説明

金属ストリップの連続焼鈍炉

【課題】無駄に排出されている不活性ガスを利用して直接加熱帯から間接加熱帯への燃焼ガスの侵入を確実に防止する。
【解決手段】リファイナ3には、精製された雰囲気ガスを乾燥させるドライヤ35A,35Bを設けるとともに、当該ドライヤ35A,35Bを再生するための不活性ガスを供給するガス供給管44を設け、連続焼鈍炉の直接加熱帯12と間接加熱帯13との間にガスカーテンを形成するガス噴射ノズル2を設けるとともに、ドライヤ35A,35Bを再生した後の不活性ガスをガス噴射ノズル2に供給するガス供給管41を設け、ドライヤ35A,35Bは並列に一対設けられて、一方のドライヤと他方のドライヤの使用状態と再生状態が交互に切り替えられ、再生状態となったドライヤに供給された不活性ガスがガス噴射ノズル2に供給されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属ストリップの連続焼鈍炉に関し、特に、その下流にメッキ槽を備えて、金属ストリップをメッキ処理できるようにした連続焼鈍炉の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の連続焼鈍炉として、還元性雰囲気ガス下で金属ストリップの焼鈍処理を行い、この後、メッキ槽内の亜鉛−アルミニウム合金メッキ浴を通過させてメッキを行う、いわゆるガルバリウム炉が知られている。そして、このような連続焼鈍炉において、還元性雰囲気ガスの無駄な消費を防止し、また揮発したメッキ浴成分の炉内付着等を防止するために、メッキ浴成分や、金属ストリップと共に持ち込まれた水分・酸素等で汚染された汚染雰囲気ガスを炉外に設けたリファイナで精製して再び炉内へ還流させることが行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−176225
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の上記連続焼鈍炉では通常、直火バーナを空気比1.0未満で燃焼させた無酸化雰囲気中で金属ストリップを直接加熱する直接加熱帯と、その下流に、ラジアントチューブを使用して還元ガス雰囲気下で金属ストリップを間接加熱する間接加熱帯を設けている。この場合、直接加熱帯の燃焼ガスが間接加熱帯へ侵入しないように、間接加熱帯の炉圧を直接加熱帯よりも十分高くしておく必要があるが、リファイナを使用して雰囲気ガスを炉外に設けたリファイナで精製して再び炉内へ還流させるようにした上記焼鈍炉では、還元雰囲気ガスの投入量が少なくできる分、間接加熱帯の炉圧を十分高く維持することが困難であるという問題があった。一方、リファイナにはドライヤが設けられるが、ドライヤの再生時にN2ガスのような不活性ガスが使用されており、現状ではドライヤ再生後の不活性ガスはそのまま利用されることなく放出されている。
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、無駄に排出されている不活性ガスを利用して直接加熱帯から間接加熱帯への燃焼ガスの侵入を確実に防止した金属ストリップの連続焼鈍炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、金属ストリップ(S)が通過する炉内の上流側から少なくとも直接加熱帯(12)と間接加熱帯(13)をこの順で設けるとともに、間接加熱帯(13)から汚染雰囲気ガスを吸引してこれを精製し再び間接加熱帯(13)よりも下流側の炉内へ還流させるリファイナ(3)を備えた金属ストリップの連続焼鈍炉において、リファイナ(3)には、精製された雰囲気ガスを乾燥させるドライヤ(35A,35B)を設けるとともに、当該ドライヤ(35A,35B)を再生するための不活性ガスを供給する第1ガス供給路(44)を設け、かつ直接加熱帯(12)と間接加熱帯(13)との間にガスカーテンを形成するガス噴射ノズル(2)を設けるとともに、ドライヤ(35A,35B)を再生した後の不活性ガスをガス噴射ノズル(2)に供給する第2ガス供給路(41)を設け、ドライヤ(35A,35B)は並列に一対設けられて、一方のドライヤと他方のドライヤの使用状態と再生状態が交互に切り替えられ、再生状態となったドライヤに供給された不活性ガスがガス噴射ノズル(2)に供給されるようになっている。
【0007】
本発明においては、ガスカーテンが形成されることにより、間接加熱帯の炉圧が直接加熱帯より十分高くない場合でも、直接加熱帯の燃焼ガスが間接加熱帯へ侵入することはない。そして、ガスカーテンの形成に、従来無駄に放出されていたドライヤ再生後の不活性ガスを利用しているから、ガスカーテン形成用の新たなガス供給は不要であり、コストアップが避けられる。
【0008】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、本発明の金属ストリップの連続焼鈍炉によれば、ドライヤから無駄に排出されている不活性ガスを利用してガスカーテンを形成しているから、直接加熱帯から間接加熱帯への燃焼ガスの侵入を、コストアップを生じることなく確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態における金属ストリップ連続焼鈍炉の概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるリファイナの内部構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には金属ストリップ連続焼鈍炉の一例を示す。図1において、連続焼鈍炉1は上流側より予熱帯11、直接加熱帯12、間接加熱帯13、冷却帯14、保持帯15、冷却帯16が続き、冷却帯16からはダウンシュート17が延びて、その先端部に設けたスナウト18がメッキ槽19内の例えば亜鉛−アルミニウム合金メッキ浴L内に浸漬されている。金属ストリップSは適宜位置でローラによって支持されつつ予熱帯11から冷却帯16に至り、この間に焼鈍処理がなされる。その後、金属ストリップSはダウンシュート17およびスナウト18を経てメッキ浴L内を通過させられ、この間にメッキ処理がなされる。
【0012】
ここで、直接加熱帯12では直火バーナを空気比1.0未満で燃焼させた無酸化雰囲気中で金属ストリップSが直接加熱され、間接加熱帯13ではラジアントチューブを使用して還元雰囲気ガス下で金属ストリップSが間接加熱される。間接加熱帯13と、冷却帯14,16、保持帯15の各炉内はN2とH2からなる還元雰囲気ガスで満たされている。
【0013】
直接加熱帯12と間接加熱帯13の境界壁部分には、両加熱帯12,13の間にガスカーテンを形成するために、金属ストリップSの上方位置と下方位置にその上流側に向けて必要数のガス噴射ノズル2がそれぞれ設置されており、これらガス噴射ノズル2は第2ガス供給路としてのガス供給管41によって炉外に設けた詳細を後述するリファイナ3に連結されている。リファイナ3はまた、ガス供給管42によって間接加熱帯13に連結されるとともに、ガス供給管43によってバルブを介して冷却帯14,16、保持帯15およびダウンシュート17に連結されている。また、リファイナ3には不活性ガスとしてのN2ガスを供給する第1ガス供給路としてのガス供給管44が連結されている。
【0014】
リファイナ3の内部構成を図2に示す。リファイナ3には上流側より、一対のろ過器31A,31B、クーラ32、吸引ファン33、脱酸素器34、一対のドライヤ35A,35Bが設けられている。ろ過器31A,31Bは密閉容器内にフィルタメディア、例えばろ紙、ろ布やろ網等を備えるもので、ガス供給管42を経て間接加熱帯13から流入した汚染雰囲気ガス中のメッキ浴蒸発金属などのダストを除去する。脱酸素器34は密閉容器内に酸化反応触媒を充填し、雰囲気中の酸素を水素と反応させ水分にして酸素を除去する。ドライヤ35A,35Bは密閉容器内にアルミナやゼオライト製の吸着材を充填したもので、汚染雰囲気ガス中の水分と脱酸素器34で生成した水分を吸着除去して最終的に精製雰囲気ガスとする。なお、吸着材は表面の水分量が多くなると水分吸着をしなくなるため、定期的に再生を行う。再生は、ドライヤ35A,35Bに内設されたヒータで昇温しつつN2ガスを流通させて吸着材の水分を除去することにより行う。
【0015】
上記ろ過器31A,31Bは三方弁51,52を介して互いに並列に接続されており、三方弁51にはガス供給管42が連結され、三方弁52にはクーラ32への配管が連結されている。そして、三方弁51,52のポート間が図2の実線で示す連通位置に切り替えられている場合にはろ過器31Aが使用状態となり、ろ過器31Bはフィルタメディア取替えないし洗浄のための待機状態となっている。三方弁51,52のポート間が図2の破線で示す連通状態に切り替えられると、ろ過器31A,31Bの使用状態と待機状態が逆転させられる。
【0016】
また、上記ドライヤ35A,35Bは四方弁53,54を介して互いに並列に接続されており、四方弁53には脱酸素器34への配管とガス供給管44が連結され、四方弁54にはガス供給管41,43が連結されている。そして、四方弁53,54のポート間が図2の実線で示す連通位置に切り替えられている場合にはドライヤ35Aが使用状態となって、当該ドライヤ34Aで水分を除去された精製雰囲気ガスがガス供給管43によって冷却帯14,16、保持帯15およびダウンシュート17へ供給される。この時、ドライヤ35Bは再生状態となっており、ガス供給管44によって供給されたN2ガスがドライヤ35B内の吸着材表面の水分を運び去り、吸着材が再生される。なお、四方弁53,54のポート間が図2の破線で示す連通状態に切り替えられると、ドライヤ35A,35Bの使用状態と再生状態が逆転させられる。
【0017】
ドライヤ35A,35Bを再生し水分を含んだN2ガスは、リファイナ3からガス供給管41によってガス噴射ノズル2へ供給されてその先端から直接加熱帯12の方向へ噴射され、直接加熱帯12と間接加熱帯13の境界部にガスカーテンを形成する。直接加熱帯12は直火バーナによる加熱であるため炉内には元来水分が多く、水分を多く含んだN2ガスを流入させても問題はない。そして、このようなガスカーテンが形成されることにより、間接加熱帯13の炉圧が直接加熱帯12より十分高くない場合でも、直接加熱帯12の燃焼ガスが間接加熱帯13へ侵入することが確実に防止される。加えて、この場合のガスカーテンの形成に、従来無駄に放出されていたドライヤ再生後のN2ガスを利用しているから、ガスカーテン形成用の新たなガス供給は不要であり、コストアップを避けることができる。
【符号の説明】
【0018】
1…連続焼鈍炉、12…直接加熱帯、13…間接加熱帯、2…ガス噴射ノズル、3…リファイナ、35A,35B…ドライヤ、41…ガス供給管(第2ガス供給路)、44…ガス供給管(第1ガス供給路)、S…金属ストリップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップが通過する炉内の上流側から少なくとも直接加熱帯と間接加熱帯をこの順で設けるとともに、間接加熱帯から汚染雰囲気ガスを吸引してこれを精製し再び間接加熱帯よりも下流側の炉内へ還流させるリファイナを備えた金属ストリップの連続焼鈍炉において、前記リファイナには、精製された雰囲気ガスを乾燥させるドライヤを設けるとともに、当該ドライヤを再生するための不活性ガスを供給する第1ガス供給路を設け、かつ前記直接加熱帯と前記間接加熱帯との間にガスカーテンを形成するガス噴射ノズルを設けるとともに、前記ドライヤを再生した後の不活性ガスを前記ガス噴射ノズルに供給する第2ガス供給路を設け、前記ドライヤは並列に一対設けられて、一方のドライヤと他方のドライヤの使用状態と再生状態が交互に切り替えられ、再生状態となったドライヤに供給された不活性ガスが前記ガス噴射ノズルに供給されるようになっている金属ストリップの連続焼鈍炉。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−46988(P2011−46988A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195059(P2009−195059)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000003713)大同特殊鋼株式会社 (916)
【Fターム(参考)】