説明

金属板複合材、金属板を接合する方法および接合装置

本発明の主題は、ロールフランジ加工またはスライドフランジ加工によりフランジ加工縁(1b)の周囲で折り曲げられるフランジ(1c、1d、1c)を備える外側金属板(1)と、フランジ(1c、1d、1e)と継手(3、6、8)を形成する内側金属板(2)と、継手(3、6、8)上にまたは中に生成され、かつ金属板(1、2)を互いに固定連結する、溶接またははんだ付けシーム(4、5、7)とを有する、金属板複合材である。本発明はまた、金属板を接合する方法と、フランジ加工し溶接またははんだ付けする装置とにも関する。装置は、ツールヘッド(10)と、ツールヘッド(10)に配置され、ロールフランジ加工またはスライドフランジ加工するフランジ加工部材(13、13’)と、ツールヘッド(10)に配置された溶接またははんだ付け工具(15)とを有し、フランジ加工部材(13、13’)と溶接またははんだ付け工具(15)とは、フランジ加工部材(13、13’)が、溶接またははんだ付け工具(15)を用いて行うことができる溶接またははんだ付け工程のための押圧手段を形成するように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接工程またははんだ付け工程を含む、構成部品、特に金属板を接合することに関する。
【背景技術】
【0002】
溶接およびはんだ付けは、金属構成部品用の確かな接合方法である。自動溶接工程またははんだ付け工程では、接合される構成部品を、接合位置に固定し、溶接またははんだ付け中に押圧手段、たとえば押圧指または押圧ローラを用いて現溶接点またははんだ付け点近くで互いに押圧する。そこで、押圧手段は、溶接工具またははんだ付け工具とともに、生成されるべき溶接シームまたははんだ付けシームの長手方向に構成部品の接合領域を移動する。構成部品は、溶接またははんだ付けに適している形状で提供されなければならない。溶接またははんだ付けに適したフランジが、たとえばなおプレス機において塑性的に再成形されている間に、またはたとえばエッジング等、プレス機での成形に続く再成形工程において、接合されるべき金属板上に成形される。フランジが、なおプレス機にある間に成形される場合、型から部品を取り除く必要があるため、製作することができるフランジ形状に限界がある。その後にフランジを成形するエッジング装置は、かさばりかつ柔軟性がない。さらに、複雑なエッジング手順は、多大な費用をかけなければ達成することができない。
【0003】
ヘミングもまた、金属板を接合する際の役割が確立されており、そこでは、ロールヘミングと接着との接合の組合せが知られており、それにより、押込み嵌合および材料嵌合連結が達成される。動的応力を受ける複合材では、接着剤にはまた、剛性を向上させる機能に加えて、接合された金属板間で発生する可能性がある、発生し得る雑音を抑えるかまたは防止する機能もある。接着剤はまた、封止機能も果たす。ロールヘミング技術の1つの利点は、構成部品の形状に関するその高水準な柔軟性である。ヘミング工具および方法、またはより一般的にはフランジ加工工具および方法は、たとえば特許文献1、2、3、4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】欧州特許出願公開第1685915A1号明細書
【特許文献2】欧州特許第1420908B1号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第10011954A1号明細書
【特許文献4】独国特許出願公開第10338170B4号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、少なくとも1つが金属板である構成部品の接合を、フランジ加工縁の進行(progression)に対して、柔軟性および複合材の強度に関して改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フランジ加工工程を溶接またははんだ付け工程と組み合わせたものである。
【0007】
本発明による方法のこの組合せは、外側金属板と内側金属板と、更には任意に1つまたは複数の他の金属板と、からなる金属板複合材を提供し、外側金属板は、フランジ加工縁の周囲でフランジ加工され内側金属板と継手を形成する、フランジを備えている。金属板を互いに固定接合する溶接またははんだ付けシームが、接合部内にまたはその上に走っている。外側金属板は、フランジ加工縁の長手方向に連続して進行するフランジ加工工程により徐々に折り曲げられる。フランジ加工縁の領域にわたって横方向に、外側金属板は、たとえば深絞りプレスで同じ形状に成形された金属板と比較して、大幅に均一で、よりひびの少ない材料構造を示す。これは、フランジが従来のエッジングマシンで折り曲げられた金属板と比較した場合にも当てはまる。再成形はフランジ加工縁の長手方向に進行し、したがって常に局所的でしかないため、フランジ加工縁は、1つまたは複数の曲げ、曲率半径の変化する曲げさえをも含む複雑な進行を示すことができる。本発明による金属板複合材は、従来のヘミング接合を備えた金属板複合材より堅固である。それは、溶接またははんだ付けシームが、少なくとも近接の接合領域において、金属シートを互いに固定してかつきわめて堅固に連結するためである。これは、動的応力にさらされる金属板複合材に特に有益であり、それは、金属板が互いに対して移動できなくなり、それに応じて、接合領域で互いにこすれ合う可能性がなくなり、したがって雑音を発生する可能性がなくなるためである。溶接またははんだ付けシームはまた、接合領域または接合領域の少なくとも内側領域を封止する。シームが、フランジ加工縁の長手方向で測定した場合に、金属板の接合領域の長さ全体にわたって連続して延在する場合、有利である。
【0008】
たとえば自動車に取り付けられる場合、外側金属板は、外側から見えることが好ましく、特に、車両の外殻、または原則的に他のいかなる構造単位をも形成することができ、内側金属板は、それに応じて、車両または他の構造単位の内部に面する。しかしながら、原則的に、「外側金属板」および「内側金属板」という用語は、単に、少なくとも外側金属板がフランジ加工された溶接またははんだ付けフランジを備えるということを説明するために、これらの概念を区別するためのものである。フランジ加工は、フランジ加工後に表面が回転または摺動マークを除去する表面処理が施されない場合、それらのマークによりフランジの外側において見ることが可能である。
【0009】
好ましい実施形態では、フランジは、外側金属板の外周縁に沿って延在し、全体として外側金属板に比較して狭い周縁ストリップのみを形成する。外側金属板の断面で見ると、フランジは、フランジ加工縁を介してフランジに移行する外側金属板の外側金属板領域より(フランジ加工縁の長さの少なくとも主な部分にわたり)実質的に短い。
【0010】
継手は、突合せ継手または特に重ね継手および/または縁継手とすることができる。重ね継手である場合、溶接シームはIシームであり得る。溶接またははんだ付けの場合、シームは、重ね継手においてすみ肉シームとして形成されることがより好ましい。継手を、複合材の断面で見ると、重ね継手の一端においてすみ肉シームを用いることにより、継手長さ全体にわたって封止することができ、これにより間隙腐食がもっとも有効に抑制される。
【0011】
外側金属板のフランジは、特に、そのフランジ加工またはヘミング領域においてスロットを形成することができ、そこに、内側金属板が、スロットに関してフランジの内側に重ね継手を形成するために突出する。しかしながら、それほど好ましくはないが、フランジおよび内側金属板が、スロット側でないフランジの外側に重ね継手を形成することも十分に考えられる。さらに、内側金属板およびフランジが互いに溶接またははんだ付けされて突合せ継手を形成する場合にも、スロット形状のフランジ加工領域は有利である。
【0012】
好ましい実施形態では、原則的に従来のヘミング接合から既知であるように、内側金属板は、フランジの外周縁と、フランジの周縁に面する外側金属板の対向領域と、の間のスロット内に締め付けられる。こうした実施形態では、各場合に表面押圧により、ある範囲にわたって両側で締め付けられることが好ましい。こうした実施形態では、外側金属板を、特に、フランジを含むフランジ加工領域においてU字型断面で成形することができる。接合領域に封止材を受け入れるために、外側金属板が、フランジ加工縁を含むフランジ加工基部において、断面で見て目の形状の中空空間を形成する場合、有利である。
【0013】
内側金属板がスロットに締め付けられていないかまたは認めうる程度までは締め付けらていない、変更されてはいるが同等に好ましい実施形態では、フランジは、対向して面する外側金属板の領域から離れる方向に傾斜して向いている。したがって、スロットは、フランジ加工縁を含むフランジ加工基部の方向に狭くなる。
【0014】
すべての実施形態例において、フランジは、金属板複合材の断面において曲線状の進行を示すことができる。しかしながら、フランジは断面において直線状であることが好ましい。
【0015】
本発明は、特に、車両製造での使用、すなわち、航空機、宇宙船、船舶および陸上車両(land craft)、好ましくは自動車の金属板複合材に好適である。金属板複合材は、特に、車両の外殻の構成要素であり得る。1つの主な使用は、車両、特に自動車の、たとえばドア、サンルーフ、ハッチバック、トランクの蓋およびボンネット等の取付部品としての使用である。しかしながら、こうした可動取付部品に加えて、本発明はまた、本体に取り付けられるが、一旦取り付けられると、それ自体が、たとえば付属の泥除け等、本体の固定構成要素を形成する、取付部品にも好適である。さらに、本発明はまた、取付部品が取り付けられる前に本体を製造するためにも好適である。したがって、本発明を、特に、車両、特に自動車の側面部品または屋根を製造するために使用することができる。1つの主な適用は、たとえば、取り付けられる前かまたは取り付けられる時の泥除けかまたは本体の側面部品における、いわゆるホイールアーチヘミングである。さらに、本発明はまた、生産ラインにおいて本体の側面部品と屋根との間の連結をもたらすためにも好適である。しかしながら、原則的に、本発明はまた、他の多次元複合構造を製造することにも適しており、それは、本発明によって使用されるフランジ加工工程が、原則的に、金属板の連結フランジの形状に関していかなる制約も受けないためである。フランジ加工される金属板および特にフランジ加工縁が複雑に成形されるほど、従来の方法に比較してより多くの本発明の利点が実現する。本発明は特に車両業界で有利であるが、原則的に他の業界で使用されることも可能である。
【0016】
本発明による接合方法では、外側金属板と内側金属板とは、接合位置において互いに対して固定される。外側金属板のフランジ加工縁の周囲で、フランジ加工縁の長手方向に移動するフランジ加工部材を用いて、フランジが折り曲げられる。フランジ加工縁を、たとえば深絞りまたはエンボス加工により、プレス機内での先行する再成形工程において、ある程度まですでに予備成形することができ、または元の金属板成形工程に続くフランジ加工工程において初めて成形することができる。フランジを、フランジ加工部材を用いて、接合位置の外側で、溶接またははんだ付けに必要な位置または向きに折り曲げ、そうしてから外側金属板を接合位置に固定することができる。別法として、外側金属板をフランジ加工部材を用いて接合位置でフランジ加工することもでき、そのようにしてから内側金属板を接合位置に固定することができる。しかしながら、好ましい実施形態では、外側金属板と内側金属板とは、第1方法ステップにおいて接合位置で互いに対して固定され、一旦固定されてから、フランジ加工および溶接またははんだ付けが行われる。こうした実施形態では、第2ステップにおいて、フランジを、内側金属板と継手を形成するように、フランジ加工部材を用いて再び折り曲げることが可能であり、フランジ加工ステップに続くが別個の第3ステップにおいて、継手上でまたはその中で金属板を互いに溶接またははんだ付けすることのみが可能である。しかしながら、特に好ましい方法実施形態では、フランジ加工および溶接またははんだ付けの2つの工程は、再成形工具としてのフランジ加工部材と溶接またははんだ付け工程のための押圧手段とを同時に使用することにより合わせて行われる。こうした実施形態では、フランジ加工部材は、第2機能として、従来の溶接工程またははんだ付け工程で知られている押圧指または押圧ローラにとって代る。
【0017】
本発明の主題は、フランジ加工しかつ溶接またははんだ付けすることがともに可能である装置を含む。それは、ツールヘッドと、ツールヘッドに配置され少なくとも1つのフランジ加工部材を備えるフランジ加工工具と、ツールヘッドに配置された溶接またははんだ付け工具とを備える組合せ工具である。フランジ加工部材と溶接またははんだ付け工具とは、フランジ部材が、溶接またははんだ付け工具が溶接またははんだ付けシームを生成する場合に、後述する特に好ましい方法実施態様を行う溶接またははんだ付け工具用の押圧手段となるように配置される。フランジ加工工具は、ツールヘッドの処理位置に移動可能であるように任意に配置された、フランジ加工工程を行う複数のフランジ加工部材を備えることができるが、好ましい単純な実施態様では、ツールヘッドは、さらに好ましくは常に処理位置にある単一フランジ加工部材のみを有する。
【0018】
装置および方法に関連して述べたフランジ加工部材は、特に、フランジ加工ローラであってもよく、または別法として、フランジ加工中にフランジ加工縁の長手方向にフランジ上を摺動する摺動部品であってもよい。好ましい実施形態では、フランジ加工工程は、それに応じて、ロールフランジ加工または適用可能な場合はスライドフランジ加工からなる。
【0019】
溶接またははんだ付け工具を、特に、エネルギービームを用いて溶接またははんだ付けに必要な熱を発生するように設計することができる。好ましい実施形態では、溶接またははんだ付け工具は、レーザ溶接またははんだ付け工具である。同等に好ましい実施態様では、それはガスシールド溶接工具である。しかしながら、エネルギービームを用いて動作する溶接またははんだ付け工具の代りに、原則的に、他の方法で溶接またははんだ付けする溶接工具またははんだ付け工具を使用することも可能である。
【0020】
溶接またははんだ付け工具が、エネルギービームを用いて連結に必要な熱を発生するものである場合、フランジ加工部材および溶接またははんだ付け工具は、フランジ加工中にフランジ加工部材によって局所的に加えられる押圧力とエネルギービームとが、製作される複合材に付加されるように、互いにわずかな間隔で隣接してツールヘッドに配置されることが好ましい。この間隔は、フランジ加工部材により溶接またははんだ付け位置で加えられる押圧力が、構成部品が互いに押圧され逸れる可能性がないことがなお確実に保証するように選択される。間隔は、フランジ加工縁の長手方向から見て、少なくとも1mm、最大6mmであることが好ましい。前記間隔の範囲からの特に有利な値は少なくとも2mm、最大4mmであり、このより狭い範囲での特に有利な値は、およそ3mmの値である。フランジ加工部材がフランジ加工ローラである場合、エネルギービームはフランジ加工ローラの後に続くことが明らかであり、その場合、間隔は、エネルギービームが突当たる位置でのエネルギービーム中心と、フランジ加工ローラがフランジと接触する圧力線または狭い圧力ストリップ上の中心に最も近い位置と、の間で測定される。フランジ加工部材が摺動部品である場合、かつ摺動部品が、圧力線またはフランジ加工縁の長手方向の狭い圧力ストリップのみに沿って、フランジと接触するのではない場合、間隔は、エネルギービームの中心と、フランジが、内側金属板に溶接またははんだ付けされるその接合位置まで折り曲げられる摺動部品上の最近点と、の間で測定される。エネルギービームに関して上述したものはまた、他の方法で接合領域に溶接またははんだ付けに必要なエネルギーを導入する溶接またははんだ付け工具にも同様に適用される。
【0021】
特にすみ肉シームを生成する場合、ツールヘッドが、シーム追跡システムを有し、それを用いて溶接またははんだ付け工具が、重ね継手の端部に存在しシームが生成されるべき突合せ継手をたどる場合、有利である。シーム追跡システムは、突合せ継手を好ましくは触感でスキャンするセンサと、フランジ加工部材に対する溶接またははんだ付け工具の移動を可能にする補償機構とを有する。補償機構を、並進補償移動のみを可能とするかまたは、回転補償移動のみを可能とするか、または好ましくは並進および回転補償移動を可能にするように設計することができる。したがって、溶接またははんだ付け工具は、ツールヘッドでの補償機構を介して共通の処理位置におけるフランジ加工部材に対して、1つまたは複数の移動の自由度を示すことができる。溶接またははんだ付け工具は、各場合にばね力により、1つまたは複数の自由度に関連して中間位置および向きに保持されることが好ましい。補償するために、溶接またははんだ付け工具は、特に、装置の処理実行中に現有効位置においてフランジ加工縁の長手方向に対して平行な軸を中心に枢動可能であり得る。別法としてまたは好ましくはさらに、突合せ継手に向かってかつそこから離れるように移動することが可能であることも有利である。
【0022】
フランジ加工部材が溶接またははんだ付け工具に空間的に隣接するため、ツールヘッドに清浄手段が配置され、それを用いて、フランジ加工および溶接またははんだ付け中にフランジ加工部材を清浄にすることができると有利である。清浄手段は、ブラシまたはスクレーパまたはフランジ加工部材にドライアイスを充填する手段を含むことができる。
【0023】
有利な特徴は、下位請求項およびそれらの組合せにおいても開示されている。
【0024】
本発明の実施形態例を、図に基づいて以下に示す。実施形態例によって開示される特徴は、各々個々に、かつ任意の組合せで、特許請求の範囲の主題および上述した実施形態を有利に展開する。以下の図面が、示されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】金属板を接合するヘミング工程である。
【図2】金属板を接合するヘミング工程である。
【図3】金属板を接合するヘミング工程である。
【図4】金属板を接合するヘミング工程である。
【図5】第1実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図6】第2実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図7】本発明による接合方法を行っている間の、フランジ加工部材および溶接工具を備えた本発明による接合装置である。
【図8】拡大図でありかつ別のフランジ加工部材を備える、図7の接合領域である。
【図9】第3実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図10】第3実施形態例の金属板複合材を製作する間の、本発明による接合装置である。
【図11】接合領域における本発明による接合装置である。
【図12】第4実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図13】第5実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図14】第3実施形態例の金属板複合材である。
【図15】第6実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図16】第7実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図17】第8実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図18】第9実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図19】第10実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図20】第11実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【図21】第12実施形態例における本発明による金属板複合材である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜図4は、金属板複合材がロールフランジ加工で製造される方法手順を示す。各図は、チャッキング装置によって接合位置において互いに対して固定される、内側金属板2および外側金属板1の周縁領域の断面図を示す。塑性再成形に先行する工程、たとえば深絞り工程において、金属板1および2は、更に連結に必要とされる後続の再成形を除き、それぞれの連結に望まれるような最終形状を得ている。金属板1および金属板2はともに、各々が、図示する接合領域におけるヘミング接合に適したフランジを備える、3次元歪み構造であり、内側金属板2のフランジは、チャッキング装置により、外側金属板1に対してある範囲にわたって押圧される。外側金属板領域1aにおいて、外側金属板1は、急峻な曲げ1bを介してフランジ1cに移行している。フランジ1cは、複数のフランジ加工ステップで、連続して内側金属板2のフランジの方向に完全に折り曲げられる。フランジ加工中、曲げ1bは、各場合においてフランジ加工縁を形成し、したがって、以下それをフランジ加工縁1bと呼ぶ。フランジは、フランジ加工ローラ13を用いて折り曲げられ、フランジ加工ローラ13は、回転軸Rを中心に回転することができるように、ツールヘッドに取り付けられている。実施形態例では、フランジ1cは、3ステップで、合計90°折り重ねられる。
【0027】
図2は、第1フランジ加工ステップを示し、フランジ1c上をフランジ加工縁1bの長手方向に回転するフランジ加工ローラ13の走行面が、まだフランジ加工されていないフランジ1cに約30°の角度であてがわれ、それにより、フランジ1cが、走行面がその上を回転する時に、前記あてがわれた角度だけ内側金属板2のフランジに向かって折り曲げられる。図3において、フランジ加工ローラ13の走行面が、第1フランジ加工ステップで折り曲げられたフランジ1cに再び約30°の角度であてがわれ、それにより、フランジ1cは、第2処理実行時にさらに30°折り曲げられる。図4に示す最終処理実行において、フランジ1cは、フランジ加工ローラ13により、さらに30°折り曲げられ、したがって完全に折り曲げられ、内側金属板2のフランジに対して押圧される。最終フランジ加工ステップでは、フランジ加工ローラ13は、最終フランジ加工ローラとしての役割を果たす。最終処理実行すなわちフランジ加工ステップにおいて、フランジ加工ローラ13は、ばね力を介してツールヘッドに支持されることが好ましく、そこでばね力はフランジ1cの方向に作用する。2つの先行するステップにおいて、各ステップにおいて所定のフランジ形状を得るために、フランジ加工ローラ13は耐え得るようにツールヘッドに支持されることが好ましい。ヘミング接合が完了すると、図4に示すように、外側金属板1は、フランジ1cの領域においてU字型スロットを形成し、内側金属板2の連結フランジは、各場合において表面押圧により、外側金属板領域1aとフランジ1cとの間に固定して締め付けられている。ヘミングの前に、互いに対して押付け固定されている金属板1および2の間の間隙腐食を防止するため、かつ動的応力の場合は、相対移動によって発生する雑音を最小限に抑えるために、ヘミング領域に封止材が導入される。
【0028】
図5は、第1実施形態例における本発明による金属板複合材の接合領域を示す。金属板複合材は、外側金属板1および内側金属板2によって形成されており、それらは、ヘミング接合および溶接接合により押込み嵌合、摩擦嵌合および材料嵌合で互いに連結されている。ヘミング接合は、幾何学的に上述したヘミング接合と一致する。それを特に、図1および図4に基づいて例示されているように生成することができる。溶接接合は、すみ肉シーム4によって形成され、それは、フランジ1cが内側金属板2までかつそれに対して完全に折り曲げられる時、溶接工具によって生成される。完全に折り曲げられたフランジ1cは、接合領域において、すなわち外側金属板1のスロットにおいて、内側金属板2のフランジと重ね継手3を形成し、その場合、フランジ1cと内側金属板2のフランジとは、前記重ね継手3においてある範囲にわたり上下に重なって位置し、好ましくは重ね継手3に封止材が提供される。すみ肉シーム4は、重ね継手3の上、すなわちフランジ1cの自由外周縁に沿って走る。
【0029】
溶接シーム4を、最終フランジ加工ステップとは別の溶接工具の処理実行において生成することができる。しかしながら、図4で示されるような最終フランジ加工中に、フランジ加工工具および溶接工具が共に処理実行を行うことが好ましく、フランジ加工ローラ13を備えたフランジ加工工具は、フランジ加工ローラ13が溶接に十分な圧力をフランジ1cに加える位置で処理実行中にシーム4を生成することにより、溶接工具のための押圧手段となる。それにより、フランジ1cの自由周縁部は、溶接中にフランジ加工ローラ13によって内側金属板2に対して固定して押圧され、この領域において内側金属板2から逸れることができない。溶接工具としてレーザ溶接装置が使用され、それは、接合領域を現有効位置において局所的に溶融し、処理実行中に現溶融領域に溶接材料を供給する。溶接シーム4により、接合領域における金属板1と金属板2との間の完全固定連結が確実になり、金属板1と金属板2との間の相対移動が防止され、それにより、動的応力によって雑音が発生する可能性がなくなる。溶接シーム4はまた、重ね継手3の外端において接合領域を直接封止し、すなわち、封止機能も果たす。したがって、本発明による金属板複合材も接合領域において金属板1と金属板2との間に封止材を含むことが好ましいが、封止材は接合領域において、すなわち外側金属板1のスロットにおいて必ずしも必要とはされない。
【0030】
図6は、第2実施形態例における本発明による金属板複合材を示し、それは、溶接接合に関してのみ、第1実施形態例の金属板複合材と異なっている。第2実施形態例では、溶接シーム5は、重ね継手3内を、フランジ加工縁1bに対して少なくとも実質的に平行に走っている。溶接シーム5はIシームである。溶接シーム5を生成するために、レーザ溶接工具は、最終フランジ加工後に、または好ましくは(第1実施形態例に基づいて例示したように)直接最終フランジ加工中に、フランジ1cを移動し、それを、フランジ加工縁1bの長手方向において連続的に、漸進的に、かつそれぞれ局所的に溶融する。前進速度およびレーザ出力は、レーザビームがフランジ1cの下の内側金属板2も局所的に溶融するように、互いに対して調整される。したがって、溶融領域は、フランジ1cにかかり、内側金属板2内に広がる。硬化すると、レーザビームの後方で固定溶接接合が形成される。溶接シーム5の生成は、シーム進行の精度に関して、したがって溶接工具を案内することに関して、溶接工程での要求を軽減する。しかしながら、重ね継手3の端部における溶接シーム4は、接合領域全体が封止されることを確実にし、したがって、さらに、間隙腐食を防止するのに役立つ。重ね継手3の端部に形成される溶接シーム4の別の利点は、材料を節約する可能性であり、それは、断面で見たフランジ1cの長さが第2実施形態例のものより短して外側金属板1において材料を節約することができるためである。
【0031】
図7は、ヘムを閉鎖し、すなわちヘミング接合を完了し、同じ処理実行においてヘミング領域を溶接するのに用いることができる装置を示す。装置は、ツールヘッド10を備えており、それは、フランジ加工工具12および溶接工具15、実施形態例ではレーザ溶接工具用の枠組を形成する。ツールヘッド10はまた、空間的に移動させることができるアクチュエータを締結するコネクタ11も有している。アクチュエータを、特に、ロボットアームの端部によって形成することができる。金属板1および金属板2の、接合領域とその隣接環境のみを再び示す。内側金属板2はすでに、フランジ1cの近くで外側金属板1から離れるように上方に突出しており、それにより溶接工具15が著しく接近し難くなる。したがって、接合のために内側金属板2上に成形されたフランジは非常に短い。更に溶接ビーム16を接合領域における所望の位置に向けられるように、円柱フランジ加工ローラの代りに円錐形フランジ加工ローラ13’が、最終フランジ加工のために使用されている。そして、接合領域に溶接工具15をより急峻にあてがうことができる。フランジ加工ローラ13’は、その回転軸Rを中心に回転することができ、ばねの復元力に抗して、同様にツールヘッド10に支持され、それにより、回転軸Rおよびフランジ加工縁1bの局所長手方向Xに対して垂直な軸Zに沿って直線状に移動することができる。最終フランジ加工に望まれる支持具の弾性は、空気圧ユニット14を用いて、フランジ加工ローラ13’を空気圧ユニット14のピストンロッドに締結して回転軸Rを中心に回転することができるようにすることによって得られる。フランジ加工ローラ13’は、回転し軸Zに沿って並進移動する能力を超える、ツールヘッド10に対していかなる自由度もない。移動軸Zを、図7において、装置の隣に、ツールヘッド10に対して固定したデカルト座標系で示す。回転軸Rは、この座標系の別の軸を形成する。処理実行中、第3軸Xは、フランジ加工ローラ13’の現有効位置においてフランジ加工縁1bの長手方向と一致する。
【0032】
レーザ工具15はまた、連結フランジ17を介してツールヘッド10に固定連結されており、すなわち、連結フランジ17は、ツールヘッド10の固定枠組部品として理解される。固定連結により、レーザ工具15がフランジ加工ローラ13’に対して定められた位置および向きに配置されることが確実になる。しかしながら、この固定配置内で、フランジ加工ローラ13’に対するレーザ工具15のレーザヘッドの補償移動が可能であり、それを介して、レーザヘッドは特に接合領域における不均一さを補償することができる。このために、レーザヘッドまたはレーザ工具全体は、補償機構を介してツールヘッド10に支持される。
【0033】
補償機構により、X軸を中心とする枢動と接合領域に向かいかつそこから離れる並進移動とが可能となる。補償機構は、これら2つの移動の自由度に関連してレーザヘッドまたはレーザ工具を搭載し、それにより、各場合にばね力に抗して中間位置を中心に前後に枢動することができ、また、それぞればねの復元力に抗して前後に並進移動することができる。
【0034】
図8は、接合領域を拡大して示す。装置の、フランジ加工ローラ(図7とは異なり、図8では、円柱フランジ加工ローラ13として示す)およびレーザビーム16のみを見ることができる。レーザビーム16の傾斜角αは変化し得るが、フランジ加工ローラ13’の代りにフランジ加工ローラ13を用いることができる。傾斜角αは、有効位置におけるフランジ1cに対し垂直な直線とレーザビーム16の中心ビーム軸との間で測定される。実施形態例では、図5に基づいて金属板複合材の第1実施形態例について説明したようなすみ肉シーム4が、装置によって生成される。すみ肉シーム4を生成するために、レーザビーム16は重ね継手3の端部上に向けられる。内側金属板2だけでなくフランジ1cの周縁部も溶融されるために、傾斜角αは少なくとも5°であるべきである。このように傾斜角αを選択することにより、溶融領域Sは、図8に示すように、突合せ継手の角領域全体に広がり、それにより、溶接中に供給される溶接材料は、フランジ1cおよび内側金属板2に一様に接合される。円錐状フランジ加工ローラ13’を使用する場合、これにより、溶接に対して更に好都合な円錐度上限値がもたらされる。フランジ加工ローラ13’の円錐度、すなわち回転軸Rに対するフランジ加工ローラ13’の走行面の傾斜は、最大15°であることが好ましい。
【0035】
図9は、第3実施形態例における本発明による金属板複合材を示す。この金属板複合材は、フランジ加工により接合領域に形成されたスロットの形状が、第1実施形態例および第2実施形態例と異なる。フランジ加工中、外側金属板1のフランジ(識別するために1dと呼ぶ)は、第1実施形態例および第2実施形態例ほど折り曲げられない。フランジ1dは、フランジ加工中、フランジ加工縁1bを介して隣接する金属板領域1aの方向において、V字型スロットが得られるのに十分な程度しか折り曲げられず、すなわち、フランジ加工後、フランジ1dは、金属板領域1aに対して斜め傾斜している。想定されるように、単に例として、図1に基づいて、フランジ1dがフランジ加工前にすでに金属板領域1aからおよそ直角に突出している外側金属板1からフランジ加工が進行する場合、傾斜角は、フランジ1dを1つまたは最大2つのフランジ加工ステップで図示する最終形状になるように折り曲げることができるように選択されることが好ましい。内側金属板2のフランジは、スロット内に突出し、内側金属板2のフランジの自由周縁部は、フランジ1dに面する金属板領域1aの内側までかつそれに接して突出する。金属板の厚さに応じて、内側金属板2は、スロットの基部まで突出することも可能である。
【0036】
図10は、図9に示す接合領域を含む金属板複合材をフランジ加工し同時に溶接する間の、本発明による装置を示し、円柱フランジ加工ローラ13を備えている。金属板複合材は、たとえば自動車用のドアを形成することができる。接合領域はまた、前記領域において作用するフランジ加工工具12およびレーザ工具15とともに詳細に示されている。接合領域を除き、金属板複合材は、図7および図8の金属板複合材に対応する。図10における詳細図から明らかなように、接合領域におけるレーザ工具15の接近性は、内側金属板2(そのフランジは接合位置において金属板領域1aに対して傾斜している)の形状と、その様なフランジ1dの不完全な折曲げと、によって改善される。最終フランジ加工は、円柱フランジ加工ローラ13を用いて可能であり、レーザビーム16を、角を溶融しかつ/または領域Sを溶融するために好都合である傾斜角α(図8)で接合領域に同時に向けることができる。内側金属板のフランジの向きとフランジ1dの結果としての形状、すなわちフランジ1dと金属板領域1aとの間に形成されたスロットは、実施形態例によって示すように、内側金属板2がすでに、対向する外側金属板1に関して接合領域の近くで上方に突出し、したがって、実施形態例において、フランジ加工ローラ13または13’と上方に突出しトラフ形状である内側金属板2との領域との間の、レーザ工具15が利用可能な空間を大幅に制限する場合、特に有利である。
【0037】
フランジ加工および溶接の前に、外側金属板1および内側金属板2は、図10に示す接合位置において互いに対して固定されており、内側金属板2の円周方向フランジは、フランジ加工縁1bに接する金属板領域1aに対して押圧される。第1実施形態例および第2実施形態例とは異なり、内側金属板2のフランジは、接合領域においてある範囲にわたり対向する金属板領域1aに当接せず、図10の詳細図により、特に図9により示されているように、実質的に円周方向に直線状に接触するのみである。線接触、一般には金属板1および金属板2間の接触は、フランジ加工には有利である。それは、これにより、重ね継手3を形成するためにフランジ1cまたはフランジ1dが内側金属板2のフランジまでかつそれに接して折り曲げられる時、内側金属板2がたわむのが防止されるかまたは少なくとも実質的に防止されるためである。図10は、複数のフランジ加工ステップのうちの最終フランジ加工ステップ、または好ましくは全体で1つのフランジ加工ステップでの接合装置を示す。接合に対し可能な限り短いフランジ1dで間に合わせるために、溶接シーム4は、この場合もまた、第1実施形態例と同様に、重ね継手3上のすみ肉シームとして生成される。
【0038】
図11は、第1実施形態例の金属板複合材1、2の接合領域を通る長手方向断面の図における、処理実行中の接合装置を示し、そこでは、外側金属板1のフランジ1cと対向する金属板領域1aとが、U字型スロットを形成している。接合装置の移動の方向を、ツールヘッド10のX軸における方向矢印によって示す。レーザビーム16は溶融領域Sに向けられ、実際には狭い圧力ストリップである圧力線P上のフランジ加工ローラ13は、フランジ1cに、かつフランジ1cを介して内側金属板2および外側金属板1の金属板領域1aに作用する。大まかにみて点状である溶融領域Sは、同じツールヘッド10上のフランジ加工工具12およびレーザ工具15の上述した配置により、処理実行中、わずかな間隔dをもって圧力線Pに続く。シナリオ例で想定したように、金属板複合材がドアまたは他の取付部品、あるいはまた自動車の本体部品である場合、間隔dは、こうした金属板複合材に典型的な金属板の厚さ、フランジ加工工具および適合されたレーザ出力に対しての通常の前進速度、であるとすると約3mmであることが好ましい。この所定の用途に関わらず、間隔dは、フランジ加工ローラ13によって溶融領域Sにおいてフランジ1cに加えられる圧力が、フランジ1cを内側金属板2に対して溶融領域Sの一部を形成するその外周縁において固定して押圧するのに、なお十分大きいように選択され、それにより、フランジ1cは溶融領域Sにおいて内側金属板2から逸れなくなり、清浄な溶接シーム4を、すみ肉シームの形態で生成することができる。
【0039】
現溶融領域Sにおいてフランジ加工縁1bに沿って発生し得る凹凸および他の不規則性を補償するために、レーザ工具15は、レーザヘッドに移動不可能に連結された触覚センサ18を有している。触覚センサ18は、移動の方向Xにおいて溶融領域Sの前でフランジ1cと内側金属板2との間の重ね継手の端部をスキャンする幅の狭い指状部材であり、レーザヘッドに固定連結されているため、枢動し並進移動するその能力の範囲内でレーザヘッドに続く。
【0040】
図12は、第4実施形態例における本発明による金属板複合材の接合領域を示し、それは、1つの変更を除き、第1実施形態例の接合領域に対応する。すなわち、フランジ1cおよび対応する重ね継手3は、図5に示す接合領域におけるものより短い。これに対応して、間隙腐食によって脅かされる可能性がある領域の長さも短くなるが、特に、外側金属板1において材料が節約される。溶接接合中、重ね継手3の長さが短くなることは、接合連結の剛性および強度に影響を与えないかまたはそれほどの影響を与えない。
【0041】
図13は、第5実施形態例における本発明による金属板複合材を示し、ヘミング接合および溶接連結のみに直接関連する限り、第1実施形態例に対応する接合領域を有している。しかしながら、金属板複合材の形状は、全体として第1実施形態例(図5)および第4実施形態例(図12)ほど好適ではなく、それは、フランジ加工工具の接近性、特に溶接用具の接近性が、金属板複合材の形状によって著しく損なわれるためである。
【0042】
図14は、第3実施形態例の金属板複合材を再び示す。これとの比較により、図15は、第6実施形態例における本発明による金属板複合材を示し、それは、内側金属板2が、フランジ1dと金属板領域1aとの間に形成されたスロット内に突出するが、外側金属板1と当接接触するまでは突出しないという点で、第3実施形態例の金属板複合材と異なる。別の相違は、外側金属板1がスロットの領域において2回偏向している、ということである。フランジ加工縁1bは、金属板領域1aに直接至る追加の急峻な曲げからわずかな間隔ずれている。第3または最後の相違は、フランジ1dおよび重ね継手3の長さが第3実施形態例より大きいということである。
【0043】
図16は、第7実施形態例における本発明による金属板複合材を示す。第7実施形態例では、フランジ(識別するために1eと呼ぶ)は、それがフランジ加工縁1bを介して突出する金属板領域1aの方向において折り曲げられず、それにより、隣接する金属板領域1aと共通するいかなる方向成分もなく、特にそれとスロットを形成しない。ヘミング接合を生成する場合、他の実施形態例に基づいて説明したように、フランジ加工工具12を用いて、フランジ1eが、フランジ加工縁1bの周囲で折り曲げられ、それにより、フランジ加工縁を介して隣接する金属板領域1aに対し、実施形態例に示すようにたとえば90°の角度、または90°を越える角度を囲む。フランジ1eは、単に、折曲げの前にのみ、金属板領域1aの長さを直線状に長くすることができる。溶接シーム4は、第1実施形態例と同様に、溶接工具15を用いて重ね継手3上にすみ肉シームとして生成される。
【0044】
図17〜図19は、本発明による金属板複合材の別の3つの実施形態例を示す。これまで説明した実施形態例の金属板複合材とは異なり、継手は、重ね継手としてではなく突合せ継手6として、金属板1と金属板2との間に形成される。継手6の領域全体を覆うことが好ましい溶接シーム7を、たとえばVシームとして生成することができる。図17および図18の実施形態例では、フランジ1eは、図16の実施形態例にしたがって折り曲げられ、それにより、金属板領域1aに対し90°以上の角度を囲む。図19の実施形態例では、フランジ1dは、1つまたは複数のフランジ加工ステップで、最大90°の角度、フランジ加工縁1bの周囲で折り曲げられているのみであるが、金属板はすでに、フランジ加工の前に傾斜フランジを有しており、フランジ1dは、本発明によるフランジ加工により再び折り曲げられている。その結果、再びスロットが得られるが、それには2つの縁、一方で先にすでに形成された縁と、他方でフランジ加工縁1bがある。
【0045】
図17の実施形態例では、フランジ1eの内側は、金属板2の対面側に接して配置されている。図18の実施形態例では、内側金属板2の内側が、溶接中にフランジ1eの対向側に接して押圧する。図19の実施形態例では、フランジ1dおよび金属板2の対面側は各々互いに接して押圧され、このようにチャックされている間に互いに溶接される。
【0046】
図20は、金属板1および金属板2が、フランジ1cの外側に沿って延在する溶接シームによって互いに連結される実施形態例を示す。フランジ1cの外側では、フランジ1cおよび金属板2が重ね継手を形成し、それには、フランジ1cの内側の重ね継手3と識別するために、参照符号8が与えられている。フランジ1cとフランジ加工縁1bを介して隣接する金属板領域1aとがスロットを形成し、したがって、図5、図6、図12および図13の実施形態例にしたがって、フランジ1cを1cと呼ぶが、金属板2はそのように形成されたスロットには配置されず、上述したように、フランジ1cの外側と重ね継手8を形成する。
【0047】
図21は、重ね継手および溶接シーム4に関しては図20の実施形態例に対応し、フランジ1dの領域における金属板の形状に関しては図15および図19の実施形態例に対応し、それにより、これら実施形態例に関してなされたそれぞれの記述を参照されたい。
【0048】
図5、図6および図12〜図19のフランジ加工溶接接合を、先行するフランジ加工工具と後続する溶接工具を用いて、本発明による装置の同じ処理実行で製作することができる。図20および図21の実施形態例における接合の場合、それぞれのフランジ1cまたは1dは、別個のフランジ加工方法で折り曲げられ、金属板1および2は、重ね継手8により互いに対して固定、すなわちチャックされ、それぞれの溶接シーム4は、後続する別個の処理実行で生成される。
【符号の説明】
【0049】
1 外側金属板
1a 外側金属板領域
1b フランジ加工縁
1c フランジ
1d フランジ
1e フランジ
2 内側金属板
3 重ね継手
4 溶接シーム
5 溶接シーム
6 突合せ継手
7 溶接シーム
8 重ね継手

10 ツールヘッド
11 コネクタ
12 フランジ加工工具
13 フランジ加工部材
13’ フランジ加工部材
14 空気圧ユニット
15 溶接またははんだ付け工具
16 エネルギービーム
17 連結フランジ
18 センサ
R 回転軸
X 長手方向、移動方向
Z 圧力軸
α 傾斜角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)ロールフランジ加工またはスライドフランジ加工によりフランジ加工縁(1b)の周囲で折り曲げられるフランジ(1c、1d、1e)を備える外側金属板(1)と、
b)前記フランジ(1c、1d、1e)と継手(3、6、8)を形成する内側金属板(2)と、
c)前記継手(3、6、8)上にまたは中に生成され、かつ前記金属板(1、2)を互いに固定連結する、溶接またははんだ付けシーム(4、5、7)と
を具備する、金属板複合材。
【請求項2】
前記継手(3、8)が重ね継手であることを特徴とする、請求項1に記載の金属板複合材。
【請求項3】
前記フランジ(1c、1d、1e)が、前記外側金属板(1)の周縁領域に延在し、前記外側金属板(1)の断面において、前記フランジ加工縁(1b)を介して前記フランジ(1c、1d、1e)に移行する前記外側金属板(1)の外側金属板領域(1a)より実質的に短いことを特徴とする、請求項1または2に記載の金属板複合材。
【請求項4】
前記外側金属板(1)の前記フランジ(1c、1d)がスロットを形成し、前記内側金属板(2)がその中に突出することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属板複合材。
【請求項5】
前記フランジ(1d)が、対向して面する前記外側金属板(1)の前記領域(1a)から離れる方向に傾斜して向き、それにより、前記スロットが、前記フランジ加工縁(1b)を含むフランジ加工基部の方向にじょうごの形状で狭くなることを特徴とする、請求項4に記載の金属板複合材。
【請求項6】
前記内側金属板(2)が、好ましくはその両面の各々のある範囲にわたって、前記フランジ(1c)の外周縁と前記フランジ(1c)に面する前記外側金属板(1)の対向領域(1a)との間のスロットにおいて締め付けられることを特徴とする、請求項4に記載の金属板複合材。
【請求項7】
前記溶接またははんだ付けシームがすみ肉シーム(4)またはIシーム(5)であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の金属板複合材。
【請求項8】
車両の構成要素としてまたは車両に取り付けるために提供され、前記外側金属板(1)が、好ましくは前記車両の外殻の領域を形成することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の金属板複合材。
【請求項9】
車両用または車両の可動または不動の取付部品の構成要素、好ましくはドア、サンルーフ、ハッチバック、トランクの蓋またはボンネット、あるいは付属の泥除け、または車両の本体の構成要素、好ましくは屋根、側面部品(特にホイールアーチ)または屋根と側面部品との間の連結であることを特徴とする、請求項8に記載の金属板複合材。
【請求項10】
金属板を接合する方法であって、
a)外側金属板(1)および内側金属板(2)が接合位置で互いに対して固定され、
b)フランジ(1c、1d、1e)が、前記外側金属板(1)のフランジ加工縁(1b)の周囲で、前記接合位置でまたは前もって別の位置で、前記フランジ加工縁(1b)の長手方向に移動するフランジ加工部材(13、13’)によって折り曲げられ、
c)前記内側金属板(2)および前記フランジ(1c、1d、1e)が、前記接合位置で継手(3、6、8)を形成し、
d)前記金属板(1、2)が、溶接またははんだ付けシーム(4、5、7)を生成することにより前記継手(3、6、8)上または内で互いに連結される、方法。
【請求項11】
前記フランジ(1c、1d、1e)が、ロールフランジ加工によって折り曲げられることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記フランジ(1c、1d)が、前記フランジ加工縁(1b)を介して隣接する前記外側金属板(1)の領域(1a)とスロットを形成するために十分折り曲げられ、前記内側金属板(2)が前記スロット内に突出して前記フランジ(1c、1d)とオーバラップすることを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記金属板(1、2)が前記接合位置にある時、前記フランジ(1c、1d)が前記内側金属板(2)までかつそれに接して折り曲げられることを特徴とする、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記溶接またははんだ付けシーム(4、5、7)が、前記フランジ(1c、1d、1e)が折り曲げられている間に、前記フランジ加工縁(1b)の長手方向(X)に前記フランジ加工部材(13、13’)に続く溶接またははんだ付け工具(15)によって生成されることを特徴とする、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記フランジ加工部材(13、13’)および前記溶接またははんだ付け工具(15)が、前記フランジ加工縁(1b)の前記長手方向(X)で共移動し、前記フランジ加工部材(13、13’)が(前記溶接またははんだ付け工具(15)の押圧手段として機能して)、前記溶接またははんだ付けシーム(4、5、7)を生成するために前記内側金属板(2)に対して前記フランジ(1c、1d、1c)を押圧することを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記フランジ加工工程および前記溶接またははんだ付け工程が、前記金属板(1、2)を再チャックなしに、同じチャッキング装置において前記接合位置で行われることを特徴とする、請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
構成部品(1、2)をフランジ加工し溶接またははんだ付けする装置であって、
a)ツールヘッド(10)と、
b)前記ツールヘッド(10)に配置され、ロールフランジ加工またはスライドフランジ加工するフランジ加工部材(13、13’)と、
c)前記ツールヘッド(10)に配置された溶接またははんだ付け工具(15)と
を具備し、
d)前記フランジ加工部材(13、13’)と前記溶接またははんだ付け工具(15)とが、前記フランジ加工部材(13、13’)が、前記溶接またははんだ付け工具(15)を用いて行うことができる溶接またははんだ付け工程のための押圧手段を形成するように配置された、装置。
【請求項18】
前記フランジ加工部材(13、13’)と前記溶接またははんだ付け工具(15)とが、前記ツールヘッド(10)に、前記フランジ加工部材(13、13’)によって前記構成部品(1、2)のうちの一方に加えることができる押圧力と、加熱する役割を果たす前記溶接またははんだ付け工具(15)のエネルギービーム(16)とが、製作される複合材に付加されるように、互いにわずかな間隔(d)で隣接して配置されることを特徴とする、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記溶接またははんだ付け工具(15)が、前記ツールヘッド(10)のデカルト座標系(R、X、Z)において枢動軸(X)を中心に前後に、好ましくは各場合に復元ばね力に抗して中間位置から前後に枢動することができることを特徴とする、請求項17または18に記載の装置。
【請求項20】
前記レーザまたははんだ付け工具(15)が、前記ツールヘッド(10)に、前記ツールヘッド(10)に関して固定される並進軸に沿って前後に、好ましくは各場合に復元ばね力に抗して中間位置から前後に移動することができるように配置され、前記並進軸が、少なくとも、前記構成部品(1、2)の折り曲げられたフランジ(1c)に対して垂直な方向成分を含むことを特徴とする、請求項17〜19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
センサ(17)が前記ツールヘッド(10)に配置され、それにより、生成されるべき溶接またははんだ付けシーム(4、5、7)に対する継手の前進が、前記フランジ加工部材(10)を用いて成形されるべき前記フランジ加工縁(1b)の長手方向(X)における前記ツールヘッド(10)の移動中、好ましくは触感により、スキャンされることが可能であることを特徴とする、請求項19または20に記載の装置。
【請求項22】
前記フランジ加工部材(13、13’)が、フランジ加工中に前記構成部品(1、2)のうちの一方に対して押圧する走行面を有するフランジ加工ローラであり、円柱であるか、または一方向において直径が軸方向に一様に低減することを特徴とする、請求項17〜21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
前記フランジ加工部材(13、13’)用の清浄手段が前記ツールヘッド(10)に配置され、それを用いて、前記フランジ加工部材(13、13’)がフランジ加工中に清浄にされることが可能であることを特徴とする、請求項17〜22のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公表番号】特表2010−515584(P2010−515584A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545862(P2009−545862)
【出願日】平成20年1月14日(2008.1.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/000227
【国際公開番号】WO2008/086994
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(505358026)エダック ゲーエムベーハー ウント コー. カーゲーアーアー (4)
【氏名又は名称原語表記】EDAG GmbH & Co.KGaA
【住所又は居所原語表記】Reesbergstrasse 1 36039 Fulda Germany
【Fターム(参考)】