説明

金具付きゴム製品の成形方法及び成形用型並びに成形装置

【課題】第一のゴム部と第二のゴム部とに一つの金具が加硫接着されてなる金具付きゴム製品を優れた生産性をもって低コストに成形し得る技術を提供する。
【解決手段】成形用型40の成形キャビティ66内に、金具12を収容配置して、第一のゴム部を与える第一のキャビティ部70と第二のゴム部を与える第二のキャビティ部72とを互いに非連通に形成した後、該成形用型40に設けられるポット60内に第一の未加硫ゴム材料74を収容して、それをプランジャにて加圧することにより、該第一の未加硫ゴム材料74を前記第一のキャビティ部70内に圧入、充填するトランスファ成形操作を実施する一方、第二のキャビティ部72内に、第二の未加硫ゴム材料76を射出、充填するインジェクション成形操作を実施するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金具付きゴム製品の成形方法と、金具付きゴム製品の成形用型と、金具付きゴム製品の成形装置とに係り、特に、互いに独立した別個の部材からなる第一のゴム部と第二のゴム部とに対して、一つの金具が、互いに異なる部位においてそれぞれ加硫接着されてなる金具付きゴム製品の成形方法及び成形用型並びに成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の金具付きゴム製品は、従来から様々な機械や設備、装置の部品等として広く利用されてきており、例えば、自動車等の車両では、ボデーマウントやエンジンマウント、アッパーサポート等の金具付きの防振ゴム製品、或いはその部品(それらを総称して、金具付き防振ゴムと言う。以下、同一の意味において使用する)として、多く用いられている。
【0003】
ところで、そのような金具付きゴム製品の有利な成形方法の一つとして、例えば、内筒金具と、その周りに径方向外方に所定距離を隔てて配置された外筒金具と、それら両金具を相互に連結する本体ゴム弾性体と、外筒金具の内周面に固着された、本体ゴム弾性体とは独立した別個の部材からなるストッパゴムとを有してなる自動車用の筒型エンジンマウントの製造手法を開示する下記特許文献1に記載される如き、所謂二色射出成形手法がある。
【0004】
この金具付きゴム製品たる筒型エンジンマウントの二色射出成形手法では、先ず、成形用型の成形キャビティ内に、内筒金具と外筒金具とが同軸的に位置せしめられて、それらの両金具間に、外筒金具の内周面の一部が露呈せしめられた、第一のゴム部としての本体ゴム弾性体を与える第一のキャビティ部と、外筒金具の内周面のうちの第一のキャビティ部への露呈部位とは異なる部位が露呈せしめられた、第二のゴム部としてのストッパゴムを与える第二のキャビティ部とが、それぞれ形成される。次いで、未加硫のゴム材料が、第一のキャビティ部に開口する第一の流路と第二のキャビティ部に開口する第二の流路とを通じて、それら第一及び第二のキャビティ部内にそれぞれ射出、充填される。そして、その後、第一及び第二のキャビティ部内での未加硫ゴム材料の加硫成形操作が実施されて、本体ゴム弾性体とストッパゴムとがそれぞれ形成され、また、それと同時に、それら本体ゴム弾性体とストッパゴムとに対して、外筒金具の内周面における第一及び第二のキャビティ部内への露呈部位が、それぞれ加硫接着される。更に、本体ゴム弾性体に対しては、内筒金具が、その外周面において加硫接着される。以て、目的とする筒型エンジンマウントが得られることとなるのである。
【0005】
このような二色射出成形手法によれば、第一のゴム部としての本体ゴム弾性体と第二のゴム部たるストッパゴムとが一挙に形成されると同時に、それら本体ゴム弾性体とストッパゴムとに外筒金具が加硫接着されるため、目的とする金具付きゴム製品たる筒型エンジンマウントが、極めて効率的且つ優れた生産性をもって成形され得ることとなる。しかしながら、かくの如き金具付きゴム製品の成形方法では、高価な射出成形機が2台必要となり、そのため、実施に際して多大な経済負担が強いられるといった問題が内在していた。
【0006】
なお、第一のキャビティ部内への未加硫ゴム材料の射出、充填操作を行った後、第二のキャビティ部内への未加硫ゴム材料の射出、充填操作を行うようにして、本体ゴム弾性体とストッパゴムの加硫成形操作を段階的に実施すれば、射出成形機が1台で済み、その分だけ、設備コストが低く抑えられ得るようになる。ところが、その場合には、本体ゴム弾性体とストッパゴムの加硫成形操作を同時に進行させる二色射出成形手法を利用した従来手法に比して、目的とする金具付きゴム製品の成形サイクルが長くなって、生産効率が低下してしまうのである。
【0007】
【特許文献1】特許第3652841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここにおいて、本発明は上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、互いに独立した別個の部材からなる第一のゴム部と第二のゴム部とに対して一つの金具が加硫接着されてなる金具付きゴム製品を、優れた生産性をもって低コストに成形し得る方法を提供することにある。また、本発明にあっては、そのような金具付きゴム製品の成形方法に有利に使用可能な金具付きゴム製品の成形用型及び成形装置を提供することをも、その解決課題とするところである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして、本発明にあっては、金具付きゴム製品の成形方法に係る課題の解決のために、その要旨とするところは、互いに独立した別個の部材からなる第一のゴム部と第二のゴム部とを有すると共に、それら第一のゴム部と第二のゴム部とに対して、一つの金具が、互いに異なる部位においてそれぞれ加硫接着されてなる金具付きゴム製品を成形する方法であって、(a)目的とする金具付きゴム製品を成形する成形用型の成形キャビティ内を複数の部分に仕切るように、前記金具を該成形キャビティ内に収容配置することにより、該成形キャビティ内に、前記第一のゴム部を与える第一のキャビティ部と、前記第二のゴム部を与える第二のキャビティ部とを、互いに非連通とされ且つ該金具の互いに異なる部位がそれぞれ露呈せしめられた状態で形成する工程と、(b)前記成形用型に設けられるポットに、前記第一のゴム部を形成する第一の未加硫ゴム材料を収容した後、該ポット内に収容された第一の未加硫ゴム材料をプランジャにて加圧して、前記第一のキャビティ部内に開口する第一の流路を通じて、該第一の未加硫ゴム材料を該第一のキャビティ部内に圧入、充填するトランスファ成形操作を行うことにより、該第一のキャビティ部内で第一の未加硫ゴム材料を加硫成形して、前記第一のゴム部を形成すると共に、該第一のゴム部に対して、該金具を、該第一のキャビティ部内への露呈部位において加硫接着する工程と、(c)前記第二のキャビティ部内に開口する第二の流路を通じて、前記第二のゴム部を形成する第二の未加硫ゴム材料を該第二のキャビティ部内に射出、充填するインジェクション成形操作を行うことにより、該第二のキャビティ部内で、該第二の未加硫ゴム材料を加硫成形して、該第二のゴム部を形成すると共に、該第二のゴム部に対して、前記金具を、該第二のキャビティ部内への露呈部位において加硫接着する工程とを含むことを特徴とする金具付きゴム製品の成形方法にある。
【0010】
すなわち、この本発明に従う金具付きゴム製品の成形方法にあっては、成形用型の成形キャビティ内への金具の配置により成形キャビティ内に形成される第一及び第二のキャビティ部のうちの第一のキャビティ部内に第一の未加硫ゴム材料を圧入、充填するトランスファ成形操作と、第二のキャビティ部内に第二の未加硫ゴム材料を射出、充填するインジェクション成形操作とを同時進行で実施することによって、第一のゴム部と第二のゴム部とが一挙に形成され得ると共に、それら第一及び第二のゴム部に対して、金具が、互いに異なる部位においてそれぞれ加硫接着され得るようになる。それ故、目的とする金具付きゴム製品が、従来の二色射出成形手法を実施する場合と略同様に、十分に短い成形サイクルで効率的に成形され得ることとなる。
【0011】
また、かかる本発明手法においては、第二のゴム部がインジェクション成形操作によって加硫成形されるものの、第一のゴム部がトランスファ成形操作によって加硫成形されるものであるところから、二色射出成形手法を利用する従来手法とは異なって、使用される射出成形機が1台で済むようになる。また、トランスファ成形操作を行うために、一般的な射出成形用型に対して、第一の未加硫ゴム材料が収容されるポットが設けられると共に、かかるポット内の第一の未加硫ゴム材料を加圧するプランジャが追加されてなる構造の成形用型が用いられるものの、このような成形用型の改良コストは、射出成形機を1台準備するコストよりも十分に低く抑えられる。更に、例えば、従来のポット式トランスファ成形と同様に、プランジャが、成形用型の型締装置により、ポット内に突出乃至引込作動せしめられるような構成とすれば、プランジャを作動させるのに専用の特別な装置が不要となって、プランジャの追加に要されるコストが、より効果的に抑制され得る。
【0012】
なお、本発明に従う金具付きゴム製品の成形方法の好ましい態様の一つによれば、前記トランスファ成形操作によって加硫成形される前記第一の未加硫ゴム材料の加硫時間と、前記インジェクション成形操作によって加硫成形される前記第二の未加硫ゴム材料の加硫時間との差に応じた時間だけ、該トランスファ成形操作が、該インジェクション成形操作の開始よりも早く開始される。
【0013】
この本態様によれば、加硫時間の長いトランスファ成形操作による第一の未加硫ゴム材料の加硫成形が、加硫時間の短いインジェクション成形操作による第二の未加硫ゴム材料の加硫成形の完了と略同時に完了せしめられるようになる。それ故、例えば、トランスファ成形操作とインジェクション成形操作とが同時に開始される場合とは異なって、第二の未加硫ゴムの加硫反応が必要以上に長い時間をかけて進行せしめられ、それによって、第二のゴム部が過加硫となって、第二のゴム部の耐久性が低下するようなことが、未然に防止され得る。
【0014】
また、本発明に従う金具付きゴム製品の成形方法の別の有利な態様の一つによれば、前記トランスファ成形操作によって加硫成形される前記第一の未加硫ゴム材料の加硫時間が短縮されることにより、該トランスファ成形操作の開始から前記インジェクション成形操作の開始までの時間が短縮される。
【0015】
この本態様によれば、加硫されるべき未加硫ゴム材料の加硫時間が比較的に長くなってしまうトランスファ成形操作によって、第一の未加硫ゴム材料が第一のキャビティ部内に圧入、充填されるにも拘わらず、かかる第一の未加硫ゴム材料の加硫時間が短縮されていることによって、目的とする金具付きゴム製品が、より短い成形サイクルで効率的に成形され得る。
【0016】
また、本態様では、トランスファ成形操作の開始からインジェクション成形操作の開始までの時間が短縮されているところから、インジェクション成形操作の開始前において、金具の第二のゴム部との接着面に塗布された加硫接着剤が、第二の未加硫ゴム材料が未充填の第二のキャビティ部内に、高温状態で晒される時間が有利に短く為され得る。そして、その結果、金具の第二のゴム部との接着面に塗布された加硫接着剤が第二の未加硫ゴム材料と接触する前に、かかる加硫接着剤の硬化反応が過度に進行し、それによって、第二のゴム部の金具への接着強度の低下が惹起されるようなことが、効果的に防止され得る。
【0017】
さらに、本発明に従う金具付きゴム製品の成形方法の望ましい態様の一つによれば、前記金具付きゴム製品が金具付き防振ゴムにて構成される。
【0018】
この本態様によれば、金具付き防振ゴムが、高い生産性をもって、可及的に低コストに成形され得る。
【0019】
そして、本発明にあっては、前記せる金具付きゴム製品の成形用型に係る課題の解決のために、互いに独立した別個の部材からなる第一のゴム部と第二のゴム部とを有すると共に、それら第一のゴム部と第二のゴム部とに対して、一つの金具が、互いに異なる部位においてそれぞれ加硫接着されてなる金具付きゴム製品を成形するための成形用型であって、(a)前記金具を収容する金具収容空間部と、前記第一のゴム部を与える第一のキャビティ部と、前記第二のゴム部を与える第二のキャビティ部とを有し、且つ該金具収容空間部内に、該金具が、互いに異なる部位において、該第一のキャビティ部内と該第二のキャビティ部内とにそれぞれ露呈せしめられた状態で収容されることによって、該第一のキャビティ部と該第二のキャビティ部とが非連通に分離されるように構成された成形キャビティと、(b)前記第一のゴム部を形成する第一の未加硫ゴム材料が収容されるポットと、(c)該ポットと前記成形キャビティの第一のキャビティ部とを連通し、前記第一の未加硫ゴム材料を該ポットから該第一のキャビティ部に導く第一の流路と、(e)前記ポット内に突入せしめられることにより、該ポット内の前記第一の未加硫ゴム材料を加圧し、前記第一の流路を通じて、該第一の未加硫ゴム材料を前記第一のキャビティ部内に圧入するプランジャと、(f)前記成形キャビティの前記第二のキャビティ部内に開口し、外部から射出された、前記第二のゴム部を形成する第二の未加硫ゴム材料を該第二のキャビティ部に導く第二の流路とを含んで構成されていることを特徴とする金具付きゴム製品の成形用型をも、その要旨とするものである。
【0020】
このような本発明に従う金具付きゴム製品の成形用型を用いれば、前記せる優れた特徴を発揮する金具付きゴム製品の成形方法が、極めて有利に実施され得る。
【0021】
なお、本発明に従う金具付きゴム製品の成形用型の好適な態様の一つによれば、前記第一のキャビティ部が、前記第二のキャビティ部よりも小さな容積を有する。
【0022】
この本態様においては、第一のキャビティ部内に充填される第一の未加硫ゴム材料の量(体積)が、第二のキャビティ部内に充填される第二の未加硫ゴム材料の量(体積)よりも少なくされる。それによって、トランスファ成形操作により加硫成形される第一の未加硫ゴム材料の加硫時間が、第一の未加硫ゴム材料の量が少なくされている分だけ短くされて、インジェクション成形操作により加硫成形される第二の未加硫ゴム材料の加硫時間に可及的に近付けられ得る。
【0023】
従って、かかる本態様によれば、第一の未加硫ゴム材料の加硫時間が短縮されて、トランスファ成形操作の開始からインジェクション成形操作の開始までの時間が短縮される場合と同様に、目的とする金具付きゴム製品が、より短い成形サイクルで効率的に成形され得る。また、金具の第二のゴム部との接着面に塗布された加硫接着剤が第二の未加硫ゴム材料と接触する前に、かかる加硫接着剤の硬化反応が過度に進行して、第二のゴム部の金具への接着強度が低下するようなことも、効果的に防止され得る。
【0024】
さらに、本発明に従う金具付きゴム製品の成形用型の別の望ましい態様の一つによれば、前記金具付きゴム製品が金具付き防振ゴムにて構成される。
【0025】
この本態様によれば、金具付き防振ゴムが、高い生産性をもって、可及的に低コストに成形され得る。
【0026】
そして、本発明にあっては、前記せる金具付きゴム製品の成形装置に係る課題の解決のために、互いに独立した別個の部材からなる第一のゴム部と第二のゴム部とを有すると共に、それら第一のゴム部と第二のゴム部とに対して、一つの金具が、互いに異なる部位においてそれぞれ加硫接着されてなる金具付きゴム製品を成形するための成形装置であって、(a)前記せる特徴を有する各種の成形用型と、(b)該成形用型の前記プランジャの前記ポット内へのに突入作動と該ポット内からの引込作動を行う作動機構と、(c)前記第二の流路を通じて、前記第二の未加硫ゴム材料を前記第二のキャビティ部内に射出、充填する射出成形機とを含んで構成したことを特徴とする金具付きゴム製品の成形装置をも、また、その要旨とするものである。
【0027】
このような本発明に従う金具付きゴム製品の成形装置を用いれば、前記せる優れた特徴を発揮する金具付きゴム製品の成形方法が、極めて有利に実施され得る。
【発明の効果】
【0028】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う金具付きゴム製品の成形方法によれば、互いに独立した別個の部材からなる第一のゴム部と第二のゴム部とに対して一つの金具が加硫接着されてなる金具付きゴム製品を、十分に優れた生産性をもって、しかも可及的に低いコストで、工業的に有利に成形することが出来るのである。
【0029】
また、本発明に従う金具付きゴム製品の成形用型と金具付きゴム製品の成形装置にあっても、上記せる本発明に従う金具付きゴム製品の成形方法において奏される作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、それぞれ有効に享受され得ることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
【0031】
先ず、図1には、本発明手法に従って製造された金具付きゴム製品の一実施形態としての金具付き防振ゴムが組み付けられてなる自動車用のアッパーサポートが、その縦断面形態において、概略的に示されている。かかる図1から明らかなように、アッパーサポートは、本体ゴム弾性体10に対してインナ金具12が加硫接着された一体加硫成形品からなる本実施形態の金具付き防振ゴム14と、この金具付き防振ゴム14が内部に収容されるアウタ金具16とを有して、構成されている。
【0032】
より詳細には、図2に示されるように、金具付き防振ゴム14を構成する本体ゴム弾性体10は、ブロック状の第一のゴム部18と、この第一のゴム部18とは独立した別個の部材からなり且つ第一のゴム部18よりも十分に体積が大きなブロック形状を呈する第二のゴム部20とからなっている。また、インナ金具12は、全体として、略厚肉円筒形状を呈し、その上端部の外周面に対して、略厚肉円環板形状を呈する外フランジ部22が、一体的に周設されている。そして、このインナ金具12が、外フランジ部22の下面において、第一のゴム部18に対して、また、外フランジ部22の上面において、第二のゴム部20に対して、それぞれ加硫接着されて、一体加硫成形品が形成されており、この一体加硫成形品にて、金具付き防振ゴム14が、構成されている。
【0033】
一方、アウタ金具16は、図1から明らかなように、上方に向かって開口する高さの低い有底円筒状の下金具24と略円形の平板形態を呈する上金具26とからなっている。また、下金具24の底部の中心部と上金具26の中心部には、それらをそれぞれ厚さ方向に貫通する貫通孔28,30が、各々設けられている。そして、かかる下金具24の上方への開口部が、上金具26にて覆蓋され、且つ下金具24の上端部外周面に一体的に周設された円環板状の外フランジ部32と上金具26の外周部とが互いに重ね合わされた状態で、それら下金具24と上金具26とが同軸上で互いに組み付けられている。これによって、アウタ金具16が、内部に収容空間34が形成されてなる中空形態を有して、構成されている。なお、36は、アッパーサポートを自動車のボデー等に取り付けるための取付ボルトである。
【0034】
そして、このようなアウタ金具16の収容空間34内に、金具付き防振ゴム14が、同軸的に配置されている。また、かかる金具付き防振ゴム14のアウタ金具16内への配置状態下で、第一のゴム部18が、下金具24の底部とインナ金具14の外フランジ部22との間で挟圧保持されている一方、第二のゴム部20の全体が、アウタ金具16の上金具26と下金具24との間で挟圧保持され、また、その一部が、インナ金具12の外フランジ部22と上金具26との間で挟圧保持されている。そうして、金具付き防振ゴム14が、アウタ金具16内に、圧入された如き状態で、位置固定に収容、保持され、以て、アッパーサポートが構成されているのである。
【0035】
そして、かくの如き構造を有するアッパーサポートが、図には明示されてはいないものの、従来と同様に、アウタ金具16において、それに固定された取付ボルト36により、自動車のボデーに取り付けられる一方、下金具24の貫通孔28を通じてアウタ金具16内に突入せしめられたショックアブソーバのピストンロッドに対して、インナ金具14が外挿されて、取り付けられるようになっている。それによって、ショックアブソーバのピストンロッドと自動車のボデーとの間に介装されて、かかるピストンロッドを自動車のボデーに対して防振連結せしめ得るように構成されている。なお、図1中、38は、ショックアブソーバのシリンダに外挿されるコイルスプリングの上端部を支持する支持金具である。
【0036】
かくして、かかるアッパーサポートにあっては、ピストンロッドとボデーとの間に、それらを上下方向において接近させる方向への振動荷重が入力された際に、主に、第二のゴム部20の弾性的な圧縮変形に基づいて、かかる振動荷重が吸収される一方、ピストンロッドとボデーとの間に、それらを上下方向において離隔させる方向への振動荷重が入力された際には、主に、第一のゴム部18の弾性的な圧縮変形に基づいて、かかる振動荷重が吸収され得るようになっている。そして、ここでは、特に、第一のゴム部18が、入力振動に対して高減衰効果を発揮するばね特性を備えたゴム材料を用いて形成され、また、第二のゴム部20が、入力振動に対して低動ばね効果を発揮するばね特性を備えたゴム材料を用いて形成されており、それによって、アッパーサポートにおいて、より優れた防振性能が発揮され得るようになっている。
【0037】
ところで、このようなアッパーサポートに組み付けられる本実施形態の金具付き防振ゴム14を成形する際には、例えば、図3に示される如き構造を有する成形用型としての成形用金型40と、この成形用金型40を加熱する加熱装置と、作動機構としての型締装置と、射出成形機とを含む成形装置(成形用金型40以外は図示せず)が、好適に用いられる。
【0038】
図3から明らかなように、ここで用いられる成形装置に装備される成形用金型40は、上型42と中型44と下型46と加圧型48の四つの分割金型が、かかる順序で上から順に位置せしめられてなる基本構造を有している。
【0039】
それら四つの分割金型のうち、最上位に位置する上型42は、全体として、厚肉の矩形平板形状を有しており、図示しない型締装置の型閉じ作動や型開き作動により、下方及び上方に移動可能とされている。そして、この上型42においては、型締装置の型閉じ作動による下方への移動に伴って、直下に位置する中型44に接近せしめられて、中型44との間で型閉じされる一方、そのような型閉じ状態から、型締装置の型開き作動により上方に移動せしめられることで、中型44から離隔し、中型44との間での型閉じが解消されて、型開きされるようになっている。
【0040】
また、この上型42の中型44との型合せ面となる下面には、目的とする金具付き防振ゴム14の上面形状に対応した内面形状を有する上型側キャビティ形成凹所50が設けられている。更に、上型42においては、それを上下方向に貫通して延び、且つ上面と上型側キャビティ形成凹所50の底面とにおいてそれぞれ開口する、第二の流路としての上型側流路52が形成されている。そして、この上型42の中型44との型合せ面とは反対側の上面における上型側流路52の開口部には、射出成形機(不図示)のノズル54が、その先端のノズル孔を上型側流路52に連通せしめた状態で、接触位置せしめられている。
【0041】
また、そのような上型42の直下に位置する中型44は、全体として、上型42よりも厚肉の矩形平板形状乃至は矩形のブロック形状を有している。そして、図示しない固定盤に支持されて、位置固定とされている。
【0042】
また、この中型44の上型42との型合せ面となる上面には、目的とする金具付き防振ゴム14の上面を除く外面形状に対応した内面形状を有する中型側キャビティ形成凹所56が設けられている。更に、中型44においては、それを上下方向に貫通して延び、且つ下面と中型側キャビティ形成凹所56の底面とにおいてそれぞれ開口する、第一の流路としての中型側流路58が形成されている。
【0043】
一方、かかる中型44の直下に位置する下型46は、全体として、厚肉の矩形平板形状を有している。そして、上面において、中型44に型合せされた状態で、中型44と同様に、図示しない固定盤に支持されて、位置固定とされている。
【0044】
また、この下型46の中型44との型合せ面とは反対側の下面には、円形の凹所からなるポット60が、下型46の厚さの略半分程度の深さを有して、形成されている。更に、かかるポット60の形成部には、それを上下方向に貫通する流出孔62が、上方に向かうに従って次第に小径化するテーパ面状の内周面と、上面とポット60の底面とにそれぞれ開口する開口部とを有して、形成されている。そして、下型46が、中型44に対して位置固定に型合せされた状態下において、流出孔62が、中型44の中型側流路58と連通せしめられるようになっている。
【0045】
さらに、下型46の直下に位置する加圧型48は、全体として、厚肉の矩形平板形状を有している。そして、図示しない型締装置の型閉じ作動に引き続いて行われる圧締作動により上方に移動可能とされ、かかる型締装置の圧締作動による上方への移動に伴って、下型46に接近し、型合せされると共に、型締装置の型閉じ作動によって型閉じされた上型42と中型44とに対して、圧締力を、下型46を介して作用せしめ得るように構成されている。また、かかる加圧型48においては、型締装置の型開き作動により下方に移動して、下型46から離隔されるようになっており、それによって、下型46との型合せが解消されるようになっている。
【0046】
そして、この加圧型48にあっては、下型46との型合せ面たる上面のうち、下型46の下面におけるポット60の形成部位に対応する部位に、プランジャ64が、一体的に突設されている。このプランジャ64は、ポット60の内径よりも僅かに小さな外径と、ポット60の深さよりも所定寸法小さな突出高さとを有する円柱形状を呈している。そして、型締装置の圧締作動に伴う加圧型48の下型46への接近によって、プランジャ64が、下型46のポット60内に突入せしめられる一方、型締装置の型開き作動に伴う加圧型48の下型46からの離隔によって、ポット60内に突入せしめられたプランジャ64が、ポット60内から離脱(引込作動)せしめられるように構成されている。
【0047】
かくして、かかる成形用金型40においては、型締装置の型閉じ作動により、上型42と中型44とが型閉じされることで、それら上型42と中型44との間に、上型側キャビティ形成凹所50と中型側キャビティ形成凹所56とにて、目的とする金具付き防振ゴム14を与える成形キャビティ66が形成されるようになっている。そして、型締装置の型閉じ作動に続く圧締作動によって、加圧型48が下型46に型合せされることで、上型42と中型44と下型46と加圧型48の四つの分割型が圧締めされるようになっている。
【0048】
なお、ここでは、上型42と中型44との間に形成される成形キャビティ66のうちの略中央部分が、金具付き防振ゴム14のインナ金具12が収容配置されるべき金具収容空間部68とされている。そして、この金具収容空間部68にインナ金具12が収容配置されたときに、成形キャビティ66が、インナ金具12にて、それを間に挟んで下側と上側とに位置する、互いに独立した二つの部分に仕切られるようになっている。それにより、インナ金具12の金具収容空間部68内への収容状態下で、成形キャビティ66のインナ金具12よりも下側部分が、第一のゴム部18の外面形状に対応した形状を有する第一のキャビティ部70とされる一方、成形キャビティ66の上側部分が、第一のキャビティ部70とは非連通状態で分離された、第二のゴム部20の外面形状に対応した形状を有する第二のキャビティ部72とされるようになっている(図4参照)。
【0049】
また、そのような金具収容空間部68内へのインナ金具12の配置により、成形キャビティ66内に形成された二つのキャビティ部70,72のうち、第一のキャビティ部70は、中型側流路58と流出孔62とを通じて、下型46のポット60内に連通せしめられる一方、第二のキャビティ部72は、上型側流路52を通じて、射出成形機のノズル54のノズル孔に連通せしめられるように構成されている。更に、かかる第一のキャビティ部70内に、金具収容空間部68に収容されたインナ金具12の下面が露呈せしめられる一方、第二のキャビティ部72内に、かかるインナ金具12の上面が露呈せしめられるようになっている(図4参照)。
【0050】
そして、成形用金型40にあっては、特に、型締装置の圧締作動に伴って、所定の未加硫ゴム材料に対するトランスファ成形操作が実施され得るようになっている。即ち、この成形用金型40では、加圧型48の下型46との型合せ前に、所定の未加硫ゴム材料が、ポット60内に収容可能な大きさのタブレット等の形態においてプランジャ64の上面に載置された後、型締装置の圧締作動により、加圧型48が下型46と型合せされて、プランジャ64がポット60内に突入せしめられると、未加硫ゴム材料が、ポット60内に収容されると共に、かかるポット60の底面とプランジャ64の先端面(上面)との間で加圧されて、中型側流路58を通じて、成形キャビティ66(第一のキャビティ部70)内に圧入、充填され得るようになっているのである。
【0051】
また、この成形用金型40では、そのようなトランスファ成形操作とは別に、インジェクション成形操作も実際され得るようになっている。即ち、射出成形機のノズル54から射出される未加硫ゴム材料が、上型側流路52を通じて、成形キャビティ66(第二のキャビティ部72)内に導かれて、充填され得るようになっているのである。
【0052】
而して、かくの如き構造を有する成形用金型40を備えた成形装置を用いて、目的とする金具付き防振ゴム14を成形する際には、例えば、先ず、成形用金型40の中型44の中型側キャビティ形成凹所56内に、インナ金具12が、その外面の殆どの部分に所定の加硫接着剤が塗布された状態で、外フランジ部22を水平方向に延びるように載置された後、型締装置の型閉じ作動により、上型42と中型44とが型閉じされる。
【0053】
これによって、図4に示されるように、型閉じされた上型42と下型44との間に成形キャビティ66が形成されると共に、この成形キャビティ66の金具収容空間部68内に、インナ金具12が収容、配置されて、かかるインナ金具12が、上型42の上型側キャビティ形成凹所50の底面と中型44の中型側キャビティ形成凹所56の底面との間で挟圧保持される。
【0054】
また、そのようにして、インナ金具12が金具収容空間部68内に移動不能に収容、配置されることにより、成形キャビティ66内に、インナ金具12よりも上側の部分からなる、第二のゴム部20に対応した形状を有する第二のキャビティ部72が形成される一方、インナ金具12よりも下側の部分からなる、第二のキャビティ部72よりも容積が小さく且つ第二のキャビティ部72と非連通とされた、第一のゴム部18に対応した形状を有する第一のキャビティ部70が形成される。なお、このとき、インナ金具12の下面が、第一のキャビティ部70内に、また、インナ金具12の上面が、第二のキャビティ部72内に、それぞれ露呈せしめられる。
【0055】
また、図4に示される如く、そのような成形キャビティ66内へのインナ金具12の収容操作及びそれによる第一のキャビティ部70と第二のキャビティ部72の形成操作と同時に、或いはそれらの操作の前後の何れかにおいて、第一のゴム部18を形成する第一の未加硫ゴム材料74が、下型46のポット60内に収容可能なタブレットの形態において、加圧型48のプランジャ64の上面上に載置される。更に、その一方で、図示しない加熱装置により、成形用金型40の全体が、後述する第一の未加硫ゴム材料74と第二の未加硫ゴム材料76のそれぞれの加硫温度にまで加熱される。
【0056】
次いで、型締装置の型閉じ作動に引き続いて実施される圧締作動に伴って、加圧型48が下型46に接近せしめられることにより、図5に二点鎖線で示されるように、プランジャ64がポット60内に突入せしめられて、かかるプランジャ64上に載置された第一の未加硫ゴム材料74が、ポット60内に収容せしめられる。また、そのような状態からの型締装置の更なる圧締作動により、図5に実線で示されるように、加圧型48が、下型46に対して更に接近せしめられて、型合せされ、それによって、上型42と中型44と下型46と加圧型48の四つの分割型が完全に圧締される。そして、そのような圧締過程で、プランジャ64がポット60内に更に大きな突入量で突入せしめられて、プランジャ64上の第一の未加硫ゴム材料74が、プランジャ64の上面とポット60の下面(底面)との間で加圧され、以て、第一の未加硫ゴム材料74が、ポット60の流出孔62と型44の中型側流路58とを通じて、第一のキャビティ部70内に圧入されて、充填される。
【0057】
かくして、成形用金型40の型締装置による圧締操作に伴って、第一の未加硫ゴム材料74を用いたトランスファ成形操作が実施される。そして、その後、図示しない加熱装置にて、第一の未加硫ゴム材料74の加硫温度にまで加熱された成形用金型40の第一のキャビティ部70内で、第一の未加硫ゴム材料74の加硫反応が実施されて、その加硫成形が進行せしめられる。
【0058】
なお、ここでは、第一の未加硫ゴム材料74として、入力振動に対して高減衰効果を発揮するばね特性を第一のゴム部18に付与し得るものであって、しかも、好適には、公知の加硫促進剤等が添加される等して、加硫時間の短縮が図られてなるものが、用いられる。
【0059】
次に、図6に示されるように、成形用金型40の型締装置による圧締操作に伴う第一の未加硫ゴム材料74を用いたトランスファ成形操作の実施後において、第一の未加硫ゴム材料74の加硫反応が終了する前(加硫成形の完了前)に、第二のゴム部20を形成する第二の未加硫ゴム材料76が、射出成形機(図示せず)のノズル54から射出され、上型側流路52を通じて、成形キャビティ66の第二のキャビティ部72内に充填される。
【0060】
かくして、第一の未加硫ゴム材料74を用いたトランスファ成形操作に引き続いて、第二の未加硫ゴム材料76を用いたインジェクション成形操作が実施される。そして、その後、図示しない加熱装置にて、第二の未加硫ゴム材料76の加硫温度にまで加熱された成形用金型40の第二のキャビティ部72内で、第二の未加硫ゴム材料76の加硫反応が実施されて、その加硫成形が進行せしめられる。
【0061】
そして、ここでは、第二の未加硫ゴム材料76として、入力振動に対して低動ばね効果を発揮するばね特性を第二のゴム部20に付与し得るものが用いられる。
【0062】
また、一般に、インジェクション成形操作によって加硫成形される未加硫ゴム材料の加硫時間(未加硫ゴム材料が、インジェクション成形操作の開始から、所定の加硫操作によって最適加硫状態となるまでの時間)は、トランスファ成形操作によって加硫成形される未加硫ゴム材料の加硫時間(未加硫ゴム材料が、トランスファ成形操作の開始から、所定の加硫操作によって最適加硫状態となるまでの時間)よりも短いため、ここでは、第二のキャビティ部72内に第二の未加硫ゴム材料76を射出、充填するインジェクション成形操作が、第一の未加硫ゴム材料74の第一のキャビティ部70内への圧入、充填するトランスファ成形操作の開始から、第一の未加硫ゴム材料74の加硫時間と第二の未加硫ゴム材料76の加硫時間との差に応じた時間だけ経過した時点において開始される。
【0063】
すなわち、例えば、第一の未加硫ゴム材料74の加硫時間が、加硫促進剤の添加等により、通常よりも早められて8分程度とされる一方、第二の未加硫ゴム材料76の加硫時間が5分程度である場合には、第一の未加硫ゴム材料74の第一のキャビティ部70内への圧入の開始から3分経過後に、第二の未加硫ゴム材料76の第二のキャビティ部72内への射出が開始されることとなるのである。
【0064】
かくして、ここでは、第一のキャビティ部70内での第一の未加硫ゴム材料74の加硫成形の進行中において、その途中から、第二のキャビティ部72内での第二の未加硫ゴム材料76の加硫成形が開始されて、それら第一及び第二の未加硫ゴム材料74,76の加硫成形が同時に完了せしめられ得るようになる。それによって、最適加硫状態とされた第一のゴム部18と第二のゴム部20とが同時に形成されると共に、かかる第一のゴム部18に対して、インナ金具12の下面が、また、第二のゴム部20に対して、インナ金具12の上面が、それぞれ加硫接着され、以て、目的とする金具付き防振ゴム14が、成形される。
【0065】
そして、その後、型締装置の型開き作動により、成形用金型40が型開きされて、金具付き防振ゴム14が、成形用金型40から取り出されるのである。
【0066】
このように、本実施形態においては、一つの成形用金型40内で、第一の未加硫ゴム材料74を用いたトランスファ成形操作と第二の未加硫ゴム材料76を用いたインジェクション成形操作とを同時に行うことで、第一のゴム部18と第二のゴム部20とが一挙に加硫成形されると共に、それら第一及び第二のゴム部18,20に対してインナ金具12が同時に加硫接着され得る。それ故、第一のゴム部18の加硫成形及び第一のゴム部18に対するインナ金具12の加硫接着と、第二のゴム部20の加硫成形及び第二のゴム部20に対するインナ金具12の加硫接着とが、それぞれ別個に段階的に実施される場合に比して、目的とする金具付き防振ゴム14が、十分に短い成形サイクルで、効率的に成形され得る。
【0067】
また、本実施形態では、第二のゴム部20が、射出成形機を用いたインジェクション成形操作によって加硫成形されるものの、第一のゴム部18が、射出成形機を何等用いないトランスファ成形操作によって加硫成形される。更に、トランスファ成形操作を行うために、成形用金型40に、一般的な射出成形用金型には見られないポット60やプランジャ64が設けられてはいるものの、それらは、成形用金型40を構成する下型46や加圧型48に対して、凹部や凸部が一体形成されてなるだけの極めて単純な構造を有するものである。しかも、プランジャ64をポット60内に突入させて、ポット60内の第二の未加硫ゴム材料76を加圧する機構が、一般的な射出成形用金型に装備される型締装置の圧締機構によって実現されている。
【0068】
それ故、第一のゴム部18の加硫成形及び第一のゴム部18に対するインナ金具12の加硫接着と、第二のゴム部20の加硫成形及び第二のゴム部20に対するインナ金具12の加硫接着とを同時に実施可能な、例えば、高価な射出成形機を2台用いた二色射出成形によって金具付き防振ゴム14を成形する場合に比して、その成形設備に要される設備コストが十分に低く抑えられ得て、目的とする金具付き防振ゴム14の成形コストも、効果的に抑制され得る。
【0069】
従って、かくの如き本実施形態によれば、互いに独立した別個の部材からなる第一のゴム部18と第二のゴム部20とに対してインナ金具12が加硫接着されてなる金具付き防振ゴム14が、十分に優れた生産性をもって、しかも可及的に低いコストで、工業的に有利に成形され得ることとなるのである。
【0070】
また、かかる本実施形態においては、第一の未加硫ゴム材料74を用いた、加硫時間が不可避的に長くなるトランスファ成形操作が、第二の未加硫ゴム材料76を用いた、加硫時間の短いインジェクション成形操作の開始よりも所定時間だけ早く開始されることで、最適加硫状態とされた第一のゴム部18と第二のゴム部20とが略同時に形成されるようになっているところから、例えば、トランスファ成形操作とインジェクション成形操作とが同時に開始される場合とは異なって、第二の未加硫ゴム76の加硫反応が必要以上に長い時間をかけて進行せしめられ、それによって、第二のゴム部20が過加硫となって、第二のゴム部20の耐久性が低下するようなことが、未然に防止され得る。
【0071】
さらに、本実施形態では、第一のキャビティ部70の容積が、第二のキャビティ部72の容積よりも小さくされて、トランスファ成形操作により第一のキャビティ部70内に圧入、充填される第一の未加硫ゴム材料74の体積が、インジェクション成形操作により第二のキャビティ部72内に射出、充填される第二の未加硫ゴム材料76の体積よりも小さくされている。これによって、第一の未加硫ゴム材料74が、トランスファ成形操作により第一のキャビティ部70内に圧入、充填されるにも拘わらず、かかる第一の未加硫ゴム材料74の加硫時間が可及的に短く為され得て、目的とする金具付き防振ゴム14が、より短い成形サイクルで効率的に成形され得る。
【0072】
しかも、第一の未加硫ゴム材料74の加硫時間が短縮され得ることで、トランスファ成形操作の開始からインジェクション成形操作の開始までの時間も有利に短縮され、それによって、インジェクション成形操作の開始前に、インナ金具12の上面に塗布された加硫接着剤が、第二の未加硫ゴム材料76が未充填の第二のキャビティ部72内に高温状態で晒される時間も有利に短く為され得る。そして、その結果、インナ金具12の上面に塗布された加硫接着剤が第二の未加硫ゴム材料76と接触する前に、かかる加硫接着剤の硬化反応が過度に進行して、第二のゴム部20のインナ金具12への接着強度の低下が惹起されるようなことが、効果的に防止され得る。
【0073】
また、本実施形態では、トランスファ成形操作に供される第一の未加硫ゴム材料74として、例えば、加硫促進剤が添加される等して加硫時間の短縮が図られてなるものが用いられている。これによっても、目的とする金具付き防振ゴム14が、より短い成形サイクルで効率的に成形され得ることとなる。しかも、トランスファ成形操作の開始からインジェクション成形操作の開始までの時間も有利に短縮され得るようになり、その結果として、インナ金具12の上面に塗布された加硫接着剤が第二の未加硫ゴム材料76と接触する前に、かかる加硫接着剤の硬化反応が過度に進行して、第二のゴム部20のインナ金具12への接着強度が低下するようなことが、効果的に防止され得る。
【0074】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、それは、あくまでも例示であって、本発明は、そのような実施形態における具体的な記述によって何等限定的に解釈されるものでない。
【0075】
例えば、前記実施形態では、プランジャ64が、成形用金型40の型閉じと圧締めとを行う型締装置の圧締作動に伴って、ポット60内に突入せしめられることにより、かかるポット60の底面とプランジャ64の先端面(上面)との間で、第一の未加硫ゴム材料74を加圧して、第一のキャビティ部70内に圧入、充填するトランスファ成形操作が行われるようになっていたが、プランジャ64をポット60内への突入させる機構が、型締装置とは別個の専用の作動機構によって実施され得るようになっていても、何等差し支えない。
【0076】
すなわち、補助ラム(補助プランジャ)を備えた、所謂トランスファ成形機に対して、射出成形機を組み込んだ形式において、目的とする金具付きゴム製品を成形する成形装置を構成することも出来るのである。
【0077】
また、前記実施形態では、プランジャ64の上面上に第一の未加硫ゴム材料74がセット(載置)された状態で、プランジャ64が上方に移動して、下方に開口するポット60内に突入せしめられることにより、かかる第一の未加硫ゴム材料74がポット60内に収容されるようになっていたが、例えば、プランジャ64が下方に移動して、上方に向かって開口するポット60内に突入せしめられる構造とされている場合には、プランジャ64のポット60内への突入前に、第一の未加硫ゴム材料74を、予め、ポット60内に収容させておくことが出来る。
【0078】
さらに、成形用金型40の具体的構造も、例示のものに、特に限定されるものではなく、例えば、中型44と下型46とが、一つの型にて構成されていても良い。
【0079】
更にまた、第一の未加硫ゴム材料74と第二の未加硫ゴム材料76も、例示されたばね特性を有するものに何等限定されるものではなく、例えば、例示されたばね特性とは異なる、互いに違う種類のばね特性を有するものであっても良く、また、単に色や種類、硬度等が互いに異なるものであっても良い。更に、それら第一の未加硫ゴム材料74と第二の未加硫ゴム材料76とが互いに全く同一のものであっても、勿論良いのである。
【0080】
また、成形用型は、目的とする金具付きゴム製品の成形に支障がなければ、樹脂型等の金型以外の型も用いられ得る。
【0081】
加えて、前記実施形態では、本発明を、自動車用アッパーサポートに組み付けられる自動車用の金具付き防振ゴムの製造方法及び成形用型、並びに成形装置に適用したものの具体例を示したが、本発明は、その他の自動車用金具付き防振ゴムや自動車用以外の金具付き防振ゴム、更には金具付き防振ゴム以外の金具付きゴム製品の製造方法及び成形用型、並びに成形装置の何れに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
【0082】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、そして、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範疇に属するものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明手法に従って製造された金具付きゴム製品の一実施形態が組み付けられた自動車用アッパーサポートを示す縦断面説明図である。
【図2】本発明手法に従って製造された金具付きゴム製品の一実施形態を示す縦断面説明図である。
【図3】本発明に従う金具付きゴム製品の成形用型の一実施形態を示す縦断面説明図である。
【図4】本発明手法に従って、図2に示された金具付きゴム製品を製造する際に実施される一工程例を示す説明図であって、成形用型の内部に形成される成形キャビティ内に、インナ金具を収容配置すると共に、プランジャの上面に第一の未加硫ゴム材料をセットした状態を示している。
【図5】図4に示される工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、第一の未加硫ゴム材料を第一のキャビティ部内に圧入、充填するトランスファ成形操作を実施した状態を示している。
【図6】図5に示される工程に引き続いて実施される工程例を示す説明図であって、第二の未加硫ゴム材料を第二のキャビティ部内に射出、充填するインジェクション成形操作を実施した状態を示している。
【符号の説明】
【0084】
10 本体ゴム弾性体 12 インナ金具
14 金具付き防振ゴム 16 アウタ金具
18 第一のゴム部 20 第二のゴム部
40 成形用金型 52 上型側流路
58 中型側流路 60 ポット
62 流出孔 64 プランジャ
66 成形キャビティ 68 金具収容空間部
70 第一のキャビティ部 72 第二のキャビティ部
74 第一の未加硫ゴム材料 76 第二の未加硫ゴム材料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立した別個の部材からなる第一のゴム部と第二のゴム部とを有すると共に、それら第一のゴム部と第二のゴム部とに対して、一つの金具が、互いに異なる部位においてそれぞれ加硫接着されてなる金具付きゴム製品を成形する方法であって、
目的とする金具付きゴム製品を成形する成形用型の成形キャビティ内を複数の部分に仕切るように、前記金具を該成形キャビティ内に収容配置することにより、該成形キャビティ内に、前記第一のゴム部を与える第一のキャビティ部と、前記第二のゴム部を与える第二のキャビティ部とを、互いに非連通とされ且つ該金具の互いに異なる部位がそれぞれ露呈せしめられた状態で形成する工程と、
前記成形用型に設けられるポットに、前記第一のゴム部を形成する第一の未加硫ゴム材料を収容した後、該ポット内に収容された第一の未加硫ゴム材料をプランジャにて加圧して、前記第一のキャビティ部内に開口する第一の流路を通じて、該第一の未加硫ゴム材料を該第一のキャビティ部内に圧入、充填するトランスファ成形操作を行うことにより、該第一のキャビティ部内で第一の未加硫ゴム材料を加硫成形して、前記第一のゴム部を形成すると共に、該第一のゴム部に対して、該金具を、該第一のキャビティ部内への露呈部位において加硫接着する工程と、
前記第二のキャビティ部内に開口する第二の流路を通じて、前記第二のゴム部を形成する第二の未加硫ゴム材料を該第二のキャビティ部内に射出、充填するインジェクション成形操作を行うことにより、該第二のキャビティ部内で、該第二の未加硫ゴム材料を加硫成形して、該第二のゴム部を形成すると共に、該第二のゴム部に対して、前記金具を、該第二のキャビティ部内への露呈部位において加硫接着する工程と、
を含むことを特徴とする金具付きゴム製品の成形方法。
【請求項2】
前記トランスファ成形操作によって加硫成形される前記第一の未加硫ゴム材料の加硫時間と、前記インジェクション成形操作によって加硫成形される前記第二の未加硫ゴム材料の加硫時間との差に応じた時間だけ、該トランスファ成形操作が、該インジェクション成形操作の開始よりも早く開始される請求項1に記載の金具付きゴム製品の成形方法。
【請求項3】
前記トランスファ成形操作によって加硫成形される前記第一の未加硫ゴム材料の加硫時間が短縮されることにより、該トランスファ成形操作の開始から前記インジェクション成形操作の開始までの時間が短縮されている請求項2に記載の金具付きゴム製品の成形方法。
【請求項4】
前記金具付きゴム製品が金具付き防振ゴムである請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の金具付きゴム製品の成形方法。
【請求項5】
互いに独立した別個の部材からなる第一のゴム部と第二のゴム部とを有すると共に、それら第一のゴム部と第二のゴム部とに対して、一つの金具が、互いに異なる部位においてそれぞれ加硫接着されてなる金具付きゴム製品を成形するための成形用型であって、
前記金具を収容する金具収容空間部と、前記第一のゴム部を与える第一のキャビティ部と、前記第二のゴム部を与える第二のキャビティ部とを有し、且つ該金具収容空間部内に、該金具が、互いに異なる部位において、該第一のキャビティ部内と該第二のキャビティ部内とにそれぞれ露呈せしめられた状態で収容されることによって、該第一のキャビティ部と該第二のキャビティ部とが非連通に分離されるように構成された成形キャビティと、
前記第一のゴム部を形成する第一の未加硫ゴム材料が収容されるポットと、
該ポットと前記成形キャビティの第一のキャビティ部とを連通し、前記第一の未加硫ゴム材料を該ポットから該第一のキャビティ部に導く第一の流路と、
前記ポット内に突入せしめられることにより、該ポット内の前記第一の未加硫ゴム材料を加圧し、前記第一の流路を通じて、該第一の未加硫ゴム材料を前記第一のキャビティ部内に圧入するプランジャと、
前記成形キャビティの前記第二のキャビティ部内に開口し、外部から射出された、前記第二のゴム部を形成する第二の未加硫ゴム材料を該第二のキャビティ部に導く第二の流路と、
を含んで構成されていることを特徴とする金具付きゴム製品の成形用型。
【請求項6】
前記第一のキャビティ部が、前記第二のキャビティ部よりも小さな容積を有している請求項5に記載の金具付きゴム製品の成形用型。
【請求項7】
前記金具付きゴム製品が金具付き防振ゴムである請求項5又は請求項6に記載の金具付きゴム製品の成形用型。
【請求項8】
互いに独立した別個の部材からなる第一のゴム部と第二のゴム部とを有すると共に、それら第一のゴム部と第二のゴム部とに対して、一つの金具が、互いに異なる部位においてそれぞれ加硫接着されてなる金具付きゴム製品を成形するための成形装置であって、
前記請求項5乃至請求項7のうちの何れか1項に記載の成形用型と、
該成形用型の前記プランジャの前記ポット内への突入作動と該ポット内からの引込作動を行う作動機構と、
前記第二の流路を通じて、前記第二の未加硫ゴム材料を前記第二のキャビティ部内に射出、充填する射出成形機と、
を含んで構成したことを特徴とする金具付きゴム製品の成形装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−78479(P2009−78479A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250450(P2007−250450)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】