説明

酸素の捕捉方法および酸素吸収性包装容器の製造方法

【課題】 本発明は、各種食品等を包装する際、酸素を効率よく捕捉することが可能な酸素の捕捉方法や、有害物質を滲出させること等がなく、種々の用途に用いることが可能な酸素吸収性包装容器の製造方法を提供することを主目的としている。
【解決手段】 上記目的を達成するために、本発明は、共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有する酸素吸収体に紫外線を照射することにより、酸素吸収性樹脂層に酸素を吸収させることを特徴とする酸素の捕捉方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種食品、医薬品、化粧品等を包装する際に用いられる酸素の捕捉方法、および酸素吸収性包装容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種食品や医薬品等を充填する際、食品等の酸化劣化を防止するため、保存容器の内部の酸素を除去する方法が知られている。このような方法として、例えば容器の壁や蓋等に用いられる樹脂に、鉄粉等の還元性物質を主剤とする脱酸素材を添加する方法が知られているが、この方法においては、上記還元性物質によって樹脂が着色されてしまう場合があり、透明性が要求される容器に用いることが困難であるという問題があった。
【0003】
そこでこのような問題を解決するために、例えば容器の壁や蓋等に、酸素捕捉剤を光開始剤や光増感剤等とともに含有させ、酸素捕捉剤にエネルギーを照射して容器中の酸素を吸収する方法が提案されている。例えばビニルアルコール化合物にイオン化放射線を照射する方法(特許文献1参照)や、ポリオレフィン、酸化触媒、およびラジカル抑制剤を含有するポリオレフィン系樹脂組成物からなる酸素バリアシートに放射線を照射する方法(特許文献2参照)等が開示されている。また特許文献3には、酸化可能な有機化合物と遷移金属触媒とを含有する組成物を放射線等に暴露して酸素を捕捉する方法も開示されている。
また、例えば酸化性有機成分を含む酸素捕獲組成物に紫外線波長を含むパルスを照射して、酸素吸収を開始させる方法(特許文献4)や、光増感剤を含む酸素吸収性樹脂組成物に電子線や紫外線を照射する方法(特許文献5)、酸素吸収性ポリマーと光開始剤とを含有する酸素吸収性樹脂組成物に、光を照射して酸素を吸収させる方法(特許文献6)等も開示されている。
【0004】
しかしながら、いずれの方法においても、酸素捕獲物質とともに光開始剤や光増感剤等を含有させる必要があり、容器等に含まれた光開始剤や光増感剤が、内容物側に滲出してしまうおそれがあることから、用途が制限される等の問題があった。また上記方法においては、効率よく酸素を吸収させるために光開始剤や光増感剤等に合わせたエネルギーを照射する必要があり、製造工程が煩雑となる等の問題もあった。
【特許文献1】特開昭62−207338号公報
【特許文献2】特開平4−213346号公報
【特許文献3】特開平5−194949号公報
【特許文献4】特表2000−515907号公報
【特許文献5】特開平5−194949号公報
【特許文献6】特開2005−8699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、各種食品等を包装する際、酸素を効率よく捕捉することが可能な酸素の捕捉方法や、有害物質を滲出させること等がなく、種々の用途に用いることが可能な酸素吸収性包装容器の製造方法の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記実情に鑑み鋭意検討した結果、共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有する酸素吸収体を用いることにより、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
かくして本発明によれば、以下の1〜7の発明が提供される。
1.共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有する酸素吸収体に紫外線を照射することにより、酸素吸収性樹脂層に酸素を吸収させることを特徴とする酸素の捕捉方法。
2.前記酸素吸収体が、ガスバリア材層および密封材層を有することを特徴とする前記1に記載の酸素の捕捉方法。
3.前記酸素吸収性樹脂層が酸化防止剤を含有することを特徴とする前記1または2に記載の酸素の捕捉方法。
4.前記共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率が10重量%以上であることを特徴とする前記1〜3までのいずれかに記載の酸素の捕捉方法。
5.前記紫外線が200nm〜400nmの範囲内波長を有することを特徴とする前記1〜4までのいずれかに記載の酸素の捕捉方法。
6.共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有する酸素吸収性包装材を用いて酸素吸収性包装容器を製造する酸素吸収性包装容器の製造方法であって、
前記酸素吸収性包装材を用いて前記酸素吸収性包装容器を成形する前、成形する途中、または成形した後に紫外線を照射して、容器内の酸素を吸収する酸素吸収工程を有することを特徴とする酸素吸収性包装容器の製造方法。
7.前記紫外線が200nm〜400nmの範囲内の波長を有することを特徴とする前記6に記載の酸素吸収性包装容器の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、酸素吸収体に紫外線を照射することにより、酸素吸収体の周囲の酸素を効率よく捕捉することが可能である。また、酸素吸収体中に光増感剤や光開始剤等を含有させる必要がないことから、本発明の酸素捕捉方法は様々な用途に用いることが可能である。またさらに、本発明によれば、一般的に食品等の殺菌に用いられる波長の紫外線を用いて、酸素の捕捉を行うことができるという利点も有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の酸素の捕捉方法、および酸素吸収性包装容器の製造方法について説明する。
【0010】
A.酸素の捕捉方法
まず、本発明における酸素の捕捉方法について説明する。本発明における酸素の捕捉方法は、共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有する酸素吸収体に紫外線を照射することにより、酸素吸収性樹脂層に酸素を吸収させることを特徴とする方法である。
【0011】
本発明においては、共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有する酸素吸収体を用いることから、紫外線照射をすることにより、すばやく共役ジエン重合体環化物が酸素と反応するものとすることができ、酸素吸収体の周囲に存在する酸素を効率よく捕捉することができる。また前記共役ジエン重合体環化物による酸素の捕捉には、光開始剤や光増感剤等が必要とされない。したがって、本発明によれば、光開始剤や光増感剤が酸素吸収体から滲出すること等がなく、本発明の酸素の捕捉方法は種々の用途に用いることができる。
またさらに、前記共役ジエン重合体環化物と酸素との反応は、例えば食品等の殺菌に用いられる波長の紫外線によっても生じることから、酸素吸収体を酸素吸収性包装容器とすることにより、容器中に収納された食品等の殺菌と同時に、容器中の酸素吸収を行うこと等も可能となる。
以下、本発明に用いられる酸素吸収体、および紫外線の照射方法について説明する。
【0012】
<酸素吸収体>
本発明に用いられる酸素吸収体は、少なくとも共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有するものであればよく、例えば前記酸素吸収性樹脂層の他に、必要に応じてガスバリア材層や密封材層を有していてもよい。また必要に応じて形状保持層、保護層などの「その他の層」を有していてもよい。
【0013】
本発明に用いられる酸素吸収体は、例えばシート状に形成されたもの等であってもよい。この場合、酸素を吸収する空間内に前記酸素吸収体を配置して、紫外線を照射することにより、空間内の酸素を吸収することができる。また酸素吸収体は、例えばボトル、カップ、チューブ、袋、キャップ、栓等の形状に形成された各種酸素吸収性包装容器等であってもよい。この場合、酸素吸収性包装容器に紫外線を照射することにより、酸素吸収性包装容器自身によって、容器の内部の酸素を吸収することができる。またさらに、酸素吸収体は、酸素吸収性包装容器に成形される前の酸素吸収性包装材であってもよい。この場合、酸素吸収性包装材に紫外線を照射し、酸素吸収性包装材を容器状に成形することにより、酸素吸収性包装容器内の酸素を吸収することができる。以下、酸素吸収体に用いられる酸素吸収性樹脂層、ガスバリア材層、密封材層、その他の層、および酸素吸収体の製造方法について説明する。
【0014】
(酸素吸収性樹脂層)
本発明に用いられる酸素吸収体における酸素吸収性樹脂層は、周囲に存在する酸素を吸収する役割を果たす。前記酸素吸収性樹脂層中に含有される共役ジエン重合体環化物は、酸触媒の存在下、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分を環化反応させて得られるものである。
【0015】
なお、本発明においては、共役ジエン重合体環化物が極性基を含有していてもよい。
極性基としては、“炭素原子及び水素原子”以外の原子を有する基であればよく、例えば、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、チオール基、エステル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、ハロゲン等が挙げられる。中でも、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、エステル基、エポキシ基及びアミノ基が好ましく、酸無水物基、カルボキシル基及び水酸基がより好ましく、酸無水物基及びカルボキシル基が特に好ましい。
極性基の含有量は、特に制限されないが、極性基を含有する共役ジエン重合体環化物100g当たり、通常、0.1〜200ミリモル、好ましくは1〜100ミリモル、より好ましくは5〜50ミリモルの範囲である。この含有量が少なすぎても多すぎても、酸素吸収性が劣る傾向にある。
【0016】
また共役ジエン重合体環化物の生成に用いられる共役ジエン重合体は、共役ジエン単量体の単独重合体若しくは共重合体、又は共役ジエン単量体とこれと共重合可能な他の単量体との共重合体である。
使用できる共役ジエン単量体は、特に限定されず、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、4,5−ジエチル−1,3−オクタジエン、3−ブチル−1,3−オクタジエン等が挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、イソプレンがより好ましい。
【0017】
また共役ジエン単量体と共重合可能な他の単量体は、特に限定されない。その具体例としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン、1−ブテン等の鎖状オレフィン単量体;シクロペンテン、2−ノルボルネン等の環状オレフィン単量体;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等の非共役ジエン単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等のその他の(メタ)アクリル酸誘導体;が挙げられる。これらの単量体は、単独で用いても2種類以上を組み合わせて用いてもよい。またこれらの中でも芳香族ビニル単量体が用いられることが好ましい。
【0018】
共役ジエン単量体の単独重合体及び共重合体の具体例としては、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、ブタジエン−イソプレン共重合体ゴム(BIR)等を挙げることができる。中でも、ポリイソプレンゴム及びポリブタジエンゴムが好ましく、ポリイソプレンゴムがより好ましい。
【0019】
共役ジエン単量体とこれと共重合可能な単量体との共重合体の具体例としては、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、イソプレン−イソブチレン共重合体ゴム(IIR)、エチレン−プロピレン−ジエン系共重合体ゴム(EPDM)等を挙げることができる。
中でも、重量平均分子量が1,000〜500,000の芳香族ビニル重合体ブロックと少なくとも一つの共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体が好ましい。
【0020】
共役ジエン重合体における共役ジエン単量体単位の含有量は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択されるが、通常、40モル%以上、好ましくは60モル%以上、更に好ましくは80モル%以上である。中でも、共役ジエン単量体単位のみからなるものが特に好ましく使用できる。共役ジエン単量体単位の含有量が少なすぎると、適切な範囲の不飽和結合減少率を得ることが困難になり、酸素吸収性が劣る傾向となる。
【0021】
共役ジエン重合体の重合方法は常法に従えばよく、例えば、チタン等を触媒成分として含むチーグラー系重合触媒、アルキルリチウム重合触媒、又はラジカル重合触媒等の適宜な触媒を用いて、溶液重合又は乳化重合により行われる。
【0022】
本発明で用いる共役ジエン重合体環化物は、前記共役ジエン重合体を、酸触媒の存在下に環化反応させて得られる。
環化反応に用いられる酸触媒としては、従来公知のものが使用でき、例えば、硫酸;フルオロメタンスルホン酸、ジフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、炭素数2〜18のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、これらの無水物又はアルキルエステル等の有機スルホン酸化合物;三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、四塩化スズ、四塩化チタン、塩化アルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、エチルアンモニウムジクロリド、臭化アルミニウム、五塩化アンチモン、六塩化タングステン、塩化鉄等の金属ハロゲン化物;等が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で用いても2種以上を併用してもよい。中でも、有機スルホン酸化合物が好ましく、p−トルエンスルホン酸及びその無水物がより好ましく使用できる。
酸触媒の使用量は、共役ジエン重合体100重量部当たり、通常、0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜2重量部である。
【0023】
環化反応は、通常、共役ジエン重合体を炭化水素溶媒中に溶解させ、酸触媒の存在下で反応させることにより行われる。
炭化水素溶媒は、環化反応を阻害しないものであれば特に限定されない。その具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素;n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素;等が挙げられる。これらの炭化水素溶媒を共役ジエン単量体の重合反応に用いた場合は、その重合溶媒をそのまま環化反応の溶媒として用いることもでき、この場合は、重合反応が終了した重合反応液に酸触媒を添加して、環化反応を行うことができる。 炭化水素溶媒の使用量は、共役ジエン重合体の固形分濃度が、通常、5〜60重量%、好ましくは20〜40重量%となる範囲である。
【0024】
環化反応は、加圧、減圧又は大気圧いずれの圧力下でも行うことができるが、操作の簡便性の点から大気圧下で行うことが望ましく、中でも乾燥気流下、特に乾燥窒素や乾燥アルゴンの雰囲気下で行うと水分に起因する副反応を抑えることができる。
【0025】
環化反応における、反応温度や反応時間は常法に従えばよく、反応温度は、通常、50〜150℃、好ましくは70〜110℃であり、反応時間は、通常、0.5〜10時間、好ましくは2〜7時間である。
【0026】
環化反応を行った後、常法により、酸触媒を不活性化し、酸触媒残渣を除去した後、所望により、酸化防止剤を添加し、炭化水素溶媒を除去して、固形状の共役ジエン重合体環化物を取得することができる。
【0027】
なお、前述した極性基を含有する共役ジエン重合体環化物を取得する方法としては、例えば、(1)極性基を含有しない共役ジエン重合体を酸触媒の存在下に環化して共役ジエン重合体環化物を得て、この共役ジエン重合体環化物に極性基含有エチレン性不飽和化合物を付加する方法、(2)極性基を含有する共役ジエン重合体を酸触媒の存在下に環化する方法、(3)極性基を含有しない共役ジエン重合体に極性基含有エチレン性不飽和化合物を付加した後、酸触媒の存在下に環化する方法、が挙げられる。前記(2)又は(3)の方法で得た極性基を含有する共役ジエン重合体環化物に、さらに極性基含有エチレン性不飽和化合物を付加反応させることもできる。本発明においては、極性基含有共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率をより調整し易い点で、前記(1)の方法が好ましく採用できる。前記(1)の方法は、環化反応に用いた炭化水素系溶媒を完全に除去することなく、環化反応に引き続いて行うこともできる。
【0028】
共役ジエン重合体環化物に極性基を導入するために使用する極性基含有エチレン性不飽和化合物は、特に限定されるものではなく、例えば、酸無水物基、カルボキシル基、水酸基、チオール基、エステル基、エポキシ基、アミノ基、アミド基、シアノ基、シリル基、ハロゲン等の極性基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0029】
酸無水物基又はカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水アコニット酸、ノルボルネンジカルボン酸無水物、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸化合物が挙げられ、中でも、無水マレイン酸が反応性、経済性の点で賞用される。
【0030】
水酸基を含有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等の不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル類;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基を有する不飽和酸アミド類;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート等の不飽和酸のポリアルキレングリコールモノエステル類;グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の不飽和酸の多価アルコールモノエステル類;等が挙げられ、これらの中でも、不飽和酸のヒドロキシアルキルエステル類が好ましく、特にアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルが好ましい。
【0031】
その他の極性基を含有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0032】
極性基含有エチレン性不飽和化合物を共役ジエン重合体環化物に付加する方法は特に限定されないが、一般にエン付加反応又はグラフト重合反応と呼ばれる公知の反応を採用できる。
この付加反応は、共役ジエン重合体環化物と極性基含有エチレン性不飽和化合物とを、必要に応じてラジカル発生剤の存在下に、反応させることによって行われる。ラジカル発生剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、t−ブチルパーオキシドベンゾエート、メチルエチルケトンパーオキシド等のパーオキシド類;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾニトリル類;等が挙げられる。
【0033】
付加反応は、固相状態で行っても、溶液状態で行ってもよいが、反応制御がし易い点で、溶液状態で行うことが好ましい。使用される溶媒としては、例えば、前述したような環化反応における炭化水素系溶媒と同様のものが挙げられる。
【0034】
極性基含有エチレン性不飽和化合物の使用量は、適宜選択されるが、導入された極性基の割合が、極性基含有共役ジエン重合体環化物100g当たり、通常、0.1〜200ミリモル、好ましくは1〜100ミリモル、より好ましくは5〜50ミリモルとなるような範囲である。
【0035】
前記付加反応は、加圧、減圧又は大気圧いずれの圧力下でも行うことができるが、操作の簡便性の点から大気圧下で行うことが望ましく、中でも乾燥気流下、とくに乾燥窒素や乾燥アルゴンの雰囲気下で行うと、水分に由来する付加反応率の低下を抑制することができる。
また、前記付加反応においては、反応温度は、通常、30〜250℃、好ましくは60〜200℃であり、反応時間は、通常、0.5〜5時間、好ましくは1〜3時間である。
【0036】
なお、極性基を含有する共役ジエン重合体環化物に極性基含有エチレン性不飽和化合物を付加する方法は、前述の極性基を含有しない共役ジエン重合体環化物に極性基含有エチレン性不飽和化合物を付加する方法に準じればよい。
このとき、極性基含有エチレン性不飽和化合物の使用量は、適宜選択されるが、付加反応により導入された極性基と付加前に共役ジエン重合体環化物が有していた極性基との合計が、極性基含有共役ジエン重合体環化物100g当たり、通常、0.1〜200ミリモル、好ましくは1〜100ミリモル、より好ましくは5〜50ミリモルとなるような範囲である。
【0037】
また、極性基を含有しない共役ジエン重合体に極性基含有エチレン性不飽和化合物を付加する方法も、前述の極性基を含有しない共役ジエン重合体環化物に極性基含有エチレン性不飽和化合物を付加する方法に準じればよい。
このとき、極性基含有エチレン性不飽和化合物の使用量は、適宜選択されるが、得られる付加物を環化反応した後、極性基の割合が、極性基含有共役ジエン重合体環化物100g当たり、通常、0.1〜200ミリモル、好ましくは1〜100ミリモル、より好ましくは5〜50ミリモルとなるような範囲である。
【0038】
本発明に用いられる共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率は、通常、10%以上、好ましくは40〜75%、より好ましくは45〜65%である。不飽和結合減少率が小さすぎる場合および大きすぎる場合共に、酸素吸収性が低下する傾向がある。
【0039】
ここで、不飽和結合減少率は、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、不飽和結合が環化反応によって減少した程度を表す指標であり、以下のようにして求められる数値である。即ち、プロトンNMR分析により、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、全プロトンのピーク面積に対する二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積の比率を、環化反応前後について、それぞれ求め、その減少率を計算する。
【0040】
いま、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、環化反応前の全プロトンピーク面積をSBT、二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積をSBU、環化反応後の全プロトンピーク面積をSAT、二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積をSAUとすると、
環化反応前の二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積比率(SB)は、
SB=SBU/SBT
環化反応後の二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積比率(SA)は、
SA=SAU/SAT
従って、不飽和結合減少率は、下記式により求められる。
不飽和結合減少率(%)=100×(SB−SA)/SB
共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率は、環化反応の際の酸触媒量、反応温度及び反応時間等を適宜選択して調節することができる。
【0041】
本発明に用いられる共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィで測定される標準ポリスチレン換算値で、通常、1,000〜1,000,000、好ましくは10,000〜700,000、より好ましくは30,000〜500,000である。
共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量が低すぎると、フィルムに成形し難く、機械的強度が低くなる傾向にある。共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量が高すぎると、環化反応する際の溶液粘度が上昇して、取り扱い難くなると共に、押出成形時の加工性が低下する傾向にある。
共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量は、原料として用いる共役ジエン重合体の重量平均分子量を適宜選択して調節することができる。
【0042】
なお、前記共役ジエン重合体環化物が極性基を含有する場合、ゲル量(トルエン不溶解分の割合)は、通常、10重量%以下、好ましくは5重量%以下であるが、実質的にゲルを有しないものであることが特に好ましい。ゲル量が多すぎると、押出成形時の加工性が低下して平滑なフィルムに成形し難くなったり、均一な溶液を調製し難くなったりする。
【0043】
本発明において、共役ジエン重合体環化物は、1種類を単独で使用してもよく、単量体組成、分子量、不飽和結合減少率、ゲル量等が異なる2種類以上を併用してもよい。
【0044】
また、前記共役ジエン重合体環化物は、酸化防止剤を含有することが好ましい。共役ジエン重合体環化物中の酸化防止剤の含有量の上限は、通常、3000ppm、好ましくは2000ppm、より好ましくは1500ppm、特に好ましくは1000ppmである。この含有量が多すぎると、この共役ジエン重合体環化物を用いて得られる酸素吸収性樹脂層の酸素吸収性を低下させる傾向にある。酸化防止剤含有量の下限は、好ましくは10ppm、より好ましくは20ppmm、特に好ましくは50ppmである。
【0045】
使用し得る酸化防止剤としては、樹脂材料又はゴム材料の分野において通常使用されるものであれば特に制限されない。その具体例としては、フェノール系酸化防止剤、ホスファイト系酸化防止剤等を挙げることができる。
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、ビタミンE、テトラキス−(メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−チオビス−(6−t−ブチルフェノール)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス〔3‐(3,5−ジ−t−ブチル−4‐ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,6−ジ−(t−ブチル)−4−メチルフェノール、2,2’−メチレンビス−(6−t−ブチル−p−クレゾール)、1,3,5-トリス(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、2,6−ジ−t−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等を挙げることができる。
【0046】
また、ホスファイト系酸化防止剤の具体例としては、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリスデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、ジラウリルハイドロジェンホスファイト、ジフェニルハイドロジェンホスファイト、テトラフェニルジプロピレングリコールジホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスリトールテトラホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、水添ビスフェノールA・ペンタエリスリトールホスファイトポリマー、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチル−3−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及び下記式(1)〜(4)で表されるホスファイト化合物等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、単独で使用しても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。特に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とリン系酸化防止剤との併用が好ましい。
【0047】
【化1】

【0048】
【化2】

【0049】
【化3】

【0050】
【化4】

【0051】
また本発明に用いられる酸素吸収性樹脂層には、共役ジエン重合体環化物以外のポリマー材料を配合することが好ましい。本発明の酸素吸収性樹脂層に、共役ジエン重合体環化物以外のポリマー材料を配合することにより、酸素吸収後の引張強度が向上する。 使用しうる共役ジエン重合体環化物以外のポリマー材料は、特に限定されないが、熱可塑性樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂と各種ゴムとを併用することも可能である。
共役ジエン重合体環化物以外のポリマー材料は、1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
共役ジエン重合体環化物と共役ジエン重合体環化物以外のポリマー材料とを含有してなる酸素吸収性樹脂層において、共役ジエン重合体環化物の含有量は、100〜10重量%が好ましく、90〜20重量%がより好ましく、85〜30重量%が更に好ましく、80〜50重量%が特に好ましい。上記範囲内において、酸素吸収性と引張強度とのバランスが良好に保たれ、共役ジエン重合体環化物の割合が高い程、酸素吸収性が良好なものとなる。
【0052】
熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂及びポリビニルアルコール樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂の具体例としては、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、密度0.925〜0.930g/cm未満の低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1等のオレフィン単独重合体;エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン−ポリブテン−1共重合体、エチレン−環状オレフィン共重合体等のエチレンとα−オレフィンとの共重合体;エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸共重合体のイオン架橋物、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分又は完全鹸化物等のその他のエチレン共重合体;これらのポリオレフィン樹脂を無水マレイン酸等の酸無水物等でグラフト変性したグラフト変性ポリオレフィン樹脂;等を挙げることができる。
【0053】
ポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。ポリアミド樹脂の具体例としては、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,12等を挙げることができる。ポリビニルアルコール樹脂の具体例としては、ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分又は完全鹸化物等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂の中でも、ポリオレフィン樹脂、とりわけ、オレフィン単独重合体及びエチレンとα−オレフィンとの共重合体が共役ジエン重合体環化物との相溶性に優れるため好ましい。
【0054】
これらの熱可塑性樹脂と併用しうるゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)ゴム、ポリ(スチレン−ブタジエン)ゴム、ポリ(エチレンープロピレンージエン)ゴム、アクリルゴム等を例示することができる。
【0055】
本発明においては、酸素吸収性樹脂層中に、酸化防止剤を含有することが好ましい。用いられる酸化防止剤としては、共役ジエン重合体環化物に配合できるものと同様のものを使用できる。
本発明の酸素吸収性樹脂層中の酸化防止剤の含有量の上限は、通常、3000ppm、好ましくは2000ppm、より好ましくは1500ppm、特に好ましくは1000ppmである。この含有量が多すぎると、酸素吸収性を低下させる傾向にある。酸素吸収性樹脂層中の酸化防止剤含有量の下限は、好ましくは10ppm、より好ましくは20ppm、特に好ましくは50ppmである。
上記酸化防止剤を含有する酸素吸収性樹脂層は、押出成形時の加工性が良好で平滑なフィルムに成形しやすく、成形時に機械的強度が低下することがない。
酸化防止剤を含有する酸素吸収性樹脂層を得るには、その原料として使用する共役ジエン重合体環化物に予め酸化防止剤を添加しておいてもよく、酸素吸収性樹脂層を調製するときに、酸化防止剤を配合してもよい。
【0056】
本発明の酸素吸収性樹脂層には、本発明の効果を本質的に損なわない限り、酸素吸収性を高める作用を有する触媒、光開始剤、熱安定剤、補強剤、充填剤、難燃剤、着色剤、可塑剤、紫外線吸収剤、滑剤、乾燥剤、脱臭剤、難燃剤、帯電防止剤、粘着防止剤、防曇剤、表面処理剤等の添加剤を配合することができる。
これらの添加剤は、酸素吸収性樹脂層の分野で従来公知のものの中から、目的に応じて、適宜選択し、適量配合することができる。
また、添加剤の配合方法は、特に制限されず、酸素吸収性樹脂層を構成する各成分を、溶融混練したり、溶液状態で混合した後に溶剤を除去したりすることにより行うことができる。
【0057】
酸素吸収性を高める作用を有する触媒としては、遷移金属塩がその典型的なものとして挙げられる。本発明の酸素吸収性樹脂層は、このような遷移金属塩を含有していなくても、十分な酸素吸収性を発揮するが、遷移金属塩を含有させることにより、更に酸素吸収性に優れたものとなる。
このような遷移金属塩としては、特表2001−507045号公報、特開2003−71992号公報及び特表2003−504042号公報等に例示されたものが挙げられ、オレイン酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト(II)、2−エチルヘキサン酸コバルト(II)、ステアリン酸コバルト(II)、ネオデカン酸コバルト(II)等が好ましく、2−エチルヘキサン酸コバルト(II)、ステアリン酸コバルト(II)、ネオデカン酸コバルト(II)がより好ましい。
上記遷移金属塩の配合量は、通常、酸素吸収性樹脂層の10〜10,000ppm、好ましくは20〜5,000ppm、より好ましくは50〜5,000ppmである。
【0058】
光開始剤は、酸素吸収性樹脂層にエネルギー線を照射した際に、酸素吸収反応の開始を促進する作用を有する。
光開始剤としては、特表2003−504042号公報に例示されているベンゾフェノン類、アセトフェノン類、アントラキノン類等が挙げられる。
本発明においては、光開始剤を使用しなくとも、酸素吸収性樹脂層にエネルギー線を照射した際に、酸素吸収反応が開始する。光開始剤は配合しても良いが、滲出しない程度の量を配合するのが望ましい。
光開始剤により酸素吸収反応の開始を促進する際の配合量は、通常、酸素吸収性樹脂層の0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。
【0059】
また、本発明に用いられる酸素吸収性樹脂層の厚みは、好ましくは3〜100μm、より好ましくは5〜80μmである。前記範囲内とすることにより、酸素吸収性および加工性に優れる。
【0060】
本発明の酸素吸収性樹脂層を形成する方法としては、例えば、溶液キャスト法により成形したり、単軸又は多軸の溶融押出機を用い、T−ダイ、サーキュラーダイ等所定形状のダイを通して押出成形したりすることにより成形できる。勿論、圧縮成形法、射出成形法等を採用することも可能である。
【0061】
(ガスバリア材層)
通常、ガスバリア材層は、酸素吸収体において、前記酸素吸収性樹脂層より、外気と接触する側に形成される。ガスバリア材層は、本発明の酸素吸収体が例えば酸素吸収性包装容器とされている場合に、酸素吸収性包装容器の外部から侵入する酸素を遮断する役割を果たすものである。ガスバリア材層を構成する材料としては、アルミ箔等の金属箔;ポリ塩化ビニリデン;エチレン−酢酸ビニル共重合体の完全または部分鹸化物;ナイロン6、ナイロン66、MXDナイロン、非晶性ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;アルミ蒸着フィルムやシリカ蒸着フィルム等の無機酸化物蒸着フィルム;等を単独で又は組み合わせて用いることができる。また、その酸素透過度は加工性やコストが許す限りできるだけ小さくすることが好ましく、その膜厚に関係なく100cc/m2・atm・day(20℃、65%RH)以下であることが必要であり、より好ましくは50cc/m2・atm・day(20℃、65%RH)以下である。このようにすることで、酸素吸収性包装容器の外部から進入する酸素量を少なくすることができ、容器内の酸素の濃度をより少ないものとすることが可能となる。
【0062】
(密封材層)
また本発明に用いられる密封材層は、本発明の酸素吸収体が例えば酸素吸収性包装容器とされている場合、内容物と酸素吸収性樹脂層とを隔離する隔離層としての役割や、酸素吸収性包装容器を形成する際の密封材としての役割を果たすものである。また、この密封材層は、酸素吸収性樹脂層に効率よく吸収させるために、酸素を効率よく透過させるものとされる。
このような密封材層を構成する材料としては特に限定されるものではなく、酸素吸収体の用途に応じて適宜選択される。例えば各種熱可塑性樹脂等を用いることが可能である。また特に酸素吸収体が、食品等を包装するための酸素吸収性包装容器である場合には、衛生面等を考慮する必要があり、例えばポリオレフィン類を1種類、または2種類以上混合して用いることが好ましい。
【0063】
ポリオレフィン類としては、例えば直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等の各種ポリエチレン;ポリプロピレンホモポリマー、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体等のポリプロピレン;ポリメチルペンテン;エチレン−酢酸ビニル共重合体;エチレン−αオレフィン共重合体;アイオノマー樹脂;等が挙げられる。上記の中でも、各種ポリエチレンを主成分とした系が取り扱い性の面から特に好ましく用いられる。
【0064】
上記密封材層には、必要に応じて、熱可塑性エラストマー等のポリオレフィン類以外の熱可塑性樹脂、酸化チタンやカーボンブラック等の顔料、酸化防止剤、スリップ剤、充填剤、紫外線吸収剤、吸着剤、脱臭剤、その他各種添加剤等を添加してもよく、また密封材層は単層であってもよく、また複数層が積層されたものであってもよい。
上記密封材層の膜厚としては、密封材層を構成する樹脂の種類や、層数によらず、10〜200μmの範囲とすることが好ましく、特に好ましくは20〜150μmの範囲である。密封材層の膜厚が10μmより薄い場合には、ヒートシール強度が低下し、強度が低くなる。
【0065】
また密封材層の25℃における酸素透過度は、密封材層の層数や膜厚、構成材料によらずに400cc・20μ/m・atm・day(20℃、65%RH)以上であることが好ましく、特に好ましくは500cc・20μ/m・atm・day(20℃、65%RH)以上である。密封材層の酸素透過度が400cc・20μ/m・atm・day(20℃、65%RH)より低いと、酸素吸収性樹脂層により行われる酸素吸収に対して律速となり、酸素吸収速度が低下するため、好ましくない。
【0066】
(その他の層)
また、酸素吸収体は、形状保持層、保護層等を有していてもよい。
形状保持層は、酸素吸収体を構成する基材となるものであり、通常、酸素吸収体に賦型性、耐屈曲性、剛性、強度等を持たせるものである。
保護層は、酸素吸収体の最外層を構成するものであり、通常、酸素吸収体表面を保護し、また剛性、強度等を持たせるものである。保護層の表面には、例えば、文字、図形、記号、絵柄、模様等の所望の印刷絵柄が施されていても良い。
形状保持層及び保護層に用いられる樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミド、ポリスチレン、ABS、PMMA、PC、PVCなどが挙げられる。また、形状保持層及び保護層には、紙、不織布、繊維、ガラスなどを用いることもできる。
【0067】
また、上記酸素吸収体は、各層を接着する接着層を必要に応じて有していてもよい。接着層に用いられる樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体等の押し出し用のポリオレフィン類;或いはオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン類等の接着性樹脂;等が挙げられる。
【0068】
(酸素吸収体の製造方法)
本発明に用いられる酸素吸収体は、例えばフィルム、シート、ボトル、カップ、キャップ、チューブ形成用パリソンないしはパイプ、ボトルないしチューブ成形用プリフォーム、袋等の形状に成形されているものとすることができる。また三方または四方シールの通常のパウチ類、ガセット付パウチ類、スタンディングパウチ類、ピロー包装袋等とされていてもよく、この例に限定されない。酸素吸収体を各種形状となるように製造する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。例えば溶液キャスト法により成形したり、単軸又は多軸の溶融押出機を用い、T−ダイ、サーキュラーダイ等所定形状のダイを通して押出成形したりすることにより成形できる。勿論、圧縮成形法、射出成形法等を採用することも可能である。また本発明に用いられる酸素吸収体が複数層からなる場合には、通常の積層方法、例えば、ウエットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押し出しラミネーション法、共押し出しラミネーション法、その他公知の方法で行うことができる。さらに、本発明においては、上記の積層を行う際に、必要ならば、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理等の前処理を紙や熱可塑性樹脂層等に施すことができる。また例えば、ウレタン系、ポリエチレンイミン系、ポリブタジエン系、有機チタン系等のアンカーコーティング剤、或いはポリウレタン系、ポリアクリル系、ポリエステル系、エポキシ系、ポリ酢酸ビニル系、セルロース系等の公知のアンカーコート剤、接着剤等を使用することができる。
【0069】
<紫外線の照射方法>
本発明の酸素捕捉方法に用いる紫外線は、共役ジエン重合体環化物の酸化反応を促進させることが可能な紫外線であれば特に限定されるものではない。本発明においては、200nm〜400nmの範囲内の波長を有する紫外線、中でも200nm〜280nmの範囲内の、一般的にUV−Cといわれる領域の波長を有する紫外線を用いることが好ましい。これにより、共役ジエン重合体環化物の酸素吸収を効率よく促進させることができる。また酸素吸収体が酸素吸収性包装容器である場合には、容器中に食品等を収納し、紫外線を照射することで、食品等の殺菌と同時に、酸素を捕捉することが可能となる。
【0070】
また紫外線の光源としては、安価な低圧水銀放電灯が使用されることが好ましい。水銀蒸気中の放電を利用したランプは、発光管中に封入した水銀の量により点灯中の内圧が変わり、それに伴って高度、輝度、および光のスペクトルが変わる。これらは低圧水銀(放電)灯、高圧水銀(放電)灯、および超高圧水銀(放電)灯の三種類に大別されており、水銀の内圧が1mmHg以下のものが、低圧水銀(放電)灯と称されている。低圧水銀灯は、高度、輝度ともに低いものの、光エネルギーの大部分の水銀の共鳴線が253.7nmに集中しており、共役ジエン重合体環化物の酸化反応を効率良く促進させることができる。また、高圧水銀灯や超高圧水銀灯と比較して、電源部への入力に必要とされる電力を小さくすることができ、照射時の光源部における発熱量を少ないものとすることができる。したがって、例えば酸素吸収体が酸素吸収性包装容器とされている場合等、容器中に食品等を収納した状態で、紫外線を照射して酸素吸収を行うことができる、という利点を有している。
【0071】
前記光源の形状や大きさには特に制限がないが、単位寸法あたりの入力電力(光源の発光長あたりの入力電力)が1mW/cm以上であることが好ましい。
また本発明における好ましい照射量は酸素吸収性樹脂層に含有される共役ジエン重合体環化物の量、および酸素吸収性樹脂層の膜厚等により適宜選択されるが、通常光量は酸素吸収性樹脂層1cmあたり、100mJ以上照射することが好ましく、300mJ〜2000mJの範囲内とされることがより好ましい。上記範囲内とすることにより、酸素吸収性樹脂層の酸化反応を促進させることが可能となるからである。
【0072】
紫外線照射の際の光源の配置位置は、酸素吸収体の形状により適宜選択されるが、本発明においては酸素吸収性樹脂層全面に紫外線照射可能な位置に光源が配置されることが好ましい。例えば酸素吸収体が酸素吸収性包装容器とされている場合、光源を酸素吸収性包装容器の内部に配置して、紫外線照射を行ってもよい。
【0073】
また酸素吸収体が酸素吸収性包装容器を形成するための酸素吸収性包装材とされている場合には、酸素吸収性包装材を容器の形状に成形する前の平坦なシート状の段階等で、紫外線照射を行ってもよく、また容器の形状に成形した後に紫外線照射を行ってもよい。
【0074】
B.酸素吸収性包装容器の製造方法
次に、本発明の酸素吸収性包装容器の製造方法について説明する。本発明の酸素吸収性包装容器の製造方法は、共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有する酸素吸収性包装材を用いて酸素吸収性包装容器を製造する酸素吸収性包装容器の製造方法であって、前記酸素吸収性包装材を用いて前記酸素吸収性包装容器を成形する前、成形する途中、または成形した後に紫外線を照射して、容器内の酸素を吸収する酸素吸収工程を有することを特徴とする方法である。また、本発明の酸素吸収性包装容器の製造方法においては、200nm〜400nmの範囲内の波長を有する紫外線、中でも200nm〜280nmの範囲内の、一般的にUV−Cといわれる領域の波長を有する紫外線を用いることが好ましい。これにより、共役ジエン重合体環化物の酸素吸収を効率よく促進させることができる。
【0075】
本発明の酸素吸収性包装容器の製造方法においては、酸素吸収性包装容器を製造するために用いられる酸素吸収性包装材が、前記共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有するものとされている。そのため、この酸素吸収性包装材に紫外線照射を行うことによって、共役ジエン重合体環化物がすばやく酸素と反応し、形成された酸素吸収性包装容器が、容器内の酸素を吸収することが可能となる。また、前記共役ジエン重合体環化物による酸素の捕捉には、光開始剤や光増感剤が必要とされないことから、酸素吸収性包装容器から光開始剤等が滲出することがなく、種々の用途に用いられる酸素吸収性包装容器とすることができる。
またさらに、前記共役ジエン重合体環化物と酸素との反応は、例えば食品等の殺菌に用いられる波長の紫外線によっても生じることから、例えば包装される内容物の殺菌と同時に、容器中の酸素吸収を行うこと等も可能となる。
【0076】
酸素吸収工程は、酸素吸収性包装材を酸素吸収性包装容器の形状に成形する前に行ってもよい。この場合、紫外線照射を行った後、速やかに酸素吸収性包装材を酸素吸収性包装容器の形状に成形し、内容物を収納して容器を密封する。
また酸素吸収工程は、酸素吸収性包装材を酸素吸収性包装容器の形状に成形する途中に行ってもよい。この場合、容器成形中に内容物を収納していない状態で紫外線照射を行い、その後速やかに酸素吸収性包装材を酸素吸収性包装容器の形状に成形し、内容物を収納して容器を密封する。
また酸素吸収工程は、酸素吸収性包装材を酸素吸収性包装容器の形状に成形した後に行ってもよい。またこの場合、容器内に内容物を収納していない状態で紫外線照射を行い、その後内容物を収納して容器を密封してもよく、また容器内に内容物を収納した状態で紫外線照射を行い、容器を密封してもよい。
【0077】
本発明に用いられる酸素吸収性包装材の構造や、製造方法としては、「A.酸素の捕捉方法」で説明した酸素吸収体と同様とすることができる。また、酸素吸収工程で照射する紫外線や、紫外線の照射方法としては、上述した「A.酸素の捕捉方法」で説明したものと同様とすることができる。
【0078】
本発明により製造される酸素吸収性包装容器は、ボトル、カップ、チューブ、袋等の内容物を直接収納する容器本体であってもよく、また例えばコルク栓、王冠、ボトルキャップ、プルトップ、パッキング用蓋、所謂イージーオープンタイプの容器用蓋等、容器の蓋等であってもよい。
【0079】
本発明により製造された酸素吸収性包装容器に充填される内容物としては、例えば、牛乳、ジュース、日本酒、ウイスキー、焼酎、コーヒー、茶、ゼリー飲料、健康飲料等の液体飲料、調味液、ソース、醤油、ドレッシング、液体だし、マヨネーズ、味噌、すり下ろし香辛料等の調味料、ジャム、クリーム、チョコレートペースト等のペースト状食品、液体スープ、煮物、漬物、シチュー等の液体加工食品に代表される液体系食品や、そば、うどん、ラーメン等の生麺及びゆで麺、精米、調湿米、無洗米等の調理前の米類や調理された炊飯米、五目飯、赤飯、お粥等の加工米製品類、粉末スープ、だしの素等の粉末調味料等に代表される高水分食品、その他農薬や殺虫剤等の固体状や溶液状の化学薬品、液体及びペースト状の医薬品、化粧水、化粧クリーム、化粧乳液、整髪料、染毛剤、シャンプー、石鹸、洗剤等、種々の物品が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0080】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。前記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0081】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明する。なお、以下の記載における「部」及び「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
また、各特性の評価は以下のように行った。
【0082】
(1)共役ジエン重合体環化物の重量平均分子量
ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー分析による標準ポリスチレン換算値で示す。
(2)共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率
不飽和結合減少率は、下記(i)及び(ii)の文献に記載された方法を参考にして、プロトンNMR測定により求める。
(i) M.A.Golub and J.Heller.Can.J.Chem,41,937(1963).
(ii) Y.Tanaka and H.Sato,J.Polym.Sci: Poly.Chem.Ed.,17,3027(1979).
いま、共役ジエン重合体中の共役ジエン単量体単位部分において、環化反応前の全プロトンピーク面積をSBT、二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積をSBU、環化反応後の全プロトンピーク面積をSAT、二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積をSAUとすると、
環化反応前の二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積比率(SB)は、
SB=SBU/SBT
環化反応後の二重結合に直接結合したプロトンのピーク面積比率(SA)は、
SA=SAU/SAT
従って、不飽和結合減少率は、下記式により求められる。
不飽和結合減少率(%)=100×(SB−SA)/SB
【0083】
(製造例1:共役ジエン重合体環化物AKの製造)
攪拌機付きオートクレーブに、シクロヘキサン233部、スチレン25部、nーブチルリチウム0.113部(1.56モル/リットル濃度のヘキサン溶液で添加)を仕込み、内温を60℃に昇温させて30分間重合させた。スチレンの重合転化率は、ほぼ100%であった。次いで、内温が75℃を超えないように制御しながら、イソプレン75部を60分間に亘り、連続的に添加した。添加終了後、70℃でさらに1時間反応させた。この時点の重合転化率はほぼ100%であった。
上記の重合溶液に、β−ナフタレンスルホン酸−ホルマリン縮合物のナトリウム塩0.016部を(1%水溶液で)添加し、重合反応を停止して、ポリスチレンブロックとポリイソプレンブロックとからなるジブロック構造の共役ジエン重合体Aを得た。この一部を採取し、重量平均分子量を測定したところ、78,000であった。
引き続き、上記の重合体溶液に、p−トルエンスルホン酸(トルエン中で水分量が150ppm以下になるように還流脱水したもの)1.01部を添加し、75℃で6時間環化反応を行った。その後、炭酸ナトリウム0.391部を含む炭酸ナトリウム水溶液を添加して環化反応を停止し、80℃で30分間攪拌した。80℃で共沸還流脱水により水を除去した後、孔径2μmのガラス繊維フィルターにて系中の触媒残渣を除去した。
得られた重合体環化物の溶液に、重合体環化物に対して、300ppmに相当する量の酸化防止剤(イルガノックス1076:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)及び600ppmに相当する酸化防止剤(アデカスタブHP−10:旭電化工業社製)を添加した後、溶液中のシクロヘキサンの一部を留去し、更に真空乾燥を行って、トルエンを除去して、固形状の共役ジエン重合体環化物AKを得た。得られた共役ジエン重合体環化物AKを単軸混練押し出し機(ダイスΦ3mm×1穴)にて丸ペレ化(ペレットak)した。共役ジエン重合体環化物AKの不飽和結合減少率および重量平均分子量を表1に示す。
混練機としては、池貝単軸混練押し出し機(40Φ、L/D=25)を用い、混練条件は下記のものとした。
シリンダ1:140℃
シリンダ2:150℃
シリンダ3:160℃
シリンダ4:170℃
ダイス:170℃
回転数:25rpm
【0084】
(製造例2:共役ジエン重合体環化物BKの製造)
攪拌機、温度計、還流冷却管及び窒素ガス導入管を備えた耐圧反応器に、10mm角に裁断したポリイソプレン(シス−1,4−結合単位含有量73%、トランス−1,4結合単位含有量22%、3,4結合単位含有量5%、重量平均分子量144,000)300部を、シクロヘキサン700部とともに仕込んだ。反応器内を窒素置換した後、75℃に加温して攪拌下でポリイソプレンをシクロヘキサンに完全に溶解した後、p−トルエンスルホン酸(トルエン中で、水分量が150ppm以下になるように、還流脱水したもの。)2.85部を投入し、80℃以下で環化反応を行った。7時間反応させた後、炭酸ナトリウム1.1部を含む25%炭酸ナトリウム水溶液を投入して反応を停止した。80℃で、共沸還流脱水により水を除去した後、孔径2μmのガラス繊維フィルターにて系中の触媒残渣を除去した。
得られた重合体環化物の溶液に、重合体環化物に対して、300ppmに相当する量の酸化防止剤(イルガノックス1076:チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製)及び600ppmに相当する酸化防止剤(アデカスタブHP−10:旭電化工業社製)を添加した後、溶液中のシクロヘキサンの一部を留去し、更に真空乾燥を行って、トルエンを除去して、固形状の共役ジエン重合体環化物BKを得た。得られた共役ジエン重合体環化物BKを製造例1と同じ単軸混練押し出し機(ダイスΦ3mm×1穴)にて丸ペレ化(ペレットbk)した。共役ジエン重合体環化物BKの不飽和結合減少率および重量平均分子量を表1に示す。
【0085】
(製造例3:酸素吸収性樹脂組成物の作製)
低密度ポリスチレン樹脂(LC−600A:日本ポリオレフィン(株))95重量部に、スチレンーイソプレンースチレントリブロック共重合体(SISクインタック3451:日本ゼオン(株))を5重量部、コバルト含有率14wt%のネオデカン酸コバルト(DICNATE5000:大日本インキ化学工業(株))をコバルト量で350ppmおよびベンゾフェノン光開始剤(アルドリッチ(Aldrich))を0.5%配合し、攪拌乾燥機(ダルトン(株))で予備混練後、ホッパーに投入した。次いで、出口部分にストランドダイを装着した二軸押し出し機(TEM−35B:東芝機械(株))を用いて、スクリュー回転数100rpmで低真空ベントを引きながら、185℃でストランド状に押し出して目的とする樹脂組成物ペレットcを作製した。
【0086】
【表1】

【0087】
(酸素吸収体(ak1およびak2)の作製)
製造例1で得られたペレットakを、ラボプラストミル単軸押し出し機にTダイ、二軸延伸試験装置(共に株式会社東洋精機製作所製)を接続して、幅100mm、厚みが20μmとなるようにフィルム成形し、酸素吸収性樹脂層からなる酸素吸収体ak1とした。同様に、エチレンービニルアルコール共重合体(EP−E105B(株)クラレ)樹脂ペレットを用い、幅100mm、厚みが30μmとなるようにフィルム成型し、ガスバリア材層とした。さらに、低密度ポリエチレン樹脂(LC−600A:日本ポリオレフィン(株))ペレットを用い、上記と同様に、幅100mm、厚みが50μmとなるようにフィルム成形し、密封材層とした。
これらのフィルムをガスバリア材層/酸素吸収性樹脂層/密封材層の順に重ね、125℃に設定したホットロールラミネーター(EXCELAM II 355Q:Gmp Co.LTD製)を用いてラミネート接着させて積層し、酸素吸収体とした(ak2)。
【0088】
(酸素吸収体(bk1およびbk2)の作製)
製造例2で得られたペレットbkを、ラボプラストミル単軸押し出し機にTダイ、二軸延伸試験装置(共に株式会社東洋精機製作所製)を接続して、幅100mm、厚みが20μmとなるようにフィルム成形し、酸素吸収性樹脂層からなる酸素吸収体bk1とした。さらに実施例1と同様にガスバリア材層/酸素吸収性樹脂層/密封材層の順に重ね、ラミネート接着させて積層し、酸素吸収体とした(bk2)。
【0089】
(酸素吸収体(c1およびc2)の作製)
製造例3で得られたペレットcを、ラボプラストミル単軸押し出し機にTダイ、二軸延伸試験装置(共に株式会社東洋精機製作所製)を接続して、幅100mm、厚みが20μmとなるようにフィルム成形し、酸素吸収性樹脂層からなる酸素吸収体c1としたとした。さらに実施例1と同様にガスバリア材層/酸素吸収性樹脂層/密封材層の順に重ね、ラミネート接着させて積層し、酸素吸収体とした(c2)。
【0090】
(実施例1)
酸素吸収体ak1を、100mm×100mmの大きさに裁断し、低圧水銀灯(高出力表面殺菌装置50型GME10004A0:岩崎電気(株)製)を用いて紫外線照射し、酸素不透過性の袋(ハイレトルトアルミ袋ALH−9)中にて25℃、5日間保存し、袋内の酸素濃度を測定した。なお、酸素濃度の測定にはフードチェッカーHS−750:米国セラマテック社製を用いた。また、保存前の酸素濃度は、20.7%であった。
(実施例2)
酸素吸収体bk1を用いた以外は、実施例1と同様に酸素濃度を測定した。
【0091】
(比較例1)
酸素吸収体ak1を用い、紫外線を照射しなかった以外は、実施例1と同様に酸素濃度を測定した。
(比較例2)
酸素吸収体bk1を用い、紫外線を照射しなかった以外は、実施例1と同様に酸素濃度を測定した。
(比較例3)
酸素吸収体c1を用いた以外は、実施例1と同様に酸素濃度を測定した。
(比較例4)
酸素吸収体c1を用い、高圧水銀灯(コールドミラー集光簡易型UE031−301−01C:岩崎電気(株)製)を用いた以外は、実施例1と同様に酸素濃度を測定した。
【0092】
【表2】

【0093】
(実施例3)
酸素吸収体ak2を、100mm×400mmの大きさに裁断し、低圧水銀灯(高出力表面殺菌装置50型GME10004A0:岩崎電気(株)製)を用いて密封材層側より紫外線照射し、両端をヒートシーラにて熱融着し、酸素吸収性多層体袋を作製した。空気を完全に除去した後、新たに100ccの空気を入れ、25℃×5日放置後の、袋内の酸素濃度を測定した。なお、酸素濃度の測定にはフードチェッカーHS−750:米国セラマテック社製を用いた。また、保存前の酸素濃度は、20.7%であった。
(実施例4)
酸素吸収体bk2を用いた以外は、実施例3と同様に酸素吸収性多層体袋を作製し、袋内の酸素濃度を測定した。
【0094】
(比較例5)
酸素吸収体ak2を用い、紫外線を照射しなかった以外は、実施例3と同様に酸素吸収性多層体袋を作製し、袋内の酸素濃度を測定した。
(比較例6)
酸素吸収体bk2を用い、紫外線を照射しなかった以外は、実施例3と同様に酸素吸収性多層体袋を作製し、袋内の酸素濃度を測定した。
(比較例7)
酸素吸収体c2を用いた以外は、実施例3と同様に酸素吸収性多層体袋を作製し、袋内の酸素濃度を測定した。
(比較例8)
酸素吸収体c2を用い、高圧水銀灯(コールドミラー集光簡易型UE031−301−01C:岩崎電気(株)製)を用いた以外は、実施例3と同様に酸素吸収性多層体袋を作製し、袋内の酸素濃度を測定した。
【0095】
【表3】

【0096】
表2および表3の結果から、本発明の酸素の補足方法を用いた実施例1、実施例2、実施例3および実施例4では、酸素吸収性に優れることが分かる。
一方、実施例1、実施例2、実施例3および実施例4とそれぞれ同じ酸素吸収体を用いたものの、紫外線(低圧水銀灯もしくは高圧水銀灯)を照射しなかった比較例1、比較例2、比較例5および比較例6では、酸素吸収性に劣る結果となった。
また、紫外線(低圧水銀灯もしくは高圧水銀灯)を照射したものの、酸素吸収体中の酸素吸収性樹脂層に共役ジエン重合体環化物を用いなかった比較例3、比較例4、比較例7および比較例8では、酸素吸収性に劣る結果となった。特に、低圧水銀灯を用いた場合に、本発明と比較して酸素吸収性に非常に劣る結果となった(比較例3、比較例7)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有する酸素吸収体に紫外線を照射することにより、酸素吸収性樹脂層に酸素を吸収させることを特徴とする酸素の捕捉方法。
【請求項2】
前記酸素吸収体が、ガスバリア材層および密封材層を有することを特徴とする請求項1に記載の酸素の捕捉方法。
【請求項3】
前記酸素吸収性樹脂層が酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸素の捕捉方法。
【請求項4】
前記共役ジエン重合体環化物の不飽和結合減少率が10重量%以上であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の酸素の捕捉方法。
【請求項5】
前記紫外線が200nm〜400nmの範囲内の波長を有することを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの請求項に記載の酸素の捕捉方法。
【請求項6】
共役ジエン重合体環化物を含有する酸素吸収性樹脂層を有する酸素吸収性包装材を用いて酸素吸収性包装容器を製造する酸素吸収性包装容器の製造方法であって、
前記酸素吸収性包装材を用いて前記酸素吸収性包装容器を成形する前、成形する途中、または成形した後に紫外線を照射して、容器内の酸素を吸収する酸素吸収工程を有することを特徴とする酸素吸収性包装容器の製造方法。
【請求項7】
前記紫外線が200nm〜400nmの範囲内の波長を有することを特徴とする請求項6に記載の酸素吸収性包装容器の製造方法。

【公開番号】特開2006−335801(P2006−335801A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−159264(P2005−159264)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】