定されるプローブからなる群より選択されるのが好ましい。
【0036】
RNA抽出、cDNA作製および配列の確認は、Current Protocols in Molecular Biology (Frederick M. AUSUBEL, 2000, Wiley and Son Inc., Library of Congress, USA)に記載されるもののような標準のプロトコルに従う通常の方法を用いて行なわれる。
【0037】
本発明の主題は、
- Srxタンパク質またはペプチドFXGCHR (X = GまたはS)を用いる動物の適切な免疫化により得られた抗体を用いて、電気泳動による全タンパク質の分離の後に、試験されるべき生物学的試料中のSrxタンパク質を免疫検出し、次いで
- コントロールSrxタンパク質と比較して、前記Srxタンパク質の質および量を評価する
ことを含むことを特徴とする、癌、加齢、神経変性疾患および神経筋疾患に関連する疾患をスクリーニングする方法でもある。
【0038】
上記の検出−定量は、ウェスタンブロッティング法により有利に行なわれる。
【0039】
本発明の主題は、上記で規定されるようなSrxタンパク質をコードする配列または該コーディング配列を含むベクターの、ストレス(干ばつ、寒さ、熱、環境に存在する酸化毒物)に抵抗する能力が大幅に増加した植物を得るための使用でもある。
Srxタンパク質をコードする配列は、上記の配列データベースから容易に得ることができる。
【0040】
本発明の主題は、配列番号1〜3、5、6および8〜10の配列からなる群より選択される配列により規定されるSrxタンパク質をコードする配列を含む組換えベクターで形質転換されたことを特徴とする宿主細胞でもある。
【0041】
上記の宿主細胞の有利な実施形態によると、これはSRX1遺伝子を過剰発現するエス・セレビシエ株からなる。
上記の宿主細胞の別の有利な実施形態によると、これはhSrx1遺伝子を過剰発現するベクターで改変された哺乳動物細胞からなる。
【0042】
上記のベクターは、有利には、クローニング部位にSrxタンパク質をコードする配列とSrx遺伝子のプロモーターとを含むイー・コリ/エス・セレビシエシャトルベクターである。これは、特にプラスミドpRS316 (ATCC No. 77145)である。
【0043】
Srx遺伝子のプロモーターは、翻訳開始部位の400塩基対上流にある。これは、http://www.yeastgenome.org/ (アクセッション番号YKL086W)のサイトで見出し得る。
【0044】
このようなベクターで形質転換されたこれらの宿主細胞は、Prx/Srx抗酸化システムの研究およびPrx/Srx抗酸化システムの活性を調節する医薬品のインビトロでのスクリーニングに特に有利である。
【0045】
よって、本発明の主題は、
(1) スクリーニングされるべき物質を、過酸化水素の存在下に本発明による宿主細胞に接触させ、
(2) 工程(1)による前記接触の後1〜4時間の間に、形成されたPrx-CysP-SO2Hを検出し、
(3) 工程(1)による前記接触の4時間後から、Prx-CysP-SO2Hの量とPrx-CysP-SHの量との比を確認する
ことを含むことを特徴とするPrx/Srx抗酸化システムの活性を調節し得る医薬品をスクリーニングする方法でもある。
【0046】
本発明の主題は、
a) 試験されるべき物質を、上記のような改変された宿主細胞の抽出物またはSrxタンパク質の遺伝子がノックアウトされた動物およびSrxタンパク質の遺伝子が過剰発現される動物からなる群より選択されるヒト以外のトランスジェニック動物、特にマウスの生物学的試料と、過酸化水素の存在下に接触させ、
b) a)で得られた混合物のPrx/Srxシステムの抗酸化活性をいずれの適切な手段により測定し、そして
c) 前記活性を刺激または阻害することができる物質を選択する
ことを含むことを特徴とする、Prx/Srx抗酸化システムの障害に関連する癌、神経変性疾患および神経筋疾患の治療において有用な医薬品をスクリーニングする方法でもある。
【0047】
上記の活性の測定は、工程(a)による前記接触の後1〜4時間の間に、形成されたPrx-CysP-SO2Hを検出し、そして工程(a)による前記接触の4時間後からPrx-CysP-SO2Hの量とPrx-CysP-SHの量との比を確認することにより行われる。
【0048】
本発明の主題は、
(1) スクリーニングされるべき物質を、Srxタンパク質の遺伝子がノックアウトされた動物およびSrxタンパク質の遺伝子が過剰発現される動物からなる群より選択されるヒト以外のトランスジェニック哺乳動物、特にマウスと接触させ、そして
(2) 前記動物の生存を測定する
ことを含むことを特徴とする、Prx/Srx抗酸化システムの障害に関連する癌、神経変性疾患および神経筋疾患の治療において有用な医薬品をスクリーニングするための方法でもある。
【0049】
ヒト以外のトランスジェニック動物の作製は、通常の方法、特にTransgenic animals generation and use (C.M. Houdebine編, Harwood academic publishers, Amsterdam)に記載されるプロトコルにより行なわれる。
【0050】
本発明の主題は、タンパク質を、次のモチーフ:FXGCHR (X = GまたはS)を有する少なくとも1つの触媒部位を含むスルフィレドキシン(Srx)と、ATPおよびマグネシウムの存在下に接触させることを特徴とする、酸化還元活性を有する少なくとも2つのシステインを含む物質を還元する方法でもある。
【0051】
酸化還元活性を有する少なくとも2つのシステインを含む物質の還元は、リン酸化による該物質の活性化、それに続く硫黄の還元を含み、これらの2つの活性はスルフィレドキシンにより触媒される。
【0052】
本発明の主題は、スルフィレドキシンとATPとマグネシウムの存在下で、Cys-SO2H残基を含む物質を、Cys-SH残基を含む物質に還元することからなる工程を含むことを特徴とする、Cys-SO2H残基を含む物質からCys-SH残基を含む物質を合成する方法でもある。
【0053】
上記の形態の他に、本発明は、本発明の主題である方法の実施の例と添付の図面に言及する以下の記載により明らかになるその他の形態も含む。添付の図面は:
- 図1は、Srx1により触媒される反応を示す。
【0054】
- 図2および3は、種々の種でのSrx1配列の比較を表す。図2:S. cerevisiae、C. albicans、S. pombe、H. sapiens、M. musculus、D. melanogasterおよびA. thaliana。同一の領域は箱で囲んである。触媒部位は保存されたシステインの周囲に位置し、矢印で示す。図3:S. cerevisiae、H. sapiens、M. musculus、D. melanogaster、A. thaliana、T. elongatusおよびNostoc sp.。GenBankのアクセッション番号をこの図に示す。配列アラインメントはCLUSTALWプログラムを用いて行なった。これらの配列のほぼ65%で同一であるアミノ酸を箱で囲む。システイン(黒い矢印)および他のシステイン(白い矢印)を含むSrx1活性部位を示す。
【0055】
- 図4は、Tsa1のシステイン−スルフィン酸形の再生(recycling)を示し、これはSrx1に依存する。図4aおよび4b:示された時間H2O2 (500μM)に曝された野生型細胞およびΔsrx1細胞において35S-Metで標識されたTsa1の還元形(SH)および酸化形(SO2H)の2-D PAGE分析。図4cおよび4dは、AMSでのインビトロでのアルキル化の後にH2O2で処理したWT細胞(c)またはΔsrx1細胞(d)からのTsa1の還元形(2×AMS)および酸化形(1×AMS)のウェスタンブロットに相当する。H2O2 (100μM)を用いて15分間Srx1発現を誘導した後に、細胞をシクロヘキシミド(CHX)で5分間処理し、その後H2O2 (500μM)で処理する。
【0056】
- 図5は、過酸化水素により誘導されるストレスに対する細胞の抵抗性におけるSrx1タンパク質が演じる役割を示す。感度試験は、増加する濃度(mM)で過酸化水素(H2O2)を含有するペトリ皿で野生株(WT)およびノックアウト細胞(Δsrx1)または変異株srx1C84Sを増殖させることにより行う(図5aおよび5b)。図5a:H2O2に対する野生株(WT)、ノックアウト株(Δsrx1)および変異株srx1C84Sの抵抗性。図5b:HAでタグをつけたSrx1タンパク質のウェスタンブロッティング(図内挿入図)および過酸化水素(400μM)で処理した細胞のmRNAのQT-RT PCR。
【0057】
- 図6は、t-ブチルヒドロペルオキシドにより誘導されるストレスに対する細胞の抵抗性におけるSrx1タンパク質が演じる役割を示す。感度試験は、増加する濃度でt-ブチルヒドロペルオキシド(tBOOH)を含有するペトリ皿で野生株(WT)、ノックアウト細胞(Δsrx1)、Tsa1またはSrx1を過剰発現する野生株、Tsa1を発現するノックアウト細胞(Δsrx1)、ノックアウト細胞(Δtsa1)およびSrx1を過剰発現するノックアウト細胞(Δtsa1)を増殖させることにより行う。濃度はmMで表す。
【0058】
- 図7は、Tsa1とSrx1との間の共有結合様式(ジスルフィドブリッジ)および非共有結合様式の相互作用を示す。図7a:H2O2 (500μM)で15分間処理した野生株(WT) (レーン1、2、4)またはΔtsa1細胞(レーン3)において発現したHAタグをつけたSrx1タンパク質(レーン1、2および3)またはHAタグをつけたSrx1C84S (レーン4)の、還元(R) (レーン2)または非還元(NR) (レーン1、3、4)条件下で行うSDS-PAGE電気泳動の後のウェスタンブロッティング。図7b:非還元条件下で、6HisでタグをつけたSrx1 (レーン2、4)またはタグをつけていないSrx1 (レーン1、3)を用いて共精製(copurified)されたタンパク質を、非還元(レーン1、2)または還元(レーン3、4)条件下にSDS-PAGEにより分離し、クマシーブルー染色により視覚化する。タンパク質のバンドは、MALDI-TOF質量分光法により記載されるようにして同定される。
【0059】
- 図8は、酸化されたTsa1のインビトロでのSrx1による還元のためにSrx1タンパク質とATPとが必要であることを示す。図8 aおよびb:記載された濃度での、精製されたSrx1およびATPと30℃で15分間インキュベートしたΔtsa1細胞溶解物中のMyc Tsa1の還元形(SH)および超酸化形(SO2H)のウェスタンブロッティング分析。図8c:記載されるように、精製Srx1とATP (1 mM)とMg++ (1 mM)と30℃で15分間インキュベートした6His-Tsa1の還元形(SH)および超酸化形(SO2H)のウェスタンブロッティング分析。
【0060】
- 図9は、超酸化形にある6His-Prx1および6His-Prx2の還元におけるhSrx1の役割を示す。
【0061】
これらの実施例は、本発明の主題を説明するためにのみ与えられるものであり、限定を構成するものではないことが明確に理解されるべきである。
【実施例】
【0062】
実施例1:材料および方法
1.1. 菌株
用いたエス・セレビシエ株は、YPH98株(Sikorski R.ら, Genetics, 1989, 122, 19〜27) (MATa, ura3-52, lys2-801amber, ade2-101ochre trp1-Δ1 leu2-Δ1)およびその同型遺伝子派生株である。Δsrx1、ΔtrrlおよびΔtsa1株は、SRX1 (スルフィレドキシン)およびTRR1 (チオレドキシンレダクターゼ)のコーディング領域をKANMX4で、およびTSA1オープンリーディングフレームをTRP1 (チロシナーゼ関連タンパク質1)でそれぞれ置き換えることにより得られる。
【0063】
Tsa1およびSrx1を過剰発現する株は、各々がTsa1またはSrx1遺伝子の欠失を有しかつマルチコピープラスミドpsRS426 (NO. ATCC 77107)を有することを除いて、以前の株と同一である。
細胞を30℃でYPD培地(1%酵母エキス、2%バクトペプトンおよび2%グルコース)またはアデニン、トリプトファンおよびウラシルを補ったCASA培地(0.67%酵母ニトロゲンベース、0.1%カザミノ酸、2%グルコース)中に培養する。
【0064】
1.2. プラスミド
次の融合タンパク質:
- Srx1-HA:Srx1のC-末端に2つのHAエピトープの融合を含む融合タンパク質、および
- 6His-Srx1:Srx1と、そのN-末端に6ヒスチジンタグとの融合タンパク質
をPCRにより2工程で構築する。PCRに用いられたヌクレオチドプライマは、HAエピトープの1つまたはその他のものの配列(HAエピトープを認識する市販の抗体12CA5, Babco, MMS-101 Rにより規定される)と6His (6ヒスチジン)とを結合させ、それらの配列の上流および下流で400および200塩基対ではさまれ、プラスミドpRS316 (No. ATCC 77145)またはプラスミドpRS426 (No. ATCC 77107)のEcoRI部位にクローニングされたSrx1の完全コーディング領域を増幅する。
【0065】
Tsa1のN-末端にMycエピトープ(抗-Myc抗体, 9E10, Babco, MMS-150Rにより規定される)を含む融合タンパク質、Myc-Tsa1を構築し、プラスミドpRS316のEcoRI部位に同様にしてクローニングする。Cys>Ser変異体を作製するための部位特異的突然変異は、修飾された配列を含むプライマオリゴヌクレオチドを用いて標準のPCR増幅法により行う。
【0066】
1.3 タンパク質分析
* 2-D PAGE分析のために、対数期の始めの細胞培養(OD600 nm = 0.3)を35S-Met (100μCi)で20分間、30℃において標識し、その後、冷メチオニン(1 mMの最終濃度)およびシステイン(0.1 mMの最終濃度)を用いて標識されたメチオニンを追跡し、次いでH2O2 (500μM)で処理する。細胞を、Mailletら(J. Biol. Chem., 1996, 271, 10263〜10270)により記載されたようにして2-D PAGE分析に付す。
【0067】
* Srx1-HAのインビボ酸化還元状態の分析のために、対数培養期の始めの細胞培養(OD600 nm = 0.3)の溶解物を、トリクロロ酢酸溶解プロトコル(Delaunayら, EMBO J., 2000, 19, 5157〜5166)により調製する。沈殿したタンパク質を、N-エチルマレイミド(NEM) (50 Mm)含有バッファーA [Tris-Cl, pH 8 (100 mM), SDS (1%), EDTA (1 mM)]に溶解する。
【0068】
抽出物を、還元および非還元条件下でSDS-17% PAGEにより分離し、Srx1-HAを上記モノクローナル抗体12CA5を用いて検出する。
【0069】
* Myc-Tsa1のシステインのAMSを用いる誘導化のために、細胞抽出物を、沈殿したタンパク質をDTT (50 mM)含有バッファーA中に37℃で1時間まず溶解させ、TCAで沈殿させ、そしてAMS (15 mM)含有バッファーA中に37℃で2時間懸濁する以外はTCA溶解プロトコルの条件と同じ条件下で処理する。細胞抽出物は、還元条件下にSDS-20% PAGEで分離し、Myc-Tsa1を上記の抗-Mycモノクローナル抗体9E10を用いて免疫検出する。
【0070】
* インビトロ還元のために、酸化されたMyc-Tsa1を含むH2O2処理Δsrx1細胞の溶解物(2 mg/ml) 3μl、または酸化され精製された6His-Tsa1 (0.5 mg)のいずれかを、バキュロウイルスにより発現された精製Srx1とATPとMgCl2を記載された濃度で含有する反応バッファー(RM) [Tris-Cl, pH 6.8 (50 mM), KCl (100 mM)] (80μlの最終容量)に加え、30℃で15分間インキュベートする。6His-Tsa1は、DTT (10 mM)およびH2O2 (1 mM)を含有するRMバッファー中の30分間のインキュベーションによりシステイン−スルフィン酸に酸化され、反応媒質で16倍に希釈される。
【0071】
1.4 組換えタンパク質の精製
Srx1およびhSrx1は、Bac-To-Bac (登録商標)バキュロウイルス発現システム(Invitrogen)を用いてHigh Five昆虫細胞で発現され、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィおよびHPLC (8ml-Poros (登録商標) 50HS, 8ml-Poros (登録商標) 50HE, 0.8ml-Poros (登録商標) 20HS) (Applied Biosystems)により連続的に精製する。
【0072】
6His-Tsa1は、プラスミドpET28a-Tsa1からのE. coli BL21細胞において、製造業者(Stratagene)の推奨に従ってイソプロピルチオ-β-D-ガラクトピラノシドでの誘導の後に発現される。細胞を、フェニルメタンスルホニルフルオリド(PMSF) (1 mM)を補った溶解バッファー[Tris-Cl, pH 6.8 (50 mM), KCl (100 mM), DTT (2 mM), イミダゾール(20 mM)]に懸濁し、凍結−融解サイクルおよび超音波破砕により溶解する。抽出物を30,000 gで30分間遠心分離し、上清をNi-NTAアガロースカラム(Qiagen)を通過させる。溶解バッファーでカラムを洗浄後、Tsa1を、イミダゾール(150 mM)を補った溶解バッファーで溶出する。
【0073】
精製タンパク質の純度および濃度は、SDS-PAGEの後のクマシーブルー染色およびブラッドフォード試験(Biorad)により測定した。
【0074】
1.5 Srx1反応パートナーの精製
6His-Srx1およびSrx1を、ジスルフィドブリッジを安定化させるチオレドキシンレダクターゼ遺伝子を欠くΔtrr1株のプラスミドpRS426から発現させる。細胞を、対数期の中間(OD600 nm = 0.8)まで培養し、H2O2 (5 mM)で5分間処理し、NEM (10 mM)を補った水で2回洗浄し、Eatonプレス中でバッファーC [Tris Cl, pH 8 (100 mM), NaCl (50 mM) プロテアーゼ阻害剤非含有EDTA (Roche-Boerhinger), PMSF (1 mM), イミダゾール(20 mM), NEM (10 mM)]中に凍結および溶解させる。細胞抽出物を10,000 gで1時間30分遠心分離し、上清をNi-NTAカラム(Qiagen)に通す。カラムをバッファーD [Tris Cl, pH 8 (100 mM), NaCl (50 mM)] + イミダゾール(20 mM)で洗浄後、タンパク質をバッファーD + イミダゾール(30 mM)で溶出する。
【0075】
1.6 RNA分析
全RNAを、Leeら(J. Biol. Chem., 1999, 274, 4537〜4544)により記載されたようにして抽出し、ランダムヘキサヌクレオチドプライマを用いる逆転写により、1μgの全RNAを用いてcDNAを合成する。
定量PCR (Biorad iCycler)を、SYBR Green I蛍光法により、SRX1またはACT1に特異的なプライマを用いて、供給業者の推奨に従って3回別々に行う。
【0076】
実施例2:Srx1の触媒活性によるTsa1のシステインの超酸化の可逆性
2.1 材料および方法
エス・セレビシエの5つのPrxのうちの1つであるTsa1は、2-Cys Prxであり、H2O2および有機過酸化物の両方に対する広い基質特異性を有する、酵母での主要な抗酸化剤を構成する。
【0077】
Srxの存在下でのTsa1の酸化およびこの反応の可逆性を、2つの方法に従って分析した。
(A) タンパク質の等電点による2次元ゲル分離(2-D PAGE電気泳動);野生株細胞(WT)およびΔsrx1ノックアウト株を、タンパク質のインビボでの放射活性標識にまず付し、次いで、種々の期間(0、2、30および90分の処理) H2O2で処理する前に、放射活性元素の追跡を行う。左のスポット(図4a)はタンパク質の天然形を表し、右のスポット(図4a)は酸の形(スルフィン酸)を表す。
【0078】
(B) 示差(differential)チオールアルキル化;Tsa1のタグをつけたコピーを有する野生株細胞(WT)およびΔsrx1ノックアウト株細胞を、分析の間の新しいタンパク質合成をブロックするためにシクロヘキシミド(CHX)で処理し、次いでH2O2で処理する。タンパク質を抽出し、DTTで還元し、次いでチオールを500 Daの化合物、4-アセトアミド-4'-マレイミジルスティルベン-2,2'-ジスルホン酸 (AMS)でアルキル化するが、AMSは遊離のSH基のレベルでシステインをアルキル化するが、スルフィネートの形ではアルキル化せず、タンパク質の分子量をアルキル化されたシステイン(AMS)当たり0.5 kDa増加させる。2つのアルキル化チオール(還元システインまたはジスルフィド結合、図4cおよび4dにおいて「2 AMS」と記載される)を有するタンパク質または1つのアルキル化チオール(スルフィン酸、図4cおよび4d において「1 AMS」と記載される)を有するタンパク質の間のサイズの違いが、SDS-PAGEゲル上でのそれらのサイズによる分離の後に観察される。タンパク質は、ウェスタンブロッティングにより視覚化される。
【0079】
2.2 結果
結果を図 4aおよび4bに示す。
処理していない細胞抽出物においては、Tsa1は二重(double)のスポットとして現れる。そのうちの1つは濃く、還元Tsa1 (Tsaの理論的pIは4.87である)に相当する4.8 (+/- 0.05)のpI位置で全酵素の約85%に相当する。もう一方は、4.7 (+/- 0.05)のより酸性のpI位置に薄いスポットが位置し、これは酸化されたTsa1 (Tsa1のシステインのスルフィン酸形の理論値は4.75である)に相当する。H2O2 (500μM)で2分間の処理の後、酸化Tsa1の割合が全タンパク質の約90%の割合まで増加して還元Tsa1が減少する。30分間の処理の後に、還元Tsa1/酸化Tsa1の比は未処理の細胞のものまで戻る。還元Tsa1スポットの再出現は、タンパク質の標識が分析の前に妨害されているとすると、酸化Tsa1から来るものであり新しく合成されたTsa1からではない。同様の結果が、細胞をt-ブチルヒドロペルオキシド(t-BOOH)で処理する場合に観察される。
【0080】
H2O2で処理していない細胞抽出物においては、Tsa1は大幅に減少され、AMSにより修飾された二重のバンドとして移動する(図4cおよび4d)。H2O2での処理の15分後、Tsa1はAMSにより修飾された一重または二重の種として移動し、このことは約1:3の比の還元形と酸化形の混合物を示す。この処理の120分の期間の後に、Tsa1はその最初の状態、すなわちAMSによりアルキル化された二重線の形に完全に戻り、このことはスルホネートのCys-SHへの還元を証明する。Tsa1の還元は、2-D PAGEで観察されたもの(図4a)と比べて異なり、これはおそらくタンパク質合成の阻害による。
【0081】
これらの2つの実験は、Tsa1の超酸化形(スルフィン酸)が野生株において遊離のチオールに還元されることができること、およびSrx1の存在がこの還元に必須であることを示す。
【0082】
実施例3:ジスルフィドブリッジを介してPrxに結合したエス・セレビシエ中の13 kDaのタンパク質の同定(図7)
3.1. 材料および方法(実施例1を参照)
(A) Srx1タンパク質のタグ(HA)をつけたコピーを含む細胞を500μMのH2O2で15分間処理する。タンパク質を、チオールの細胞内の酸化還元状態が維持される方法(実施例1参照)に従って抽出し、次いでSrx1タンパク質のタグ(HA)をつけたコピーを含む野生株(WT)の細胞(レーン1)については還元条件下で、および野生株(WT) (レーン2)、SRX1遺伝子のタグをつけたコピーを含むΔtsa1変異株(レーン3)およびC84S の変異を受けたSRX1遺伝子のタグをつけたコピーを含むΔsrx1株(レーン4)の細胞については非還元条件下でSDS-PAGEゲルで分離する。参照分子量(MW)はkDaで表す。
【0083】
(B) Srx1タンパク質を未変性条件下で6Hisタグにより、5 mMのH2O2で5分間処理したΔtrr1細胞から精製する。精製されたタンパク質は、次いで、還元または非還元SDS-PAGEゲルで分離する。記載された種々のタンパク質が質量分光法により同定された。非還元および還元条件下で分離された精製されたタンパク質は、SRX1遺伝子のコピーを含むΔtrr1変異株(ウェル番号1および3)、およびSRX1遺伝子のタグ(HA)をつけたコピーを含むΔtrr1変異株(ウェル番号2および4)からくる。参照分子量(MW)はkDaで表す。
【0084】
3.2 結果
図7aは、Srx1の保存されたシステイン(Cys84) (図2および3を参照)を含む、Tsa1とSrx1との間の分子間ジスルフィドブリッジの存在を証明する。
これはまた、Srx1が2つの形にあり得ることを示す。13 kDaのモノマーとジスルフィドブリッジで連結された55 kDaのマルチマーである(図7a、レーン2)。
【0085】
図7bは、Tsa1、Tsa2およびAhp1の共精製が、Srx1が酵母に存在する5つのペルオキシレドキシンのうち3つと相互作用し、Tsa1との相互作用が酸化還元または非共有であることを示すという事実を示す。
【0086】
より具体的には、精製された非還元材料は、80、55、40、35、20および13 kDaのサイズのいくつかの主要なバンドを含み(図7b)、これらは還元の後には13および20 kDaの2つの主要なバンドと18 kDaの薄いバンド(最後のウェル)に限定される。還元された材料に用いられたMALDI-TOF質量分光法は、Srx1およびTsa1タンパク質と酵母の第二の主要な2-Cys Prx であるAhp1タンパク質を、それぞれ13、20および18 kDaのバンドとして同定することを可能にした。第三の主要な2-Cys PrxであるTsa2も、痕跡の形で20 kDaのバンドとして存在する。非還元溶解物の質量分光分析は、Tsa1タンパク質とSrx1タンパク質の両方を、おそらく2分子のTsa1を含むジスルフィドブリッジ連結ヘテロトリマーの形の55 kDaのバンドとして同定することを可能にした。この分析は、また、Tsa1タンパク質の存在を、おそらくジスルフィドブリッジ連結ダイマーおよびモノマーの形の40、35および20 kDaのバンドとして同定することも可能にした。ジスルフィドブリッジで連結されたSrx1およびTsa1タンパク質の結合は、免疫検出により確認され、免疫検出の間には、Srx1タンパク質を含む55 kDaのバンドがTSA1遺伝子を欠くΔtsa1株からのH2O2処理した溶解物から検出されない。これらの結果は、Srx1がH2O2により大きく誘導され、ジスルフィドブリッジで連結されたヘテロマーの形でTsa1と非共有的に結合することを示す。
【0087】
Srx1タンパク質は、2つの他のPrxとも結合する。Ahp1およびTsa2であるが、その結合は試験した条件下では小さい。
【0088】
実施例4:Srx1機能はペルオキシダーゼ活性およびTsa1に連なる
4.1 材料および方法
4.1.1 材料
野生株および2つの変異株、Δtsa1およびΔsrxlは、すでに実施例1に記載している。
【0089】
4.1.2 方法
野生株および変異株のt-BOOHおよびH2O2に対する感受性の試験を、次のようにして行う(実施例1も参照)。
- tBOOHまたはH2O2に対する感受性の試験
野生型細胞またはSRX1遺伝子のノックアウトを有する細胞を、増加する濃度で過酸化水素(H2O2)またはt-ブチルヒドロペルオキシド(tBOOH)を含むペトリ皿におく。細胞の増殖を、30℃で48時間のインキュベーションの後に観察する。
【0090】
- 細胞の酸化還元状態を保持しながらのタンパク質の抽出(実施例1も参照)。
【0091】
4.2. 結果
図5aおよび5bは、SRX1遺伝子のノックアウトを有する株が過酸化物に対して感受性亢進を示すことを示す。
図6は、Srx1タンパク質が過酸化物ストレスに対する抵抗性に必要であることをも示す。
【0092】
特に、この図6は、TSA1の過剰発現がΔsrx1株の抵抗性欠如を完全に修正することを示し、このことはこの感受性がペルオキシダーゼ活性の欠如によることを示す。Δtsa1酵母におけるSRX1の過剰発現は、野生株における同じ過剰発現とは異なって、影響を有さない。このことは、Tsa1の存在がSrx1機能に必須であることを示す。
【0093】
SRX1遺伝子機能は、TSA1遺伝子に連結する。TSA1の過剰発現は、Δtsa1株におけるH2O2およびt-BOOHに対する抵抗性の欠如を回復させるが、SRX1遺伝子の過剰発現は、野生株のt-BOOHに対する抵抗性をわずかに増加させるが、Δtsa1株においてこのタイプのいずれの影響も及ぼさない。これらのデータは、Srx1はTsa1を介して作用するが、Tsa1の過剰発現はSrx1タンパク質における欠如を補うことができることを示す。
【0094】
Cys84のセリンへの置換(Srx1Cys84S)は、過酸化水素抵抗性におけるSrx1の機能(図5a)、およびSrx1-Tsa1ジスルフィドブリッジの形成を完全に消去し、このことはこの結合がSrx1の機能に必須でありかつこの結合がCys84によることを示す。
【0095】
実施例5:ATPはTsa1のCys-SO2H形を還元するのに必要である
5.1 材料および方法
実施例1を参照。
5.2 結果
Srx1によるTsa1のCys-SO2Hの還元をより詳細に研究するために、バキュロウイルスにより発現される組換えSrx1タンパク質を作製した。これは、精製Srx1が、精製Tsa1のSO2H形の還元を許容し、この還元がATPの存在下および野生型細胞からの溶解物の存在下でのみ起こることを示す(図8)。これらのデータは、Srx1がTsa1のスルホネート形の還元を触媒することを示す。
【0096】
実際に、Srx1タンパク質は、用量依存的な様式のH2O2で処理されたΔSrx1細胞の溶解物中に存在するTsa1タンパク質のCys-SO2H形の還元をATPが加えられたときのみ許容する(図8aおよびb)。加水分解不可能なATPのホモログであるGTPおよびAMP-PNPは、触媒作用に影響を有さない。溶解物へのEDTAの添加は、Tsa1のSrx1依存性還元およびMg++またはMn++の再導入を阻害するが、Fe++、Ca++、Cu++またはZn++は還元を回復させる。最後に、精製Srx1はATPとMg++またはMn++とDTTの存在下に、インビトロで、精製されかつ酸化された形のTsa1を完全に還元し(図8c)、このことはSrx1自体がCys-SO2形のCys-SH形への還元を触媒することを証明する。ATP加水分解とMg++またはMn++の特異的な必要性との結びつきは、Cys-SO2Hを還元するためのプロセスにおける工程として基質のリン酸化がSrx1により行なわれることを大きく示唆する。ただし、中間体はまだ検出されておらず、これはおそらく中間体の非常に不安定な性質による。Srx1とTsa1との間のジスルフィド結合は、チオール基に基づく機能がこのプロセスの別の工程として存在する機構をも示唆している。Srx1変異体の活性は、その3つのシステインの各々を置換することにより試験した。他の真核生物のSrx1ホモログで保存されているCys84の置換(Srx1Cys84S)は、Srx1とTsa1との間のジスルフィド結合の形成およびTsa1のCys-SO2H形の還元を完全に消去するが、一方、他のシステイン変異体はSrx1Cys106Sについては影響がなく、Srx1Cys48Sについてはわずかな影響しかない。これらのデータは、Srx1-Tsa1の結合がSrx1のCys84を起源とし、これがTsa Cys-SO2HのSrx1-媒介還元に必須であることを示す。Cys84のセリンへの置換は、過酸化水素抵抗性におけるインビボでのSrx1の役割を消去もし、このことはTsa1 Cys-SO2HのSrx1依存性の還元が、ペルオキシダーゼが機能するために重要であることをさらに示唆する。
【0097】
タンパク質のシステインのスルフィン酸は、モノチオールまたはジチオール還元剤により還元できない。
【0098】
次の作用機序が提案される。
スルフィレドキシンが、特異的ホスホトランスフェラーゼおよびチオールトランスフェラーゼの両方として作用することによる多段階プロセスに従ってこの還元を触媒する(図8)。システインのスルフィン酸の還元は、おそらく、その初期の活性化を必要とし、これは、ATPおよびMg++に対する必要性が示すように、リン酸化スルフィン酸エステルの形成により行うことができる。この修飾は、スルフィド残基がSrx1の活性化された部位のシステインにより攻撃され、次いでSrx1とTsa1との間の分子間チオスルフィネートの一時的な形成を許容する。チオスルフィネートは酸化的ストレスの間じゅう存在し、チオール依存性還元に影響を受けやすい。よって、一旦形成されると、Srx1とTsa1との間のチオスルフィネートは、最初に、インビトロでDTTによりおよびインビボでチオールレドキシンにより提供される電子によるスルフェネートへのチオスルフィネートブリッジの還元的切断およびジスルフィドブリッジの還元的切断を伴う連続的なチオール酸化還元交換により、2つのCys-SHに変換される。
【0099】
実施例6:ヒトスルフィレドキシン(hSrx1)の同定およびその触媒活性の証明
6.1 材料および方法
hSrx遺伝子(配列番号4)をPCRにより、ヒト腫瘍系統MCF-7の細胞からの逆転写により、以下のオリゴヌクレオチドを用いて調製した。
TTAATTGAATTCATGGGGCTGCGTGCAGGAGG (配列番号13)および
TTTTCCTTTTGCGGCCGCCTACTACTGCAAGTCTGGTGTGGATG (配列番号14)。
【0100】
hSrx1コーディング配列をベクターpFastBac1 (Invitrogen)にクローニングし、High Five昆虫細胞において発現させた(実施例1のポイント1.4を参照)。
hSrx1を過剰発現するHigh Five細胞溶解物をインビトロで用いて、スルフィン酸の形の超酸化されたヒトペルオキシレドキシンPrx1およびPrx2を還元するその活性を試験した(図9)。6HIS-Prx1および6HIS-Prx2を、エス・セレビシエでのTsa1と同じ方法に従って発現させ、精製して超酸化した。プロトコルおよび方法は、実施例1 (ポイント1.3および1.4)のものと同じである。
【0101】
6.2 結果
図9は、得られた結果を表し、High Five細胞のバキュロウイルスから発現されたhSrx1の、システイン−スルフィン酸形に超酸化されたヒトペルオキシレドキシン6His-Prx1および6His-Prx2を還元する能力を示す。この還元は、コファクターであるATP (1 mM)とMg++ (1 mM)とジチオトレイトール(2 mM)の存在を必要とする。
【0102】
バキュロウイルス抽出物は、hSrx1 (h Srx)またはTau138タンパク質(コントロール)のいずれかを発現する。この実験の方法およびプロトコルは実施例5に記載されたものと同じである。
【0103】
上記から明らかになるように、本発明は、ここでより詳細に記載したばかりの実施、実行および適用の本発明の方法に限定されない。一方、本発明は、本発明の内容または範囲を逸脱せずに、当業者が想到し得るその変形の全てを包含する。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】Srx1により触媒される反応を示す。
【図2】種々の種でのSrx1配列の比較を表す。
【図3】種々の種でのSrx1配列の比較を表す。
【図4】Tsa1のシステイン−スルフィン酸形の再生(recycling)を示し、これはSrx1に依存する。
【図5】過酸化水素により誘導されるストレスに対する細胞の抵抗性におけるSrx1タンパク質が演じる役割を示す。
【図6】t-ブチルヒドロペルオキシドにより誘導されるストレスに対する細胞の抵抗性におけるSrx1タンパク質が演じる役割を示す。
【図7】Tsa1とSrx1との間の共有結合様式(ジスルフィドブリッジ)および非共有結合様式の相互作用を示す。
【図8】酸化されたTsa1のインビトロでのSrx1による還元のためにSrx1タンパク質とATPとが必要であることを示す。
【図9】超酸化形にある6His-Prx1および6His-Prx2の還元におけるhSrx1の役割を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次のモチーフ:FXGCHR (X = GまたはS)を有する少なくとも1つの触媒部位を含むスルフィレドキシン(Srx)とよばれるタンパク質の、ペルオキシレドキシン(Prx)のスーパーオキシド形Prx-CysP-SO2H (ペルオキシレドキシンシステインスルフィン酸)のチオール誘導体(SH)への還元を触媒するための使用。
【請求項2】
前記スルフィレドキシンが微生物、植物または高等生物のスルフィレドキシンであり、該スルフィレドキシンが、一般に80〜170の間のアミノ酸、および次のモチーフ:FXGCHR (X = GまたはS)を有する少なくとも活性部位を含み、次のパーセンテージ同一性および類似性:
・酵母/ヒト:32%同一性および67%類似性
・酵母/植物:23%同一性および39%類似性
・酵母/マウス:31%同一性および51%類似性
・酵母/菌類:80%同一性および90%類似性
を有することを特徴とする請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記スルフィレドキシンが、配列が配列番号1〜10の配列にそれぞれ相当するタンパク質から特に選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
次の配列:FXGCHR (X = S)により規定されることを特徴とする、請求項1〜3に規定されるSrxの触媒部位に相当する単離ペプチド。
【請求項5】
配列番号1〜3および5〜10の配列からなる群より選択される配列により規定されるタンパク質の有効量と、任意に少なくとも1種の医薬的に許容される賦形剤とを含むことを特徴とする医薬品。
【請求項6】
Prx/Srx抗酸化システムに障害が認められる癌、神経変性異常および神経筋疾患の治療用の抗酸化医薬品を製造するための、請求項1〜3のいずれか1つに規定されるタンパク質の使用。
【請求項7】
Prx/Srx抗酸化システムの関与を評価するために:
(1) 生物学的試料の細胞をインビトロで過酸化水素(H2O2)と接触させ、
(2) 工程(1)による前記接触の後1〜4時間の間に、形成されたPrx-CysP-SO2Hを検出し、そして
(3) 工程(1)による前記接触の4時間後から、Prx-CysP-SO2Hの量とPrx-CysP-SHの量との比を確認する
ことを含むことを特徴とする、癌、加齢、神経変性疾患および神経筋疾患に関連する疾患をスクリーニングする方法。
【請求項8】
以下の工程:
(1) 生物学的試料から全RNAを抽出し、
(2) 次のプライマ:
GTCCCGCGGCGGCGGCGACG (配列番号11)
AGCAGGTGCCAAGGAGGCTG (配列番号12)
(これらの配列は、ヒトスルフィレドキシンORF (GenBank No. AAH47707)のそれぞれ上流および下流に位置する)
を用いるRNAの増幅により特異的スルフィレドキシンcDNAを調製し、
(3) そのヌクレオチド配列を確認し、そして
(4) 分析されるべき生物学的試料の種と同じ種に由来する上記で規定されるようなSrxタンパク質をコードするDNA配列に関して比較する
に従って適切な生物学的試料、特に血液細胞の全RNAを用いてスルフィレドキシンのジェノタイピングを行うことを含むことを特徴とする、癌、加齢、神経変性疾患および神経筋疾患に関連する疾患をスクリーニングする方法。
【請求項9】
ヒトの生物学的試料から調製された全cDNAからのスルフィレドキシンをコードするmRNAの、参照試料との比較によるいずれの適切な手段による相対的定量を含むことを特徴とする、癌、加齢、神経変性疾患および神経筋疾患に関連する疾患をスクリーニングする方法。
【請求項10】
前記定量が、
(a1) 適切なプライマ、特にランダムヘキサヌクレオチドプライマを用いる逆転写により全RNAからcDNAを調製し;
(a2) 次のプライマ対:
GTCCCGCGGCGGCGGCGACG (配列番号11)
AGCAGGTGCCAAGGAGGCTG (配列番号12)
の存在下に、蛍光レポーターの存在下で前記cDNAを増幅させ、そして同時または連続的に、
(a3) 蛍光シグナルを測定することによりアンプライマ(またはアンプリコン)の量を検出する
ことを含むことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
蛍光レポーターが、二本鎖DNAに結合する剤および蛍光プローブからなる群より選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記蛍光レポーターがプローブである場合に、該プローブが次の配列:
TTAATTGAATTCATGGGGCTGCGTGCAGGAGG (配列番号13)および
TTTTCCTTTTGCGGCCGCCTACTACTGCAAGTCTGGTGTGGATG (配列番号14)
により規定されるプローブからなる群より好ましくは選択されることを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
- Srxタンパク質またはペプチドFXGCHR (X = GまたはS)を用いる動物の適切な免疫化により得られた抗体を用いて、電気泳動による全タンパク質の分離の後に、試験されるべき生物学的試料中のSrxタンパク質を免疫検出し、次いで
- コントロールSrxタンパク質と比較して、前記Srxタンパク質の質および量を評価する
ことを含むことを特徴とする、癌、加齢、神経変性疾患および神経筋疾患に関連する疾患をスクリーニングする方法。
【請求項14】
請求項1〜3に規定されるようなSrxタンパク質をコードする配列の、ストレスに抵抗する能力が大幅に増加した植物を得るための使用。
【請求項15】
配列番号1〜3、5、6および8〜10の配列からなる群より選択される配列により規定されるSrxタンパク質をコードする配列を含む組換えベクターで形質転換されたことを特徴とする宿主細胞。
【請求項16】
SRX1遺伝子を過剰発現するベクターで改変されたエス・セレビシエ株からなることを特徴とする請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項17】
hSrx1遺伝子を過剰発現するベクターで改変された哺乳動物細胞からなることを特徴とする請求項15に記載の宿主細胞。
【請求項18】
前記ベクターが、有利には、EcoRIクローニング部位にSrxタンパク質をコードする配列とSrx遺伝子のプロモーターとを含むイー・コリ/エス・セレビシエシャトルベクターであることを特徴とする請求項15〜17のいずれか1つに記載の宿主細胞。
【請求項19】
(1) スクリーニングされるべき物質を、過酸化水素の存在下に請求項15〜18のいずれか1つに記載の宿主細胞に接触させ、
(2) 工程(1)による前記接触の後1〜4時間の間に、形成されたPrx-CysP-SO2Hを検出し、
(3) 工程(1)による前記接触の4時間後から、Prx-CysP-SO2Hの量とPrx-CysP-SHの量との比を確認する
ことを含むことを特徴とするPrx/Srx抗酸化システムの活性を調節し得る医薬品をスクリーニングする方法。
【請求項20】
a) 試験されるべき物質を、請求項15〜18のいずれか1つに記載の宿主細胞の抽出物またはSrxタンパク質の遺伝子がノックアウトされた動物およびSrxタンパク質の遺伝子が過剰発現される動物からなる群より選択されるヒト以外のトランスジェニック動物、特にマウスの生物学的試料と、過酸化水素の存在下に接触させ、
b) a)で得られた混合物のPrx/Srxシステムの抗酸化活性をいずれの適切な手段により測定し、そして
c) 前記活性を刺激または阻害することができる物質を選択する
ことを含むことを特徴とする、Prx/Srx抗酸化システムの障害に関連する癌、神経変性疾患および神経筋疾患の治療において有用な医薬品をスクリーニングする方法。
【請求項21】
前記活性の測定が、特に、工程(a)による前記接触の後1〜4時間の間に、形成されたPrx-CysP-SO2Hを検出しかつ工程(a)による前記接触の4時間後からPrx-CysP-SO2Hの量とPrx-CysP-SHの量との比を確認することにより行われることを特徴とする請求項20に記載の方法
【請求項22】
(1) スクリーニングされるべき物質を、Srxタンパク質の遺伝子がノックアウトされた動物およびSrxタンパク質の遺伝子が過剰発現される動物からなる群より選択されるヒト以外のトランスジェニック哺乳動物、特にマウスと接触させ、そして
(2) 前記動物の生存を測定する
ことを含むことを特徴とする、Prx/Srx抗酸化システムの障害に関連する癌、神経変性疾患および神経筋疾患の治療において有用な医薬品をスクリーニングする方法。
【請求項23】
配列番号1〜3、5、6および8〜10の配列からなる群より選択される配列により規定されるSrxタンパク質または請求項4に記載のペプチドFXGCHR (X = S)で動物を適切に免疫化することにより得られることを特徴とする抗-Srx抗体。
【請求項24】
タンパク質を、次のモチーフ:FXGCHR (X = GまたはS)を有する少なくとも1つの触媒部位を含む請求項1〜3に規定されるスルフィレドキシン(Srx)と、ATPおよびマグネシウムの存在下に接触させることを特徴とする、酸化還元活性を有する少なくとも2つのシステインを含む物質を還元する方法。
【請求項25】
請求項1〜3に規定されるスルフィレドキシンとATPとマグネシウムの存在下で、Cys-SO2H残基を含む物質を、Cys-SH残基を含む物質に還元することからなる工程を含むことを特徴とする、Cys-SO2H残基を含む物質からCys-SH残基を含む物質を合成する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−528207(P2007−528207A)
【公表日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518281(P2006−518281)
【出願日】平成16年7月2日(2004.7.2)
【国際出願番号】PCT/FR2004/001727
【国際公開番号】WO2005/005627
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(500539103)コミッサリア ア レネルジ アトミック (29)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE
【Fターム(参考)】