説明

金属化フィルムコンデンサ

【課題】金属膜の端面での電界集中を緩和して静電容量の低下を抑制できると共に、「鳴き」の発生を抑制できる金属化フィルムコンデンサの実現。
【解決手段】一側辺に沿ってマージン部014が形成されるように、誘電体フィルム012の表面に金属膜016を蒸着して成る複数の金属化フィルム010を、上記複数の金属化フィルム010同士のマージン部014が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子018を形成すると共に、該コンデンサ素子018の両端面にメタリコン電極020を形成して成り、上記金属膜016をアルミニウムで構成すると共に、上記マージン部014と接する金属膜016の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜024を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る複数の金属化フィルムを積層又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成る金属化フィルムコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着させた複数の金属化フィルムを積層又は積層巻回して成るコンデンサ素子を用いた金属化フィルムコンデンサは、コンデンサ素子に部分的な絶縁破壊を生じても再び絶縁性を回復する自己回復性に優れているため、家庭用電気製品をはじめとする種々の電気・電子機器等に広く用いられている。
【0003】
この金属化フィルムコンデンサは、例えば図22〜図24に示すように、誘電体フィルム70の表面に、一側辺に沿ってマージン部72が形成されるように金属膜74を蒸着して金属化フィルム76を構成し、斯かる構造を有する一対の金属化フィルム76,76を、図25及び図26に示すように、それぞれのマージン部72が反対側に配されるように積層又は積層巻回してコンデンサ素子78を形成すると共に、該コンデンサ素子78の両端面に電極材料を溶射してメタリコン電極80を形成することにより金属化フィルムコンデンサ82が構成される(図27)。
【0004】
尚、上記構造の金属化フィルムコンデンサ82は、例えば、特開平5−304044号公報(特許文献1)に開示されている。
【特許文献1】特開平5−304044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記構造の金属化フィルムコンデンサ82は、異常電圧が印可されて誘電体フィルム70に部分的な絶縁破壊が生じても再び絶縁性を回復する自己回復性を有するものであるが、異常電圧が繰り返し印可された場合には、、部分的絶縁破壊の発生頻度が増大することにより静電容量の著しい低下を招くこととなる。
そして、マージン部72と接する金属膜74の端面74a(図23)が、誘電体フィルム70の表面に対して「略垂直」となっているため、異常電圧の印可時に金属膜74の端面74aに電界が集中して放電が発生し、これが誘電体フィルム70に絶縁破壊を生じさせる要因となっていることが判明した。
【0006】
また、上記構造の金属化フィルムコンデンサ82に高調波が印可されると、いわゆる「鳴き」と称される現象を発生することがあった。斯かる金属化フィルムコンデンサ82の「鳴き」とは、コンデンサに交流電圧が印加された際に電極間にクーロン力が働き、クーロン力の周期的変化により金属化フィルム70が振動して発する音のことであり、振動が可聴周波数範囲(20Hz〜20kHz)である場合にうなり音として聞こえるものである。
【0007】
この発明は、従来の上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、金属膜の端面での電界集中を緩和して静電容量の低下を抑制できると共に、「鳴き」の発生を抑制できる金属化フィルムコンデンサを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサは、
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記金属膜をアルミニウムで構成すると共に、
上記マージン部と接する金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項2に記載の金属化フィルムコンデンサは、請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサにおいて、
上記傾斜金属膜の幅が0.2mm〜0.8mmであることを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項3に記載の金属化フィルムコンデンサは、
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着すると共に、絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成して成る複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面に、上記分割電極と接続されるメタリコン電極を形成し、さらに、誘電体フィルムを介して対向する一対の分割電極で単位コンデンサを構成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記金属膜をアルミニウムで構成すると共に、
上記単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項4に記載の金属化フィルムコンデンサは、
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着すると共に、絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成して成る一方の金属化フィルムと、一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る他方の金属化フィルムとを交互に積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面に、一方の金属化フィルムの分割電極及び他方の金属化フィルムの金属膜と接続されるメタリコン電極を形成し、さらに、誘電体フィルムを介して対向する一方の金属化フィルムの分割電極と他方の金属化フィルムの金属膜とで単位コンデンサを構成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記金属膜をアルミニウムで構成すると共に、
上記単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項5に記載の金属化フィルムコンデンサは、請求項3又は4に記載の金属化フィルムコンデンサにおいて、
上記分割電極とメタリコン電極との間に、分割電極より幅狭の金属膜で構成されたヒューズ機能部を形成したことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項6に記載の金属化フィルムコンデンサは、請求項1乃至5の何れかに記載の金属化フィルムコンデンサにおいて、
上記傾斜金属膜の表面が凸凹状と成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項7に記載の金属化フィルムコンデンサは、請求項1乃至6の何れかに記載の金属化フィルムコンデンサにおいて、
上記傾斜金属膜が形成される箇所の金属膜端面を曲面形状と成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサは、マージン部と接する金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜の端面での電界集中が緩和され、電界集中で生成される放電による誘電体フィルムの部分的絶縁破壊の発生頻度が減少するため、静電容量の低下を抑制することができる。
また、金属膜をアルミニウムで構成したので、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際の「鳴き」の発生を抑制することができる。すなわち、アルミニウムを誘電体フィルムに蒸着させる金属膜の構成材料として用いた場合、アルミニウムは凝着力が大きく、金属化フィルム間の密着性が高くなることから、「鳴き」の発生を抑制することができるのである。
【0016】
また、請求項3又は4に記載の金属化フィルムコンデンサは、単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことにより、異常電圧の印可時に金属膜の端面での電界集中が緩和されるため、単位コンデンサの分離による静電容量の低下を抑制することができる。
また、金属膜をアルミニウムで構成したので、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際の「鳴き」の発生を抑制することができる。すなわち、アルミニウムを誘電体フィルムに蒸着させる金属膜の構成材料として用いた場合、アルミニウムは凝着力が大きく、金属化フィルム間の密着性が高くなることから、「鳴き」の発生を抑制することができるのである。
【0017】
請求項6に記載の金属化フィルムコンデンサの如く、傾斜金属膜の表面が凸凹状と成されていると、電界を傾斜金属膜の多数の箇所に分散させることができるため、電界集中を緩和することができる。
【0018】
また、請求項7に記載の金属化フィルムコンデンサの如く、傾斜金属膜が形成される箇所の金属膜端面を「曲面形状」と成した場合には、電界集中が生じ易い金属膜の端面の距離が長くなるため、誘電体フィルムの部分的絶縁破壊や単位コンデンサの分離の要因である放電の発生を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1〜図3は、本発明に係る第1の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルム010を示すものであり、図1は平面図、図2は図1のC−C拡大断面図、図3は図1の中央横断面図である。
上記金属化フィルム010は、ポリプロピレンやポリエステル等より成る誘電体フィルム012の表面に、一側辺に沿ってマージン部014が形成されるように金属膜016を10nm〜80nmの厚さで蒸着して成る。
上記金属膜016はアルミニウムで構成されている。
【0020】
上記構造を有する一対の金属化フィルム010,010を、図4及び図5に示すように、それぞれのマージン部014が反対側に配されるように積層又は積層巻回し、これにヒートプレスを施してコンデンサ素子018を形成すると共に、該コンデンサ素子018の両端面に電極材料を溶射してメタリコン電極020を形成することにより第1の金属化フィルムコンデンサ022が構成される(図6)。
【0021】
本発明においては、マージン部014と接する金属膜016の端面16aに、傾斜金属膜024が形成されている(図1及び図2参照)。
傾斜金属膜024は、金属膜016と同一の材料で構成され、金属膜016の端面016aから外側(マージン部014側)に向かって厚さが徐々に減少する傾斜形状と成されている。
【0022】
この傾斜金属膜024は、例えば、誘電体フィルム012への金属膜016の蒸着工程において、マージン部014と接する金属膜016の端面016a部分に、外側へ向かって蒸着量が減少するよう金属蒸気を導いて形成される。この場合、傾斜金属膜024を構成する金属粒子は、金属膜016を構成する金属粒子より疎らに蒸着されるため、傾斜金属膜024の表面は凸凹状と成される。尚、この場合、図1のZ部を拡大して観察すると、図7に示すように、暗く見える金属膜016と明るく見えるマージン部014との間に傾斜金属膜024によるボカシが形成されているように観察される。
【0023】
而して、本発明の第1の金属化フィルムコンデンサ022にあっては、マージン部014と接する金属膜016の端面16aに外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜024を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜016の端面016aでの電界集中が緩和され、電界集中で生成される放電による誘電体フィルム012の部分的絶縁破壊の発生頻度が減少するため、静電容量の低下を抑制することができる。
また、傾斜金属膜024の表面が凸凹状と成されていると、電界を傾斜金属膜024の多数の箇所に分散させることができるため、電界集中を緩和することができる。
【0024】
また、本発明の第1の金属化フィルムコンデンサ022にあっては、金属膜016をアルミニウムで構成したので、高耐湿性が実現されると共に、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際の「鳴き」の発生を抑制することができる。すなわち、アルミニウムを誘電体フィルム012に蒸着させる金属膜016の構成材料として用いた場合、他の材料(亜鉛やアルミニウム−亜鉛合金等)に比べてアルミニウムは凝着力が大きく、ヒートプレスしてコンデンサ素子018を形成すると金属化フィルム010間の密着性が高くなることから、「鳴き」の発生を抑制することができるのである。
【0025】
尚、上記第1の金属化フィルムコンデンサ022において、マージン部014と金属膜016の端面16aとの間に形成する傾斜金属膜024の幅D(図1参照)は、0.20mm〜0.80mmと成すのが好ましい。
すなわち、本発明者は、傾斜金属膜024の幅Dを0.05mm〜0.80mmの範囲内において0.05mm単位で変えた複数の第1の金属化フィルムコンデンサ022を各10個づつ準備し、各第1の金属化フィルムコンデンサ022にIEC規格による試験(110℃の雰囲気の中でAC388Vを連続で印可すると共に、1時間に1回印可電圧をAC1000Vに0.1秒間上昇させることを1000時間に亘って行う試験)を行った場合の静電容量変化率を測定した。尚、マージン部014として必要な幅、及び、コンデンサとして機能する金属膜016として必要な幅を考慮すると、傾斜金属膜024の幅Dは0.80mmが限界であり、0.80mmより大きくすることは実用的でない。
上記測定の結果、図8のグラフに示す通り、傾斜金属膜024の幅Dが0.20mm〜0.80mmの範囲の場合には、静電容量変化率を約5%以内に抑えることができ効果的であることが判った。
【0026】
図9〜図12は、本発明に係る保安機構付きの第2の金属化フィルムコンデンサを構成する第1の金属化フィルム10を示すものであり、図9は平面図、図10は図9のX−X拡大断面図、図11は図9のY−Y拡大断面図、図12は図9の中央横断面図である。
上記第1の金属化フィルム10は、ポリプロピレンやポリエステル等より成る誘電体フィルム12の表面に、一側辺に沿ってマージン部14が形成されるように金属膜16を10nm〜80nmの厚さで蒸着して成る。
上記金属膜16はアルミニウムで構成されている。
【0027】
また、上記マージン部14と対向する一側辺の金属膜16は後述するメタリコン電極と接続するメタリコン接続部18と成されている。
さらに、上記メタリコン接続部18に沿って所定間隔で複数の第1の絶縁スリット20が形成されており、第1の絶縁スリット20,20間に、金属膜16で構成されるヒューズ機能部22が形成されている。
また、上記各第1の絶縁スリット20とマージン部14とを接続する誘電体フィルム12の幅方向に延びる複数の第2の絶縁スリット24が所定間隔で並設されている。
上記第1の絶縁スリット20及び第2の絶縁スリット24は、金属膜16が蒸着されていない部分である。
【0028】
而して、上記第1の絶縁スリット20及び第2の絶縁スリット24を形成したことにより、誘電体フィルム12表面の金属膜16に、上記第1の絶縁スリット20及び第2の絶縁スリット24で分離区画された複数の分割電極26が形成される。各分割電極26は、上記ヒューズ機能部22を介してメタリコン接続部18に接続されている。
尚、図1に示すように、ヒューズ機能部22を構成する金属膜16は、分割電極26を構成する金属膜16より幅狭と成されている。
【0029】
図13及び図14に示すように、複数の上記第1の金属化フィルム10,10をそれぞれのマージン部14が反対側に配されるように積層又は積層巻回してコンデンサ素子27を形成すると共に、該コンデンサ素子27の両端面に半田や丹銅等の電極材料を溶射してメタリコン電極28を形成することにより本発明の第2の金属化フィルムコンデンサ29が構成される(図15)。
この際、各分割電極16は、メタリコン接続部18を介してメタリコン電極28と接続され、また、誘電体フィルム12を介して対向する一対の分割電極26,26で単位コンデンサが構成されることとなる。
【0030】
本発明においては、誘電体フィルム12を介して対向する金属膜16の端面16aに、傾斜金属膜30が形成されている(図13〜図15参照)。
すなわち、誘電体フィルム12を介して対向する分割電極26の金属膜16で区画される領域が単位コンデンサとして機能する領域Cであり、斯かる単位コンデンサとして機能する領域Cを形成する位置の金属膜端面16aに、上記傾斜金属膜30が形成されるのである(図15)。
傾斜金属膜30は、金属膜16と同一の材料で構成され、金属膜16の端面16aから外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜形状と成されている。
【0031】
この傾斜金属膜30は、例えば、誘電体フィルム12への金属膜16の蒸着工程において、コンデンサとして機能する領域を形成する金属膜16の端面16a部分に、外側へ向かって蒸着量が減少するよう金属蒸気を導いて形成される。この場合、傾斜金属膜30を構成する金属粒子は、金属膜16を構成する金属粒子より疎らに蒸着されるため、傾斜金属膜30の表面は凸凹状と成される。
【0032】
本発明の上記第2の金属化フィルムコンデンサ29は、異常電圧が印可されて誘電体フィルム12の一部に絶縁破壊が生じると、絶縁破壊箇所の分割電極26,26を流れる電流によってヒューズ機能部22の金属膜16が溶融破断し、絶縁破壊箇所の単位コンデンサを構成する分割電極26,26をメタリコン電極28から分離することから、第2の金属化フィルムコンデンサ29の終局的な破壊や発火を防止することができる。
【0033】
而して、本発明の第2の金属化フィルムコンデンサ29にあっては、単位コンデンサとして機能する領域Cを形成する位置の金属膜16の端面16aに、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜30を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜16の端面16aでの電界集中が緩和されてヒューズ機能部22の破断が減少するため、単位コンデンサの分離による静電容量の低下を抑制することができる。
また、傾斜金属膜30の表面が凸凹状と成されていると、電界を傾斜金属膜30の多数の箇所に分散させることができるため、電界集中を緩和することができる。
【0034】
また、本発明の第2の金属化フィルムコンデンサ29にあっては、金属膜16をアルミニウムで構成したので、上記第1の金属化フィルムコンデンサ022と同様に、高耐湿性が実現されると共に、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際の「鳴き」の発生を抑制することができる。
【0035】
図16は、第1の金属化フィルム10を構成する金属膜16の端面16a形状の変形例を示す要部拡大平面図である。すなわち、図9に示した第1の金属化フィルム10を構成する金属膜16の端面16a形状は「平面形状」であったが、図16の変形例は、傾斜金属膜30が形成される箇所(単位コンデンサとして機能する領域Cを形成する位置)の金属膜16の端面16aを「曲面形状」と成し、斯かる曲面形状と成した金属膜16の端面16aに、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜30を形成した点に特徴を有するものである。
而して、傾斜金属膜30が形成される箇所の金属膜16の端面16aを「曲面形状」と成したことにより、電界集中が生じ易い金属膜16の端面16aの距離が「平面形状」の場合に比べて長くなるため、電界集中の生じる箇所が分散化され、単位コンデンサの分離の要因である放電の発生を抑制することができる。
【0036】
尚、図示は省略するが、上記第1の金属化フィルムコンデンサ022を構成する金属化フィルム010においても、傾斜金属膜024が形成される箇所の金属膜016の端面016a形状を、図16に示す第1の金属化フィルム10と同様に、「曲面形状」と成し、斯かる曲面形状と成した金属膜016の端面016aに、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜024を形成しても良い。
この場合も、電界集中が生じ易い金属膜016の端面016aの距離が「平面形状」の場合に比べて長くなるため、電界集中の生じる箇所が分散化され、誘電体フィルム012に部分的絶縁破壊が生じる要因である放電の発生を抑制することができる。
【0037】
上記においては、複数の第1の金属化フィルム10同士を積層又は積層後巻回して第2の金属化フィルムコンデンサ29を構成する場合について説明したが、本発明の保安機構付の第2の金属化フィルムコンデンサ29はこれに限定されるものではない。
すなわち、図17に示すように、一側辺に沿ってマージン部14が形成されるように、誘電体フィルム12の表面にアルミニウムより成る金属膜16を蒸着して成る第2の金属化フィルム32と、上記第1の金属化フィルム10とを、それぞれのマージン部14が反対側に配されるように交互に積層又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極28を形成することにより金属化フィルムコンデンサを構成しても良い。この際、第1の金属化フィルム10の分割電極26及び第2の金属化フィルム32の金属膜16はメタリコン電極と接続される(図示省略)。
この場合にも、図18に示すように、誘電体フィルム12を介して対向する第1の金属化フィルム10の分割電極26の金属膜16と第2の金属化フィルム32の金属膜16とで区画される領域が単位コンデンサとして機能する領域Cとなり、斯かる単位コンデンサとして機能する領域Cを形成する位置の第1の金属化フィルム10の金属膜端面16a及び第2の金属化フィルム32の金属膜端面16aに、上記傾斜金属膜30が形成される。
【0038】
図19は、本発明に係る第3の金属化フィルム34を示す平面図であり、この第3の金属化フィルム34は、誘電体フィルム12の表面に、一側辺に沿ってマージン部14が形成されるようにアルミニウムにより成る金属膜16を蒸着して成り、また、上記マージン部14と、マージン部14と対向する一側辺とを接続する幅方向に延びる複数の絶縁スリット36が所定間隔で並設されている。
而して、上記絶縁スリット36を形成したことにより、誘電体フィルム12表面の金属膜16に、上記絶縁スリット36で分離区画された複数の分割電極38が形成される。
【0039】
尚、この第3の金属化フィルム34の場合には、各分割電極38における、マージン部14側と対向する側の側辺がメタリコン電極と直接接続される構造であり、異常電圧が印可されて誘電体フィルム12の一部に絶縁破壊が生じると、絶縁破壊箇所の分割電極38,38を流れる電流によってメタリコン電極との接続箇所が破断し、絶縁破壊箇所の単位コンデンサを構成する分割電極38をメタリコン電極から分離する仕組みである。
【0040】
図20及び図21に示すように、複数の上記第3の金属化フィルム34,34をそれぞれのマージン部14が反対側に配されるように積層又は積層後巻回して図示しないコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成することにより金属化フィルムコンデンサ(図示省略)が構成されるのである。
【0041】
而して、上記第3の金属化フィルム34,34を用いた場合においても、誘電体フィルム12を介して対向する第3の金属化フィルム34の分割電極38の金属膜16で区画される領域が単位コンデンサとして機能する領域Cであり、斯かる単位コンデンサとして機能する領域Cを形成する位置の金属膜端面16aに、上記傾斜金属膜30が形成されている(図21)。
【0042】
第3の金属化フィルム34,34を用いた第2の金属化フィルムコンデンサ29にあっても、単位コンデンサとして機能する領域Cを形成する位置の金属膜16の端面16aに、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜30を形成したので、異常電圧の印可時に金属膜16の端面16aでの電界集中が緩和され、分割電極38とメタリコン電極との接続箇所の破断が減少するため、単位コンデンサの分離による静電容量の低下を抑制することができる。
また、金属膜16をアルミニウムで構成したので、高耐湿性が実現されると共に、金属化フィルムコンデンサに高調波が印可された際の「鳴き」の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る第1の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムを示す平面図である。
【図2】図1のC−C拡大断面図である。
【図3】図1の中央横断面図である。
【図4】一対の金属化フィルムを積層する状態を示す要部平面図である。
【図5】一対の金属化フィルムを積層する状態を示す拡大断面図である。
【図6】本発明に係る第1の金属化フィルムコンデンサを示す部分断面図である。
【図7】図1のZ部を拡大して観察した状態を模式的に示す説明図である。
【図8】傾斜金属膜の幅と静電容量変化率との関係を示すグラフである。
【図9】本発明の第2の金属化フィルムコンデンサを構成する第1の金属化フィルムを示す平面図である。
【図10】図9のX−X拡大断面図である。
【図11】図9のY−Y拡大断面図である。
【図12】図9の中央横断面図である。
【図13】一対の第1の金属化フィルムを積層する状態を示す要部平面図である。
【図14】一対の第1の金属化フィルムを積層する状態を示す拡大断面図である。
【図15】本発明に係る第2の金属化フィルムコンデンサを示す部分断面図である。
【図16】第1の金属化フィルムの金属膜の端面形状の変形例を示す要部拡大平面図である。
【図17】第1の金属化フィルムと第2の金属化フィルムとを積層する状態を示す要部平面図である。
【図18】第1の金属化フィルムと第2の金属化フィルムとを積層する状態を示す拡大断面図である。
【図19】本発明の第2の金属化フィルムコンデンサを構成する第3の金属化フィルムを示す平面図である。
【図20】一対の第3の金属化フィルムを積層する状態を示す要部平面図である。
【図21】一対の第3の金属化フィルムを積層する状態を示す拡大断面図である。
【図22】従来の金属化フィルムコンデンサを構成する金属化フィルムを示す平面図である。
【図23】図22のA−A拡大断面図である。
【図24】図22のB−B拡大断面図である。
【図25】一対の従来の金属化フィルムを積層する状態を示す要部平面図である。
【図26】一対の従来の金属化フィルムを積層する状態を示す拡大断面図ある。
【図27】従来の金属化フィルムコンデンサを示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0044】
010 第1の金属化フィルムコンデンサの金属化フィルム
012 誘電体フィルム
014 マージン部
016 金属膜
016a 金属膜の端面
018 コンデンサ素子
020 メタリコン電極
022 第1の金属化フィルムコンデンサ
024 傾斜金属膜
10 第2の金属化フィルムコンデンサの第1の金属化フィルム
12 誘電体フィルム
14 マージン部
16 金属膜
16a 金属膜の端面
18 メタリコン接続部
20 第1の絶縁スリット
22 ヒューズ機能部
24 第2の絶縁スリット
26 分割電極
27 コンデンサ素子
28 メタリコン電極
29 第2の金属化フィルムコンデンサ
30 傾斜金属膜
C 単位コンデンサとして機能する領域
32 第2の金属化フィルムコンデンサの第2の金属化フィルム
34 第2の金属化フィルムコンデンサの第3の金属化フィルム
36 第3の金属化フィルムの絶縁スリット
38 第3の金属化フィルムの分割電極


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面にメタリコン電極を形成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記金属膜をアルミニウムで構成すると共に、
上記マージン部と接する金属膜の端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項2】
上記傾斜金属膜の幅が0.2mm〜0.8mmであることを特徴とする請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項3】
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着すると共に、絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成して成る複数の金属化フィルムを、上記複数の金属化フィルム同士のマージン部が反対側に配されるように積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面に、上記分割電極と接続されるメタリコン電極を形成し、さらに、誘電体フィルムを介して対向する一対の分割電極で単位コンデンサを構成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記金属膜をアルミニウムで構成すると共に、
上記単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項4】
一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着すると共に、絶縁スリットを設けて上記金属膜に複数の分割電極を形成して成る一方の金属化フィルムと、一側辺に沿ってマージン部が形成されるように、誘電体フィルムの表面に金属膜を蒸着して成る他方の金属化フィルムとを交互に積層し、又は積層巻回してコンデンサ素子を形成すると共に、該コンデンサ素子の両端面に、一方の金属化フィルムの分割電極及び他方の金属化フィルムの金属膜と接続されるメタリコン電極を形成し、さらに、誘電体フィルムを介して対向する一方の金属化フィルムの分割電極と他方の金属化フィルムの金属膜とで単位コンデンサを構成して成る金属化フィルムコンデンサであって、
上記金属膜をアルミニウムで構成すると共に、
上記単位コンデンサとして機能する領域を形成する位置の金属膜端面に、外側に向かって厚さが徐々に減少する傾斜金属膜を形成したことを特徴とする金属化フィルムコンデンサ。
【請求項5】
上記分割電極とメタリコン電極との間に、分割電極より幅狭の金属膜で構成されたヒューズ機能部を形成したことを特徴とする請求項3又は4に記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項6】
上記傾斜金属膜の表面が凸凹状と成されていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の金属化フィルムコンデンサ。
【請求項7】
上記傾斜金属膜が形成される箇所の金属膜端面を曲面形状と成したことを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の金属化フィルムコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−222127(P2012−222127A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85952(P2011−85952)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】