説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】良好な保安機能を確保しつつヒューズ部での発熱を抑制し、しかもESR(等価直列抵抗)を低減できる金属化フィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】誘電体フィルムの幅方向に延びると共に、その一端部が接続部5と有効電極部との境界部に位置し、他端部が絶縁マージン部4に連なる分割マージン6を設けることにより有効電極部を長手方向に所定の間隔で分割する。分割された有効電極部をその幅方向のほぼ中央部で接続部側分割電極11と絶縁マージン部側分割電極12とに分割する。両分割電極11、12はヒューズ部9によって接続する。また、接続側分割電極11は、その接続部5側の端部の全幅をそのまま接続部5に接続する。接続部5の蒸着電極膜厚は、有効電極部の蒸着電極膜厚よりも厚くする。第1電極膜3Aのヒューズ部9と第2電極膜3Bのヒューズ部9とは、誘電体フィルムの厚み方向に重ならないように配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、誘電体フィルムに蒸着電極を形成した金属化フィルムを巻回または積層してなる金属化フィルムコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
保安機能を持たせた従来の金属化フィルムコンデンサの一例を、図2に示している(例えば、特許文献1参照)。このコンデンサは、一対となる第1及び第2金属化フィルム31A、31Bを重ね合わせた構造のものである。両金属化フィルム31A、31Bは、略同様なものであるため、ここでは便宜上、第1金属化フィルム31Aについて説明する。この第1金属化フィルム31Aには、その長手方向に沿う一側部に絶縁マージン32が形成されており、絶縁マージン32とは反対側の側部は、メタリコン電極が形成される接続部33となされている。また、第1金属化フィルム31Aの接続部33の近傍には、絶縁スリット34が長手方向に断続的に設けられていて、絶縁スリット34、34間にヒューズ部35が形成されている。そして、この断続的に設けられた絶縁スリット34の中央部と絶縁マージン32とを結ぶように幅方向に延びる分割スリット36を、長手方向に所定の間隔で並設することによって、各金属化フィルム31Aに複数の分割電極37が形成されている。そして、このような構造の第1金属化フィルム31Aと第2金属化フィルム31Bとを、絶縁マージン32が互いに逆の側部に位置するように重ね合わせて、巻回または積層することによって金属化フィルムコンデンサが形成されている。このとき、相対向する一対の分割電極37、37で単位コンデンサが構成される。また、近年では、特に良好な保安性を要求されるコンデンサにおいては、その容量を形成する有効電極部の蒸着電極膜抵抗を高くし、接続部33の蒸着電極膜抵抗を低くしたヘビーエッジ構造が採用されている。
【特許文献1】特開2000−12368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載された金属化フィルムコンデンサにおいては、ヒューズ部35がメタリコン電極に近い部分に配置されているので、大きな電流が流れることになり、この結果、ヒューズ部35での発熱が大きくなってしまうという欠点が生じる。また、このような構造では、ESR(等価直列抵抗)が大きいという欠点もある。さらに、ヘビーエッジ構造のコンデンサにおいて、安定したヒューズ動作を行わせるためには、ヒューズ部35が蒸着金属厚さの厚い接続部33に形成されるのを防止するのが好ましいが、このような構造を確保するのには高い加工精度を要求されるという製造上の問題もある。
【0004】
この発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、良好な保安機能を確保しつつヒューズ部での発熱を抑制し、しかもESR(等価直列抵抗)を低減できる金属化フィルムコンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、この発明の金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルムの一方側に第1電極膜3Aを、また誘電体フィルムの他方側に第2電極膜3Bをそれぞれ配置してなり、上記第1電極膜3Aは、容量を形成する有効電極部となる蒸着電極を有し、その長手方向に沿う一側部に絶縁マージン部4を、また絶縁マージン部4の反対側の他側部にメタリコン電極が形成される接続部5を長手方向に沿って帯状に設けた構造であって、誘電体フィルムの幅方向に延びると共に、その一端部が上記接続部5と有効電極部との境界部に位置し、他端部が上記絶縁マージン部4に連なる分割マージン6を設けることにより上記有効電極部を長手方向に所定の間隔で分割し、さらにこの分割された有効電極部をその幅方向のほぼ中央部で接続部側分割電極11と絶縁マージン部側分割電極12とに分割すると共に、両分割電極11、12をヒューズ部9によって接続し、かつ上記接続側分割電極11は、その接続部5側の端部の全幅をそのまま接続部5に接続した構造であり、また、第2電極膜3Bは、第1電極膜3Aと略同一構造のものであって、絶縁マージン部4側と接続部5側とを互いに逆にして配置した構造であり、一方の接続部側分割電極11と他方の絶縁マージン部側分割電極12とが誘電体フィルムを介して対向するように構成したことを特徴としている。この場合、分割マージン6によって長手方向に所定の間隔で分割された分割電極は、その接続部5側の端部の全幅が、従来のようにヒューズ部を介してではなく、そのまま接続部5と連続的に接続することになる。
【0006】
また、上記接続部5の蒸着電極膜厚は、有効電極部の蒸着電極膜厚よりも厚くしていることを特徴とする。さらに、上記第1電極膜3Aのヒューズ部9と第2電極膜3Bのヒューズ部9とは、誘電体フィルムの厚み方向に重ならないようにフィルムの幅方向にずらせて配置している。
【0007】
上記金属化フィルムコンデンサは、第1誘電体フィルム2Aに第1電極膜3Aを、第2誘電体フィルム2Bに第2電極膜3Bをそれぞれ形成してこれらを重ね合わせたり、誘電体フィルムの両面に第1電極膜3Aと第2電極膜3Bとを形成した両面金属化フィルムと、金属が蒸着されていない誘電体フィルムとを重ね合わせたりすることによって形成できる。そしてこれらを、巻回または積層することで金属化フィルムコンデンサを構成する。
【発明の効果】
【0008】
この発明の金属化フィルムコンデンサにおいては、自己保安機能を有しながら、ヒューズ部9の発熱を抑制できる。すなわち、メタリコン電極に近い部分には大きな電流が流れ、離れるほど電流は小さくなっていくものであるため、流れる電流によるヒューズ部9の発熱を少なくでき、温度上昇を抑制できる。
【0009】
また、ヘビーエッジ構造のコンデンサにおいては、従来はヒューズ部9を正確に配置するために高い加工精度を要求されたが、この発明の金属化フィルムコンデンサによれば、従来のような高い加工精度は必要がなく、安価に製造可能である。また、ヒューズ部9の寸法調整を、膜厚の安定した有効電極部で行えるので、ヒューズ部9での抵抗値を容易に調整可能である。
【0010】
さらに、第1電極膜3Aのヒューズ部9と第2電極膜3Bのヒューズ部9を幅方向にずらせることにより、発熱位置を分散させることができ、これにより温度上昇の抑制効果は、一段と有効に発揮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、この発明の金属化フィルムコンデンサの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。この発明の一実施形態に係る金属化フィルムコンデンサは、図1に示すように、一対となる第1及び第2金属化フィルム1A、1Bを重ね合わせた構造のものである。両金属化フィルム1A、1Bは、第1及び第2誘電体フィルム2A、2Bに、第1及び第2電極膜3A、3Bを蒸着したもので、両者は、略同様なものであるため、ここでは便宜上、第1金属化フィルム1Aについて説明する。第1電極膜3Aは、容量を形成する有効電極部となる蒸着電極を有し、その長手方向に沿う一側部に絶縁マージン部(蒸着電極のない部分)4を、また絶縁マージン部4の反対側の他側部にメタリコン電極が接続される接続部5がそれぞれ形成されている。この接続部5は、金属化フィルム1Aの長手方向に延びる連続した帯状の部分として形成されている。また、このコンデンサにおいては、メタリコン電極に接続される接続部5の蒸着電極膜厚を、有効電極部の蒸着電極膜厚よりも厚くした構造、すなわち、いわゆるヘビーエッジ構造が採用されている。
【0012】
また、第1電極膜3Aには、幅方向に延びる分割マージン(蒸着金属のない部分)6が形成され、第1電極膜3Aにおける有効電極部は、長手方向に所定間隔で分割されている。この場合、分割マージン6は、その一端部が上記接続部5と有効電極部との境界部に位置し、他端部が上記絶縁マージン部4に連なるように形成されている。その結果、分割マージン6によって長手方向に所定の間隔で分割された分割電極は、その接続部5側の端部の全幅(分割マージン間隔の全幅)が、従来のようにヒューズ部等を介してではなく、そのまま接続部5と連続的に接続することになる。さらに、上記有効電極部のほぼ中央部に、絶縁スリット(蒸着金属のない部分)7が長手方向に所定の間隔をおいて断続的に設けられている。そして、絶縁スリット7、7の先端部間に残存した蒸着金属によってヒューズ部9が形成されている。なお、このような状態は、絶縁スリット7が連続的に形成され、絶縁スリット7の適所に蒸着金属によってヒューズ部9が形成されているともいえる。そして、この絶縁スリット7によって、有効電極部がその幅方向のほぼ中央部で接続部側分割電極11と絶縁マージン側分割電極12とに分割され、両分割電極11、12がヒューズ部9によって接続した構造となされている。
【0013】
また、第2電極膜3Bは、第1電極膜3Aと略同一構造のものであって、絶縁マージン部4側と接続部5側とを互いに逆にして配置した構造であり、第1金属化フィルム1Aと第2金属化フィルム1Bとを重ね合わせたときに、一方の接続部側分割電極11と他方の絶縁マージン部側分割電極12とが誘電体フィルムを介して対向するように構成されている。そして、第1金属化フィルム1Aと第2金属化フィルム1Bとを重ね合わせた状態において、これを積層したり、巻回したりすることによって、コンデンサ素子を構成する。
【0014】
上記実施形態の金属化フィルムコンデンサにおいては、自己保安機能を有しながら、ヒューズ部9の発熱を抑制できる。すなわち、メタリコン電極に近い部分には大きな電流が流れ、離れるほど電流は小さくなっていくものであるため、ヒューズ部9を接続部5に沿って設ける従来の場合よりも、流れる電流によるヒューズ部9の発熱を少なくでき、温度上昇を抑制できることになるのである。また、この実施形態においては、第1電極膜3Aと第2電極膜3Bとに設けられるヒューズ部9(及び絶縁スリット7)は、誘電体フィルム2A、2Bの厚み方向、すなわち両電極3A、3Bの対向方向(図において紙面に垂直な方向)には重ならず、金属化フィルム1A、1Bの幅方向(絶縁スリット7の延設方向とは交差する方向)に位置をずらせて(離して)配置しているが、これは、ヒューズ部9での発熱を分散させて熱の集中を防止するためである。このような構成を採用することによってもコンデンサの温度上昇を一段と抑制できる。また、この実施形態によれば、分割マージン6を、有効電極部だけでなく、接続部5をも併せて分割する従来の場合に比較して、ESR(等価直列抵抗)を小さくできる。
【0015】
また、メタリコン電極に接続される接続部5の蒸着電極膜厚を、有効電極部の蒸着電極膜厚よりも厚くした構造、すなわち、いわゆるヘビーエッジ構造のコンデンサにおいては、ヒューズ部9を接続部5に沿って設ける従来の構造では、ヒューズ部9を安定して動作させるために、ヒューズ部9が接続部5にかからない(ヒューズ部9を接続部5に設けない)ようにするために、高い加工精度を要求されたが、上記実施形態によれば、従来のような高い加工精度は必要がなく、安価に製造可能である。また、ヒューズ部9の寸法調整を、膜厚の安定した有効電極部で行えるので、ヒューズ部9での抵抗値を容易に調整可能である。さらに、第1電極膜3Aのヒューズ部9(及び絶縁スリット7)と第2電極膜3Bのヒューズ部9(及び絶縁スリット7)を幅方向にずらせることにより、発熱位置を分散させることができ、これにより温度上昇の抑制効果は、一段と有効に発揮される。
【0016】
以上にこの発明の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、実施形態のように、第1誘電体フィルム2Aに第1電極3Aを、第2誘電体フィルム2Bに第2電極3Bをそれぞれ形成してこれらを重ね合わせて巻回または積層してコンデンサを構成してもよいが、誘電体フィルムの両面に第1電極3Aと第2電極3Bとを形成した両面金属化フィルムと、金属が蒸着されていない誘電体フィルムとを重ね合わせて巻回または積層することによってコンデンサを構成してもよい。また、上記絶縁マージン部側分割電極12を長手方向に所定の間隔でさらに狭幅に複数に分割し、狭幅に分割された複数の絶縁マージン部側分割電極と接続部側分割電極11とをヒューズ部9を介して接続するように構成してもよい。なお、第1電極膜3Aと第2電極膜3Bとに設けられるヒューズ部9(及び絶縁スリット7)を幅方向にずらせて配置する構造は、発熱の少ない場合には必ずしも必要なことではなく、場合によっては、互いに重ねて配置することもある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明の一実施形態に係る金属化フィルムコンデンサの金属化フィルムの平面図である。
【図2】従来の金属化フィルムコンデンサの金属化フィルムの平面図である。
【符号の説明】
【0018】
1A、1B・・金属化フィルム、2A、2B・・誘電体フィルム、3A、3B・・電極膜、4・・絶縁マージン部、5・・接続部、6・・分割マージン、7・・絶縁スリット、9・・ヒューズ部、11・・接続部側分割電極、12・・マージン部側分割電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体フィルムの一方側に第1電極膜(3A)を、また誘電体フィルムの他方側に第2電極膜(3B)をそれぞれ配置してなり、上記第1電極膜(3A)は、容量を形成する有効電極部となる蒸着電極を有し、その長手方向に沿う一側部に絶縁マージン部(4)を、また絶縁マージン部(4)の反対側の他側部にメタリコン電極が形成される接続部(5)を長手方向に沿って帯状に設けた構造であって、誘電体フィルムの幅方向に延びると共に、その一端部が上記接続部(5)と有効電極部との境界部に位置し、他端部が上記絶縁マージン部(4)に連なる分割マージン(6)を設けることにより上記有効電極部を長手方向に所定の間隔で分割し、さらにこの分割された有効電極部をその幅方向のほぼ中央部で接続部側分割電極(11)と絶縁マージン部側分割電極(12)とに分割すると共に、両分割電極(11)(12)をヒューズ部(9)によって接続し、かつ上記接続側分割電極(11)は、その接続部(5)側の端部の全幅をそのまま接続部(5)に接続した構造であり、また、第2電極膜(3B)は、第1電極膜(3A)と略同一構造のものであって、絶縁マージン部(4)側と接続部(5)側とを互いに逆にして配置した構造であり、一方の接続部側分割電極(11)と他方の絶縁マージン部側分割電極(12)とが誘電体フィルムを介して対向するように構成したことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
上記接続部(5)の蒸着電極膜厚は、有効電極部の蒸着電極膜厚よりも厚くしていることを特徴とする請求項1の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
上記第1電極膜(3A)のヒューズ部(9)と第2電極膜(3B)のヒューズ部(9)とは、誘電体フィルムの厚み方向に重ならないようにフィルムの幅方向にずらせて配置していることを特徴とする請求項1または請求項2の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項4】
第1誘電体フィルム(2A)に第1電極膜(3A)を、第2誘電体フィルム(2B)に第2電極膜(3B)をそれぞれ形成してこれらを重ね合わせたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの金属化フィルムコンデンサ。
【請求項5】
誘電体フィルムの両面に第1電極膜(3A)と第2電極膜(3B)とを形成した両面金属化フィルムと、金属が蒸着されていない誘電体フィルムとを重ね合わせたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかの金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−16047(P2010−16047A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−172428(P2008−172428)
【出願日】平成20年7月1日(2008.7.1)
【出願人】(390022460)株式会社指月電機製作所 (99)
【Fターム(参考)】