説明

酸化亜鉛または酸化チタンを含有する分散体

【課題】揮発性シリコーンを含まない、酸化亜鉛や酸化チタンの高濃度分散体、および、酸化亜鉛や酸化チタンを含有する、皮膚への塗布後にべとつき感の少ない化粧料を提供する。
【解決手段】酸化亜鉛または酸化チタンと、平均重合度3〜10のイソパラフィンと、分散剤として、HLB値が2〜5であるポリエーテル変性シリコーンと、を含有する分散体であって、酸化亜鉛または酸化チタンが、分散体全質量の60質量%以上を占める分散体、および該分散体を配合したことを特徴とする化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛や酸化チタンの顔料濃度の高い、且つ揮発性シリコーンを含まない分散体を提供するものである。本発明で得られた分散体は、特に日焼け止めやファンデーションなどの化粧料の分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
微粒子酸化亜鉛や微粒子酸化チタンは、その特有のバンドギャップに由来した紫外線吸収能を有することが知られている。また微粒子状、例えば一次粒子径が10〜100nm程度の微細な粒径を有する酸化亜鉛や酸化チタンは、約400〜800nmの波長をもつ可視光は透過するものの、それよりも波長の短い紫外線は散乱する、という性質を有する。そのため、微粒子酸化亜鉛や微粒子酸化チタンは、現在、紫外線カットフィラーとして日焼け止めなどの化粧料や、プラスチック、インクなどに添加する顔料成分として幅広く使用されている。
【0003】
微粒子酸化亜鉛や微粒子酸化チタンは凝集し易いため、粉体を直接化粧料等に配合したのでは、十分な透明性や紫外線カット能を発揮することができず、また皮膚に塗布した際にざらつきなどの不快な感触を与えることになる。従って一般的には、ビーズミルなどの分散機を用いて適当な分散媒に予め分散した状態で、化粧料等に配合される。
【0004】
このような分散媒としては、塗布後の速乾性を有するものが好ましい。特に化粧料分野においては、べたつかずに感触が良いこと、気化熱が小さいために冷感が無いことなどの観点から、揮発性のシリコーン、特にデカメチルシクロペンタシロキサンが広く用いられてきた(例えば特許文献1)。
【0005】
しかし、このデカメチルシクロペンタシロキサンについては、毒性の有無は明確ではないものの、その化学的安定性から、環境中に残留する問題がカナダ環境省(Environment Canada)などから提起されている。またデカメチルシクロペンタシロキサンに限らず、その他の揮発性シリコーンも化学的に安定であるために、同様の環境残留の問題が発生するおそれがある。そのため、分散媒として、揮発性シリコーンに替えて、他の油剤を用いて同様の分散体を作成する試みも行われてきた。
【0006】
しかし、揮発性シリコーンに替わる他の油剤を用いた場合には、相応の量の分散媒や分散剤を必要とし、分散体の顔料濃度を十分に高くできない、という問題があった。化粧料等の組成物の原料として使用する場合、有効成分以外の成分はできるだけ含まない方が好ましいことから、分散体に含まれる分散媒や他の添加成分の量が少ない、すなわち分散体の顔料濃度の高いものが求められている。具体的には、顔料濃度が60質量%以上のような顔料分散体が化粧料等の原料としては好ましい。
【0007】
しかしながら、従来の油剤を用いた分散体において顔料濃度を高くしようとしても、60質量%以上といった高濃度の顔料を含む分散体は、分散性に問題があるか、著しくはゲル化してしまう、といった問題があり、化粧料等の原料として適した高濃度の顔料(微粒子酸化亜鉛、あるいは微粒子酸化チタンなど)の分散体を作成することは困難であった(特許文献2、特許文献3等を参照)。
【0008】
さらに、他の油剤を分散媒とした場合には、揮発性シリコーンを配合した化粧料等の特徴である速乾性を再現できなかった。化粧料(例えば日焼け止め)に上記他の油剤を配合した場合、皮膚への塗布後にべとつき感が残ってしまう、という問題が解消できなかった。
【0009】
また、分散剤を工夫することにより顔料濃度を高めようとする試みも行われているものの、種々の問題が見られた。例えば特許文献4では、特定の反応性有機変性シリコーンを分散剤にすることを提案しているが、こういった官能基を持つシリコーンは安定性が悪く、酸化チタンや酸化亜鉛の表面活性やイオン溶出により変性してしまい、分散安定性に悪影響を与える恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−83452号公報
【特許文献2】特公平6−61457号公報
【特許文献3】特開2006−1886号公報
【特許文献4】特開2002−80771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、揮発性シリコーンを含まない、酸化亜鉛や酸化チタンの高濃度分散体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは鋭意努力することにより、分散媒として特定のイソパラフィンを用い、かつ分散剤としてHLB値が2〜5であるポリエーテル変性シリコーンを用いることにより、酸化チタンや酸化亜鉛を高濃度で含有する、分散安定性に優れた分散体が得られることを見出した。またその分散体を配合することにより、べとつき感の残らない化粧料が得られることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明の第一の態様は、酸化亜鉛または酸化チタンと、平均重合度が3〜10のイソパラフィンと、分散剤として、HLB値が2〜5であるポリエーテル変性シリコーンと、を含有する分散体であって、酸化亜鉛または酸化チタンが、分散体全質量の60質量%以上を占める分散体に関する。
【0014】
本態様においては、上記酸化亜鉛または酸化チタンが、分散体全質量の70質量%以上を占めるものが好ましい。
【0015】
上記分散体は、上記ポリエーテル変性シリコーンを分散体全質量に対して2〜15質量%含有するのが好ましい。
【0016】
上記酸化亜鉛または酸化チタンとしては、その表面が、シリカ、アルミナ、アルキルシラン、オルガノポリシロキサンから選択される少なくとも一種で表面処理されたものが好ましい。また、酸化亜鉛または酸化チタンは、その平均一次粒子径が100nm以下であるものが好ましい。
【0017】
また本発明の第二の態様は、上記いずれかの分散体を配合したことを特徴とする化粧料に関する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の分散体は、揮発性のシリコーンの代わりに、イソパラフィンを含有するものである。これにより、環境残留性が問題となっている揮発性のシリコーンを用いなくても、化粧料等の原料として適した分散体を得ることができる。
【0019】
またイソパラフィンを含有することにより、他の油剤を分散媒とした場合には困難であった、高濃度の顔料分散体を調製することができる。さらにイソパラフィンの平均重合度を3〜10とすることにより、分散媒の揮発性を維持でき、化粧料を肌に塗布した際の使用感にも優れる点で好ましい。
【0020】
また分散剤として、HLB値が2〜5であるポリエーテル変性シリコーンを用いることで、高濃度でも安定な酸化亜鉛または酸化チタンの分散体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明を詳述する。
(酸化亜鉛及び酸化チタン)
本発明の分散体は、酸化亜鉛または酸化チタンを含有する。酸化亜鉛及び酸化チタンの粒径や粒子形状には制約がなく、粒子サイズや粒子形状は、得られる粉体の用途に適したもので良い。しかしながら、紫外線遮蔽性や可視光透明性を高めるには、電子顕微鏡で観測した平均一次粒子径が100nm以下、更には10〜50nmのものが好適である。この平均粒子径は紡錘状酸化チタンの場合には短径方向のサイズが当てはまる。
【0022】
本発明で使用する酸化亜鉛または酸化チタンは、その表面を、粉体活性の抑制や化粧料使用感の改良、粒子表面の疎水化などの目的で無機物質によって表面処理を施されていてもよく、特にシリカやアルミナ、水酸化アルミニウムといった物質で表面処理されたものが好適である。更に、粉体の濡れ性改良や撥水性の付与などの目的で有機物質や有機高分子で被覆されていても良く、特にアルキルシランやオルガノポリシロキサンといった物質で被覆されたものが好適である。
【0023】
酸化亜鉛または酸化チタンを表面処理する場合の無機物質の被覆量は、酸化亜鉛または酸化チタン100質量部に対し、5〜60質量部であるのが好ましく、10〜45質量部であるのがより好ましい。5質量部よりも少ないと、粉体活性の抑制効果などが不十分となる場合があり、60質量部を超えると、酸化亜鉛または酸化チタンの本来の特性を阻害する可能性がある。
【0024】
酸化亜鉛または酸化チタンを表面処理する場合の有機物質や有機高分子の量は、基材100質量部に対し、1〜20質量部であるのが好ましく、2〜15質量部であるのがより好ましい。1質量部よりも少ないと、粉体の濡れ性改良や撥水性の付与効果などが不十分となる場合があり、20質量部を超えると、酸化亜鉛または酸化チタンの本来の特性を阻害する可能性がある。なお、上記「基材」は、有機物質や有機高分子で表面処理される材料をいい、例えば酸化亜鉛または酸化チタン粒子そのもののみならず、酸化亜鉛または酸化チタン粒子が無機材料などで表面処理されている場合には、その被覆層をも含む粒子全体をいう。従って、上記基材の質量は、酸化亜鉛または酸化チタン粒子と、必要に応じて施された(無機)表面処理層の合計の質量をいう。
【0025】
(イソパラフィン)
本発明で使用する分散媒は平均重合度3〜10のイソパラフィンである。ここでイソパラフィンとは、別名水添ポリイソブテンとも呼ばれ、イソブテンを単独重合、またはイソブテンとn−ブテンを共重合した後、水素添加して得られる側鎖を有する炭化水素の混合物である。
【0026】
本発明において、イソパラフィンの平均重合度は3〜10であり、4〜6が好ましい。ここで、イソパラフィンの平均重合度とは、1分子あたりに含まれるイソブテン単量体単位とn−ブテン単量体単位の合計数をいう。平均重合度が3より小さいと揮発性が著しく、分散体や化粧料の製造時に支障が出たり、化粧料の使用感が悪くなったりするおそれがある。また、重合度が10よりも大きくなると、常温で揮発しにくくなり、この場合も化粧料の使用感が悪くなる場合がある。
【0027】
上記イソパラフィンの原料となる単量体のイソブテンとn−ブテンの比率は任意であり、化粧料に配合した場合の使用感の好みに合わせてこの比率を自由に変えることができる。但し、イソパラフィンは必ずイソブテン単量体単位を含む。イソパラフィンの中でも軽質イソパラフィンが好ましく、医薬部外品原料規格2006の軽質流動イソパラフィン規格および流動イソパラフィン規格に適合するものが、人体への安全性や医薬部外品への適合といった経済性の観点からより好ましい。具体例としては、パールリーム(R)(パールリーム4(平均重合度:4〜6)、パールリームEX(平均重合度5〜10)、パールリーム6(平均重合度5〜10)(日油株式会社製))の商品名で市販されているものが挙げられる。
【0028】
(分散剤)
本発明の分散体は、分散剤としてHLB値が2〜5であるポリエーテル変性シリコーンを含有する。
【0029】
分散剤のHLB(Hydrophilic Lypophilic Balance)値は、非イオン性界面活性剤の親水性/親油性のバランスを示す指標であり、HLB値が大きいほど親水性が強いことを、小さいほど親油性が強いことを示す。HLB値の定義の仕方は幾つかあるが、本発明ではW.C.Grifinnによって定義された次式によって求める。
NHLB=(E+P)/5
(NHLB:HLB値、E:ポリオキシエチレン部の分散剤分子全体に対する質量%、P:多価アルコール部の分散剤分子全体に対する質量%)
【0030】
ポリエーテル変性シリコーンとは、ポリジメチルポリシロキサン部とポリオキシエチレン部を持つシリコーンのことである。より詳細に述べれば、主鎖がポリジメチルポリシロキサンであり、側鎖にポリオキシエチレン部を持つ分子鎖を持つものでも良く、ポリジメチルポリシロキサン部とポリオキシエチレン部がブロック共重合などの共重合体となっていても良い。また、HLB値が2〜5の幅にあれば、その他の分子鎖、例えばアルキル鎖や多価アルコール鎖、ポリオキシプロピレン部などで修飾されていても良い。HLB値が2〜5であるポリエーテル変性シリコーンを数種類混合して使用しても良い。そのようなポリエーテル変性シリコーンの具体例としては、KF−6038(信越化学製)等が挙げられる。
【0031】
上記ポリエーテル変性シリコーンの含有量は分散体全体の質量に対して2〜15質量%が好ましい。ポリエーテル変性シリコーンの量が2質量%よりも少ないと、高濃度で顔料を含有させることが難しくなったり、分散体の貯蔵安定性が悪くなったりする場合がある。また多すぎると化粧料配合時の自由度が狭くなったり、化粧料の使用感が悪くなったりする場合がある。
【0032】
(分散体)
本発明の分散体は、酸化亜鉛または酸化チタンと、平均重合度が3〜10のイソパラフィンと、分散剤として、HLB値が2〜5であるポリエーテル変性シリコーンと、を含有する分散体であって、酸化亜鉛または酸化チタンが、分散体全質量の60質量%以上を占める。
【0033】
分散体全質量に占める酸化亜鉛または酸化チタンの量は好ましくは70質量%以上である。先に述べたように、分散体に含まれる分散媒や他の添加成分の量が少ない、すなわち分散体の顔料濃度の高い方が、有効成分以外の成分の量を抑制でき、また化粧料等に配合した際の処方の自由度が高まることから好ましい。しかし、揮発性シリコーンに替わる他の油剤を用いた場合には、分散体中の顔料濃度を十分に高くできない、という問題があった。本願発明においては、分散媒として平均重合度が3〜10のイソパラフィンを用いることにより、従来の油剤では困難であった顔料濃度が60質量%以上の分散体を得ることができる。なお、酸化亜鉛または酸化チタンの量は、通常分散体全質量の99.9質量%以下、好ましくは90質量%以下、より好ましくは85質量%以下である。
【0034】
本発明の分散体は、必要に応じてさらに必要な添加剤を含んでもよい。添加剤としては、上記ポリエーテル変性シリコーン以外の分散剤、希釈剤、安定剤などが挙げられる。添加剤の量は、酸化亜鉛または酸化チタンの量が、分散体全質量の60質量%未満とならず、かつ酸化亜鉛または酸化チタンの分散性を損なわない範囲で適宜選択できる。
【0035】
分散体に含まれる、酸化亜鉛または酸化チタン以外の成分は、平均重合度が3〜10のイソパラフィン(分散媒)と、上記分散剤、及び必要に応じて添加される添加剤などである。分散体全体に占める酸化亜鉛または酸化チタンの量が60質量%以上、好ましくは70質量%以上であるであることから、上記イソパラフィンの量は分散体全質量の40質量%以下、好ましくは30質量%以下である。さらに添加される分散剤や添加剤の量に応じて、その量に相当する量のイソパラフィンを減じることで、顔料濃度が60質量%未満とならないように調整する。
【0036】
分散体を製造する方法は任意の既知の方法でよく、例えばビーズミルやボールミル、高圧ホモジナイザー、撹拌式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、湿式ジェットミルなどの装置で分散させることにより本発明の分散体を製造することができる。これらの装置は、分散度合いや生産効率性などの観点から自由に選ぶことができる。
【0037】
本発明の分散体は、日焼け止めやファンデーション等の化粧料に配合することができる。このようにして得られる化粧料は、揮発性シリコーンを含まない、またはその含有量が少ないことから、使用感に優れた化粧料である。
【実施例】
【0038】
(実施例1)
疎水化処理酸化亜鉛(FINEX−30−LPT、堺化学工業製、酸化亜鉛の表面をオルガノポリシロキサンで処理したもの)70部、イソパラフィン(パールリーム4、日油株式会社製)22部、ポリエーテル変性シリコーン(KF−6038、信越化学製、HLB=3.0)8部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後、ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理した。ビーズを分離することにより、酸化亜鉛分散体を得た。
【0039】
(実施例2)
疎水化処理酸化亜鉛(FINEX−30W−LP2、堺化学工業製、酸化亜鉛の表面をシリカ及びオルガノポリシロキサンで処理したもの)70部、イソパラフィン(パールリーム4、日油株式会社製)22部、ポリエーテル変性シリコーン(KF−6038、信越化学製)8部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理した。ビーズを分離することにより酸化亜鉛分散体を得た。
【0040】
(実施例3)
疎水化処理酸化チタン(STR−100A−LPT、堺化学工業製、酸化チタンの表面をシリカ、アルミナ及びオルガノポリシロキサンで処理したもの)60部、イソパラフィン(パールリーム4、日油株式会社製)28部、ポリエーテル変性シリコーン(KF−6038、信越化学製)12部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理した。ビーズを分離することにより酸化チタン分散体を得た。
【0041】
(比較例1)
疎水化処理酸化亜鉛(実施例1で使用したものと同一)60部、イソノナン酸イソノニル(CETIOL ININ、Cognis Japan製)32部、ポリエーテル変性シリコーン(KF−6038、信越化学製)8部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理した。ビーズを分離することにより酸化亜鉛分散体を得た。
【0042】
(比較例2)
疎水化処理酸化亜鉛(実施例1で使用したものと同一)60部、トリオクタノイン(EMALEX、日本エマルジョン製)32部、ポリエーテル変性シリコーン(KF−6038、信越化学製)8部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理し、ビーズ分離後に酸化亜鉛分散体を得た。
【0043】
(比較例3)
疎水化処理酸化亜鉛(実施例1で使用したものと同一)60部、流動パラフィン(スモイルP−80、松村石油研究所製)32部、ポリエーテル変性シリコーン(KF−6038、信越化学製)8部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理し、ビーズ分離後に酸化亜鉛分散体を得た。
【0044】
(比較例4)
疎水化処理酸化亜鉛((実施例1で使用したものと同一)60部、イソパラフィン(パールリーム4、日油株式会社製)40部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理し、ビーズ分離後に酸化亜鉛分散体を得た。
【0045】
(比較例5)
疎水化処理酸化亜鉛(実施例1で使用したものと同一)60部、イソパラフィン(パールリーム4、日油株式会社製)32部、ポリエーテル変性シリコーン(KF−6012、信越化学製、HLB=7.0)8部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理し、ビーズ分離後に酸化亜鉛分散体を得た。
【0046】
(比較例6)
疎水化処理酸化チタン(実施例3で使用したものと同一)60部、イソプロピルパルミテート(Crodamol IPP、Crodamol製)28部、ポリヒドロキシステアリン酸(Solsperse 3000、Lubrizol製)12部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理し、ビーズ分離後に酸化チタン分散体を得た。
【0047】
(比較例7)
疎水化処理酸化チタン(実施例3で使用したものと同一)50部、イソプロピルパルミテート(Crodamol IPP、Crodamol製)38部、ポリエーテル変性シリコーン(KF−6038、信越化学製)12部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理し、ビーズ分離後に酸化チタン分散体を得た。
【0048】
(比較例8)
疎水化処理酸化亜鉛(実施例2で使用したものと同一)70部、デカメチルシクロペンタシロキサン(KF−995、信越化学製)22部、ポリエーテル変性シリコーン(KF−6038、信越化学製)8部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理し、ビーズ分離後に酸化亜鉛分散体を得た。
【0049】
(比較例9)
疎水化処理酸化チタン(実施例3で使用したものと同一)60部、デカメチルシクロペンタシロキサン(KF−995、信越化学製)28部、ポリエーテル変性シリコーン(KF−6038、信越化学製)12部およびφ0.5mmジルコニアビーズ100部をマヨネーズ瓶に入れ、混合した後ペイントシェーカー(レッドデビル社製)で1時間処理し、ビーズ分離後に酸化チタン分散体を得た。
【0050】
[粘度]
50mlスクリュー瓶に分散体を入れ、B型粘度計(東京計器製)でローターNo.3を使用し、回転開始から60秒後の粘度を測定した。分散後の分散体粘度(25℃)のデータを表1に示す。
【0051】
表1の結果より、実施例1〜3の分散体は、イソパラフィンを溶媒とすることで、疎水化処理酸化亜鉛の濃度70質量%、酸化チタンの濃度60質量%という高濃度でもゲル化することのない、粘度の低い良好な分散体を作製することができた。
【0052】
一方、分散媒にイソノナン酸イソノニル、トリオクタノイン、流動パラフィンを用いると疎水化処理酸化亜鉛の濃度60質量%においても分散後ゲル化が見られた(比較例1〜3)。また、ポリエーテル変性シリコーンを分散剤に用いない場合やHLB値が7.0のポリエーテル変性シリコーンを分散剤に用いた場合においても疎水化処理酸化亜鉛の濃度60質量%でゲル化が見られた(比較例4、5)。
【0053】
特許文献1で示された酸化チタン、イソプロピルパルミテート(Crodamol IPP、Crodamol製)、ポリヒドロキシステアリン酸(Solsperse 3000、Lubrizol製)の分散体は疎水化処理酸化チタンの濃度60質量%においてゲル化が見られた(比較例6)。さらに、分散剤として、比較例5におけるポリヒドロキシステアリン酸の代わりにHLB値が3.0のポリエーテル変性シリコーンを用いた場合においても疎水化処理酸化チタンの濃度50質量%でゲル化が見られた(比較例7)。
【0054】
揮発油としてよく使用されているデカメチルシクロペンタシロキサンを用いた場合、疎水化処理酸化亜鉛の濃度70質量%および疎水化処理酸化チタンの濃度60質量%の分散体はゲル化が見られた。(比較例8、9)
【0055】
これにより、分散媒としてイソパラフィンを用いることにより、高濃度で酸化チタンや酸化亜鉛といった顔料を分散できることが分かった。特に、比較例8、9に示すように、従来から広く使用されているデカメチルシクロペンタシロキサンを分散媒とした場合には達成できなかった高濃度の顔料分散体が得られる点は予想外であった。
【0056】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛または酸化チタンと、
平均重合度3〜10のイソパラフィンと、
分散剤として、HLB値が2〜5であるポリエーテル変性シリコーンと、
を含有する分散体であって、
酸化亜鉛または酸化チタンが、分散体全質量の60質量%以上を占める分散体。
【請求項2】
前記酸化亜鉛または酸化チタンが、分散体全質量の70質量%以上を占める請求項1記載の分散体。
【請求項3】
前記ポリエーテル変性シリコーンを分散体全質量に対して2〜10質量%含有する、請求項1または2記載の分散体。
【請求項4】
前記酸化亜鉛または酸化チタンは、その表面が、シリカ、アルミナ、アルキルシラン、オルガノポリシロキサンから選択される少なくとも一種で表面処理されたものである、請求項1、2または3記載の分散体。
【請求項5】
前記酸化亜鉛または酸化チタンは、その平均一次粒子径が100nm以下である、請求項1、2、3または4記載の分散体。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載の分散体を配合したことを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2011−79941(P2011−79941A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232737(P2009−232737)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000174541)堺化学工業株式会社 (96)
【Fターム(参考)】