説明

金属構造体の形成方法

【課題】活性化された酸素を含む照射処理をした後でも、レジストパターンが開口しているシード層、あるいは、金属構造体の表面に対し、メッキの堆積が均一で、且つ、制御性よく行えるようにする。
【解決手段】O2プラズマ(RFパワー:100W)による照射処理を6分間行うことで、レジストパターン104の開口領域におけるシード層103の表面に付着している有機物(残渣)が除去された状態とする。この有機物の残渣の処理において、シード層103の上にシード層103を構成している金の酸化物などからなる表面層103aが形成される。この表面層103aを、塩酸溶液などの酸の溶液(pH3以下)による浸漬処理(表面処理)を1分間行うことで除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線や電極,MEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)デバイスなどの構造体の形成方法に関し、特に、メッキにより構造体を作製する金属構造体の形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高集積回路の実装プロセスにおいて、各基板に設けられたパッドを介して基板間を電気的に接続するワイヤボンディングと呼ばれる技術がある。このパッドを構成する物質として、化学的安定性や高導電性の観点から、金(Au)が良く用いられる。ワイヤボンディングによる接続の信頼性は、パッド表面の清浄度に依存するため、パッド表面の汚染物除去が重要な技術となる。
【0003】
また、半導体プロセス技術を用いて作成される微小機械であるMEMSデバイスは、微細な可動部や制御電極などの構造体が3次元的に配置されて構成されている。このような構造体の形成法の一つに、メッキ法による多層厚膜化技術がある(特許文献1参照)。メッキ法では、メッキ成長の種となるシード層の上、あるいは、メッキされる金属で形成された構造体の上において、レジストパターンが開口している表面にメッキの膜を成長させることで、構造体を形成している。このメッキにおいては、めっき膜が形成されるシード層の表面でのメッキ液との電気化学的反応により、シード層の表面上に同種の金属を堆積している。このようなメッキにおいて、シード層や金属構造体を構成する物質として、化学的安定性や高導電性の観点から、Auが良く用いられる。
【0004】
メッキにより形成した構造体の形状の均一性や再現性は、シード層の上、あるいは、金属構造体の上でレジストをパターニングして形成したレジストパターンの開口部に露出しているシード層、あるいは、金属構造体の表面の清浄度に依存する。従って、この場合においても、これらシード層や金属構造体の表面の汚染物除去が重要な技術となる。
【0005】
従来、表面の汚染物質を除去する技術として、酸素(O2)プラズマ、あるいは、アルゴン(Ar)や窒素(N2)などの不活性ガスとの混合ガスの酸素プラズマ、あるいは、四フッ化炭素(CF4)などのフッ素含有ガスと酸素との混合ガスのプラズマによる照射処理が一般的に用いられている。
【0006】
【特許文献1】特開2003−270554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、O2を含むプラズマの照射により、レジストパターンの開口内のシード層、あるいは、金属構造体を構成するAuの表面を処理した後においても、メッキの形状や高さに不均一性が発生する場合があった。また、O2を含むプラズマによる照射処理をした後では、メッキ処理が開始されても、すぐにはメッキの堆積が開始されず、不感時間(インキュベーション)を経てからメッキが堆積され始める現象が確認されている。この現象は、O2、あるいは、CF4/O2といったプラズマ種や照射時間によって、また、ウエハ内の場所によっても変動する。従って、O2を含むプラズマによる照射処理をした後、レジストパターンの開口部におけるシード層、あるいは、金属構造体の表面にメッキを行う場合、制御性よくメッキが堆積できないという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、活性化された酸素を含む照射処理をした後でも、レジストパターンが開口しているシード層、あるいは、金属構造体の表面に対し、メッキの堆積が均一で、且つ、制御性よく行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る金属構造体の形成方法は、基板の上に金から構成された下地層が形成された状態とする第1工程と、下地層の表面に活性化した酸素を作用させる第2工程と、第2工程で下地層の表面に形成された金の酸化物を除去する第3工程と、この第3工程の後で、下地層の表面にメッキにより金属の構造体を形成する第4工程とを少なくとも備えるものである。
【0010】
上記金属構造体の形成方法において、第3工程では、下地層の表面が酸の溶液に浸漬した状態とすることで金の酸化物を除去する。なお、酸は、塩酸である。また、第3工程では、真空中もしくは不活性ガスの雰囲気で下地層を加熱することで、金の酸化物を除去する。また、第3工程では、還元性ガスの雰囲気で下地層を加熱することで、金の酸化物を除去する。なお、この場合、第3工程における加熱の温度は、110℃以下でよい。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、本発明によれば、金から構成された下地層の表面に活性化した酸素を作用させることで下地層の表面に形成された金の酸化物を除去した後、下地層の表面にメッキにより金属の構造体を形成するようにしたので、活性化されたO2を含む照射処理をした後でも、レジストパターンが開口しているシード層、あるいは、金属構造体の表面に対し、メッキが均一で、且つ、制御性よく行えるようになるという優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
【0013】
[実施の形態1]
はじめに、本発明の実施の形態1における金属構造体の形成方法について説明する。まず、図1(a)に示すように、例えば、熱酸化法やCVD(Chemical Vapor Deposition)法などにより、シリコンからなる半導体基板101の上に絶縁層102が形成された状態とする。また、チタン(Ti)膜およびAu膜を、順次に蒸着法などにより形成し、絶縁層102の上にシード層103が形成された状態とする。
【0014】
次に、図1(b)に示すように、所望の領域に開口領域を備えたレジストパターン104が、シード層103の上に形成された状態とする。レジストパターン104は、例えば、ポジ型の感光性を有するポリイミドの膜を形成し、公知のフォトリソグラフィ技術により所定のパターンの露光と現像とを行うことで形成できる。このようにしてレジストパターン104を形成した後、例えば、O2プラズマ(RFパワー:100W)による照射処理を6分間行うことで、レジストパターン104の開口領域におけるシード層103の表面に付着している有機物(残渣)が除去された状態とする。
【0015】
なお、本実施の形態では、O2プラズマによる照射処理を用いているが、開口領域におけるシード層103の表面の汚染の度合いに応じて、Ar/O2混合プラズマ、あるいは、CF4/O2混合プラズマによる照射処理を用いてもよい。
【0016】
上述した有機物の残渣の処理において、シード層103の上にシード層103を構成している金の酸化物などからなる表面層103aが形成される。本実施の形態1では、塩酸溶液などの酸の溶液(pH3以下)による浸漬処理(表面処理)を1分間行うことで、O2プラズマによる照射処理により表面に形成された表面層103aが除去された状態とする。なお、pH3より大きい場合、表面層103aの除去に多くの時間を要し、また、pHの変動などが発生して表面層103aを除去しきれない場合が発生する。これに対しpH3以下とすることで、実用的な処理時間(1分程度)で表面層103aの除去が可能となる。
【0017】
次に、図1(c)に示すように、亜硫酸金ナトリウム液をメッキ液とする電界メッキ法により、レジストパターン104の開口領域に露出するシード層103の上にAuを析出させることで、金属構造体105が、形成された状態とする。本実施の形態では、前述した塩酸などの酸による表面処理により、シード層103の清浄な表面が露出しているので、金属構造体105は、均一な高さで、且つ、制御性よく形成される。
【0018】
次に、図1(d)に示すように、例えば、O2プラズマによる灰化(アッシング)処理により、レジストパターン104が除去された状態とする。
【0019】
次に、金属構造体105をマスクとし、ヨウ素/ヨウ化アンモニウム溶液を用いたウエットエッチング法によりシード層103上部のAuが除去され、続いて、フッ酸溶液を用いたウエットエッチング法によりシード層103下部のTiが除去された状態とする。このことにより、絶縁層102上に、固定電極151および制御電極152が形成された状態とする。なお、図1(d)では省略しているが、固定電極151および制御電極152の下部には、シード層が配置されている。
【0020】
次に、図1(e)に示すように、固定電極151および制御電極152が有機樹脂層106で覆われた状態とし、次いで、固定電極151の一部が露出するよう、有機樹脂層106に開口部106aが形成された状態とする。有機樹脂層106は、例えば、ポジ型の感光性を有するポリイミドの膜を形成し、開口部106aの部分が開口するように、所定のパターンの露光と現像とを行うことで形成できる。有機樹脂層106に形成された開口部106aは、固定電極151にまで貫通し、後述する支持部107が形成される領域に配置される。
【0021】
次いで、例えば、O2プラズマ(RFパワー:100W)による照射処理を6分間行うことで、開口部106aにおける固定電極151の表面に付着している有機物(残渣)が除去された状態とする。なお、上述では、O2プラズマによる照射処理を用いているが、開口領域106aにおける金属構造体105の表面の汚染の度合いに応じて、Ar/O2混合プラズマ、あるいは、CF4/O2混合プラズマによる照射処理を用いてもよい。
【0022】
上述した有機物の残渣の処理において、開口部106a内の固定電極151の上に固定電極151を構成している金の酸化物などからなる表面層が形成される。本実施の形態1では、塩酸溶液などの酸の溶液(pH3以下)による浸漬処理(表面処理)を1分間行うことで、O2プラズマによる照射処理により表面に形成された表面層が除去された状態とする。
【0023】
このようにして形成した開口部106aに露出する固定電極151の表面をシード層として、亜硫酸金ナトリウム液をメッキ液とする電界メッキ法によりAuを析出させることで、図1(f)に示すように、有機樹脂層106の開口部106aを充填する支持部(金属構造体)107が形成された状態とする。本実施の形態では、上述した塩酸などの酸による表面処理により、固定電極151の清浄な表面が露出しているので、支持部107は、表面に高い平坦性を備えた状態で、且つ、制御性よく形成される。
【0024】
次に、有機樹脂層106の上に、開口部108aを備える有機樹脂パターン108が形成された状態とする。開口部108aの一部に、支持部107の上面が露出した状態とする。例えば、ポジ型の感光性を有するポリイミドの膜を形成し、公知のフォトリソグラフィ技術により所定パターンの露光と現像とを行えばよい。
【0025】
次いで、例えば、O2プラズマ(RFパワー:100W)による照射処理を6分間行うことで、開口部108aにおける支持部107の表面(上面)に付着している有機物(残渣)が除去された状態とする。なお、上述では、O2プラズマによる照射処理を用いているが、開口部108aにおける支持部107の表面の汚染の度合いに応じて、Ar/O2混合プラズマ、あるいは、CF4/O2混合プラズマによる照射処理を用いてもよい。
【0026】
上述した有機物の残渣の処理において、支持部107の上面に支持部107を構成している金の酸化物などからなる表面層が形成される。本実施の形態1では、塩酸溶液などの酸の溶液(pH3以下)による浸漬処理を1分間行うことで、O2プラズマによる照射処理により表面に形成された表面層が除去された状態とする。
【0027】
このようにして形成した開口部108aの領域内に露出する支持部107の表面をシード層とし、亜硫酸金ナトリウム液をメッキ液とする電界メッキ法によりAuを析出させることで、図1(g)に示すように、有機樹脂層108の開口部108a内に可動電極(金属構造体)109が、形成された状態とする。本実施の形態では、上述した塩酸など酸による表面処理により、支持部107の清浄な表面が露出しているので、可動電極109は、表面に高い平坦性を備えた状態で、且つ、制御性よく形成される。
【0028】
この後、例えば、O2プラズマによる灰化(アッシング)処理により、有機樹脂層106、及び、有機樹脂層108が除去された状態とすることで、図1(h)に示すように、絶縁層102上に、Auからなる固定電極151の上の支持部107により支持される可動電極109が、Auからなる制御電極152の上に離間してかつ対向して形成された状態が得られる。
【0029】
なお、上述では、MEMSデバイスを作成する製造方法について説明してきたが、本発明を用いた製造方法によって作成される構造体は、MEMSデバイスに限るものではない。例えば、本発明は、電極パッドや微細電気配線など、メッキ法を用いて作成される金属構造体の形成方法に用いることができる。
【0030】
図2は、メッキ前処理として、塩酸などの酸による表面処理が無い場合(a)と表面処理をした場合(b)とでの、メッキ高さのばらつきを計測し、頻度分布として表した結果である。この調査では、まず、シリコンウエハの上に、Ti膜およびAu膜を、順次、蒸着法などにより形成してシード層を形成した後に、ポジ型レジスト膜をより開口領域を備えたレジストパターンを形成し、次いで、O2プラズマ(RFパワー:100W)による照射処理を6分間行うことで、開口領域におけるシード層表面に付着している有機物(残渣)が除去された状態とする。
【0031】
この後、表面処理の有無をパラメータとし、亜硫酸金ナトリウム液をメッキ液(田中貴金属社製)とする電界メッキ法によりAuを析出させ、最後に、ポジ型レジスト膜を除去して試料作製とする。ただし、塩酸溶液には、pH3の塩酸水溶液を用い、浸漬する時間は1分とする。また、この調査における試料作製のメッキでは、ウエハを正極とし、また、白金(Pt)からなる対向電極を負極として定電流印加を行い、ウエハ上の開口領域にAuメッキを実施し、高さ40μmの四角柱構造体を形成する。このとき、四角柱構造体の高さが40μmからずれた量をメッキ高さのばらつきとする。
【0032】
図2に示すように、メッキ前処理としての表面浸漬の実施に伴い、四角柱構造体の高さばらつきが抑制されていることが分かる。この結果は、塩酸溶液に浸漬することにより、O2プラズマ照射によって変性された金表面(酸化金膜)が除去されたため、メッキ高さのばらつきが減少したことを証明している。従って、本発明を用いて構造体を製造することにより、メッキの形成が制御性よく行えるようになる。
【0033】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2における金属構造体の形成方法について説明する。実施の形態2では、上述した実施の形態1における構造体の形成方法のうち、図1(b)、図1(e)、図1(f)を用いて説明した塩酸による表面処理を、いわゆる真空中や不活性ガス雰囲気中の加熱による表面処理に置き換えたものである。
【0034】
実施の形態2について説明すると、シード層にO2プラズマ(RFパワー:100W)などによる照射処理を行うことで、開口領域におけるシード層103の表面に付着している有機物(残渣)が除去された状態とした後、真空、あるいは、ArやN2等の不活性ガスの雰囲気においてシード層103の表面を加熱する処理(表面処理)を行う。
【0035】
表面処理のための加熱の条件としては、加熱温度として260℃以上の温度が望ましい。これは、O2を含むプラズマによる照射処理により形成される酸化金の完全分解温度が260℃であるためである。また、加熱時間は1分間程度行えばよい。なお、この加熱時間は、O2を含むプラズマの照射条件(例えば、RFパワーや照射時間)などによって変動することは言うまでもない。
【0036】
本実施形態2によって作成された構造体の高さばらつきを測定した結果、実施の形態1で示した実証実験と同様、四角柱構造体の高さばらつきが抑制されることが実証された。
【0037】
[実施の形態3]
次に、本発明の実施の形態3における金属構造体の形成方法について説明する。実施の形態3では、実施の形態1における構造体の形成方法のうち、図1(b)、(e)、(f)で用いられていた金の酸化物の除去方法(表面処理方法)を、下記の方法に変更したものである。
【0038】
本実施の形態3では、シード層にO2プラズマ(RFパワー:100W)などによる照射処理を行うことで、開口領域におけるシード層103の表面に付着している有機物(残渣)が除去された状態とした後、分子状水素(H2)、いわゆる水素ガスなどの還元性ガスの雰囲気においてシード層103の表面を110℃で1分間加熱する処理を行い、O2プラズマによる照射処理によりシード層103の表面に形成されたAuの酸化物が除去された状態とする。
【0039】
なお、本実施の形態3では、Auの酸化物の除去方法として、分子状水素(H2)雰囲気での加熱処理を行ったが、少なくとも活性化した分子状または原子状水素を含む還元性ガスの雰囲気であればよいことは言うまでもない。原子状水素を生成する還元性ガス種としては、例えば、メタン(CH4)、エタン(C26)、プロパン(C38)などの飽和炭化水素、あるいは、エチレン(C24)などの不飽和炭化水素、あるいは、水素(H2)、アンモニア(NH3)、硫化水素(H2S)など、分子式中に水素(H)を含む分子であることは同業者であれば容易に類推できる。
【0040】
なお、本実施形態3では、Auの酸化物の除去方法において、110℃で1分間の加熱処理を行ったが、この加熱条件は、O2を含むプラズマの照射条件(例えば、RFパワーや照射時間)などによって変動することは言うまでもない。
【0041】
図3は、蒸着法により形成したAu表面に対して、O2プラズマ(RFパワー:100W)による照射処理を6分間行った場合(図3の上段)、および、引き続きH2雰囲気下で110℃の加熱を1分間処理した場合(図3の下段)の、Auの4f領域でのXPS(X線光電子分光)スペクトルである。
【0042】
水素分子(H2)雰囲気下における110℃の加熱処理の実施に伴い、図3の下段に示すように、86eVおよび90eV付近に見られた酸化金のスペクトルが消失している状態が分かる。同様に、水素プラズマ(H2*,H*)雰囲気下で110℃(110℃以下)の加熱処理においても、図3の下段と同様の結果が得られる。これは、O2プラズマ照射によって変性された金表面(酸化金膜)が、水素分子、あるいは、水素プラズマ(H2*、H*)という還元性ガスの雰囲気下にすることで、110℃という低温化での加熱処理でも還元消失されることができるようになったということを示している。なお、図3の下段において見られる84eVおよび88eV付近に存在するスペクトルは、構造体である金のスペクトルである。
【0043】
真空や不活性ガスの雰囲気下で酸化金を除去する場合は、熱による自己分解反応を利用するため、260℃以上という高温での加熱処理を必要としたが、水素分子、あるいは、水素プラズマ(H2*、H*)という還元性ガスの雰囲気で酸化金を除去する場合は、還元反応を利用しており、この際の活性化エネルギーが小さくすむため、110℃以下という低温での加熱処理でよくなったものと考えられる。
【0044】
この結果、本実施形態3に係る発明を用いることにより、レジストパターンなどの形成に用いられる有機樹脂として、より耐熱性の低いものも利用することができる、という効果がある。また、110℃と低温の処理で行えるので、例えば、各シード層における下層のTiと上層のAuとの相互拡散が、ほとんど発生しない程度にまで抑制できるようになる。下層にTiを配置することで、密着性を得るようにしているが、相互拡散によりこの密着性が低下するようになる。この相互拡散は、各工程の処理により加わる温度が高いほどより発生しやすいものとなる。これに対し、上述したように、110℃と低温で処理ができれば、TiとAuとの相互拡散を抑制でき、密着性の低下が防止できるようになる。加えて、低温で処理ができるので、工程のコストをより低減させることが見込める。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の形態1における表面処理方法を説明するための工程図である。
【図2】塩酸浸漬の有無をパラメータとし、高さばらつきとその頻度を計測した結果を示す頻度分布図である。
【図3】蒸着法により形成したAu表面に対して、O2プラズマ(RFパワー:100W)による照射処理を6分間行った後、水素分子雰囲気下で110℃の加熱を1分間処理した際の、Auの4f領域でのXPS(X線光電子分光)スペクトルである。
【符号の説明】
【0046】
101…半導体基板、102…絶縁層、103…シード層、103a…表面層、104…レジストパターン、105…金属構造体、106…有機樹脂層、106a…開口部、107…支持部、108…有機樹脂パターン、108a…開口部、109…可動電極、151…固定電極、152…制御電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に金から構成された下地層が形成された状態とする第1工程と、
前記下地層の表面に活性化した酸素を作用させる第2工程と、
前記第2工程で前記下地層の表面に形成された金の酸化物を除去する第3工程と、
この第3工程の後で、前記下地層の表面にメッキにより金属の構造体を形成する第4工程と
を少なくとも備えることを特徴とする金属構造体の形成方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属構造体の形成方法において、
前記第3工程では、前記下地層の表面が酸の溶液に浸漬した状態とすることで前記金の酸化物を除去する
ことを特徴とする金属構造体の形成方法。
【請求項3】
請求項2記載の金属構造体の形成方法において、
前記酸は、塩酸であることを特徴とする金属構造体の形成方法。
【請求項4】
請求項1記載の金属構造体の形成方法において、
前記第3工程では、真空中もしくは不活性ガスの雰囲気で前記下地層を加熱することで前記金の酸化物を除去する
ことを特徴とする金属構造体の形成方法。
【請求項5】
請求項1記載の金属構造体の形成方法において、
前記第3工程では、還元性ガスの雰囲気で前記下地層を加熱することで前記金の酸化物を除去する
ことを特徴とする金属構造体の形成方法。
【請求項6】
請求項5記載の金属構造体の形成方法において、
前記第3工程における前記加熱の温度は、110℃以下である
ことを特徴とする金属構造体の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−235455(P2009−235455A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−80533(P2008−80533)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】