説明

金属状態検出装置

【課題】金属状態検出装置の検出精度を向上させる。
【解決手段】第一検出コイルL1のインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせる第一発振回路2と、第二検出コイルL2のインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせる第二発振回路3と、第一発振回路2から出力される発振波の位相ズレと、第二発振回路3から出力される発振波の位相ズレを検出し、両者の差分を求める検出回路4とを備え、第一検出コイルL1及び第二検出コイルL2は、被検体表面における検出領域及び検出方向を限定するために、被検体表面との間で閉磁路を構成するコアと、該コアに巻装されるコイルとを備えて構成されると共に、互いに重合する検出領域で、互いに交差する方向の透磁率変化を検出すべく、平面視で交差状に配置され、さらに、第一発振回路2と第二発振回路3は、相互干渉を避けるために、交互に駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属の状態を検出する金属状態検出装置に関し、特に、金属の応力、ひずみ、材質、疲労、損傷、欠陥などの状態検出に適した金属状態検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の状態を、その金属の磁気的な特性変化に基づいて検出する金属状態検出装置が知られている。例えば、磁歪の逆効果を利用して、被検体のひずみを検出する磁歪式ひずみセンサや、回転軸のトルクを検出する磁歪式トルクセンサが実用化されている。磁歪の逆効果とは、被検体表面(磁歪膜)にひずみが発生した場合に、引張り方向では透磁率が増加する一方、圧縮方向では透磁率が減少するという磁気的なひずみ現象であり、磁歪式ひずみセンサは、被検体表面の透磁率変化をインダクタンスの変化として検出する検出コイルを備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
磁歪式トルクセンサは、回転軸に磁気異方性を付与しないタイプ(例えば、特許文献2参照)と、回転軸に磁気異方性を付与するタイプ(例えば、特許文献3、4参照)に分類することができる。例えば、後者は、回転軸の二つの外周領域に、それぞれ+45°と−45°の磁気異方性を付与すると共に、各外周領域に対向して一対の検出コイルを配置し、これらの検出コイル間に生じる差動電圧を出力するように構成される。つまり、回転軸にトルクを加えると、磁歪の逆効果により各外周領域の透磁率が背反的に変化するため、検出コイル間に差動電圧が生じ、トルクに比例した出力が得られる。
【特許文献1】特開平8−271359号公報
【特許文献2】特開2001−133337号公報
【特許文献3】特開平7−83769号公報
【特許文献4】特開平11−37863号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の金属状態検出装置では、ブリッジ回路などを用いて、検出コイル間に生じる僅かな差動電圧を検出し、この差動電圧をアンプで多段階に増幅しているため、ノイズの影響を受けやすく、高精度な検出が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の如き実情に鑑み、これらの課題を解決することを目的として創作された本発明の金属状態検出装置は、金属の状態を検出する金属状態検出装置であって、金属の表面において第一方向の透磁率変化を検出すべく配置され、当該透磁率変化をインダクタンスの変化として検出する第一検出コイルと、金属の表面において第二方向の透磁率変化を検出すべく配置され、当該透磁率変化をインダクタンスの変化として検出する第二検出コイルと、所定の基準周波数で自律的に発振すると共に、第一検出コイルのインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせる第一発振回路と、所定の基準周波数で自律的に発振すると共に、第二検出コイルのインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせる第二発振回路と、第一発振回路から出力される発振波の位相ズレと、第二発振回路から出力される発振波の位相ズレを検出し、両者の差分を求める検出回路とを備え、第一検出コイル及び第二検出コイルは、金属の表面における検出領域及び検出方向を限定するために、金属の表面との間で閉磁路を構成するコアと、該コアに巻装されるコイルとを備えて構成されると共に、互いに重合する検出領域で、互いに交差する方向の透磁率変化を検出すべく、平面視で交差状に配置され、さらに、第一発振回路と第二発振回路は、相互干渉を避けるために、交互に駆動されることを特徴とする。このようにすると、金属の状態を高精度に検出することができる。すなわち、上記のような発振回路から出力される発振波においては、金属の状態(透磁率変化)が位相ズレ(周波数変化や周期変化を含む)となって明確に現れ、しかも、発振波における位相ズレは、ノイズの影響を受けにくいので、発振波の位相ズレにもとづいて金属の状態を高精度に検出することが可能になる。また、第一検出コイル及び第二検出コイルは、金属の表面における検出領域及び検出方向を限定すると共に、互いに重合する検出領域で、互いに交差する方向の透磁率変化を検出するので、第一検出コイルの検出領域と第二検出コイルの検出領域とのズレに起因する誤差の発生を抑制し、検出精度をさらに向上させることができる。さらに、第一発振回路と第二発振回路は、交互に駆動されるので、検出領域を重合させても、各検出コイルが発生させる磁界の相互干渉を防止し、当該相互干渉による検出精度の低下を回避することができる。
また、前記検出回路は、第一発振回路から出力される複数の発振波をカウントし、該カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する発振波カウント処理を行い、該発振波カウント処理に要した時間にもとづいて、第一方向の透磁率変化を検出する第一方向透磁率検出手段と、第二発振回路から出力される複数の発振波をカウントし、該カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する発振波カウント処理を行い、該発振波カウント処理に要した時間にもとづいて、第二方向の透磁率変化を検出する第二方向透磁率検出手段と、第一方向の透磁率と第二方向の透磁率との差分を求める差分検出手段とを備えることを特徴とする。このようにすると、金属状態検出装置の検出精度をさらに向上させることができる。すなわち、発振波における位相ズレを発振波の数だけ蓄積させると共に、蓄積させた位相ズレを時間として測定するので、安価なデジタル回路を用いて精度の高い検出を行うことができる。しかも、その分解能は、時間測定用のカウンタ速度により決まり、発振回路の基準周波数に依存しないので、検出対象に応じて発振回路の基準周波数を最適化しつつ、高分解能の金属状態検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0007】
図1は、本発明の実施形態に係る磁歪式ひずみセンサの構成を示すブロック図である。この図に示される磁歪式ひずみセンサ1は、被検体表面に生じる磁歪の逆効果を利用して被検体Hのひずみを検出するものであり、第一検出コイルL1、第二検出コイルL2、第一発振回路2、第二発振回路3及び検出回路4を備えて構成されている。
【0008】
第一検出コイルL1は、被検体表面において第一方向(例えば、検出対象方向)の透磁率変化を検出すべく配置され、当該透磁率変化をインダクタンスの変化として検出する。また、第二検出コイルL2は、被検体表面において第二方向(例えば、検出対象方向に対して直交する方向)の透磁率変化を検出すべく配置され、当該透磁率変化をインダクタンスの変化として検出する。
【0009】
検出コイルL1、L2は、被検体表面における検出領域及び検出方向を限定するために、高透磁率材料を用いて形成されコアと、該コアに巻装されるコイルとを備えて構成されている。具体的には、フェライトからなるU字コア2a、3aに、コイルを巻装して構成されており、U字コア2a、3aの両端を被検体表面に近接又は接触させることにより、被検体表面との間で閉磁路を構成するようになっている。これにより、被検体表面の限られた領域に第一方向及び第二方向の磁路を形成し、該磁路における透磁率変化を検出することが可能になる。
【0010】
第一発振回路2は、所定の基準周波数で自律的に発振すると共に、第一検出コイルL1のインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせるように構成される。また、第二発振回路3は、所定の基準周波数で自律的に発振すると共に、第二検出コイルL2のインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせるように構成される。例えば、シュミット発振回路の帰還回路に検出コイルL1、L2を配置すれば、検出コイルL1、L2のインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレが生じる発振回路2、3を構成することができる。
【0011】
シュミット発振回路は、シュミットインバータINVなどが備えるシュミットトリガ回路のヒステリシス特性を利用した発振回路であり、例えば、シュミットインバータINVと、シュミットインバータINVの入力側に接続されるコンデンサCと、シュミットインバータINVの出力をシュミットインバータINVの入力側に帰還させる帰還回路と、この帰還回路に介在する抵抗要素とを備えて構成される。
【0012】
初期状態のシュミット発振回路では、コンデンサCに電荷が溜まっていないため、コンデンサCの両端の電圧は0Vとなっている。このとき、シュミットインバータINVは、入力側電圧VinがV以下なので、出力がHレベル(5V)となる。シュミットインバータINVの出力側電圧Voutが5Vのときは、帰還回路2aを介してシュミットインバータINVの入力側に電流が流れるので、コンデンサCに電荷が徐々に溜まり、その両端の電圧が上昇する。そして、シュミットインバータINVの入力側電圧VinがVに達すると、シュミットインバータINVの出力がLレベル(0V)に切換わる。シュミットインバータINVの出力側電圧Voutが0Vになると、コンデンサCが放電し、シュミットインバータINVの入力側電圧Vinが徐々に降下する。そして、シュミットインバータINVの入力側電圧VinがVまで降下すると、シュミットインバータINVの出力がHレベルに切換わる。
【0013】
以上の動作の繰り返しにより、シュミットインバータINVの出力側から所定周波数の矩形波が得られる。そして、シュミット発振回路の発振周波数f(=1/T)は、蓄電期間Tと放電期間Tにより決まり、蓄電期間Tと放電期間Tは、コンデンサC及び抵抗要素の定数により決まる。したがって、抵抗要素として帰還回路に検出コイルL1、L2を配置すれば、検出コイルL1、L2のインダクタンス変化に応じてシュミット発振回路の発振波に位相ズレを生じさせることができる。
【0014】
なお、本発明の発振回路がシュミット発振回路に限定されないことは勿論であり、検出コイルL1、L2のインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせる発振回路であれば、CR発振回路、LC発振回路、水晶発振回路などを用いてもよい。
【0015】
検出回路4は、例えば、CPU、ROM、RAM、I/Oなどが内蔵されたマイコン(1チップマイコン)を用いて構成され、ROMに書き込まれたプログラムに従って後述するひずみ検出処理を行う。なお、検出回路4は、複数のマイコンで構成したり、一又は複数のICで構成することもできる。
【0016】
検出回路4は、第一発振回路2から出力される発振波の位相ズレと、第二発振回路3から出力される発振波の位相ズレを検出し、両者の差分を求める。このようにすると、被検体表面のひずみを高精度に検出することができる。すなわち、上記のような発振回路2、3から出力される発振波においては、被検体表面のひずみに応じた透磁率変化が位相ズレ(周波数変化や周期変化を含む)となって明確に現れ、しかも、発振波における位相ズレは、ノイズの影響を受けにくいので、発振波の位相ズレにもとづいて被検体Hのひずみを高精度に検出することが可能になる。
【0017】
また、検出回路4は、第一発振回路2から出力される複数の発振波をカウントし、該カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する発振波カウント処理を行い、該発振波カウント処理に要した時間にもとづいて、第一方向の透磁率変化を検出する第一方向透磁率検出手段と、第二発振回路3から出力される複数の発振波をカウントし、該カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する発振波カウント処理を行い、該発振波カウント処理に要した時間にもとづいて、第二方向の透磁率変化を検出する第二方向透磁率検出手段と、第一方向の透磁率と第二方向の透磁率との差分にもとづいて、被検体Hのひずみを検出する差分検出手段とを備えることが好ましい。
【0018】
このようにすると、磁歪式ひずみセンサ1の検出精度をさらに向上させることができる。すなわち、発振波における位相ズレを発振波の数だけ蓄積させると共に、蓄積させた位相ズレを時間として測定するので、安価なデジタル回路を用いて精度の高い検出を行うことができる。しかも、その分解能は、時間測定用のカウンタ速度により決まり、発振回路2、3の基準周波数に依存しないので、検出対象に応じて発振回路2、3の基準周波数を最適化しつつ、高分解能のひずみ検出を行うことができる。
【0019】
また、第一検出コイルL1及び第二検出コイルL2は、被検体表面における検出領域及び検出方向を限定するために、被検体表面との間で閉磁路を構成するコアと、該コアに巻装されるコイルとを備えて構成されると共に、互いに重合する検出領域で、互いに交差する方向の透磁率変化を検出すべく、平面視で交差状に配置されている。例えば、第一検出コイルL1及び第二検出コイルL2のコアを高さが相違するU字コア2a、3aで構成すると共に、これらのU字コア2a、3aを平面視で交差するように配置する。このようにすると、第一検出コイルL1の検出領域と第二検出コイルL2の検出領域とのズレに起因する誤差(温度誤差、材質材質など)の発生を抑制し、ひずみ検出精度をさらに向上させることができる。
【0020】
第一発振回路2と第二発振回路3は、相互干渉を避けるために、交互に駆動される。例えば、第二発振回路3の発振駆動を停止した状態で、第一発振回路2に係る発振波カウント処理を実行した後、第一発振回路2の発振駆動を停止した状態で、第二発振回路3に係る発振波カウント処理を実行し、その後、各発振波カウント処理に要した測定時間の差分を求めるようにする。このようにすると、各検出コイルL1、L2の検出領域を重合させても、各検出コイルL1、L2が発生させる磁界の相互干渉が回避されるので、当該相互干渉による検出精度の低下を防止することができる。
【0021】
第一検出コイルL1及び第二検出コイルL2は、被検体表面に対して非接触又は接触状態で配置するにあたり、直接又は間接的に被検体Hに一体的に固定することが好ましい。例えば、第一検出コイルL1及び第二検出コイルL2が含まれる磁歪式ひずみセンサ1を、被検体表面に直接接着したり、クランプなどの固定具を介して被検体Hに固定する。このようにすると、各検出コイルL1、L2のコアと被検体表面とのギャップを最小化して検出精度の向上が図れるだけでなく、各検出コイルL1、L2と被検体Hとの相対変位に伴う誤差の発生を回避できる。つまり、第一検出コイルL1及び第二検出コイルL2に対して被検体Hが相対変位すると、被検体表面に存在する誤差要因(例えば、被検体表面における材質や温度のバラツキ、被検体表面とコアのギャップ変動など)の影響を受け、ひずみ検出値が実際のひずみと無関係に変動する惧れがあるが、第一検出コイルL1及び第二検出コイルL2を被検体Hに一体的に固定することにより、上記誤差要因にもとづくひずみ検出値の変動を防止することができる。
【0022】
磁歪式ひずみセンサ1でひずみを検出する被検体Hの被検体表面は、メッキ法により成膜された磁歪膜5であることが好ましい。例えば、被検体Hのひずみ検出領域に、ニッケル合金からなる磁歪膜5をメッキする。このようにすると、ひずみに応じた磁歪膜5における磁歪の逆効果にもとづいて、ひずみを高精度に検出できるだけでなく、ひずみ検出におけるヒステリシスを抑えることができる。しかも、本発明の磁歪式ひずみセンサ1では、メッキ法により成膜された磁歪膜5であっても、十分な検出精度が得られるので、接着法、スパッタ法、真空蒸着法などでアモルファスなどの磁歪膜を形成する場合に比べ、大幅なコストダウンが図れるだけでなく、ニッケルメッキなどが施された既存の部材(樹脂を含む)を対象として、高精度なひずみ検出を行うことができる。
【0023】
次に、本発明における発振波の位相ズレ蓄積作用について、図2及び図3を参照して説明する。
【0024】
図2は、発振波の位相ズレ蓄積作用(検出波形始端部を拡大)を示す説明図、図3は、発振波の位相ズレ蓄積作用(検出波形終端部を拡大)を示す説明図である。これらの図に示す波形は、一回の検出処理における発振回路2、3の出力波形であって、発振回路2、3から出力される発振波の数をカウントし、カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する発振波カウント処理を行い、該発振波カウント処理に要した時間にもとづいて、蓄積された発振波の位相ズレを測定するにあたり、発振波カウント処理における発振波のカウント数Nを100とした場合の波形であり、上側の波形は、被検体Hにひずみを加えない場合を示し、下側の波形は、被検体Hにひずみを加えた場合を示している。これらの図から明らかなように、検出波形の始端部、つまり発振波カウント処理における発振波のカウント数Nが少ない段階では、位相ズレがあまり蓄積されていないため、その差が明確ではないが(図2参照)、カウント数Nが多くなると、発振波の位相ズレが蓄積され、その差が明確になるので、位相ズレの測定が容易になることがわかる(図3参照)。そして、発振波の位相ズレは、被検体Hのひずみに比例して大きくなるので、発振波の位相ズレにもとづいて、被検体Hのひずみを高精度に測定することが可能になる。また、第一発振回路2から出力される発振波の位相ズレは、被検体表面における所定方向(検出対象方向)のひずみに応じて増減する一方、第二発振回路3から出力される発振波の位相ズレは、被検体表面における所定方向のひずみに応じて変化することなく、温度や被検体表面との距離に応じて変化するので、その差分にもとづいて被検体Hのひずみ量及びひずみ極性を検出できるだけでなく、温度誤差や変位誤差が相殺された検出値を得ることができる。
【0025】
次に、検出回路4の具体的な検出処理手順について、図4〜図7を参照して説明する。
【0026】
図4に示すひずみ検出処理では、まず、初期設定(S11:発振波カウント数Nの初期値設定を含む)を行った後、カウント数変更処理(S12)、第一方向透磁率検出処理(S13:第一方向透磁率検出手段)及び第二方向透磁率検出処理(S14:第二方向透磁率検出手段)を順番に実行する。そして、透磁率検出処理(S13、S14)で得られた第一方向透磁率検出値と第二方向透磁率検出値の差分を演算すると共に(S15:差分検出手段)、演算した差分(ひずみ検出値)を所定の検出信号形式に変換して出力することにより(S16)、一回のひずみ検出処理が終了する。
【0027】
図5に示すカウント数変更処理では、まず、カウント数変更信号の入力を判断し(S21)、該判断結果がYESの場合は、カウント数変更信号に含まれる発振波カウント数Nを読み取り(S22)、これに従って発振波カウント数Nを変更する(S23)。
【0028】
図6に示す第一方向透磁率検出処理では、第一発振回路2の駆動を開始した後(S31)、カウンタクリア処理(S32)と、発振波カウント処理(S33、S34)と、時間測定処理(S35)を実行し、その後に第一発振回路2の駆動を停止させる(S36)。カウンタクリア処理は、発振波カウンタ及び時間計測カウンタをクリアする処理である(S32)。また、発振波カウント処理は、第一発振回路2から出力される発振波の数をカウントし(S33)、該カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する処理である(S34)。また、時間測定処理は、発振波のカウント数がNになったら、時間計測カウンタ値(第一方向透磁率検出値)を読み込む処理である(S35)。
【0029】
図7に示す第二方向透磁率検出処理では、第二発振回路3の駆動を開始した後(S41)、カウンタクリア処理(S42)と、発振波カウント処理(S43、S44)と、時間測定処理(S45)を実行し、その後に第二発振回路3の駆動を停止させる(S46)。カウンタクリア処理は、発振波カウンタ及び時間計測カウンタをクリアする処理である(S42)。また、発振波カウント処理は、第二発振回路3から出力される発振波の数をカウントし(S43)、該カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する処理である(S44)。また、時間測定処理は、発振波のカウント数がNになったら、時間計測カウンタ値(第二方向透磁率検出値)を読み込む処理である(S45)。
【0030】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、被検体Hのひずみを検出する磁歪式ひずみセンサ1であって、被検体表面において第一方向の透磁率変化を検出すべく配置され、当該透磁率変化をインダクタンスの変化として検出する第一検出コイルL1と、被検体表面において第二方向の透磁率変化を検出すべく配置され、当該透磁率変化をインダクタンスの変化として検出する第二検出コイルL2と、所定の基準周波数で自律的に発振すると共に、第一検出コイルL1のインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせる第一発振回路2と、所定の基準周波数で自律的に発振すると共に、第二検出コイルL2のインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせる第二発振回路3と、第一発振回路2から出力される発振波の位相ズレと、第二発振回路3から出力される発振波の位相ズレを検出し、両者の差分を求める検出回路4とを備え、第一検出コイルL1及び第二検出コイルL2は、被検体表面における検出領域及び検出方向を限定するために、被検体表面との間で閉磁路を構成するコアと、該コアに巻装されるコイルとを備えて構成されると共に、互いに重合する検出領域で、互いに交差する方向の透磁率変化を検出すべく、平面視で交差状に配置され、さらに、第一発振回路2と第二発振回路3は、相互干渉を避けるために、交互に駆動されるので、被検体表面のひずみを高精度に検出することができる。
【0031】
すなわち、上記のような発振回路2、3から出力される発振波においては、被検体表面のひずみ(透磁率変化)が位相ズレ(周波数変化や周期変化を含む)となって明確に現れ、しかも、発振波における位相ズレは、ノイズの影響を受けにくいので、発振波の位相ズレにもとづいて被検体Hのひずみを高精度に検出することが可能になる。また、第一検出コイルL1及び第二検出コイルL2は、被検体表面における検出領域及び検出方向を限定すると共に、互いに重合する検出領域で、互いに交差する方向の透磁率変化を検出するので、第一検出コイルL1の検出領域と第二検出コイルL2の検出領域とのズレに起因する誤差の発生を抑制し、検出精度をさらに向上させることができる。さらに、第一発振回路2と第二発振回路3は、交互に駆動されるので、検出領域を重合させても、各検出コイルL1、L2が発生させる磁界の相互干渉を防止し、当該相互干渉による検出精度の低下を回避することができる。
【0032】
また、検出回路4は、第一発振回路2から出力される複数の発振波をカウントし、該カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する発振波カウント処理を行い、該発振波カウント処理に要した時間にもとづいて、第一方向の透磁率変化を検出する第一方向透磁率検出手段と、第二発振回路3から出力される複数の発振波をカウントし、該カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する発振波カウント処理を行い、該発振波カウント処理に要した時間にもとづいて、第二方向の透磁率変化を検出する第二方向透磁率検出手段と、第一方向の透磁率と第二方向の透磁率との差分を求める差分検出手段とを備えるので、ひずみ検出精度をさらに向上させることができる。すなわち、発振波における位相ズレを発振波の数だけ蓄積させると共に、蓄積させた位相ズレを時間として測定するので、安価なデジタル回路を用いて精度の高い検出を行うことができる。しかも、その分解能は、時間測定用のカウンタ速度により決まり、発振回路2、3の基準周波数に依存しないので、検出対象に応じて発振回路2、3の基準周波数を最適化しつつ、高分解能のひずみ検出を行うことができる。
【0033】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論であって、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で任意の変更を加えることができる。例えば、本発明は、磁歪式ひずみセンサに限らず、トルクセンサ、応力センサ、材質検査装置、金属疲労検査装置、損傷検査装置、欠陥検査装置などの金属状態検出装置においても実施できることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施形態に係る磁歪式ひずみセンサの構成を示すブロック図である。
【図2】発振波の位相ズレ蓄積作用(検出波形始端部を拡大)を示す説明図である。
【図3】発振波の位相ズレ蓄積作用(検出波形終端部を拡大)を示す説明図である。
【図4】検出回路におけるひずみ検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】検出回路における設定数変更処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】検出回路における第一方向透磁率検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】検出回路における第二方向透磁率検出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
1 磁歪式ひずみセンサ
2 第一発振回路
3 第二発振回路
4 検出回路
5 磁歪膜
L1 第一検出コイル
L2 第二検出コイル
H 被検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の状態を検出する金属状態検出装置であって、
金属の表面において第一方向の透磁率変化を検出すべく配置され、当該透磁率変化をインダクタンスの変化として検出する第一検出コイルと、
金属の表面において第二方向の透磁率変化を検出すべく配置され、当該透磁率変化をインダクタンスの変化として検出する第二検出コイルと、
所定の基準周波数で自律的に発振すると共に、第一検出コイルのインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせる第一発振回路と、
所定の基準周波数で自律的に発振すると共に、第二検出コイルのインダクタンス変化に応じて発振波に位相ズレを生じさせる第二発振回路と、
第一発振回路から出力される発振波の位相ズレと、第二発振回路から出力される発振波の位相ズレを検出し、両者の差分を求める検出回路とを備え、
第一検出コイル及び第二検出コイルは、金属の表面における検出領域及び検出方向を限定するために、金属の表面との間で閉磁路を構成するコアと、該コアに巻装されるコイルとを備えて構成されると共に、互いに重合する検出領域で、互いに交差する方向の透磁率変化を検出すべく、平面視で交差状に配置され、
さらに、第一発振回路と第二発振回路は、相互干渉を避けるために、交互に駆動される
ことを特徴とする金属状態検出装置。
【請求項2】
前記検出回路は、
第一発振回路から出力される複数の発振波をカウントし、該カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する発振波カウント処理を行い、該発振波カウント処理に要した時間にもとづいて、第一方向の透磁率変化を検出する第一方向透磁率検出手段と、
第二発振回路から出力される複数の発振波をカウントし、該カウント数が所定数Nに達したか否かを判断する発振波カウント処理を行い、該発振波カウント処理に要した時間にもとづいて、第二方向の透磁率変化を検出する第二方向透磁率検出手段と、
第一方向の透磁率と第二方向の透磁率との差分を求める差分検出手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載の金属状態検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−33720(P2009−33720A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−136135(P2008−136135)
【出願日】平成20年5月25日(2008.5.25)
【出願人】(591123274)株式会社アヅマシステムズ (31)
【Fターム(参考)】