説明

酸化物超電導体およびその製造方法

【課題】複数のLn系超電導体の原料溶液を混合することによって得られる混合超電導体膜の格子定数を調整することができ、基板上に厚膜を形成したときにc軸配向粒子を高い比率で含み、高い特性を示す酸化物超電導体を提供することにある。
【解決手段】主成分が一般式LnBa2Cu37-x(ここで、LnはGd,Tb,Dy,Ho,Er,TmおよびYからなる群より選択される2種以上であり、各々の元素の含有率は10〜90モル%である)で表され、モル比で銅の10-2〜10-6のフッ素を含む酸化物超電導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物超電導体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近実用化が進められている高臨界電流酸化物超電導材料は、核融合炉、磁気浮上列車、加速器、磁気診断装置(MRI)などへの有用な応用が期待され、一部は既に実用化がなされている。
【0003】
酸化物超電導体には主にビスマス系、イットリウム系(以下、Y系と記載する)超電導体などがあるが、磁場中特性が良好なY系超電導体が実用化に近い材料として大いに注目を集めている。Y系超電導体とはYBa2Cu37-xで代表される酸化物のことであり、イットリウムをランタノイド族の一部元素で置換した構造の酸化物も磁場特性に優れた超電導体であることが知られている。そのランタノイド族元素としては、ランタン、ネオジウム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、およびイッテルビウムなどが知られている。
【0004】
Y系超電導体の製造方法としてはパルスレーザー堆積(PLD)法、液相成長堆積(LPE)法、電子ビーム(EB)法、金属有機物堆積(MOD)法などが挙げられる。このうち、非真空で低コストのMOD法は近年脚光を浴び、米国や日本を中心に盛んに研究がなされている。そのMOD法の中でもトリフルオロ酢酸を用いるMOD法(以下、TFA−MOD法と称す)は、近年、高い特性を有する超電導体を製造できることが報告されている。
【0005】
MOD法は、化学溶液をスピンコート法やディップコート法などで単結晶基板上へ溶液を塗布および乾燥することによりゲル膜を得て、そのゲル膜を仮焼および本焼の2回の常圧熱処理及び酸素アニールにより超電導体を得る方法である。この方法では、400〜500℃で行われる仮焼時に前駆体中の有機物を分解して酸化物とし、700〜900℃で行われる本焼時に酸化物層の2軸配向組織を形成する。
【0006】
MOD法では、仮焼後に微結晶が形成され、本焼時にその微結晶を起点として無秩序な配向組織が形成され、膜厚が100nm以上になるとその影響が特に大きくなる点が問題になる。この方法で、良好な配向組織を得るためには、仮焼後の膜中で熱分解後の酸化物などが結晶成長して微結晶が形成されないように、ごく短時間で急熱急冷することが重要になる。この急熱急冷は試料を電気炉に出し入れすることにより行うが、中央部と端部で加熱の度合が異なるために均一な膜を得るのが困難であった。そのためこの方法は精密な温度制御を可能とする大型の電気炉が必要となり、しかも少なからず存在する異相により高特性超電導体を再現性よく得るのが困難であった。
【0007】
上記MOD法を改良し、仮焼膜中の微結晶が本焼後の熱処理組織に影響しない方法として、トリフルオロ酢酸塩を用いるTFA−MOD法が開発された。TFA−MOD法は1988年にGuptaらによって最初に報告されたが、当時は出発原料の影響で溶液の純度が低かったと考えられ、他のMOD法と同様、さほど際立った特性や再現性を示さなかった。その後、TFA−MOD法はMcIntyreらにより改良され、77K,0Tでの超電導臨界電流値(Jc)が1MA/cm2を超えるまでに至った。
【0008】
TFA−MOD法はMOD法でありながら仮焼膜中微結晶が本焼後の配向に影響を及ぼさない。TEM観察によれば、仮焼膜の断面には多数のナノ微結晶が存在しているが、本焼後にはそれが全て解消し、再現性良く2軸配向組織が形成されることが確認されている(非特許文献1)。そのため通常のMOD法とは異なり、10時間以上に及ぶ仮焼で、超電導特性に有害な炭素をほぼ完全に追い出すことが可能であり、高い特性を有する超電導体が再現性よく得られる(非特許文献2)。当初は本焼時の成長機構が未解明であったが、最近になりフッ素が混入された結果として擬似液相ネットワークが形成され、仮焼膜中微結晶が解消されることが解明された。それによりTFA−MOD法が通常のMOD法にない再現性と高特性を示すことが原理的にも明らかになった(非特許文献3)。形成された疑似液相ネットワークによる成長では化学平衡反応が深く関与するため膜中に微量のフッ素が残留することもTFA−MOD法の特徴の一つとなっている。ただしこの微量の残留フッ素は超電導特性を低下させるものではないことも明らかになっている。
【0009】
TFA−MOD法によるY系超電導体成膜における高特性と驚異的な再現性は、a/b軸配向粒子の低減がその一因になっていると考えられている。a/b軸配向粒子は、基板面に平行な方向へ超電導電流が流れるc軸配向粒子が横倒しになったものであり、基板面の垂直方向に主として超電導電流が流れるため、基板面に平行な方向への超電導電流すなわち超電導特性を著しく低下させる原因となる。そのa/b軸配向粒子形成の原因として現時点で主に以下の3点が考えられている。すなわち、
(1)本焼条件(酸素分圧や温度)が最適でない、
(2)溶液中に不純物が存在する、
(3)c軸配向粒子の格子定数と単結晶基板との格子定数が合わない、
という要因である。
【0010】
(1)に関しては、HammondとBormannが超電導体の作製手法によらない最適な条件が存在することを報告している(非特許文献4)。それによれば焼成時の酸素分圧が半減するごとに最適焼成温度が約25℃程度低下している。MOD法及びTFA−MOD法の最適本焼条件はPLD法などの手法と同一である。
【0011】
(2)に関しては、不純物量が低減することによりc軸配向粒子の比率が上昇し、超電導特性が向上することが実験的に知られている。それにより特性が飛躍的に改善されることも開示されている(特許文献1)。
【0012】
(3)に関しては、超電導体は、本来的には物質固有のa,b,c軸長を持つはずであるが、単結晶基板上に薄膜を成膜する場合には基板の格子定数に合わせるように歪んだ状態でエピタキシャル成長すると考えられる。これは、一般的にこの手法で得られる超電導体の膜厚が0.1〜10μmであるのに対して、単結晶基板の厚みは0.4〜1.0mm程度と約1000倍の厚みがあって頑強であり、薄膜と基板で格子定数が異なる場合には超電導膜が歪みながら成長すると考えられるためである。基板直上では単結晶基板の格子定数とほぼ同じ格子定数が観測されると考えられ、0.1μm程度のごく薄い膜を成膜してXRDにより相同定を行うと、基板の格子定数に近い値が観測される。しかし膜厚が厚くなると超電導体が本来持つ格子定数に近づくと考えられる。a/b軸配向粒子ができやすいか、c軸配向粒子ができやすいかは、単結晶基板の格子定数により決定付けられることになる。
【0013】
ここで、TFA−MOD法を用い、LaAlO3、NdGdO3、SrTiO3、CeO2/YSZの4種類の単結晶基板上に膜厚150から300nmのYBCO超電導体成膜を成膜すると、XRD測定におけるa/b軸配向粒子のピーク強度比率は膜厚によらず、常にNdGdO3、LaAlO3、SrTiO3、CeO2/YSZの順に弱くなる。すなわちCeO2/YSZ基板を用いた場合に最も高いJc値を持つ超電導膜が得られ、0.22μm厚で11MA/cm2(77K,0T)もの特性が得られる(非特許文献1)。c軸配向比率を高めるためには、基板か超電導体が本来持つ格子定数を変化させることが望ましいが、基板の格子定数を連続的に変化させることはできない。それは単結晶基板として用いることが可能な物質には限りがあり、またその格子定数も飛び飛びの値であるためである。
【0014】
そこで、超電導体の軸長を調整してc軸配向粒子比率を向上させることが要望されている。上述したように、YBCO超電導体のYの位置に特定のLn族元素を置換することが可能である。Ln族元素については、原子番号と共にそのイオン半径が収縮するランタノイド収縮が見られ、現状では各Ln系超電導体のa,b,c軸長測定が困難であるが、本質的にその各々の超電導体の軸長は異なると考えられる。基板に応じて2種類以上のLn系超電導体を混合することによりc軸配向粒子が得られやすい超電導体作製が期待されている。
【0015】
上述したように、Yと置換して超電導体を示すLn族元素としては、La,Nd,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Ybなどが知られている。しかし、これらのLn族元素のうちには、TFA−MOD法の適用が困難なものが含まれている。原子番号の小さいLa,Nd,Smの場合、トリフルオロ酢酸塩メタノール溶液を調整しようとするとエステル化反応が起きて塩が分解しやすく、エステル化反応が起きない条件で精製を行うと多量の不純物により良好な超電導特性が得られなくなる。原子番号の大きなYbの場合、溶解度が極端に低く、実用的な膜厚が得られる溶液を調製できないことがわかっている。
【0016】
その他のGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tmに関しては、Yのトリフルオロ酢酸塩と同様に、SIG(Solvent-Into-Gel)法により高純度のメタノール溶液調整が可能であり(非特許文献5、特許文献1)、それぞれ単体の超電導体が得られる。これらの超電導体の臨界電流密度(Jc)は3−4MA/cm2(77K,0T)と実用的には十分に高い値である(非特許文献6、7)が、YBCO系超電導体のJc値である7MA/cm2(77K,0T)と比較すると半分程度の値である。各Ln系溶液を混合することにより、単体の超電導体が持つa,b,c軸長を一定範囲で自由に調整可能な超電導体が得られることが期待されていた。しかし、原料溶液の混合により得られる超電導体はどれもJc値が低下し、1:1の比率で溶液を混合した場合に得られる超電導体のJc値は1MA/cm2(77K,0T)程度に低下した。ここで用いられていたLn系原料であるランタノイド酢酸塩は純度が97−98%のものであり、不純物などによりa/b軸配向粒子の比率が増大し特性を下げていた可能性があった。
【非特許文献1】T. Araki and I. Hirabayashi, Supercond. Sci. Technol. 16, R71 (2003).
【非特許文献2】T. Araki, Cryogenics 41, 675 (2002).
【非特許文献3】T. Araki, et al, J. Appl. Phys. 92, 3318 (2002).
【非特許文献4】R. H. Hammond and R. Bormann, Physica C 162-164, 703 (1989).
【特許文献1】特許第3,556,586号
【非特許文献5】T. Araki, et al, Supercond. Sci. Technol. 14, L21 (2001).
【非特許文献6】T. Iguchi et al. Physica C 392-396 900 (2003).
【非特許文献7】T. Iguchi et al, Supercond. Sci. Technol. 15, 1415 (2002).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、複数のLn系超電導体の原料溶液を混合することによって得られる混合超電導体膜の格子定数を調整することができ、基板上に厚膜を形成したときにc軸配向粒子を高い比率で含み、高い特性を示す酸化物超電導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様に係る酸化物超電導体は、主成分が一般式LnBa2Cu37-x(ここで、LnはGd,Tb,Dy,Ho,Er,TmおよびYからなる群より選択される2種以上であり、各々の元素の含有率は10〜90モル%である)で表され、モル比で銅の10-2〜10-6のフッ素を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の他の態様に係る酸化物超電導体の製造方法は、金属Ln(ここで、LnはY,Gd,Tb,Dy,Ho,ErおよびTmからなる群より選択される2種以上であり、各々の元素の含有率は10〜90モル%である)の酢酸塩、酢酸バリウムおよび酢酸銅のそれぞれの溶液を、単独でまたは混合して、フルオロカルボン酸との反応および精製を行ってゲルを生成し、金属Ln、バリウムおよび銅を1:2:3のモル比で含むようにアルコールを主とした溶媒に溶解してコーティング溶液を調製し、前記コーティング溶液を基板上にコーティングして膜を形成し、仮焼および本焼を行い、酸化物超電導体を製造する方法において、1度目の精製で得られたゲルをアルコールに溶解して不純物入り溶液を得た後、その溶液を再び精製することにより不純物を減少させたゲルを得ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、Gd,Tb,Dy,Ho,Er,TmおよびYのうち2種以上を広範囲の比率で含む組成を有し、しかも良好な特性を示す酸化物超電導体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る方法では、以下のような手順により酸化物超電導体を製造する。
まず、図1を参照して、混合金属酢酸塩をフルオロカルボン酸と反応させ、精製する工程を説明する。図1において、a1の混合金属酢酸塩とは、金属Lnを含む金属酢酸塩、酢酸バリウムおよび酢酸銅の総称として用いている。金属Lnとしては、ガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよびイットリウムからなる群より選択される2種以上が用いられる。なお、各々の酢酸塩を個別に調製した後、混合して溶液を得ることもでき、各溶液の混合時期は特に限定されない。金属Ln、バリウム、銅のモル比はおよそ1:2:3である。ただし、これらのモル比が1:2:3から10%程度ずれても、得られる超電導体の特性に致命的な影響が及ぶことはない。
【0022】
混合金属酢酸塩に対してa2のフルオロカルボン酸(a2)を混合して反応させ精製する。フルオロカルボン酸は、トリフルオロ酢酸(TFA)、ペンタフルオロプロピオン酸(PFP)、およびヘプタフルオロブタン酸(HFB)からなる群より選択される。ただし、酢酸バリウムはPFPまたはHFBとの反応により沈殿を生成するので、酢酸バリウムとPFPまたはHFBとの組み合わせは避ける必要がある。他の酢酸塩との反応にPFPまたはHFBを用いる場合には、少なくとも酢酸バリウムはTFAと反応させて精製しておき、その後に他の酢酸塩の反応生成物と混合する。酢酸バリウムとTFAで溶液を調製する場合、途中で得られる精製物は半透明白色の粉末となるが、そのほかは図1に示す通常の手法と大差はない。トリフルオロ酢酸バリウムとその他のペンタフルオロプロピオン酸金属塩は濃度を一定以上にしたときに沈殿が生じなくなる。
【0023】
なお上記のフルオロカルボン酸は部分的にフッ素が水素に置換された物質を用いても大きな変化は見られない。ただ水素量が増大すると解離定数が小さくなり、未反応の酢酸塩が多量に残ることになるので、経験的に水素モル量は全フッ素量の10%程度以下が望ましいようである。フルオロカルボン酸にTFAを主としたもの、すなわち炭素数2のフルオロカルボン酸を用いる場合は沈殿を生じる物質がないため全ての酢酸塩を一度にイオン交換水に溶解・反応させることが可能である。TFA主体のフルオロカルボン酸内に部分的にフッ素が水素置換されたジフルオロ酢酸やモノフルオロ酢酸が合計10モル%程度の少量含まれる場合も超電導体の致命的特性低下は見られない。
【0024】
カルボン酸とフルオロカルボン酸はその化学的性質が著しく異なり、カルボン酸が弱酸であるのに対して、フルオロカルボン酸は非常に強い酸であることが知られている。これは酸が解離しイオンとなる時に対をなす酸素がマイナスに帯電しやすいが否かで決まるためである。フッ素のないカルボン酸では炭素に直結した水素が炭素を通して酸素に電子を供与するため解離時に酸素がマイナスに帯電しやすく、強力に水素と引き合うために解離定数は小さな値すなわち弱酸となる。一方、フルオロカルボン酸の場合は電気陰性度が酸素よりも強いフッ素が酸素の電子を炭素を経由して吸引するため、解離時に酸素が中性化し安定する。そのため水素イオンがイオン化したままの状態を維持しやすく強酸となる。このため例えば酢酸とトリフルオロ酢酸では解離定数が4桁も違うため、酢酸塩とトリフルオロ酢酸を混合した瞬間にほぼ全ての物質が置換すると考えられる。
【0025】
また、金属Lnを含む金属酢酸塩を炭素数3以上のフルオロカルボン酸、例えばペンタフルオロプロピオン酸と反応させた後、より炭素数の少ないフルオロカルボン酸基たとえばトリフルオロ酢酸基で置換してもよい。TFA−MOD法では仮焼時に炭素追い出し機構が作用し、有害な炭素は除去されやすいが、少量の炭素は残留する可能性があるためペンタフルオロプロピオン酸よりもトリフルオロ酢酸が望ましい物質である。より炭素数の小さなフルオロカルボン酸に置換しても溶解度などで問題となることはなく、むしろ溶解度は改善する。すなわち、全ての塩をトリフルオロ酢酸塩とした後に混合すれば任意の濃度で沈殿は生じることはない。
【0026】
酢酸塩とフルオロカルボン酸塩とを反応させた後に精製するが、この精製時にSolvent-Into-Gel(SIG)法を用いる。SIG法ではゲルに対して多量のメタノールを加えて、不純物(水と酢酸)を置換し、メタノールを敢えて取り込ませることにより不純物含有量が少ない粉末またはゲルを得る。このように粉末またはゲルを再びメタノールに溶解して高純度溶液を得るSIG法を用いることによって、TFA−MOD法に特に有害な水を1/20程度に低減することができる。
【0027】
次に、図2を参照して、複数の溶液を混合したコーティング溶液を調製し、このコーティング溶液を基板上に成膜してゲル膜を形成し、仮焼および本焼を行い、酸化物超電導体を得る工程を説明する。図2において、溶液Aと溶液Bで金属Lnに相当する元素が異なり、ここでは金属Mと金属Nとする。溶液AとBは任意の比率で混合することができ、得られるbのコーティング溶液中において、金属MとNの和、バリウムおよび銅のモル比がおよそ1:2:3となる。このコーティング溶液を基板上に成膜してゲル膜を形成する。その後、仮焼(一次熱処理)および本焼(二次熱処理)、さらに純酸素アニールを行い、酸化物超電導体を得る。この図2のaにおいて、溶液を3種類以上としても同じように酸化物超電導体が得られる。
【0028】
形成されたゲル膜は電気炉中にて仮焼を経ることにより金属酸化フッ化物からなる仮焼膜となる。図3に仮焼時の温度プロファイル(および雰囲気)の一例を示す。
【0029】
(1)時刻0からta1(熱処理開始から7分程度)の間に熱処理炉内の温度を室温から100℃まで急激に上昇させる。このとき熱処理炉内を常圧の乾燥した酸素雰囲気に置く。なお、この後の熱処理工程は全て常圧下で行うことができる。
【0030】
(2)時刻ta1になったとき熱処理炉内の雰囲気を加湿した常圧の純酸素雰囲気に変更する。そして、時刻ta1からta2(熱処理開始から42分程度)の間に熱処理炉内の温度を100℃から200℃に上昇する。このとき加湿した純酸素雰囲気を、例えば、湿度1.2%〜12.1%の範囲に設定する。上記の湿度は露点10℃および50℃に相当する。湿度は所定の温度の水に雰囲気ガス(酸素ガス)の気泡を通すことで調整できる。すなわち、水中を通過したときの気泡内の飽和水蒸気圧によって湿度が決まる。飽和水蒸気圧は温度によって決定される。湿度の露点相当温度を室温よりも低く設定するにはガスを分流して一部のみ水に雰囲気ガスの気泡を通した後に混合する。なおこの加湿は主に最も昇華しやすいフルオロ酢酸銅の部分加水分解を行うことによりオリゴマーとし、見掛けの分子量を上げて昇華を防止することにある。フルオロ酢酸がトリフルオロ酢酸の場合には、下記のように加水分解が行われ、銅塩の両端のFとH原子で水素結合を作り、4〜5分子がつながることによりみかけの分子量が増大するため昇華が抑制される。
CF3COO-Cu-OCOCF3 + H2O → CF3COO-Cu-H + CF3COOH↑。
【0031】
(3)時刻ta2からta3(4時間10分から16時間40分程度)の間に炉内の温度を200℃から250℃に緩やかに上昇させる。緩やかに上昇させるのは部分加水分解された塩が急激な反応により燃焼し炭素成分が残ることを防止するためである。長時間の分解反応により塩の共有結合部が開き、一時的に金属原子と酸素の結合(Y−O,Ba−O,Cu−O)または金属酸化物(Y23、BaO、CuO)が形成され、YとBaに関しては非特許文献1に記載のとおりフッ素に置換され、酸素フッ素との不定比化合物を形成する。この状態で徐々に反応が進み温度が保持されるため、単一物質であるCuOのみが粒成長して数十nmのナノ微結晶となる。フッ素と酸素が不定比のYおよびBa成分は粒成長できずにアモルファスとなる。
【0032】
(4)時刻ta3からta4およびta4からta5(この間2時間程度)の間に熱処理炉内の温度を250℃から400℃まで上昇させる。時刻ta2からta3の間に分解した不要な有機物が水素結合などで膜中に残存している。この工程では、不要な有機物を加熱により除去する。
【0033】
(5)時刻ta5以降はガスを流しながら炉冷を行う工程である。このようにして得られた仮焼膜は電気炉中で本焼熱処理と純酸素アニールを経て超電導体となる。
【0034】
図4に本焼時の温度プロファイル(および雰囲気)の一例を示す。
(6)時刻0からtb1(熱処理開始から7分程度)の間に熱処理炉内の温度を室温から100℃まで急激に上昇させる。このとき熱処理炉内を常圧の酸素混合アルゴンガス雰囲気中に置く。この時の酸素濃度は焼成を行う超電導体の金属種や焼成温度により最適濃度が決まる。従来のY系(YBa2Cu37-x)の最適焼成条件は、800℃焼成の場合の酸素分圧は1000ppmであり、温度を25℃低下させるたびに酸素濃度をほぼ半減させるのが好ましいとされていた。本発明における全ての溶液においても温度を25℃低下させるたびに酸素濃度はほぼ半減させるのが好ましいが、800℃焼成における酸素分圧はGd元素を含む場合とそうでない場合で異なる。Gdを含まない場合は従来のYと同じ1000ppmである。Gdを含む場合、Gdが0%および100%の時の酸素分圧を1000ppmおよび250ppmとし、その間は混合比率に応じて対数的に比例配分した酸素分圧を用いればほぼ最適な超電導体が得られる。250ppmとすべきところで1000ppmとしても超電導特性はゼロになるわけではなく、1/3程度に低下した超電導体が得られることがわかっている。なお、この後の熱処理工程は全て常圧下で行うことができる。
【0035】
(7)時刻tb1からtb2(33分間から37分間程度、最高到達温度まで20℃毎分程度で加熱)およびtb2からtb3(5分程度)で熱処理炉内温度を750℃〜825℃の熱処理最高温度まで上昇させる。時刻tb1において乾燥ガスを仮焼と同様の方法で加湿する。このときの加湿量は1.2%(露点10℃)から30.7%(露点70℃)まで広い範囲で選択できる。加湿量を増大させると反応速度が増大する。その増加量は0.5乗と見積もられている(非特許文献1に詳細記述)。tb2からtb3で昇温速度を小さくするのはtb3において電気炉温度の行き過ぎを小さくするためである。温度650℃程度で仮焼膜と水蒸気で膜内部に非特許文献3に記載される疑似液相形成が始まり、膜内部にそのネットワークが形成される。
【0036】
(8)時刻tb3からtb4(45分から3時間40分程度、この時間は最高温度と最終膜厚に依存し温度が低く膜厚が厚いときに最長となる)の間に疑似液相ネットワークからLnBa2Cu36(LnはGd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yから選択される2種以上)が基板上に順次形成され、同時にHFガスなどが放出される。このときの簡略化された化学反応は以下のように記述される。
【0037】
(Ln-O-F:アモルファス) + H2O → Ln2O3 + HF↑
(Ba-O-F:アモルファス) + H2O → BaO + HF↑
(1/2)Ln2O3 + 2BaO + 3CuO → LnBa2Cu3O6
(9)時刻tb4からガスを乾燥ガスに切り替える。tb4までに形成された酸化物LnBa2Cu36は800℃付近の高温では水蒸気に安定であるが、600℃付近では水蒸気により分解してしまうため乾燥ガスに切り替える。
【0038】
(10)時刻tb4からtb5(10分間程度)に引き続き、時刻tb5からtb6(2時間から3時間30分程度)に至るまで熱処理炉内の温度を下げ続ける。この間、形成された酸化物に変化はない。
【0039】
(11)時刻tb6でガスを酸素混合アルゴンガスから乾燥純酸素ガスへ切り替える。この純酸素アニールにより、LnBa2Cu36は、LnBa2Cu37-x(x=0.07)となり超電導体が得られる。この純酸素切り替え温度は金属Lnにより異なる。従来のYの場合は525℃であったが、LnとしてGdを含む場合やや低めの425〜525℃からアニールを開始したほうがよい。
【0040】
また、図5(A)および(B)を参照して、本焼時における超電導体の結晶粒子の成長機構について説明する。図5(A)は成長初期、(B)は成長中期を示している。図5(A)に示すように、成長初期において、基板1上に形成されている仮焼後の膜2を構成する超電導体の前駆体3中に均等に超電導粒子の核4が生成する。図1(B)に示すように、成長中期において、核4を起点として図の水平方向に結晶5が成長し、隣接する結晶5とぶつかったところに粒界6ができる。
【0041】
このような機構で成長した超電導体においては、微結晶同士がぶつかり合うところで粒界が5〜50nm毎に規則正しく配列する。この粒界の周期は本焼時のアニール条件に応じて5〜50nmで変化するようである。この微視領域での周期的粒界形成は磁束捕捉に有効であり、本発明の方法により製造される超電導体の特性と再現性の両方を高めているものと考えられる。実際、10m級線材の両端間で200A程度の電流が高い再現性で得られた報告もなされている。
【0042】
なお、超電導特性を劣化させる要因として、上述したように残留炭素の直接的影響以外にも、熱処理条件や溶液中不純物に起因するc軸配向粒比の低下が挙げられる。Ln系の超電導体はY系と同様、基板面にc軸配向粒が形成されることにより面に水平な方向に超電導電流が流れる。しかし、a軸とb軸長はほぼ等しく、しかもc軸長のほぼ1/3であるため、c軸配向粒の横倒し組織であるa/b軸配向粒が条件によっては形成されやすい。この組織が形成されると基板面に垂直な方向にのみ電流が流れるため、平行な方向への超電導電流が遮断されて特性が低下する。更にc軸配向粒は基板面と平行な方向への成長速度が積層方向への速度の100倍近くあると考えられている。すなわちa/b軸配向粒の場合、基板面の垂直方向に速く成長し超電導特性を低下させる要因となる。
【0043】
c軸配向粒とa/b軸配向粒の核生成確率は、基板面の格子定数との整合性によっても決まると考えられ、熱処理条件(酸素分圧や焼成温度)の選択によりc軸配向粒形成確率を極大化することが可能である。しかし、不純物の存在により、c軸配向粒が形成されやすい条件でもa/b軸配向粒が形成され、特性が低くなるという結果も一方で確認されている。SIG法を用いずに合成された溶液を用いて得られた厚膜のY系超電導膜では特に特性が低下する。a/b軸配向粒は核生成により表面付近まで組織が成長するが、厚膜では単位面積当たりのa/b軸配向粒生成率が高まるため、特性が低下しやすくなる。一方、SIG法による高純度溶液を用いてTFA−MOD法によりY系超電導膜を得た場合にはa/b軸配向粒の影響が小さく、上述したように良好な再現性で高いJc値が得られている。
【0044】
本発明においても、SIG法による高純度溶液を用いることにより、a/b軸配向粒の影響が小さくすることができる。本発明においては特性低下を防ぐためにLn系の原料溶液を全てSIG法により高純度溶液としている。高純度化していない場合の特性はLn系単体でJc値が約半分程度に低下していることがわかった。これらの不純物を含む2種類の溶液を1:1で混合した場合に特に顕著にJc値が低下しており、その値は混合前の1/3程度にまで低下している。溶液を混合した場合にJc値が大きく低下する機構は現在のところわかっていないが、Ln系それぞれに固有の不純物が存在し、混合により種類が増えた不純物の相乗効果で大きくJc値が低下すると考えられる。
【0045】
本発明の実施形態に係る酸化物超電導体は、より詳細には以下のように規定できる。すなわち、基板上に膜として形成され、主成分がLnBa2Cu37-x(ここで、Lnはガドリニウム、テルビウム、ディスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウムおよびイットリウムからなる群より選択される2種以上であり、各々の元素の含有率は10〜90モル%である)で表され、モル比で銅の10-2〜10-6のフッ素を含む。本明細書において、膜とは0.05μm以上10μm以下の厚さを有するものをいう。c軸配向粒のピーク強度をIcとa/b軸配向粒のピーク強度をIabとしたとき、a/b軸配向粒子の割合を示す目安としてrab=Iab/(Ic+Iab)と定義する。本発明の実施形態に係る酸化物超電導体では、全ての金属Lnについてrabは15%以下である。また、基板面に垂直な断面でのTEM観察で、基板とLnBa2Cu37-x界面における2軸配向層の比率が95%以上であり、かつ表面層の2軸配向比率が80%以下である。また、基板から垂直方向に50nm移動した基板と平行な面でのTEM観察で、結合角0.2〜1度程度の粒界が5〜50nmごとに規則正しく配列する構造を持つ。
【0046】
本発明の実施形態に係る方法により、フルオロカルボン酸を用いるMOD法においてSIG法により不純物量を低減した溶液を調製し、原料溶液の混合により本質的なa,b,c軸長が変化しTc値に反映された酸化物超電導薄膜を製造することができる。このため、単結晶上に厚膜の超電導体を作製したときはもちろん、格子定数が比較的自由に変えられる中間層付き金属基材上にc軸配向粒子を優先的に成膜することも可能であり従来よりも高いJc値の超電導体を得ることができる。また、Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yを任意の比率で混合しても特性が低下しない酸化物超電導体が得られる。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
(CH3OCO)3Yの約3.7水和物の粉末、(CH3OCO)2Ba無水物、および(CH3OCO)2Cuの約1.0水和物の青色粉末を、モル比でY:Ba:Cu=1:2:3になるようイオン交換水に溶解して酢酸塩溶液を調製し、合計反応等モル量のトリフルオロ酢酸(CF3COOH、TFA)とナス型フラスコ中で混合および攪拌した。ロータリーエバポレータを用い、この混合溶液を約10時間減圧下に置いて反応および精製を行い、濃青色のゲルSL1Yspg(system preliminary gel)を得た。
【0048】
このゲルSL1Yspgを、その約100倍の重量に相当するメタノールを加えることによって完全に溶解し、青色溶液を得た。ロータリーエバポレータを用い、この青色溶液を約12時間減圧下に置いて再び精製し、濃青色のゲルSL1Ysgを得た(以下、この手法をSIG(Solvent-Into-Gel)法と呼ぶ)。このゲルSL1Ysgを再びメタノールに溶解し、メスフラスコを用いて希釈し、金属イオン換算で1.50mol/Lのコーティング溶液SL1Ysを得た。
【0049】
メスフラスコを用いた濃度調整の前後に重量測定を行い溶液の密度を測定し、後述する溶液混合の際に重量管理により混合物質量を算出した。
【0050】
(CH3OCO)3Yの約3.7水和物の代わりに、(CH3OCO)3Gdの約4.4水和物の粉末を用いた以外は上記と同様にして、金属イオン換算で1.50mol/Lのコーティング溶液SL1Gdsを得た。
【0051】
(CH3OCO)3Yの約3.7水和物の代わりに、(CH3OCO)3Hoの約5.1水和物の粉末を用いた以外は上記と同様にして、金属イオン換算で1.50mol/Lのコーティング溶液SL1Hosを得た。
【0052】
(CH3OCO)3Yの約3.7水和物の代わりに、(CH3OCO)3Tmの約4.3水和物の粉末を用いた以外は上記と同様にして、金属イオン換算で1.50mol/Lのコーティング溶液SL1Tmsを得た。
【0053】
コーティング溶液SL1Ysとコーティング溶液SL1Gdsを、9:1、8:2、7:3、6:4、5:5、4:6、3:7、2:8、または1:9の割合で混合して、混合コーティング溶液SL1x91YGd、SL1x82YGd、SL1x73YGd、SL1x64YGd、SL1x55YGd、SL1x46YGd、SL1x37YGd、SL1x28YGd、SL1x19YGdを得た。
【0054】
コーティング溶液SL1Ysとコーティング溶液SL1Hosを上記と同様に混合して、混合コーティング溶液SL1x91YHo、SL1x82YHo、SL1x73YHo、SL1x64YHo、SL1x55YHo、SL1x46YHo、SL1x37YHo、SL1x28YHo、SL1x19YHoを得た。
【0055】
コーティング溶液SL1Ysとコーティング溶液SL1Tmsを上記と同様に混合して、混合コーティング溶液SL1x91YTm、SL1x82YTm、SL1x73YTm、SL1x64YTm、SL1x55YTm、SL1x46YTm、SL1x37YTm、SL1x28YTm、SL1x19YTmを得た。
【0056】
それぞれの単独コーティング溶液および混合コーティング溶液を、(100)LaAlO3単結晶配向基板上にスピンコートした。スピンコートの条件は、加速時間0.2秒、回転速度2,000rpm、保持時間150秒とした。次に、図3に示す方法で仮焼を行った。このとき、ta2〜ta3の熱処理を、4.2%加湿純酸素雰囲気中で200℃から250℃まで11h43mかけて行なった。続いて、図4に示す条件で本焼を行った。このとき、tb3〜tb4の4.2%加湿1000ppm酸素混合アルゴン雰囲気中での熱処理を800℃で行い、tb6以降の乾燥純酸素雰囲気中での熱処理を525℃以下で行った。こうしてそれぞれのコーティング溶液から超電導体を得た。得られた超電導体の試料については、コーティング溶液の末尾にFmを付すように命名した。例えば、コーティング溶液SL1Ysから得られた超電導体はSL1YsFm、コーティング溶液SL1x55YTmから得られた超電導体はSL1x55YTmFmとなる。
【0057】
コーティング溶液SL1YsFmを仮焼した後の仮焼膜および本焼により得られた超電導膜SL1YsFmについて、SIMSにより膜表面から基板方向へ元素分布を測定した。これらの結果を図6および図7に示す。
【0058】
図6に示されるように、仮焼膜では膜全体にFが分布している。モル比でFはCuの1/10程度であり、かなり多い量である。
【0059】
一方、図7に示されるように、本焼により得られた超電導膜では、Fは膜表面(X軸のゼロ付近)には多く分布しているが、基板に近くなるほど減少している。このように膜中にフッ素が残留する現象は、本焼時の化学平衡反応において、フッ化水素の除去が反応律速となっていることと深くかかわっている。TFA−MOD法により製造された超電導膜は図7に示される独特なフッ素量分布を持ち、モル比でCuの10-2〜10-6程度の残留フッ素を含む。
【0060】
混合コーティング溶液から得られるLn系混合超電導体も、Yの一部がLnで置換されるだけで、基本的な化学反応は変わらないため、ほぼ同じ残留フッ素量分布を持つ。
【0061】
全ての試料について、誘導法により臨界電流密度(Jc)および臨界温度(Tc)を測定した。測定は全て77K、0Tの条件で行った。実験データの分布を調べるため、非混合のYBCO超電導膜は3種の混合系の系列ごとに製造し、それぞれJcおよびTcを測定した。誘導法によるJc測定に関する膜厚については、試料を3mm角程度の小片に分割し、ICP(誘導励起プラズマ発光分光法)による物質量から平均膜厚を計算した。膜厚は150〜220nmであった。
【0062】
表1にY−Gd混合超電導膜の特性を、表2にY−Ho混合超電導膜の特性を、表3にY−Tm混合超電導膜の特性を、それぞれまとめて示す。
【表1】

【0063】
【表2】

【0064】
【表3】

【0065】
図8に金属Ln中のGd,HoまたはTm含有率とTcとの関係を示す。まず、非混合のYBCO超電導膜3試料の結果からわかるように、Tc値は±0.2〜0.3Kの誤差を含むと考えられる。YBCO/GdBCO混合超電導膜のTcは、誤差を考慮しても、YBCO超電導膜とGdBCO超電導膜との中間の値となっていることがわかる。他の2種の混合超電導膜についても、厳密には2つの単独超電導膜の中間値とはいえないが、大幅には外れていないTc値を示しているといえる。3種の混合超電導膜のうちでは、YBCO/TmBCO混合超電導膜のTcが最も低く、これは非混合のTmBCO超電導膜のTcが最も低いと考えられることを反映している。
【0066】
図8の結果は、超電導体のTc値がYサイトに入る金属の原子半径により決まる可能性を示唆しており、かつ混合超電導体でYサイトに入る金属元素が均一に混合していることも示している。というのはGd成分が50%混合されたY系超電導体ではGd系超電導体のみをつなぐネットワークが完成していることも考えられ、Tc値はそのネットワークが存在すればGd系の約92.5K、遮断されていればY系の約90.3Kを取りそうであるが、実際には中間値となっている。このことから原子は均一に分散し、平均原子半径でTc値が決定される可能性が高い。
【0067】
図9に金属Ln中のGd,HoまたはTm含有率とJcとの関係を示す。YBCO/GdBCO系の一部を除いて、他の超電導膜は約6.5MA/cm2(77K,0T)のJc値を示している。高純度溶液とすることにより高い特性の超電導体が得られていることがわかる。特性の低いYBCO/GdBCO系は、800℃、酸素分圧1000ppmという本焼の条件が適当でないと考えられる。GdBCO超電導膜の最適本焼条件は、800℃で酸素分圧250ppm程度である。YBCO/GdBCO混合超電導膜では、Gd成分の量に応じて1000ppmから250ppmまで酸素分圧を対数的に比例配分させることにより高い特性を得ることができる。
【0068】
表4に、SL1x37YGdFm、SL1x19YGdFm、SL1GdsFmについて、800℃において最適な酸素分圧で本焼を行うことにより得られた超電導膜のJcおよびTcを示す。表4から明らかなように、最適な本焼条件を採用した場合には、6.5MA/cm2(77K,0T)程度のJc値が得られる。
【表4】

【0069】
c値の改善は、XRDの極図形においてa/b軸配向粒子の比率が低減することによっても確認されている。LaAlO3基板上への成膜ではa/b軸配向粒子が基板ピークと重なってしまうためその強度比を知ることができないが、極図形の(103)面を用いることにより、a/b軸配向粒子およびc軸配向粒子に起因する回折強度が測定可能となる。ここで、回折強度をIとしたとき、a/b軸配向粒子とc軸配向粒子の合計強度のうちa/b軸配向粒子の強度が占める割合を、rab=Iab/(Ic+Iab)と定義する。
【0070】
従来の方法では、rabが0.15を下回ることはなく特性が低かった。例えば従来の方法によって製造したSL1x55YGdFm膜(3試料)では、rabはそれぞれ0.165、0.250、0.181であり、Jc値(77K,0T)は1MA/cm2程度の低い値であった。
【0071】
一方、本発明方法によって製造したSL1x55YGdFm膜では、rabは0.034、Jc値(77K,0T)は6.83MA/cm2であり、大幅な改善が確認された。
【0072】
(実施例2)
(CH3OCO)3Yの約3.7水和物の粉末、(CH3OCO)2Cuの約1.0水和物の青色粉末を、モル比でY:Cu=1:3になるようイオン交換水に溶解して酢酸塩溶液を調製し、合計反応等モル量のペンタフルオロプロピオン酸(CF3CF2COOH、PFP)とナス型フラスコ中で混合および攪拌した。ロータリーエバポレータを用い、この混合溶液を約10時間減圧下に置いて反応および精製を行い、濃青色のゲルSL2YCupg−PFPを得た。このゲルSL2YCupg−PFPをSIG法により精製してゲルSL2YCug−PFPを得た後、これをメタノールに溶解し、金属イオン換算で1.50mol/Lの溶液SL2YCu−PFPを得た。
【0073】
ペンタフルオロプロピオン酸(CF3CF2COOH、PFP)の代わりに、ヘプタフルオロブタン酸(CF3CF2CF2COOH、HFB)を用いた以外は上記と同様にして、金属イオン換算で1.50mol/Lの溶液SL2YCu−HFBを得た。
【0074】
(CH3OCO)2Ba無水物を反応等モル量のCF3COOHとナス型フラスコ中で混合および攪拌した。ロータリーエバポレータを用い、この混合溶液を約10時間減圧下に置いて反応および精製を行い、白色粉末SL2Bapgを得た。この粉末SL2BapgをSIG法により精製してSL2Bagを得た後、これをメタノールに溶解し、金属イオン換算で1.50mol/Lの溶液SL2Baを得た。この際、酢酸バリウムをペンタフルオロプロピオン酸やヘプタフルオロブタン酸と反応させると沈殿を生成するため、これらのフルオロカルボン酸は用いない。
【0075】
溶液SL2YCu−PFPと溶液SL2Baを、モル比でY:Ba:Cu=1:2:3になるよう混合し、コーティング溶液SL2YsPFPを得た。溶液SL2YCu−HFBと溶液SL2Baを上記と同様に混合してコーティング溶液SL2YsHFPを得た。また、フルオロカルボン酸としてTFAのみを用いてコーティング溶液SL2Ysを得た。
【0076】
酢酸イットリウムに代わりに酢酸ホルミウムを用いた以外は上記と同様にして、モル比でY:Ba:Cu=1:2:3にしたコーティング溶液SL2HosPFP、SL2HosHFB、およびSL2Hosを得た。
【0077】
Y系のコーティング溶液SL2Ys、SL2YsPFP、およびSL2YsHFBと、Ho系のコーティング溶液SL2Hos、SL2HosPFP、およびSL2HosHFBとを、それぞれ5:5の比率で混合して、9種類の混合コーティング溶液を調製した。SL2Ysを用いて調製した混合コーティング溶液をSL2YHoT(TFA)T(TFA)、SL2YHoTP(PFP)、SL2YHoTH(HFB)とする。SL2YsPFPを用いて調製した混合コーティング溶液をSL2YHoPT、SL2YHoPP、SL2YHoPHとする。SL2YsHFBを用いて調製した混合コーティング溶液をSL2YHoHT、SL2YHoHP、SL2YHoHHとする。
【0078】
実施例1と同様に、それぞれの混合コーティング溶液を(100)LaAlO3単結晶配向基板上にスピンコートして仮焼および本焼を行い、混合超電導膜を得た。得られた9種の混合超電導膜を、SL2YHoTTFm、SL2YHoTPFm、SL2YHoTHFm、SL2YHoPTFm、SL2YHoPPFm、SL2YHoPHFm、SL2YHoHTFm、SL2YHoHPFm、SL2YHoHHFmとする。
【0079】
これらの混合超電導膜について、実施例1と同様の方法でJcおよびTcを測定した。表5にその結果を示す。表5に示されるように、フルオロカルボン酸としてPFPやHFBを用いて製造された混合超電導膜でも特性が大きく低下することはない。ただし、使用するフルオロカルボン酸の炭素鎖が長くなるほど、混合超電導膜の特性が低下する傾向が見られた。なお、表5の全ての混合超電導膜について、rabは0.15以下となっていた。
【表5】

【0080】
(実施例3)
(CH3OCO)3Yの約3.7水和物の粉末をイオン交換水に溶解し、当モル量のトリフルオロ酢酸(CF3COOH、TFA)とナス型フラスコ中で混合し、ロータリーエバポレータを用いて約10時間減圧下に置いて反応および精製を行い、白色粉末SL3Ypgを得た。この粉末SL3YpgをSIG法により精製してSL3Ygを得た後、これをメタノールに溶解し、金属イオン換算で1.50mol/Lの溶液SL3Yを得た。
【0081】
(CH3OCO)3Yの約3.7水和物の粉末の代わりに、(CH3OCO)3Gdの約4.4水和物の粉末を用いた以外は上記と同様にして白色粉末SL3Gdpgを得た後、SIG法により精製してSL3Ygとし、これをメタノールに溶解し、金属イオン換算で1.50mol/Lの溶液SL3Gdを得た。
【0082】
(CH3OCO)3Yの約3.7水和物の粉末の代わりに、(CH3OCO)3Hoの約5.1水和物の粉末を用いた以外は上記と同様にして淡燈色粉末SL3Hopgを得た後、SIG法により精製してSL3Hogとし、これをメタノールに溶解し、金属イオン換算で1.50mol/Lの溶液SL3Hoを得た。
【0083】
(CH3OCO)3Yの約3.7水和物の粉末の代わりに、(CH3OCO)3Tmの約4.3水和物の粉末を用いた以外は上記と同様にして、白色粒子SL3Tmpgを得た後、SIG法により精製してSL3Tmgとし、これをメタノールに溶解し、金属イオン換算で1.50mol/Lの溶液SL3Tmを得た。
【0084】
(CH3OCO)2Ba無水物、および(CH3OCO)2Cuの約1.0水和物の青色粉末を、モル比でBa:Cu=2:3となるようイオン交換水に溶解し、合計反応等モル量のトリフルオロ酢酸(CF3COOH、TFA)とナス型フラスコ中で混合および攪拌した。ロータリーエバポレータを用い、この混合溶液を約10時間減圧下に置いて反応および精製を行い、濃青色のゲルSL3BaCupgを得た。このゲルSL3BaCupgをSIG法により精製して濃青色のゲルSL3BaCugを得た後、これをメタノールに溶解し、金属イオン換算で1.50mol/Lの溶液SL3BaCuを得た。
【0085】
溶液SL3Yと溶液SL3BaCuを、モル比でY:Ba:Cu=1:2:3になるよう混合し、コーティング溶液SL3Ysを得た。溶液SL3Gdと溶液SL3BaCuを上記と同様に混合してコーティング溶液SL3Gdsを得た。溶液SL3Hoと溶液SL3BaCuを上記と同様に混合してコーティング溶液SL3Hosを得た。溶液SL3Tmと溶液SL3BaCuを上記と同様に混合してコーティング溶液SL3Tmsを得た。
【0086】
コーティング溶液SL3Ysとコーティング溶液SL3Gdsを、9:1、7:3、3:7、または1:9の割合で混合し、混合コーティング溶液SL3x91YGd、SL3x73YGd、SL3x37YGd、SL3x19YGdを得た。
【0087】
コーティング溶液SL3Ysとコーティング溶液SL3Hosを上記と同様に混合して、混合コーティング溶液SL3x91YHo、SL3x73YHo、SL3x37YHo、SL3x19YHoを得た。
【0088】
コーティング溶液SL3Ysとコーティング溶液SL3Tmsを上記と同様に混合して、混合コーティング溶液SL3x91YTm、SL3x73YTmo、SL3x37YTm、SL3x19YTmを得た。
【0089】
コーティング溶液SL3Gdsとコーティング溶液SL3Hosを上記と同様に混合して、混合コーティング溶液SL3x91GdHo、SL3x37GdHo、SL3x37GdHo、SL3x19GdHoを得た。
【0090】
コーティング溶液SL3Gdsとコーティング溶液SL3Tmsを上記と同様に混合して、混合コーティング溶液SL3x91GdTm、SL3x73GdTm、SL3x37GdTm、SL3x19GdTmを得た。
【0091】
コーティング溶液SL3Hosとコーティング溶液SL3Tmsを上記と同様に混合して、混合コーティング溶液SL3x91HoTm、SL3x73HoTm、SL3x37HoTm、SL3x19HoTmを得た。
【0092】
実施例1と同様に、それぞれの混合コーティング溶液を(100)LaAlO3単結晶配向基板上にスピンコートして仮焼および本焼を行い、混合超電導膜を得た。なお、Gdを含む混合超電導膜を製造する場合には、実施例1に記載したようにGd成分の量に応じて本焼時の最適酸素分圧を計算により求め、その酸素分圧条件を採用した。これらの混合超電導膜について、実施例1と同様の方法でJcおよびTcを測定した。
【0093】
表6にY−Gd混合超電導膜の特性を、表7にY−Ho混合超電導膜の特性を、表8にY−Tm混合超電導膜の特性を、それぞれまとめて示す。表6〜表8に示される特性値は、表1〜表3と比べて多少低下しているように見えるが、実験誤差の可能性もある。全般的に良好な特性が得られていることが確認された。
【表6】

【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

【0096】
表9にGd−Ho混合超電導膜の特性を、表10にGd−Tm混合超電導膜の特性を、表11にHo−Tm混合超電導膜の特性を、それぞれまとめて示す。非混合のGdBCO超電導膜、HoBCO超電導膜、およびTmBCO超電導膜の特性は似通っているため、混合超電導膜でも同じような特性が得られている。しかし、本発明の方法で、従来の方法と異なり、混合超電導膜でも特性が大きく劣化しないことが確認された。
【表9】

【0097】
【表10】

【0098】
【表11】

【0099】
(実施例4)
(CH3OCO)3Yの約3.7水和物の粉末、(CH3OCO)2Cuの約1.0水和物の青色粉末を、モル比でY:Cu=1:3となるようイオン交換水に溶解して酢酸塩溶液を調製し、合計反応等モル量のペンタフルオロプロピオン酸(CF3CF2COOH、PFP)とナス型フラスコ中で混合および攪拌した。ロータリーエバポレータを用い、この混合溶液を約10時間減圧下に置いて反応および精製を行い、濃青色のゲルSL4YCupg−PFPを得た。このゲルSL4YCupg−PFPをSIG法により精製してゲルSL4YCug−PFPを得た後、これをメタノールに溶解し、金属イオン換算で1.50mol/Lの溶液SL4YCu−PFPを得た。この溶液に反応等モル量のトリフルオロ酢酸(CF3COOH、TFA)を加え、SIG法により精製して、溶液SL4YCuを得た。
【0100】
(CH3OCO)2Ba無水物を反応等モル量のCF3COOHとナス型フラスコ中で混合および攪拌した。ロータリーエバポレータを用い、この混合溶液を約10時間減圧下に置いて反応および精製を行い、白色粉末SL4Bapgを得た。この粉末SL2BapgをSIG法により精製してSL4Bagを得た後、これをメタノールに溶解し、金属イオン換算で1.50mol/Lの溶液SL4Baを得た。この際、酢酸バリウムをペンタフルオロプロピオン酸と反応させると沈殿を生成するため、これらのフルオロカルボン酸は用いない。
【0101】
溶液SL4YCuと溶液SL4Baを、モル比でY:Ba:Cu=1:2:3になるよう混合し、コーティング溶液SL4Ysを得た。
【0102】
酢酸イットリウムの代わりに酢酸ホルミウムを用いた以外は上記と同様にして、モル比でHo:Ba:Cu=1:2:3にしたコーティング溶液SL4Hosを得た。
【0103】
コーティング溶液SL42Ysとコーティング溶液SL4Hosを、9:1、7:3、3:7、または1:9の割合で混合し、混合コーティング溶液SL4x91YHo、SL4x73YHo、SL42x37YHo、SL4x19YHoを得た。
【0104】
実施例1に記載した成膜・仮焼・本焼条件を用いて(100)LaAlO3単結晶配向基板上に成膜を行い、スピンコート法により、加速時間0.2秒、回転速度2,000rpm、保持時間150秒の条件で成膜を行い、SL4x91YHoFm、SL4x73YHoFm、SL4x37YHoFm、SL4x19YHoFmを得た。
【0105】
実施例1と同様に、それぞれの混合コーティング溶液を(100)LaAlO3単結晶配向基板上にスピンコートして仮焼および本焼を行い、混合超電導膜を得た。これらの混合超電導膜について、実施例1と同様の方法でJc、Tcおよびrabを測定した。表12にこれらの結果をまとめて示す。
【表12】

【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の実施形態におけるコーティング溶液調製のためのフローチャート。
【図2】本発明の実施形態における超電導体製造のためのフローチャート。
【図3】本発明の実施形態における仮焼時の温度プロファイルを示す図。
【図4】本発明の実施形態における本焼時の温度プロファイルを示す図。
【図5】本発明の実施形態における結晶成長機構を示す図。
【図6】実施例1において仮焼により得られた仮焼膜のSIMS分析結果を示す図。
【図7】実施例1において本焼により得られた酸化物超電導膜のSIMS分析結果を示す図。
【図8】実施例1における酸化物超電導膜について、金属Ln中のGd,HoまたはTm含有率とTcとの関係を示す図。
【図9】実施例1における酸化物超電導膜について、金属Ln中のGd,HoまたはTm含有率とJcとの関係を示す図。
【符号の説明】
【0107】
1…基板、2…膜、3…超電導体の前駆体、4…超電導粒子の核、5…結晶、6…粒界。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主成分が一般式LnBa2Cu37-x(ここで、LnはGd,Tb,Dy,Ho,Er,TmおよびYからなる群より選択される2種以上であり、各々の元素の含有率は10〜90モル%である)で表され、モル比で銅の10-2〜10-6のフッ素を含むことを特徴とする酸化物超電導体。
【請求項2】
基板上に厚さ0.05〜10μmの膜として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の酸化物超電導体。
【請求項3】
X線回折で観測されるa/b軸配向粒子とc軸配向粒子の合計強度のうちa/b軸配向粒子の強度が占める割合が15%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導体。
【請求項4】
基板面に垂直な断面でのTEM観察で、基板とLnBa2Cu37-x界面における2軸配向層の比率が95%以上であり、かつ表面層の2軸配向比率が80%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導体。
【請求項5】
基板から垂直方向に50nm移動した基板と平行な面でのTEM観察で、結合角0.2〜1度程度の粒界が5〜50nmごとに規則正しく配列する構造を持つことを特徴とする請求項1または2に記載の酸化物超電導体。
【請求項6】
金属Ln(ここで、LnはY,Gd,Tb,Dy,Ho,ErおよびTmからなる群より選択される2種以上であり、各々の元素の含有率は10〜90モル%である)の酢酸塩、酢酸バリウムおよび酢酸銅のそれぞれの溶液を、単独でまたは混合して、フルオロカルボン酸との反応および精製を行ってゲルを生成し、金属Ln、バリウムおよび銅を1:2:3のモル比で含むようにアルコールを主とした溶媒に溶解してコーティング溶液を調製し、
前記コーティング溶液を基板上にコーティングして膜を形成し、仮焼および本焼を行い、酸化物超電導体を製造する方法において、
1度目の精製で得られたゲルをアルコールに溶解して不純物入り溶液を得た後、その溶液を再び精製することにより不純物を減少させたゲルを得ることを特徴とする酸化物超電導体の製造方法。
【請求項7】
前記フルオロカルボン酸はトリフルオロ酢酸、ペンタフルオロプロピオン酸およびヘプタフルオロブタン酸からなる群より選択されることを特徴とする請求項6に記載の酸化物超電導体の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒はメタノールを主成分とすることを特徴とする請求項6に記載の酸化物超電導体の製造方法。
【請求項9】
反応時に用いたフルオロカルボン酸を、反応後に炭素数の少ないフルオロカルボン酸で置換することを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の酸化物超電導体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−83022(P2006−83022A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270113(P2004−270113)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(391004481)財団法人国際超電導産業技術研究センター (144)
【Fターム(参考)】