説明

金属蛇腹管複合ホース

【課題】内圧の繰返し作用に対する耐久性に加えて繰返し屈曲変形に対する耐久性を高めることによって全体として優れた耐久性を有する金属蛇腹管複合ホースを提供する。
【解決手段】金属蛇腹管20と、ゴム充填材層22と、補強層24,25とを有し、実使用時にかかる内圧よりも高い内圧をかけることにより金属蛇腹管20を塑性変形させ、補強層24を緊張状態とする予備加圧処理が実使用に先立って施されて使用される金属蛇腹管複合ホース10を、予備加圧処理の前において金属蛇腹管20の山部29の曲率半径を谷部31の曲率半径に対して小となしておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は自動車の燃料輸送用,冷媒輸送用,燃料電池で使用される水素ガス等の電池燃料の輸送用その他に好適に使用可能な、金属蛇腹管を輸送流体の透過バリア層として有する金属蛇腹管複合ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の燃料(ガソリン等エンジン用の燃料)輸送用ホース等として従来、振動吸収性,組付性等の良好な一般的なゴムホース、例えば耐ガソリン透過性の優れるNBR・PVC(アクリロニトリルブタジエンゴムとポリ塩化ビニルとのブレンド)等が用いられて来たが、近年自動車用燃料等の透過規制は地球環境保全の観点から厳しく、今後もその規制の一層の強化が予想される。
従ってかかる燃料輸送用ホースにおいてはより一層の耐透過性が求められる。
【0003】
また燃料電池で使用される水素ガス等の輸送用ホースや炭酸ガス冷媒の輸送用ホースにあっては、それら水素ガスや炭酸ガス等の輸送流体に対して極めて高い耐透過性が要求される。
こうした要求に対し、ゴムや樹脂等の有機材料のみで構成されたホースでは求められる要求性能を満足することは困難である。
【0004】
このようなことから、金属蛇腹管を複合化し、これを輸送流体の透過バリア層として有する金属蛇腹管複合ホースが検討されている。
例えば下記特許文献1にこの種の金属蛇腹管複合ホースが開示されている。
【0005】
ところで金属蛇腹管は蛇腹形状によって、即ち形状的な効果によって可撓性を有するものであり、材料自体は金属であるためゴム等と異なって弾性を有しない。
【0006】
従ってこのような金属蛇腹管複合ホースの場合、実際にこれを使用したときに、金属蛇腹管が繰り返し変形することによって金属蛇腹管が疲労破断し易い問題を内包する。
【0007】
本発明者等が金属蛇腹管の疲労破断を詳しく調べた結果、内圧の繰返し作用による疲労破断については金属蛇腹管における山部の頂で亀裂発生し、疲労破断し易いのに対し、金属蛇腹管の可撓性に基づく繰返し屈曲変形による疲労破断については谷部の底で亀裂発生、破断し易い事実のあることが判明した。
【0008】
そこで本発明者等は、内圧の繰返し作用に基づく疲労破断への対策を研究する中で、実使用前(実際に使用する前)に金属蛇腹管複合ホースに対して予備加圧を加えておくことで耐久性を飛躍的に高め得る知見を得、先の特許願(特願2004−095542)において提案している。
その内容は以下のようなものである。
【0009】
図5はその適用対象となる金属蛇腹管複合ホースの一例を示している。
図において200は金属蛇腹管複合ホース(以下単にホースとする)で、202は最内層としての金属蛇腹管である。
206は、金属蛇腹管202における山部204と204との間の外周側の谷間空間208を埋めるゴム充填材層(弾性充填材層)で、210はその外周側の補強層、212は最外層としての外面ゴム層(カバーゴム層)である。
【0010】
ここでゴム充填材層206は、金属蛇腹管202の谷間空間208を埋めて金属蛇腹管202の過度の変形を抑制する働きを有する層であり、また補強層210は、有機繊維等の補強線材を編組して成る層で、蛇腹金属管202に内圧が作用したときにその圧力を受け止めて金属蛇腹管202に対し、即ちホース200に対し耐圧性を付与する層である。
【0011】
ここで図5(A)はホース製造時の状態を表しており、これに対してこの先願に開示のものでは、かかるホース200を実際に使用する前において事前に実使用時にかかる圧力よりも高い内圧をかける予備加圧処理を施すものである。
【0012】
このようにすると、金属蛇腹管202への高い内圧(金属蛇腹管202を降伏点超えて塑性変形させるような高い圧力)の付加によって、金属蛇腹管202の山部204が谷部空間208を埋めているゴム充填材層206を外周側に押し出すようにして膨らみ変形(塑性変形)(図5(B)参照)し、これによりその外側の補強層210、詳しくはその補強線材が緊張状態となって補強線材の緩みや遊びがなくなり、その結果として、実際の使用状態で金属蛇腹管202に対して内圧が作用したときに補強層210の補強耐圧効果が瞬時に金属蛇腹管202に及ぼされるようになって、金属蛇腹管202の変形が規制され、このことによって金属蛇腹管202の内圧の繰返し作用による疲労破断が抑制され、耐久性が飛躍的に向上せしめられる。
【0013】
ところでこのようにホース200に対して実使用前に予備加圧処理を施すと、内圧の繰返し作用に対する耐久性は向上するが、一方で繰返し屈曲に対する耐久性は却って低下してしまう事実のあることがその後の研究の中で判明した。
【0014】
その原因を追求する中で、このような繰返し屈曲変形に対する耐久性の低下は、予備加圧処理の結果、谷部の形状が当初よりも曲率半径Rが小となるように形状変化することによってもたらされるものであることが判明した。
【0015】
事前の予備加圧処理による内圧の繰返し作用に対する耐久性の向上効果は、上記のように谷部空間208を埋めていたゴム充填材層206が山部204の膨出変形に伴って外周側に押し出され、これにより補強層210が当初よりも緊張状態におかれて、当初生じていた補強線材の緩みや弛みが消失し、内圧付加時に直ちに補強層210の補強効果が金属蛇腹管202に及ぶことにより得られるものであるが、図5(C)に示しているようにその結果として谷部214の曲率半径が小となって、金属蛇腹管202が繰返し屈曲変形したときに谷部214の底に大きなストレスがかかるようになって、谷部214の底で亀裂発生し易くなり、そのことが繰返し屈曲変形に対する耐久性低下がもたらされたものであることが判明した。
【0016】
金属蛇腹管202において、内圧作用により最大の応力が発生するのは山部204の頂であり、一方屈曲変形によって最大の応力が発生するのは谷部214の底であり、従ってそれら山部204の頂,谷部214の底の疲労破断を抑制することが、内圧の繰返し作用に対する耐久性向上、繰返し屈曲変形に対する耐久性向上の要点となる。
【0017】
ここにおいて本発明は、金属蛇腹管複合ホースにおける内圧の繰返し作用に対する耐久性及び繰返し屈曲変形に対する耐久性を共に向上させることを目的としてなされたものである。
尚、金属蛇腹管の耐久性を高めるものについては下記特許文献2,特許文献3に開示のものがある。
【0018】
ここで特許文献2に開示のものは金属ベローズに内圧を付加し、これを軸方向に延伸させてピッチを拡大せしめ、その際の加工硬化によって耐久性を高めるようにしたもので、必然的に金属蛇腹管の軸長が異なったものとなってしまう。
また特許文献3に開示のものは、金属蛇腹管における蛇腹部の形状を断面U字状から断面S字形状となして、その形状効果によって耐久性を高めるようになしたもので、本願発明とは耐久性向上のための手段において相異なっている。
【0019】
【特許文献1】特開2001−182872号公報
【特許文献2】特開昭57−86688号公報
【特許文献3】特開平11−159616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は以上のような事情を背景とし、内圧の繰返し作用に対する耐久性に加えて、繰返し屈曲変形に対する耐久性を高めることによって全体として優れた耐久性を有する金属蛇腹管複合ホースを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
而して請求項1のものは、(イ)輸送流体の透過バリア層としての金属蛇腹管と、(ロ)該金属蛇腹管の山部と山部との間の外周側の谷間空間を埋める弾性充填材層と、(ハ)該弾性充填材層より外周側の補強線材を編組して成る補強層とを有し、実際の使用に先立って、該実際の使用時にかかる内圧よりも高い内圧を負荷することにより前記金属蛇腹管を塑性変形させ、前記補強層を緊張状態とする予備加圧処理が施されて使用される金属蛇腹管複合ホースであって、前記予備加圧処理の前において、前記金属蛇腹管が、前記山部の曲率半径が前記谷部の曲率半径に対して小となる形状となしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項2のものは、請求項1において、前記山部の曲率半径が前記谷部の曲率半径に対して2/3以下となしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0023】
以上のように本発明は、予備加圧処理の前の金属蛇腹管の形状を、山部の曲率半径が谷部の曲率半径に対して小となる形状となしておくものである。
即ち、従来配管用として用いられている金属蛇腹管は、製造時における形状が山部,谷部何れも同形状のものであり、これに対して本発明では製造時における形状、詳しくは予備加圧処理の前の形状を、山部の曲率半径が谷部の曲率半径に対して小となるようになしたもので、このようにしておけば、後において金属蛇腹管複合ホースに対し予備加圧処理を施して山部を膨出変形させたとき、山部の曲率半径と谷部の曲率半径とが近いものとなり、即ち山部の形状と谷部の形状が同形状に近いものとなり、従って内圧の繰返し作用に対する耐久性と併せて、繰返し屈曲変形に対する耐久性も効果的に高めることができる。
【0024】
また製造時において金属蛇腹管の山部に対し谷部の曲率半径が大きくなることによって、谷部空間への弾性充填材層の挿入性が向上して谷部空間の隅々まで確実に弾性充填材層を充填できるようになり、製品の品質がより向上ないし安定化する効果も得られる。
尚本発明において山部,谷部の形状は厳密な円弧形状をなす場合の他、実質的に円弧形状と言えるものも含むものである。
【0025】
本発明では、山部の曲率半径を谷部の曲率半径に対し2/3以下となしておくことが望ましく、特に1/3以下となしておくことができる(請求項2)。
このような形状としておくことで、後に予備加圧処理によって金属蛇腹管の山部を塑性変形させるような大きな圧力を加えたとき、山部の曲率半径と谷部の曲率半径とをより近くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は本発明の一実施形態の金属蛇腹管複合ホースを表している。但し図1は後の予備加圧処理前の状態で表している。
図1において、10は金属蛇腹管複合ホース(以下単にホースとする)で、12はホース本体、14はホース本体12の端部に装着された継手金具である。
継手金具14はパイプ状のインサート金具16と、スリーブ状のソケット金具18とを有しており、そのソケット金具18が縮径方向にかしめ付けられることによって、それらがホース本体12の端部に固定されている。
【0027】
ホース10は金属蛇腹管20を最内層に有し、この金属蛇腹管20の外周側に弾性充填材層としてのゴム充填材層22が、更に外周側に第1補強層24,中間ゴム層27,第2補強層25,最外層としての外面ゴム層(カバーゴム層)26が順に積層されている。
【0028】
金属蛇腹管20は、図1(ロ)に示しているように蛇腹部28と端部の直管状を成すストレート形状部30とを有しており、そのストレート形状部30の内側に上記インサート金具16が嵌入されている。
この最内層の金属蛇腹管20は、輸送流体に対する透過バリア層としてのもので、蛇腹部28によって可撓性を備えている。
【0029】
ゴム充填材層(非発泡材のソリッドゴムの層)22は、図2に示しているように蛇腹部28における隣接した山部29と29との間の外周側の谷間空間32を埋めて、蛇腹部28への内圧の作用時に山部29の膨出変形を抑制する層である。
本実施形態において、このゴム充填材層22は山部29の頂に到るまで谷間空間32を完全充填する状態で、またその山部29の頂と補強層24との間の厚みが0.5mm以下の厚みとなる状態で設けられている。
【0030】
一方第1及び第2補強層24及び25は耐圧確保のための層で、それらの間の中間ゴム層27は第1補強層24と第2補強層25との層間のずれ及び摩耗を防止し且つこれらを一体化する働きをなし、また最外層の外面ゴム層26は第2補強層25を保護する働きをなす。
【0031】
尚本実施形態において、金属蛇腹管20は求められる柔軟性,可撓性からその肉厚については0.5mm以下とすることが望ましい。
一方で金属管加工の加工性から0.1mm以上が望ましい。
この金属蛇腹管20の材質については鉄鋼,アルミニウム又はアルミニウム合金,銅又は銅合金,ニッケル又はニッケル合金,チタニウム又はチタニウム合金等を用いることができ、それらの中から輸送流体に対する耐性や振動・圧力に対する耐久性,金属管加工性等から適宜選択されるが、特にステンレス鋼を好適に用いることができる。
【0032】
尚第1及び第2補強層24,25の補強線材の材質は、有機繊維から成る補強糸その他様々な材質のものを用いることができ、必要に応じて金属ワイヤを用いることができる。
またこの実施形態では弾性充填材層がゴム充填材層22とされているが、場合によってこれを他の材質例えば熱可塑性エラストマー等ゴム以外の弾性材を用いることも可能である。
【0033】
図2に詳しく示しているように、本実施形態では後の予備加圧処理の前において金属蛇腹管20、詳しくは蛇腹部28の形状が次のような形状、即ち谷部31の曲率半径(R1)に対して山部29の曲率半径(R2)が小さい形状とされている。
尚図2(B)において、ODは蛇腹部28の外径を、IDは内径を、Piはピッチを、tは肉厚を表している。
【0034】
図3は図1及び図2に示したホースに対し、実際の使用に先立って予備加圧処理を加えた後の状態を表している。
ここで予備加圧処理は、ホース10を実際に使用した時に輸送流体から加わる内圧よりも高い圧力、詳しくは金属蛇腹管20における山部29を降伏点を超えて塑性変形させるような高い圧力を加えて山部29を膨出変形させ、これにより谷間空間32を埋めているゴム充填材層22に対し外側(径方向外側)への押出力を加えて第1補強層24を予め緊張状態とするもの、即ち当初第1補強層24に生じていた緩みや遊びをなくして第1補強層24を緊張状態とする処理で、この予備加圧処理により、ホース10は第1補強層24が十分な緊張状態を保持した状態で実際の使用に供されることとなる。
尚このとき、山部29は図3に示しているように第1補強層24側に山高さが高くなり、そしてその際に排除された山部29と第1補強層24との間のゴム充填材層22が一部山高さの高くなった隣接する山部29と29との間に入り込んで来る。
【0035】
而してこのような予備加圧処理を施しておくことで、ホース10の実使用時に金属蛇腹管20に対して内圧が加わると、内圧が直ちに第1補強層24に伝わって、加わった圧力が第1補強層24によって受けられ、その第1補強層24の補強効果によって実際の使用時における金属蛇腹管20の変形が規制される。
【0036】
本実施形態では、上記のような予備加圧処理を加える前の金属蛇腹管20の形状が、谷部31の曲率半径(R1)に対して山部29の曲率半径(R2)が小さいものとされている結果、後の予備加圧処理による山部29の膨出変形によって図3(B)に示しているように山部29の曲率半径(R2)が谷部31の曲率半径(R1)に近いものとなる。
【0037】
このように本実施形態によれば、予備加圧処理により山部29の形状と谷部31の形状とが同形状に近いものとなり、従ってこのことによって内圧の繰返し作用に対する耐久性と併せて、繰返し屈曲変形に対する耐久性も効果的に高めることができる。
【0038】
また製造時において金属蛇腹管20における山部29の曲率半径(R2)に対し谷部31の曲率半径(R1)が大きいため、谷部空間32へのゴム充填材層22の挿入性が向上し、製品の品質がより向上ないし安定化する。
【0039】
本実施形態では、山部29の曲率半径(R2)を谷部31の曲率半径(R1)に対し2/3以下となしておくことが望ましく、特に1/3以下となしておくのが良い。
このような形状としておくことで、後に予備加圧処理に際して金属蛇腹管20の山部29を塑性変形させるような大きな圧力を加えたとき、山部29の曲率半径(R2)と谷部31の曲率半径(R1)とをより近くすることができる。
【実施例】
【0040】
次に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
1.ホースの製造
[比較例ホース]
SUS304材を用いて金属蛇腹管20を製造した。ここで金属蛇腹管20は以下のような形状、即ち外径(OD)9.7mm,内径(ID)4.5mm,板厚(t)0.23mm,ピッチ(Pi)2.0mmとした。
尚予備加圧前の初期の山部29及び谷部31の曲率半径はそれぞれ同じであって0.5mmとした。
【0041】
次にその上にゴム材(EPDM使用)を押し出してゴム充填材層22を成形し、その上に補強糸としてアラミド糸を用いて第1及び第2補強層24,25をブレード編組し、補強層24,25を形成した。その際第1補強層24と第2補強層25との間に中間ゴム層27を形成した。
ここで補強層24,25の耐圧設計は約80MPaとした。
次に外面ゴム層26を押出成形して、第2補強層25を被覆した。
その後150℃×30分の条件で加硫処理し、ホース本体12を形成した。
【0042】
しかる後ホース本体12の両端部に継手金具14を装着した。このとき耐圧80MPaを上回る設計にて継手金具14を装着しホース本体12にアッセンブリした。
この後において昇圧速度10MPa/分で内圧を導いて60MPaまで加圧し、その後はゆっくりと減圧した。
その予備加圧処理後の蛇腹部28の形状は、予備加圧処理前には山部R(曲率半径:以下同じ):谷部R=0.5:0.5(mm)=1:1であったものが、60MPaの予備加圧処理後には山部R:谷部R=0.75:0.25(mm)=3:1となり、山部Rが大きく谷部Rが小さくなった。
【0043】
[実施例1ホース]
上記比較例と同様にして実施例1ホースを製造した。
但し予備加圧処理前の蛇腹部28における山部R,谷部Rはそれぞれ0.4mm,0.6mmとした。
この実施例1ホースにあっては、その後の予備加圧処理によって山部R:谷部R=0.6:0.4(mm)=3:2となり、山部Rが谷部Rに対して若干大きなものとなった。
【0044】
[実施例2ホース]
上記と同様にして実施例2ホースを製造した。
但しこの実施例2ホースでは、予備加圧処理前の初期の山部R,谷部Rをそれぞれ0.25mm,0.75mmとした。その結果これら山部R,谷部Rはそれぞれ予備加圧処理後において山部R:谷部R=0.5:0.5(mm)=1:1となり、山部Rと谷部Rは同等となった。
【0045】
2.耐久性評価
耐久性評価としては、自動車における組付け後の振動耐久性を考慮して図4に示すような曲げ−振動複合試験機を用いた。
同図において34は取付台で、互いに直角を成す水平部36と垂直部38とを有している。
垂直部38の上端部には回転盤40が回転軸42周りに回転可能に設けてある。
ここでは継手金具14を除いた自由長l=300mmのホース10を曲げ半径R:120mmとなるように曲げて、その一端の継手金具14を取付台34の水平部36に90度の交差角度で回転不能に固定する一方、他端の継手金具14を回転盤40の外周部の偏心した位置に、回転盤40に対して交差角度90度で固定し(但し継手金具14は回転盤40に対して相対回転可能)、そして回転盤40を毎分450回転で回転させることによって、ホース10の端部に上下及び左右方向に振幅:±15mm(両振りで30mm)の振動を加えた。
【0046】
この振動試験は、ホース10に内圧10MPaを付与した状態で行い、金属蛇腹管20における割れの発生により耐久性を評価した。具体的には耐久性の判断は内圧の減圧が認められた時点で金属蛇腹管20に割れが発生したものとして、これを耐久時間とした。
また最終確認としてホース10を分解し、金属蛇腹管20の亀裂発生の有無を目視確認した。
結果が表1に示してある。
【0047】
【表1】

【0048】
表1の結果に見られるように実施例1,実施例2何れも比較例のものに較べて耐久性が大幅に向上しており、特に実施例2については耐久性が飛躍的に向上しており、400Hr後においても金属蛇腹管20に亀裂発生は認められなかった。
尚、表1における耐久時間について比較例,実施例1,実施例2ともにそれぞれ数値が3つ示してあるが、これは3回の耐久試験の結果のそれぞれを表したものである。
【0049】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明は上記例示した以外の各種形態の金属蛇腹管複合ホースに対して適用可能である等、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態である金属蛇腹管複合ホースの断面図である。
【図2】図1の金属蛇腹管複合ホースの要部を示した図である。
【図3】図1の金属蛇腹管複合ホースの要部を予備加圧処理後の状態で示した図である。
【図4】本発明の実施例における振動耐久試験の試験方法の説明図である。
【図5】本発明の背景説明のための説明図である。
【符号の説明】
【0051】
10 金属蛇腹管複合ホース
20 金属蛇腹管
22 ゴム充填材層
24 第1補強層
25 第2補強層
28 蛇腹部
29 山部
31 谷部
32 谷部空間
R1,R1,R2,R2 曲率半径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)輸送流体の透過バリア層としての金属蛇腹管と、(ロ)該金属蛇腹管の山部と山部との間の外周側の谷間空間を埋める弾性充填材層と、(ハ)該弾性充填材層より外周側の補強線材を編組して成る補強層とを有し、実際の使用に先立って、該実際の使用時にかかる内圧よりも高い内圧を負荷することにより前記金属蛇腹管を塑性変形させ、前記補強層を緊張状態とする予備加圧処理が施されて使用される金属蛇腹管複合ホースであって
前記予備加圧処理の前において、前記金属蛇腹管が、前記山部の曲率半径が前記谷部の曲率半径に対して小となる形状となしてあることを特徴とする金属蛇腹管複合ホース。
【請求項2】
請求項1において、前記山部の曲率半径が前記谷部の曲率半径に対して2/3以下となしてあることを特徴とする金属蛇腹管複合ホース。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−64148(P2006−64148A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−250404(P2004−250404)
【出願日】平成16年8月30日(2004.8.30)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】