説明

金微細構造体形成用無電解金めっき液およびこれを用いた金微細構造体形成方法ならびにこれを用いた金微細構造体

【課題】 基板上に被覆されたレジストに形成された単数または複数のマイクロメートルオーダー、特に100μm以下の素地露出部の幅を有する高さ3μm以上の開口部を短時間で埋設することができる無電解金めっき液を提供する。
【解決手段】 微細部析出促進剤を含み、100μm以下の微細パターンを形成する、無電解金めっき液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解金めっき液、前記無電解金めっき液を用いた微細パターンの形成方法および前記形成方法により製造した微細パターンに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化、高密度化に伴い、バンプを介して行うフリップチップ方式の実装技術が盛んにおこなわれるようになってきている。
現在は、銅をベースとするバンプをはんだで接続する方法(特許文献1、非特許文献1)、銅および/またはニッケルをベースにパラジウムや金の薄膜を作製し、はんだを添付して接続する方法(特許文献2、非特許文献2)、電解めっき法(特許文献3および4)、乾式法、無電解めっき法等が行われている。
【0003】
銅をベースとするバンプをはんだで接続する方法では、はんだの鉛フリー化が盛んに行われており、接続信頼性に問題が発生しやすくなっている。また、長さ数μm〜数百μmのウィスカーの発生が頻繁に問題となっており、狭ピッチ化には不利である。加えて、無電解はんだには厚付しにくいという欠点もある。
【0004】
銅および/またはニッケルをベースにパラジウムや金の薄膜を作製し、はんだを添付して接続する方法については、高硬度なニッケルはバンプの母材としては使用可能であるが、金のように固層接続に直接用いるのは困難であり、また、幅が100μm以下の微小なサイズでは不向きである。また、この方法でもはんだを用いることが多く、この場合も、ウィスカーの問題が発生する。
ニッケル母材の場合は、該母材の上に金の薄膜を設けて、さらにその上からはんだを用いた溶融接合を行うが、この場合も、上記の問題が発生する。
【0005】
電解めっき法は、金のみのバンプを作製する方法として採用されることもあるが、当該方法には、独立したパターンに成膜できないという問題がある。
また、電解めっき法により金バンプのような微細構造体を複数作製する場合、高さの異なる構造体が発生しやすくなり、パターンが微細になるほど高さが均一なバンプすなわち大きさが均一な複数の微細構造体を形成するのが困難になる。
【0006】
例えば、めっき工程の後に特殊な研磨(化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing、すなわちCMP))でバンプを平滑化処理することにより、この不均一化の問題を解消することが可能である(非特許文献3)。かかる処理において用いられているのはCuであり、化学的な溶解は容易である。
しかし、本件でのAu構造体はCuよりも化学的に安定であり、この方法を直接用いることはできない。
【0007】
技術的には、乾式法により、金のみのバンプを作製することも可能である。乾式法により金バンプのような微細構造体を作製する場合、ターゲット材を多量に消費する、長時間の処理が必要になるといった欠点があり、実用されていない。
【0008】
一方、細部析出を促進していない無電解金めっきを用いた無電解めっき法の場合でも、長時間の処理または析出の高速化により所望の高さの微細構造体を得ることはできる。しかしながら、レジストはパターニングや除去を前提とした設計となっているため、全般的に高温、高アルカリに弱く、具体的には、60℃を超える温度の水溶液中に1時間以上浸漬した場合、ひび割れ、膨れやレジスト成分の溶出が起こりやすくなる。また、60℃未満であっても、数時間程度の浸漬でレジストはダメージを受けることがある。
さらに、パターンの大小に関わらず金析出を高速化した場合、浴が自己分解反応を起こしやすくなり、実用化は困難である。
【0009】
含シアン無電解金めっき液であれば、細部に限らず、平面部でも1時間で5μmを超えるような成膜速度でありながらも自己分解反応を起こしにくい条件設定が可能である。しかしながら、含シアンの高速無電解金めっき液は金属等各種材料に対し攻撃的な性質をもつシアンを含むのに加え、pH9を超える高アルカリ性であり、レジストへのダメージは避けられない。
【0010】
また、これまでの無電解めっき法で使用されている金めっきは、0.1μm未満まで、または厚付しても1μmまでしか金を析出させることができない置換反応型であり、はんだを使用することが前提であった。
【0011】
すなわち、従来の方法では、マイクロメートルオーダー、特に幅が100μm以下で高さ3μm以上の微細パターンを形成するのは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−340594号公報
【特許文献2】特開2003−179094号公報
【特許文献3】特開2006−291242号公報
【特許文献4】特開2000−340595号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】金子紀男, 関雅子, 新井進, 篠原直行; Electrochemistry,71(9), 791-794 (2003)
【非特許文献2】江尻芳則, 畠山修一, 有家茂晴, 西田典弘, 長谷川清, 川上裕; 第21回エレクトロニクス実装学会論文集, 201-202 (2007)
【非特許文献3】森俊, 鶴島邦明; エレクトロニクス実装技術, 23(12), 48-51 (2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、マイクロメートルオーダー、特に、100μm以下の微細パターンを金のみで作製するための無電解金めっき液、前記無電解金めっき液を用いた微細パターンの形成方法および前記形成方法により製造した微細パターンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、基板上に被覆されたレジストに形成された単数または複数のマイクロメートルオーダー、特に100μm以下の素地露出部の幅を有する高さ3μm以上の開口部を埋設することによる微細パターンの形成において、従来、めっき液の自己分解反応を抑制するための添加剤、すなわち安定剤として知られており、金属表面での反応を阻害する作用がある微細部析出促進剤(荒牧國次; 表面技術, 47(12), 1002-1007 (1996))を含む無電解金めっき液を用いることにより、驚くべきことに開口部が小さいほど析出速度が上がることを発見し、さらに研究を進めた結果、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、100μm以下の微細パターンを形成する無電解金めっき液であって、微細部析出促進剤および金源を含む、前記無電解金めっき液に関する。
また、本発明は、微細部析出促進剤の濃度が0.001〜10,000mg/Lである、前記無電解金めっき液に関する。
さらに、本発明は、微細部析出促進剤が、高分子化合物、含窒素化合物および硫黄を含む水溶性炭化水素からなる群から選択される1または2以上の化合物を含む、前記無電解金めっき液に関する。
また、本発明は、微細部析出促進剤が、ポリエチレングリコール、1,10−フェナントロリニウムおよび2−メルカプトベンゾチアゾールからなる群から選択される1または2以上の化合物を含む、前記無電解金めっき液に関する。
【0017】
さらに、本発明は、さらに金析出促進剤を含む、前記無電解金めっき液に関する。
また、本発明は、金析出促進剤が、水溶液中でハロゲンイオンを発生する化合物である、前記無電解金めっき液に関する。
さらに、本発明は、金析出促進剤の濃度が、0.001〜3.0mol/Lである、前記無電解金めっき液に関する。
また、本発明は、さらに金析出促進補助剤、錯化剤、pH緩衝剤、pH調整剤、還元剤および/または添加剤を含む、前記無電解金めっき液に関する。
【0018】
さらに、本発明は、シアン化合物を含まない、前記無電解金めっき液に関する。
また、本発明は、基板上に被覆されたレジストに単数または複数の開口部を形成し、該開口部を請求項1〜9のいずれかに記載の無電解金めっき液により埋設することによって微細パターンを形成する方法に関する。
さらに、本発明は、開口部が100μm以下の素地露出部の幅を有する、前記方法に関する。
また、本発明は、開口部が、バンプおよび配線パターンを含む微細パターンを形成するための開口部である、前記方法に関する。
【0019】
さらに、本発明は、120分以内に高さ3μm以上の微細パターンを形成する、前記方法に関する。
また、本発明は、基板全面を金属膜で均一に被覆した素地および/またはリードのない独立したパターン上に微細パターンを形成する、前記方法に関する。
さらに、本発明は、金属膜が、金、ニッケル、銅、銀、アルミニウム、パラジウム、コバルト、チタン、タンタル、タングステンの1種以上またはこれらを含む合金で形成した単層または複層の膜である、前記方法に関する。
また、本発明は、基板に被覆されたレジストが、ポジまたはネガ型である、前記方法に関する。
【0020】
さらに、本発明は、無電解金めっき時の温度が、20〜60℃である、前記方法に関する。
また、本発明は、無電解金めっき液が、pH6〜8である、前記方法に関する。
さらに、本発明は、前記方法により製造した微細パターンに関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の無電解金めっき液は、微細部析出促進剤を含むことによって、基板上に被覆されたレジストに形成された単数または複数のマイクロメートルオーダー、特に100μm以下の素地露出部の幅を有する高さ3μm以上の開口部を均一に埋設することができ、結果として、短時間で高さの均一な微細パターンを形成することができる。具体的には、本発明の無電解金めっき液によって、120分以内に高さ3μm以上の微細パターンを形成することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明の無電解金めっき液は、微細部析出促進剤および金源を含むものである。
微細部析出促進剤は、一般的には、金属表面に吸着し、反応を阻害する作用がある吸着剤として用いられてきたものであれば、何でもよく、銅やアルミニウムおよびこれらを含む合金の表面処理では、酸化反応の阻害を主目的とする、変色防止剤として用いられるものも含む。
【0023】
従来、吸着剤として用いられてきたものは、たとえば、無電解金めっきの安定性を向上する目的で用いられる2−メルカプトベンゾチアゾールやこれに類似した含硫黄有機吸着剤が特開平6−145997に開示されているが、吸着剤による反応阻害作用は、必然的に、無電解めっきにおける金属の析出反応をも阻害するものであり、前述の2−メルカプトベンゾチアゾールおよびチオール類は、金属表面に吸着する作用が報告されており(例えば、佐々木健, 石川達雄; 表面技術, 43(5), 457-461 (1992)および大澤雅俊, 松田直樹, 内田勇; 表面技術, 43(5), 472-477 (1992))、過剰添加による金析出速度の低下も報告されている(特開平6−145997)。また、ポリエチレングリコールについても、過剰添加による金析出速度の低下が報告されている(特開2008−208392)。これらの吸着剤についてはいずれも、基板表面での反応を阻害する作用、無電解めっき液においては、液の安定性を向上すると同時に金属の析出を阻害する作用のみが報告されているが、析出を促進する作用はこれまでに報告されていない。
【0024】
本発明に用いられる微細部析出促進剤としては、前記の吸着剤の性質を示すものが好ましい。微細なパターンに対しては、物質の非線形供給による供給促進作用が知られており(近藤和夫; 表面技術協会第118回講演大会要旨集, 308-311 (2008))、本願における微細部析出促進剤は、この作用を促進するものと考えられる。すなわち、微細なパターンの周辺あるいはパターンそのものに適度に吸着し、非線形供給をより顕著にすることで、微細部においてのみ物質、特に金源の供給を促進する作用をもつものと考えられる。
【0025】
具体的には、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンなどの水溶性高分子化合物、ベンゾトリアゾール、1,10−フェナントロリニウムおよび2,2’−ビピリジルなどの含窒素化合物、2−メルカプトベンゾチアゾールおよび2−メルカプトベンゾイミダゾールなどの硫黄を含む水溶性炭化水素、およびこれらの誘導体が挙げられる。また、めっき液に使用される成分で、浴を安定化する役割をもつ成分も、微細部析出促進剤として使用可能である。これらは、単独で用いても、併用してもよい。
【0026】
微細部析出促進剤は、マイクロメートルオーダーの開口部の金析出膜厚と、一辺が10mm以上、表面積100mm以上の平面部の金析出膜厚との比率を1対1よりも大きくする作用、特に、100μm以下の素地露出部の幅を有する開口部に対し、特定の濃度範囲で金の析出を促進する作用を有する。
微細部析出促進剤は、少量でも微細部の析出を促進するものの、添加量が不十分な場合、実用的な析出速度が得られない可能性がある。また、過剰に添加した場合、微細部においても反応を阻害する。
【0027】
微細部析出促進剤の濃度は、0.001〜10,000mg/Lが好ましく、さらに好ましくは0.005〜5,000mg/Lである。例えば、平均分子量1,540〜20,000のポリエチレングリコールを用いる場合、0.1〜100mg/Lが好ましく、さらに好ましくは0.5〜30mg/Lである。1,10−フェナントロリニウムを用いる場合、1〜80mg/Lが好ましく、さらに好ましくは5〜30mg/Lである。2−メルカプトベンゾチアゾールを用いる場合、0.1〜5mg/Lが好ましく、さらに好ましくは0.5〜2mg/Lである。
【0028】
金源としては、シアンを含まない水溶性の金化合物、例えば、亜硫酸の金錯塩、チオ硫酸の金錯塩、塩化金酸、チオ尿素金錯塩、チオリンゴ酸金錯塩およびよう化金塩ならびにこれらの水和物が挙げられる。これらは、単独で用いても、併用してもよい。
チオ尿素金錯塩以外の金源については、いずれもアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウムなどの塩の形態をとることができ、チオ尿素金錯塩については、過塩素酸、もしくは塩酸などの塩の形態をとることができる。
【0029】
具体的には、亜硫酸の金錯塩としてNaAu(SOなどの亜硫酸金ナトリウムおよび亜硫酸金カリウム、チオ硫酸の金錯体としてNaAu(Sなどのチオ硫酸ナトリウムおよびチオ硫酸カリウム、塩化金酸の塩として塩化金酸ナトリウムおよび塩化金酸カリウム、チオ尿素金錯塩としてチオ尿素金塩酸塩およびチオ尿素金過塩素酸塩、チオリンゴ酸金錯塩としてチオリンゴ酸金ナトリウムおよびチオリンゴ酸金カリウムが挙げられる。
【0030】
金源の濃度は、金として0.001〜0.5mol/Lが好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.1mol/Lである。例えば、亜硫酸金ナトリウムを用いる場合、金濃度として0.001〜0.5mol/Lが好ましく、さらに好ましくは0.005〜0.1mol/Lである。
【0031】
本発明の無電解金めっき液は、マイクロメートルオーダーの単数または複数の開口部を金で埋設して微細パターンを形成するために使用される。具体的には、基板上に金属膜を順次成膜し、さらにレジストで被覆後、そのレジストに作成されたマイクロメートルオーダーの開口部を金で埋設することによって、微細パターンを形成する。
基板は、例えばシリコンウエハの場合、JEITAやSEMIで規格されるような標準的なものであればよい。
【0032】
この基板上に成膜する金属膜は、金、ニッケル、銅、銀、アルミニウム、パラジウム、コバルト、チタン、タンタル、タングステンおよびこれらを含む合金のうちの1種以上であり、金属膜は単層でも多層でもよい。膜厚は、特に限定はないが、本願発明は、微細化、高密度化された微細パターンの形成を目的としていることから、10nmから10μmの範囲が好ましい。例えば、チタンを厚さ20nm、さらに金を100nm成膜する。成膜方法は乾式、電解、無電解、いずれの方法でもよい。
この際、金属膜の平面上部からみた形状は全面均一でもリードのない独立したパターンでもどちらでもよい。
【0033】
さらに、この金属膜を成膜した基板をレジストで被覆し、ついで所望の開口部を形成する。基板に被覆されたレジストは、特に限定はないが、ポジまたはネガ型である。例えば、ポジ型のフォトレジストを用いる場合、所望の部分に特定波長の紫外線を一定量以上照射し、現像液によりこの照射部分を溶解して開口部を形成する。
【0034】
開口部の形状は、バンプや配線パターンを形成するための形状であればどのような形状でもよく、上部から見て配線パターン形状、円形、四角形あるいは他の形状でもよい。開口部は、100μm以下の素地露出部の幅を有するものが好ましく、さらに好ましくは、50μm以下、最も好ましくは30μm以下である。素地露出部の幅の下限値は、明確には規定できないが、たとえば、金の原子径を考慮すると、0.3nm以上であり、要求する金構造体の物性によって結晶粒径を規制する必要がある場合には、1〜100nmになることもある。開口部の深さ、すなわちレジストの厚さは、パターニング精度や、現像時の露光精度の観点から、好ましくは、5〜20μmが好ましい。
【0035】
なお、作製した微細パターンには、その大きさにより物質の非線形供給を起こりやすくする作用があり(近藤和夫, 表面技術協会第118回講演大会講演要旨集,308-311 (2008))、これは微細部析出促進に欠かせざる要件であるため、開口部の素地露出部の幅および深さは、特定の範囲内に収める必要がある。
マイクロメートルオーダーで、アスペクト比(深さを径で割った割合)は、3以下が望ましい。
【0036】
金属析出物の断面形状は、レジストによって規制される。たとえば、フォトレジストを用いる場合、このフォトレジストの断面形状はレジスト及び露光条件によってある程度制御が出来る。開口部の下部(素地露出部)より上部が大きくなっていれば、断面形状は逆台形になる。また、開口部の下部より上部が小さくなっていれば、断面形状は台形になる。台形の形状において下部と比較して上部が極めて小さければ、形状は三角形となり、逆台形の微細構造は、開口部が円形であれば円錐に、開口部が多角形であれば角錐となる。本発明において形成する微細パターンの立体形状は、立方体、直方体、円柱、角柱のように、素地に対して垂直に立ちあがった構造、円錐、角錐のように、断面方向から見て、台形、三角形となる構造、もしくはこれが上下逆になった逆台形の構造、断面方向から見て単数または多数の階段状になった構造など、いずれでもよい。これら微細パターンの、同一または異なる形状の単数または複数を一組として部品に用いる。
【0037】
本発明の無電解金めっき液は、さらに金析出促進剤を含んでもよい。
金析出促進剤としては、アノード反応を促進する作用の強い成分が好ましく、水溶液中でハロゲンイオン、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウムなどを発生する化合物すなわちハロゲンのアルカリまたはアルカリ土類塩が挙げられる。これらは、単独で用いても、併用してもよい。
【0038】
従来の無電解金めっき液のうち、特に亜硫酸、チオ硫酸、チオシアン酸を用いた非シアン無電解金めっき液では、カソード側の反応が律速すなわち析出速度を支配している。
アノード反応を促進する金析出促進剤は、従来、最大径1mmを超える大きな面に対して、大きな析出速度促進作用は持たず、パターンエッジのようなカソード反応に要する物質の供給が律速になりにくい部分を除く部分では、あまり析出を促進しない。
【0039】
これに対し、上記のような100μm以下の素地露出部の幅を有する開口部を、本発明の無電解金めっき液によってめっきする場合、非線形供給によりカソード反応に要する物質の供給が律速になりにくく、アノード金析出促進剤によっても金の析出は促進される。
すなわち、本発明の無電解金めっき液は、アノード反応を促進する金析出促進剤をさらに含むことによって、大きなパターンでの金析出反応と比べてより微細部での金析出反応が促進される。
【0040】
上記の金析出促進剤のほか、UPD(under potential deposition) metalと呼ばれる金属群、具体的にはタリウム、鉛、ヒ素、アンチモンなどを含む化合物も、金析出促進剤として添加してもよい。ただし、これらの金析出促進剤は、平面、微細部の区別なく金の析出を促進するため、めっき液が極端に不安定化することがある。また、これらは析出する金の結晶粒径を変化させるため(UPDによる結晶性変化, めっき技術便覧, 4章, 日刊工業新聞社、および表面処理技術総覧, 第2章, 株式会社産業技術サービスセンター)、硬度も変化しやすく、バンプ接合において求められる性質を満たせなくなることもある。
【0041】
金析出促進剤は、添加量が不十分な場合、実用的な微細部析出促進作用が得られないことがある。また、多量に添加した場合、析出速度に関する不具合はないものの、膜中不純物量増加、極端な結晶微細化が起こり得る。
金析出促進剤の濃度は、0.001〜3.0mol/Lが好ましく、さらに好ましくは0.005〜2.0mol/Lである。例えば、ヨウ化カリウムまたは塩化ナトリウムを用いる場合、0.001〜3.0mol/Lが好ましく、さらに好ましくは0.005〜1.0mol/Lである。
【0042】
本発明の無電解金めっき液は、所望により、さらに金析出促進補助剤、錯化剤、pH緩衝剤、pH調整剤、還元剤、添加剤等を含んでもよい。
金析出促進補助剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン、クエン酸といった、アミン類、ポリカルボン酸類、アミノカルボン酸類およびアミノホスホン酸類が挙げられ、特にアノード反応を促進する成分が好ましい。例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物を用いる場合、その濃度は1〜10,000mg/Lが好ましく、さらに好ましくは10〜5,000mg/Lである。
【0043】
錯化剤としては、亜硫酸およびチオ硫酸、ならびにナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属やカルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の亜硫酸塩およびチオ硫酸塩等の一価あるいは三価の金イオンと錯体形成可能な化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いても、併用してもよい。
錯化剤の濃度は、0.001〜3.0mol/Lが好ましく、さらに好ましくは0.005〜2.0mol/Lである。例えば亜硫酸カリウムおよびチオ硫酸ナトリウムを用いる場合には、その濃度範囲は、それぞれ0.05〜2.0mol/L、1.0mol/L以下が好ましく、さらに好ましくは0.1〜1.5mol/L、0.01〜0.1mol/Lであり、その好適組成比は1:0.01〜0.8の範囲である。
【0044】
さらに、錯化剤の濃度は金の濃度に依存する。具体的には金濃度に対し、mol比で亜硫酸、チオ硫酸それぞれ好ましくは2〜80倍および0〜50倍、さらに好ましくは5〜30倍および2〜10倍の範囲である。
上記範囲以上の濃度のチオ硫酸の使用は、その還元作用から析出速度を速くするものの、同時に浴の不安定化も引き起こし、さらに微細部の析出を阻害し得る。
【0045】
pH緩衝剤としては、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属やカルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属のリン酸塩、四ホウ酸塩およびホウ酸塩が挙げられる。これらは、単独で用いても、併用してもよい。
具体的には、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素一カリウム、リン酸二水素一ナトリウム、四ホウ酸カリウムおよび四ホウ酸ナトリウムが挙げられる。
【0046】
pH緩衝剤の濃度は、0.001〜2.0mol/Lが好ましく、さらに好ましくは0.01〜1.0mol/Lである。例えば、リン酸水素二カリウムを用いる場合、その濃度範囲は0.01〜1.0mol/Lが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.5mol/Lである。
pH緩衝剤を単独または混合で用いる場合、使用するpHにより緩衝作用が異なる。具体的には、pH6〜8の範囲であれば、リン酸緩衝液を使用することができる。一方、高pHで、pHが安定しない場合、ホウ酸あるいは四ホウ酸緩衝液を併用することができる。
【0047】
pH調整剤は、例えば硫酸、塩酸、リン酸等の無機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化物塩及び他の成分に影響を与えない範囲でNROH(R:水素またはアルキル)等のアンモニア、テトラメチルアミンヒドロキサイド等のアミン類の使用が可能である。これらは、単独で用いても、併用してもよい。
pH調整剤として、例えばリン酸緩衝液を用いる場合は、リン酸あるいは硫酸ならびに水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムにより行なうのが好ましい。
本発明に用いられる無電解金めっき液のpHは、6〜8が好ましい。
【0048】
還元剤としては、金に対して触媒活性のある一般的な還元剤を用いることができる。例えば、L−アスコルビン酸ナトリウムなどのアスコルビン酸塩もしくはヒドロキシルアミン及びヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩のようなヒドロキシルアミンの塩類またはヒドロキシルアミン−O−スルホン酸のようなヒドロキシルアミン誘導体もしくはヒドラジン、ジメチルアミンボラン等のアミンボラン化合物、水素化ホウ素ナトリウム等の水素化ホウ素化合物、ブドウ糖等の糖類ならびに次亜リン酸塩類、チオ尿素、N−メチルチオ尿素、1,3−ジメチルチオ尿素といったチオ尿素類およびヒドロキノン、ピロガロール等の水酸基を含む芳香族化合物が挙げられ、これらは、単独で用いても、併用してもよい。
また、チオ尿素類のような含硫黄化合物は、還元剤だけではなく微細部析出促進剤としての作用も合わせもつため、上記の微細部析出促進剤としても使用可能である。
【0049】
その他、ネルンストの式により、金イオンあるいは金錯体より金を還元析出させることが可能と判断される化合物であれば、他の浴構成成分に対する反応性および浴の安定性を考慮して、いずれも使用することができる。
また、これら還元剤の中には、ヒドラジンのように人体に有害な作用を及ぼし得るものもあるため、使用の際には目的や使用環境に合わせて選択する必要がある。
【0050】
還元剤の使用量は、還元剤の種類、下地金属の種類等により、適宜選択してよい。例えば下地金属が金で、還元剤としてL−アスコルビン酸ナトリウムを用いる場合、その濃度範囲は0.001〜2.0mol/Lが好ましく、さらに好ましくは0.01〜1.0mol/Lである。チオ尿素およびヒドロキノンを用いる場合、それぞれ0.0001〜2.0mol/Lおよび2.0mol/L以下が好ましく、さらに好ましくは0.0005〜1.0mol/Lおよび0.0001〜1.0mol/Lである。
還元剤は、添加量が不十分な場合、金の析出速度が極端に遅くなり、実用的な速度が得られないことがある。また、多量に添加した場合、浴の不安定化を招く可能性がある。
【0051】
本発明の無電解金めっき液には、その他添加剤として適切な濃度範囲の結晶粒形調整剤や光沢剤等が使用可能である。例えば、従来から使用されているものであれば特に制限はなく、具体的には、タリウム、銅、アンチモン、鉛などが用いられる。また、これ以外にも前記の条件を満たす組成であれば使用することができる。ただし、これらの中には硬度を変化させるものがあり、構造体として必要な機能が得られなくなる場合があるため、使用には注意が必要である。
本発明の無電解めっき液は、シアン化合物を含まないことが好ましい。
【0052】
本発明における無電解金めっき液の使用温度は、20〜60℃であり、さらに好ましくは30〜55℃の範囲である。60℃を超える高温条件ではレジストがダメージを受けやすくなるため、処理時間を短くする必要があるが、この場合、十分な高さの構造体が得られないことがある。また、40℃未満の低温条件では、金の析出速度が遅くなるものの、レジストのダメージは少なく、長時間の処理が可能となる。しかし、処理の長時間化は工業的に好ましい行為ではなく、生産性は低下する。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例を用いて、本発明の無電解金めっき液を詳しく説明するが、これらは本発明を何ら限定するものではない。
なお、下記の例において、各処理、分析、測定の方法及び条件は、以下のとおりである。
【0054】
めっき素地には3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR(東京応化工業株式会社製ポジ型フォトレジストPMER P-LA900PM)10μm(下層/上層を示す。以降、断りのない限り、同様の方法で表記する。)のPRに、φ5〜10μm、20〜30μmピッチ、または2〜1000μm□、20〜2000μmピッチ開口部を設けた基板を使用した。φは、基板に対し垂直な方向から見て円形の開口部の素地露出部の直径を示し、□は、基板に対し垂直な方向から見て角形の開口部の素地露出部の1辺の長さを示す。
この基板に1.3 wt%のTMAH (=Tetramethylammonium hydroxide)で60秒、約3 wt%の塩酸で30秒の前処理を行い、表1〜6に示す組成の無電解金めっき液で処理した(以下、「前処理A」と示す)。
【0055】
参考用の平面板には、縦横20mm、厚さ0.1mmの圧延Au板(純度99.99 %)を用いた。
この平面板に、電解脱脂(EEJA製イートレックス12)を60℃、5 Vで40 A・s、10 %の硫酸に室温で30秒の前処理を施した後、上記基板と同時にめっき液に浸漬した(以下、「前処理B」と示す)。
【0056】
浸漬試験の後、形成された構造体の高さは、基板上のPRを溶解後にキーエンス製表面形状観察顕微鏡VF-7500で測定し、外観は目視、前記顕微鏡および/またはFE-SEMにより観察し、基板上における析出状態と平面板上での析出状態とを比較、評価した。
【0057】
[実施例1]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表1に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表1に示す。
基板上に得られた構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0058】
[実施例2]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ10μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表1に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表1に示す。
基板上に得られた構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0059】
[実施例3]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数およびφ10μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表1に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表1に示す。
基板上に形成された構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0060】
[実施例4〜6]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRに表1に示すように10〜50μm□、20〜100μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表1に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表1に示す。
基板上に形成された構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0061】
[実施例7]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表2に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表2に示す。
基板上に形成された構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0062】
[実施例8〜10]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表2に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表2に示す。
基板上に形成された構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0063】
[実施例11]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表2に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表2に示す。
基板上に形成された構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0064】
[実施例12]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表2に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表2に示す。
基板上に形成された構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0065】
[実施例13〜19]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表3に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表3に示す。
基板上に形成された構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0066】
[実施例20〜22]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μm のPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表4に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表4に示す。
基板上に形成された構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0067】
[実施例23〜24]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRに表1に示すように10〜20μm□、20〜50μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表4に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表4に示す。
基板上に形成された構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0068】
[実施例25〜30]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRに10〜20μm□、20〜50μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表5に示す無電解金めっき液および条件で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表5に示す。
基板上に形成された構造体は、平面板でのAu析出膜厚と比べて十分に高く、この無電解金めっき液は微細部析出促進作用があることを確認した。
【0069】
[実施例31]
3 inch wafer/Ti 10nm/Cu蒸着100nm(配線パターン)/Cuめっき500nm/Ni無電解めっき500nm PR 10μmのPRにφ10μm、30μmピッチの開口部を複数作製した。TiからNiまでの層は配線パターンとなっており、部分的にリードの取れない、独立した構造となっている。この基板に市販の非シアン置換Auめっきを用いてNi上にAu膜を50〜80 nm形成して、シード層とした後、表5に示す無電解金めっき液で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、φ10μm、平均高さ8μmの構造体を作製した。このように、Ti、Cu、Ni、Au、複数の金属を積層した下地で、かつ独立したパターンであっても微細パターンの作製が可能だった。
【0070】
[ 比較例1 ]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数およびφ10μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表6に示す無電解金めっき液で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表6に示す。基板上に形成された構造体は平面板でのAu析出膜厚と比べて、同程度か若干厚い程度で、微細部析出を促進していない条件、すなわち細部析出促進剤(吸着剤)、析出促進剤(アノード反応促進剤)を含まない無電解金めっき液を使用する条件では、実施例に示した促進した条件と比べて、低い構造体しか得られなかった。
【0071】
[比較例2]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表6に示す無電解金めっき液で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表6に示す。還元剤として使用したチオ尿素は微細部析出促進剤としても働くため、基板上に形成された構造体は平面板でのAu析出膜厚と比べて、厚くなるものの、十分な高さは得られなかった。微細部析出を促進していない条件では、実施例に示した促進した条件と比べて、低い構造体しか得られなかった。
【0072】
[比較例3〜4]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表6に示す無電解金めっき液で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表6に示す。Au析出膜厚は平面および開口部ともに薄かった。微細部析出促進剤は実施例に示したように、微細部における析出を促進する作用があるものの、過剰添加時には析出を抑制するため、その使用可能な濃度範囲は限定される。
【0073】
[比較例5]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRにφ5μm、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表6に示す無電解金めっき液で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表6に示す。Au析出膜厚は平面、開口部で大差なかった。促進剤として使用したヨウ化カリウムは、添加により所望のパターンのみならず、パターン外の析出も促進し、結果としてパターン外析出の多発、非線形供給構造が保てなくなったためである。このように、促進剤には添加により不具合を招く場合があるため、その濃度範囲は適切に保つ必要がある。ただし、このパターン外析出は、微細部析出促進剤併用時には起きないため、実施例のように、微細部のみを適切に析出促進可能である。
【0074】
[比較例6]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRに50μm□、100μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表6に示す無電解金めっき液で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表6に示す。Au析出膜厚は平面および開口部ともに薄かった。微細部析出促進剤は実施例に示したように、開口部析出を促進する作用があるものの、過剰添加時には析出を抑制するため、その使用可能な濃度範囲は限定される。また、この例のように、開口部の大きさにより効果は異なるため、作製する構造体に合わせて適切な化合物と濃度を選択する必要がある。
【0075】
[比較例7]
3 inch Si wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRに1 mm□、2 mmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。参考用の平面板には、前処理Bを実施した。これらの前処理を行った基板および平面板を、表6に示す無電解金めっき液で処理した。めっき処理した後、レジストを除去し、構造体の高さを測定した。構造体の高さおよび変動幅を表6に示す。Au析出膜厚は平面および開口部とも同程度だった。このように、ミリメートルオーダーの大きな構造体に対しては、微細部析出促進作用は現れにくい。
【0076】
[比較例8]
3 inch wafer/Ti 20nm/Au 100nm/PR 10μmのPRに10μm□、20μmピッチの開口部を複数作製したものを基板とし、前処理Aを実施した。表6に示す非シアン電解金めっき液(Osaka, T. et al., J. Electrochem. Soc., 148 (10), C659-C662, (2001))を用い、10mA/cm2で16分間通電したところ構造体高さは8μm±2μmの範囲で、無電解金めっき液を使用した実施例よりもばらつきが大きかった。
【0077】
【表1】

【0078】
【表2】

【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

【0081】
【表5】

【0082】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の無電解金めっき液は、微細部析出促進剤を含むことによって、基板上に被覆されたレジストに形成された単数または複数のマイクロメートルオーダー、特に100μm以下の素地露出部の幅を有する高さ3μm以上の開口部を均一に埋設することができ、結果として、短時間で高さの均一な微細パターンを形成することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
100μm以下の微細パターンを形成する無電解金めっき液であって、微細部析出促進剤および金源を含む、前記無電解金めっき液。
【請求項2】
微細部析出促進剤の濃度が0.001〜10,000mg/Lである、請求項1に記載の無電解金めっき液。
【請求項3】
微細部析出促進剤が、高分子化合物、含窒素化合物および硫黄を含む水溶性炭化水素からなる群から選択される1または2以上の化合物を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の無電解金めっき液。
【請求項4】
微細部析出促進剤が、ポリエチレングリコール、1,10−フェナントロリニウムおよび2−メルカプトベンゾチアゾールからなる群から選択される1または2以上の化合物を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の無電解金めっき液。
【請求項5】
さらに金析出促進剤を含む、請求項1または2に記載の無電解金めっき液。
【請求項6】
金析出促進剤が、水溶液中でハロゲンイオンを発生する化合物である、請求項1〜5のいずれかに記載の無電解金めっき液。
【請求項7】
金析出促進剤の濃度が、0.001〜3.0mol/Lである、請求項1〜6のいずれかに記載の無電解金めっき液。
【請求項8】
さらに金析出促進補助剤、錯化剤、pH緩衝剤、pH調整剤、還元剤および/または添加剤を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の無電解金めっき液。
【請求項9】
シアン化合物を含まない、請求項1〜8のいずれかに記載の無電解金めっき液。
【請求項10】
基板上に被覆されたレジストに単数または複数の開口部を形成し、該開口部を請求項1〜9のいずれかに記載の無電解金めっき液により埋設することによって微細パターンを形成する方法。
【請求項11】
開口部が100μm以下の素地露出部の幅を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
開口部が、バンプおよび配線パターンを含む微細パターンを形成するための開口部である、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
120分以内に高さ3μm以上の微細パターンを形成する、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
基板全面を金属膜で均一に被覆した素地および/またはリードのない独立したパターン上に微細パターンを形成する、請求項10〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
金属膜が、金、ニッケル、銅、銀、アルミニウム、パラジウム、コバルト、チタン、タンタル、タングステンの1種以上またはこれらを含む合金で形成した単層または複層の膜である、請求項10〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
基板に被覆されたレジストが、ポジまたはネガ型である、請求項10〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
無電解金めっき時の温度が、20〜60℃である、請求項10〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
無電解金めっき液が、pH6〜8である、請求項10〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
請求項10〜18のいずれかに記載の方法により製造した微細パターン。

【公開番号】特開2010−209415(P2010−209415A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57030(P2009−57030)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(591045677)関東化学株式会社 (99)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】