説明

重合性基を有する化合物を含有するネガ型感光性樹脂組成物

【課題】膜形成後に高温下で焼成しても高い透過率を維持し、液晶表示素子、有機EL表示素子、固体撮像素子等に使用されるパターン状絶縁性膜を形成するための材料やカラーフィルタ用材料等に好適なネガ型感光性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】(A)成分:フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシル基及び、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基からなる群から選択される少なくとも一種類の基を有し、且つ、数平均分子量が2,000乃至50,000であるアルカリ可溶性樹脂、
(B)成分:重合性基を2個以上有する化合物、
(C)成分:光酸発生剤、
(D)成分:酸により反応する架橋剤、
(E)溶剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物及び該組成物を用いて得られる硬化膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネガ型感光性樹脂組成物及びそれから得られる硬化膜に関する。より詳しくは、高温焼成後も高い透明性を有するネガ型感光性樹脂組成物及びその硬化膜、並びに該硬化膜を用いた各種材料に関するものである。このネガ型感光性樹脂組成物は特に液晶ディスプレイやELディスプレイ、固体撮像素子における層間絶縁膜、カラーフィルタ材料として好適である。
【背景技術】
【0002】
一般に、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子、有機EL(electroluminescent)素子等のディスプレイ素子においては、パターン形成された電極保護膜、平坦化膜、絶縁膜、カラーフィルタ等が設けられている。これらの膜を形成する材料としては、感光性樹脂組成物の中でも、必要とするパターン形状を得るための工程数が少なくしかも十分な透明性を有するという特徴を持つところの感光性樹脂組成物が、従来から幅広く使用されている。
【0003】
そして、上述のこれらの膜には低誘電率、耐熱性、耐溶剤性などのプロセス耐性に優れていること、下地との密着性が良好であること、使用目的に合わせた様々なプロセス条件でパターンを形成し得る広いプロセスマージンを有すること、加えて、高感度且つ高透明性であること並びに現像後の膜ムラが少ないこと等の諸特性が要求される。そこで、斯かる要求特性の点から、これまで従来、上記の感光性樹脂組成物としては、不飽和二重結合を有する化合物と光ラジカル開始剤を含む樹脂が汎用されてきた(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、斯かる感光性樹脂材料の要求特性の中、重要な特性の一つとして、感度が挙げられる。感度の向上は、ディスプレイ素子等の工業的な生産において、その生産時間の大幅な短縮を可能にする。このため、液晶ディスプレイの需要量が著しく増大している現在の状況にあっては、感度は、この種の感光性樹脂材料に要求される最も重要な特性の一つとなっている。
【0005】
そこで、これまでにも、感光性樹脂材料の高感度化を目的として幾つかの開発がなされている。例えば、アルカリ可溶性樹脂と光酸発生剤および酸により反応する架橋剤からなる化学増幅型感光性樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0006】
一方、これらの感光性樹脂組成物はアルカリ可溶性樹脂と光酸発生剤を併用したことによる影響として、硬化焼成時に着色し、高い透明性が得られないという問題がある。特にghi線で用いられる非イオン性光酸発生剤を用いた場合の着色は顕著である。
【0007】
このような状況から、液晶表示素子、有機EL表示素子等に使用されるパターン状絶縁性膜を形成するための材料として好適な感光性樹脂組成物、具体的には、高い透明性を有するパターン絶縁性被膜を高い精度、高いスループットで容易に形成することができる化学増幅型感光性樹脂組成物が望まれていた。
【特許文献1】特開昭62−164045号公報
【特許文献2】特開平2005−024970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課
題は、高い透明性を有するパターン絶縁性被膜を、高い精度且つ高いスループットで容易に形成することができる化学増幅型のネガ型感光性樹脂組成物を提供することにある。
【0009】
また、本発明は、斯様なネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られる硬化膜又はカラーフィルタであって、耐熱性及び耐薬品性に優れ、高い透明性が維持される硬化膜又はカラーフィルタ、並びに、斯様な硬化膜又はカラーフィルタを用いて作られる各種の素子・材料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち第1観点として、下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)溶剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物。
(A)成分:フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシル基及び、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基からなる群から選択される少なくとも1種の有機基を有し、且つ、数平均分子量が2,000乃至50,000であるアルカリ可溶性樹脂、
(B)成分:重合性基を2個以上有する化合物、
(C)成分:光酸発生剤、
(D)成分:酸により反応する架橋剤、
(E)溶剤。
第2観点として、(A)成分がアクリル重合体である、第1観点に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
第3観点として、(A)成分がスチレン重合体である、第1観点に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
第4観点として、(A)成分がポリイミド前駆体又はポリイミドである、第1観点に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
第5観点として、B)成分が、アクリレート基、メタクリレート基及びアリル基からなる群から選択される有機基を2個以上有する化合物である第1観点乃至第5観点のうちいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
第6観点として、(C)成分の光酸発生剤がスルホン酸エステル化合物である、第1観点乃至第5観点のうちいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
第7観点として、更に、(F)成分として界面活性剤を含有する、第1観点乃至第6観点のうちいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
第8観点として、第1観点乃至第7観点のうちいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られる塗膜。
第9観点として、第1観点乃至第7観点のうちいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られる硬化膜。
第10観点として、第1観点乃至第7観点に記載のネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られるカラーフィルタ。
第11観点として、第9観点に記載の硬化膜を有する表示素子。
第12観点として、第9観点に記載の硬化膜を有する液晶表示素子。
第13観点として、第10観点に記載のカラーフィルタを有する固体撮像素子。
【発明の効果】
【0011】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、高温焼成後も十分高感度であり、しかも光硬化に優れ、溶剤耐性に優れるパターン被膜を形成できる。特に、従来の化学増幅型の感光性樹脂組成物においては、酸により反応する架橋剤((D)成分)が既に含まれているため、その使用が全く検討されなかった(B)成分の化合物(多官能アクリレート)の添加により、従来問題とされていたアルカリ可溶性樹脂((A)成分)と光酸発生剤((C)成分)の併用に起因する硬化焼成時の着色を防止し、高い透明性を有する硬化膜を得ることができる。
そして該組成物は、液晶表示素子、有機EL表示素子、固体撮像素子等に使用されるパターン状絶縁性膜を形成するための材料やカラーフィルタ用材料等として好適であり、高い透明性を有する絶縁性被膜を高い精度、高いスループットで容易に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、下記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂、(B)成分の重合性基を2個以上有する化合物、(C)成分の光酸発生剤、(D)成分の架橋剤及び(E)溶剤を含有し、且つ、それぞれ所望により(F)成分の界面活性剤を含有する組成物であり、詳細には上記した化学増幅型のネガ型感光性樹脂組成物である。
以下、各成分の詳細を説明する。
【0013】
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシル基及び、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基からなる群から選択される少なくとも1種の有機基を有し、且つ、数平均分子量が2,000乃至50,000であるアルカリ可溶性樹脂である。
上記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は、斯かる構造を有するアルカリ可溶性樹脂であればよく、樹脂を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0014】
然しながら、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は、数平均分子量が2,000乃至50,000の範囲内にあるものである。数平均分子量が50,000を超えて過大なものであると、現像残渣が発生し易くなり、感度が大きく低下する一方、数平均分子量が2,000未満で過小なものであると、現像の際、露光部の膜減りが相当量発生し、硬化不足になる場合がある。
【0015】
(A)成分のアルカリ可溶性樹脂としては、例えばアクリル系樹脂、ポリヒドロキシスチレン系樹脂、あるいはポリイミド前駆体又はポリイミド等が挙げることができる。
【0016】
また、本発明においては、複数種のモノマーを重合して得られる共重合体(以下、特定共重合体と称す。)からなるアルカリ可溶性樹脂を(A)成分として用いることもできる。この場合、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は、複数種の特定共重合体のブレンド物であってもよい。
【0017】
すなわち、上記の特定共重合体は、アルカリ可溶性を発現するモノマー、即ちカルボキシル基、フェノール性ヒドロキシ基、及び、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基からなる群から選択される少なくとも一種を有するモノマーと、これらモノマーと共重合可能なモノマーの群から選択される少なくとも一種のモノマーとを、必須の構成単位として形成された共重合体であって、その数平均分子量が2,000乃至50,000のものである。
【0018】
上記の「カルボキシル基、フェノール性ヒドロキシ基、及び、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基からなる群から選択される少なくとも一種を有するモノマー」は、カルボキシル基を有するモノマー、フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマー、及び、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基を有するモノマー、さらにこれらカルボキシル基、フェノール性ヒドロキシ基、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基の二種以上の基を有するモノマーが含まれる。これらのモノマーはカルボキシル基、フェノール性ヒドロキシ基、又は、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロ
キシ基を一個有するものに限らず、複数個有するものでもよい。
【0019】
以下、上記モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものでない。
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ−(2−(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N−(カルボキシフェニル)マレイミド、N−(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、N−(カルボキシフェニル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0020】
フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、ヒドロキシスチレン、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)マレイミド等が挙げられる。
【0021】
熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基を有するモノマーとしては、例えば、tert−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、tert−ブチル−4−ビニルフェニルカーバメート等が挙げられる。
【0022】
更に、下記式(1)
【0023】
【化1】

【0024】
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1乃至10の
アルキル基を表し、R4は炭素原子数1乃至10のアルキル基を表し、或いは、R3とR4
は互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される有機基で、カルボキシル基が保護されたアクリレート又はメタクリレート等が挙げられる。
【0025】
カルボキシル基、フェノール性ヒドロキシ基、及び、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基からなる群から選択される少なくとも一種を有するモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、2−アミノエチルアクリレート、2−アミノメチルメタクリレート等が挙げられる。
【0026】
また、特定共重合体は、上述のモノマー以外のモノマー(以下、その他モノマーと称す。)をも構成単位として形成された共重合体であってもよい。
その他モノマーは、具体的には、カルボキシル基、フェノール性ヒドロキシ基、及び、
熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基からなる群から選択される少なくとも一種を有するモノマー、並びに該モノマーと共重合可能なモノマーと共重合することが可能なものであればよく、(A)成分の特性を損ねない限り、特に限定されるものでない。
【0027】
その他モノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0028】
アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0029】
メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0030】
ビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、及び、プロピルビニルエーテル等が挙げられる。
【0031】
スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0032】
マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0033】
本発明に用いる特定共重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、カルボキシル基、フェノール性ヒドロキシ基、及び、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基からなる群から選択される少なくとも一種を有するモノマーの群から適宜選ばれる少なくとも一種のモノマーと、該モノマーと共重合可能なモノマーと、所望により上記モノマー以外のその他モノマーと、所望により重合開始剤等を溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応させることにより、得られる。その際、用いられる溶剤は、特定共重合体を構成するモノマー及び特定共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する(E)溶剤に記載する溶剤が挙げられる。
このようにして得られる特定共重合体は、通常、この特定共重合体が溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0034】
また、上記のようにして得られた特定共重合体の溶液を、ジエチルエーテルや水等の撹拌下に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後、常圧又は減圧下で、常温あるいは加熱乾燥することで、特定共重合体の粉体とすることができる。このような操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤や未反応モノマーを除去することができ、その結果、精製した特定共重合体の粉体を得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解して、上記の操作を繰り返し行えば良い。
本発明においては、特定共重合体の粉体をそのまま用いても良く、あるいはその粉体を、たとえば後述する(E)溶剤に再溶解して溶液の状態として用いても良い。
【0035】
また、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂としては、ポリアミド酸、ポリアミド酸エステル、一部イミド化したポリアミド酸等のポリイミド前駆体、カルボン酸基含有ポリイミド等のポリイミドを用いることもでき、それらはアルカリ可溶性であれば特にその種類を限定されずに用いることができる。
【0036】
ポリイミド前駆体である前記ポリアミド酸は、一般的に(a)テトラカルボン酸二無水物化合物と(b)ジアミン化合物とを重縮合して得ることができる。
【0037】
上記(a)テトラカルボン酸二無水物化合物は特に限定はなく、具体例として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−テトラメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、3,4−ジカルボキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−1−ナフタレンコハク酸二無水物のような脂環式テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物のような脂肪族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。
これらは、1種単独で用いてもよく、又は2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
また、上記(b)ジアミン化合物も特に限定されることはなく、例えば、2,4−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、4,6−ジアミノ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジカルボン酸、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3,5−ジカルボキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3,5−ジカルボキシフェニル)スルホン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシ−5,5’−ジメチルビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジカルボキシ−5,5’−ジメトキシビフェニル、1,4−ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノ−3−カルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、4,6−ジアミノレゾルシノール、2,5−ジアミノハイドロキノン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキ
シフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノ−3,5−ジヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシ−5,5’−ジメチルビフェ
ニル、4,4’−ジアミノ−3,3'−ジヒドロキシ−5,5’−ジメトキシビフェニル
、1,4−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−3−ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等フェノール性ヒドロキシ基を有するジアミン化合物、1,3−ジアミノ−4−メルカプトベンゼン、1,3−ジアミノ−5−メルカプトベンゼン、1,4−ジアミノ−2−メルカプトベンゼン、ビス(4−アミノ−3−メルカプトフェニル)エーテル、2,2−ビス(3−アミノ−4−メルカプトフェニル)ヘキサフルオロプロパン等チオフェノール基を有するジアミン化合物、1,3−ジアミノベンゼン−4−スルホン酸、1,3−ジアミノベンゼン−5−スルホン酸、1,4−ジアミノベンゼン−2−スルホン酸、ビス(4−アミノベンゼン−3−スルホン酸)エーテル、4,4’−ジアミノビフェニル−3,3’−ジスルホン酸、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルビフェニル−6,6’−ジスルホン酸等スルホン酸基を有するジアミン化合物が挙げられる。また、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−メチレン−ビス(2,6−エチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2−イソプロピル−6−メチルアニリン)、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジイソプロピルアニリン)、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アニリノ)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−アミノ−4−トルイル)ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン等のジアミン化合物を挙げることが出来る。
これらは、1種単独で用いてもよく、又は2種以上の化合物を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明で用いられるポリアミド酸が(a)テトラカルボン酸二無水物化合物と(b)ジアミン化合物から製造される場合、両化合物の配合比、すなわち(b)ジアミン化合物の総モル数/(a)テトラカルボン酸二無水物化合物の総モル数は0.7乃至1.2であることが望ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1に近いほど生成するポリアミド
酸の重合度は大きくなり分子量が増加する。
【0040】
また、ジアミン化合物を過剰に用いて重合した際、残存するポリアミド酸の末端アミノ基に対してカルボン酸無水物を反応させ末端アミノ基を保護することもできる。
このようなカルボン酸無水物の例としてはフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、無水マレイン酸、ナフタル酸無水物、水素化フタル酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水イタコン酸、テトラヒドロフタル酸無水物等を挙げることができる。
【0041】
ポリアミド酸の製造において、ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物化合物との反応の反応温度は−20乃至150℃、好ましくは−5乃至100℃の任意の温度を選択することができる。高分子量のポリアミド酸を得るには、反応温度5℃乃至40℃、反応時間1乃至48時間の範囲にて適宜選択する。低分子量で保存安定性の高く部分的にイミド化されたポリアミド酸を得るには反応温度40℃乃至90℃、反応時間10時間以上から選択することがより好ましい。
また、末端アミノ基を酸無水物で保護する場合の反応温度は−20乃至150℃、好ましくは−5乃至100℃の任意の温度を選択することができる。
【0042】
ジアミン化合物とテトラカルボン酸二無水物化合物の反応は溶剤中で行なうことができる。その際に使用できる溶剤としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、N−メチルカプロラクタム、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ピリジン、ジメチルスルホン、ヘキサメチルスルホキシド、m−クレゾール、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−エトキシプロピオン酸エチル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート、エチルセロソルブアセテート、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノン等を挙げることができる。これらは単独でも、混合して使用しても良い。さらに、ポリアミド酸を溶解しない溶剤であっても、重合反応により生成したポリアミド酸が析出しない範囲で、上記溶剤に混合して使用してもよい。
【0043】
このようにして得られたポリアミド酸を含む溶液は、ネガ型感光性樹脂組成物の調製にそのまま用いることができる。また、ポリアミド酸を水、メタノール、エタノール等の貧溶剤に沈殿単離させて回収して用いることもできる。
【0044】
また、(A)成分としては、任意のポリイミドも用いることができる。本発明に用いるポリイミドとは前記ポリアミド酸などのポリイミド前駆体を化学的又は熱的に50%以上イミド化させたものである。
本発明のネガ型感光性樹脂組成物に用いるポリイミドは、アルカリ溶解性を与えるためにカルボキシル基、フェノール性ヒドロキシ基、或いは、熱又は酸の作用によりカルボン酸或いはフェノール性ヒドロキシ基を生成する基を有することが好ましい。
ポリイミドへのカルボキシル基又はフェノール性ヒドロキシ基の導入方法は、カルボキ
シル基又はフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーを用いる方法、カルボキシル基又はフェノール性ヒドロキシ基を有する酸無水物でアミン末端を封止する方法、或いは、ポリアミド酸などのポリイミド前駆体をイミド化する際にイミド化率を99%以下にする方法等が用いられる。
又、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基のポリイミドへの導入方法は、熱又は酸の作用によりカルボキシル基又はフェノール性ヒドロキシ基生成するモノマーを用いる方法、あらかじめ導入したカルボキシル基又はフェノール性ヒドロキシ基もしくはイミド化後のカルボン酸残基に熱又は酸の作用により解離する基を反応させる方法がある。
このようなポリイミドは上述のポリアミド酸などのポリイミド前駆体を合成した後、化学イミド化もしくは熱イミド化を行うことで得ることができる。
化学イミド化の方法としては一般的にポリイミド前駆体溶液に過剰の無水酢酸およびピリジンを添加し室温から100℃で反応させる方法が用いられる。また、熱イミド化の方法としては一般的に、ポリイミド前駆体溶液を温度180℃乃至250℃で脱水しながら過熱する方法が用いられる。
【0045】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、重合性基を2個以上有する化合物である。本明細書において「重合性基を2個以上有する化合物」とは、一分子中に重合性基を2個以上有し、且つそれらの重合性基が分子末端にある化合物のことを表し、その重合性基とは、アクリレート基、メタクリレート基及びアリル基からなる群より選択される少なくとも1種類の有機基のことを指す。
【0046】
この(B)成分である重合性基を2個以上有する化合物は、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の溶液において、各成分との相溶性が良好で、且つ現像性に影響を与えないという観点から、重量平均分子量が1,000以下の化合物が好ましい。
【0047】
このような化合物の具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,3,5−トリメタクリロイルヘキサヒドロ−S−トリアジン、トリス(ヒドロキシエチルアクリロイル)イソシアヌレート、トリス(ヒドロキシエチルメタクリロイル)イソシアヌレート、トリアクリロイルホルマール、トリメタクリロイルホルマール、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エタンジオールジアクリレート、エタンジオールジメタクリレート、2−ヒドロキシプロパンジオールジアクリレート、2−ヒドロキシプロパンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、イソプロピレングリコールジアクリレート、イソプロピレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、N,N’−ビス(アクリロイル)システイン、N,N’−ビス(メタクリロイル)システイン、チオジグリコールジアクリレート、チオジグリコールジメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、ビスフェノールSジア
クリレート、ビスフェノールSジメタクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジメタクリレート、ジアリルエーテルビスフェノールA、o−ジアリルビスフェノールA、マレイン酸ジアリル、トリアリルトリメリテート等が挙げられる。
【0048】
上記化合物は、市販品として容易に入手が可能であり、その具体例としては、例えばKYARAD T−1420、同DPHA、同DPHA−2C、同D−310、同D−330、同DPCA−20、同DPCA−30、同DPCA−60、同DPCA−120、同DN−0075、同DN−2475、同R−526、同NPGDA、同PEG400DA、同MANDA、同R−167、同HX−220、同HX620、同R−551、同R−712、同R−604、同R−684、同GPO−303、同TMPTA、同THE−330、同TPA−320、同TPA−330、同PET−30、同RP−1040(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、同M−240、同M−6200、同M−309、同M−400、同M−402、同M−405、同M−450、同M−7100、同M−8030、同M−8060、同M−1310、同M−1600、同M−1960、同M−8100、同M−8530、同M−8560、同M−9050(以上、東亞合成(株)製)、ビスコート295、同300、同360、同GPT、同3PA、同400、同260、同312、同335HP(以上、大阪有機化学工業(株)製)等を挙げることができる。
またこれら化合物は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
(B)成分の使用割合は、(A)成分の100質量部に対して0.5乃至70質量部であることが好ましく、より好ましくは1乃至60質量部であり、特に好ましくは3乃至50質量部である。この割合が過小である場合には、可視光領域での透過率が低下し、この割合が過大である場合には未露光部の現像性が低下しパターン間に残膜が発生する場合がある。
【0050】
<(C)成分>
(C)成分は、光酸発生剤(PAG)である。これは、露光に使用される光の照射によって直接もしくは間接的に酸(スルホン酸類、カルボン酸類など)を発生する物質であり、斯様な性質を有するものであれば、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0051】
(C)成分の光酸発生剤としては、例えば、スルホン酸化合物及びその他のスルホン酸誘導体、ジアゾメタン化合物、オニウム塩化合物、スルホンイミド化合物、ジスルホン系化合物、ニトロベンジル化合物、ベンゾイントシレート化合物、鉄アレーン錯体、ハロゲン含有トリアジン化合物、アセトフェノン誘導体化合物、及び、シアノ基含有オキシムスルホネート化合物などが挙げられる。従来知られ又は従来から使用されている光酸発生剤は、いずれも、特に限定されることなく、本発明において適用することができる。
【0052】
光酸発生剤の具体例を以下に示すが、これらは一例であり、これらの化合物に限定されるものではない。
【0053】
【化2】

【0054】
ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ジフェニルヨードニウムメシレート、ジフェニルヨードニウムトシレート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムメシレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトシレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムクロリド、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムクロリド、トリフェニルスルホニウムブロミド、トリフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホネート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリ(p−メトキシフェニル)スルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p−エトキシフェニル)スルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルホスホニウムクロリド、トリフェニルホスホニウムブロミド、トリ(p−メトキシフェニル)ホスホニウム
テトラフルオロボレート、トリ(p−メトキシフェニル)ホスホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリ(p−エトキシフェニル)ホスホニウムテトラフルオロボレート、
【0055】
【化3】

【0056】
【化4】

【0057】
【化5】

【0058】
【化6】

【0059】
【化7】

【0060】
【化8】

【0061】
【化9】

【0062】
【化10】

【0063】
本発明において(C)成分の光酸発生剤は単独で用いる事も、2種類以上組み合わせて用いる事も出来る。また、その導入量は、(A)成分の100質量部に対して0.5乃至80質量部、好ましくは1乃至30質量部の範囲で選ばれる。(C)成分の光酸発生剤の使用量が前記範囲の下限未満の過少量であると、露光の際、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂と(D)成分の酸により反応する架橋剤の架橋が十分進行せず、露光部の膜減りが大きくなったり、パターンが形成できない場合がある。一方、(C)成分の光酸発生剤の使用量が前記範囲の上限を超える過多量であると、ネガ型感光性樹脂組成物の保存安定性に劣るようになる。
【0064】
<(D)酸により反応する架橋剤>
(D)成分は、酸により反応する架橋剤である。これは、露光に使用される光の照射によって光酸発生剤((C)成分)より発生した酸(スルホン酸類、カルボン酸類など)が触媒となり、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂と架橋反応する化合物であればその種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0065】
(D)成分の酸により反応する架橋剤としては、例えば、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換された窒素原子を二つ以上有する化合物が挙げられる。
このような化合物の具体例としては、メトキシメチル化グリコールウリル、メトキシメチル化ベンゾグアナミン及びメトキシメチル化メラミン等の化合物が挙げられ、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,
6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリノン、及び1,3−ビス(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリノン等がある。また、日本サイテックインダストリーズ(株)(旧三井サイテック(株))製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名サイメル300、サイメル301、サイメル303、サイメル350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名マイコート506、マイコート508)、グリコールウリル化合物(商品名サイメル1170、パウダーリンク1174)等の化合物、メチル化尿素樹脂(商品名UFR65)、ブチル化尿素樹脂(商品名UFR300、U−VAN10S60、U−VAN10R、U−VAN11HV)、大日本インキ化学工業(株)製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名ベッカミンJ−300S、ベッカミンP−955、ベッカミンN)等を挙げることができる。
【0066】
また、このようなアミノ基の水素原子がメチロール基又はアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物及びベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよく、例えば、米国特許6323310号に記載されている、メラミン化合物(商品名サイメル303)とベンゾグアナミン化合物(商品名サイメル1123)から製造される高分子量の化合物を挙げることもできる。
【0067】
さらに、(D)成分の酸により反応する架橋剤として、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
このようなポリマーとしては、例えば、ポリ(N−ブトキシメチルアクリルアミド)、N−ブトキシメチルアクリルアミドとスチレンの共重合体、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミドとメチルメタクリレートの共重合体、N−エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートの共重合体、及びN−ブトキシメチルアクリルアミドとベンジルメタクリレートと2−ヒドロキシプロピルメタクリレートの共重合体等を挙げることができる。このようなポリマーの重量平均分子量としては、例えば1000乃至500000であり、また例えば、2000乃至200000であり、又は、3000乃至150000であり、又は、3000乃至50000である。
【0068】
本発明において、上述の(D)成分は、一種単独で用いてもよく、また二種以上を組合わせて用いてもよい。またその使用量は、(A)成分の100質量部に対して1乃至80質量部、好ましくは3乃至50質量部の割合で使用される。(D)成分の使用量が前記範囲の下限未満の過少量であると、露光の際、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂との架橋が十分進行せず、露光部の膜減りが大きくなったり、パターンが形成できない場合がある。一方、(C)成分の酸により反応する架橋剤の使用量が前記範囲の上限を超える過多量であると、ネガ型感光性樹脂組成物の保存安定性に劣るようになる。
【0069】
<(E)溶剤>
本発明に用いる(E)溶剤は、(A)成分乃至(D)成分を溶解し、且つ所望により添加される後述の(F)成分などを溶解するものであり、斯様な溶解能を有する溶剤であれば、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0070】
斯様な(E)溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセ
テート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。
これらの溶剤は、一種単独で、又は二種以上の組合せで使用することができる。
【0071】
これら(E)溶剤の中、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2−ヘプタノン、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル等が、塗膜性が良好で安全性が高いという観点より好ましい。これら溶剤は、一般にフォトレジスト材料のための溶剤として用いられている。
【0072】
<(F)成分>
(F)成分は、界面活性剤である。本発明のネガ型感光性樹脂組成物にあっては、その塗布性を向上させるという目的で、本発明の効果を損なわない限りにおいて、更に界面活性剤を含有することができる。
【0073】
(F)成分の界面活性剤としては、特に制限されないが、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤などが挙げられる。この種の界面活性剤としては、例えば、住友スリーエム(株)製、大日本インキ化学工業(株)製或いは旭硝子(株)製等の市販品を用いることができる。これら市販品は、容易に入手することができるので、好都合である。その具体的な例としては、エフトップEF301、EF303、EF352((株)ジェムコ製)、メガファックF171、F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430、FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710、サーフロンS−382、SC101、SC102、SC103、SC104、SC105、SC106(旭硝子(株)製)等のフッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0074】
(F)成分の界面活性剤は、一種単独で、又は二種以上の組合せで使用することができる。
【0075】
界面活性剤が使用される場合、その含有量は、ネガ型感光性樹脂組成物100質量%中に通常0.2質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以下である。(F)成分の界面活性剤の使用量が0.2質量%を超える量に設定されても、上記塗布性の改良効果は鈍くなり、経済的でなくなる。
【0076】
<その他添加剤>
更に、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、レオロジー調整剤、シランカップリング剤等の接着補助剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、又は多価フェノール、多価カルボン酸等の溶解促進剤等を含有することができる。
【0077】
<ネガ型感光性樹脂組成物>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂、(B)成分の重合性基を2個以上有する化合物、(C)成分の光酸発生剤、(D)成分の酸により反応する架橋剤及び(E)溶剤を含有し、それぞれ所望により、(F)成分の界面活性剤、及びその他添加剤のうち一種以上を更に含有することができる組成物である。
【0078】
中でも、本発明のネガ型感光性樹脂組成物の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分100質量部に基づいて、0.5乃至70質量部の(B)成分、0.5乃至80質量部の(C)成分、及び、1乃至80質量部の(D)成分を含有し、これら成分が(E)溶剤に溶解したネガ型感光性樹脂組成物。
[2]:上記[1]の組成物に、更に(F)成分を0.2質量%以下含有するネガ型感光性樹脂組成物。
[3]:上記[1]又は[2]の組成物に、更にその他添加剤から選ばれる少なくとも一種を含有するネガ型感光性樹脂組成物。
【0079】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、例えば1乃至80質量%であり、また例えば5乃至60質量%であり、又は8乃至50質量%である。ここで、固形分とは、ネガ型感光性樹脂組成物の全成分から(E)溶剤を除いたものをいう。
【0080】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物の調製方法は、特に限定されないが、その調製法としては、例えば、(A)成分を(E)溶剤に溶解し、この溶液に(B)成分乃至(D)成分、及び所望により(F)成分を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、或いは、この調製法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0081】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物の調製にあたっては、(E)溶剤中における重合反応によって得られる特定共重合体の溶液をそのまま使用することができ、この場合、この(A)成分の溶液に前記と同様に(B)成分乃至(D)成分などを入れて均一な溶液とする際に、濃度調整を目的としてさらに(E)溶剤を追加投入してもよい。このとき、特定共重合体の形成過程で用いられる(E)溶剤と、ネガ型感光性樹脂組成物の調製時に濃度調整のために用いられる(E)溶剤とは同一であってもよいし、異なってもよい。
【0082】
而して、調製されたネガ型感光性樹脂組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィル
タなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0083】
<塗膜及び硬化膜>
本発明のネガ型感光性樹脂組成物を半導体基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属例えばアルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)の上に、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布などによって塗布し、その後、ホットプレート又はオーブン等で予備乾燥することにより、塗膜を形成することができる。その後、この塗膜を加熱処理することにより、ネガ型感光性樹脂膜が形成される。
【0084】
この加熱処理の条件としては、例えば、温度70℃乃至160℃、時間0.3乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。加熱温度及び加熱時間は、好ましくは80℃乃至140℃、0.5乃至10分間である。
【0085】
また、ネガ型感光性樹脂組成物から形成されるネガ型感光性樹脂膜の膜厚は、例えば0.1乃至30μmであり、また例えば0.2乃至10μmであり、更に例えば0.2乃至
5μmである。
【0086】
そして、形成されたネガ型感光性樹脂膜は、形成時の加熱処理により、溶剤を除去する。この場合、加熱処理の温度が上記の温度範囲の下限よりもより低い場合には、溶剤が膜中に多く残存し目的とするパターンが形成されないことがある。また、加熱処理の温度が上記の温度範囲の上限を超えて高すぎる場合には、未露光部の架橋が進行し現像不良を起こす場合がある。
【0087】
本発明のネガ型感光性樹脂組成物から形成されるネガ型感光性樹脂膜は、所定のパターンを有するマスクを用いて紫外線、ArF、KrF、F2レーザー光等の光で露光される
と、ネガ型感光性樹脂膜中に含まれる(C)成分の光酸発生剤(PAG)から発生する酸の作用によって、該膜のうち露光部はアルカリ性現像液に不溶なものとなる。
【0088】
次いで、ネガ型感光性樹脂膜に対して露光後加熱(PEB)が行われる。この場合の加熱の条件としては、温度80℃乃至150℃、時間0.3乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。
【0089】
その後、アルカリ性現像液を用いて現像が行われる。これにより、ネガ型感光性樹脂膜のうち、露光されていない部分が除去され、パターン様のレリーフが形成される。
使用されうるアルカリ性現像液としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、コリンなどの水酸化第四級アンモニウムの水溶液、エタノールアミン、プロピルアミン、エチレンジアミンなどのアミン水溶液等のアルカリ性水溶液が挙げられる。さらに、これらの現像液には、界面活性剤などを加えることもできる。
【0090】
上記の中、水酸化テトラエチルアンモニウム0.1乃至2.38質量%水溶液は、フォトレジストの現像液として一般に使用されており、本発明のネガ型感光性樹脂組成物においても、このアルカリ性現像液を用いて、膨潤などの問題をひき起こすことなく良好に現像することができる。
【0091】
また、現像方法としては、液盛り法、ディッピング法、揺動浸漬法など、いずれも用いることができる。その際の現像時間は、通常、15乃至180秒間である。
【0092】
現像後、ネガ型感光性樹脂膜に対して流水による洗浄を例えば20乃至90秒間行い、続いて圧縮空気もしくは圧縮窒素を用いて又はスピニングにより風乾することにより、基板上の水分が除去され、そしてパターン形成された膜が得られる。
【0093】
続いて、斯かるパターン形成膜に対して、熱硬化のためにポストベークを行うことにより、具体的にはホットプレート、オーブンなどを用いて加熱することにより、耐熱性、透明性、平坦化性、低吸水性、耐薬品性などに優れ、良好なレリーフパターンを有する膜が得られる。
【0094】
ポストベークとしては、一般に、温度140℃乃至250℃の範囲の中から選択された加熱温度にて、ホットプレート上の場合には5乃至30分間、オーブン中の場合には30乃至90分間処理するという方法が採られる。
【0095】
而して、斯かるポストベークにより、目的とする、良好なパターン形状を有する硬化膜を得ることができる。
【0096】
以上のように、本発明のネガ型感光性樹脂組成物により、十分高感度であり且つ現像の
際に未露光部の現像不良を起こすことがなく、微細なパターンを有する塗膜を形成することができる。
特に、従来の化学増幅型の感光性樹脂組成物においては、酸により反応する架橋剤((D)成分)が既に含まれているため、その使用が全く検討されなかった(B)成分の化合物(多官能アクリレート)の添加により、従来問題とされていたアルカリ可溶性樹脂((A)成分)と光酸発生剤((C)成分)の併用に起因する硬化焼成時の着色を防止し、高い透明性を有する硬化膜を得ることができる。
【0097】
そのため、例えば、TFT型液晶素子のアレイ平坦化膜、液晶又は有機ELディスプレイにおける各種の膜、例えば層間絶縁膜、保護膜、絶縁膜、カラーフィルタなどの用途に好適である。
【実施例】
【0098】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0099】
[実施例で用いる略記号]
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
MAA:メタクリル酸
MMA:メチルメタクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
CHMI:N−シクロヘキシルマレイミド
CBDA:シクロブタンテトラカルボン酸二無水物
ABL:2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン
NMP:N−メチルピロリドン
TA:トリメリット酸無水物
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
P3:日本曹達(株)製VP−8000(商品名)、ポリビニルフェノール Mw8,000 (31.5%PGME溶液)
DPHA:日本化薬(株)製 KAYARAD DPHA
CYM:日本サイテックインダストリーズ(株)製 CYNEL303(商品名)
PAG1:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製 CGI1397(商品名)
R30:大日本インキ化学工業(株)製 メガファック R−30(商品名)
【0100】
[数平均分子量及び重量平均分子量の測定]
以下の合成例に従い得られる特定共重合体及び特定架橋体の数平均分子量及び重量平均分子量は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex(登録商標)カラムKF803LおよびKF804L)を用い、溶出溶媒テトラヒドロフランを流量1ml/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表される。
【0101】
<合成例1>
特定共重合体を構成するモノマー成分として、MAA 19.4g、CHMI 35.3g、HEMA 25.5g、MMA 19.8gを使用し、ラジカル重合開始剤としてAIBN 5gを使用し、これらを溶剤PGMEA 212.5g中において温度60℃乃至100℃で重合反応させることにより、(A)成分(特定共重合体)の溶液(特定共重合体濃度:32.0質量%)を得た(P1)。得られた特定共重合体のMnは4,10
0、Mwは7,600であった。
【0102】
<合成例2>
CBDA25.0g、ABL48.0gをNMP242.1中23℃で24時間反応させることでポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液にTA8.6gとNMP34.6 gを添加し23℃で24h反応させることによって、アミン末端を封止したポリアミド酸を含む溶液(特定共重合体濃度:20.0質量%)を得た(P2)。得られた特定共重合体のMnは4,000、Mwは7,400であった。
【0103】
<実施例1乃3、比較例1乃3>
次の表1に示す組成に従い、(A)成分の溶液に、(B)成分、(C)成分、(D)成分、及び(E)溶剤、更に(F)成分を所定の割合で混合し、室温で3時間撹拌して均一な溶液とすることにより、各実施例及び各比較例のネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0104】
【表1】

【0105】
実施例1乃至実施例3並びに比較例1乃至比較例3の各組成物について、それぞれ以下の手順に基づいて、高温焼成後の光透過率(透明性)、露光部の硬化率、硬化後の溶剤耐性を測定した。
【0106】
[高温焼成後の光透過率(透明性)の評価]
ネガ型感光性樹脂組成物を石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚1.5μmの塗膜を形成した。この塗膜を0.4%の水酸化テトラメチルアンモニウム(以下、TMAHと称す)水溶液に60秒間浸漬した後、超純水で20秒間流水洗浄を行った。ついで温度230℃で30分間ホットプレート上においてポストベークを行い硬化膜を形成した。この硬化膜を紫外線可視分光光度計((株)島津製作所製SHIMADSU UV−2550型番)を用いて200nm乃至800nmの波長の透過率を測定した。なお、400nm、500nm、550nmの波長の透過率を以下の表2に、350nm乃至600nmの波長の透過率の測定結果を図1(実施例1及び比較例1)、図2(実施例2及び比較例2)及び図3(実施例3及び比較例3)に示す。
なお、この評価における膜厚は、FILMETRICS社製 F20を用いて測定した。
【0107】
[光硬化率の評価]
ネガ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚1.5μmの塗膜を形成した。この塗膜にキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA−600FAにより365nmにおける光強度が5.5mW/cm2の紫外線を20秒間照射し、次いで温度
120℃で120秒間ホットプレート上において露光後加熱(PEB)を行った。この膜を0.4%水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液に60秒間浸漬し、その後超純水で20秒間流水洗浄を行った。次いで膜厚測定を行い、(光硬化率)=(浸漬後の膜厚)/(浸漬前の膜厚)とした。なお、この評価における膜厚は、FILMETRICS社製 F20を用いて測定した。
【0108】
[溶剤耐性の評価]
ネガ型感光性樹脂組成物をシリコンウェハー上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚1.5μmの塗膜を形成した。この塗膜にキヤノン(株)製紫外線照射装置PLA−600FAにより365nmにおける光強度が5.5mW/cm2の紫外線を20秒間照射し、次いで温度1
20℃で120秒間ホットプレート上において露光後加熱(PEB)を行った。この膜を温度230℃で30分間ホットプレート上においてポストベークを行い硬化膜を形成した。この硬化膜をPGMEに60秒間浸漬させた後、純水で20秒間洗浄した。その後硬化膜の測定を行い、膜の減少が観測されなかった(つまり、実際上問題となるような膜減りが無い)ものを○、膜の減少が観測されたものを×とした。なお、この評価における膜厚は、FILMETRICS社製 F20を用いて測定した。
【0109】
[評価の結果]
以上の評価を行った結果を、次の表2及び図1乃至図3に示す。なお表2において、同じ(A)成分を用いた実施例と比較例を並べて示した。
【0110】
【表2】

【0111】
表2に示すとおり、(A)成分として用いたP1乃至P3のいずれの場合においても、それに対応する実施例の透過率は比較例に比べて向上した。特にP1においては、高感度であるといえる比較例1の結果を更に上回る結果が実施例1において得られ、550nmにおいて透過率100%という極めて優れた結果を得ることができた。
これら実施例と比較例の結果の差は、図1乃至図3に示すグラフにより一層顕著となる。図1乃至図3より、350nm乃至600nmの波長範囲において、多官能アクリレート化合物((B)成分)を含有する実施例1乃至3が比較例よりも高い透過率を有するこ
とがはっきりと示された。
【0112】
また光硬化率及び溶剤耐性においては、実施例は比較例と対比してほぼ同程度という良好な結果が得られた。
すなわち、本発明のネガ型感光性樹脂組成物は、従来品の優れた性能(光硬化率及び溶剤耐性)を維持した上で、透過率において実用面で際立った改良となる結果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明によるネガ型感光性樹脂組成物は、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子、有機EL素子等の各種ディスプレイにおける保護膜、平坦化膜、絶縁膜等の硬化膜を形成する材料として好適であり、特に、TFT型液晶素子の層間絶縁膜、カラーフィルタ、アレイ平坦化膜、反射型ディスプレイの反射膜下側の凹凸膜、有機EL素子の絶縁膜等を形成する材料としても好適である。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】図1は350nm乃至600nmの波長における実施例1及び比較例1の透過率の測定結果を示すグラフである。
【図2】図2は350nm乃至600nmの波長における実施例2及び比較例2の透過率の測定結果を示すグラフである。
【図3】図3は350nm乃至600nmの波長における実施例3及び比較例3の透過率の測定結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)溶剤を含有するネガ型感光性樹脂組成物。
(A)成分:フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシル基及び、熱又は酸の作用によりカルボン酸又はフェノール性ヒドロキシ基を生成する基からなる群から選択される少なくとも1種の有機基を有し、且つ、数平均分子量が2,000乃至50,000であるアルカリ可溶性樹脂、
(B)成分:重合性基を2個以上有する化合物、
(C)成分:光酸発生剤、
(D)成分:酸により反応する架橋剤、
(E)溶剤。
【請求項2】
(A)成分がアクリル重合体である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分がスチレン重合体である、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分がポリイミド前駆体又はポリイミドである、請求項1に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分が、アクリレート基、メタクリレート基及びアリル基からなる群から選択される有機基を2個以上有する化合物である、請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
(C)成分の光酸発生剤がスルホン酸エステル化合物である、請求項1乃至請求項5のうちいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
更に、(F)成分として界面活性剤を含有する、請求項1乃至請求項6のうちいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られる塗膜。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のうちいずれか一項に記載のネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られる硬化膜。
【請求項10】
請求項1乃至請求項7に記載のネガ型感光性樹脂組成物を用いて得られるカラーフィルタ。
【請求項11】
請求項9に記載の硬化膜を有する表示素子。
【請求項12】
請求項9に記載の硬化膜を有する液晶表示素子。
【請求項13】
請求項10に記載のカラーフィルタを有する固体撮像素子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−76740(P2008−76740A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255772(P2006−255772)
【出願日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】