説明

酸化膜の形成方法、半導体装置の製造方法、半導体装置および酸化膜の形成装置

【課題】
本発明の実施形態に係る酸化膜の形成方法は、半導体基板の表面に、高品質であるとともに均一な膜質と膜厚を有する酸化膜を形成することを目的とする。
【解決手段】
本発明の一実施形態に係る酸化膜の形成方法は、準備工程と膜形成工程とを有している。前記準備工程において、半導体基板を準備する。そして、前記膜形成工程において、前記半導体基板の表面に、キャリアガスを用いて酸化性物質を含む蒸気を接触させることにより、酸化膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化膜の形成方法、半導体装置の製造方法、半導体装置および酸化膜の形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板を用いた太陽電池素子において、キャリアの再結合を低減するためにパッシベーション層が基板表面に形成される。このパッシベーション層として、窒化シリコン膜からなる窒化膜や酸化シリコン膜からなる酸化膜等の単層膜およびそれらの積層膜が用いられる。
【0003】
特許文献1には、硝酸酸化法で成膜した酸化シリコン膜は、基板表面の欠陥準位密度を低減させることが開示されている。
特許文献2には、プラズマCVD法で成膜された窒化シリコン膜は、膜中の水素がシリコン基板内に拡散して、結晶粒界や結晶欠陥により生じた未結合手や捕獲準位を終端させて、不活性化することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−251787号公報
【特許文献2】特開2002−277605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、シリコン基板上に、上記特許文献に記載の方法により、パッシベーション層として、硝酸酸化法で成膜した酸化シリコン膜やプラズマCVD法で成膜した窒化シリコン膜を用いて太陽電池を製造すると、酸化膜や窒化膜の品質が充分でなかったり、膜厚や膜質のばらつきにより、太陽電池素子の特性にばらつきが生じたりする可能性があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、特にシリコン基板表面に高品質で均一な膜厚と膜質を有する酸化シリコン膜を形成するのに好適な酸化膜の形成方法、半導体装置の製造方法、半導体装置および酸化膜の形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る酸化膜の形成方法は、半導体基板を準備する準備工程と、前記半導体基板の表面に、キャリアガスを用いて酸化性液体の蒸気を接触させることにより、前記半導体基板の表面に酸化膜を形成する膜形成工程とを有している。
【0008】
本発明の他の実施形態に係る半導体装置の製造方法は、上記酸化膜の形成方法によって酸化膜が形成された半導体基板を準備する工程を有する。
【0009】
本発明のその他の実施形態に係る半導体装置は、上記酸化膜の形成方法によって形成された酸化膜を有する半導体基板を備える。
【0010】
本発明のさらに他の実施形態に係る酸化膜の形成装置は、上記酸化膜の形成方法によって酸化膜を形成する。
【発明の効果】
【0011】
上記酸化膜の形成方法および上記半導体装置の製造方法および上記酸化膜の形成装置によれば、半導体基板の表面に高品質で均一な膜質と膜厚を有する酸化膜および該酸化膜を有する半導体装置を製造することができる。
【0012】
上記半導体装置によれば、半導体基板の表面に高品質で均一な膜質と膜厚を有する酸化膜を有しているため、特性の向上した半導体装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池素子の一例を模式的に示す図であり、太陽電池素子の受光面(表面)側からみた平面図である。
【図2】図1に示す太陽電池素子の非受光面(裏面)側からみた平面図である。
【図3】図1におけるK−K線断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る酸化膜の形成装置の一例を模式的に示す図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る酸化膜の形成装置の一例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係る酸化膜の形成方法、半導体装置の製造方法および半導体装置について、半導体装置として太陽電池素子を例として、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0015】
<太陽電池素子>
図1〜図3に示すように、太陽電池素子10は、光が入射する受光面(図3における上面であり、以下、第1面という)9aと、この第1面9aの裏面に相当する非受光面(図3における下面であり、以下では第2面という)9bとを有する。
【0016】
この太陽電池素子10は、図3に示すように、第1半導体層2と第2半導体層3とを含む半導体基板1と、半導体基板1の第1面9a側に設けられたパッシベーション層4とを備えている。第1半導体層2は、一導電型の半導体層であり、第2半導体層3は、第1半導体層2における第1面9a側に設けられた逆導電型の半導体層である。なお、パッシベーション層4は反射防止層としての機能も有している。
【0017】
また、太陽電池素子10は、半導体基板1の第1面9a上に設けられた第1電極5と、半導体基板1の第2面9b上に設けられた第2電極6とを有する。
【0018】
半導体基板1としては、例えば所定のドーパント元素(導電型制御用の不純物)を有して一導電型(例えば、p型)を呈する単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板等の結晶シリコン基板が好適に用いられる。
【0019】
また、パッシベーション層4は1層以上からなるものであり、例えば、窒化シリコン、酸化シリコンなどから選択される1種以上の材料を用いて形成可能である。特に、パッシベーション層4として、半導体基板1上に硝酸酸化法で形成した酸化シリコン膜とプラズマCVD法で形成した窒化シリコン膜とが積層された積層膜を用いてもよい。この場合、キャリアの再結合を低減できる。
【0020】
以下、太陽電池素子10についてより具体的に説明する。本実施形態においては、半導体基板1としてp型の導電型を呈する結晶シリコン基板を用いた太陽電池素子10につい
て説明する。
太陽電池素子10を構成する結晶シリコン基板からなる半導体基板1がp型を呈するようにする場合、ドーパント元素としては、例えばボロンまたはガリウムを用いるのが好適である。
【0021】
太陽電池素子10を構成する第2半導体層3は、半導体基板1と逆の導電型を呈する層であり、半導体基板1における第1面9a側に設けられている。すなわち、第2半導体層3は太陽電池素子10の第1面9a側の表層内に形成されている。半導体基板1としてp型の導電型を呈するシリコン基板を使用する場合であれば、第2半導体層3はn型の導電型を呈するように形成される。第2半導体層3は、例えば、p型の導電型を呈するシリコン基板からなる半導体基板1における第1面9a側にリン等の不純物を拡散させることによって形成される。
【0022】
パッシベーション層4は、基板内部や表面でのキャリアの再結合を低減するとともに、所望の波長領域の光の反射率を低減させて、光生成キャリア量を増大させる役割を果たす。パッシベーション層4は、例えば、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜などを含む。パッシベーション層4の厚みは、用いる材料によって適宜選択されて、適当な入射光に対して無反射条件を実現できる厚みであればよい。例えば、シリコンからなる半導体基板1においては、パッシベーション層4の屈折率は1.5〜2.5程度であって、厚みは500〜1200Å程度であることが好ましい。なお、パッシベーション層4として、シリコンからなる半導体基板1上に硝酸酸化法で形成した酸化シリコン膜と、さらにその上にプラズマCVD法で形成した窒化シリコン膜とが積層された積層体を用いることができる。この場合、パッシベーション層4のパッシベーション効果が増加する。なお、ここで用いる酸化シリコン膜は、後述する酸化膜の形成方法によって形成することができる。
【0023】
BSF(Back Surface Field)領域7は半導体基板1における第2面9bの近傍でキャリアの再結合による効率の低下を低減させる役割を有しており、半導体基板1における第2面9b側に内部電界を形成するものである。BSF領域7は半導体基板1と同一の導電型を呈しているが、BSF領域7のドーパント元素は半導体基板1が含有する多数キャリアの濃度よりも高い濃度を有している。ここで、「高い濃度を有している」とは、半導体基板1において一導電型を呈するためにドープされてなるドーパント元素によるキャリア濃度よりも高い濃度で存在することを意味する。つまりBSF領域7は、半導体基板1がp型を呈するのであれば、不純物濃度がより高いp半導体領域となっている。BSF領域7は、例えば第2面9b側にボロンまたはアルミニウムなどのドーパント元素を拡散させることによって、これらドーパント元素の濃度が1×1018〜5×1021atoms/cm程度となるように形成されるとよい。
【0024】
図1に示すように、第1電極5は第1出力取出電極5aと複数の線状の第1集電電極5bと2つの補助電極5cとを有する。第1出力取出電極5aの少なくとも一部は、第1集電電極5bと交差している。この第1出力取出電極5aは、例えば、1.3〜2.5mm程度の幅を有している。一方、第1集電電極5bは線状であり、その幅が第1出力取出電極5aよりも小さく、例えば50〜200μm程度である。また、複数の線状の第1集電電極5bは、互いに1.5〜3mm程度の間隔を空けて設けられている。2つの補助電極5cのうち一方は、複数の第1集電電極5bの一端同士を接続する電極であり、他方は、複数の第1集電電極5bの他端同士を接続する電極である。補助電極5cの幅は、第1集電電極5bの幅と同様、例えば50〜200μm程度である。このような第1電極5の厚みは10〜40μm程度である。第1電極5は、例えば銀のように導電性が良好な金属材料を含む導電ペーストをスクリーン印刷等により所望の形状に塗布した後、焼成することによって形成することができる。
【0025】
第2電極6は、第2出力取出電極6aと第2集電電極6bとを有する。この第2電極6の厚みは、例えば1〜10μm程度であり、半導体基板1における第2面9b側の面の略全面に形成される。この第2電極6は、例えば銀またはアルミニウムを主成分とする導電ペーストを塗布した後に焼成する、または、スパッタリング法もしくは蒸着法を用いて製膜することによって形成することができる。第2電極6はBSF領域7を通じて半導体基板1と電気的に接続される。
【0026】
<酸化膜の形成方法>
本発明の一実施形態に係る酸化膜の形成方法について、半導体基板としてシリコン基板を用い、酸化性物質を含む蒸気を得るための液体(酸化性液体)として硝酸溶液を用い、酸化膜として酸化シリコン膜を形成する場合を例に説明する。
【0027】
まず、本実施形態に係る酸化膜の形成方法を行う際に用いることができる第1の実施形態に係る酸化膜形成装置21について、図4を用いて説明する。
【0028】
図4に示すように、本実施形態に係る酸化膜形成装置21は、少なくとも気化槽11と、酸化反応槽12と、キャリアガス供給部13と、を有している。キャリアガス供給部13は気化槽11と配管を介して接続されている。気化槽11は、酸化反応槽12と配管を介して接続されている。
【0029】
気化槽11は、硝酸溶液を気化させる槽である。例えば、気化槽11内に濃度が60〜70重量%の濃硝酸を供給し、濃硝酸が沸騰する温度(約120℃)まで加熱して、気化槽11内に硝酸蒸気を発生させる。そして、この発生した硝酸蒸気は、キャリアガス供給部13から供給されたキャリアガスととも酸化反応槽12に供給される。図4に示すように、気化槽11は、硝酸溶液で満たされた液相領域11Lと、キャリアガスや硝酸蒸気で満たされた気相領域11Gとからなる。気化槽11の材質としては、例えば、ガラス、ステンレス、あるいはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いることができる。また、気化槽11内の濃硝酸を加熱する加熱手段(不図示)としては、周知の加熱手段を用いることができ、例えば、電気ヒーターが挙げられる。
【0030】
酸化反応槽12は、シリコン基板上に化学反応により酸化シリコン膜を形成させる槽である。具体的には、配管を通して気化槽11で発生した硝酸蒸気がキャリアガスによって酸化反応槽12内に供給される。そして、シリコン基板の表面に、硝酸蒸気が接触することにより、シリコン基板の表面に酸化シリコン膜が形成される。酸化反応槽12の材料としては、気化槽11と同様、ガラス、ステンレス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などを用いることができる。
【0031】
また、酸化反応槽12には基板を加熱する基板加熱機構および基板温度を一定に保つ基板温度保持機構を備えていてもよい。このような場合、酸化反応槽12における酸化反応速度を高めることができる。
【0032】
キャリアガス供給部13は、気化槽11内にキャリアガスを導入する機構を有する。キャリアガスを気化槽11に供給することによって、気化槽11内にて気化した硝酸蒸気とともにキャリアガスが酸化反応槽12に供給される。本実施形態においては、キャリアガス供給部13は、図4に示すように気化槽11の気相領域11Gに接続されている。 キャリアガス供給部13は、気化槽11のうち硝酸溶液で満たされた液相領域11Lに接続されて、キャリアガスによって硝酸溶液がバブリングされてもよい。このような機構を有することにより、キャリアガスは気化槽11の気相領域11Gまたは液相領域11Lに供給される。
【0033】
キャリアガス供給部13におけるキャリアガス供給源としては、例えば、図4に示すように、キャリアガスを高圧ガスとして充填したキャリアガスボンベ15を使用すればよい。複数の種類のガスの混合ガスをキャリアガスとして使用する時には、混合ガスを充填した1つのキャリアガスボンベ15を使用してもよいし、複数の種類のガスを各々充填したキャリアガスボンベ(例えば15a、15b)を使用してもよい。複数のキャリアガスボンベ15a、15bを用いる場合、混合ガス中のそれぞれのガスの混合比を、容易に調整することができる。例えば、窒素ガスと酸素ガスの混合ガスをキャリアガスとして用いる場合、窒素ガスが充填されたキャリアガスボンベ15aと酸素ガスが充填されたキャリアガスボンベ15bを用いればよい。
【0034】
また、キャリアガス供給部13は流量制御機構を備えていてもよいし、圧力制御機構を備えていてもよい。また、キャリアガス供給部13は、温度制御機構を備えていてもよい。温度制御機構を用いて、キャリアガスの温度を高くすることによって、硝酸蒸気が再度液体となることを低減することができるとともに、酸化シリコン膜の形成速度を速くすることができる。キャリアガスの温度としては、酸化性液体の種類にもよるが、例えば、酸化性液体として硝酸溶液を用いる場合、キャリアガスの温度の下限を硝酸溶液の沸点近傍とすれば、発生させた硝酸蒸気の液化を低減することができる。例えば、キャリアガスの温度は、120℃以上とできる。また、キャリアガスの温度の上限は、硝酸溶液が分解しない温度とすることができる。例えば、キャリアガスの温度は、500℃以下、好ましくは300℃以下とできる。この場合、硝酸溶液が分解するのを低減できるとともに、高温処理における半導体基板への不純物の拡散を低減できる。加えて、キャリアガスの温度を500℃以下とすることで、半導体基板のドーパントの再拡散によるドーパント濃度の変化やPN接合位置の位置ずれを低減することができる。このように、酸化性液体として硝酸溶液を用いる場合、例えば、キャリアガスの温度は120〜500℃とすることができる。なお、キャリアガスの温度は必ずしも沸点以上の温度とする必要はなく、気化槽11の気相領域11Gを加熱する加熱機構を設け、気化槽11の気相領域11G内におけるキャリアガスと硝酸溶液の蒸気との混合ガスが120℃以上となるようにしてもよく、キャリアガスの温度は室温より高ければよい。
【0035】
酸化反応槽12における基板処理方式はバッチ式でもよいし、枚葉式でもよい。
【0036】
基板処理方式として枚葉式処理を行う場合、酸化反応槽12を、スリットを設けることで基板投入部および取出し部に区分けしてもよい。そして、酸化反応槽12において搬送機構によって基板投入部および取出し部間をシリコン基板が搬送されるようにすればよい。この時、基板投入部及び取出し部にエアカーテンを設置してもよい。この場合、硝酸蒸気の装置21外への持ち出し量を減少させることができる。エアカーテンはキャリアガスと異なるガスを用いてもよいし、同じガスを用いてもよい。なお、シリコン基板の搬送については、酸化反応槽12内にシリコン基板を1枚ずつ搬送してもよいし、カセット内にセットされた複数枚のシリコン基板を一度に搬送してもよい。より具体的には、例えば、シリコン基板の面が水平方向を向くように1枚ずつシリコン基板を酸化反応槽12内に搬送してもよいし、シリコン基板の面が鉛直方向を向くように複数枚のシリコン基板をカセット内で保持し、このカセットを酸化反応槽12内に搬送してもよい。
【0037】
また、枚葉式処理の場合、酸化反応槽12中のガス(キャリアガスおよび硝酸蒸気)はシリコン基板の搬送方向と同じ方向に流れるようにすることで、酸化反応槽12に投入された直後のシリコン基板の表面がクリーンな状態で酸化膜の形成が開始できる。例えば、基板投入部付近にキャリアガスと硝酸蒸気の供給口を設け、基板取り出し部付近に排気口を設けるようにすればよい。
【0038】
また、基板処理方式としてバッチ式処理を行う場合、酸化反応槽12中のガス(キャリ
アガスおよび硝酸蒸気)はシリコン基板の表面に対して平行方向に流れるようにすることで、シリコン基板の面内での反応ムラが減少する。例えば、シリコン基板の面が鉛直方向を向くように複数枚のシリコン基板をカセット内で保持する場合、下方からキャリアガスと硝酸蒸気を吹き付ければよい。キャリアガスおよび硝酸蒸気の流れは、例えば、気化槽11からの配管の配置を制御することで、シリコン基板の表面に対して平行方向に流れるようにすればよい。
【0039】
なお、上述のように酸化膜を形成した後に、酸化膜が形成された半導体基板の表面を乾燥させてもよい。このような乾燥工程を有することで、酸化膜形成後に行う洗浄工程の削減および酸化膜形成装置21の外への硝酸の持ち出しの低減を図ることができる。
【0040】
次に、本発明の一実施形態に係る酸化膜の形成方法について説明する。具体的には、上述した第1の実施形態に係る酸化膜形成装置21を用いた酸化膜の形成方法について説明する。
【0041】
本実施形態に係る酸化膜の形成方法は、シリコン基板を準備する準備工程と、シリコン基板の表面に、キャリアガスを用いて硝酸蒸気を接触させることにより、酸化シリコン膜を形成する膜形成工程とを有している。
【0042】
より具体的には、まず、フッ酸処理して自然酸化膜を除去したシリコン基板を準備する。そして、図4に示すように、準備したシリコン基板を酸化反応槽12内に設置し、キャリアガスと硝酸蒸気の混合気体を酸化反応槽12内に供給する。このようにして、酸化反応槽12内において、シリコン基板を混合気体中で数秒から数分処理することでシリコン基板の表面に酸化シリコン膜を形成する。
【0043】
このように本実施形態に係る酸化膜の形成方法によれば、キャリアガスを用いて硝酸蒸気をシリコン基板に接触させるため、反応ガス中の反応物濃度をより均一に近付けることができる。そのため、シリコン基板の表面に高品質で均一な膜質と膜厚を有する酸化シリコン膜を形成することができる。このような酸化シリコン膜は、太陽電池素子のパッシベーション層として好適に用いることができる。
【0044】
なお、膜形成工程の前に、シリコン基板の表面を乾燥させる乾燥工程をさらに有していてもよい。具体的には、フッ酸処理後のシリコン基板を純水で洗浄し、乾燥させた後に、酸化反応槽12に投入して酸化膜を形成するのが好ましい。シリコン基板の表面を乾燥させて、酸化膜の被形成領域となるシリコン基板の表面に残留する水分を低減させることによって、硝酸蒸気が水分中で希釈されることを低減できる。その結果、硝酸蒸気を含む反応ガスの酸化力の低下を低減することができ、酸化シリコン膜の形成速度の低下を低減することができる。
【0045】
なお、形成される酸化シリコン膜の膜厚は、例えば1nmから20nmであってもよい。このような膜厚を有することにより、良好なパッシベーション効果を有する酸化膜となるとともに、生産性の向上が図れる。
【0046】
膜形成工程において、キャリアガスとしては、窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス、または酸素ガス、オゾンガス、および酸素とオゾンの混合ガスなどの酸化性ガス、あるいはそれらの混合気体を用いることができる。このとき、キャリアガスとして、酸化性ガスを用いた場合、酸化反応槽12に供給されるガスの酸化力が向上するため、酸化膜の膜質および膜厚の均一化が図れるとともに生産性が向上する。またさらに、キャリアガスとして、酸素、オゾンおよびそれらの混合ガスからなる群から選ばれる少なくとも1つのガスを用いた場合、取扱いが容易であり、生産性の向上がより一層図れる。
【0047】
また、本実施形態においては、酸化性物質を含む液体(酸化性液体)として、硝酸溶液を用いた形態について説明したが、酸化性液体はこれに限らない。酸化性液体としては、例えば、国連GHSで定義されている酸化性液体を用いることができる。具体的には、例えば、酸化性液体としては、硝酸、硫酸およびこれらの混合液のいずれかを用いることができる。このような酸化性液体を用いることで、半導体基板としてシリコン基板を用いた場合に、好適に酸化膜を形成することができる。またさらに、酸化性液体として硝酸溶液を用いた場合には、特に高品質な酸化膜を形成することができる。
【0048】
なお、膜形成工程において、上述の酸化性液体の他に、過酸化水素水、沸騰水およびオゾン水を添加して、半導体基板の酸化を行ってもよい。この場合、酸化性液体の蒸気の酸化力の向上により酸化速度を高めることができる。また、上述の酸化性液体の他に、塩酸を添加して、半導体基板の表面に酸化膜を形成してもよい。この場合、半導体基板の表面の重金属の除去効果により、太陽電池素子等の半導体装置の特性の改善が期待できる。
【0049】
また、酸化反応槽12には基板加熱機構および基板温度を一定に保つ基板温度保持機構を備えていてもよい。これらの機構を有することにより、高品質な酸化膜を再現よく形成することができる。基板温度保持機構としては、例えば、電気ヒーターを用いて酸化反応槽12内を加熱することで基板温度を一定に保つ機構であってもよい。また、基板加熱機構としては、加熱手段を用いてシリコン基板を直接加熱し、加熱されたシリコン基板を酸化反応槽12に設置してもよい。なお、ここでいう加熱手段としては、ランプヒータ等の、放射する光の波長が赤外線領域にある光加熱手段でもよく、例えば、温度応答性に優れた近赤外線ランプ(近赤外線加熱手段)であってもよい。
【0050】
また、図4に示すように、気化槽11、酸化反応槽12およびキャリアガス供給部13間の配管には、バルブを設置してもよい。この場合、バルブを設置して開閉操作を適宜行うことで、必要時にのみキャリアガスや硝酸蒸気を酸化反応槽12に供給できる。そのため、キャリアガスと硝酸溶液の不要な消費量の削減を図ることができる。
【0051】
また、酸化膜形成装置21において、酸化反応槽12は1槽であってもよいし、2槽以上であってもよい。例えば、酸化反応層12を2槽(以下、a槽、b槽という)設置すると、a槽において硝酸蒸気を供給してシリコン基板1の酸化処理を行っている間に、b槽では硝酸蒸気を供給せずにシリコン基板の取り出しや設置を行うことができる。これにより、a槽での酸化処理の終了時に、気化槽11からの硝酸蒸気の供給をa槽からb槽に切り替えることで、酸化膜形成装置21の処理能力(タクト)を向上させることができる。
【0052】
次に、図5を用いて、第2の実施形態に係る酸化膜形成装置22について説明する。なお、第1の実施形態に係る酸化膜形成装置21と同様の構成については、説明を省略する。
【0053】
本実施形態においては、図5に示すように、気化槽11と酸化反応槽12とが同一の槽で構成されている。具体的には、気化槽11(酸化反応槽12)にキャリアガス供給部13が硝酸の液相領域11Lに接続されている。また、本実施形態においては、気化槽11に、シリコン基板が搬送される。そして、気化槽11内で硝酸溶液を加熱することによって生成される硝酸蒸気とキャリアガスとが気化槽11内に設置されたシリコン基板に供給される。これにより、気化槽11内でシリコン基板の表面に酸化シリコン膜が形成される。このように、本実施形態においては、気化槽11が第1の実施形態における酸化反応槽12としての機能も果たす。
【0054】
このように本実施形態に係る酸化膜形成装置22においては、酸化反応槽12において
、キャリアガスは硝酸の液相領域11Lにバブリングされる。これにより、シリコン基板に供給される硝酸蒸気の濃度の変動を低減することができ、酸化膜の膜質や膜厚のばらつきを低減することができる。
【0055】
また、本実施形態においては、気化槽11と酸化反応槽12とを同一の槽とした基板酸化処理機構を有している。これにより、設備の簡略化および省スペース化が実現できる。
【0056】
また、気化槽11には硝酸溶液の液量を検出する検出機構、及び気化槽11内の硝酸溶液の液量を一定に保つための液追加供給機構を備えていてもよい。すなわち、気化槽11に、硝酸溶液の液量を検出し、検出した硝酸溶液の液量が任意の量以下であった場合に、加熱された硝酸溶液を追加供給する機構を有していてもよい。これらの機構を有することにより、気化槽11内での空だきの危険性を回避できるとともに、供給される硝酸蒸気の濃度の変動を低減し安定して硝酸蒸気を酸化反応槽12に供給することができる。そのため、酸化膜の膜質や膜厚のばらつきをより一層低減することができる。
【0057】
なお、硝酸溶液の液量を検出する検出機構としては、硝酸溶液の液面の位置を感知できる赤外線センサーなどを用いることができる。例えば、硝酸溶液の液面の位置が一定値を下回った際に、検出機構が感知し、液追加供給機構に硝酸溶液を気化槽11に供給することを指示して、液追加供給機構により気化槽11に硝酸溶液が供給される。
【0058】
なお、液追加供給機構において、追加される硝酸溶液は予め加熱された硝酸溶液を追加してもよい。これによって、気化槽11中の硝酸溶液の温度の低下を低減することができ、酸化反応速度の低下の低減が図れる。
【0059】
なお、キャリアガス供給部13は、キャリアガスの温度を制御する温度制御機構を有していてもよい。例えば、キャリアガス供給部13は、キャリアガスを加熱する加熱手段を有していてもよい。この加熱手段を用いて、キャリアガスを加熱し、加熱したキャリアガスを気化槽11に供給すればよい。この場合、シリコン基板に供給されるガスの温度を安定させることができる。そのため、高品質な酸化膜を再現よく形成することができる。
【0060】
<太陽電池素子の製造方法>
以下、本実施形態にかかる半導体装置の製造方法として、主に図3を参照しながら太陽電池素子10の製造方法について説明する。
【0061】
まず、太陽電池素子10を構成する半導体基板1を準備する。半導体基板1が単結晶シリコン基板の場合は、例えば引き上げ法などによって形成され、半導体基板1が多結晶シリコン基板の場合は、例えば鋳造法などによって形成される。このような半導体基体1の表面には微小な凹凸構造を形成してもよい。なお、以下では、p型の多結晶シリコンを用いた例を説明する。
【0062】
まず、p型の多結晶シリコンからなる半導体基板1を準備する。
【0063】
次に、半導体基板1における第1面9a側の表層内にn型の第2半導体層3を形成する。このような第2半導体層3は、ペースト状態にしたPを半導体基板1の表面に塗布して熱拡散させる塗布熱拡散法、ガス状態にしたオキシ塩化リン(POCl)を拡散源とした気相熱拡散法およびリンイオンを直接拡散させるイオン打ち込み法などによって形成される。この第2半導体層3は、半導体基板1の表面から0.2〜2μm程度の深さに渡って、60〜150Ω/□程度のシート抵抗に形成される。なお、第2半導体層3の形成方法は上記方法に限定されるものではない。例えば、薄膜技術を用いて、水素化アモルファスシリコン膜または微結晶シリコン膜を含む結晶質シリコン膜などを第2半導体層
3として形成してもよい。さらに、半導体基板1と第2半導体層3との間にi型シリコン領域を形成してもよい。
【0064】
次に、第2面9b側に第2半導体層3が形成された場合には、第2面9b側のみをエッチングして除去して、第2面9bにp型の導電型領域を露出させる。例えば、フッ硝酸溶液に半導体基板1の第2面9b側のみを浸して第2半導体層3を除去すればよい。その後、第2半導体層3を形成する際に半導体基板1の表面に付着したリンガラスをエッチングして除去する。このように、リンガラスを残存させて第2面9b側に形成された第2半導体層3を除去することによって、残存したリンガラスがエッチングマスクの役割を果たして、第1面9a側の第2半導体層3が除去されたり、ダメージを受けたりするのを低減することができる。
【0065】
以上により、p型半導体領域を有し、第1面9a側に第2半導体層3が設けられた半導体基板1を準備することができる。
【0066】
次に、第2半導体層3の上にパッシベーション層4を形成する。パッシベーション層4は、例えば、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜とがこの順に積層された積層膜からなる。酸化シリコン膜は、上述した酸化膜の形成方法によって形成することができる。すなわち、第2半導体層3の表面にキャリアガスとともに供給された硝酸蒸気が接触することによって形成される。そして、窒化シリコン膜は、形成された酸化シリコン膜の上に、プラズマCVD法によって形成される。なお、本実施形態においては、パッシベーション層4は、1層の酸化シリコン膜と1層の窒化シリコン膜からなる2層構造の積層膜であるが、これに限らない。パッシベーション層4の積層構造は、シリコン基板の厚みや形状に応じて適宜選択できる。例えば、パッシベーション層4は、上述の実施形態の酸化膜の形成によって形成された酸化シリコン膜の単層構造であってもよく、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜が2層以上積層された積層構造であってもよい。
【0067】
具体的には、酸化シリコン膜は、上述した酸化膜の形成方法で説明したように、硝酸濃度が60質量%以上の硝酸溶液を沸騰するまで加熱し、発生した硝酸蒸気をキャリアガスでシリコン基板の表面に供給することによって、シリコン基板の表面に形成することができる。なお、このときのシリコン基板の硝酸蒸気内での保持時間は、所定厚みの酸化シリコン膜が形成されるように適宜設定すればよい。
【0068】
そして、窒化シリコン膜は、これまでに知られているプラズマCVD法を用いて形成することができる。例えば、プラズマCVD装置の反応室内を500℃程度として、シラン(SiH)とアンモニア(NH)との混合ガスを窒素(N)ガスで希釈し反応ガスとして反応室内に供給する。そして、この反応ガスをグロー放電分解でプラズマ化させて酸化シリコン膜の表面に堆積させることで、窒化シリコン膜を形成することができる。
【0069】
次に、第1電極5(第1出力取出電極5a、第1集電電極5b)と第2電極6(第2出力取出電極6a、第2集電電極6b)とを以下のようにして形成する。
【0070】
第1電極5は、例えば銀等からなる金属粉末と、有機ビヒクルとガラスフリットとを含有する銀ペーストを用いて作製される。この銀ペーストを、半導体基板1の第1面9a側に塗布して、その後、最高温度600〜850℃で数十秒〜数十分程度焼成する。これにより、ファイヤースルー法によってパッシベーション層4を突き破った第1電極5が半導体基板1上に形成される。上記ペーストの塗布法としてはスクリーン印刷法などを用いることができる。ペーストを塗布後、所定の温度で溶剤を蒸散させて乾燥させるとよい。
【0071】
次に、第2電極6とBSF領域7との形成について説明する。
【0072】
まず、例えばアルミニウム粉末と有機ビヒクルとを含有するアルミニウムペーストを、半導体基板1の第2面9b側の略全面に塗布する。この塗布法としては、スクリーン印刷法などを用いることができる。ここで、ペーストを塗布した後、所定の温度で溶剤を蒸散させて乾燥させるとよい。
【0073】
次に、半導体基板1を焼成炉内にて最高温度が600〜850℃で数十秒〜数十分程度焼成する。これによって、BSF領域7が半導体基板1の第2面9b側に形成されて、第2電極6の第2集電電極6bとなるアルミニウム層が形成される。
【0074】
第2出力取出電極6aは、例えば銀粉末などからなる金属粉末と、有機ビヒクルとガラスフリットとを含有する銀ペーストを用いて作製される。この銀ペーストを予め決められた形状に塗布して、その後、最高温度600〜850℃で数十秒〜数十分程度焼成する。これにより、第2出力取出電極6aが形成される。なお、銀ペーストは、アルミニウムペースト(前記アルミニウム層)の一部と接する位置に塗布されることで、第2出力取出電極6aと第2集電電極6bとの一部が重なる。塗布法としては、スクリーン印刷法などを用いることができる。この塗布後、好ましくは所定の温度で溶剤を蒸散させて乾燥させる。
【0075】
以上のようにして、太陽電池素子10を作製することができる。
【0076】
なお、本発明に係る半導体装置(太陽電池素子)の製造方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で多くの修正および変更を加えることができるのは言うまでもない。
【0077】
例えば、半導体基板1の第2面9b側に裏面パッシベーション層を設けてもよい。この裏面パッシベーション層は、半導体基板1の裏面である第2面9bにおいて、キャリアの再結合を低減する役割を有するものである。裏面パッシベーション層としては、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜または酸化アルミニウム膜などを用いることができる。また、裏面パッシベーション膜としてこれらの積層膜も使用できる。ここで、裏面パッシベーション層の厚みは、例えば100〜2000Å程度である。このような裏面パッシベーション層も、上述したパッシベーション層4と同様に、硝酸酸化法、PECVD法、蒸着法またはスパッタ法などを用いて形成すればよい。
【0078】
このように、他の実施形態として、半導体基板1の第2面9b側の構造がPERC(Passivated Emitter and Rear Cell)構造またはPERL(Passivated Emitter Rear Locally-diffused)構造に用いられる第2面9b側の構造である形態が挙げられる。この場合、上述したように、特に、本発明の実施形態に係る酸化膜の形成方法を用いて、半導体基板1の裏面である第2面9bに酸化シリコン膜を形成した後、窒化シリコン膜または酸化アルミニウム膜などを形成すればよい。
【0079】
なお、第1電極5の形成位置において、第2半導体層3と同じ導電型であり、第2半導体層3より厚みが厚い第4半導体層を形成してもよい。このとき第4半導体層は第2半導体層よりもシート抵抗が低く形成される。第4半導体層の厚みを厚く形成することにより、電極とのコンタクト抵抗を低減することができる。第4半導体層の厚みを厚くする方法の一例としては、塗布熱拡散法または気相熱拡散法により第2半導体層3を形成した後、リンガラスが残存する状態で第1電極5の電極形状に合わせて半導体基板1にレーザーを照射すればよい。これによって、リンガラスから第2半導体層3へリンが再拡散し第1電極5が形成される位置に第4半導体層が形成される。第2半導体層3およびパッシベーション層4を有した上で、このような第4半導体層を有することで、第1電極5の接触抵抗
の低減とキャリアの再結合を低減することができるため、光電変換効率が向上する。
【0080】
また、パッシベーション層4を形成する前に、半導体基板1の表面を洗浄することが好ましい。この洗浄は、次の(1)〜(3)のいずれかを行なうことができる。
(1)フッ酸処理
(2)RCA洗浄(米国RCA社が開発した洗浄法であり、高温・高濃度の硫酸・過酸化水素水、希フッ酸(室温)、アンモニア水・過酸化水素水、または、塩酸・過酸化水素水などによる洗浄方法)の後にフッ酸処理
(3)SPM(Sulfuric Acid/Hydrogen Peroxide/Water Mixture)洗浄後にフッ酸処理
【0081】
なお、上述の実施形態においては、半導体装置として、半導体基板1の両主面に電極が形成された太陽電池素子を例示して説明したが、一方の主面のみに電極が形成されたバックコンタクト型の太陽電池素子に対しても適用可能である。
【0082】
また、酸化反応槽12から排気された硝酸蒸気を回収して、硝酸溶液となるように冷却し、再び気化槽11の液相領域11Lに供給する回収機構を備えていても構わない。なお、このとき、回収した硝酸蒸気から得た再利用のための硝酸溶液は、そのまま気化槽11に全量供給するようにしてもよいし、新液と混合して供給するようにしても構わない。
【実施例】
【0083】
以下に、より具体的な実施例について説明する。まず、半導体基板1として、厚さが約200μmの多結晶シリコン基板を2つ用意した。これらの多結晶シリコン基板は、p型の導電型を呈するようにボロンをドープしたものを用いた。
【0084】
用意したそれぞれの多結晶シリコン基板の第1面9a側に、RIE(Reactive Ion Etching)法を用いて、図3に示すような凹凸構造9aを形成した。次に、多結晶シリコン基板にリン原子を拡散させて、シート抵抗が90Ω/□程度となるn型の第2半導体層3を形成した。なお、第2面9b側に形成された第2半導体層3はフッ硝酸溶液で除去し、その後、第2半導体層3上に残ったリンガラスをフッ酸溶液で除去した。
【0085】
次に、上述の第1の実施形態に係る酸化膜形成装置21を用いて、実施例1として、一方のシリコン基板に、以下の方法で酸化シリコン膜を形成した。具体的には、硝酸濃度が60質量%の硝酸溶液を沸騰するまで加熱し、発生した硝酸蒸気をキャリアガスでシリコン基板の表面に供給することによって硝酸酸化法により第1面9a側に酸化シリコン膜を形成した。キャリアガスとしては、酸素ガスを用いた。一方、比較例として、他方のシリコン基板に、キャリアガスを用いない以下の方法で酸化シリコン膜を形成した。具体的には、硝酸濃度が60質量%の硝酸溶液を沸騰するまで加熱し、発生した硝酸蒸気を、キャリアガスを用いずにシリコン基板に供給することによって硝酸酸化法により第1面9a側に酸化シリコン膜を形成した。
【0086】
そして、実施例1および比較例において、このようにして形成された酸化シリコン膜の上に、それぞれプラズマCVD法により窒化シリコン膜を形成した。これにより、酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜からなるパッシベーション層4を、第2半導体層3の上に形成した。
【0087】
そして、第1面9a側に銀ペーストを図1に示すような第1電極5の線状パターンに塗布し、第2面9b側にアルミニウムペーストを略全面に塗布した。その後、これらのペーストのパターンを焼成することによって、図3に示すように、第1電極5、第2集電電極6bおよびBSF領域7を形成した。なお、第1電極5はファイヤースルー法によって半導体基板1とコンタクトをとった。さらに第2面9b側に銀ペーストを図2に示すように
第2出力取出電極のパターンに塗布し、焼成することで第2出力取出電極6aを形成した。
【0088】
このようにして、実施例1および比較例に係る太陽電池素子を各々作製した。
【0089】
実施例1および比較例のそれぞれについて、太陽電池素子出力特性(短絡電流Isc、開放電圧Voc、曲線因子FF(Fill Factor)および光電変換効率)を測定して評価した。なお、これらの特性の測定はJIS C 8913に基づいて、AM(Air Mass)1.5および100mW/cmの照射の条件下にて測定した。
【0090】
実施例1における、短絡電流Isc、開放電圧Voc、曲線因子FF(Fill Factor)および光電変換効率は、それぞれ、8.68A、0.617V、0.777、4.16Wであった。一方、比較例における、短絡電流Isc、開放電圧Voc、曲線因子FF(Fill Factor)および光電変換効率は、それぞれ、8.62A、0.616V、0.778、4.13Wであった。このように、キャリアガスを用いて硝酸蒸気を供給した実施例1は、キャリアガスを用いずに硝酸蒸気を供給した比較例に比べて、出力特性が高いことを確認した。
【0091】
以上、本発明に係るいくつかの実施形態について例示したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意のものとすることができることは言うまでもない。
【0092】
例えば、上述の実施形態においては、半導体装置として、太陽電池素子を例示したが、本発明の半導体装置は、これに限らず、MOSトランジスタや大規模集積回路(LSI)であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 :半導体基板
2 :第1半導体層
3 :第2半導体層
4 :パッシベーション層
5 :第1電極
5a:第1出力取出電極
5b:第1集電電極
6 :第2電極
6a:第2出力取出電極
6b:第2集電電極
7 :BSF領域
9a :第1面
9b :第2面
10 :太陽電池素子
11 :気化槽
12 :酸化反応槽
13 :キャリアガス供給部
14 :硝酸溶液
15 :キャリアガスボンベ
15a:キャリアガスボンベ1
15b:キャリアガスボンベ2
21、22:酸化膜形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板を準備する準備工程と、
前記半導体基板の表面に、キャリアガスを用いて酸化性物質を含む蒸気を接触させることにより、酸化膜を形成する膜形成工程とを有する、酸化膜の形成方法。
【請求項2】
前記膜形成工程において、前記酸化性物質として、硝酸、硫酸およびそれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの液体を用いる、請求項1に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項3】
前記膜形成工程において、前記酸化性物質として硝酸を用いる、請求項2に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項4】
前記膜形成工程において、前記キャリアガスとして酸化性ガスを用いる、請求項1乃至3のいずれかに記載の酸化膜の形成方法。
【請求項5】
前記膜形成工程において、前記酸化性ガスとして、酸素、オゾンおよびそれらの混合ガスからなる群から選ばれる少なくとも1つのガスを用いる、請求項4に記載の酸化膜の形成方法。
【請求項6】
前記膜形成工程において、前記酸化性物質を含む蒸気は、前記キャリアガスを前記酸化性物質を含む液体中にバブリングすることによって得られる、請求項1乃至5のいずれかに記載の酸化膜の形成方法。
【請求項7】
前記膜形成工程の前に、前記半導体基板の表面を乾燥させる乾燥工程をさらに有している、請求項1乃至6のいずれかに記載の酸化膜の形成方法。
【請求項8】
前記膜形成工程において、加熱された前記キャリアガスを用いる、請求項1乃至7のいずれかに記載の酸化膜の形成方法。
【請求項9】
前記膜形成工程において、前記酸化性物質を含む液体の液量を検出し、検出した前記酸化性物質を含む液体の液量が任意の量以下であった場合に、加熱された前記酸化性液体を追加供給する、請求項6乃至8のいずれかに記載の酸化膜の形成方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の酸化膜の形成方法によって酸化膜が形成された半導体基板を準備する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項11】
請求項1乃至9のいずれかに記載の酸化膜の形成方法によって形成された酸化膜を有する半導体装置。
【請求項12】
請求項1乃至9のいずれかに記載の酸化膜の形成方法によって酸化膜を形成する酸化膜の形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−12566(P2013−12566A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143857(P2011−143857)
【出願日】平成23年6月29日(2011.6.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】