説明

酸素への暴露を抑制するための組成物

共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリマーと、酸化性金属と、第二鉄アンモニウムカチオンを有する鉄塩類から成る群から選択される化合物とを含む組成物は、有効な酸素捕捉組成物である。該組成物は、食品及び医薬品の包装材料の構成成分として使用するのに好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素を吸収し、容器、蓋、及び他の包装製品の製造において有用である組成物に関する。本発明はまた、こうした組成物から作製された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの食品及び医薬品は、酸素の存在下で保管された場合に悪影響を受ける。包装過程又は保管中にこれらの酸素感受性物質の酸素への暴露を軽減する又は排除するための方法は、多くの研究の課題となってきた。この問題に対処する1つの戦略は、不活性ガススパージによって製品から酸素を除去することである。他の方法は、パッケージ中に入れられた酸素吸収物質を含有する包み又は小袋の使用を伴う。
米国特許第4,992,410号により、塩化ナトリウムなどの反応促進剤を鉄に加えて食品包装のための小袋に使用するのに好適な酸素吸収物質を製造することが知られている。こうした組成物についての他の開示は、鉄粉末、塩化ナトリウム、及び充填剤を含む酸素吸収組成物を開示している日本特許公開公報(Japanese Unexamined Patent Publication)第56−121634号(1981年)及び日本特許第54158386号(1979年)、並びにa)鉄又は鉄塩、b)金属ハロゲン化物、c)カーボネート、d)水と反応性の固体、及びe)アミノ酸、の混合物である5成分酸素吸収組成物を開示している日本特許出願公開(Japanese Unexamined Patent Application Kokai)第56−148272号(1981年)に見出される。米国特許第4,908,151号は、a)不飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸を含有する脂肪族油、b)遷移金属及び/又は遷移金属化合物、並びにc)塩基性物質、例えば炭酸カルシウム、を含む、乾燥食品のための酸素吸収剤を開示している。
別の技術機関は、包装材料自体の一部にヘッドスペース酸素を吸収する目的で使用されてよい担体樹脂に添加するのに好適な組成物について記載している。こうした組成物の例は、担体樹脂、遷移金属のサリチル酸キレート又は複合体、及びアスコルベート化合物を含む酸素捕捉組成物について記載している米国特許第5,364,555号に見出され得る。日本特許公開公報(Japanese Unexamined Patent Publication)第2002−80647号は、ポリオレフィン樹脂、鉄、金属ハロゲン化物、及び無機硫酸塩を含む、食品包装に使用するためのシートを開示している。米国特許第5,274,024号もまた、鉄と、塩化ナトリウム並びに塩化カルシウム及び塩化マグネシウムなどの追加の電解質と塩化ナトリウムとの混合物を含む種々の酸化促進剤とを組み込んだこの種の組成物を開示している。更に、米国特許第5,744,056号は、高分子樹脂、酸化性金属、第1の電解質、並びに水溶液中で正及び負のイオンへとわずかにだけ解離する酸性化成分を含む酸素捕捉物質を開示している。
【0003】
米国特許第5,211,875号は、ポリアミドのような酸化性ポリマーを含む酸化性有機化合物及び遷移金属触媒を含む層を組み込んだ包装物品を開示している。酸素捕捉は該組成物を放射線に曝すことによって開始される。米国特許第5,021,515号は、酸化性ポリマー、好ましくはポリアミド、及びコバルトなどの金属触媒を含む、パッケージのための壁を提供する別の系を開示している。
上述した日本特許出願公開(Japanese Unexamined Patent Application Kokai)第56−148272号(1981年)は、酸素捕捉組成物中の元素鉄の代替物としての硫酸第一鉄の使用について開示している。米国特許第6,960,376号には、酸化性金属を含まない酸素吸収組成物における、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硝酸第一鉄、臭化第一鉄、及びヨウ化第一鉄のような無機の第一鉄化合物、並びに没食子酸第一鉄、リンゴ酸第一鉄、及びフマル酸第一鉄のような有機酸の第一鉄塩類の使用が開示されている。同様に、米国特許第6,037,022号は、酸化性金属を含まない酸素捕捉組成物中での炭酸第一鉄の使用を開示している。日本特許公開公報(Japanese Unexamined Patent Publication)第2002−80647号は、酸素捕捉組成物中での硫酸第一鉄と金属鉄との組み合わせの使用を開示し、欧州特許公報第1506718A1号は、酸素捕捉組成物として塩化第一鉄を含む、ルイス酸塩類でコーティングされた鉄の組み合わせの使用を開示している。米国特許第4,299,719号は、炭酸第一鉄、鉄粉末、及び金属ハロゲン化物を含有する、脱臭パッケージのための組成物を開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの系には、広く受け入れられるものがなく、食品包装における酸素暴露の経済的且つ有効な抑制を可能にする組成物及び系が当該技術分野において依然として必要とされている。更なる課題は、食品又は医薬品と接触する包装系の一部として使用される場合に、吸収剤が、関連の食品接触規制に従わなければならないということである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
A.共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリマーと、
B.酸化性金属と、
C.第二鉄アンモニウムカチオンを有する鉄塩類及びこれらの混合物から成る群から選択される化合物とを含む酸素捕捉組成物を対象とし、前記鉄塩類は25℃で水中に少なくとも1g/100g水の溶解度を有する。
本発明はまた、
A.
1.共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つのポリマーと、
2.酸化性金属と、
3.第二鉄アンモニウムカチオンを有する鉄塩類及びこれらの混合物から成る群から選択される化合物とを含む第1の層であって、前記鉄塩類が25℃で水中に少なくとも1g/100g水の溶解度を有する第1の層、並びに
B.少なくとも1つの追加の層を含む、積層体を対象とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明は、食品、医薬品、及び酸素の影響を受けやすい他の物質のための包装材料の構成成分として特有の有用性を有する酸素捕捉組成物を対象とする。本明細書で使用するとき、用語「酸素捕捉組成物」とは、密閉された容器中に存在する酸素と反応又は結合し、それによって容器の内部に存在する酸素の濃度を減少させることのできる物質又は化学化合物を意味する。
本発明の組成物は、有効で、また多くの場合急速な、酸素の取り込みを示す。それらは、容器、及び包装構造体の構成要素の製造において、例えば容器の蓋の1以上の層の構成成分として、並びに容器壁組成物において、使用されてよい。このような態様で使用される場合、該組成物はパッケージの内容物の酸素への暴露を抑制することができる。本発明の酸素捕捉組成物はまた、酸素吸収の目的で容器内に入れられてよい小袋又は包みに使用するのに好適である。したがって、本発明の一実施形態は、酸素透過性の材料で形成された包みであって、本発明の酸素捕捉組成物がその包み内に存在する。
本発明の酸素捕捉組成物のポリマー成分は、多くの場合、酸素に対し透過性のポリマーであるが、必ずしもその必要はない。それはまた、それ自身、酸化に対して比較的不活性でなければならない。すなわち、本発明の組成物に使用するのに好適なポリマーは、低い脂肪族不飽和度を有する。具体的には、ポリマーは、共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族二重結合、すなわち脂肪族炭素−炭素二重結合、好ましくは共重合モノマー単位100当たり1未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する。2以上のこうしたポリマーのブレンドもまた本発明の組成物に使用するのに好適である。すなわち、本発明の組成物は、共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリマー及びこれらの混合物から成る群から選択される、第1のものとは異なる追加のポリマーを含んでもよい。好ましくは、ポリマーはまた、水蒸気に透過性でもある。熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、又は熱可塑性エラストマーが使用されてよい。有効量の酸化性金属及び鉄塩を組み込むことができる、所要の低い不飽和度を有する任意のポリマーが好適である。使用してよい熱可塑性樹脂の代表的な例としては、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンα−オレフィンコポリマー、例えば直鎖低密度ポリエチレン、エチレンプロピレンコポリマー、エチレンブテンコポリマー、及びエチレンオクテンコポリマー、エチレンと極性コモノマーとのコポリマー、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンアルキルアクリレートコポリマー、エチレンアルキルメタクリレートコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、エチレンマレイン酸コポリマー、並びに金属塩類、例えば、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、及びエチレンマレイン酸コポリマーのアイオノマーが挙げられる。好ましい熱可塑性樹脂は、包装用途に一般的に使用されるもの、特に、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマー、例えばニュクレル(Nucrel)(登録商標)酸コポリマー、エチレン(メタ)アクリル酸コポリマーの金属塩類、例えばサーリン(Surlyn)(登録商標)アイオノマー樹脂、無水マレイン酸グラフト化ポリオレフィン、例えばバイネル(Bynel)(登録商標)共押出可能粘着性樹脂、エチレンアルキルアクリレートコポリマー、例えばエルバロイ(Elvaloy)(登録商標)ACアクリレートコポリマー(これらはすべてイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E. I. du Pont de Nemours and Company)から入手可能である)、ポリアミドホモポリマー又はコポリマー、例えば三菱ガス化学(Mitsubishi Gas Chemical)により製造されるMXD−6ポリキシリレンアジパミド、ナイロン6及びナイロン66、ポリエチレンテレフタレート、例えばクリスター(Crystar)(登録商標)ポリエステル樹脂、並びにクラレ社(Kuraray Co., Ltd.)から入手可能なエチレンビニルアルコールコポリマーである。
【0007】
高分子成分として使用するのに好適な熱硬化性樹脂としては、エポキシ、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和エチレンα−オレフィンコポリマー、例えばEPDM、シリコーンゴム、ポリクロロプレン、ニトリルゴム、フルオロエラストマー、ペルフルオロエラストマー、及び他のエラストマーが挙げられる。好ましい熱硬化性樹脂は、米国食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration)の規制に従う、食品接触用途に好適である組成物である。この後者の種類の中でも、仕上げ後又は硬化後に不飽和度が共重合モノマー単位100当たり1未満の脂肪族二重結合である樹脂が最も好ましい。
本発明の酸素捕捉組成物はすべて、少なくとも1つの酸化性金属成分を含有する。本明細書で使用するとき、用語「電解質」とは、水溶液中で正及び負のイオンへと解離することのできる化合物を意味する。好適な金属成分は、超微粒子状又は粒子状形態で提供されることができ、また組成物のその他の必須成分を含む電解質と反応する能力を有する、酸化性金属である。このような金属化合物は、空気に曝されたときにそれらの表面上に若干の金属酸化物を常に有する。特定の実施形態では、金属酸化物、好ましくは鉄、銅、マンガン、及びコバルトの酸化物から成る群から選択されるものが、本発明の酸素捕捉組成物に所望により加えられてもよい。
本発明の組成物に使用するのに好適な酸化性金属の例としては、鉄、銅、マンガン、及びコバルトが挙げられる。鉄は、酸素捕捉反応の促進に極めて有効であり、超微粒子状形態で容易に入手可能であるため、好ましい酸化性金属である。
理論上、酸化性金属、電解質、及び酸素の間の反応は、電気化学反応であり、反応が起こるためには水分及び電子伝導体(すなわち金属自身)の両方が必要である。この反応の電気化学的性質によって、単に構成成分を水分から保護するだけで、反応を制御できる。物質を水分から保護することは、樹脂が使用される商業的運用において一般的であり、低い水分環境を維持するための方法及び装置が当業者には周知である。
本発明の組成物に必要な構成成分は、金属と反応する電解質である。電解質は固体第二鉄アンモニウム塩である。これらの鉄塩類はアンモニウムカチオンと共に第二鉄カチオンを有する。これらの電解質の更なる特徴は、それらが極めて水溶性であるということである。すなわち、鉄塩類は25℃で水中に少なくとも1g/100g水、好ましくは少なくとも10g/100g水、最も好ましくは少なくとも20g/100g水の溶解度を有する。クエン酸第二鉄アンモニウムが特に有効な電解質である。この実施形態に使用するのに好適な他の鉄塩類としては、エチレンジアミン四酢酸の第二鉄アンモニウム塩類及び第二鉄アンモニウムミョウバンが挙げられる。2つ以上のこうした化合物の混合物も使用できる。
【0008】
溶解された場合、第二鉄アンモニウム化合物は正及び負のイオンへと実質的に解離される。多くの場合、それらは完全に解離される。
本発明の酸素捕捉組成物は、組成物の酸素捕捉能を実質的には妨害しない添加剤を更に含んでもよい。例えば、ポリマー形成に使用される幾つかの一般的な添加剤には、充填剤、例えば珪藻土、カオリン又はモンモリロナイト粘土、雲母フレーク、ゼオライト、モレキュラーシーブ等が挙げられる。ポリマーの弾性率又はその靭性を変更するために可塑剤を使用してもよい。組成物を着色するために、顔料、例えば二酸化チタン又はカーボンブラックを添加してもよい。市販のポリマー中に存在することのある酸化防止剤は、それらが組成物の酸素捕捉特性を実質的に損わないような十分低い濃度で、例えば1,000ppm未満の濃度で存在するのが好ましい。
本発明の組成物の酸素捕捉能は、ガス状の酸素と酸化性金属との間の正味の反応に起因する。この種の反応は本質的に電気化学的であり、反応種間(すなわち酸素と酸化性金属)での電子の移動を伴う。
例えば、鉄が酸化性金属である場合、全体の捕捉効果を引き起こす2つの半電池電気化学反応は以下であると考えられる。
アノード半電池:Fe→2電子+Fe++
カソード半電池:Fe+++3/4O2+1/2H2O+2電子→FeOOH
酸性度及び酸素の利用可能度に応じて起こり得る更なるカソード半電池反応が、M.ストラットマン(Stratman)、鉄の大気中腐食(The Atmospheric Corrosion of Iron)−この遍在する腐食プロセスの物理化学的原理に関する議論(A Discussion of the Physico-Chemical Fundamentals of this Omnipresent Corrosion Process)、物理化学(Phys. Chem.)、第94巻、6号、626〜619頁、1990年において特定され議論されている。
【0009】
鉄の場合は、この電気化学反応、したがって酸素捕捉反応は、アノード反応において形成されると考えられるFe++イオンが、アノード半電池反応が起こる場所から反応媒体を介してカソード半電池反応が起こる場所へと容易に移動する場合に、急速に進行することになる。包装用途に使用される酸素捕捉組成物中に最も存在しやすい媒体は、液体の水である。その存在は、製造若しくは加工条件、又は包装材料自体の水分透過性によりもたらされる。本発明の酸化性組成物中に存在する特定の電解質又は電解質の混合物は、存在する水分を利用することによって酸化性金属成分の酸素捕捉能を高めることができる。酸化性金属と接触している液体の水の層は、アノード反応において形成されたイオンの伝導経路を提供する。電解質は、錯化又はキレート化によってこのようなイオンを可溶化することのできる化合物の群から選択される。
本発明の酸化性組成物はまた、第二鉄アンモニウム塩ではない別の電解質を更に含んでもよい。選択される特定の第二鉄アンモニウム塩によっては、第2の電解質の使用を通して、酸素吸収が高められ得る。好適な追加の電解質成分の幾つかの例は、有機酸の塩類及び無機酸の塩類から成る群から選択される化合物である。好適な塩類は室温で固体であり、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオン、四級アンモニウムカチオン、及び第四級ホスホニウムカチオンから成る群から選択されるカチオンを有する。これらの種類の混合カチオンを有する塩類もまた、第1の電解質成分として使用するのに好適である。これらの塩類は25℃で水中に少なくとも1g/100g水、好ましくは少なくとも10g/100g水の溶解度を有する。このような塩類の例としては、アルカリ金属、アルカリ土類及び遷移金属ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、重炭酸塩、ヨウ化物、ヨウ素酸塩、亜硫酸塩、並びにリン酸塩のような無機酸の塩類が挙げられる。使用してよい有機酸の塩類としては、アルカリ金属、アルカリ土類及び遷移金属酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、酢酸塩、及びアルギン酸塩が挙げられる。追加の電解質成分として有用な具体的な種としては、酒石酸カリウム(potassium acid tartrate)、アルギン酸カリウム、重炭酸カリウム、臭化カリウム、炭酸カリウム、塩化カリウム、クエン酸カリウム、水酸化カリウム、ヨウ素酸カリウム、ヨウ化カリウム、乳酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、二酢酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、次亜リン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウムカリウム、酒石酸ナトリウムカリウム、プロピオン酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酢酸カルシウム、アルギン酸カルシウム、塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、グルコン酸銅、硫酸銅、硝酸第二銅、塩化第二鉄、硫酸第二鉄、塩化マンガン、グルコン酸マンガン、硫酸マンガン、アルギン酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、塩化アンモニウム、第二クエン酸アンモニウム、水酸化アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸アンモニウム、及び硫酸アンモニウムが挙げられる。こうした化合物の組み合わせ、例えば塩化ナトリウムと塩化カルシウムとの組み合わせもまた使用してよい。塩化ナトリウムは、容易に入手可能であり、一般に食品接触用途において安全であると認識されていることから、好ましい電解質である。
【0010】
第2の電解質として使用してよい電解質の別の部類は、飽和脂肪族及び芳香族酸を含む特定の有機酸、特に20個よりも少ない炭素原子を有するものである。本発明に有用な具体的な有機酸としては、酢酸、アコニット酸、アジピン酸、アルギン酸、安息香酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、ベヘン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの中でも、エチレンジアミン四酢酸が好ましい。好ましい酸は飽和種である。不飽和酸は、組成物中の臭気物質の生成を引き起こし得る。
また、これらの有機酸の塩類を使用してもよい。ナトリウム及びカリウム塩が好ましい。
いずれの場合にも、酸素捕捉組成物中に存在する構成成分は、水中に溶解した場合に高度にアルカリ性の水溶液が形成されるべきではない。高度にアルカリ性の水溶液とは、9を超えるpHを有するものを意味する。好ましくは、本発明の組成物の構成成分の水溶液のpHは、その構成成分の水溶液に関して8以下、より好ましくは7以下となる。酸化性金属成分と関連するいずれかの水の層中に存在する場合のある高濃度の水酸化物イオンは、電解質イオンの錯化能又はキレート化能と競合しそれを妨害する。酸化性金属として鉄が使用される場合には、第一鉄イオン錯体又はキレートの形成を促進する能力は、電気化学的な酸化反応を促進すると考えられる。特定の電解質の組み合わせは、この点で特に有効であり、これらには塩化ナトリウムとクエン酸第二鉄アンモニウムが挙げられ、またエチレンジアミン四酢酸とクエン酸第二鉄アンモニウムも挙げられる。
水を誘引する電解質は、酸素捕捉組成物に使用するのに好ましい。水分を提供する構成成分は、電気化学反応を促進する。水分を誘引する能力は、化合物の飽和溶液とその上の空隙との間の平衡状態における相対湿度である物質の平衡湿分含量を測定することによって定量化される。潮解性化合物である臭化リチウムの平衡湿分含量は、相対湿度7%である。したがって、相対湿度7%でその表面上に水が生じる。幾つかの好ましい電解質としては、塩化ナトリウム、酢酸カリウム、塩化亜鉛アンモニウム、臭化ナトリウム、硫酸アンモニウム、及びクエン酸が挙げられる。
【0011】
本発明の酸素捕捉組成物中に存在する高分子成分の量は、組成物の比較的小さな割合、例えば1重量%未満であってよい。しかし、多くの有用な組成物、特に蓋、キャップ、及び容器に形成するために設計された組成物は、はるかに高い濃度のポリマーを組み込む。このような場合、ポリマーの量は、酸素捕捉組成物の総重量に基づいて、一般に20〜99重量%の範囲となる。好ましくは、ポリマーの量は、組成物の総重量に基づいて、30〜70重量%となる。
酸素捕捉組成物は濃縮物の形態であってもよい。濃縮物は、フィルム及び容器のような包装材料を製造するのに一般的に使用される熱可塑性樹脂の押出成形を伴う処理のような、溶融処理において有用である。濃縮物は好ましくは、ポリマー100重量部当たり少なくとも80重量部の、酸化性金属と鉄塩との組み合わせを含有する。一般には、濃縮物は、ポリマー100重量部当たり少なくとも50重量部の、酸化性金属と鉄塩との組み合わせを含有する。
本発明の酸素捕捉組成物は、多層シート、フィルム、又は他の構造体に使用するための積層、蓋、キャップ、ラベル、パッド、容器、及び他の包装材料のような加工物品を製造するために、追加のポリマーなどの更なる構成成分を添加して又は添加せずに使用されてよい。酸素捕捉組成物を組み込んだ熱硬化性ポリマーは、管などの一般的なゴム用途において、又は他の基材上のコーティングとして、使用することができる。
酸素をパッケージから急速に除去することが所望される場合、高い酸素透過性を有するポリマーが好ましい。特定の用途では、例えばポリマー及び酸素捕捉組成物を含む組成物が包装物品においてキャップライナーとして使用される場合、酸素が容器、例えばボトルの内部から急速に移動して酸素捕捉組成物と接触することが望ましい。酸素は製造プロセスの結果としてパッケージ中に存在することがあり、又は場合によっては保管中にパッケージ内に拡散する場合もある。酸素透過性はOPV(酸素透過値(Oxygen Permeability Value))として表される。比較的透過性のポリマーである低密度ポリエチレンは、周囲温度及び相対湿度50%でのOPV値が約0.69ccO2mil/cm2・day・atm(450ccO2mil/100in2・day・atm)である。エチレン酢酸ビニル樹脂、例えばイー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E. I. du Pont de Nemours and Company)から入手可能なエルバックス(Elvax)(登録商標)EVA樹脂は、最も高い酢酸ビニルレベルを有する等級で、1.55ccO2mil/cm2・day・atm(1000ccO2mil/100in2・day・atm)までの範囲のOPV値を有する。エルバックス(Elvax)(登録商標)EVA担体樹脂はこのように、酸素捕捉に関してポリエチレンを凌ぐ優れた値を有する。特定の容器の用途では、周囲温度及び相対湿度50%において0.69ccO2mil/cm2・day・atm(450ccO2mil/100in2・day・atm)のOPVを有する樹脂が特に有用である。低い平衡湿分含量を有するか又は捕捉組成物自体の内部に水の供給源を有さない組成物については、急速な酸素の取り込みを促進するために樹脂の水透過性が重要である。水の透過は水蒸気透湿度(Water Vapor Transmission rate)(WVTR)として測定され報告される。低密度ポリエチレンのWVTRは、およそ0.002g水/cm2・day(1.5g水/100in2・day)であり、水蒸気に対してほんのわずかに透過性であるとみなされる。特定の等級のエルバックス(Elvax)(登録商標)樹脂は0.006g水/cm2・day(4g水/100in2・day)のWVTR値を有し、したがって低密度ポリエチレンよりも速い水の透過を示す。このエルバックス(Elvax)(登録商標)樹脂、及び0.006g水/cm2・day(4g水/100in2・day)以上のWVTR値を有する他のものは、そのために、低い平衡湿分含量を有する本発明の酸素捕捉組成物に好ましい担体樹脂である。
【0012】
他の用途では、酸素捕捉組成物中に存在するポリマーは、包装材料の外部から包装材料の内部への酸素の透過に対するバリアとして機能する。このような用途では、低い酸素透過性を有するが高い水透過性を有するポリマーを使用するのが望ましい。このようなポリマーの例は、クラレ社(Kuraray Company Ltd.)から入手可能な、エチレンとビニルアルコールとのコポリマーである。32重量%のエチレン共重合コモノマー単位を有するエチレンビニルアルコールコポリマーは、相対湿度90%で、約4.7E−4ccO2mil/cm2・day・atm(0.3ccO2mil/100in2・day・atm)の低いOPV値、及び約0.006g水mil/cm2・day(3.8g水mil/100in2・day)のWVTRを有する。
本発明の酸素捕捉組成物がポリマーフィルムへと製造される場合、単層又は多層のいずれの場合にも、そのポリマーフィルムを配向又は延伸させて多孔質の構造体を生成することにより酸素捕捉特性を高めることができる。
本発明の酸素捕捉組成物の活性の基礎を形成する化学反応は、成分の消費を伴うと考えられる。例えば、一例として鉄金属を用いると、鉄は酸化反応において消費される。鉄の環境に応じて、その酸素を消費する能力は、鉄金属1g当たり100ccの酸素〜300ccの酸素である。酸素捕捉組成物を含有する高分子物品の設計及びポリマー中の鉄の濃度の選択は、酸素から保護されている包装された物質に関する設計要件によって決まる。例えば、ポリマー中の酸化性金属の割合がより高いと、酸素のより速い減少速度のために、及び/又はパッケージ中の酸素の濃度を非常に低い濃度まで減少させるのに有用である。ポリマー成分100重量部当たり1重量%の、組成物中の酸化性金属と鉄塩との組み合わされた濃度は、酸素捕捉効果を生ずるために十分であり得る。しかし、好ましくは、ポリマー100重量部当たり少なくとも10重量%が使用される。具体的な濃度は、特定の最終用途及び酸素捕捉組成物が組み込まれるべきポリマーによって決まる。より高い濃度の使用は、望ましくないほど高い融解粘度、高い密度、及び脆化の増大といった影響をもたらす可能性がある。しかし、場合によっては、組み合わされた酸化性金属成分と鉄塩との濃度は、90重量%までの高いものであってよい。
【0013】
本発明の組成物は、一般的な混合技術によって容易に調製され得る。例えば、構成成分は押出成形機内で共に混合されてよい。酸化性金属と第二鉄アンモニウム塩との良好に分散された混合物を含有するポリマーの連続生産のためには、ワーナー・アンド・フライダー二軸押出成形機(Werner & Pfleiderer twin-screw extruder)のような二軸押出成形機を使用することができる。構成成分は、別個のポートから、又はドライブレンドとして1つの供給ポートから供給されることができる。供給ポートを窒素パージすることにより、鉄と酸素とのわずかな前反応を最小限に抑える。構成成分は、押出成形機内でポリマーの融点よりも高い温度に加熱され、冷却及びその後のペレット化のために乾燥した移動ベルト上にストランドとして押し出されることができる。次にそのペレットを、好ましくは酸素及び水への暴露を最小限に抑えるためにホイルで裏打ちしたバッグ内に、又は水から保護するための高密度ポリエチレンバッグ内に袋詰めすることができる。
本発明の他の実施形態は積層体であり、これは多層構造体を意味し、単層フィルムも含まれ得る。本発明の積層体は、2以上の層を含んでもよい。本発明の酸素捕捉組成物は第1の層を構成する。このような組成物は、この第1の層を構成する材料を形成するために追加のポリマーを含んでもよい。上述したように、酸素捕捉組成物は、酸素捕捉反応を実質的に妨害しない追加の構成成分を更に含んでもよい。追加の層は、第1の層と同じ組成物を含む、いかなる材料から形成されてもよい。第2の層はまた、別の高分子層、金属層又は金属箔層、セラミック又はガラス層、共押出可能な接着剤層、ホットメルト接着剤層、溶媒系接着剤層、布地又は他の多孔質層、例えばタイベック(Tyvek)(登録商標)工業用包装から成ってもよい。これらの種類の有用な積層体の例としては、以下の構造の可撓性フィルム層が挙げられる:ポリプロピレン/接着剤結合層/本発明の酸素捕捉組成物/接着剤結合層/アイオノマーポリマー、ポリエチレン/接着剤結合層/エチレンビニルアルコール/接着剤結合層/本発明の酸素捕捉組成物/接着剤結合層/ポリプロピレン、金属化マイラー(Mylar)(登録商標)ポリエステルフィルム/接着剤結合層/本発明の酸素捕捉組成物/接着剤結合層/封止剤層。これらの構造の最初のものは、外側層としてポリプロピレンを有する蓋材として有用であり得る。2番目のものは、フィルムラップに好適であり得る。3番目のものは、外側層として金属化マイラー(Mylar)(登録商標)ポリエステルフィルムを有する蓋材として好適であり得る。ボトルキャップに有用であろう積層構造体は、ポリプロピレンの外側層、及びポリマーがエチレン酢酸ビニルである本発明の酸素捕捉組成物の第2の層を有するものである。ボトルキャップに有用な別の積層構造体は、外側層としてアルミニウム、第2の層としてポリマーがエチレン酢酸ビニルである本発明の酸素捕捉組成物、及び内側層としてエチレン酢酸ビニルを有するものである。カップ又はトレイ材料として有用な積層体は、ポリプロピレンの外側層、接着剤結合層である第2の層、エチレンビニルアルコールコポリマーである第3の層、接着剤層である第4の層、ポリマーがポリエチレンである本発明の酸素捕捉組成物である第5の層、及びポリエチレンである内側層から形成されるものである。トレイ材料として有用な別の積層体は、高密度ポリエチレンの外側層、共押出可能な接着剤である第2の層、ポリマーがポリエチレンである本発明の酸素捕捉組成物である第3の層、及びポリエチレンである内側層から形成されるものである。
【0014】
包装用のフィルム層に使用される典型的なポリマーとしては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート、及び高密度ポリエチレンが挙げられる。このような構造には、共押出可能な接着剤で形成された結合層が一般的に使用される。
本発明の酸素捕捉組成物及び本発明の積層体は、例えば溶融処理によって、包装用途に使用される成形物品又はフィルムに製造されることができる。
特定の実施形態では、組成物は、包装された物質から酸素を取り除く形で酸素を捕捉する。長期間の酸素捕捉活性を提供するために、捕捉組成物は酸素の透過に抵抗するバリアによってパッケージの外側の空気から分離されるべきである。1つの方法は、厚い容器の壁層、例えば0.25mm(10mil)厚のポリプロピレン層を提供することである。あるいは、酸素に対して低い透過性を有するポリマーの薄い層が、捕捉組成物により長期の寿命をもたらすことができる。例えば、0.005mm(0.2mil)厚のエチレンビニルアルコールコポリマー(EVOH)は、透過性のより高いポリプロピレンの0.51mm(20mil)の層と同じ保護を提供するであろう。外部の酸素から保護されたなら、パッケージ内での酸素捕捉層の位置は様々であることができる。例えば、酸素捕捉組成物を含む積層は、パッケージの内壁に付着された別個のラベル、カップの蓋若しくはトレイの中の層、ボトルキャップライナー、又は積層化された容器壁の層であってもよい。後者の例は、ポリプロピレン、バイネル(Bynel)(登録商標)共押出可能接着剤樹脂、EVOH、酸素捕捉組成物を含む層、バイネル(登録商標)接着剤樹脂、ポリプロピレンの積層体であり、最初に挙げたポリプロピレン層を外側層として有する。
本発明の酸素捕捉組成物はまた、ヘッドスペース酸素を吸収するために、包装物品内の別個の封入物として小袋又は包みにおいて使用されてもよい。組成物は、この目的で使用される場合には、層のような包み材の一部であってもよく、又はそれらは包み内で粉末の形態であってもよい。組成物は、高分子樹脂のような追加の成分を更に含み、そして包み内に収容されるペレットへと形成されてもよい。
【0015】
本発明の組成物を用いて保護されてよい、包装される酸素感受性物質としては、牛乳、ヨーグルト、チーズ、スープ、飲料、例えばワイン、ビール、及び果汁、予め調理された食料、医薬品、並びに小麦粉又は麺のような窒素パージによって処理するのが困難である粉末又は物質が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、本発明の酸素捕捉組成物及び本発明の積層体は、包装された物品を、虫害、カビの生育、白カビ及び細菌の生育などの酸素の2次的な影響から保護する。
以下の特定の実施形態の実施例によって、本発明を説明する。
【実施例】
【0016】
(実施例1)
18重量%の酢酸ビニル含量及び90℃の融点を有する50重量%のエチレン酢酸ビニル樹脂、44重量%の金属鉄(ARSテクノロジーズ社(ARS Technologies Inc.)から入手可能なH200鉄)、4重量%のクエン酸第二鉄アンモニウム(16.5〜18.5重量%鉄、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.))、並びに2重量%の塩化ナトリウム(200メッシュ、モルトン・ソルト社(Morton Salt Co.))を含有するブレンドの試料94gを、ハーケ・レオコード9000プラストグラフミキサー(Haake Rheocord 9000 plastograph mixer)に導入した。鉄、塩化ナトリウム、及びクエン酸第二鉄アンモニウムをワーリング工業用高速ブレンダー(Waring commercial high-speed blender)内で窒素下にて30秒間予混合し、その後エチレン酢酸ビニル樹脂と組み合わせた。この物質をハーケミキサー(Haake mixer)内で160℃、100rpmにて7分間溶融混合し、その後窒素下でステンレス鋼のトレイに空け、窒素下で15分間放冷した。冷却された試料を窒素下で保存した。試料の一部を140℃で圧縮成形し、加圧下で周囲温度まで急速に冷却した。得られた厚さ0.38mm(15mil)〜0.51mm(20mil)、直径12.7cm(5インチ)のディスクを、窒素下で保存した。重量およそ1gのディスクの試料を、その酸素捕捉特性を測定するために試験した。10層の6.5cm2(1インチ四方)の湿らせたペーパータオルを50mLケルダール反応フラスコの底部に置いて、相対湿度100%の雰囲気を作った。試験試料をその湿ったタオルの上に置いた。フラスコを大気に開放した状態でケルダールフラスコの50mLの目盛管を水の入ったフラスコに沈め、次にケルダールフラスコにガラス栓で栓をした。酸素が消費されるにつれ、目盛管中を水が上昇した。水の高さの変化を、湿ったペーパータオルと、他の成分を含有しないエチレン酢酸ビニル樹脂のおよそ1gの試料とが入ったケルダールフラスコの変化と比較することにより、気圧及び温度に関する補正を行った。24時間後、目盛管の水の高さは、フラスコ−目盛管装置内のおよそ125mLの空気から4ccの酸素が除去されたことを示す高さまで上昇した。
【0017】
(実施例2)
実施例1で記載したのと同じ装置、物質、及び手順を用いて、50重量%のエチレン酢酸ビニル樹脂、45重量%の金属鉄、及び5重量%のクエン酸第二鉄アンモニウムから構成されるブレンドを調製した。金属鉄及びクエン酸第二鉄アンモニウムは窒素下にて30秒間予混合した。ポリマー及び予混合された物質を溶融混合し、単離し、保存し、実施例1と実質的に同じ量の湿ったペーパータオルが入った同じケルダールフラスコに導入した。24時間後、酸素の取り込みは0.3ccであった。
(実施例3)
実施例1で記載したのと同じ装置、物質、及び手順を用いて、50重量%のエチレン酢酸ビニル樹脂、31重量%の金属鉄、16重量%の塩化ナトリウム、及び3重量%のクエン酸第二鉄アンモニウムから構成されるブレンド88gを調製した。ポリマー及び予混合された物質を溶融混合し、単離し、保存し、実質的に同じ量の湿ったペーパータオルが入った実施例1で記載したのと同じケルダールフラスコに導入した。24時間後、酸素の取り込みは5ccであった。
(実施例4)
ワーリングブレンド工程を除外する以外は実施例1で記載したのと同じ装置、物質、及び手順を用いて、本発明のポリマーブレンド75gを調製した。実施例1で使用した物質に加えて、このブレンドには三塩基性クエン酸ナトリウムを更に含有させた。このブレンドは、65重量%のエチレン酢酸ビニル樹脂、25重量%の金属鉄、5重量%のクエン酸第二鉄アンモニウム、及び5重量%の三塩基性クエン酸ナトリウム(アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.))から構成された。ポリマー及び他の物質を溶融混合し、単離し、保存し、実質的に同じ量の湿ったペーパータオルが入った実施例1で記載したのと同じケルダールフラスコに導入した。24時間後、酸素の取り込みは2ccであった。
【0018】
(実施例5)
ワーリングブレンド工程を除外する以外は実施例1で記載したのと同じ装置、物質、及び手順を用いて、本発明のポリマーブレンド75gを調製した。実施例1に使用した物質に加えて、このブレンドにはエチレンジアミン四酢酸(「EDTA」)を更に含有させた。このブレンドは50重量%のエチレン酢酸ビニル樹脂、24重量%の金属鉄、5重量%のクエン酸第二鉄アンモニウム、及び21重量%のEDTA(アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.))から構成された。ポリマー及び予混合された物質を溶融混合し、単離し、保存し、実質的に同じ量の湿ったペーパータオルが入った実施例1で記載したのと同じケルダールフラスコに導入した。24時間後、酸素の取り込みは4ccであった。
(実施例6)
ワーリングブレンド工程を除外する以外は実施例1で記載したのと同じ装置、物質、及び手順を用いて、本発明のポリマーブレンド75gを調製した。このブレンドは、67.5重量%のエチレン酢酸ビニル樹脂、27重量%の金属鉄、及び5.5重量%の塩化ナトリウムから構成された。ポリマー及び他の物質を溶融混合し、単離し、保存し、実質的に同じ量の湿ったペーパータオルが入った実施例1で記載したのと同じケルダールフラスコに導入した。24時間後、酸素の取り込みは0.2ccであった。
【0019】
(実施例7)
18重量%の酢酸ビニル含量及び90℃の融点を有する67.5重量%のエチレン酢酸ビニル樹脂、27重量%の金属鉄(ARSテクノロジーズ社(ARS Technologies Inc.)から入手可能なH200鉄)、並びに5.5重量%のクエン酸第二鉄アンモニウム(16.5〜18.5重量%鉄、アルドリッチ・ケミカル社(Aldrich Chemical Co.))を含有するブレンドを、ハーケ9000型プラストグラフミキサー(Haake Model 9000 plastograph mixer)に導入した。この物質をハーケミキサー(Haake mixer)内で160℃、100rpmにて7分間溶融混合し、その後窒素下でステンレス鋼のトレイ中に空け、窒素下で15分間放冷した。冷却された試料を窒素下で保存した。試料の一部を140℃で圧縮成形し、加圧下で周囲温度まで急速に冷却した。得られた厚さ0.38mm(15mil)〜0.51mm(20mil)、直径12.7cm(5インチ)のディスクを、窒素下で保存した。重量およそ1gのディスクの試料を、その酸素捕捉特性を測定するために試験した。10層の6.5cm2(1インチ四方)の湿らせたペーパータオルを50mLケルダール反応フラスコの底部に置いて、相対湿度100%の雰囲気を作った。試験試料をその湿ったタオルの上に置いた。フラスコを大気に開放した状態でケルダールフラスコの50mLの目盛管を水の入ったフラスコに沈め、次にケルダールフラスコにガラス栓で栓をした。酸素が消費されるにつれ、目盛管中を水が上昇した。水の高さの変化を、湿ったペーパータオルと、他の成分を含有しないエチレン酢酸ビニル樹脂のおよそ1gの試料とが入ったケルダールフラスコの変化と比較することにより、気圧及び温度に関する補正を行った。1、3、21、93、及び168時間後に、それぞれ0.0、0.0、0.0、及び0.8ccの酸素がフラスコ−目盛管装置内のおよそ125mLの空気から除去されたことを示す高さまで、目盛管の水の高さが上昇した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A.共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリマーと、
B.酸化性金属と、
C.第二鉄アンモニウムカチオンを有する鉄塩類及びそれらの混合物から成る群から選択される化合物とを含む、酸素捕捉組成物であって、前記鉄塩類が25℃で水中に少なくとも1g/100g水の溶解度を有する、酸素捕捉組成物。
【請求項2】
前記酸化性金属が、鉄、銅、マンガン、及びコバルトから成る群から選択される、請求項1に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項3】
前記酸化性金属が鉄である、請求項に記載2の酸素捕捉組成物。
【請求項4】
前記ポリマーが、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィンホモポリマー及びコポリマー、エチレンと極性コモノマーとのコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマーのアイオノマー、エチレンメタクリル酸コポリマーのアイオノマー、並びにエチレンマレイン酸コポリマーのアイオノマーから成る群から選択される、請求項1に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項5】
前記ポリマーが熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項6】
有機酸の塩類及び無機酸の塩類から成る群から選択される、第二鉄アンモニウム塩ではない電解質を更に含み、前記塩類のカチオンが、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、遷移金属カチオン、四級アンモニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン、並びにこれらの混合物から成る群から選択され、前記電解質は25℃で水中に少なくとも1g/100g水の溶解度を有する、請求項1に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項7】
成分Aのポリマーとは異なる追加のポリマーを更に含み、前記追加のポリマーが、共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリマーから成る群から選択される、請求項1に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項8】
金属酸化物を更に含む、請求項1に記載の酸素捕捉組成物。
【請求項9】
A.
1.共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリマーと、
2.酸化性金属と、
3.第二鉄アンモニウムカチオンを有する鉄塩類及びこれらの混合物から成る群から選択される化合物とを含む第1の層であって、前記鉄塩類が25℃で水中に少なくとも1g/100g水の溶解度を有する第1の層、並びに
B.少なくとも1つの追加の層を含む、積層体。
【請求項10】
少なくとも1つの追加の層が熱可塑性ポリマーを含む、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
前記熱可塑性ポリマーが、ポリプロピレン、ポリエチレン、及びエチレンビニルアルコールから成る群から選択される、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つのポリマーと、酸化性金属と、第二鉄アンモニウムカチオンを有する鉄塩類及びこれらの混合物から成る群から選択される化合物とを含む単層フィルムであって、前記鉄塩類が25℃で水中に少なくとも1g/100g水の溶解度を有する、単層フィルム。
【請求項13】
共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有する少なくとも1つのポリマーと、酸化性金属と、第二鉄アンモニウムカチオンを有する鉄塩類及びこれらの混合物から成る群から選択される化合物とを含む物品であって、前記鉄塩類が25℃で水中に少なくとも1g/100g水の溶解度を有する、物品。
【請求項14】
酸素透過性物質から形成される包みであって、前記包み内に酸素捕捉組成物が存在し、前記組成物は、
A.共重合モノマー単位100当たり5未満の脂肪族炭素−炭素二重結合を有するポリマーと、
B.酸化性金属と、
C.第二鉄アンモニウムカチオンを有する鉄塩類及びこれらの混合物から成る群から選択される化合物とを含み、前記鉄塩類が25℃で水中に少なくとも1g/100g水の溶解度を有する、包み。
【請求項15】
前記鉄塩がクエン酸第二鉄アンモニウムである、請求項1に記載の組成物。

【公表番号】特表2009−536973(P2009−536973A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505507(P2009−505507)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【国際出願番号】PCT/US2007/009179
【国際公開番号】WO2007/120852
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】