説明

金属基材担持粉末用スラリー及びこれを用いた金属基材担持触媒担体

【課題】 金属基材に粉末を強固に担持させることを目的とする。
【解決手段】 少なくともべーマイト及び/またはセラミック接着剤を含み、好ましくはTiO−SiO、TiO−Al、TiO−ZrO、ZrO−Al、TiO−P、TiO−B、γ−Al、β−Al、δ−Al、θ−Al、TiO、SiO、ZrOから選択される少なくとも1種類以上の粉末と、シリカゾルまたはアルミナゾル、あるいはそれらの両方とをさらに含む金属基材担持用粉末スラリー、および金属基材担持用粉末スラリーを、金属基材に担持させて形成されるコート層を含んでなる金属基材担持触媒担体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属基材担持粉末用スラリーに関する。本発明は、特には、金属製の基材に強固に触媒粉末を固着させることができる金属基材担持粉末用スラリー、及びこれを用いて製造された金属基材担持触媒担体に関する。
【背景技術】
【0002】
水素製造触媒等の触媒において、基材に触媒粉末を担持させるためには、通常、シリカゾル、アルミナゾル等のゾル成分を主成分とするゾル状のバインダを基材上にコートして用いていた。このようなバインダは、基材としてコージェライトなどのセラミックスを用いる場合には、基材によく固着し、耐久性を有するものである。しかし、金属製の基材に、かかるゾル状のバインダをコートして触媒粉末を担持させると、触媒の使用によりコートが剥離しやすく、耐久性が低いという問題があった。
【0003】
金属製の基材は熱伝導率が高く、起動性が高いため、自動車用の排ガス触媒等に主に使用されている。このような金属製の基材は、一般的な基材のセラミックよりも起動が数段早く、触媒装置を立ち上げ、室温から動作温度である300度まで昇温させる時間を短縮することができる。このため、金属製の基材は燃料電池装置に組み込まれる水素製造装置に適しているが、上述のように、金属基材に触媒粉末を担持させるのは困難であった。
【0004】
特許文献1は、触媒粉末、ウィスカー(アルミナの繊維)、無機バインダ(シリカゾル、アルミナゾルなど)を含む、金属やセラミックス等の不活性担基体に担持させるための触媒スラリーを開示している。しかし、特許文献1による触媒スラリーは、金属基材へは強固には固着しない。
【0005】
特許文献2は、金属の基材表面のサンドブラスト処理することによる触媒用金属基体の表面処理方法を開示している。特許文献3、特許文献4は、プラズマ溶射等による粉末担持方法を開示している。しかし、これらの方法はいずれも設備が高価なため、製品のコストアップに繋がる。
【特許文献1】特開平8−103666号公報
【特許文献2】特開平5−103997号公報
【特許文献3】特開2002−102715号公報
【特許文献4】特開平5−115798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、表面が平滑で、粉末が乗りにくい金属基材に粉末を強固に担持させることができる金属基材担持用粉末スラリー、およびこれを用いて製造される金属基材担持触媒担体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものである。すなわち、本発明は一態様によれば、金属基材担持用粉末スラリーであって、少なくともべーマイト及び/またはセラミック接着剤を含んでなる。ここで、「金属基材担持用粉末スラリー」とは、金属基材に触媒粉末等の粉末状の物質を担持させるためのスラリーであって、金属基材に直接担持させることができるものをいう。
【0008】
上記金属基材担持用粉末スラリーが、TiO−SiO、TiO−Al、TiO−ZrO、ZrO−Al、TiO−P、TiO−B、γ−Al、β−Al、δ−Al、θ−Al、TiO、SiO、ZrOから選択される少なくとも1種類以上の粉末をさらに含むことが好ましい。
【0009】
上記金属基材担持用粉末スラリーが、シリカゾルまたはアルミナゾル、あるいはそれらの両方をさらに含むことが好ましい。
【0010】
前記スラリー中に、少なくとも2種類以上の平均粒子径が異なる粒子が含まれることが好ましい。特には、前記スラリー中に、平均粒子径が0.1〜5μmの範囲の粒子と、10〜100μmの範囲の粒子とが少なくとも含まれることが好ましい。
【0011】
本発明は別の態様によれば、金属基材担持触媒担体であって、上記のいずれかの金属基材担持用粉末スラリーを、金属基材に担持させて形成されるコート層を含んでなるものである。ここで、「金属基材担持触媒担体」とは、金属基材に、上述の金属基材担持用粉末スラリーを含むコート層を担持させて得られる触媒担体をいう。この「金属基材担持触媒担体」には、通常、触媒活性成分は含まれていないが、「金属基材担持触媒担体」には触媒活性成分をさらに担持させることができる。
【0012】
上記コート層が、上記金属基材担持用粉末スラリーから選択される二種以上のコート層を含んでなることが好ましい。特に、上記TiO−SiO、TiO−Al、TiO−ZrO、ZrO−Al、TiO−P、TiO−B、γ−Al、β−Al、δ−Al、θ−Al、TiO、SiO、ZrOから選択される少なくとも1種類以上の粉末が添加されている層が含まれていることが好ましい。
【0013】
上記二種以上の各コート層の厚みが0.1〜1000μmの範囲で、2層〜10層のコート層が形成され、該2層〜10層のコート層は、前述の少なくとも二種以上の金属基材担持用粉末スラリーが交互に担持されるように形成されていることが好ましい。
【0014】
上記金属基材の形状が、ハニカム状、コルゲート状、平板又は波型板であることが好ましい。また、上記金属基材が、ウィスカー処理又はサンドブラスト処理を施されたものであることが好ましい。ここで、「ウィスカー処理」とは、900℃以上の酸素雰囲気で焼成することにより、金属中のAlを酸化、結晶成長させる事で表面を粗面化する処理をいう。
【0015】
本発明は別の局面によれば、金属基材担持触媒担体の製造方法であって、上述の金属基材担持用粉末スラリーを、金属基材にコートするステップを含む。または、金属基材担持触媒担体の製造方法であって、上述の二種以上の金属基材担持用粉末スラリーを、順に金属基材にウォッシュコートするステップを含む。各々のウォッシュコートするステップの後に、または全てのウォッシュコートするステップの後に焼成するステップを含むことが好ましい。
【0016】
本発明は別の態様によれば、水素製造用触媒であって、Ni又はRu、あるいはそれらの両方をさらに含む上述の金属基材担持用粉末スラリーを、金属基材に担持させて形成されるコート層を含んでなるものである。あるいはまた、水素製造用触媒であって、上記金属基材担持触媒担体に、Ni又はRuを含浸担持させてなるものである。
【0017】
本発明はさらに別の態様によれば、上記水素製造用触媒を含んでなる水素分離型改質器である。本発明はさらに別の態様によれば、上記水素分離型改質器と燃料電池装置とを含んでなる燃料電池発電装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の金属基材担持用粉末スラリーによれば、触媒担体粉末を金属基材に強固に固着することが可能となる。本発明のスラリーを金属基材に固着することで、燃料電池の水素製造触媒に用いることができる、起動性がよく、耐久性の高い水素製造用触媒を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明を実施の形態を挙げてさらに詳細に説明する。
本発明に一実施の形態によれば、金属基材担持用粉末スラリーであって、少なくともベーマイトまたはセラミック接着剤、あるいはそれらの両方から構成される。
【0020】
ベーマイトは、好ましくは粒径が1〜1000μm、長さが0.01〜10μmの形状のものを用いる。粒径が10〜500μm、長さが0.05〜1μmの形状のものがさらに好ましい。担体粉末の隙間に入り込むことで、密着性がより向上するからである。
【0021】
セラミック接着剤は、金属と金属との接着、金属とセラミックスとの接着に用いられる接着剤であって、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、シリカ等のセラミックスを主成分とし、アルミナゾル、シリカゾル、ケイ酸ソーダなどのケイ酸塩、リン酸塩などのバインダ成分、さらにはCa、K、Mg等のアルカリ金属及びアルカリ土類金属を含んでもよい接着剤をいう。本実施形態によれば、通常の市販されているセラミック接着剤を使用することができる。特に、固形分濃度が60〜99質量%で、硬化後の熱膨張係数が、0.5〜15×10−6in/in/℃の範囲にあるものを用いることが好ましい。具体的には、AlOと、CaO又はKOを主成分とするアルミナセメントを用いることができる。アルミナセメントを用いる場合は、アルミナセメントに含まれているアルミナの比表面積が10m/g以下であることが好ましい。また、市販品としては、例えば、Aremco Products Inc製セラマボンド671、セラマボンド835Mを用いることができるが、これらには限定されない。
【0022】
本実施形態による金属基材担持用粉末スラリーには、TiO−SiO、TiO−Al、TiO−ZrO、ZrO−Al、TiO−P、TiO−B、γ−Al、β−Al、δ−Al、θ−Al、TiO、SiO、ZrOから選択される少なくとも1種類以上の粉末をさらに含むことができる。触媒担体としての機能を発揮させるためである。
【0023】
また、本実施形態による金属基材担持用粉末スラリーには、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニアの各種ゾルあるいはそれらから選ばれる2種類以上のゾルをさらに含んでもよい。金属基材と粉末をより強固に接着させるためである。
【0024】
金属基材担持用粉末スラリーが、ベーマイトとセラミック接着剤との二成分から構成される場合は、その質量比は特に限定は無いが、固形物換算で、9:1〜1:9となるようにすることが好ましく、7:3〜3:7となるようにすることがさらに好ましい。
【0025】
また、金属基材担持用粉末スラリーが、ベーマイトまたはセラミック接着剤と、TiO−SiOなどの上記セラミックスの粉末とから構成される場合は、それらの質量比は固形物換算で、0.5:9.5〜7:3となるようにすることが好ましく、1:9〜5:5となるようにすることがさらに好ましい。上記範囲外となると、担体としての効果が発揮されにくくなるからである。
【0026】
また、金属基材担持用粉末スラリーが、さらに、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾル又はジルコニアゾル、あるいはこれらから選ばれる2種類以上を含む場合には、各種ゾル、あるいはこれらから選ばれる2種類以上の合計は、その他の成分に対して、固形物換算で0.1〜50質量%となるようにすることが好ましく、1〜10質量%となるようにすることがさらに好ましい。上記範囲外となると、担体としての効果が発揮されにくくなるからである。
【0027】
次に、本実施形態による金属基材担持用粉末スラリーを、その調製方法の面から説明する。金属基材担持用粉末スラリーは、上記の成分を上記所定の組成となるようにポットミルなどのミルに入れ、さらにイオン交換水を加えて、湿式粉砕することにより調製することができる。スラリー中の成分は上述のように、固形物換算で組成を決定するため、イオン交換水の添加量は限定されないが、スラリーとしたときにウォッシュコート法で基材にコートしやすい濃度・粘度になるように添加することができる。このような量は当業者であれば適宜決定することができる。
【0028】
湿式粉砕工程において、粉砕後の平均粒子径が0.1〜5μmとなるように微粉砕したものと、10〜100μmとなるように粗粉砕したものとの少なくとも二種類のスラリーを用いることができる。特には、粉砕後の平均粒径が1〜5μmとなるように微粉砕したものと、粉砕後の平均粒径が10〜30μmとなるように粗粉砕したものとの二種類のスラリーを調製し、混合して、本実施形態による金属基材担持用粉末スラリーとすることが好ましい。小径粒子が大径粒子の間に入り込むことで、両粒子が強固に噛み合う事で接着力が向上するためである。さらには、0.5μm以下の微細粒、5〜10μmの中粒、10〜100μmの粗粒の三種類のスラリーを調製し、混合して金属基材担持用粉末スラリーとしてもよい。
【0029】
本発明は、別の実施形態によれば、上記金属基材担持用粉末スラリーを、金属基材に担持させて形成されるコート層を含んでなる金属基材担持触媒担体である。金属基材担持触媒担体は、一種類の上記金属基材担持用粉末スラリーを金属基材に担持させたものであってよい。または、二種類以上の異なる上記金属基材担持用粉末スラリーを金属基材に担持させたものであってもよい。
【0030】
二種類以上の上記金属基材担持用粉末スラリーを担持させる場合には、少なくとも一種類の金属基材担持用粉末スラリーが、TiO−SiO、TiO−Al、TiO−ZrO、ZrO−Al、TiO−P、TiO−B、γ−Al、β−Al、δ−Al、θ−Al、TiO、SiO、ZrOから選択される少なくとも1種類以上の粉末を含んでいることが好ましい。
【0031】
さらに、本発明の金属基材担持用粉末スラリー以外の組成を有するスラリーであって、TiO−SiO、TiO−Al、TiO−ZrO、ZrO−Al、TiO−P、TiO−B、γ−Al、β−Al、δ−Al、θ−Al、TiO、SiO、ZrOから選択される少なくとも1種類以上の粉末を含んでなるスラリーを担持させてもよい。本発明のスラリー以外の組成を有するスラリーを金属基材に直接塗布し、さらに本発明のスラリーを積層することで、付着性を向上させることができるためである。
【0032】
金属基材担持触媒担体は、異なる二種類の上記金属基材担持用粉末スラリーを順に担持させた二層構造の金属基材担持触媒担体としてもよく、異なる二種類の上記金属基材担持用粉末スラリーを交互に重ねた四層構造の金属基材担持触媒担体としてもよい。また、二種以上のコート層が担持されている金属基材担持触媒担体においては、コート層全体の層厚が1〜1000μmであって、複数のコート層の各々の厚みが0.1〜100μmであることが好ましい。コート量は、固形物換算で、50〜200g/mとすることが好ましく、80〜150g/mとすることがさらに好ましい。異なる二種類の上記金属基材担持用粉末スラリーを担持させている場合も、総質量が固形物換算で、50〜200g/m、好ましくは、80〜150g/mとなるように各金属基材担持用粉末スラリーの質量を決定することができる。
【0033】
金属基材としては、フェライト系を含むステンレス、アルミニウムから構成されるものを用いることができるが、これらには限定されない。また、金属基材の厚みは、水素製造触媒を製造する場合には0.01〜10mmとすることが好ましく、0.05〜5mmとすることがさらに好ましいが、これには限定されず、用途に応じた厚みとすることができる。なお、本発明においては、金属基材担持用粉末スラリーを担持させる基材を、特に好ましいものとして、「金属基材」としているが、金属以外、例えばセラミックス等を基材として用いることは、本発明の均等の範囲に属すると考える。金属基材の形状は、コルゲート状、平板、波型板、又はハニカム状とすることができるが、これらには限定されない。また、このような金属基材は、ウィスカー処理又はサンドブラスト処理が施されたものであることが好ましい。スラリーを物理的に固着しやすくするためである。ウィスカー処理は、具体的には、900℃以上の酸素雰囲気焼成で実施することが可能であり、サンドブラスト処理は、具体的には、鑢等の研磨機器にて実施することが可能である。
【0034】
本実施形態による金属基材担持触媒担体は、ウォッシュコート法のようなコーティング方法により製造することができる。ウォッシュコート法は、上記金属基材担持用粉末スラリーに金属基材を浸漬し、引き上げて、乾燥させる工程を繰り返すことによって、金属基材上に金属基材担持用粉末スラリーを担持させるものである。しかし、コーティング方法はかかるウォッシュコート法に限定されず、上記金属基材担持用粉末スラリーを金属基材に均一に塗布することができる方法であればよい。複数のコート層を含む金属基材担持触媒担体を製造する場合には、コート層厚みが0.1〜1000μmの範囲、さらに好ましくは、1〜500μmの範囲でコート層深さ方向に2〜10分割して、少なくとも2種類以上の金属基材担持用粉末スラリーを交互にウォッシュコートにより担持することが好ましい。
【0035】
金属基材担持触媒担体の製造において、金属基材担持用粉末スラリーのウォッシュコート後に焼成するステップを含むことがさらに好ましい。焼成は、大気中で、300〜1500℃で、0.5〜48時間に渡って行うことが好ましく、400〜1100℃で、1〜24時間に渡って行うことがさらに好ましい。焼結による基材とコート層の密着力向上のためである。複数の層を形成する場合は、全ての層を形成した後に一回だけ焼成するステップを実施してもよく、金属基材担持用粉末スラリーの組成の異なるスラリー層を形成するたびに、焼成するステップを実施してもよい。さらに、金属基材担持用粉末スラリーをウォッシュコートする前に、金属基材を、800〜1500℃で、1〜48時間に渡って大気中で焼成して、前処理しておくことが好ましい。900〜1200℃で、5〜24時間に渡って行うことがさらに好ましい。金属基材表面を粗面化するためである。
【0036】
本発明は、さらに別の実施形態によれば、金属基材に担持された水素製造用触媒である。かかる水素製造用触媒は、金属基材に担持された上記実施形態による金属基材担持用粉末スラリーが、RuまたはNi、あるいはそれらの両方を担持している。
【0037】
このような水素製造用触媒は、上記実施形態により調製された金属基材担持用粉末スラリーに、RuまたはNi、あるいはそれらの両方を混合し、RuまたはNi、あるいはそれらの両方が混合されている金属基材担持用粉末スラリーを、金属基材に上述のようにウォッシュコートすることによって製造することができる。あるいは、上記実施形態により製造された金属基材担持触媒担体に、RuまたはNi、あるいはそれらの両方を含む溶液を含浸担持させることによって製造することもできる。Ru、Niなどの活性金属は、0.01〜30質量%となるように担持させることが好ましい。RuとNiとの両方を含む触媒とする場合には、質量比で9:1〜1:9となるように担持させることが好ましい。また、Ru、Ni以外にも、Pt、Rh等の貴金属などを触媒活性成分として担持させても良い。
【0038】
本実施形態では、水素製造用触媒、特にはメタノールやジメチルエーテルを改質して水素を製造する水蒸気改質触媒について説明した。しかし、本発明は、金属基材に固着可能な金属基材担持用粉末スラリー、またはそれを用いた金属基材担持触媒担体に関するものであり、このような担体には種々の活性金属を担持させることができる。したがって、本発明は、触媒の用途として、水素製造用触媒に限定されることなく、種々の触媒に応用できる技術である。
【0039】
本発明のまた別の実施形態によれば、上記実施形態による水素製造用触媒は、水素分離型改質器に組み込んで使用することができる。
【0040】
また、本発明は、上記水素分離型改質器と、燃料電池セルとを含んでなる燃料電池発電装置にも関する。かかる燃料電池発電装置においては、金属基材を用いた水素製造用触媒が組み込まれているため、触媒の起動が早いという利点がある。
【実施例】
【0041】
[実施例1]
15mmφのアルミナボールの入った内容積400ccのアルミナ製ポットミルに150gのイオン交換水を添加し、次に40gのγ−Al粉末(比表面積200m/g)と10gの市販ベーマイト粉末(商品名:CAM−9010、サンゴバン社製)を添加した。以上のポットを2つ用意し、これらのポットミルを100rpmで1時間と24時間湿式粉砕処理して、2種類のγ−Al+ベーマイトからなる金属基材担持用粉末スラリーを得た。湿式粉砕1時間の粉末平均粒径と、24時間の粉末平均粒径とをレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定したところ、それぞれ20μmと2μmであった。
そして、2種類の金属基材担持用粉末スラリーを等量で混合後、厚さ0.1mm平板のフェライト系ステンレス基材を浸漬、乾燥を繰り返し処理し、基材表面積当りに金属基材担持用粉末スラリーの粉末が100g/mとなるように担持された金属基材担持触媒担体1を得た。
【0042】
[実施例2]
実施例1にて、ベーマイトの他に固形物換算で10gのセラミック接着剤(商品名:セラマボンド671、Aremco Products Inc製、主成分:アルミナ)を添加したこと以外は実施例1と同様にして金属基材担持触媒担体2を得た。
【0043】
[実施例3]
実施例1にて、ベーマイトの代わりに固形物換算で10gのセラミック接着剤を添加したこと以外は実施例1と同様にして金属基材担持触媒担体3を得た。
【0044】
[実施例4]
実施例1にて、γ−Alの代わりにTiO、SiO、ZrO、TiO−SiO、TiO−Al、TiO−ZrO、ZrO−Al、TiO−P、TiO−B、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、A型ゼオライト、β型ゼオライト、モルデナイト、フェリエライト、メタロシリケートを添加した事以外は実施例1と同様にして金属基材担持触媒担体4〜19を得た。
【0045】
[実施例5]
実施例1にて、さらに30gのシリカゾル(SiO=20質量%含有)と5gのアルミナゾル(Al=10質量%)を添加して湿式粉砕した事以外は前述した実施例4と同様にして、金属基材担持触媒担体20を得た。
【0046】
[実施例6]
まず、実施例1にて得られた金属基材担持用粉末スラリーを用いて、実施例1と同操作により平板のフェライト系ステンレス基材に金属基材担持用粉末スラリーの粉末が50g/mとなるように担持し、次に、実施例2で得られた金属基材担持用粉末スラリーを用いて、得られた金属基材担持触媒担体にさらに50g/mの金属基材担持用粉末スラリーの粉末を担持する事により金属基材担持触媒担体21を得た。
【0047】
[実施例7]
実施例6にて、実施例1の金属基材担持用粉末スラリーと実施例2の金属基材担持用粉末スラリーの使用手順を反対にしたこと以外は実施例6と同様にして金属基材担持触媒担体22を得た。
【0048】
[実施例8]
まず、実施例1にて得られたスラリーを用いて、実施例1と同操作により平板のフェライト系ステンレス基材に金属基材担持用粉末スラリーの粉末を25g/m担持し、次に、実施例2で得られた金属基材担持用粉末スラリーを用いて、得られた金属基材担持触媒担体にさらに25g/mの金属基材担持用粉末スラリーの粉末を担持した。そして上記操作を再度繰り返し処理する事により金属基材担持触媒担体23を得た。
【0049】
[実施例9]
実施例1、6、8にて、1種類の金属基材担持用粉末スラリーを用いて所定量粉末を担持した後に、500℃で5時間の大気焼成処理を施した事以外は実施例1、6、8と同様にして金属基材担持触媒担体24〜26を得た。
【0050】
[実施例10]
実施例9にて、焼成処理を1100℃で5時間に変更した事以外は実施例9と同様にして金属基材担持触媒担体27〜29を得た。
【0051】
[実施例11]
実施例1、6、8にて、フェライト系ステンレスの形状を波高さ5mm、波ピッチ5mmの波型に変更したこと以外は実施例1、6、8と同様にして金属基材担持触媒担体30〜32を得た。
【0052】
[実施例12]
実施例1、6、8にて、粉末を担持させるフェライト系ステンレスをあらかじめ1000℃で24時間大気焼成を施した事以外は実施例1、6、8と同様にして金属基材担持触媒担体33〜35を得た。
【0053】
[比較例1]
特開平8−103666号公報の実施例1に従い、Pt担持ランタンドープAlスラリーをアセトン脱脂フェライト系ステンレスに浸漬コートして比較金属基材担持触媒担体1を得た。具体的には、ジニトロジアミン白金水溶液(白金として10g/l)1リットルに攪拌下、ランタンをドープしたアルミナ(住友化学工業(株)製TA−2311)1Kgを加え、30分間攪拌を続けた。得られたスラリーを、噴霧乾燥機を用いて熱風温度250℃にて噴霧乾燥させた。この乾燥させた粉末を更に空気中、電気炉にて500℃で3時間焼成して、触媒粉末Aを得た。この触媒粉末の一部を更にジェット・ミルにて微粉砕して、触媒粉末Bを得た。50質量部のアルミナゾル(日産化学(株)製アルミナゾル200)に20質量部の水を攪拌しながら加えた後、更に、攪拌下に、上で得た30質量部の触媒粉末A(平均粒径22μm)及び70質量部の触媒粉末B(平均粒径1.5μm)と共に5質量部の炭化ケイ素ウイスカー(三井東圧化学(株)製、直径0.4〜0.8μm、長さ60〜300μm)を加え、更に、必要に応じて、ゾル安定剤を加えて、触媒スラリーを得た。
【0054】
[実験例]
金属基材担持触媒担体1〜35及び比較金属基材担持触媒担体1について、ガス流通方式によるコート層の強制剥離試験を実施した。その試験条件を表2に示す。試験前後のサンプル質量の減少量から、以下の式にてコート層減少率を算出した。
【0055】
【数1】

【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
強制剥離試験の結果は表1の「コート層減少率」の欄に示した通り、本発明の金属基材担持触媒担体1〜35は、比較金属基材担持触媒担体1よりも粉末コート層が強固であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の活用例として、燃料電池発電装置の水蒸気改質触媒に用いる他、触媒基材にも金属を用いることが有用な触媒、例えば自動車の排ガス浄化用触媒として用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともべーマイトまたはセラミック接着剤、あるいはそれらの両方を含んでなる金属基材担持用粉末スラリー。
【請求項2】
TiO−SiO、TiO−Al、TiO−ZrO、ZrO−Al、TiO−P、TiO−B、γ−Al、β−Al、δ−Al、θ−Al、TiO、SiO、ZrOから選択される少なくとも1種類以上の粉末をさらに含む、請求項1に記載の金属基材担持用粉末スラリー。
【請求項3】
シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾルまたはジルコニアゾルあるいはこれらから選ばれる少なくとも1種以上を含む、請求項1または2に記載の金属基材担持用粉末スラリー。
【請求項4】
前記スラリー中に、少なくとも2種類以上の平均粒子径が異なる粒子が含まれる、請求項1〜3のいずれかに記載の金属基材担持用粉末スラリー。
【請求項5】
前記スラリー中に、平均粒子径が0.1〜5μmの範囲の粒子と、10〜100μmの範囲の粒子とが少なくとも含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の金属基材担持用粉末スラリー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の金属基材担持用粉末スラリーを、金属基材に担持させて形成されるコート層を含んでなる金属基材担持触媒担体。
【請求項7】
上記コート層が、請求項1〜5のいずれかに記載の金属基材担持用粉末スラリーから選択される少なくとも二種以上の金属基材担持用粉末スラリーを、金属基材に担持させて形成されるコート層を含んでなる請求項6に記載の金属基材担持触媒担体。
【請求項8】
上記二種以上の各コート層の厚みが0.1〜1000μmの範囲で、2層〜10層のコート層が形成され、該2層〜10層のコート層は、請求項1〜5から選択される少なくとも二種以上の金属基材担持用粉末スラリーが交互に担持されるように形成されている請求項7に記載の金属基材担持触媒担体。
【請求項9】
上記金属基材の形状が、ハニカム状、コルゲート状、平板又は波型板である請求項6〜8のいずれかに記載の金属基材担持触媒担体。
【請求項10】
上記金属基材が、ウィスカー処理又はサンドブラスト処理を施されている請求項6〜9のいずれかに記載の金属基材担持触媒担体。
【請求項11】
請求項1〜5のいずれかに記載の金属基材担持用粉末スラリーを、金属基材にウォッシュコートするステップを含む金属基材担持触媒担体の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれかに記載の二種以上の金属基材担持用粉末スラリーを、順に金属基材にウォッシュコートするステップを含む金属基材担持触媒担体の製造方法。
【請求項13】
各々のウォッシュコートするステップの後に、または全てのウォッシュコートするステップの後に焼成するステップをさらに含む請求項11または12に記載の金属基材担持触媒担体の製造方法。
【請求項14】
Ni又はRuが添加された請求項1〜5のいずれかに記載の金属基材担持用粉末スラリーを、金属基材に担持させて形成されるコート層を含んでなる水素製造用触媒。
【請求項15】
請求項6〜10のいずれかに記載の金属基材担持触媒担体に、Ni又はRuを含浸担持させてなる水素製造用触媒。
【請求項16】
請求項14または15に記載の水素製造用触媒を含んでなる水素分離型改質器。
【請求項17】
請求項16に記載の水素分離型改質器と、燃料電池装置とを含んでなる燃料電池発電装置。

【公開番号】特開2006−7169(P2006−7169A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191404(P2004−191404)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】