説明

重付加物による被覆を有する顔料、その製造方法、及びその使用方法

【課題】凝集傾向を有さずに安定な分散液を簡単に製造する方法を提供する。
【解決手段】(a)少なくとも1種類の多価イソシアネートと、(b)ポリエーテロール、ポリエステロール、炭素原子数8以下の多価アルコール、ポリカルボネートジオール、ポリヒドロキシオレフィン、ポリヒドロキシウレタン、ポリイソブテンジオール、一分子あたり平均2個以上のヒドロキシル基を有するポリシロキサン、及びラクトン系ポリエステルジオールからなる群から選択されるイソシアネート反応性基を有する少なくとも1種類の化合物を、顔料、水、及び必要に応じて1種類以上の界面活性剤と混合し、相互に反応させることを特徴とするポリマー被覆を有する水性一次分散液を製造する方法が得られた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー被覆を有する水性一次分散液を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料の水性分散液は、例えば、繊維及び皮革を着色するために広く使用されている。具体例としては、インクジェット法におけるインクとしての使用、同インクを製造するための使用、繊維印刷法における印刷ペーストとしての使用、同ペーストを製造するための使用、及び皮革の仕上げにおける使用が挙げられる。先端技術における顔料分散液の応用においては、分散液自体の安定性等について、及び後の使用計画に関する要求を満たさなければならない。例えば、水性分散液は非常に安定である必要があり、凝集傾向を有してはならない。更に、顔料分散液は適用が簡単でなければならない。また、顔料の応用にあっては、非常に優れた堅牢性を有する必要がある。最後に、当該分散液は製造も簡単であることが要求される。
【0003】
顔料そのものは一般に、高度な要求に合致した安定な水分散液を形成しない。このため、かつては分散剤の使用、分散が試みられた。
【0004】
M. Antoniettiは、2003年4月3〜4日にパリで開催されたIn-Cosmetics event、及び2003年6月12日に開催された会議「Nanotechnologie fuer Beschichtungen」(被覆ナノテクノロジー)にて、ミニエマルジョンにおけるイソホロンジイソシアネートと、1,12−ドデカンジオールとの重付加により製造されたポリウレタンによりカーボンブラックに被覆を設けることを提案した。しかしながら、開示された被覆を有するカーボンブラックはインクジェット法には適さず、印刷後の繊維の摩擦堅牢性は従来と代わらない程度のものに過ぎなかった。そして、得られるポリウレタンは一般に非常に脆いものである。
【0005】
F. Tiarks等による文献、Macromol. Chem. Phys. 2001, 202, 51ページ以降には、2−ブタノン中でポリエステロールとイソホロンジイソシアネートからポリウレタンを重合することにより得られたポリマーでカーボンブラックに被覆を設け、ケトンを蒸発させることにより単離を行い、シクロヘキサン中に採取し、乾燥し、シクロヘキサンを蒸発させることにより単離する製造方法が開示されている。このように得られたポリウレタンは、界面活性剤を用い、超音波処理することによりカーボンブラックが分散可能なミニエマルジョンとすることができる。しかしながら、ここで開示された方法は非常に複雑である。
【0006】
Bechthold等は、Macromol. Chem. Phys. 2000, 155, 549頁以降において、CaCO3とカーボンブラックをミニエマルジョン重合により得られたポリスチレンで被覆することを提案した。しかしながら、これにより得られた被覆を有するカーボンブラックの械的特性は実際上の使用には不十分なものである。すなわち、耐性のある被覆は得られない。
【0007】
【非特許文献1】Macromol. Chem. Phys. 2000
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の従来技術の不都合を有さない分散顔料を製造する方法を提供することをその目的とする。
【0009】
更に、本願発明は分散顔料を提供すること目的とする。
【0010】
また、本発明は分散顔料の使用法を提供することを更なる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、本発明の目的が、
(a)少なくとも1種類の多価イソシアネートと、
(b)ポリエーテロール、ポリエステロール、炭素原子数8以下の多価アルコール、ポリカルボネートジオール、ポリヒドロキシオレフィン、ポリヒドロキシウレタン、ポリイソブテンジオール、一分子あたり平均2個以上のヒドロキシル基を有するポリシロキサン、及びラクトン系ポリエステルジオールからなる群から選択されるイソシアネート反応性基を有する、少なくとも1種類の化合物とを、顔料、水、及び必要に応じて1種類以上の界面活性剤と混合し、相互に反応させることを特徴とするポリマー被覆を有する水性一次分散液を製造する方法により達成されることを見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明で使用される多価イソシアネート(a)の例は、各種の主なジイソシアネート、及び3個又は4個のイソシアネート基を有する化合物である。適当なジイソシアネートには、例えば芳香族及び脂肪族ジイソシアネートがある。芳香族ジイソシアネート、及びトリイソシアネートの例として、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、p−キシレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)及びトリイソシアナトトルエン、及び脂肪族ジイソシアネートの例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、2−ブチル−2−エチルペンタメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、2,4,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及び上記各トリメチルヘキサンジイソシアネートの混合物、2−イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート、2,4,4−及び2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4’−メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート、シス−シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、トランス−シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート及び4−メチルシクロヘキサン1,3−ジイソシアネート(H−TDI)が挙げられる。
【0013】
上記多価イソシアネートの混合物の混合物を用いてもよい。上記多価イソシアネートの混合物としては、2,4−トリレンジイソシアネート及びトリイソシアナトトルエンの構造異性体の混合物、例えば80モル%の2,4−トリレンジイソシアネート及び20モル%の2,6−トリレンジイソシアネートの混合物、またはcis−及びtrans−シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、及び2,4−トリレンジイソシアネート又は2,6−トリレンジイソシアネートと、脂肪族ジイソシアネート、例えばヘキサメチレンジイソシアネー及びイソホロンジイソシアネート等との混合物が特に好ましい。多価イソシアネート(a)としては、更に、フリーイソシアネート基の他に、キャップを有するイソシアネート基、例えばイソシアヌレート、ビウレット、尿素、アロファネート、ウレトジオン又はカルボジイミド基を有する多価イソシアネート基を用いることも可能である。
【0014】
イソシアネート反応性基(b)を構成する少なくとも1種類の化合物は、ポリエーテロール、ポリエステロール、炭素原子数8以下の多価アルコール、ポリカルボネートジオール、ポリヒドロキシオレフィン、ヒドロキシウレタン、ポリイソブテンジオール、一分子中に平均2個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサン、及びラクトン系(ラクトンを原料とする)ポリエステルジオールから選択する。
【0015】
イソシアネート反応性基を有する化合物は、一分子中にイソシアネートに対して反応性の基を平均2個以上含む化合物であると好ましい。しかしながら、化合物(b)は一分子中に2個を超過するイソシアネート反応性基を含んでいてもよい。
【0016】
ポリエーテロールは、例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシド又はエピクロロヒドリンの、BF3等適当な触媒の存在下での付加反応により得られる。同様に、上記1種類以上の化合物の共重合によって得られるポリエーテロールも適している。更に、上記化合物の1種類以上を、2個以上の酸性水素原子を有する化合物、例えば水、エチレングリコール、チオグリコール、メルカプトエタノール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオール、エチレンジアミン、アニリン又は1,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの存在下に付加重合させて得られたポリエーテルオールが適している。
【0017】
好ましいポリエーテロールは、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ならびに例えばエチレンオキシドとプロピレンオキシドとを、BF3の存在下で反応させて得られる混合生成物から選択される。適するポリエーテロールの他の例には、C1−C4アルキレンオキサイド、特にエチレンオキサイドとの反応生成物が含まれる。好ましいポリエーテルオールの分子量Mnは250〜5000g/モル、更に好ましくは500〜2500g/モルである。
【0018】
好ましいポリエステロールについては、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, 第五版、第A21巻、228-230頁に、「Hydroxypolyester」のタイトルの論考が記載されている。ポリエステロール及びヒドロキシポリエステルという名称は以下に記載する意味を有する。二価アルコールと、二塩基性カルボン酸又は二塩基性カルボン酸の反応性誘導体、例えば二塩基性カルボン酸の無水物もしくはジメチルエステルとの反応により得られたポリエステロールを用いると好ましい。使用可能な二塩基性カルボン酸とその反応性誘導体は、芳香族又は脂肪族二塩基性カルボン酸から誘導することができ、1個以上の置換基を有していてもよい。適する二塩基性カルボン酸の例は、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、テラフタル酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、グルタル酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、アルキルコハク酸、例えばメチレンコハク酸(イタコン酸)である。極めて好ましい無水物の例は、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物である。特に好ましいジメチルエステルの例には、例えばジメチルテレフタレート及びジメチルイソフタレートがある。
【0019】
特に好ましい多塩基性脂肪族カルボン酸は、以下の一般式Iで示される。
【0020】
【化1】

【0021】
上記式中xは1〜20、好ましくは2〜10の整数である。
【0022】
ポリステロールの製造に用いられる有用な多価アルコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチレングリコール、cis−ブタ−2−エン−1,4−ジオール、トランス−ブタ−2−エン−1,4−ジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール、1,12−ドデカンジオール、ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、例えばcis−及びtrans−1,4−ジ(ヒドロキシメチル)シクロヘキサンがある。下記一般式のジオールが好ましく使用される。
【0023】
【化2】

【0024】
式中yは2〜8、好ましくは2〜4の整数である。
【0025】
特に有用なポリエステロールの分子量Mnは500g/モル〜5000g/モルである。
【0026】
化合物(b)は、炭素原子数8以下の多価アルコール、ポリカルボネートジオール、ポリヒドロキシオレフィン、ポリヒドロキシウレタン、ポリイソブテンジオール、一分子あたりに平均2個以上のヒドロキシル基を含むポリシロキサン、及びラクトン系ポリエステルジオールから選択される。
【0027】
炭素原子数8以下の多価アルコールのうち、特に有用なものの例は、炭素原子数8以下のジオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、cis−ブタ−2−エン−1,4−ジオール、trans−ブタ−2−エン−1,4−ジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、2−メチルプロパン−1,3−ジオール、1,8−オクタンジオール、ジ(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサン、例えばcis−及びtrans−1,4−ジ(ヒドロキシメチル)−シクロヘキサンである。
【0028】
下式のジオールが好ましく使用される。
【0029】
【化3】

【0030】
式中yは2〜8、好ましくは2〜4の整数を示す。この他、三価、四価、五価、及び八価までのアルコール、例えばグリセロール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロール−n−ブタン、及びソルビトールも好適に使用される。
【0031】
適するポリカルボネートジオールは、ホスゲンと、過剰量のジオール、好ましくは炭素原子数8以下のジオール、更に好ましくは下式
【0032】
【化4】

で表される(yは上記と同様の定義を有する)ジオールと、の反応により得られる。
【0033】
適するポリヒドロキシオレフィンの例は、α,ω−ジヒドロキシブタジエン、及びポリ(メタ)アクリレートと、ジオールとの反応生成物である。α,ω−ジヒドロキシブタジエンは特に好ましい。
【0034】
適するα,ω−ジヒドロキシブタジエンは、例えばヨーロッパ特許出願公開第0622378号公報に開示されており、類似構造を有するα,ω−ジヒドロキシアクリレートの製造も同様の方法で行われる。
【0035】
適するポリヒドロキシウレタンの例は、ハイパーブランチポリウレタンであり、例えばEP1026185A1号にヒドロキシ官能性デンドリマー又は高分岐ポリウレタンとして、EP1167413号に多価ポリイソシアネート付加生成物として記載されている。
【0036】
適するポリイソブテンジオールの例は、例えばKennedy等著、Carbocationic Macromolecular Engineering, Hauser Verlag出版、177頁に記載されている。
【0037】
更に、一分子中に平均2個以上のOH基を有するポリシロキサン、数平均珪素原子数が1〜100であり、かつC1−C12アルキル基又はフェニル基、好ましくはメチル基又はフェニル基で置換されている、適するポリシロキサンとして挙げることができる。
【0038】
適するラクトン系ポリエステルジオールの例には、例えば下式
【0039】
【化5】

の化合物の重縮合物がある。
【0040】
上記式中、zは1〜20、好ましくは2〜7の整数を示し、1個以上のOH2基がCH-C1−C4アルキル基によって置換されていてもよく、重合は、ジオール、例えばα,ω−C2−C12アルキレンジオール、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール又は1,12−ドデカンジオールにより開始される。
【0041】
本発明の具体的な一例として、イソシアネート反応性基を含む化合物として、イオン性又は非イオン性の(潜在的な)親水性基を有する1種類以上の追加化合物を用いることができる。
【0042】
(潜在的な)親水性基は、非イオン性親水性基であってもよいが、(潜在的な)イオン性親水性基を用いると好ましい。
【0043】
非イオン性親水性基を有する適当な化合物の例としては、分子あたり好ましくは5〜100、更に好ましくは10〜80エチレンオキシド繰り返し単位(質量平均)を有するポリエチレングリコールがある。ポリエチレンオキシドの使用量は、成分(a)+(b)の総量に対して0質量%〜10質量%、好ましくは0質量%〜6質量%である。
【0044】
非イオン性親水性基を有する他の好ましい追加化合物は、ポリエチレングリコールとポリイソシアネートとの反応により得られ、末端がエステル化されたポリエチレングリコール基を有する生成物である。このようなポリイソシアネート、及びその製造方法については米国特許第3,905,929号、及び米国特許第3,920,598号各明細書に記載されている。
【0045】
イオン性親水性基は、特にアニオン基、例えばスルホネート、カルボネート、及びホスホネート基であってアルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形態を有するもの、カチオン基、例えばアンモニウム基、特にプロトン化した第三級アミノ基及び四級アンモニウム基が好ましい。
【0046】
潜在的なイオン性親水性基は、中和、加水分解、四級化反応により、上記イオン性親水性基、例えばカルボン酸基又は三級アミノ基に変換可能な基であると好ましい。
【0047】
潜在的なイオン性基を有する適する追加な化合物としては、例えばUllmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 第四版、19巻、311−313頁、及び例えばドイツ特許出願公開第1495745号公報に詳細に記載された化合物が使用可能である。
【0048】
第三級アミノ基を有する好ましい化合物は、実際上、潜在的なカチオン性基を有する付加的な化合物として特に重要である。具体例は、トリス(ヒドロキシアルキル)アミン、N,N’−ビス(ヒドロキシアルキル)アルキルアミン、N−ヒドロキシアルキルジアルキルアミン、トリス(アミノアルキル)アミン、N,N’−ビス(アミノアルキル)アルキルアミン、N−アミノアルキルジアルキルアミンであって、これらの第三級アミンのアルキル基及びアルカンジイル単位は、それぞれ独立に1〜6個の炭素原子を有する。更に、第三級窒素原子を有するポリエーテル、好ましくは2個の末端ヒドロキシル基を有し、慣用の方法により得られるポリエーテル、例えばアミンの窒素に2個の水素原子が結合したアミン(例えばメチルアミン、アニリン又はN,N’−ジメチルヒドラジン)をアルコキシル化する方法により得られるポリエーテルが好ましい。このようなポリエーテルの分子量は、一般に500〜6000g/モルである。
【0049】
上記第三級アミンは、酸、好ましくは強鉱酸、例えばリン酸、硫酸、ハロゲン化水素酸、又は強有機酸を使用することにより、又は適する四級化剤、例えばC1−C6アルキルハロゲン化物又はジベンジルハロゲン化物、例えば臭化物又は塩化物を用いた反応によって、アンモニウム塩に転化される。
【0050】
潜在的にアニオン性の基を有する適する追加化合物は、通常、脂肪族、脂環式、アリール脂肪族、又は芳香族カルボン酸、スルホン酸であって、少なくとも1個のアルコール性ヒドロキシル基又は少なくとも1個の第一級又は第二級アミノ基を含む。更に、米国特許第3,412,054号明細書に記載されているように、特に3〜10個のジヒドロアルキルカルボン酸が好ましく使用される。特に、下式I
【0051】
【化6】

で表され、A1及びA2がそれぞれ同一又は異なるC1−C4 アルカンジイル単位であり、R1がC1−C4アルキル単位又は水素である化合物、特にジメチロールプロパン酸(DMPA)が好ましい。
【0052】
また、対応のジヒドロキシスルホン酸及びジヒドロキシホスホン酸、例えば2,3−ジヒドロキシプロパンホスホン酸が適している。
【0053】
更に、ドイツ特許出願公開第3911827号公報より公知の、分子量500〜10000g/モルであり、2個以上のカルボン酸基を有するジヒドロキシ化合物を使用することもできる。同化合物は、ジヒドロキシ化合物と、テトラカルボン酸二無水物(例えばピロメリト酸二無水物又はシクロペンタンテトラカルボン酸二無水物)と、の付加反応におけるモル比2:1〜1.05:1での反応によって得られる。適するジヒドロキシ化合物としては、特にDE3911827号公報に連鎖延長剤として記載されているモノマー(b2)及びジオール(b1)を用いると好ましい。
【0054】
本発明の一実施の形態において、成分(a)及び(b)を、モル比で0.8:1〜3:1、好ましくは0.9:1〜1.5:1、特に好ましくは1:1で用いる。
【0055】
本発明の実施の形態において、1種類のみのイソシアネート反応性基を有する化合物、例えばモノアルコール、一級又は二級モノアミン又はメルカプタンを成分(a)に対して10モル%以下の割合で添加してもよい。
【0056】
本発明の方法では、1種類以上の顔料を使用する。本発明による顔料は、ドイツ工業規格DIN55944の規格に準ずる、実質的に不溶性の微分散状の有機又は無機着色料である。本発明の方法ではカーボンブラック等の有機顔料を用いることが好ましい。以下に有機顔料の具体例を示す。
【0057】
モノアゾ顔料: C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントオレンジ5、13、36及び67、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、8、9、12、17、22、23、31、48:1、48:2、48:3、48:4、49,49:1、52:1、52:2、53、53:1、53:3、57:1、63、112、146、170、184、210、245及び251、C.I.ピグメントイエロー1、3、73、74、65、97、151及び183、
ジアゾ顔料: C.I.ピグメントオレンジ16、34及び44、C.I.ピグメントレッド144、166、214及び242、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、16、17、81、83、106、113、126、127、155、174、176及び188、
アンタンスロン顔料: C.I.ピグメントレッド168(C.I.バットオレンジ3)
アントラキノン顔料: C.I.ピグメントイエロー147及び177、C.I.ピグメントバイオレット31、
アントラピリミジン顔料: C.I.ピグメントイエロー108(C.I.バットイエロー20)、
キナクリドン顔料: C.I.ピグメントレッド122、202及び206、C.I.ピグメントバイオレット19,
キノフタロン顔料: C.I.ピグメントイエロー138、
ジオキサジン顔料: C.I.ピグメントバイオレット23及び37、
フラバントロン顔料: C.I.ピグメントイエロー24(C.I.バットイエロー1)、
インダントロン顔料: C.I.ピグメントブルー60(C.I.バットブルー4)及び64(C.I.バットブルー6)、
イソインドリン顔料: C.I.ピグメントオレンジ69、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントイエロー139及び185、
イソインドリン顔料: C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントレッド257及び260、C.I.ピグメントイエロー109、110、173及び185、
イソビオラントロン顔料: C.I.ピグメントバイオレット31(C.I.バットバイオレット1)、
金属錯体顔料: C.I.ピグメントイエロー117、150及び153、C.I.ピグメントグリーン8、
ペリノン顔料: C.I.ピグメントオレンジ43(C.I.バットバイオレット7)、C.I.ピグメントレッド194(C.I.バットレッド15)、
ぺリレン顔料: C.I.ピグメントブラック31及び32、C.I.ピグメントレッド123、149、178、179(C.I.バットレッド23)、190(C.I.バットレッド29)及び224、C.I.ピグメントバイオレット29、
フタロシアニン顔料: C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6及び16、C.I.ピグメントグリーン7及び36、
ピラントロン顔料: C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントレッド216(C.I.バットオレンジ4)、
チオインジゴ顔料: C.I.ピグメントレッド88及び181(C.I.バットレッド1)、C.I.ピグメントバイオレット38(C.I.バットバイオレット3)、
トリアリールカルボニウム顔料: C.I.ピグメントブルー1、61及び62、C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントレッド81、81:1及び169、C.I.ピグメントバイオレット1、2、3及び27、C.I.ピグメントブラック1(アニリンブラック)、
C.I.ピグメントイエロー101(アルダジンイエロー)、
C.I.ピグメントブラウン22。
【0058】
無機顔料の例は、
白色顔料:二酸化チタン(C.I. ピグメントホワイト6)、亜鉛白、顔料等級酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、鉛白、
黒色顔料:酸化鉄ブラック(C.I.ピグメントブラック11)、鉄−マンガンブラック、スピネルブラック(C.I.ピグメントブラック27)、カーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)、
彩色顔料:酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、クロムグリーン(C.I.ピグメントグリーン48)、コバルトグリーン(C.I.ピグメントグリーン50)、ウルトラマリーングリーン、コバルトブルー(C.I.ピグメントブルー28及び36)、ウルトラマリーンブルー、アイロンブルー(C.I.ピグメントブルー27)、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルトバイオレット、マンガンバイオレット、酸化鉄レッド(C.I.ピグメントレッド101)、カドミウムスルホセレナイド(C.I.ピグメントレッド108)、モリブデートレッド(C.I.ピグメントレッド104)、ウルトラマリンレッド、
酸化鉄ブラウン、混合ブラウン、スピネル及びコランダム相(C.I.ピグメントブラウン24、29及び31)、クロムオレンジ、
黄色酸化鉄(C.I.ピグメントイエロー42)、ニッケル−チタンイエロー(C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー157及び164)、クロム−チタンイエロー、硫化カドミウム及び硫化亜鉛カドミウム(C.I.ピグメントイエロー37及び35)、クロムイエロー(C.I.ピグメントイエロー34)、亜鉛黄、クロム酸アルカリ土類金属塩、ネープルスイエロー、バナジン酸ビスマス(C.I.ピグメントグリーン184)または
干渉顔料:金属小板の塗布による金属効果を有する顔料、金属酸化物被覆を有するマイカ小板によるパール光沢を有する顔料、液体クリスタル顔料。
【0059】
好ましい顔料はモノアゾ顔料(特にレーキ処理されたBONS顔料、ナフトールAS顔料)、ジスアゾ顔料(特にダイアリーイエローピグメント、ビスアセトアセトアニリドピグメント、ジスアゾピラゾロンピグメント)、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ペリノン顔料、フタロシアニン顔料、トリアリールカルボニウム顔料(アルカリブルーピグメント、ローダミンレーキ、錯体アニオンを有する染料塩)、イソインドリン顔料及びカーボンブラック。
【0060】
特に好ましい顔料の具体例は、カーボンブラック、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントレッド122及び146、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントブルー15:3、15:4、ピグメントブラック7、ピグメントオレンジ5、38及び43及びC.I.ピグメントグリーン7。
【0061】
本発明の方法では、微粒子状、すなわち粒子状の1種類以上の顔料を使用するものである。
【0062】
本発明では、出発材料として予備分散した顔料を用いると好ましい。すなわち、成分(a)と(b)とを混合する前に、所定の機器において1種類以上の顔料を少なくとも1種類の添加剤、例えば1種類以上の溶媒、例えば水、C1−C4アルカノール、ポリエーテロール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、酢酸n−ブチルを添加した上で分散する。分散添加剤を用いて分散を事前に行うことも可能である。有効な分散添加剤については後述する。他の適する添加剤の例は、殺菌剤、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(BIT)(Avecia Lim.社より市販されているPraxel(登録商標)シリーズ)又はそのアルカリ金属塩である。この他、適する殺菌剤の例には、2−メチル−2H−イソチアゾール−3(MIT)及び5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン(CIT)である。
【0063】
適する機器の例は、ボールミル、攪拌子付きメディアミル、超音波処理装置(ultrasonifier)、高圧均質化装置、及びUltra Thurax攪拌装置である。
【0064】
適する予備分散時間の例は1/2時間から48時間であるが、これより長い時間であてもよい。好ましい予備分散時間は1時間から24時間である。
【0065】
予備分散における圧力と温度の条件には、通常制限はなく、例えば大気圧で行うことが好ましい。温度については、例えば10℃〜100℃が適している。
【0066】
顔料:水の質量比は、広範囲に選択可能であり、例えば通常1:10〜1:2の範囲とされる。
【0067】
予備分散中に、慣用の粉砕助剤を添加してもよい。
【0068】
本発明で使用される顔料の予備分散後の平均粒径は、一般に10nm〜1.5μm、好ましくは60〜200nm、更に好ましくは15〜150nmの範囲とされる。
【0069】
本発明においてカーボンブラックを使用する場合の平均粒径とは、一次粒子の平均粒径を言う。
【0070】
成分(a)と(b)との合計に対する顔料の質量割合は、1:10〜10:1、好ましくは1:3〜3:1、更に好ましくは1:2〜2:1とされる。
【0071】
本発明において、成分(a)と、成分(b)と、顔料とを、水と混合する。塩含有水を用いてもよいが、イオンを全く含まない水を用いることが好ましい。イオンを含まない水は、例えばイオン交換体を用いて、又は蒸留を行うことにより製造可能である。
【0072】
本発明の方法において、1種類以上の界面活性剤(以下、乳化剤ともいう)を用いて混合を行ってもよい。
【0073】
乳化剤は、アニオン性、カチオン性又は非イオン性の乳化剤より選択的に使用可能である。適する乳化剤の例は、Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie、第XIV/1巻(Makromolekulare Stoff)、George-Thieme-Verlag、シュトゥットガルト、1961、第192-208頁に記載されている。
【0074】
適する非イオン性乳化剤の例は、エトキシル化モノ−、ジ−及びトリアルキルフェノール(エトキシル化度:3−50、アルキル基:C3−C12)、及びエトキシル化脂肪アルコール(エトキシル化度:3−80、アルキル基:C8−C36)である。これらの具体例はBASF社製のLutensol(登録商標)ブランド、及びUnion Carbide社製のTriton(登録商標)ブランドである。
【0075】
適するアニオン性乳化剤の例は、アルキル硫酸(アルキル基:C8−C12)アルカリ金属塩及びアンモニウム塩、エトキシルアルカノール(エトキシル化度:4−30、アルキル基:C12−C18)の、及びエトキシル化アルキルフェノール(エトキシル化度:3−50、アルキル基:C4−C12)の硫酸エステルアルカリ金属塩及びアンモニウム塩、アルキル硫酸(アルキル基:C12−C18)アルカリ金属塩及びアンモニウム塩、及びアルキルアリール硫酸(アルキル基:C9−C18)アルカリ金属塩及びアンモニウム塩である。
【0076】
適するカチオン性乳化剤は、一般にC6−C18アルキル、C6−C18アリールアルキル、又はヘテロシクリルを有する第一級、二級、三級又は四級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩、及び酸化アミンの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩、及びホスホニウム塩である。具体例としては、酢酸ドデシルアンモニウム塩、対応の塩酸塩、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィンエステルの塩化物又は酢酸塩、塩化N−セチルピリジニウム、硫酸N−ラウリルピリジニウム、及び臭化N−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、臭化N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウム、塩化N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウム、及びジェミニ界面活性剤の二臭化N,N−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンである。他の多数の例についてはH.Stache, Tensid-Taschenbuch, Carl-Hanser-Verlagh出版、ミュンヘン、ウィーン、1981、及びMcCutcheon’s Emulsifiers & Detergents,MC Publishing Company, Glen Rock、1981に記載されている。
【0077】
本発明の方法を行うための乳化剤の使用量は、最終的に形成される水性マクロ-又はミニ-エマルジョン中、乳化剤が関与する臨界ミセル形成濃度を大幅に超過しないように設定可能である。しかしながら、多量の乳化剤、成分(a)と(b)との総量に対して例えば30質量%以下、好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下の乳化剤を使用することも可能である。
【0078】
本発明の特に好ましい実施例において、乳化剤の使用量は、成分(a)と(b)との総量に対して0.1質量%〜5質量%である。
【0079】
本発明の実施の形態において、1種類以上の疎水性液体を補助安定剤として使用して本発明の方法を実施することもできる。
【0080】
適する疎水性液体(補助安定剤)の例には、25℃又は本発明の加工条件下での水への溶解性が、5×10-5g/リットル以下、好ましくは5×10-7g/リットル以下の材料が含まれる。特に適する例は、炭化水素、例えばn−ヘキサデカン、n−テトラデカン、n−ドデカヘドラン、ハロゲン化炭化水素、例えばクロロベンゼン、疎水性油類、例えばオリーブオイル、フリーOH基を含まないシロキサン、及びシランである。同様にブロックされたポリイソシアネートを補助安定剤として用いることもできる。
【0081】
本発明の一実施の形態において、水性ミニエマルジョン中に存在する成分(a)及び(b)の合計に対して0.01質量%〜10質量%、好ましくは0.1質量%〜5質量%の少なくとも1種類の補助安定剤を用いることができる。また、他の実施の形態では、補助安定剤の使用が割愛される。
【0082】
本発明の実施の形態において、混合中に1種類以上の保護コロイドが添加される。有用な保護コロイドの一例として、Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie、第XIV/1巻(Makromolekulare Stoff)、George-Thieme-Verlag出版、シュトゥットガルト、1961、第411-420頁に記載されている保護コロイドを挙げることができる。
【0083】
本発明の一実施の形態における保護コロイドの使用量は、水性ミニエマルジョン中に存在する成分(a)及び(b)の総量に対して0質量%〜50質量%、好ましくは1質量%〜30質量%である。
【0084】
本発明では、少なくとも1種類の多価イソシアネート(a)、イソシアネート反応性基を有する少なくとも1種類の化合物(b)、顔料、水、及び場合に応じて1種類以上の界面活性物質を混合することにより、マクロエマルジョンを得ることができ、好ましくはミニエマルジョンを得ることができる。
【0085】
本発明におけるマクロエマルジョンとは、モノマー液滴の平均粒径が約1μmを超過し1mm以下の範囲にある多相混合物である。本発明におけるミニエマルジョンとは、モノマー液滴の平均粒径が20nm〜1000nm、好ましくは40nm〜500nm、更に好ましくは60nm〜200nmの範囲にある多相混合物である。モノマー液滴の平均粒径は、例えば準弾性光散乱(いわゆる、自己相関関数の単一モード分析のz平均モノマ液滴径dz)により測定可能である。
【0086】
保護コロイド、乳化剤及び/又は疎水性液体(補助安定剤)を添加した場合のモノマー液滴の平均粒径は、モノマー自体の液滴の平均粒径ではなく、水中に乳化している全疎水成分の平均粒径を示すものである。
【0087】
混合後、成分(a)及び(b)を反応させるために、混合の後に加熱するか、1種類以上の触媒を用いるか、又は加熱と1種類以上の触媒の使用の双方を行う。
【0088】
適する触媒の例には、典型的なポリウレタン化学で用いられる各種触媒が挙げられる。
【0089】
典型的なポリウレタン化学で用いられる触媒の例は、有機アミン、第三級脂肪族、脂環式又は芳香族アミン、及びルイス酸有機金属化合物である。
【0090】
適するルイス酸有機酸金属化合物の例は、錫化合物、例えば有機カルボン酸錫(II)酸、例えば酢酸錫(II)、オクタン酸錫(II)、エチルヘキサン酸錫(II)、ラウリン酸錫(II)、有機カルボン酸のジアルキル錫(II)誘導体、例えばニ酢酸ジメチル錫、ニ酢酸ジブチル錫、ジブチル酸ジブチル錫、ビス(2−エチルヘキサン酸)ジブチル錫、ジラウリン酸ジブチル錫、マレイン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫、及びニ酢酸ジオクチル錫である。金属錯体、例えば鉄、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニッケル及びコバルトのアセチルアセトン酸塩も使用可能である。他の金属触媒についてはBlank等著、in Progress in Organic Coatings, 1999, 35, 19頁以降に記載されている。
【0091】
好ましいルイス酸の有機金属化合物としては、ニ酢酸ジメチル錫、ジブチル酸ジブチル錫、ビス(2−エチルヘキサン酸)ジブチル錫、ジラウリン酸ジブチル錫、ジラウリン酸ジオクチル錫、アセチルアセトン酸ジルコニウム、及び2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン酸ジルコニウムがある。
【0092】
同様に、ビスマス触媒及びコバルト触媒、及びセシウム塩を触媒として使用することができる。適するセシウム塩の例は、以下のアニオン、すなわちF-、Cl-、CIO-、CIO3-、CIO4-、Br-、J-、JO3-、CN-、OCN-、NO2-、NO3-、HCO3-、CO32-、S2-、SH-、HSO3-、SO32-、HSO4-、SO42-、S222-、S242-、S252-、S262-、S272-、S282-、H2PO2-、H2PO4-、HPO42-、PO43-、P274-、 (OCn2n+1-、(Cn2n-12-、(Cn2n-32-、及び(Cn+12n-242-である(nは1〜20の数値を示す)。
【0093】
アニオンが式(Cn2n-12-及び(Cn+12n-242-(n=1〜20)を満たすカルボン酸セシウムが好ましい。特に好ましいセシウム塩として、式(Cn2n-12-(n=1〜20)を満たすアニオンを有するモノカルボン酸塩がある。蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩、及び2−エチルヘキサン酸塩が特に好ましい。
【0094】
慣用の有機アミンの例を以下に挙げる。
【0095】
トリエチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルブタン−1,4−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサン−1,6−ジアミン、ジメチルシクロヘキサン、ジメチルドデシルアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、ペンタメチルジエチルトリアミン、3−メチル−6−ジメチルアミノ−3−アザペントール、ジメチルアミノプロピルアミン、1,3−ビスジメチルアミノブタン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリン、N−シクロヘキシルモルホリン、2−ジメチルアミノエトキシエタノール、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミノ−N−メチルエタノールアミン、N−メチルイミダゾール、N−ホルミル−N,N’−ジメチルブチレンジアミン、N−ジメチルアミノエチルモルホリン、3,3’−ビスジメチルアミノ−ジ−n−プロピルアミン及び/又は2,2’−ジピペラジンジイソプロピルエーテル、ジメチルピペラジン、トリス(N,N−ジメチルアミノプロピル)−s−ヘキサヒドロトリアジン、イミダゾール、例えば1,2−ジメチルイミダゾール、4−クロロ−2,5−ジメチル−1−(N−メチルアミノエチル)イミダゾール、2−アミノプロピル−4,5−ジメトキシ−1−メチルイミダゾール、1−アミノプロピル−2,4,5−トリブチルイミダゾール、1−アミノエチル−4−ヘキシルイミダゾール、1−アミノブチル−2,5−ジメチルイミダゾール、1−(3−アミノプロピル)−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール及び/又は1−(3−アミノプロピル)−2−メチルイミダゾール。
【0096】
好ましい有機アミンの例は、それぞれ2個のC1−C4アルキル基と炭素原子数4〜20の1個のアルキル基又はシクロアルキル基を含むトリアルキルアミン、例えばジメチル−C4−C15アルキルアミン、例えばジメチルドデシルアミン又はジメチルC3−C8シクロアルキルアミンである。同様に、好ましい有機アミンの例は場合に応じて酸素又は窒素等のヘテロ原子を含んでもよい二環アミン、例えば1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンである。
【0097】
上記化合物の2種類以上の混合物を触媒として用いることも好ましい。
【0098】
上記化合物から選択された疎水性触媒を用いることが特に好ましい。
【0099】
触媒の使用量は、成分(a)と(b)との総量に対して、好ましくは0.0001質量%〜10質量%、更に好ましくは0.001質量%〜5質量%である。
【0100】
1種類又は複数種類の触媒を、触媒の構成に応じて固体、液体又は溶液として添加することができる。適する溶媒は水混和性溶媒、例えば芳香族又は脂肪族炭化水素、例えばトルエン、酢酸エチル、ヘキサン及びシクロヘキサン及びカルボン酸エステル、例えば酢酸エチルである。適する溶媒は、水混和性溶媒、例えばアセトン及びTHFである。1種類又は多種類の触媒を固体又は液体状で添加することができる。
【0101】
本発明の好ましい実施の形態では、成分(a)、(b)、顔料、水、及び場合に応じて1種類以上の界面活性物質、必要に応じて保護コロイド、及び必要に応じて補助安定剤を使用し、ミニエマルジョンを製造することができる。予め製造したマクロエマルジョンに強い剪断力を導入しミニエマルジョンを製造すると好ましい。強力な剪断力は一度で付加しても、繰り返し付加してもよい。
【0102】
ミニエマルジョンは種々の方法により製造可能である。この方法は、成分(a)、(b)、水、必要に応じて乳化剤、保護コロイド、補助安定剤及び予備分散した顔料を混合し、これに強力な剪断力を加えることにより一般的に行われる。全成分を同時に混合し、この後に強力な剪断力を加えてもよいが、最初に数成分、例えば予備分散した顔料、成分(b)、水、及び乳化剤を混合して、これらに対して強力な剪断力を加え、この後に残りの成分を添加してもよい。
【0103】
強力な剪断力の導入は種々の方法により行われる。適する方法では、例えばキャビテーションメカニズムを使用してもよいが、圧力勾配、剪断勾配を利用してもよい。
【0104】
本発明の実施の形態では、水と2種類以上の成分、すなわち(a)、(b)、乳化剤、保護コロイド、補助安定剤、及び予備分散処理した顔料を混合してマクロエマルジョンを製造する。次いで、このように得られたマクロエマルジョンに対し、ピストンポンプ等を用いて500バール以上、好ましくは1000バール以上の圧力値まで加圧する。次いで、1個以上のスロット、又は穿孔を有する1枚以上のプレートを介して圧力を緩和させミニエマルジョンを得る。高剪断勾配、及び高圧勾配と、スロットのキャビテーション(空洞形成)が観察される。
【0105】
上述の強力な剪断力を導入するために適する機器は、スロットホモジナイザーであり、具体例としてはNiro Soavi 高圧ホモジナイザー NS1001L、Pandaがある。穿孔を有するプレートについては、例えばEP1008380A2号公報に記載がある。
【0106】
本発明の他の実施の形態においては、水を、2種類以上の成分、すなわち成分(a)及び(b)、乳化剤、保護コロイド、補助安定剤、及び予備分散処理した顔料を混合してマクロエマルジョンを製造する。次いで、このように得られたマクロエマルジョンに対し、ピストンポンプ等を用いて500バール以上、好ましくは1000バール以上、特に好ましくは1200バール以上の圧力値まで加圧する。次いで、2個以上のノズル又は2個以上のバルブを介し混合チャンバー内に導入することにより圧力を緩和させる。ノズルは相互に対向する方向に設けられると好ましい。適する装置の具体例は、Microfluidics Corporation製、M120E microfluidizer、及びNanojet Engineering GmbH製Expo Nanojetである。
【0107】
本発明の他の実施の形態においては、水を、2種類以上の成分、すなわち成分(a)及び(b)、乳化剤、保護コロイド、補助安定剤、及び予備分散処理した顔料を混合してマクロエマルジョンを製造する。次いで、このように得られたマクロエマルジョンを、Branson Sonifier II 450等を用いて超音波処理する。
【0108】
例えば、英国特許出願公開第2,250,930号公報に記載されている機器が、超音波の付与に適している。ドイツ特許第19756874号公報に記載されている機器が特に好ましく使用される。適する機器についての詳細は、WO02/64657号公報、及び同公報中に記載された参考文献に記載されている。
【0109】
上述した複数の実施の形態を結合して行うことも、繰り返し行うことも可能である。
【0110】
ミニエマルジョンの製造は、成分(a)と(b)との反応及び成分(a)と水との反応の半減期よりも短い製造時間で迅速に行われると好ましい。ミニエマルジョンの製造は、温度を室温未満、特に好ましくは0℃〜20℃の温度に低下させて行われると更に好ましい。成分(a)と(b)との反応を急速に行うため、得られたミニエマルジョンを、その製造完了後に加熱してもよい。
【0111】
本発明によると、成分(a)及び(b)を、水、顔料、及び必要に応じて1種類以上の界面活性物質、及び必要に応じて他の物質と混合し、次いで成分(a)と(b)とを反応させる。これに関して、上記化合物(b)の他に、イソシアネート反応性基を有する他の化合物、例えばジオール、チオエタノール、アミノアルコール、例えばエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン又はエチレンジアミンを添加してもよい。これにより、ウレタン基の他に、更にイソシアネート、アロファネート、尿素、ビウレット、ウレトジオン又はカルボジイミド基を有するポリウレタンを製造することができる。
【0112】
成分(a)と(b)との反応温度は、20〜120℃、好ましくは40〜105℃、好ましくは50〜100℃の範囲で適宜選択する。
【0113】
成分(a)と(b)との反応のための圧力条件には一般に制限はないが、例えば大気圧から10バールが適している。100℃を超過する温度を用いる場合、高圧とするとよい。
【0114】
反応時間は30分〜120時間の範囲、好ましくは2〜3時間とされる。
【0115】
攪拌又は振とう等により混合しながら反応を行ってもよい。
【0116】
また、
各成分を添加する工程、及び
高剪断力を付与する工程、の各工程の順序は種々に変更することができる。
【0117】
本発明の実施の形態において、予備分散した顔料、成分(a)、(b)、乳化剤、必要に応じて保護コロイド、水、必要に応じて補助安定剤を混合してマクロエマルジョンを製造し、次いで、マクロエマルジョンに高剪断力を与える。この後、温度を上昇させ及び/又は触媒を添加し、反応させてもよい。
【0118】
本発明の実施の形態において、予備分散した顔料、成分(a)、(b)、乳化剤、水、必要に応じて補助安定剤を混合してマクロエマルジョンを製造し、次いで、マクロエマルジョンに高剪断力を与える。これによりミニエマルジョンが得られる。この後、更に水、乳化剤、必要に応じて保護コロイド、必要に応じて補助安定剤、及び成分(a)を添加する。次いで、温度を上昇させ及び/又は触媒を添加し、反応させてもよい。
【0119】
本発明の実施の形態において、予備分散した顔料、成分(a)、(b)、必要に応じて補助安定剤を混合し、次いで乳化剤水溶液と、必要に応じて保護コロイドを添加してマクロエマルジョンを製造する。この後、高剪断力を付加するとミニエマルジョンが得られる。更に、予備分散した顔料、必要に応じて水を添加し、再び高剪断力を付与する。次いで、温度を上昇させ及び/又は触媒を添加し、反応させてもよい。
【0120】
本発明の他の実施の形態において、予備分散した顔料、成分(a)、乳化剤、及び水を混合してマクロエマルジョンを製造し、次いで高剪断力を与えてミニエマルジョンを得る。この後、更に水、必要に応じて保護コロイド、必要に応じて補助安定剤、及び成分(b)を添加し、再び高剪断力を付与する。次いで、温度を上昇させ及び/又は触媒を添加し、反応させてもよい。
【0121】
本発明の他の実施の形態において、予備分散した顔料、成分(b)、乳化剤、及び水を混合してマクロエマルジョンを製造する。次いで、更に水、必要に応じて保護コロイド、必要に応じて補助安定剤、及び成分(a)を添加した後に高剪断力を付与する。次いで、温度を上昇させ及び/又は触媒を添加し、反応させてもよい。
【0122】
本発明の他の実施の形態において、予備分散した顔料を、成分(a)、(b)、及び少量の水と混合してマクロエマルジョンを製造したのち、これに高剪断力を付与する。次いで、更に水、乳化剤、必要に応じて保護コロイド、必要に応じて補助安定剤を添加する。次いで、温度を上昇させ及び/又は触媒を添加し、反応させてもよい。
【0123】
本発明の他の実施の形態において、成分(a)と(b)とを混合し、乳化剤水溶液、必要に応じて保護コロイド及び補助安定剤を添加しマクロエマルジョンを製造する。この後、これに乳化剤を用いて予備分散した顔料、及び必要に応じて水を添加し、再び混合する。次いで、高剪断力を付与する。次いで、温度を上昇させ及び/又は触媒を添加し、反応させてもよい。
【0124】
本発明の他の実施の形態において、成分(a)、(b)、必要に応じて補助安定剤、必要に応じて予備分散した顔料を混合する。この後、乳化剤水溶液、及び必要に応じて任意に保護コロイドを添加し、マクロエマルジョンを製造する。次いで高剪断力を付加する。次いで、温度を上昇させ及び/又は触媒を添加し、反応させてもよい。
【0125】
本発明の他の実施の形態において、成分(a)、(b)、必要に応じて、tensinにより予備分散した顔料を混合する。この後、水、及び必要に応じて任意に保護コロイド及び補助安定剤を添加し、マクロエマルジョンを製造する。次いで高剪断力を付加する。次いで、温度を上昇させ及び/又は触媒を添加し、反応させてもよい。
【0126】
本発明の他の実施の形態において、成分(a)、(b)、予備分散した顔料、及び必要に応じて補助安定剤を混合する。この後、水、乳化剤水溶液を添加し、マクロエマルジョンを製造する。次いで高剪断力を付加してミニエマルジョンを得る。次いで、温度を上昇させ及び/又は触媒を添加し、反応させてもよい。
【0127】
原則的に、高剪断力を付与する前に、好ましくはマクロエマルジョンに触媒を添加してもよい。この操作は、室温で液体の触媒、例えば上記ルイス酸有機金属化合物から選択された触媒を用いることが望ましい場合に、常に好ましく行われる。
【0128】
成分(a)と(b)とをそれぞれ2部分に分割し、剪断力の付加の前に成分(a)及び/又は成分(b)の第一の部分を添加し、これにより得られたミニエマルジョンに成分(a)及び/又は成分(b)の第二の部分を添加することも原則として可能である。
【0129】
また、上述の予備分散した顔料に代えて、予備分散されていない顔料(代替顔料)を用いることもできる。
【0130】
本発明の一実施の形態では、ラジカル反応により重合可能な1種類以上のモノマーをコモノマー(c)として添加してもよく、この場合にはラジカル反応により重合可能なすべてのモノマーが使用可能である。
【0131】
特に好ましい実施の形態においては、成分(c1)として、ラジカル反応により重合可能な複数種類のモノマーの総量に対して40質量%以上、好ましくは60質量%のメインモノマー(主モノマー)と呼ばれる成分(c1)を用いる。メインモノマーは、
1−C20アルキル(メタ)アクリレート、C3−C20シクロアルキル(メタ)アクリレート、炭素原子数20以下のカルボン酸のエチレン性不飽和エステル、炭素原子数8〜20のビニル芳香族化合物、(メタ)アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル化合物、例えば塩化ビニル又は塩化ビニリデン、C1−C10アルコールの不飽和エーテル、例えばビニルエーテル又はアリルエーテル、及び
炭素原子数2〜24、好ましくは4〜20であり、かつ1個又は2個の炭素−炭素二重結合を含む炭化水素から選択される。
【0132】
特に適するメインモノマーの例を以下に挙げる。
【0133】
1−C20アルカノール、好ましくはC1−C10アルカノールのアルキル(メタ)アクリル酸エステル、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、及びアクリル酸n−ドデシル、及び上記(メタ)アクリル酸エステルの混合物、
C3−C20シクロアルカノールの(メタ)アクリル酸エステル、特にアクリル酸シクロペンチル、メタクリル酸シクロペンチル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、
炭素原子数20以下のカルボン酸のエチレン性不飽和エステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酢酸アリル、プロピオン酸アリル、ラウリル酸ビニル、Versatic(登録商標)酸、例えば2,2−ジメチルプロピオン酸、及び2,2−ジメチルブチル酸のビニル又はアリルエステル、
炭素原子数8〜20のビニル芳香族化合物、例えば2−ビニルトルエン、3−ビニルトルエン、α−メチルスチレン、パラ−メチルスチレン、4−n−ブチルスチレン、α−n−ブチルスチレン、4−n−デシルスチレン、及び特に好ましくはスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルハロゲン化物、例えば臭化ビニル、クロロプレン、塩化ビニル又は塩化ビニリデン、
1−C10アルコールの不飽和エステル、例えばビニルエーテル又はアリルエーテル、例えばエチルビニルエーテル、メチルビニルエーテル、エチル−1−アリルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、及びビニルn−デシルエーテル、
炭素原子数が2〜24、好ましくは4〜20であり、かつ1個又は2個の炭素−炭素二重結合を有する炭化水素、例えばエチレン、プロピレン、イソブテン、1−ヘキサデカン、1−オクタデカン、α−C2040、α−C2244、α−C2448、上記オレフィンの混合物、1,3−ブタジエン、イソプレン。
【0134】
メインモノマーと共に、ラジカル反応により重合可能な他のモノマーを添加してもよい。具体例は以下の通りである。
【0135】
2−C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、
3−C20ヒドロキシシクロアルキル(メタ)アクリレート、例えばcic−及びtrans−4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、エチレン性不飽和カルボン酸又はジカルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸、マレイン酸、メチレンマロン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、および
エチレン性不飽和カルボン酸無水物及びジカルボン酸無水物、例えば無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸。
【0136】
ラジカル反応により重合可能な他のモノマーの極めて好ましい例は、C2−C10ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。
【0137】
ラジカル重合は、1種類以上のフリーラジカル開始剤を添加することにより開始可能である。ラジカル重合を開始する他の方法には光照射(illumination)、例えばUV/vis線の照射が挙げられる。
【0138】
成分(c)を使用する場合、メインモノマーと、必要に応じて他のモノマー、及び必要に応じてラジカル開始剤を、個々に、又は別々に添加可能である。添加は所望の時点、例えば強剪断力の作用前又は後に行われる。
【0139】
本発明の具体例において、上述したように、最初に、水、多分散した顔料、成分(a)、(b)、(c)、乳化剤、必要に応じて補助安定剤、必要に応じて保護コロイドを含むミニエマルジョンを製造する。必要に応じて、反応の進行中にラジカル開始剤を、必要に応じて温度を上昇させて添加してもよい。
【0140】
成分(c)は、成分(a)と(b)との合計に対して、質量割合で1:10〜10:1となるように添加可能である。
【0141】
1種類以上のラジカル(開始剤)を添加して成分(c)の付加反応を開始すると好ましい。例えば熱開始剤、光開始剤、有機パーオキサイド又はヒドロパーオキサイド等が使用可能である。有機パーオキサイド又はヒドロパーオキサイドの例は、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオクタノエート、tert−ブチルパーピバレート、tert−ブチルパー−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーマレート、tert−ブチルパーイソブチレート、ベンゾイルパーオキサイド、ジアセチルパーオキサイド、サクシニルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、ジクロロへキシルパーオキサイドジカルボネートである。同様に、レドックス開始剤、例えば過酸化水素、パーオキソ二硫化ナトリウム、又は上記パーオキサイドのいずれか1種と、還元剤との組み合わせをレドックス開始剤として使用することができる。適する還元剤の例は、アスコルビン酸、酒石酸、Fe(II)塩、例えばFeSO4、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウムである。
【0142】
適する開始剤の例には、更にアゾ化合物、例えば2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)がある。
【0143】
適する光開始剤の例は、例えばP.K.T. Old-Ring, Chemistry and Technology of UV and EB Formulations for Coatings, Inks and Paints, SITA Technology, ロンドン、1991、第3巻、「Photoinitiators for Free Radicals and Cationic Polymerization」に記載されている。
【0144】
適する光開始剤は、α−解裂による活性化において分解するもの、例えばベンジルジアルキルケタールタイプの光開始剤、例えばベンジルジメチルケタールである。適するα−解裂光開始剤の他の例は、ベンゾイン誘導体、イソブチルベンゾインエーテル、ホスフィンオキサイド、特にモノ−及びビスアシルホスフィンオキサイド、例えば2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ホスフィンスフフィド、及びエチル4−ジメチルアミノベンゾエート、及び下式による化合物である。
【0145】
【化7】

【0146】
1種類以上の光開始剤は、水素を引き抜く光開始剤、例えば無置換又は置換アセトフェノン、アントラキノン、チオキキサントン、安息香酸エステル、又は置換又は無置換ベンゾフェノンである。特に好ましい例は、イソプロピルチオキサントン、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ハロメチル化ベンゾフェノン、アントロン、ミヒラーケトン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン)、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、アントラキノンである。
【0147】
本発明の実施の形態では、成分(c)に対して0.01質量%〜4質量%の開始剤を添加する。
【0148】
本発明により水性一次分散液を製造した後、後処理を行ってもよい。例えば濾過工程は、織物又は編織物等のフィルター材料を用いた濾過により行われる。
【0149】
1種類以上の成分(c)を用いる場合、重合反応が静まった後に1種類以上の開始剤を添加するなどして、1工程以上の脱臭工程を行うことも有効である。
【0150】
また、本発明の製造方法により得られた水性一次分散液も本発明の対象とされている。
【0151】
本発明による水性一次分散液における、水の含有割合は30質量%〜95質量%、好ましくは50質量%〜80質量%である。
【0152】
本発明の水性一次分散液は、被覆を有する粒子状の顔料を含むが、同顔料も本発明の対象とされている。
【0153】
本発明の被覆を有する顔料は、乾燥処理を経ることにより本発明の水性一次分散液から製造することができる。適する乾燥処理には、水の単純な蒸発、及びスプレードライ(噴霧乾燥)、及びフリーズドライ(冷凍乾燥)がある。
【0154】
本発明の上記方法により製造可能な、本発明の被覆を有する顔料は、顔料のみならず、主に追加的なポリマー、特にポリウレタンからなる被覆を有する。ポリウレタンは、成分(a)と、成分(b)及び場合により他の成分との反応を、及び場合により成分(c)等の他のモノマーのミニエマルジョンの重合により製造される。
【0155】
本発明の実施の形態において、被覆:顔料の質量割合は、(1:20)〜(20:1)、好ましくは(1:3)〜(3:1)、更に好ましくは(2:1)〜(1:2)である。
【0156】
被覆は、ASTM3418/82に準じて測定可能な、1又は2のガラス転移温度を有することも、ガラス転移温度を有さない場合もある。いわゆる低ガラス転移点は、少なくとも−70℃であると好ましく、少なくとも−40℃とされると更に好ましく、いわゆる高ガラス転移点は+120℃までであると好ましく、+90℃までであると更に好ましい。
【0157】
更に、本発明によると繊維状基体を塗布するための、組成物の使用方法が提供される。また、本発明によると、上記本発明の組成物を用いた繊維状基体の被覆方法(以下、本発明の被覆方法とも言う)、及び本発明の被覆方法により得られた被覆を有する繊維状基体が提供される。
【0158】
本発明の繊維状基体は、特に皮革、織物又は織物基体であると好ましいが、紙、厚紙及び板紙(ボール紙)であってもよい。
【0159】
本発明において皮革とは、予めなめし加工をした皮革、なめし皮革、及び場合により再なめし加工をした皮革、又は対応の加工を施した合成代替材料があり、これらは少なくとも1工程のなめし処理の間に少なくとも1種類の染料で処理したものであってもよい。本発明において、皮革は疎水処理及び/又は油脂/液体処理(fatliquored)されていると好ましい。
【0160】
本発明の処理を行った粒子状の顔料は、手触り、色、流動特性及び粘度を調節するための市販の皮革仕上げ助剤と相溶性を有する。これらの助剤は一般に溶液状であるか(例えば流動助剤、グリコールエーテル、エーテル、例えばブチルグリコール、メトキシプロパノール、トリブトキシエチルホスフェート)、又は乳濁液/分散液状とされる(慣用の使用量又は濃度でカゼイン、ワックス、シリコーンを含む)(F. Stather, Gerbereichemie u. Gerbereitechnologie, Akademie Verlag Berlin, 1967、第507〜632ページ参照)。
【0161】
本発明による繊維基体は、織物繊維、織物半加工品(intermediate)、及び最終製品、及びこれらから製造された仕上げ加工後の製品、及び衣料業界用の織物、及び、例えばカーペット及び他の家庭用織物、及び工業用繊維構造体を含む。更に具体例としては、不定形状の構造体、例えば短繊維(毛束)、線形構造体、例えば撚糸、フィラメント、ヤーン、縄、ひも、レース、モール、ロープ、糸、及び三次元形状の構造体、例えばフェルト、織布、不織布、及びワディングが挙げられる。織物は天然材料、例えば綿、羊毛、亜麻、又は合成材料、例えばポリアミド、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステル混合織物、ポリアミド混合織物、ポリアクリロニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマイクロファイバー及びガラスファイバー織物であってもよい。
【0162】
本発明の実施の形態において、繊維基体を本発明の被覆方法により塗布することが、本発明の繊維印刷方法とされる。
【0163】
本発明の実施の形態において、本発明の被覆方法が皮革仕上げ方法に適用される。皮革の仕上げ/塗布により皮革に所望の外観と、特殊な触覚(風合い)特性を与え、更に堅牢度、例えば柔軟弾性(flex elasticity)、湿潤時/乾燥時の耐擦過性、耐汗性及び耐水性を得ることにある。
【0164】
更に、慣用の成分からなる下塗り分散液を施与してもよい。一実施の形態では、本発明の被覆方法は予備なめし処理、なめし処理及び必要に応じて再なめし処理を施した皮革に対して行われるが、これらの皮革は慣用の方法で疎水処理と染色が既に行われたものであってもよい。
【0165】
第一の工程では、少なくとも1種類の、本発明の水性一次分散液を1種類以上含む少なくとも1種類の下染め分散液を、皮革表面積m2あたり約10〜100gの固体により染色されるような量で施与する。慣用の方法、例えばプラッシュ処理、すなわちスポンジ又はブラシ状機器であって、プラッシュ(フラシ天)又はベルベット織物で被覆されていてもよいものによる処理、又はブラッシング、ロールコーティング、キャスティング、スプレー処理又はアトマイズ処理により施与することができる。このように処理された皮革を、次いで乾燥させる。乾燥温度は30〜120℃、好ましくは60〜80℃の範囲とされる。少なくとも1種類の下染め層の分散は1工程以上で行われ、各工程は同様に行われても異なる形態で行われてもよい。更にこれらの工程はそれぞれ、上記温度の乾燥処理を介在させることにより中断されてもよい。
【0166】
本発明の方法に使用される下染め分散液は、本発明の少なくとも1種類の水性一次分散液を含む。
【0167】
本発明の下染め分散液 (以下、本発明の下染め分散液とも言う) は一般に水性である。下染め分散液は、更に非水性溶媒、例えばエチレングリコール、N−メチルピロリドン、3−メトキシプロパノール、及びプロピレンカーボネートを含んでもよい。好ましい実施の形態において、本発明の下染め分散液は以下の成分を含む。
【0168】
α1)本発明の下染め分散液の総質量に対して20〜70質量%の、本発明の水性一次分散液。
【0169】
β1)任意に、本発明の下染め分散液の総質量に対して好ましくは1〜15質量%の少なくとも1種類のワックス、例えば酸化ポリエチレンワックス又はモンタンワックス。
【0170】
χ1)任意に、少なくとも1種類の殺菌剤、例えば1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン(BIT)(Avecia Lim社より市販されているProxel(登録商標)シリーズ)、及びそのアルカリ金属塩、及び他の適する殺菌剤(2−メチル−2H-イソチアゾール−3(MIT)及び5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン(CIT))。殺菌剤は下塗り分散剤に対して通常10〜150ppmの量で十分である。
【0171】
γ1)任意に、少なくとも1種類の微粒子状顔料。
【0172】
ε1)任意に、少なくとも1種類のバインダー。
【0173】
本発明の下塗り分散液は、更に少なくとも1種類の充填/抗粘着剤を含んでもよい。例えば脂肪酸エステル、アルブミン及び無機充填剤、例えばケイ酸塩及び粘土鉱物の水性組成物が好ましく使用される。
【0174】
本発明の下染め分散液の固体含有率は10〜80質量%、好ましくは20〜50質量%である。
【0175】
次いで慣用の方法で顔料被覆を施してもよい。顔料被覆は慣用の構成から成る。
【0176】
本発明の一実施の形態において、顔料被覆は以下の成分を含む。
【0177】
α2)本発明の顔料被覆の総質量に対して20〜70質量%の、本発明の少なくとも1種類の水性一次分散液。
【0178】
β2)本発明の顔料被覆の総質量に対して好ましくは1〜15質量%の少なくとも1種類のワックス、例えば酸化ポリエチレンワックス又はモンタンワックス、又はシリコンワックス。
【0179】
γ2)任意に、少なくとも1種類の殺菌剤、例えばMIT、BIT、及びCIT(例えば下塗り分散剤について上述した使用量で用いる)。
【0180】
δ2)任意に、少なくとも1種類の微粒子状の顔料。
【0181】
ε2)任意に、少なくとも1種類の増量剤。
【0182】
次いで、仕上げ剤(seasoning)を仕上げ分散液(seasoning dispersion)
の形態で、皮革表面に対して約5〜30g/m2の割合で施与してもよい。仕上げ上塗り剤(seasoning top coat)は、皮革を保護する役割を果たし、単に高い柔軟性のみならず、良好な耐擦過性、耐油性及び耐水性を与える。製品に応じて、仕上げ上塗り被覆は光沢面としても、つや消し面としてもよい。すなわち、つや消し剤(matting agent/delusterant)を更に添加してもよい。上塗りの組成は、例えば、アクリレート又はポリウレタンを基礎材料とする少なくとも1種類のバインダー、湿潤剤、アルブミン、ニトロセルロース乳濁液、有機又は無機つや消し剤を基礎材料とする充填剤、シリコーンワックス、脂肪酸エステルを含んでもよい。
【0183】
本発明の仕上げ分散液は、ヨーロッパ特許出願公開第20392352号公報により製造されたポリウレタン分散液を含んでもよい。
【0184】
顔料被覆及び上塗り分散液は、1種類以上の増粘剤を含んでもよい。例としては、アクリル酸及びアクリルアミドを基礎材料とする架橋性共重合体、及びポリウレタン又はポリビニルピロリドン又はアクリレート(コ)ポリマーを基礎材料とする増粘剤がある。
【0185】
上塗りの施与の後に慣用の条件、例えば60〜80℃の温度で乾燥を行い、次いで例えば140〜180℃の温度でホットプレス(加熱圧搾)を行う。ホットプレスは液圧により、例えば減圧下及び70〜100℃の温度で行われる。アイロンがけ用の慣用の機器を用いても、連続加圧装置を用いてもよい。
【0186】
本発明の皮革仕上げでは、下染め、顔料被覆、仕上げの少なくとも1工程で、本発明の少なくとも1種類の水性一次分散液を用いる。
【0187】
更に、本発明の他の実施の形態では、本発明の少なくとも1種類の水性一次分散液を用いた印刷織物の製造方法が提供される(以下本発明の織物印刷方法とも言う)。
【0188】
本発明の織物印刷方法は、少なくとも1種類の本発明の水性一次分散液を印刷用ペースト中(以下、本発明の印刷ペーストとも言う)に導入し、次いで慣用の方法で織物基体を印刷することにより行われる。
【0189】
本発明の織物印刷用印刷ペーストは、少なくとも1種類の本発明の水性一次分散液を慣用の印刷助剤と混合することにより得られる。色合いの濃淡は、顔料とバインダーの割合を適宜調節することにより慣用の方法で設定可能である。
【0190】
有用な印刷助剤は、Ullmann, Handbuch der technischen Chemie und Verfahrenstechnik、例えばUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry、第5版、見出し:Textile Auxiliaries、第A26巻、286ページ以降、296ページ以降、Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield/Florida, Basle, 1996に記載されている。慣用の印刷助剤の例は、増粘剤、定着剤、風合い改良剤及び乳化剤である。
【0191】
天然及び合成の増粘剤が使用可能である。好適な例としては、合成増粘剤、例えば一般には合成(コ)ポリマーをホワイトオイル等に溶解した溶液、又は合成(コ)ポリマーの水溶液又は油中水形分散液が挙げられる。いずれも好ましくは(コ)ポリマー含有率約40質量%で用いられる。
【0192】
増粘剤の好ましい例は85〜95質量%のアクリル酸、4〜14質量%のアクリルアミド、及び約1質量%の下式IIで表される、分子量Mw100000〜200000g/モルの(メタ)アクリルアミド誘導体である。
【0193】
【化8】

【0194】
上記式中、R3基はそれぞれ同じでも異なってもよく、メチル又は水素を示すことができる。
【0195】
本発明の印刷ペーストは30〜70質量%のホワイトオイルを含んでもよい。水性の増粘剤は、(コ)ポリマーを通常25質量%以下、場合によっては50質量%まで(いわゆる増粘剤分散液)含む。増粘剤の水性調製品を用いる場合には、通常アンモニア水を添加する。粒体状の増粘剤の固体状調製品を使用することによっても、揮発/放散を回避して顔料印刷物が得られるようにすることができる。
【0196】
本発明のペーストは、さらに風合い改良剤を含んでも良く、この例にはシリコーン、特にポリジメチルシロキサン、及び脂肪酸エステルがある。本発明の印刷ペーストに好適に添加される市販の風合い改良剤の具体例は、Acramin(登録商標)Weichmacher SI(Bayer AG)、Luprimol SIG (登録商標)及び Luprimol CW (登録商標)(BASF社製)である。
【0197】
本発明の印刷ペーストは、ペーストがホワイトオイルを含む増量剤を含み、かつ水中油型エマルジョンとして得られる場合は特に、他の成分として1種類以上の乳化剤を含んでも良い。適する乳化剤の例には、アリール−又はアルキル−置換ポリグリコールエーテルがある。適する乳化剤の製品の例には、Emulgator W(登録商標)(Bayer)、Luprintol PE New(登録商標)及びLuprintol MP(登録商標)(BASF社製)、及びSolegal W (Hoechst社製)がある。
【0198】
他の使用可能な成分の例にはブレンステッド酸、例えばリン酸水素ジアンモニウムがあるが、ブレンステッド酸を添加しないことが好ましい。
【0199】
顔料印刷は、公知の種々の方法により実施される。通常は、印刷ペーストをスキージにより押しつけて通過させるスクリーンが使用される。この方法はスクリーン印刷の一種である。本発明による印刷ペーストを用いた顔料印刷工程によると、印刷の施された基体は、特に印刷物の優れた光沢と色合いの濃淡(depth of shade)の組み合わせが得られるとともに、印刷された基体の優れた手触りも得られる。従って、本発明によると、本発明の印刷ペーストを用いた本発明の印刷方法により印刷された基体も得られる。
【0200】
本発明によると、本発明による少なくとも1種類の水性一次分散液を用いた本発明の塗布方法により得られた被覆を有する繊維状基体が製造される。本発明の被覆を有する繊維状基体は、湿潤時耐擦過性に特に優れており、光開始剤を用いた非常に良好な(飛躍的な)架橋率において深い色合いで製造可能である。
【0201】
更に、本発明によると、本発明の水性一次分散液の使用法、インクジェット法に用いられるインクとしての使用法、又は同インクを製造するための使用法が提供される。更に、本発明は、本発明の水性一次分散液を用いたインクジェット法用のインクの製造方法、及び本発明の少なくとも1種類の水性一次分散液からなる、又はこれを含むインクジェット法用のインクを提供するものである。
【0202】
本発明のインクジェット法用のインクは、本発明の方法により製造された少なくとも1種類の水性一次分散液を水等により希釈し、必要に応じて助剤と混合することにより特に容易に製造できる。
【0203】
本発明の好ましい実施の形態において、インクジェット法に用いられる本発明のインクは1〜50g/100ml、好ましくは1.5〜15g/100mlの顔料を含む。
【0204】
本発明の着色料調製物、特にインクジェット法に用いられる本発明のインクに包含される添加剤としては、有機溶媒を挙げることができる。低分子量ポリテトラヒドロフランは好ましい添加剤であり、単独で用いることも可能であるが、1種類以上の高沸点水溶性又は水混和性有機溶媒と混合して用いることが好ましい。
【0205】
好ましく用いられる低分子量のポリテトラヒドロフランの平均分子量Mwは、一般に150〜500g/mol、好ましくは200〜300g/mol、更に好ましくは約250g/molである(分子量分布に対応する)。
【0206】
ポリテトラヒドロフランは、テトラヒドロフランのカチオン重合により公知方法により製造可能である。生成物は直鎖状のポリテトラメチレングリコールである。
【0207】
ポリテトラヒドロフランを添加剤としての他の有機溶媒と混合してもよく、これに用いられる溶媒は通常高沸点(すなわち大気圧下での沸点が100℃を超過する)を有するものである。従って、水溶性又は水と混和性の保水性有機溶媒が使用される。
【0208】
好ましい溶媒の例は、多価アルコール、好ましくは炭素原子数2〜8、特に3〜6の非分岐又は分岐多価アルコール、例えばエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセロール、エリスルトール、ペンタエリスルトール、ペンチトール、例えばアラビトール、アドニトール、及びキシリトール、及びヘキシトール、例えばソルビトール、マンニトール及びダルシトールである。
【0209】
適する溶媒の他の例には、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール(これは低分子量ポリマーとも解される(二量体、三量体、四量体))、及びこれらのモノ(特にC1−C6、特にC1−C4)アルキルエーテルである。平均分子量100〜1500g/モル、特に200〜800g/モル、主に300〜500g/モルのポリエチレン及びポリプロピレングリコールであると好ましい。これらの例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ジ−、トリ−,及びテトラ−1,2−及び−1,3−プロピレングリコール、及びジ−、トリ−,及びテトラ−1,2−及び−1,3−プロピレングリコールモノメチル、モノエチル、モノプロピル及びモノブチルエーテルである。
【0210】
この他の使用可能な溶媒の例は、ピロリドン及びアルキル鎖が1〜4個、好ましくは1又は2個の炭素原子を含むN−アルキルピロリドンである。適するアルキルピロリドンの例は、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンである。
【0211】
特に好ましい溶媒の例は、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(Mwは300から500g/モル)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、ピロリドン、N−メチルピロリドン及びN−(2−ヒドロキシエチル)ピロリドンである。
【0212】
ポリテトラヒドロフランは、1種類以上(例えば2、3又は4)の上記溶媒と混合してもよい。
【0213】
好ましい実施の形態において、本発明の着色料調製物、特にインクジェット法に用いられる本発明のインクは、通常0.1〜80質量%、好ましくは5〜60質量%、更に好ましくは10〜50質量%、最も好ましくは10〜30質量%の非水性溶媒を含む。
【0214】
非水性溶媒添加剤の特に好ましい例は、上記の好ましい溶媒の組合わせであり、尿素が、通常は着色料調製物の質量に対して0.5〜3質量%の量で混合されていても好ましく、これにより溶媒混合物の保水効果を更に向上させることができる。
【0215】
本発明の着色料調製物、特に水性インクジェット法用の本発明のインクは、特に水性のインクジェットインク用に用いられるものであって、特に印刷業界及び塗料業界で慣用の他の助剤を含んでも良い。この様な助剤の例には、保存料、例えば1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(Avecia Lim.社製のProxelブランドとして市販)、及びそのアルカリ金属塩、グルタルジアルデヒド及び/又はテトラメチロールアセチレンジウレア、Protectols(登録商標)、酸化防止剤、脱ガス剤/脱泡剤(例えばアセチレンジオール及びエトキシル化アセチレンジオール(アセチレンジオール1モルあたり、通常20〜40モルのエチレンオキシドを含み、分散効果を生ずる))、粘度調整剤、流動化剤、湿潤剤(例えばエトキシル化又はプロポキシル化された脂肪アルコール又はオキソアルコール、プロピレンオキシド/エチレンオキシドブロック共重合体、オレイン酸又はアルキルフェノールのエトキシラート、アルキルフェノールエーテルスルファート、アルキルポリグルコシド、アルキルホスホナート、アルキルフェニルホスホナート、アルキルホスファート、アルキルフェニルホスファート又は好ましくはポリエーテルシロキサン共重合体、特にアルコキシル化2−(3−ヒドロキシプロピル)へプタメチルトリシロキサン(通常7〜20、好ましくは7〜12のエチレンオキシド単位からなるブロックと、2〜20、好ましくは2〜10のプロピレンオキシド単位からなるブロックを有し、着色料調製物中に0.05〜1質量%の量で使用可能である)に基づく湿潤界面活性剤)、沈降防止剤、光沢改良剤、滑剤、粘着性改良剤、抗剥離剤(anti-skinning agent)、つや消し剤、乳化剤、安定剤,撥水剤、光制御剤、風合い改良剤、帯電防止剤、pH調製用の塩基、例えばトリエタノールアミン、もしくは酸、例えばカルボン酸(乳酸又はクエン酸等)がある。この様な助剤が本発明のインクジェット用のインクの一部とされる場合には、本発明の着色料調製物またはインクジェット用インクの質量に対し、助剤の総量を通常2質量%、特に1質量%とする。
【0216】
一実施の形態において、本発明のインクジェット法用インクの動的粘度は、23℃で測定して、2〜80mPa.s、好ましくは3〜20mPa.sである。
【0217】
本発明のインクジェット法用インクの表面張力は、25℃で測定して、通常24〜70mN/mの範囲、25〜60mN/mの範囲にある。
【0218】
また、本発明のインクジェット法用インクのpHは、通常5〜10、好ましくは6〜9の範囲にある。
【0219】
更に、本発明では、シート状又は三次元形状の基体を、本発明のインクジェット用インクを用いてインクジェット法により印刷する。このため、本発明では、本発明のインクジェットインクで基体への印刷を行い、得られた印刷物を、必要に応じて次工程で定着させる。
【0220】
インクジェット法では、一般に水性インクを小液滴として基体に直接噴霧する。このインクジェット法では、通常水性インクを小滴状として基体に直接噴霧する。インクジェット法の一種にコンティニュアス法があり、同方法ではインクを一定割合で加圧してノズルを通過させ、印刷パターンに応じた電場に応じて、ジェット(噴流)を基体に向ける。更に、インタラプテッド又はドロップ・オン・デマンドインクジェット法があるが、この方法ではカラードットを得るべき場所にのみインクが噴出され、ドロップ・オン・デマンド法ではピエゾ電気結晶又は加熱中空ニードル(バブルジェット(登録商標)法)のいずれかを用いてインク組成物に圧力付与し、これによりインク滴を噴出する。これらの技術は、Text. Chem. Color 19 (1987), No. 8, 23-29及び21(1989)、No.6、27-32に記載されている。
【0221】
本発明のインクは、バブルジェット(登録商標)法と、ピエゾ電気結晶を用いる方法に特に好ましく使用される。
【0222】
有用な基体の例を以下に示す。
【0223】
ラッカー又は、他の被覆を有していてもよいセルロース誘導体、例えば紙、ボール紙、厚紙、木材及び木製基材、
ラッカー又は、他の被覆を有していてもよい金属材料、例えばアルミニウム、鉄、銅、銀、金、亜鉛もしくはこれらの合金から成るフォイル、シート、又は半加工品、
ラッカー又は、他の被覆を有していてもよい珪素含有例えばガラス、磁器、セラミック、
あらゆる種類の高分子材料、例えばポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、メラミン樹脂、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリカルボナート、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン及び対応の共重合体及びブロック共重合体、生分解可能ポリマー及び天然ポリマー、例えばゼラチン、
皮革(天然及び人工の双方)、平坦皮革、ナパ皮革、またはスエード皮革、
食料品及び化粧品、
及び特に、繊維材料、例えば繊維、ヤーン、糸、ニット、織布、不織布、及び衣料用材料であって、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステルブレンド繊維、セルロース誘導体(綿、綿混合繊維、ジュート、フラックス、麻及びラミー)、ビスコース、ウール、シルク、ポリアミド、ポリアミド混合繊維、ポリアクリロニトリル、トリアセタート、アセタート、ポリカルボナート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルマイクロファイバー及びガラスファイバー繊維から成るもの。
【0224】
本発明のインクジェット法用の本発明のインクは、有利な利用特性、特に良好な印刷開始挙動、及び良好な持続的使用挙動(kogation)を有する。さらに、特に好ましい溶媒の組み合わせが用いられる場合には良好な乾燥特性を有する。また、本発明のインクによると、高光沢及び色合い(明暗の程度)、及び高い摩耗堅牢性、光堅牢度、水堅牢度(耐水性)及び湿潤摩耗堅牢度(耐湿潤性)等を有する高品な印刷イメージが得られる。本発明のインクは被覆を有する又は有さない紙及び織物の印刷に特に有効である。
【0225】
本発明によると、本発明の上記いずれか方法により印刷された基体、特に織物基体を提供することが可能であり、特に同基体は明快な(crispy)印刷イメージ又は図柄、および良好な手触りに関して優れている。
【0226】
本発明の他の実施の形態では、2種類以上、好ましくは3種類以上の異なるインクジェット用インクを一組として併用してもよい。これにより得られたインクは、本発明の方法により処理された、それぞれ異なる色の異種顔料を含むことになる。
【0227】
以下、実施例により本発明を更に説明する。
【実施例】
【0228】
[予備的事項総括]
高剪断力は、いずれも超音波処理により付与する。本実施例における超音波処理は、それぞれBranson Sonifier W 450 ultrasonificatorを振幅100%、パルス50%にて用いて行われる。
【0229】
本発明により処理された顔料粒子の粒径分布は、ISO 13321に準じ、Malvern社製、2CAutosizerにより測定した。測定結果は数平均粒径として記載した。
【0230】
使用した顔料は、すべて以下の特性を有するカーボンブラックである(以下、カーボンブラックという)。すなわち、数平均一次粒径:16nm、電子顕微鏡法により測定。BET表面積:窒素吸着法により343m2/g。同カーボンブラックはCabot Monarch(登録商標)1000として市販されている。
【0231】
1. 本発明の水性一次分散液の製造
[実施例1]
[ミニエマルジョン1の製造]
攪拌下のビーカーで、20℃にて、Mn分子量1000g/モルの3gのポリテトラヒドロフランと、0.3gのエチレングリコールと、2.0gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)とを混合した。1.4gの15質量%のドデシル硫酸ナトリウムの水溶液と、30.4gのイオンを全く含まない水との混合物を添加し、200rpmにて1分間、入念に攪拌した。マクロエマルジョンが得られ、次いでこれを氷浴を用いて0℃に冷却し、氷冷下に90秒間超音波処理してミニエマルジョン1を得た。
【0232】
[一次分散液1の製造]
4gのカーボンブラックを、4.4gの15質量%のドデシル硫酸ナトリウムの水溶液及び22.7gのイオンを全く含まない水とともに、20℃にて1時間攪拌した。次いで、これを氷浴にて0℃に冷却し、氷冷却下に2分間超音波処理を行い、予備分散顔料1を得た。
【0233】
ミニエマルジョン1と予備分散顔料1とをビーカーで混合し、氷冷下に120秒間超音波処理した。
【0234】
上記処理の後、ジラウリン酸ジブチル錫(DBTL)を2滴添加し、氷浴を除去して60℃にて4時間加熱した。孔径125μm、40μm及び5μmのネットで混合物のろ過を行い、固体含有率10質量%(水含有率:90質量%)の本発明の水性一次分散液を得た。平均粒径:101nm。
【0235】
[実施例2]
[ミニエマルジョン2の製造]
攪拌下のビーカーで、20℃にて、Mn分子量1000g/モルの2.5gのポリテトラヒドロフランと、0.34gの1,4−ブタンジオールと、0.11gのトリメチロールプロパンと、0.12gのn−ヘキサデカンと、1.67gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)とを混合した。1.2gの15質量%のドデシル硫酸ナトリウムの水溶液と、26.8gのイオンを全く含まない水との混合物を添加し、200rpmにて1分間、入念に攪拌した。マクロエマルジョンが得られ、次いでこれを氷浴を用いて0℃に冷却し、氷冷下に90秒間超音波処理してミニエマルジョン2を得た。
【0236】
[一次分散液2の製造]
4gのカーボンブラックを、4.4gの15質量%のドデシル硫酸ナトリウムの水溶液及び22.7gのイオンを全く含まない水とともに、20℃にて1時間攪拌した。次いで、これを氷浴にて0℃に冷却し、氷冷却下に2分間超音波処理を行い、予備分散顔料2を得た。
【0237】
ミニエマルジョン2と予備分散顔料2とをビーカーで混合し、氷冷下に120秒間超音波処理した。
【0238】
上記処理の後、ジラウリン酸ジブチル錫(DBTL)を2滴添加し、氷浴を除去して60℃にて4時間加熱した。孔径125μm、40μm及び5μmのネットで混合物のろ過を行い、固体含有率6.2質量%(水含有率:93.8質量%)の本発明の水性一次分散液を得た。平均粒径:104nm。
【0239】
[実施例3]
[ミニエマルジョン3の製造]
攪拌下のビーカーで、20℃にて、Mn分子量1000g/モルの1.6gのポリテトラヒドロフランと、1.03gの2,2−ブチレンプロパン−1,3−オールと、2.13gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)とを混合した。0.3gの平均エトキシル化度2.5のC12アルキルポリエトキシスルファートの28質量%溶液と、27.3gのイオンを全く含まない水との混合物を添加し、1分間、入念に攪拌した。マクロエマルジョンが得られ、次いでこれを氷浴を用いて0℃に冷却し、氷冷下に90秒間超音波処理してミニエマルジョン3を得た。
【0240】
[一次分散液3の製造]
4gのカーボンブラックを、4.4gの15質量%のドデシル硫酸ナトリウムの水溶液及び22.7gのイオンを全く含まない水とともに、20℃にて1時間攪拌した。次いで、これを氷浴にて0℃に冷却し、氷冷却下に2分間超音波処理を行い、予備分散顔料3を得た。
【0241】
ミニエマルジョン3と予備分散顔料3とをビーカーで混合し、氷冷下に120秒間超音波処理した。
【0242】
上記処理の後、ジラウリン酸ジブチル錫(DBTL)を2滴添加し、氷浴を除去して60℃にて4時間加熱した。孔径125μm、40μm及び5μmのネットで混合物のろ過を行い、固体含有率5.7質量%(水含有率:94.3質量%)の本発明の水性一次分散液を得た。平均粒径:86nm。
【0243】
[実施例4]
[ミニエマルジョン4の製造]
攪拌下のビーカーで、20℃にて、アジピン酸と1,4−ブタンジオールから製造された2.7gのポリエステルジオール(OH数:141、DIN53240により測定)と、0.61gの1,4−ブタンジオールと、0.14gのn−ヘキサデカンと、2.26gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)とを混合した。1.5gの15質量%のドデシル硫酸ナトリウム水溶液と、25.1gのイオンを全く含まない水との混合物を添加し、200rpmにて1分間、入念に攪拌した。マクロエマルジョンが得られ、次いでこれを氷浴を用いて0℃に冷却し、氷冷下に60秒間超音波処理してミニエマルジョン4を得た。
【0244】
[一次分散液4の製造]
4gのカーボンブラックを、4.4gの15質量%のドデシル硫酸ナトリウムの水溶液及び22.7gのイオンを全く含まない水とともに、20℃にて1時間攪拌した。次いで、これを氷浴にて0℃に冷却し、氷冷却下に2分間超音波処理を行い、予備分散顔料4を得た。
【0245】
ミニエマルジョン4と予備分散顔料4とをビーカーで混合し、氷冷下に3分間超音波処理した。
【0246】
上記処理の後、ジラウリン酸ジブチル錫(DBTL)を2滴添加し、氷浴を除去して60℃にて5時間加熱した。孔径125μm、40μm及び5μmのネットで混合物のろ過を行い、固体含有率10質量%(水含有率:90質量%)の本発明の水性一次分散液を得た。平均粒径:127nm。
【0247】
II. 使用実施例
2.1 インクジェット法でのインクの組成
ビーカーにおいて以下の成分を攪拌により混合した。
【0248】
1gの尿素
3gのトリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル
7gのポリエチレングリコール(Mn=400g/モル)、
8gのグリセロール
0.5gの20質量%ベンゾイソチアゾリン−3−オンのプロピレングリコール溶液、
0.1gの式[(CH33Si−O]2−Si(CH3)−O(CH2CH2O)8−H、
52gの完全にイオンを含まない水、
25gの本発明の一次分散液4。
【0249】
上記成分の添加によりインクジェット法用の本発明のインクII.4を得た。
インクジェット法用に本発明のインクII.4を用いて、テスト印刷を行った。
【0250】
本発明のインクを用い、Epson3000 720dpiプリンターにより紙に印刷をした。A4紙5ページに対しノズルのつまりが生じなかった。耐擦過性(摩擦堅牢性)試験において優れた値が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種類の多価イソシアネートと、
(b)ポリエーテロール、ポリエステロール、炭素原子数8以下の多価アルコール、ポリカルボネートジオール、ポリヒドロキシオレフィン、ポリヒドロキシウレタン、ポリイソブテンジオール、一分子あたり平均2個以上のヒドロキシル基を有するポリシロキサン、及びラクトン系ポリエステルジオールからなる群から選択されるイソシアネート反応性基を有する少なくとも1種類の化合物と、
を、顔料、水、及び必要に応じて1種類以上の界面活性剤と混合し、相互に反応させることを特徴とするポリマー被覆を有する顔料の水性一次分散液を製造する方法。
【請求項2】
成分(a)、成分(b)、水、及び顔料を混合し、モノマー液滴の平均粒径が20〜1000nmのミニエマルジョンを製造することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
すくなくとも1種類の顔料が有機顔料又はカーボンブラックであることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
顔料を予備分散形態で使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
成分(a)又は(b)を界面活性剤として使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
1種類以上のラジカル重合可能なモノマーを成分(c)として添加することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法により製造された水性一次分散液。
【請求項8】
含水率が30質量%〜95質量%の範囲にあることを特徴とする請求項7に記載の水性一次分散液。
【請求項9】
皮革の仕上げのために、請求項7又は8に記載の水性一次分散液を使用する方法。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の少なくとも1種類の水性一次分散液を用いて仕上げされた皮革。
【請求項11】
請求項7又は8に記載の水性一次分散液の織物印刷における使用法。
【請求項12】
請求項7又は8に記載の少なくとも1種類の水性一次分散液により着色された織物。
【請求項13】
請求項7又は8に記載の少なくとも1種類の水性一次分散液を含む印刷ペースト。
【請求項14】
請求項7又は8に記載の少なくとも1種類の水性一次分散液により被覆された繊維状基体。
【請求項15】
請求項7又は8に記載の水性一次分散液をインクジェット法に用いられるインクとして、又は該インクを製造するために使用する方法。
【請求項16】
請求項7又は8に記載の少なくとも1種類の水性一次分散液を含むインクジェット法用のインク。
【請求項17】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法と、次いで行われる乾燥処理の適用により得られる、被覆を有する顔料。
【請求項18】
最初に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法により水性一次分散液を製造し、次いで乾燥処理により被覆を有する顔料を単離することを特徴とする被覆を有する顔料の製造方法。

【公表番号】特表2007−514815(P2007−514815A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544334(P2006−544334)
【出願日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014327
【国際公開番号】WO2005/058992
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(595123069)ビーエーエスエフ アクチェンゲゼルシャフト (847)
【氏名又は名称原語表記】BASF Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【出願人】(506209857)マクス−プランク−ゲゼルシャフト、ツール、フェルデルング、デァ、ヴィセンシャフテン、イー、ファウ (5)
【Fターム(参考)】