説明

金属化フィルムの製造装置

【課題】薄いフィルムでも金属蒸着電極形成時に熱ダメージを受けない金属化フィルムの製造装置を提供することを目的とする。
【解決手段】PPフィルム1上にマスク部を形成するパターン形成部4と、マスク部以外に金属蒸着電極を形成する蒸着部5を有し、パターン形成部4が、オイルを気化・噴出させるオイルタンク6と、オイルが付着して回転する転写ロール7と、転写ロール7のオイルが転写される凸版部を備えてPPフィルム1表面にパターンを印刷する印刷ロール8と、PPフィルム1裏面に当接するバックアップロール9からなり、転写ロール7、印刷ロール8、バックアップロール9の少なくとも一つに冷却機構を設けた構成により、PPフィルム1に加わる熱を低下できるため、薄いPPフィルム1を用いても熱ダメージを受けず、優れた性能と品質の金属化フィルム1aを安定して生産できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用され、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用に最適な金属化フィルムコンデンサを製造する際に用いられる金属化フィルムの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
【0003】
このようなHEV用の電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、このような電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されており、更に市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサを採用する傾向が目立っている。
【0004】
そして、このような金属化フィルムコンデンサは、一般に金属箔を電極に用いるものと、誘電体フィルム上に設けた蒸着金属を電極に用いるものとに大別される。中でも、蒸着金属を電極(以下、金属蒸着電極と呼ぶ)とする金属化フィルムコンデンサは、金属箔のものに比べて電極の占める体積が小さく小型軽量化が図れることと、金属蒸着電極特有の自己回復機能(絶縁欠陥部で短絡が生じた場合に、短絡のエネルギーで欠陥部周辺の金属蒸着電極が蒸発・飛散して絶縁化し、コンデンサの機能が回復する性能)により絶縁破壊に対する信頼性が高いことから、従来から広く用いられているものである。
【0005】
図4はこの種の従来の金属化フィルムコンデンサの構成を示した断面模式図、図5はこの金属化フィルムコンデンサに使用される第1の金属化フィルムの模式図であり、図4と図5において、21と21aは誘電体フィルム、22と22aはこの誘電体フィルム21、21aに蒸着形成した金属蒸着電極、23と23aはこのような金属蒸着電極を厚く形成して抵抗値を低くした低抵抗部、24は微小破壊発生時に後述する分割電極を分断するヒューズ部、25と25aは金属蒸着しないマージン部、25bはこのマージン部25、25aの幅、26は上記ヒューズ部24で接続された分割電極を形成する電極区切り部、27は上記低抵抗部23、23aの幅、28は上記電極区切り部26によって分割電極に区切られた微小ブロック、29は第1の金属化フィルム、30は第2の金属化フィルムを示すものである。
【0006】
そして、このように構成された第1の金属化フィルム29と第2の金属化フィルム30とを、図4に示すように金属蒸着電極22、22aが誘電体フィルム21、21aを介して対向するようにして巻回することにより素子を形成し、この素子の両端面に金属溶射によってメタリコン電極(図示せず)を形成することにより金属化フィルムコンデンサが構成されているものであった(特許文献1)。
【0007】
また、図6はこの種の金属化フィルムコンデンサに用いられる金属化フィルムを製造するための、従来の金属化フィルムの製造装置である巻取式真空蒸着装置の主要部の構成を示した概念図、図7は同装置のパターン形成ユニットの構成を示した概念図であり、図6と図7において、この巻取式真空蒸着装置31は、真空チャンバ32と、原料フィルム33の巻出しローラ34と、冷却用キャンローラ35と、巻取りローラ36と、蒸着物質の蒸発源37とを備え、更に、パターン形成ユニット41、電子ビーム照射器42、直流バイアス電源43及び除電ユニット44を備えている。
【0008】
上記真空チャンバ32は、配管接続部32a、32cを介して図示しない真空ポンプ等の真空排気系に接続され、その内部が所定の真空度に減圧排気されている。真空チャンバ32の内部空間は、仕切り板32bにより、巻出しローラ34、巻取りローラ36等が配置される室と、蒸発源37が配置される室とに仕切られている。
【0009】
原料フィルム33は、巻出しローラ34から繰り出され、複数のガイドローラ38、キャンローラ35、補助ローラ39、複数のガイドローラ40を介して巻取りローラ36に巻き取られるようになっている。
【0010】
キャンローラ35は筒状で鉄等の金属製とされ、内部には冷却媒体循環系等の冷却機構や、キャンローラ35を回転駆動させる回転駆動機構等が備えられている。キャンローラ35の周面には所定の抱き角で原料フィルム33が巻回される。キャンローラ35に巻き付けられた原料フィルム33は、その外面側の成膜面が蒸発源37からの蒸着物質で成膜されると同時に、キャンローラ35によって冷却されるようになっている。
【0011】
蒸発源37は、蒸着物質を収容すると共に、蒸着物質を抵抗加熱、誘導加熱、電子ビーム加熱等の公知の手法で加熱蒸着させる機構を備えている。この蒸発源37はキャンローラ35の下方に配置され、蒸着物質の蒸気を、対向するキャンローラ35上の原料フィルム33上へ付着させ被膜を形成させる。
【0012】
また、上記パターン形成ユニット41はフレキソ印刷ユニットで構成されており、アニロックスロール等のインキ供給ロール45と、このインキ供給ロール45から供給されたインキ(オイル)が転写され原料フィルム33の成膜面へマスクパターンを形成する版胴46と、この版胴46に対設され当該版胴46と対になって原料フィルム33を挟持する圧胴47とを有している。
【0013】
版胴46とインキ供給ロール45との間には転写ロール48が転設されており、この転写ロール48は、インキ供給ロール45から所要量のインキを供給され、当該供給されたインキを版胴46へ転写する。版胴46の表面には、上記マスクパターンに対応する凸版が形成されており、その凸面に転写されたインキが原料フィルム33の成膜面に転写されてマスクパターンを形成するものであり、上記版胴46をシームレス(継ぎ目無し)スリーブ印刷版で構成したものである。
【0014】
このように構成された従来の金属化フィルムの製造装置である巻取式真空蒸着装置は、マスク形成手段を構成するフレキソ印刷ユニットの版胴にシームレススリーブ印刷版が用いられているので、原料フィルムの成膜面に対して所望のマスクパターンを高精度に連続形成することができ、これにより、フィルムコンデンサの生産性向上と信頼性の確保を図ることができるというものであった(特許文献2)。
【特許文献1】特開2005−85870号公報
【特許文献2】特開2006−225710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のような金属化フィルムコンデンサをハイブリッド自動車等に代表される自動車用として使用する場合には、特に小型軽量化に対する要望が大きく、このような要望に応えるための最も有効な手段として金属化フィルムの厚みを薄くすることが考えられる。そのために、誘電体フィルム自体の厚みを薄くする技術の開発と、薄い誘電体フィルムを使いこなす技術の開発の両方が日々行われているものである。
【0016】
なお、このような誘電体フィルムとしては、現在、量産ベースで使用されているポリプロピレンフィルム(以下、PPフィルムと呼ぶ)で、厚みが3.0μmのものが最も薄いものであるが、この厚みを更に薄くする開発が進められ、今日現在では、厚みが2.0μm程度のPPフィルムも入手できるようになってきている。
【0017】
しかしながら、このように3.0μm未満という厚みにまで薄手化されたPPフィルムは、厚みが薄いが故に取り扱いが難しくなるばかりでなく、特に、PPフィルム上に金属蒸着電極を形成して金属化フィルムを作製する際に、従来の厚みが3.0μmのPPフィルムと同様に作業を行うと、PPフィルムに加わる熱によってPPフィルムにダメージが発生し易くなり、これにより、この金属化フィルムを用いた製品の性能にも悪影響を与えてしまうという課題があった。
【0018】
なお、このような蒸着時に発生する熱ダメージは、従来の厚みが3.0μm以上のPPフィルムにおいては、製造装置において熱が高くなる部分を冷却する等の対策を施すことによってPPフィルムに加わる熱ダメージの影響を防止するようにしているものであったが、厚みが3.0μm未満というような極めて薄いPPフィルムを用いる際には、このような従来の技術のみで対応することは極めて困難であり、新たな技術の導入が必要となるものである。
【0019】
また、このような熱ダメージの発生は、PPフィルム自体が薄いために蒸着によって金属蒸着電極を形成する際の熱の影響を受け易いことに加え、PPフィルムを走行させるために加えるテンションにより、薄いPPフィルムが更に伸び易くなるために発生するものと思われる。
【0020】
本発明はこのような従来の課題を解決し、厚さが3.0μm未満の薄いPPフィルムを用いて金属化フィルムを作製する場合でも、蒸着時の熱ダメージの発生を抑制することによって優れた性能と品質を発揮することが可能な金属化フィルムの製造装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を解決するために本発明は、誘電体フィルム上に金属蒸着電極未形成部となるマスク部を形成するパターン形成部と、上記マスク部を除く誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成する蒸着部とを有し、上記パターン形成部が、オイルを気化して噴出させるオイルタンクと、この噴出されたオイルが周面に付着して回転する転写ロールと、この転写ロールに付着したオイルが転写されるパターン形成用の凸版部を備えて回転することにより誘電体フィルムの表面にマスク部となるパターンを印刷する印刷ロールと、この印刷ロールと対向し、誘電体フィルムの裏面に当接するバックアップロールからなり、上記転写ロール、印刷ロール、バックアップロールの少なくとも一つに冷却機構を設けた構成にしたものである。
【発明の効果】
【0022】
以上のように本発明による金属化フィルムの製造装置は、パターン形成部を構成する転写ロール、印刷ロール、バックアップロールの少なくとも一つに冷却機構を設けることにより、誘電体フィルムに加わる熱を低下させることができるようになるため、誘電体フィルムとして厚みが3.0μm未満というような薄いポリプロピレンフィルムを用いて金属化フィルムを作製しても誘電体フィルムが熱ダメージを受けることがないため、優れた性能と品質を発揮することが可能な金属化フィルムを安定して生産することができるようになるという効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1に記載の発明について説明する。
【0024】
図1は本発明の実施の形態1による金属化フィルムの製造装置の主要部の構成を示した概念図であり、図1において、1は誘電体フィルムとしてのポリプロピレンフィルム(以下、PPフィルム1と呼ぶ)であり、本実施の形態においては、厚みが2μmのものを用いたものである。2は上記PPフィルム1を送り出す供給部、3はこのPPフィルム1に後述する金属蒸着電極を形成することによって作製された金属化フィルム1aを巻き取る巻き取り部である。
【0025】
4は上記PPフィルム1上に後述する金属蒸着電極を形成しない部分となるマスク部を形成するパターン形成部、5はこのパターン形成部4によりPPフィルム1上に形成されたマスク部を除く部分に金属蒸着電極を形成する蒸着部である。
【0026】
上記パターン形成部4は、金属付着防止剤としてのオイルを気化してノズルから噴出させるオイルタンク6と、このオイルタンク6のノズルから噴出されたオイルが周面に付着して回転する転写ロール7と、この転写ロール7の周面に付着したオイルが転写されるパターン形成用の凸版部を周面に備えてPPフィルム1の搬送と同期して回転することにより、PPフィルム1の表面にマスク部となるパターンを印刷する印刷ロール8と、この印刷ロール8と対向し、PPフィルム1の裏面に当接するように配設されたバックアップロール9により構成されているものであり、更に、上記転写ロール7、印刷ロール8、バックアップロール9の少なくとも一つには、図示しない冷却機構が内部に設けられているものである。
【0027】
上記蒸着部5は、金属蒸着電極を形成するための金属(本実施の形態においてはアルミニウムを用いたが、本発明はこれに限定されるものではない)を熱して蒸発させ、この蒸発した金属をPPフィルム1の表面に蒸着する蒸発源10と、この蒸発源10と対向し、PPフィルム1の裏面に当接してPPフィルム1を裏面から冷却するように配設された冷却ロール11により構成されているものである。
【0028】
このように構成された本実施の形態による金属化フィルムの製造装置は、上記背景技術の項で図5を用いて説明した金属化フィルムのマージン部25、電極区切り部26、すなわち、金属蒸着電極を形成しない部分となるマスク部を上記パターン形成部4によりオイルマスク方式で形成した後、蒸着部5により上記マスク部を除く部分に金属蒸着電極を形成することによって金属化フィルムを作製するようにしたものである。
【0029】
そして、上記オイルマスク方式によりマスク部を形成するパターン形成部4により、気化したオイルによってPPフィルム1が受ける熱ダメージを低減するために、転写ロール7、印刷ロール8、バックアップロール9の少なくとも一つに、図示しない冷却機構を内部に設けた構成により、上記熱ダメージを抑制すると共にPPフィルム1へのオイル付着効率を良化することができるようになるため、誘電体フィルムとして厚みが2μmというような極めて薄いPPフィルム1を用いた場合でも、PPフィルム1が熱ダメージを受けることがないために、優れた性能と品質を発揮することが可能な金属化フィルムを安定して生産することができるようになるという格別の効果を奏するものである。
【0030】
また、このような効果を確認する目的で、上記転写ロール7、印刷ロール8、バックアップロール9の一つに各部の表面温度が100℃を超えないように冷却機構を設けた場合のその他各部の表面温度上昇と、上記条件で全ての部位に冷却機構を設けた場合の各部の表面温度上昇、PPフィルム1の熱ダメージの有無を確認した結果を、冷却機構を設けない比較例としての従来例と比較して(表1)に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
(表1)から明らかなように、本実施の形態による金属化フィルムの製造装置は、転写ロール7、印刷ロール8、バックアップロール9の少なくとも一つに冷却機構を設けることによって各部の温度上昇を抑制してPPフィルム1の熱ダメージを無くすることが可能になることが分かり、更に、全てに冷却機構を設けることによってその効果をより顕著に得ることができるものであり、冷却機構を有しない従来例と比べて特段の効果が得られるものである。
【0033】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項2、3に記載の発明について説明する。
【0034】
本実施の形態は、上記実施の形態1で図1を用いて説明した金属化フィルムの製造装置に絶縁マージン形成部を設けた点が異なるものであり、これ以外の構成は実施の形態1と同様であるために同一部分には同一の符号を付与してその詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ以下に図面を用いて詳細に説明する。
【0035】
図2は本発明の実施の形態2による金属化フィルムの製造装置の主要部の構成を示した概念図であり、図2において、12は誘電体フィルムの長手方向に金属蒸着電極を形成しない部分となる絶縁マージンを形成する絶縁マージン形成部、13はこの絶縁マージン形成部12の上流に設けられ、誘電体フィルムの裏面に当接して誘電体フィルムを裏面から冷却するように配設された冷却ロールである。
【0036】
上記絶縁マージン形成部12は、金属付着防止剤としてのオイルを気化してノズルから噴出させるオイルタンク14と、このオイルタンク14のノズルから噴出されたオイルが付着されるPPフィルム1の裏面に当接するように配設されたバックアップロール15により構成されているものであり、更に、上記バックアップロール15には、図示しない冷却機構が内部に設けられているものである。
【0037】
このように構成された本実施の形態による金属化フィルムの製造装置は、上記実施の形態1による金属化フィルムの製造装置により得られる効果に加え、金属蒸着電極を形成しない部分となるマスク部の中で大きな面積を有する(すなわち、発熱が高くなる)絶縁マージン形成部12を構成するバックアップロール15に冷却機構を設けるだけでなく、絶縁マージン形成部12の手前でPPフィルム1を冷却ロール13により冷却するようにした構成により、絶縁マージンを形成する際の温度上昇を抑制すると共にPPフィルム1上へのオイル付着効率を良化することができるようになるため、誘電体フィルムとして厚みが2μmというような極めて薄いPPフィルム1を用いた場合でも、PPフィルム1が熱ダメージを受けることがないために、優れた性能と品質を発揮することが可能な金属化フィルムを安定して生産することができるようになるという格別の効果を奏するものである。
【0038】
また、このような効果を確認する目的で、冷却ロール13の冷却機構を検討した結果、表面温度を80℃以下にすることにより、PPフィルム1の熱ダメージを抑制するのに効果があることが分かった。
【0039】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項4に記載の発明について説明する。
【0040】
本実施の形態は、上記実施の形態1で図1を用いて説明した金属化フィルムの製造装置に保護膜形成部を設けた点が異なるものであり、これ以外の構成は実施の形態1と同様であるために同一部分には同一の符号を付与してその詳細な説明は省略し、異なる部分についてのみ以下に図面を用いて詳細に説明する。
【0041】
図3は本発明の実施の形態3による金属化フィルムの製造装置の主要部の構成を示した概念図であり、図3において、16は蒸着部5の下流に設けられ、蒸着部5においてPPフィルム1の表面に金属蒸着電極を形成することによって作製された金属化フィルム1aの上記金属蒸着電極上に保護膜を形成する保護膜形成部である。
【0042】
この保護膜形成部16は、保護膜としてのオイルを気化してノズルから噴出させるオイルタンク17と、このオイルタンク17のノズルから噴出されたオイルが付着される金属化フィルム1aの裏面に当接するように配設されたバックアップロール18により構成されているものであり、更に、上記バックアップロール18には、図示しない冷却機構が内部に設けられているものである。
【0043】
このように構成された本実施の形態による金属化フィルムの製造装置は、上記実施の形態1による金属化フィルムの製造装置により得られる効果に加え、PPフィルム1の表面に金属蒸着電極を形成することによって作製された金属化フィルム1aの上記金属蒸着電極上に保護膜を形成する際に、バックアップロール18によって金属化フィルム1aを裏面から冷却するようにした構成により、保護膜を形成する際の温度上昇を抑制すると共にPPフィルム1へのオイル付着効率を良化することができるようになるため、誘電体フィルムとして厚みが2μmというような極めて薄いPPフィルム1を用いた場合でも、PPフィルム1が熱ダメージを受けることがないために、優れた性能と品質を発揮することが可能な金属化フィルムを安定して生産することができるようになるという格別の効果を奏するものである。
【0044】
また、このような効果を確認する目的で、バックアップロール18の冷却機構を検討した結果、表面温度を80℃以下にすることにより、PPフィルム1へのオイル付着効率を良化でき、真空度の低下を抑制できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明による金属化フィルムの製造装置は、金属化フィルムを作製する際に発生する熱を抑制することができるため、厚みが3.0μm未満というような極めて薄い誘電体フィルムを用いた場合でも、誘電体フィルムが熱ダメージを受けることがないため、優れた性能と品質を発揮することが可能な金属化フィルム、ならびにこれを用いた金属化フィルムコンデンサを安定して生産することができるという効果を有し、特に小型軽量化が要求される自動車用分野のコンデンサ等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態1による金属化フィルムの製造装置の主要部の構成を示した概念図
【図2】本発明の実施の形態2による金属化フィルムの製造装置の主要部の構成を示した概念図
【図3】本発明の実施の形態3による金属化フィルムの製造装置の主要部の構成を示した概念図
【図4】従来の金属化フィルムコンデンサの構成を示した断面模式図
【図5】同金属化フィルムコンデンサに使用される第1の金属化フィルムの模式図
【図6】従来の金属化フィルムの製造装置である巻取式真空蒸着装置の主要部の構成を示した概念図
【図7】同装置のパターン形成ユニットの構成を示した概念図
【符号の説明】
【0047】
1 PPフィルム
1a 金属化フィルム
2 供給部
3 巻き取り部
4 パターン形成部
5 蒸着部
6、14、17 オイルタンク
7 転写ロール
8 印刷ロール
9、15、18 バックアップロール
10 蒸発源
11、13 冷却ロール
12 絶縁マージン形成部
16 保護膜形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムを供給する供給部と、上記誘電体フィルム上に金属蒸着電極未形成部となるマスク部を形成するパターン形成部と、上記マスク部を除く誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成する蒸着部と、この金属蒸着電極が形成された金属化フィルムを巻き取る巻き取り部とを有した金属化フィルムの製造装置において、上記パターン形成部が、金属付着防止剤としてのオイルを気化してノズルから噴出させるオイルタンクと、このオイルタンクのノズルから噴出されたオイルが周面に付着して回転する転写ロールと、この転写ロールの周面に付着したオイルが転写されるパターン形成用の凸版部を周面に備えて誘電体フィルムの搬送と同期して回転することにより、誘電体フィルムの表面にマスク部となるパターンを印刷する印刷ロールと、この印刷ロールと対向し、誘電体フィルムの裏面に当接するように配設されたバックアップロールからなり、上記転写ロール、印刷ロール、バックアップロールの少なくとも一つに冷却機構を設けた金属化フィルムの製造装置。
【請求項2】
誘電体フィルムの長手方向に金属蒸着電極未形成部となる絶縁マージンを連続して形成する絶縁マージン形成部を設け、この絶縁マージン形成部が、金属付着防止剤としてのオイルを気化してノズルから噴出させるオイルタンクと、このオイルタンクのノズルから噴出されたオイルが付着される誘電体フィルムの裏面に当接するように配設されたバックアップロールからなり、このバックアップロールに冷却機構を設けた請求項1に記載の金属化フィルムの製造装置。
【請求項3】
絶縁マージン形成部の上流に、誘電体フィルムを冷却するための冷却ロールを設けた請求項2に記載の金属化フィルムの製造装置。
【請求項4】
蒸着部の下流に、誘電体フィルムの表面に形成された金属蒸着電極上に保護膜を形成する保護膜形成部を設け、この保護膜形成部が、保護膜としてのオイルを気化してノズルから噴出させるオイルタンクと、このオイルタンクのノズルから噴出されたオイルが付着される誘電体フィルムの裏面に当接するように配設されたバックアップロールからなり、このバックアップロールに冷却機構を設けた請求項1に記載の金属化フィルムの製造装置。
【請求項5】
誘電体フィルムとして、厚みが3.0μm未満のポリプロピレンフィルムを用いる請求項1〜4のいずれか一つに記載の金属化フィルムの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−221506(P2009−221506A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−65386(P2008−65386)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】