説明

重合可能なモノマーと、フリーラジカル開始剤とを含む、フリーラジカル硬化性組成物

本発明は、一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物であって、少なくとも1種の式(I)のフリーラジカル重合可能なモノマーと、少なくとも1種のフリーラジカル開始剤とを含む組成物に関する。これらの組成物は、特に、接着剤、シーリング材、またはコーティングとして好適に使用することができる。これらの組成物は、硬化の前および後のいずれでも臭気が非常にわずかであり、良好な接着性、特にプラスチックに対する良好な接着性に加えて、硬化後に優れた機械的特性を有し、したがって屋内での使用にも好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル重合可能なモノマーの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
フリーラジカル重合可能なモノマー、より特に、α,β-不飽和モノマーは、知られており、長い間使用されてきた。これらは、コーティング、接着剤、およびシーリング材として長い間使用され、光、より特にUV光によって形成された、あるいは熱的に形成されたフリーラジカルによって重合されてきた。
【0003】
フリーラジカル重合のためのこのようなモノマー、より特に(メタ)アクリレートモノマー類には、商業的に入手可能なものが広範囲に存在する。
【0004】
需要に基づいて、低い固有の臭気を有するモノマーであって、硬化後に、良好な機械的特性と、より特に高いガラス転移温度とを示し、さらに、広範囲な基材、特にプラスチックに対する良好な接着性も有するモノマーに対する強い要求がある。
【0005】
R.F. Talipovの、Russian Journal of Organic Chemistry, Vol. 29, No. 7, 1993, 1205-1207には、さまざまなヒドロキシテトラヒドロフリルエステルの製造が、アクリル酸およびメタクリル酸とのエステルの製造も含めて記載されており、さらに、3-ヒドロキシテトラヒドロフランとその誘導体類が、生物活性化合物としていかに興味深いかが、特にAIDSウイルスとの関係で記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R.F. Talipov、Russian Journal of Organic Chemistry, Vol. 29, No. 7, 1993, 1205-1207
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、したがって、フリーラジカル硬化性組成物であって、低い固有の臭気を有し、硬化後に、良好な機械的特性と、より特に高いガラス転移温度とを示し、さらに、広範囲な基材、より特にプラスチックに対する良好な接着性も有する組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
驚くべきことに、3-ヒドロキシテトラヒドロフランの特定のエステルを含む請求項1に記載の組成物が、この目的を達成することが見出された。
【0009】
これらの組成物は、硬化の前および後のいずれにおいても、非常に低い臭気を有し、かつ、硬化後に、優秀な機械特性を有すると同時に、高い接着性、より詳細にはプラスチックに対する高い接着性を有する。
【0010】
これらの組成物は、より詳細には、接着剤またはシーリング材として採用することができ、熱的に、あるいは電磁放射線によって、重合させることができる。
【0011】
本発明の別の態様は、請求項21に記載の接着結合方法、または請求項22に記載のコーティング方法であり、その結果得られる請求項23または25の接着結合した物品またはコーティングされた物品である。
【0012】
最後に、本発明は、式(I)の3-ヒドロキシテトラヒドロフランの特定のエステルの、塗布のためのモノマーの、特に、このモノマーの硬化後に、60℃より高い、より特に80℃より高い使用温度を有する接着剤としての使用にも関する。
【0013】
このモノマーの固有の臭気が低いことに起因して、これらは、請求項28に記載の、閉じているかまたは換気が困難な室内における塗布のための使用にとりわけ好適である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、少なくとも1種の式(I) のフリーラジカル重合可能なモノマー:
【化1】

(式中、R1は、H、CH3、CH2-CH3、またはCH2COOR4であり、
R2は、H、CH3、CH2-CH3、フェニル、CH=CH-CH3、COOR4、またはCH2COOR4であり、かつ、
R3は、H、CH3、COOR4、またはCH2COOR4であり、
最後に、R4は、H、アルキル、シクロアルキル、フェニル、または下記式:
【化2】

である)と、
少なくとも1種のフリーラジカル開始剤と
を含む、一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を提供する。
【0015】
R4がアルキル基である場合、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルが特に好ましい。
【0016】
式(I) のフリーラジカル重合可能なモノマーは、3-ヒドロキシテトラヒドロフランと、相当するカルボン酸とをエステル化させることによって製造することができる。
【0017】
このようなカルボン酸の好適な例は、メタクリル酸、アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、チグリン酸、trans-2-ペンテン酸、桂皮酸、セネシオ酸、ソルビン酸、フマル酸、マレイン酸、メサコン酸、グルタコン酸、およびシトラコン酸である。加えて好適なものは、そのカルボン酸基が全て3-ヒドロキシテトラヒドロフランでエステル化されていない、部分的にエステル化されたジカルボン酸またはポリカルボン酸である。
【0018】
式(I) のフリーラジカル重合可能なモノマーは、3-ヒドロキシテトラヒドロフランと、相当する酸ハライドまたは酸無水物とをエステル交換反応させるによっても製造することができる。特に好適なものは、上述したカルボン酸の酸ハライドまたは無水物である。
【0019】
式(I) のフリーラジカル重合可能なモノマーを製造するための1つの非常に好ましいさらなる可能性は、式(II)のエステルのトランスエステル化反応にある。
【化3】

ここで、R5は、C1〜C6アルキル基、より特にメチルまたはエチルである。このトランスエステル化は、触媒、より特にチタネートの影響下で行う。
【0020】
式(I) の部分的にエステル化されたモノマーは、ジカルボン酸の無水物から、3-ヒドロキシテトラヒドロフランを用いて、単純な方法で製造することができる。この例は、下記式(I’)の部分的にエステル化されたモノマーであり、このモノマーは、マレイン酸無水物を用いる反応から製造することができる。
【化4】

【0021】
これらの部分的にエステル化されたモノマーは、さらなるアルコールでさらにエステル化することができる。用いるアルコール次第で、2つの異なるエステル鎖を有するジエステルを製造することができる。
【0022】
1つの好ましい実施態様では、R2 = R3 = Hであり、R1 = HまたはCH3である。CH3が特に好ましい。したがって、式(I) のフリーラジカル重合可能なモノマーは、より特に、(メタ)アクリル酸のエステル、好ましくはメタクリル酸のエステルである。
【0023】
式(I) のフリーラジカル重合可能なモノマーの製造に用いることができる3-ヒドロキシテトラヒドロフランは、商業的に入手可能であり、例えば、ABCR GmbH & Co.(独国)、Acros Organics、またはChemos GmbH(独国)から入手可能である。
【0024】
3-ヒドロキシテトラヒドロフランの可能性のある製造方法は多数あり、例えば、Daniele MartonらのTetrahedron, Vol. 45, No. 22, 1989, 7099-7108に記載されているとおり、1,2,4-ブタントリオールから製造することができる。
【0025】
式(I) のフリーラジカル重合可能なモノマーは、低い固有の臭気に関して特に注目に値する。したがって、低い固有の臭気を有する、一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を配合することも可能である。低い固有の臭気に起因して、式(I)のモノマーは、換気が困難な閉じた室内における塗布により特に好適である。このことは、床仕上げ剤または光硬化性コーティング材料としての塗布に特に需要である。
【0026】
加えて、式(I)のモノマーを使った組成物は、硬化後に、特に高いガラス転移温度を有する。この結果、式(I)のモノマーは、塗布、より詳細には、モノマーが硬化した後で、60℃より高い、より特に80℃より高い使用温度を有する接着剤としての塗布に特に好適である。
【0027】
式(I)のモノマーは、これらが合成的に非常に効率的かつ容易に得ることができ、かつ、重合の前および後の両方において加水分解に対する優れた安定性を有するという大きな利点を有する。さらに、重合後に、これらは、脆化する傾向、または、特定の他のモノマーにおいて架橋後にフリーラジカルの影響で起こる場合がある種類のさらなる架橋反応を受ける傾向が全くない。
【0028】
式(I) のフリーラジカル重合可能なモノマーの割合は、一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物の割合として、10質量%〜99質量%、より特に30質量%〜95質量%であることが好ましい。
【0029】
一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物は、少なくとも1種のフリーラジカル開始剤を含む。フリーラジカル開始剤は、より詳細には、熱または電磁放射線の影響下で、フリーラジカルを発生し、次いで式(I)のフリーラジカル重合可能なモノマーの重合反応を引き起こす分子である。
【0030】
熱的に活性化することができるフリーラジカル開始剤は、より特に、室温ではなお十分に安定であるが、わずかに高められた温度でフリーラジカルを発生するフリーラジカル開始剤であることが好ましい。より特に、フリーラジカル開始剤は、パーオキシド、パーエステル、またはヒドロパーオキシドである。有機パーオキシドが好ましい。最も好ましいフリーラジカル開始剤は、ジベンゾイルパーオキシドである。
【0031】
光開始剤は、電磁放射線の影響下でフリーラジカルを発生するフリーラジカル開始剤である。より特に、230 nm〜400 nmの波長の電磁放射線を使用して照射するとフリーラジカルを発生するフリーラジカル開始剤である。加えて、光開始剤は、室温で液体であることが好ましい。
【0032】
特に好ましくは、光開始剤は、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート類、モノアシルホスフィン、ジアシルホスフィン、ホスフィンオキシド、およびこれらの混合物からなる群から選択され、より特に、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、メチルフェニルグリコキシレート、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルヒドロキシフェニルアセテート、2-[2-ヒドロキシエトキシ]エチルヒドロキシフェニルアセテート、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、およびこれらの混合物からなる群から選択される。この種の光開始剤は、例えば、Ciba Specialty Chemicals 社のIRGACUREおよびDAROCUR製品系列から商業的に入手可能である。
【0033】
光開始剤の混合物、より特に、ビスアシルホスフィンオキシドと、α-ヒドロキシケトンとの組合せが、とりわけ好適であることが判明した。最も好ましい光開始剤は、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドと、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノンとの混合物である。
【0034】
フリーラジカル開始剤が、パーオキシド、パーエステル、またはヒドロパーオキシドである場合、組成物が、触媒として、少なくとも1種の第三級アミン、遷移金属塩、または遷移金属錯体をさらに含むことが有利である。この触媒の存在の効果は、フリーラジカルがより低い温度、より特に室温で発生することである。好適な第三級アミンの例は、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ジエチルアニリン、N,N-ジエチルトルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N-エトキシル化p-トルイジン、N-アルキルモルホリン、またはこれらの混合物である。特に好適な遷移金属塩または遷移金属錯体は、より特に、コバルト、マンガン、バナジウム、および銅の金属の塩および錯体である。
【0035】
好ましい触媒は、第三級アミンである。
【0036】
触媒の割合は、一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物の割合として、0.01質量%〜10質量%、より特に0.1質量%〜5質量%であることが好ましい。
【0037】
フリーラジカル開始剤の割合は、一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物の割合として、0.01質量%〜15質量%、より特に0.1質量%〜10質量%であることが好ましい。
【0038】
本組成物は、少なくとも1種のフリーラジカル重合可能なさらなるモノマーMを含むことが有利である。このモノマーMは、より特に、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸のエステル、α,β-不飽和カルボン酸のアミド、α,β-不飽和カルボン酸の無水物;α,β-不飽和ジカルボン酸、α,β-不飽和ジカルボン酸のエステル、α,β-不飽和ジカルボン酸のアミド、α,β-不飽和ジカルボン酸の無水物;ビニルアルコール類またはアリルアルコール類;ビニルカルボン酸エステル、アリルカルボン酸エステル、アクリロニトリル、およびスチレンからなる群から選択される。
【0039】
より特に、モノマーMは、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステル、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルである。
【0040】
最も好ましくは、フリーラジカル重合可能なさらなるモノマーMは、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(TMCHMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBMA)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA)、およびテトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA))からなる群から選択される。テトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA)が好ましい。
【0041】
少なくとも1種のフリーラジカル重合可能なさらなるモノマーMを組成物中に用いると、特性、より特に機械的特性を単純に変化させることが可能になるため有利となり得る。加えて、この種の混合は、コストの面からも有利となり得る。本発明では、しかし、このような混合によって、上記のプラスの特性が大幅に損なわれないように注意する必要がある。したがって、より詳細には、さらなるモノマーMとしては、硬化の前および後において、固有の臭気がほとんどないかまたは全くないものが好ましい。
【0042】
フリーラジカル重合可能なさらなるモノマーMの割合は、一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物の割合として、10質量%〜99質量%、より特に30質量%〜95質量%であることが好ましい。
【0043】
本組成物は、有利には、少なくとも1種の金属(メタ)アクリレートをさらに含む。好適な金属(メタ)アクリレートは、より詳細には、配位子または陰イオンとして、ヒドロキシ基および/または (メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリレートを有する、Ca(II)、Mg(II)、またはZn(II)の金属(メタ)アクリレートである。
【0044】
亜鉛(メタ)アクリレート、カルシウム(メタ)アクリレート、Zn(OH) (メタ)アクリレート、およびマグネシウム(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0045】
金属(メタ)アクリレートの割合は、存在する場合には、0.1質量%〜20質量%、より特に0.5質量%〜10質量%であることが好ましい。
【0046】
本組成物は、さらなる追加の成分を含有していてよい。このような追加の成分は、コアシェルポリマー、液状ゴム、有機および無機フィラー、染料、顔料、抑制剤、UV安定剤および熱安定剤、帯電防止剤、難燃材、殺生物剤、可塑剤、ワックス、流量制御剤、接着促進剤、チキソトロピー剤、および、当業者に公知のさらなる原材料および添加剤である。
【0047】
フィラーは、好ましくは10質量%〜60質量%の量で、組成物中に用いる。
【0048】
好適な重合禁止剤は、より特にヒドロキノン類、より特にヒドロキノンおよびメチルヒドロキノン、またはt-ブチル-p-クレゾールが好ましい。
【0049】
触媒に加えて、特に好適な追加の成分は、より特に、コアシェルポリマーおよび液状ゴムである。
【0050】
コアシェルポリマーは、弾性コアポリマーと合成シェルポリマーとからなる。より特に
好適なコアシェルポリマーは、架橋した弾性アクリレートまたはブタジエンポリマーのコアであって、このコア上に剛性熱可塑性ポリマーの剛性なシェルがグラフト化されているものからなる。
【0051】
特に好適なコアシェルポリマーは、有機(メタ)アクリレート中で膨潤するが溶解しないコアシェルポリマーである。
【0052】
好ましいコアシェルポリマーは、いわゆるMBSポリマーであり、Atofina社からClearstrength(登録商標)の商品名で、またはRohm and Haas社からParaloid(登録商標)の商品名で商業的に入手可能である。コアシェルポリマーは、組成物に基づいて、5質量%〜40質量%、より特に5質量%〜25質量%の量で用いることが好ましい。
【0053】
好適な液状ゴムは、より特に、ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーをベースとする液状ゴム、またはポリウレタンをベースとする液状ゴムである。液状ゴムは、好ましくは、不飽和二重結合を含む。
【0054】
特に好適な液状ゴムは、第一に、ビニル末端化ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーであって、BFGoodrich(登録商標)社またはNoveon社からHycar(登録商標)VTBNXの製品系列で商業的に入手可能な種類のものである。
【0055】
特に好適な液状ゴムとして考えられる第二のものは、(メタ)アクリレート末端化ポリウレタンポリマーである。この種のポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとから、イソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーを形成させ、次いで、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートと反応させることによって製造することができる。
【0056】
好ましいイソシアネート官能性ポリウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート、より特にジイソシアネートと、ポリオールとの、イソシアネート基当量のヒドロキシル基当量に対する比が1より大きな割合での反応生成物である。したがって、OCN-xx-NHCO-O-yy-O-CONH-xx-NCOタイプの付加体(式中、xxは、NCO基を除いたジイソシアネートを表し、かつ、yyは、OH基を除いたジオールを表す)も、本明細書におけるポリウレタンプレポリマーであると考える。
【0057】
この目的のために、基本的には、任意のポリオールHO-R-(OH)q(式中、q = 1であり、Rは、ヘテロ原子を骨格または側鎖に有するポリマー骨格である)を用いることができる。
【0058】
好ましいポリオールは、「ポリエーテルポリオール」とも呼ばれるポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリオールである。好ましいポリオールは、ジオールである。最も好ましいジオールは、ポリオキシエチレンジオール、ポリオキシプロピレンジオール、またはポリオキシブチレンジオールである。
【0059】
ポリオキシアルキレンポリオールは、低い不飽和度(ASTM D-2849-69に準拠して測定され、ポリオール1グラム当たりのミリ当量不飽和度(mEq/g)によって表される)を有していてよく、例えば、いわゆるダブルメタルシアン化物錯体触媒(DMC触媒)を用いて得ることができる。あるいは、ポリオキシアルキレンポリオールは、高い不飽和度を有していてよく、この場合、例えば、NaOH、KOH、CsOH、またはアルカリ金属アルコキシドなどのアニオン性触媒を用いて製造することができる。
【0060】
低い不飽和度、より特に0.01 mEq/g未満の不飽和度を有するポリオキシアルキレンポリオールの使用が、分子量が2000であるポリオールについて好ましい。
【0061】
基本的には、2以上のイソシアネート基を有する任意のポリイソシアネートを用いることができる。
【0062】
例としては、2,4-および2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)およびこれらの任意の混合物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタンジイソシアネートの任意の異性体、1,3-および1,4-フェニレンジイソシアネート、2,3,5,6-テトラメチル-1,4-ジイソシアナートベンゼン、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2-メチルペンタメチレン-1,5-ジイソシアネート、2,2,4-および2,4,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、1,12-ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン1,3-および1,4-ジイソシアネートおよびこれらの異性体の任意の混合物、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネートすなわちIPDI)、パーヒドロ-2,4’-および4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4-ジイソシアナト-2,2,6-トリメチルシクロヘキサン(TMCDI)、m-およびp-キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3-および1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、上述したイソシアネートの任意のオリゴマーまたはポリマー、ならびに上述したイソシアネートの任意の混合物が挙げられる。好ましいポリイソシアネートは、MDI、TDI、HDI、IPDI、およびこれらの任意の混合物である。
【0063】
ポリオールとポリイソシアネートとから製造されたこのイソシアネート末端プレポリマーを、ヒドロキシル基を含む(メタ)アクリル酸エステルと反応させる。ヒドロキシル基を含む好ましい(メタ)アクリル酸エステルは、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、またはヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートである。これら2種の反応剤を、公知の方法で、典型的には、ヒドロキシル基を含む(メタ)アクリル酸エステルが化学量論的に過剰となる量で、互いに反応させる。
【0064】
好ましい (メタ)アクリレート末端ポリウレタンポリマーは、IPDI/ポリプロピレングリコールポリウレタンプレポリマーまたはHDI/ポリプロピレングリコールポリウレタンプレポリマーと、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート又はヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートとの反応生成物である。
【0065】
液状ゴムは、組成物に基づいて、好ましくは5質量%〜40質量%の量で用いる。
【0066】
1つの好ましい実施態様では、一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物は、
− 少なくとも1種の式(I)のフリーラジカル重合可能なモノマーを、より特に20質量%〜50質量%の量で、
− 少なくとも1種のフリーラジカル開始剤、より特にパーオキシドを、より特に0.1質量%〜10質量%の量で、
− 少なくとも1種の触媒を、より特に0.1質量%〜5質量%の量で、
− 少なくとも1種のフィラーを、より特に10質量%〜60質量%の量で、
− 所望する場合、少なくとも1種のフリーラジカル重合可能なさらなるモノマーMを、より特に10質量%〜40質量%の量で、
− 所望する場合、少なくとも1種の金属(メタ)アクリレートを、より特に0.5質量%〜10質量%の量で、
− 所望する場合、少なくとも1種のコアシェルポリマーを、より特に5質量%〜25質量%の量で、含む。
【0067】
一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物は、一成分形であってよく、すなわち、1つの成分からなっていてよい。
【0068】
この種の一成分形組成物は、必要とされる時に作用するエネルギーの作用の下で重合してポリマーになる。このようなエネルギー源の非存在下または遮蔽下では、組成物は貯蔵安定であるか、あるいは少なくとも条件付きで貯蔵安定である。必要な時に作用するエネルギーは、電磁放射線または熱であってよい。この作用は、継続的なものであっても、例えば、フラッシュまたはパルスの形態の突然のものであってもよい。
【0069】
これは、一方では、大きな熱パルス、例えば、火炎、加熱ガス、または加熱した金属によるものであってよい。電磁放射線源は、さまざまであってよい。特に、太陽光、人工的な光源、例えば、レーザー、UVランプ、IR源、またはマイクロ波源などである。230 nm〜400 nmの範囲の波長にある放射線を発生する線源が好ましい。より特に、UVレーザー、および、UV硬化に採用される種類の、中圧または高圧の水銀もしくはキセノンランプが好ましい。
【0070】
このようなエネルギー源からの遮蔽は、暗所または光を通さない容器内(例えば、アルミニウム容器)に貯蔵すること、あるいは冷所(例えば、冷蔵庫または冷凍庫)に貯蔵することによって作用させる。
【0071】
一成分形組成物は、とりわけ、フリーラジカル開始剤が光開始剤である場合に有利である。この種の組成物は、光の非存在下で室温で有利に貯蔵することができ、特に光源を用いることによって硬化する。
【0072】
一成分形組成物は、特に、光硬化性コーティング材料として採用することができる。
【0073】
一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物は、二成分形であって、第一成分K1と、第二成分K2とからなっていてよい。この場合において、
第一成分K1は、式(I)のフリーラジカル重合可能なモノマーを少なくとも含み、所望する場合には、触媒として、第三級アミン、遷移金属塩、または遷移金属錯体を含み、
第二成分K2は、フリーラジカル開始剤として、パーオキシド、パーエステル、またはヒドロパーオキシドを少なくとも含む。
【0074】
1つの実施態様では、
第一成分K1は、式(I)のフリーラジカル重合可能なモノマーを少なくとも含み、フリーラジカル開始剤として、パーオキシド、パーエステル、またはヒドロパーオキシドを少なくとも含み、
第二成分K2は、触媒として、第三級アミン、遷移金属塩、または遷移金属錯体を含む。この実施形態は、重合後の硬化した組成物が低いフィルム厚さを有すべき場合にとりわけ有利である。
【0075】
必要に応じて、この二成分を、互いに混合し、重合させる。これら二成分は、互いに別個に、貯蔵安定、あるいは条件付きで貯蔵安定である。これら二成分を、凍結して貯蔵する必要はない。
【0076】
混合は、例えばスパチュラなどの混合手段を用いることによって手動で、あるいはスタティックミキサーまたはダイナミックミキサーによって行うことができる。
【0077】
一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物は、可能性のある用途が非常に多様である。より特に、コーティング、シーリング材、または接着剤として使用することができる。加えて、本組成物は、成型品、例えば、光学レンズなどの製造に用いることができる。
【0078】
コーティングには、特に、ワニスまたは被覆剤が含まれる。1つの特に重要な用途分野は、金属もしくはプラスチックのコーティングのため、または紙もしくはプラスチックのコーティングのために使用される種類の、光硬化性コーティング材料の分野である。被覆剤には、特に、床仕上げ剤が含まれる。
【0079】
コーティングとしてのさらなる好ましい用途は、いわゆるプライマーの用途である。プライマーは、プライマーに塗布されるさらなる材料と一緒になった基材上のコーティングであり、接着促進機能を有する。
【0080】
コーティングの場合、特に採用される方法は、以下の工程:
i´) 上述した一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を、基材S1に適用する工程と、
ii´) 前記一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を硬化させる工程と
を含む方法である。
【0081】
工程i´) の後に、この組成物に電磁放射線を照射する工程i´´)が続くことが好ましい。基材S1の可能性のある実施態様および好ましい実施態様は、以下に記載する接着結合方法において言及する実施態様と同じである。
【0082】
本方法の結果物は、コーティングされた物品である。
【0083】
一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物、特に二成分形の形態のフリーラジカル硬化性組成物は、より好ましくは、接着剤またはシーリング材として用いられる。
【0084】
2つの基材S1およびS2の接着結合においては、以下の工程:
i) 上述した一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を、基材S1に適用する工程と、
ii) 可使時間内に、前記適用した組成物を第二の基材S2に接触させる工程と
を含む方法、あるいは、
ia) 上述した一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を、基材S1に適用する工程と、
ib) 上述した一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を、基材S2に適用する工程と、
iia) 可使時間内に、前記2つの基材S1および基材S2を、適用した組成物を使って結合させる工程と
を含む方法であって;
前記第二の基材S2は、基材S1と同一の材料であるかまたは基材S1とは異なる材料からなり;かつ
多成分形の組成物である場合には、その複数の成分を少なくとも部分的に混合する工程I)を、工程i)、または工程ia)および工程bi)の前に含む方法
が用いられる。
【0085】
基材S1および/またはS2は、さまざまな性質であってよい。しかし、本組成物は、特にプラスチックにも優れた接着性を有することが判明した。したがって、少なくとも1つの基材(S1またはS2)は、プラスチック、より特に、PVC、ABS、ポリカーボネート、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)(PMMA)、ポリエステル、ポリアミド、修飾されたポリエチレンもしくはポリプロピレン(例えば、大気圧または低圧プラズマで前処理されたポリエチレンもしくはポリプロピレンなど);ポリスチレンおよびスチレンのコポリマー(例えば、ASAおよびSANなど)からなる群から選択されるプラスチックであることが好ましい。
【0086】
加えて、基材は、繊維材料、より特に、紙またはカード、とりわけ印刷された紙;または金属材料、より特に、アルミニウム、鉄、銅、またはこれらのアロイ(例えば、スチールなど);またはコンピュータのボード、プリント基板、または鉱物物質、より特に、ガラス、ガラスセラミック、コンクリートまたは石造建築物であってよい。
【0087】
基材は、シート状または厚い層状の素材であってよい。
【0088】
基材は、必要に応じて、組成物を適用する前に前処理されていてもよい。この種の予めの処理には、物理的および/または化学的洗浄方法、例えば、研磨、サンドブラスト、ブラッシングなど、またはクリーナーまたは溶剤を用いる処理、または接着促進剤、接着促進溶液、もしくはプライマーの適用などが包含される。
【0089】
本方法により、結果的に接着結合した物品が得られる。このような物品は、好ましくは、輸送手段、より特に自動車、バス、ローリー、鉄道車両、ボートもしくは航空機、工業的に製造される物品もしくは内装部品である。
【0090】
記載した一成分形または多成分形の組成物には、より特に、工業的な製造、とりわけ、車両および日用品の製造、ならびに、建物、とりわけ建築および土木建築の製造における用途がある。
【0091】
このような例は、家屋、ガラスの壁面、窓、浴槽、浴室、台所、屋根、橋、トンネル、道路、自動車、ローリー、鉄道車両、バス、ボート、ミラー、グレージングシート、たらい、家電製品、家庭用品、食器洗い機、洗濯機、およびこれらの内部およびこれらの上に据え付ける構成部品である。
【0092】
本発明のさらなる態様は、一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物から硬化させる工程によって得られる、硬化した組成物である。
【実施例】
【0093】
[3−THF−MAの製造]
【化5】

10 gの3-ヒドロキシテトラヒドロフランおよび22.7 gのメチルメタクリレートを導入した。この混合物に、テトラ-n-ブチルチタネートを触媒として添加し、この反応混合物を90℃に加熱した。形成されたメタノールは、20 cmのVigreusカラムによる蒸留によって除去した。この混合物を150℃にて4時間加熱した後、後処理した。
【0094】
後処理のために、このバッチを200 mlの水と混合し、有機相を分離した。水性相をヘキサンで2回抽出した。この後、有機相をMgSO4で無水にし、濾過した後で濃縮した。これにより、16.51 gの粗3-ヒドロキシTHFMA生成物が得られた。
【0095】
次いで、高真空(0.06 bar、50℃)下での蒸留により、メタクリル酸の3-ヒドロキシテトラヒドロフリルエステル(「3−THF−MA」)が13.6 g得られた(理論の76%)。
IRスペクトル (ATR, Perkin Elmer ATR-FTIR) [cm-1]: 2957 (m), 2983 (m), 2866 (m), 1714 (s), 1636 (m), 1451 (m), 1381 (w), 1354 (w), 1315 (m), 1295 (s), 1159 (s), 1110 (m), 1082(s), 1010 (m), 976 (m), 940 (m), 911 (m), 815 (m), 732 (w), 653 (w). (w = 弱, m = 中, s = 強)
【0096】
[3−THF−Aの製造]
【化6】

製造および精製は、3−THF−MAの製造および精製と同様の方法で行い、メチルメタクリレートを、化学量論的に当量のメチルアクリレートに置き換える。これにより、アクリル酸の3-ヒドロキシテトラヒドロフリルエステル(3−THF−A)が得られる。
IRスペクトル (ATR, Perkin Elmer ATR-FTIR) [cm-1]: 2985 (m), 2867 (m), 1719 (s), 1635 (m), 1619 (m), 1440 (m), 1408 (s), 1352 (w), 1296 (s), 1272 (s), 1186 (s), 1110 (m), 1081(s), 1047 (s), 971 (s), 910 (m), 862 (w), 810 (m), 740 (w), 662 (w). (w = 弱, m = 中, s = 強)
【0097】
[光硬化性コーティング材料としての例示組成物]
表1の詳細のとおりの組成物を製造した。この組成物を、ガラス板(フロートガラス、Rocholl(独国)、スズ面を下にする)に、丸くしたドクターブレード(ブラック(4))を使用して、40μmの厚さのフィルム厚さで適用し、UVランプ((Dr Honle Uvaprint 100 CV2、200 W/cm2、ガリウムをドープしたHgランプ、最大値 300 nm/420 nm)を使用して30秒間照射した。こうして硬化させたフィルムを、その後即座に、指による粘着性(tack)についての評価をした。この評価を、23℃/50%相対湿度で2時間貯蔵した後に繰り返した。
【0098】
次いで、このフィルムをDIN EN 2409に準拠したクロスカット試験(cross-cut test)、および指の爪の試験(fingernail test)にかけた。
【0099】
これらの試験の結果を表1にまとめた。
【0100】
【表1】

【0101】
[接着剤としての例示組成物]
表2に従った二成分形組成物を以下のとおりに調製した。
【0102】
成分K1:液状ゴムをモノマーに溶解させ、触媒を添加し、組成物を、コアシェルポリマーおよびフィラーと、撹拌しながら混合し、減圧下で脱気した。得られたこのペーストを、同軸のツインカートリッジの1:10に分配された大きい容器に入れ、固く密封した。
【0103】
成分K2:ジベンゾイルパーオキシド、可塑剤、およびフィラーを互いに緊密に混合してペーストを得た。このペーストを、同軸のツインカートリッジの1:10に分配された小さい容器に入れ、固く密封した。
【0104】
このようにして製造した二成分形カートリッジを、23℃/50%相対湿度にて貯蔵し、24時間以内に測定に用いた。
【0105】
[試験方法]:
機械的特性および接着結合を特徴付けるために、表2に従った組成物を、10:1の体積比で混合した。
【0106】
引張強さ(「TS」)を、23℃にてISO 527に準拠して測定した。
【0107】
破断伸び(「EB」)を、23℃にてISO 527に準拠して測定した。
【0108】
引張剪断強さ(「TSS」)を、ISO 4587/DIN EN 1465に準拠して、Zwick/Roell Z005引張り試験機を使用して測定した〔結合領域:12 mm x 25 mm、フィルム厚さ:1.5 mm、測定速度:10 mm/分、基材:アルミニウム(100 mm x 25 mm x 2 mm)、PVC、ABS、ポリカーボネート(PC)、温度:23℃(特に指定しない限り)、前処理:Sika(登録商標)ADPrep(Sika Schweiz AG)〕。
【0109】
DIN EN 61006に準拠して、ねじり振り子を使用して、ガラス転移温度(「Tg」)を測定し、DIN EN ISO 6721-2に準拠して、貯蔵弾性率(「G」)を測定した。
【0110】
試験結果を表2に報告する。
【0111】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の式(I) のフリーラジカル重合可能なモノマー:
【化1】

(式中、R1は、H、CH3、CH2-CH3、またはCH2COOR4であり、
R2は、H、CH3、CH2-CH3、フェニル、CH=CH-CH3、COOR4、またはCH2COOR4であり、かつ、
R3は、H、CH3、COOR4、またはCH2COOR4であり、
R4は、H、アルキル、シクロアルキル、フェニル、または下記式:
【化2】

である)と、
少なくとも1種のフリーラジカル開始剤と
を含む、一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項2】
R2=R3=Hであり、R1は、HまたはCH3、より特にCH3であることを特徴とする、請求項1に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項3】
前記組成物が、少なくとも1種のフリーラジカル重合可能なさらなるモノマーMを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項4】
少なくとも1種のフリーラジカル重合可能なさらなるモノマーMが、α,β-不飽和カルボン酸、α,β-不飽和カルボン酸のエステル、α,β-不飽和カルボン酸のアミド、α,β-不飽和カルボン酸の無水物;α,β-不飽和ジカルボン酸、α,β-不飽和ジカルボン酸のエステル、α,β-不飽和ジカルボン酸のアミド、α,β-不飽和ジカルボン酸の無水物;ビニルアルコール類またはアリルアルコール類;ビニルカルボン酸エステル、アリルカルボン酸エステル、アクリロニトリル、およびスチレンからなる群から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のフリーラジカル重合可能なさらなるモノマーMが、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸エステルであることを特徴とする、請求項4に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項6】
少なくとも1種のフリーラジカル重合可能なさらなるモノマーMが、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(TMCHMA)、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)、イソボルニルメタクリレート(IBMA)、テトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA)、より特にテトラヒドロフルフリルメタクリレート(THFMA))からなる群から選択されることを特徴とする、請求項4に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項7】
前記組成物が、少なくとも1種の金属(メタ)アクリレートをさらに含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項8】
前記金属(メタ)アクリレートが、Ca(II)、Mg(II)、またはZn(II)の金属(メタ)アクリレートであり、かつ、配位子または陰イオンとして、ヒドロキシ基および/または (メタ)アクリル酸もしくは(メタ)アクリレートを含むことを特徴とする、請求項7に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項9】
前記フリーラジカル開始剤が、パーオキシド、パーエステル、またはヒドロパーオキシドであることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項10】
前記フリーラジカル開始剤が、ジベンゾイルパーオキシドであることを特徴とする、請求項9に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項11】
前記組成物が、触媒として、少なくとも1種の第三級アミン、遷移金属塩、または遷移金属錯体をさらに含むことを特徴とする、請求項9または10に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項12】
前記フリーラジカル硬化性組成物が二成分形であり、第一成分K1と、第二成分K2とからなり、
第一成分K1が、式(I)のフリーラジカル重合可能なモノマーを少なくとも含み、所望する場合には、活性化剤として第三級アミンを含み、
第二成分K2が、フリーラジカル開始剤として、パーオキシド、パーエステル、またはヒドロパーオキシドを少なくとも含む
ことを特徴とする、請求項9〜11のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項13】
前記フリーラジカル開始剤が、光開始剤であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項14】
前記光開始剤が、230 nm〜400 nmの波長の電磁放射線を照射するとフリーラジカルを発生する光開始剤であることを特徴とする、請求項13に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項15】
前記光開始剤が、室温で液体であることを特徴とする、請求項14に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項16】
前記光開始剤が、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート類、モノアシルホスフィン、ジアシルホスフィン、ホスフィンオキシド、およびこれらの混合物からなる群から選択され、より特に、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、メチルフェニルグリコキシレート、2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルヒドロキシフェニルアセテート、2-[2-ヒドロキシエトキシ]エチルヒドロキシフェニルアセテート、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、およびこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項15に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項17】
前記光開始剤が、ビスアシルホスフィンオキシドとα-ヒドロキシケトンとの組合せ、より特に、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノンとの組合せであることを特徴とする、請求項16に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項18】
前記フリーラジカル硬化性組成物が一成分形であることを特徴とする、請求項13〜17のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物の、接着剤またはシーリング材としての使用。
【請求項20】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物の、コーティング、より特にワニス、好ましくは光硬化性コーティング材としての、あるいは床仕上げ材としての使用。
【請求項21】
基材S1と基材S2とを接着結合させる方法であって、
i) 請求項1〜18のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を基材S1に適用する工程と、
ii) 可使時間内に、前記適用した組成物を第二の基材S2に接触させる工程と
を含むか、あるいは、
ia) 請求項1〜18のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を基材S1に適用する工程と、
ib) 請求項1〜18のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を基材S2に適用する工程と、
iia) 可使時間内に、前記2つの基材S1および基材S2を、適用した組成物を使って結合させる工程と
を含み;
前記第二の基材S2は、基材S1と同一の材料であるかまたは基材S1とは異なる材料からなり;かつ
多成分形の組成物である場合には、その複数の成分を少なくとも部分的に混合する工程I)を、工程i)、または工程ia)および工程ib)の前に含む、
接着結合方法。
【請求項22】
基材S1をコーティングする方法であって、
i´) 請求項1〜18のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を基材S1に適用する工程と、
ii´) 前記一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物を硬化させる工程と
を含む、コーティング方法。
【請求項23】
前記一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物が、請求項13〜18のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物であること、および、
工程i´)の後に、前記組成物に電磁放射線を照射する工程i´´)を含むこと
を特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
請求項21に記載の接着結合方法によって製造される、接着結合された物品。
【請求項25】
請求項22または23に記載のコーティング方法によって製造される、コーティングされた物品。
【請求項26】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物から、硬化させる工程によって得られることを特徴とする、硬化した組成物。
【請求項27】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物において定義したとおりの式(I)のフリーラジカル重合可能なモノマーの、塗布するためのモノマー、より特に、接着剤として塗布するためのモノマーとしての使用であって、前記モノマーの硬化後に、前記接着剤が、60℃より高い、より特に80℃より高い使用温度を有する、使用。
【請求項28】
請求項1〜18のいずれか一項に記載の一成分形または多成分形のフリーラジカル硬化性組成物において定義したとおりの式(I)のフリーラジカル重合可能なモノマーの、塗布するためのモノマー、より特に、床仕上げ材または光硬化性コーティング材料として塗布するためのモノマーとしての、閉じた室内または換気が困難な室内での使用。

【公表番号】特表2010−508379(P2010−508379A)
【公表日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−533880(P2009−533880)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【国際出願番号】PCT/EP2007/061645
【国際公開番号】WO2008/052978
【国際公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【出願人】(504274505)シーカ・テクノロジー・アーゲー (227)
【Fターム(参考)】