説明

鉄筋コンクリート管の検査方法、および鉄筋コンクリート管の検査機器

【課題】下水管路や農水管路などを構築している鉄筋コンクリート管の劣化状態を検査するにあたり、検査の作業性の効率化をはかる。
【解決手段】鉄筋コンクリート管の検査方法では、弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を検査対象管の管長の1/4以上離した状態とし、弾性波の受信子として、先端形状が錐状または針状の受信子を用いて衝撃弾性波試験を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリートの劣化状態を検査する検査方法及び検査機器に関する。
【背景技術】
【0002】
下水管路や農水管路には、従来、鉄筋コンクリート管(ヒューム管)が多く用いられている。
【0003】
鉄筋コンクリート管で構築された下水管路や農水管路においては、コンクリート管の経年に伴う腐食摩耗や破損により陥没や漏水などの事故が増加してきている。このため適切な劣化度診断とその調査結果に基づく、適切な修繕・更新が望まれている。
【0004】
下水管路や農水管路の診断調査においては、一般に、修繕・改築工事の順番及び工事方法を決定するために、調査流域を構成する要素区域間の劣化進行度の順位付け、及び定量的な劣化レベルの進行度の把握が必要となる。
【0005】
このため、従来では、目視やTVカメラを用いて外観調査を行い、必要となればコアを抜いて物性を調査するという方法が一般に行われている。
【0006】
しかし、このような手法では、目に見える劣化しか捉えることができず、管外周や内部の劣化については見逃されてしまい、劣化レベルの進行度を適切に定量的に把握することが困難であった。また、定量的なデータを集めるためにはコアを大量に抜く必要があり、下水管路や農水管路の強度を損ねたり、作業に手間がかかるという欠点がある。
【0007】
一方、コンクリート構造物で行われている検査方法の応用も考えられている。例えば特開平10−142200号公報、特開平09−269215号公報に、弾性波を利用したひび割れ幅及び深さを予測するシステムが提案されているが、これらのシステムは、作業性が劣ることから、下水管路や農水管路のような長距離の構造物の検査に適用すると、検査に相当の時間を要することになる。
【特許文献1】特開平10−142200号公報
【特許文献2】特開平09−269215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたもので、下水管路や農水管路などを構築している鉄筋コンクリート管の劣化状態を検査するにあたり、検査の作業性の効率化をはかることができ、しかも、劣化の進行度を定量的に評価することが可能な鉄筋コンクリート管の検査方法と、そのような検査方法を実現するのに適した検査機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の検査方法は、
鉄筋コンクリート管の劣化状態を管内部から衝撃弾性波試験にて検査する方法であって、弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を検査対象管の管長の1/4以上離した状態とし、
弾性波の受信子として、先端形状が錐状または針状の受信子を用いて衝撃弾性波試験を行うことを特徴としている。
【0010】
本発明の検査方法は、
鉄筋コンクリート管の劣化状態を管内部から衝撃弾性波試験にて検査する方法であって、弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を検査対象管の管長の1/4以上離した状態とし、
弾性波の受信子として、先端面が平面でその先端面の面積が3cm2以下の受信子を用いて衝撃弾性波試験を行うことを特徴としている。
【0011】
本発明の検査方法は、
鉄筋コンクリート管の劣化状態を管内部から衝撃弾性波試験にて検査する方法であって、弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を検査対象管の管長の1/4以上離した状態とし、
弾性波の受信子として、先端面が曲面でその先端面の曲率半径が25mm以下の受信子を用いて衝撃弾性波試験を行うことを特徴としている。
【0012】
このように設置間隔を規定する理由は、振動モードの変化を明確に捉えられるようにするためである。すなわち、弾性波入射位置と受信位置との間隔を管長の1/4よりも近づけると、発信子付近の振動を強くキャッチするため、弾性波入射位置及び弾性波受信位置から離れた部位の劣化による振動モード変化が不明瞭になってしまうという問題が起きる。なお、弾性波入射位置と受信位置との間隔は管長の1/4以上とすれば所期の目的は達成できるが、より好ましくは管長の1/3以上離した設置とした方がよい。
【0013】
また、以上のように、受信子の形状を制御することにより、下水管路や農水管路などを構築している鉄筋コンクリート管の内面表層の付着層や脆弱層の存在や、表層の摩耗に伴うに骨材露出による平滑性の欠如などによる、受信子と管内面との接触不良に伴う衝撃弾性波(伝播波)の受信の不備を解消でき、試験精度の低下を防止することができる。
【0014】
本発明の検査装置は、
鉄筋コンクリート管の劣化状態を管内部から衝撃弾性波試験にて検査する際に使用される検査機器であって、
打撃機構が搭載された台車と、受信機構が搭載された台車と、これら2台の台車を一定間隔で連結する連結部材とを備え、
前記連結部材の長さは、
弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を検査対象管の管長の1/4以上離した状態とする長さとされていることによって特徴づけられる。
【0015】
本発明の検査装置は、
請求項4記載の鉄筋コンクリート管の検査機器において、
テレビカメラを搭載した台車を用いて、弾性波入射位置と弾性波受信位置とを決定するように構成してもよい。
【0016】
以上の各発明の検査方法によれば、下水管路や農水管路などを構築している鉄筋コンクリート管の検査にあたり、作業性の効率化をはかることができるとともに、鉄筋コンクリート管の劣化度合いを定量的に判定することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の検査方法によれば、下水管路や農水管路などを構築している鉄筋コンクリート管の劣化状態を検査するにあたり、弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を、検査対象管の管長の1/4以上離した状態で衝撃弾性波試験を行うので、劣化による振動モードの変化を明確に捉えることができる。
【0018】
本発明の検査方法において、弾性波の受信子として、先端形状が錐状または針状の受信子、先端面が平面でその先端面の面積が3cm2以下の受信子、または先端面が曲面でその先端面の曲率半径が25mm以下の受信子を用いて衝撃弾性波試験を行うようにすれば、衝撃弾性波試験による検査を、検査対象管の内面表層の状態に関係なく精度よく行うことをできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
本発明の検査方法の全体的な工程を、図1を参照しながら各工程ごとに説明する。なお、この実施形態は、図2に示すように、マンホール2−マンホール3間を1ブロックとし、この1ブロックを構成する鉄筋コンクリート管1(ヒューム管)ごとに、後述する試験・測定などを行うものとする。
【0021】
[洗浄工程S0]
検査対象管の内面に付着物が大量に存在していると、欠陥の検出が困難となるため、切削機による切削や水による高圧洗浄により付着物を取り除く。
【0022】
[調査工程S1]
下記の外観試験及び衝撃弾性波試験を行う。
【0023】
<外観試験>
管内面で顕在化している腐食摩耗やクラック、破損、浸入水の有無などを確認する。検査方法は、検査対象管の口径が大きい場合は検査員が肉眼で検査し、検査員が入れない口径(φ800mmが基準)の場合はTVカメラを管内に入れて検査を行う。
【0024】
<衝撃弾性波試験>
ハンマや鋼球またはインパルスハンマなどで検査対象管の端部内面に打撃を与え、検査対象管の他端部内面にセットした加速度センサまたはマイクロフォンにて伝搬波をキャッチして、伝搬波の速度、減衰時間、振幅、共振周波数、位相等を求め、健全品との比較から劣化の有無を確認する。
【0025】
劣化のレベルを確認するには、共振周波数の変化または減衰時間の変化により確認する方法が容易である。すなわち、劣化が進行すると共振周波数は低下し、減衰時間も低下するので、劣化レベルを定量的に捉えやすい。
【0026】
この衝撃弾性波試験において打撃は常に同じ力で加えることが望ましいので、例えばシュミットハンマやバネを用いて一定の力で鋼球等を打ち出す方法、または一定の高さから鋼球等を落下させる方法を採用する。また、インパルスハンマの打撃力を計測しておき、データ解析時に打撃力の影響を考慮できるようにしておく方法を採用してもよい。
【0027】
この調査工程S1において、衝撃弾性波試験は、外観試験により明らかに劣化していると判断できる区域以外についてのみ行うようにしてもよいし、劣化進行度の順位付けを正確に行うには、全区域において、目視(TVカメラ)による外観試験と衝撃弾性波試験の両方の試験を行ってもよい。すなわち、衝撃弾性波試験を行えば、その試験結果から、調査流域を構成する要素区域間の劣化進行度の順位付けが可能となる。
【0028】
なお、調査工程S1において、検査対象管の使用が困難であることが判明した場合には、以下の工程S2〜工程S7を省略して、直ちに鉄筋コンクリート管の更新を行ってもよい。
【0029】
[調査部位選択工程S2]
調査工程S1の調査結果から詳細調査部位を選択する。
【0030】
選択を行う基準としては、(1)最も劣化の進行が大きい部位、(2)劣化進行レベルが平均的な部位、(3)劣化の進行が起こっていない部位、(4)上記(1)と(2)の組合せなどを挙げることができるが、使用中の事故を防ぐ見地から、「最も劣化の進行が大きい部位」を選択することが望ましい。
【0031】
[測定工程S3]
検査対象管の管厚みの測定、劣化部位(クラック位置)の特定、及びクラック深さの測定を行う。いずれの測定にも、入射装置からの20kHz〜1MHzの弾性波を検査対象管に入射し、受信装置で伝搬波を検知して測定を行う。なお、弾性波の周波数が、20kHzよりも低いと定量ができなくなり、1MHzよりも高いと散乱が大きくなって解析が困難となる。
【0032】
入射装置としては、圧電素子を用いた発信子(振動子)を使用するのが望ましく、また、受信装置も圧電素子を用いた受信子を使用することが望ましい。
【0033】
各測定を項目ごとに説明する。
【0034】
<管厚みの測定>
検査対象管の内部側から管壁体に弾性波を入射した時点から、管外面で反射された弾性波を受信装置がキャッチするまでの伝搬時間から管厚みを測定する。なお、管厚みの測定には、測定の便宜上、発信子と受信子とが一体となった受発信センサを用いるのが望ましい。
【0035】
<劣化部位の特定>
検査対象管の複数箇所に受信子を配置し、発信子から各受信子への伝搬時間を測定することにより、劣化部位を特定する。
【0036】
<クラック深さ測定>
特定された劣化部位のクラック深さを、例えば“コンクリート診断技術 `01[基礎編]4.4.2(5)(a)(c)”に記載されている方法、あるいは特公平6−52259号公報に開示されているような手法で測定する。
【0037】
以上の管厚みの測定、劣化部位の特定及びクラック深さの測定は、必ずしも全ての項目について行う必要はなく、劣化形態に応じて適宜選択して行えばよい。
【0038】
例えば、摩耗だけの劣化が明らかな場合には管厚みの測定のみを行えばよいし、クラックだけの劣化の場合は劣化部位の特定とクラック深さの測定を行えばよい。
【0039】
[鉄筋配置確認工程S4] 一般に市販されている電磁誘導法による探査機や電磁波レーダ法による探査機を用いて鉄筋配置を確認する。この種の探査機には、X線式のものがあるが、X線式では管壁の透過が必要であるため、既設のコンクリート管に適用することは難しい。
【0040】
なお、図面などに鉄筋配置が記されている場合には、図面上の鉄筋配置をデータとして用いるようにすれば、探査機による鉄筋配置の確認作業は省略してもよい。
【0041】
[コンクリート物性測定工程S5]
コンクリート強度を、通常のコア抜きによる圧縮強度試験、小口径コアを用いた針貫入試験(特開平10−090150号公報)、あるいはシュミットハンマによる強度試験等によって測定する。
【0042】
なお、コア抜きを行ってコンクリート強度を測定する場合、フェノールフタレインなどの指示薬を用いて鉄筋の中性化進行度を測定してもよい。
【0043】
[鉄筋径測定工程S6]
コア抜きを行い、鉄筋が含まれて場合は鉄筋径を直接測定する。
【0044】
また、他の方法として、コンクリートの一部をはつり、露出した鉄筋とコンクリート表面との電位差から鉄筋の腐食度を求める自然電位法により、鉄筋腐食度と鉄筋径との関連を求めておき、対象物の腐食度から鉄筋径を求めるという方法を採用してもよい。なお、はつりを行った際に、フェノールフタレインなどの指示薬を用いて鉄筋の中性化進行度を測定してもよい。
【0045】
ここで、前記した測定工程S3において、電磁波誘導法による鉄筋探査を行う場合、鉄筋径も同時に測定することが可能であるので、この鉄筋径測定工程S6は省略してもよい。
【0046】
なお、以上の工程S3〜工程S6までは、作業性の関連上、順序を替えて行ってもよい。
【0047】
[演算工程S7]
以上の工程で得られたデータを用いて構造解析を行って鉄筋コンクリート管の管強度(破壊荷重)を求める。
【0048】
構造解析の手法を具体的に説明する。
【0049】
まず、図3に示すようなモデルM(1/4モデル)において、図4に示すような形状データ(A:呼び径、B:管厚み、C:鉄筋径(ストレート筋)、D:鉄筋ピッチ、E:鉄筋かご径、F:鉄筋被り、G:管の長さ)を与える。次に、モデルMの上部中央に荷重Wを加えてゆき、その荷重負荷過程における応力を計算によって求める。
【0050】
計算によって得られた応力値と荷重を用いて、図5に示すような荷重−応力曲線を作成する。作成した荷重−応力曲線において、コンクリートの破壊基準を4.9MPa(0.5kg/mm2)として破壊荷重を求める。
【0051】
以上の構造解析を、検査対象管(鉄筋コンクリート管)について行って破壊荷重を求める。なお、構造解析に用いるデータのうち、管厚み(B)には測定工程S3にて測定したデータを用い、鉄筋径(ストレート筋)(C)には鉄筋径測定工程S6にて測定されたデータを用いる。また、鉄筋ピッチ(D)、鉄筋かご径(E)及び鉄筋被り(F)には、鉄筋確認工程S4で確認した鉄筋配置から求めたデータを用いる。
【0052】
そして、以上の構造解析・計算によって求めた検査対象管の破壊荷重を用い、設計荷重に対する破壊荷重の倍率を求めることによって、検査対象管の劣化状態を定量的に評価することができる。
【0053】
また、調査工程S1において劣化度順位を定量的に評価しているので、詳細調査部位の管強度を基に、各要素区域の管強度の推定も可能となる。
なお、以上の構造解析を行う構造計算ソフトは市販されており、これを利用するのが作業面で有利である。
【0054】
また、以上の破壊荷重による評価に加えて、クラックの位置、クラックの深さ及びコンクリート強度の測定データを用いて検査対象管の劣化状態を総合的に判断するようにしてもよい。
【0055】
つぎに、共振周波数の具体的な解析例を説明する。
【0056】
[サンプル準備]
JIS A 5303のA型2種に準ずる、日本ヒューム管社製の製品(内径400mm)について、以下のサンプルを準備した。
【0057】
サンプルT11:健全品
サンプルT12:漏水クラック導入品(劣化進行度が最大)
サンプルT13:1%硫酸で管内面底部の一部(中央部)を、厚み1mmほど腐食させたもの(図6参照)。
【0058】
[計測機器]
打撃:シュミットハンマNR型(富士物産製)
受信子:AS−5GB(共和電業製)
記録装置:EDX1500A(アンプ付き)(共和電業製)
[計測機器の配置]
図7に示す配置とした。
【0059】
[共振周波数の解析]
図7に示す計測機器の配置で測定された伝搬弾性波のデータを、記録装置に付随しているFFT機能で共振周波数のパワースペクトルを作成し、トップピークを求めた。その結果を下記の表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
以上の処理を行うことにより、鉄筋コンクリート管の劣化順位を定量的に判別することが可能になる。
【0062】
<実施形態1>
本発明の実施形態を以下に説明する。
【0063】
まず、衝撃弾性波試験に用いる入射装置及び受信子について説明する。
【0064】
入射装置としては、ハンマや鋼球またはインパルスハンマなどによる打撃具が使用できる。なお、衝撃弾性波試験において打撃は常に同じ力で加えることが望ましいので、例えばシュミットハンマやバネを用いて一定の力で鋼球等を打ち出す方法、または一定の高さから鋼球等を落下させる方法を採用する。また、インパルスハンマの打撃力を計測しておき、データ解析時に打撃力の影響を考慮できるようにしておく方法を採用してもよい。
【0065】
受信子としては、後述するような先端形状の加速度センサやAEセンサ及び振動センサ等が使用できる。受信子のセット方法としては、テープや接着剤等で固定してもよいし、手や押さえ治具等を使って圧着させてもよい。
【0066】
以上の入射装置及び受信子は、水や酸性水・塩基性水に接触することがあるため、SUSなどの耐食性に優れた材料で構成することが好ましい。
【0067】
次に、計測方法及び受信波の解析方法について説明する。
【0068】
[計測方法]
入射装置によって検査対象管の端部内面に打撃を与え、検査対象管の他端部内面にセットした受信子にて伝播波をキャッチし、その波形データを記録装置に記憶する。このような計測において、入射装置による弾性波入射位置と受信子による弾性波受信位置との間隔は検査対象管の管長の1/4以上離しておく。このように弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を規定しておくと、亀裂などによる劣化による管全体の振動モードの変化が捉えられやすくなる。
【0069】
[受信波の解析方法]
まず、前記記録装置に記憶した波形データについてFFT分析を行って共振周波数スペクトル図を作成する(図11参照)。次に、作成した共振周波数スペクトル図について積分計算を行って高周波成分と低周波成分とを求める。そして、高周波成分の面積と低周波成分の面積との面積比率を計算する。具体的には、共振周波数スペクトルについて4kHzを境界値として0〜4kHzと4〜8kHzの面積比率を求め、その面積比率から検査対象管の劣化度合いを判定する。
【0070】
なお、以上の解析において高周波と低周波との境界値(例えば4kHz)は、予め設定してもよいが、検査対象管の管種などにより、計測現場ごとに決定する方が判定を行いやすい。
【0071】
<実施例1>
本発明の具体的な実施例を説明する。
【0072】
[サンプル準備]
JIS A 5303のB型に属する日本ヒューム管製の製品(内径250mm)について、図8に示すような要領で切断を行って、以下のサンプルを準備した。
・サンプルT21:無処理品
・サンプルT22:軸方向クラック導入品
コンクリート面に落下させ軸方向に4本のクラックを発生させたもの。
・サンプルT23:軸方向クラック導入品
コンクリート面に落下させ軸方向に10本のクラックを発生させたもの(図10参照)。なお、サンプルT22,T23のクラックの本数は、片端面で内面外面に発生していたクラック本数を目視で確認した。
・サンプルT24:管内面研削品
ウォータージェットブラストにより内面表層に骨材露出させたもの。研削量は平均研削厚みが1.6mmとなるようにした。なお、研削量は管端面付近で片端10点ずつ、計20点をノギスで測定を行った。
【0073】
サンプルの一覧を下記の表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
[入射及び受信位置]
入射装置と受信装置を図9に示す位置に配置して弾性波の入射及び伝播波の受信を行った。
図9においては、入射装置と受信装置との間隔(弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔)を検査対象管(1000mm)の管長の1/4以上(250mm以上)である800mmに設定した。
【0076】
[使用機器]
入射装置:P型シュミットハンマ
受信子:振動センサGH−313A(キーエンス製)の雄ねじ部に、直径10mm、高さ15mmの円柱物をねじ込んで使用した。なお、受信子は手で押しつけてセットした。
【0077】
受信用アンプ:GA−245(キーエンス製)
データロガー(記録装置):NR−350(キーエンス製)
[データ解析]
以上の装置で受信・記録した伝播波の波形データを用い、FFT解析プログラム(株式会社アプティック製)で共振周波数のパワースペクトルを作成した。各サンプルの共振周波数スペクトルを図11(a)〜(d)に示す。
【0078】
次に、図11(a)〜(d)の各共振周波数スペクトルについて、4kHzを境界値として、0〜4kHzと4〜8kHzの面積比率をIgor Pro(Wave Metrics社製)で求めた。その結果を下記の表3及び図12に示す。
【0079】
【表3】

【0080】
この表3及び図12から明らかなように、劣化進行度が大きくなると、低周波成分の比率が高くなることがわかる。従って、伝播波の共振周波数スペクトルの高周波成分と低周波成分との面積比率から、検査対象管の劣化度合いを定量的に判定することができる。
【0081】
受信波の解析方法を以下に説明する。
【0082】
まず、衝撃弾性波試験に用いる入射装置及び受信子について説明する。
【0083】
入射装置としては、ハンマや鋼球またはインパルスハンマなどによる打撃具が使用できる。なお、衝撃弾性波試験において打撃は常に同じ力で加えることが望ましいので、例えばシュミットハンマやバネを用いて一定の力で鋼球等を打ち出す方法、または一定の高さから鋼球等を落下させる方法を採用する。また、インパルスハンマの打撃力を計測しておき、データ解析時に打撃力の影響を考慮できるようにしておく方法を採用してもよい。
【0084】
受信子としては、後述するような先端形状の加速度センサやAEセンサ及び振動センサ等が使用できる。受信子のセット方法としては、テープや接着剤等で固定してもよいし、手や押さえ治具等を使って圧着させてもよい。
【0085】
以上の入射装置及び受信子は、水や酸性水・塩基性水に接触することがあるため、SUSなどの耐食性に優れた材料で構成することが好ましい。
【0086】
次に、計測方法及び受信波の解析方法について説明する。
【0087】
[計測方法]
入射装置によって検査対象管の端部内面に打撃を与え、検査対象管の他端部内面にセットした受信子にて伝播波をキャッチし、その波形データを記録装置に記憶する。このような計測において、入射装置による弾性波入射位置と受信子による弾性波受信位置との間隔は検査対象管の管長の1/4以上離しておく。このように弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を規定しておくと、亀裂などによる劣化による管全体の振動モードの変化が捉えられやすくなる。
【0088】
[受信波の解析方法]
まず、前記記録装置に記憶した波形データについてFFT分析を行って共振周波数スペクトルを作成する(図15参照)。次に、作成した共振周波数スペクトルの4〜10kHzの周波数範囲(高周波域)のトップピーク強度と、3〜4kHzの周波数範囲(低周波域)のトップピーク強度との強度比率を計算する。そして、算出したトップピーク強度比率から検査対象管の劣化度合いを判定する。
【0089】
なお、ここでは、鉄筋コンクリート管の劣化の進行により振動モードが変化し、共振周波数を構成する振動が変化する現象を利用している。
【0090】
本発明の具体的な実施例を説明する。
【0091】
[サンプル準備]
JIS A 5303のB型に属する日本ヒューム管製の製品(内径250mm)について、図8に示すような要領で切断を行って、以下のサンプルを準備した。
・サンプルT31:無処理品
・サンプルT32:周方向クラック導入品
図13に示すような導入方法にてクラック幅0.15mmのクランクを導入したもの(図14参照)。
・サンプルT33:周方向クラック導入品
図13に示すような導入方法にてクラック幅1.3mmのクランクを導入したもの(図14参照)。なお、サンプルT32,T33のクラック幅は、スケール付きルーペで拡大して測定した(5点の平均値)。
【0092】
サンプルの一覧を下記の表4に示す。
【0093】
【表4】

【0094】
[入射及び受信位置]
入射装置と受信装置を図9に示す位置に配置して弾性波の入射及び伝播波の受信を行った。
図9においては、入射装置と受信装置との間隔(弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔)を検査対象管(1000mm)の管長の1/4以上(250mm以上)である800mmに設定した。
【0095】
[使用機器]
入射装置:P型シュミットハンマ
受信子:振動センサGH−313A(キーエンス製)の雄ねじ部に、直径10mm、高さ15mmの円柱物をねじ込んで使用した。なお、受信子は手で押しつけてセットした。
【0096】
受信用アンプ:GA−245(キーエンス製)
データロガー(記録装置):NR−350(キーエンス製)
[データ解析]
以上の装置で受信・記録した伝播波の波形データを用い、FFT解析プログラム(株式会社アプティック製)で共振周波数のパワースペクトルを作成した。各サンプルの共振周波数スペクトルを図15(a)〜(c)に示す。
【0097】
次に、図15(a)〜(c)の各共振周波数スペクトルについて、4〜10kHzの周波数範囲(高周波域)のトップピーク強度と、3〜4kHzの周波数範囲(低周波域)のトップピーク強度を求めた。そして、それら4〜10kHzの周波数範囲のトップピーク強度と3〜4kHzの周波数範囲のトップピーク強度との強度比率を計算した。その結果を下記の表5に示す。
【0098】
【表5】

【0099】
この表5から明らかなように、検査対象管の劣化進行度が大きくなると、3〜4kHzの周波数範囲のトップピーク強度(P2)に対する4〜10kHzの周波数範囲のトップピーク強度(P1)の比率(P1/P2)が大きくなることがわかる。従って、伝播波の共振周波数スペクトルの4〜10kHzの周波数範囲のトップピーク強度と、3〜4kHzの周波数範囲のトップピーク強度との比率を求めれば、その強度比率から検査対象管の劣化度合いを定量的に判定することができる。
【0100】
<実施形態2>
本発明の更に別の実施形態を以下に説明する。
【0101】
まず、衝撃弾性波試験に用いる入射装置及び受信子について説明する。
【0102】
入射装置としては、ハンマや鋼球またはインパルスハンマなどによる打撃具が使用できる。なお、衝撃弾性波試験において打撃は常に同じ力で加えることが望ましいので、例えばシュミットハンマやバネを用いて一定の力で鋼球等を打ち出す方法、または一定の高さから鋼球等を落下させる方法を採用する。また、インパルスハンマの打撃力を計測しておき、データ解析時に打撃力の影響を考慮できるようにしておく方法を採用してもよい。
【0103】
受信子としては、後述するような先端形状の加速度センサやAEセンサ及び振動センサ等が使用できる。受信子のセット方法としては、テープや接着剤等で固定してもよいし、手や押さえ治具等を使って圧着させてもよい。
【0104】
以上の入射装置及び受信子は、水や酸性水・塩基性水に接触することがあるため、SUSなどの耐食性に優れた材料で構成することが好ましい。
【0105】
次に、計測方法及び受信波の解析方法について説明する。
【0106】
[計測方法]
入射装置によって検査対象管の端部内面に打撃を与え、検査対象管の他端部内面にセットした受信子にて伝播波をキャッチし、その波形データを記録装置に記憶する。このような計測において、入射装置による弾性波入射位置と受信子による弾性波受信位置との間隔は検査対象管の管長の1/4以上離しておく。このように弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を規定しておくと、亀裂などによる劣化による管全体の振動モードの変化が捉えられやすくなる。
【0107】
[受信波の解析方法]
まず、前記記録装置に記憶した伝播波の最大振幅値を求め、その最大振幅値から検査対象管の管全体の劣化度合いを判定する。なお、「伝播波の最大振幅値」とは、図16に示すように、伝播波の波形データにおいて絶対値が最大値となる振幅を最大振幅値と定義する。
【0108】
<実施例2>
本発明の具体的な実施例を説明する。
【0109】
[サンプル準備]
JIS A 5303のB型に属する日本ヒューム管製の製品(内径250mm)について、図8に示すような要領で切断を行って、以下のサンプルを準備した。
・サンプルT41:無処理品
・サンプルT42:軸方向クラック導入品
コンクリート面に落下させ軸方向に4本のクラックを発生させたもの。
・サンプルT43:軸方向クラック導入品
コンクリート面に落下させることにより軸方向に10本のクラックを発生させたもの(図10参照)。なお、サンプルT42,T43のクラックの本数は、片端面で内面外面に発生していたクラック本数を目視で確認した。
・サンプルT44:周方向クラック導入品
図13に示すようなクラック導入方法による処理により、周方向にクラック幅0.15mmのクラックを発生させたもの(図14参照)。
・サンプルT45:周方向クラック導入品
図13に示すようなクラック導入方法による処理により、周方向にクラック幅1.3mmのクラックを発生させたもの(図14参照)。なお、サンプルT44,T45のクラック幅は、スケール付きルーペで拡大して測定した(5点の平均値)。
【0110】
サンプルの一覧を下記の表6に示す。
【0111】
【表6】

【0112】
[入射及び受信位置]
入射装置と受信装置を図9に示す位置に配置して弾性波の入射及び伝播波の受信を行った。
図9においては、入射装置と受信装置との間隔(弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔)を検査対象管(1000mm)の管長の1/4以上(250mm以上)である800mmに設定した。
【0113】
[使用機器]
入射装置:P型シュミットハンマ
受信子:振動センサGH−313A(キーエンス製)の雄ねじ部に、直径10mm、高さ15mmの円柱物をねじ込んで使用した。なお、受信子は手で押しつけてセットした。
【0114】
受信用アンプ:GA−245(キーエンス製)
データロガー(記録装置):NR−350(キーエンス製)
[データ解析]
以上の装置で受信・記録した伝播波の波形データを用いて、各サンプルの最大振幅値(図16参照)を求めた。その結果を下記の表7に示す。
【0115】
【表7】

【0116】
この表7から明らかなように、検査対象管の劣化進行度が大きくなると、伝播波の最大振幅値が小さくなることがわかる。従って、伝播波の最大振幅値を波形データから求めれば、その最大振幅値から検査対象管の劣化度合いを定量的に判定することができる。
【0117】
<実施形態3>
この実施形態では、劣化現象を表わすデータ、つまり前記した(1)伝播波の共振周波数スペクトルの高周波成分と低周波成分との面積比率、(2)伝播波の共振周波数スペクトルの4〜10kHzの周波数範囲と3〜4kHzの周波数範囲とのトップピーク強度比率、(3)伝播波の最大振幅値、(4)伝播波の減衰時間の各現象データを組み合わせることにより、劣化現象区別及び劣化進行度合いを、下記の表8に基づいて判定する。
【0118】
ここで、伝播波の減衰時間とは、図17に示すように、伝播波(受信波)の振幅値がある大きさ以下になるまでの時間とする。具体的には、例えば、振幅値の絶対値が最大振幅値の絶対値に対して20%以下になる振動が3回以上続いたときに、その最初の点までを入力波とし、その最初の点までの時間を減衰時間とする。
【0119】
【表8】

【0120】
次に、判定処理の具体的な例を図18〜図22に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0121】
[判定処理J1:図18]
ステップS101:伝播波の減衰時間変化を解析し、その減衰時間に変化がなければステップS102に進む。減衰時間に変化がある場合にはステップS111に進む。なお、減衰時間変化の解析は健全品と比較して行う。
【0122】
ステップS102:伝播波の減衰時間が変化していない場合、「劣化無し」の場合であるか、もしくは「周方向クラック発生品」または「管厚減少品」のいずれか一方もしくは双方の場合であるので(表8参照)、そのことを認識することができる。
【0123】
ステップS103:伝播波の最大振幅値を解析し、その最大振幅値に変化がなければステップS104に進む。最大振幅値に変化がある場合にはステップS131に進む。なお、最大振幅値変化の解析は健全品と比較して行う。
【0124】
ステップS104:伝播波の減衰時間及び最大振幅値が変化していない場合、「劣化無し」の場合であるか、もしくは「管厚減少品」の場合であるので(表8参照)、そのことを認識することができる。
【0125】
ステップS105:FFTを利用して共振周波数スペクトル図(図11参照)を作成する。
【0126】
ステップS106:共振周波数スペクトルの低周波域と高周波域との面積比率を解析し(解析処理の詳細は前記した実施形態2を参照)、その面積比率に変化(低周波成分の増加)がある場合は「管厚減少品」と判定し(ステップS107)、次いで面積比率を基に劣化度合いを判定する(ステップS108)。一方、面積比率に変化がない場合は「劣化無し」と判定する(ステップS109)。
【0127】
ステップS111:ステップS101の解析において減衰時間変化(低下)がある場合には「軸方向クラック発生品」と認識する。このように検査対象管が「軸方向クラック発生品」であると認識した場合は、最大振幅値解析により劣化度合いを判定する処理(ステップS112)を実行する。あるいは、ステップS121,S122の処理つまりFFTを利用して共振周波数スペクトル図(図11参照)を作成し、次いで共振周波数スペクトルの低周波域と高周波域との面積比率を求めて、その面積比率から劣化度合いを判定する処理を実行する。
【0128】
ステップS131:ステップS103の解析において振幅値変化(低下)がある場合には「周方向クラック発生品」と認識する。このように検査対象管が「周方向クラック発生品」であると認識した場合は、最大振幅値解析により劣化度合いを判定する(ステップS132)。あるいは、ステップS141,S142の処理つまりFFTを利用して共振周波数スペクトル図(図15参照)を作成し、次いで、伝播波の共振周波数スペクトルの4〜10kHzの周波数範囲と3〜4kHzの周波数範囲とのトップピーク強度比率を解析し(解析処理の詳細は前記した実施形態3を参照)、その強度比率から劣化度合いを判定する処理を実行する。
【0129】
[判定処理J2:図19]
ステップS201:伝播波の減衰時間変化を解析し、その減衰時間に変化がなければステップS202に進む。減衰時間に変化がある場合にはステップS211に進む。なお、減衰時間変化の解析は健全品と比較して行う。
【0130】
ステップS202:伝播波の減衰時間が変化していない場合、「劣化無し」の場合であるか、もしくは「周方向クラック発生品」または「管厚減少品」のいずれか一方もしくは双方の場合であるので(表8参照)、そのことを認識することができる。
【0131】
ステップS203:FFTを利用して共振周波数スペクトル図(図11参照)を作成する。
【0132】
ステップS204:共振周波数スペクトルの低周波域と高周波域との面積比率を解析し(解析処理の詳細は前記した実施形態2を参照)、その面積比率に変化(低周波成分の増加)がある場合は「管厚減少品」と判定し(ステップS205)、次いで面積比率を基に劣化度合いを判定する(ステップS206)。一方、面積比率に変化がない場合はステップS231に進む。
【0133】
ステップS211:ステップS201の解析において減衰時間変化(低下)がある場合には「軸方向クラック発生品」と認識する。このように検査対象管が「軸方向クラック発生品」であると認識した場合は、最大振幅値解析により劣化度合いを判定する(ステップS212)。あるいは、ステップS213,S214の処理つまりFFTを利用して共振周波数スペクトル図(図11参照)を作成し、次いで共振周波数スペクトルの低周波域と高周波域との面積比率を解析して、その面積比率から劣化度合いを判定する処理を実行する。
【0134】
ステップS231:ステップS204の解析において面積比率に変化がない場合には、「劣化無し」の場合であるか、もしくは「周方向クラック発生品」の場合であるので(表8参照)、そのことを認識することができる。
【0135】
ステップS232:伝播波の最大振幅値を解析し、その最大振幅値に変化がない場合は「劣化無し」と認識する。一方、最大振幅値に変化(振幅値低下)がある場合は「周方向クラック発生品」と認識する(ステップS233)。このように検査対象管が「周方向クラック発生品」であると認識した場合は、最大振幅値解析により劣化度合いを判定する処理(ステップS234)を実行する。あるいは、ステップS241〜S244の処理を実行する。なお、最大振幅値変化の解析は健全品と比較して行う。
【0136】
そのステップS241〜S244の処理は、FFTを利用して共振周波数スペクトル図(図15参照)を作成し、その共振周波数スペクトルの4〜10kHzの周波数範囲と3〜4kHzの周波数範囲とのトップピーク強度比率を解析し(解析処理の詳細は前記した実施形態3を参照)、この解析においてトップピーク強度比率に変化(比率増加)がある場合、「周方向クラック発生品」と認識し、次いで、強度比率から劣化度合いを判定するという処理である。なお、ステップS242の解析においてトップピーク強度比率に変化がない場合は「劣化無し」と判定する。
【0137】
[判定処理J3:図20]
ステップS301:伝播波の最大振幅値を解析し、その最大振幅値に変化(振幅値低下)がある場合にはステップS302に進む。最大振幅値に変化がない場合にはステップS321に進む。なお、最大振幅値変化の解析は健全品と比較して行う。
【0138】
ステップS302:伝播波最大振幅値が変化している場合、「軸方向クラック発生品」または「周方向クラック発生品」のいずれか一方もしくは双方の場合であるので(表8参照)、そのことを認識することができる。
【0139】
ステップS303:伝播波の減衰時間変化を解析し、その減衰時間に変化(減衰時間低下)がある場合はステップS331に進む。なお、減衰時間変化の解析は健全品と比較して行う。
【0140】
一方、その減衰時間に変化がない場合は「周方向クラック発生品」と認識する(ステップS304)。このように検査対象管が「周方向クラック発生品」であると認識した場合は、最大振幅値解析により劣化度合いを判定する(ステップS305)。あるいは、ステップS315,S316の処理つまりFFTを利用して共振周波数スペクトル図(図15参照)を作成し、次いで伝播波の共振周波数スペクトルの4〜10kHzの周波数範囲と3〜4kHzの周波数範囲とのトップピーク強度比率を解析し(解析処理の詳細は前記した実施形態3を参照)、その強度比率から劣化度合いを判定する処理を行う。
【0141】
ステップS321:ステップS301の解析において振幅値に変化がないときには、「劣化無し」の場合であるか、もしくは「管厚減少品」の場合であるので(表8参照)、そのことを認識することができる。
【0142】
ステップS322:FFTを利用して共振周波数スペクトル図(図11参照)を作成する。
【0143】
ステップS323:共振周波数スペクトルの低周波域と高周波域との面積比率を解析し(解析処理の詳細は前記した実施形態2を参照)、その面積比率に変化(低周波成分の増加)がある場合は「管厚減少品」と判定し(ステップS324)、次いで面積比率を基に劣化度合いを判定する(ステップS325)。一方、面積比率に変化がない場合は「劣化無し」と判定する(ステップS326)。
【0144】
ステップS331:ステップS303の解析において減衰時間変化(低下)がある場合には「軸方向クラック発生品」と認識する。このように検査対象管が「軸方向クラック発生品」であると認識した場合は、最大振幅値解析により劣化度合いを判定する(ステップS332)。あるいは、ステップS341,S342の処理つまりFFTを利用して共振周波数スペクトル図(図11参照)を作成し、次いで共振周波数スペクトルの低周波域と高周波域との面積比率を求めて、その面積比率から劣化度合いを判定する処理を行う。
【0145】
[判定処理J4:図21]
ステップS401:伝播波の最大振幅値を解析し、その最大振幅値に変化(振幅値低下)がある場合にはステップS402に進む。最大振幅値に変化がない場合にはステップS411に進む。なお、最大振幅値変化の解析は健全品と比較して行う。
【0146】
ステップS402:伝播波の最大振幅値が変化している場合、その最大振幅値の低下量に基づいて劣化度のランク分けを行う。また、伝播波の減衰時間及び最大振幅値が変化している場合、「軸クラック発生品」または「周方向クラック発生品」のいずれか一方もしくは双方の場合であるので(表8参照)、そのことを認識することができる。
【0147】
ステップS403:FFTを利用して共振周波数スペクトル図(図11参照)を作成する。
【0148】
ステップS404:共振周波数スペクトルの低周波域と高周波域との面積比率を解析し(解析処理の詳細は前記した実施形態2を参照)、その面積比率に変化(低周波成分の増加)がある場合は「軸方向クラック発生品」と判定する(ステップS405)。一方、面積比率に変化がない場合は「周方向クラック発生品」と判定する(ステップS406)。
【0149】
ステップS411:ステップS401の解析において振幅値に変化がないときには、「劣化無し」の場合であるか、もしくは「管厚減少品」の場合であるので(表8参照)、そのことを認識することができる。
【0150】
ステップS412:FFTを利用して共振周波数スペクトル図(図11参照)を作成する。
【0151】
ステップS413:共振周波数スペクトルの低周波域と高周波域との面積比率を解析し(解析処理の詳細は前記した実施形態2を参照)、その面積比率に変化(低周波成分の増加)がある場合は「管厚減少品」と判定し(ステップS414)、次いで面積比率を基に劣化度合いを判定する(ステップS415)。一方、面積比率に変化がない場合は「劣化無し」と判定する(ステップS416)。
【0152】
[判定処理J5:図22]
ステップS501:伝播波の最大振幅値を解析し、その最大振幅値に変化(振幅値低下)がある場合にはステップS502に進む。最大振幅値に変化がない場合にはステップS511に進む。なお、最大振幅値変化の解析は健全品と比較して行う。
【0153】
ステップS502:伝播波の最大振幅値が変化している場合、その最大振幅値の低下量に基づいて劣化度のランク分けを行う。また、伝播波の減衰時間及び最大振幅値が変化している場合、「軸クラック発生品」または「周方向クラック発生品」のいずれか一方もしくは双方の場合であるので(表8参照)、そのことを認識することができる。
【0154】
ステップS503:伝播波の減衰時間変化を解析し、その減衰時間に変化(減衰時間低下)がある場合は「軸方向クラック発生品」と判定する(ステップS504)。一方、減衰時間に変化がない場合は「周方向クラック発生品」と判定する(ステップS505)。
【0155】
ステップS511:ステップS501の解析において振幅値に変化がないときには、「劣化無し」の場合であるか、もしくは「管厚減少品」の場合であるので(表8参照)、そのことを認識することができる。
【0156】
ステップS512:FFTを利用して共振周波数スペクトル図(図11参照)を作成する。
【0157】
ステップS513:共振周波数スペクトルの低周波域と高周波域との面積比率を解析し(解析処理の詳細は前記した実施形態2を参照)、その面積比率に変化(低周波成分の増加)がある場合は「管厚減少品」と判定し(ステップS514)、次いで面積比率を基に劣化度合いを判定する(ステップS515)。一方、面積比率に変化がない場合は「劣化無し」と判定する(ステップS516)。
【0158】
<実施例3>
本発明の具体的な実施例を説明する。
【0159】
[サンプル準備]
JIS A 5303のB型に属する日本ヒューム管製の製品(内径250mm)について、図8に示すような要領で切断を行って、以下のサンプルを準備した。
・サンプルT51:無処理品
・サンプルT52:軸方向クラック導入品
コンクリート面に落下させ軸方向に4本のクラックを発生させたもの。
・サンプルT53:軸方向クラック導入品
コンクリート面に落下させることにより軸方向に10本のクラックを発生させたもの(図10参照)。なお、サンプルT52,T53のクラックの本数は、片端面で内面外面に発生していたクラック本数を目視で確認した。
・サンプルT54:周方向クラック導入品
図13に示すようなクラック導入方法による処理により、周方向にクラック幅0.15mmのクラックを発生させたもの(図14参照)。
・サンプルT55:周方向クラック導入品
図13に示すようなクラック導入方法による処理により、周方向にクラック幅1.3mmのクラックを発生させたもの(図14参照)。なお、サンプルT54,T55のクラック幅は、スケール付きルーペで拡大して測定した(5点の平均値)。
・サンプルT56:管内面研削品
ウォータージェットブラストにより内面表層に骨材露出させたもの。研削量は平均研削厚みが1.6mmとなるようにした。なお、研削量は管端面付近で片端10点ずつ、計20点をノギスで測定を行った。
【0160】
サンプルの一覧を下記の表9に示す。
【0161】
【表9】

【0162】
[入射及び受信位置]
入射装置と受信装置を図9に示す位置に配置して弾性波の入射及び伝播波の受信を行った。
図9においては、入射装置と受信装置との間隔(弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔)を検査対象管(1000mm)の管長の1/4以上(250mm以上)である800mmに設定した。
【0163】
[使用機器]
入射装置:P型シュミットハンマ
受信子:振動センサGH−313A(キーエンス製)の雄ねじ部に、直径10mm、高さ15mmの円柱物をねじ込んで使用した。なお、受信子は手で押しつけてセットした。
【0164】
受信用アンプ:GA−245(キーエンス製)
データロガー(記録装置):NR−350(キーエンス製)
[データ解析]
(1)クラック品の判定:受信した波形データより最大振幅値(図16参照)を求めた。その結果を下記の表10に示す。
【0165】
【表10】

【0166】
この表10から明らかなように、最大振幅値変化からクラック発生品とそれ以外とを区別することができる。また、最大振幅値変化を基にクラック進行度を判定することもできる。
【0167】
(2)管厚減の判定
サンプルT51とサンプルT56について採取した伝播波の波形データを用いてFFT解析プログラム(株式会社アプティック製)で共振周波数スペクトルを解析し、次いでその各共振周波数スペクトルについて、4kHzを境界値として0〜4kHzと4〜8kHzとの面積比率をIgor Pro(Wave Metrics社製)で求めた。その結果を図23に示す。
【0168】
この図23から明らかなように、管厚減少品(サンプルT56)と健全品(サンプルT51)との区別が可能となる。また、面積比率を基に管厚の減少レベルの判定が可能となる。
(3)クラック種の区別
サンプルT52〜サンプルT55について採取した伝播波の波形データを用いて記録装置のFFT機能で共振周波数スペクトルを解析し、次いでその各共振周波数スペクトルについて、4kHzを境界値として0〜4kHzと4〜8kHzとの面積比率をIgor Pro(Wave Metrics社製)で求めた。その結果を図24に示す。
【0169】
図24から明らかなように、クラックが周方向のクラックである場合、面積比率の変化は見られないが、クラックが軸方向クラックである場合には面積比率の変化が現れる。従って、面積比率に変化がある場合には、軸方向クラックが発生しているものと判定することができ、クラックの種別を特定することができる。しかも、サンプルT51〜T53の比較から、軸方向クラックの進行度を判定することもできる。
【0170】
(4)周方向クラックの進行度判定
サンプルT54とサンプルT55について採取した伝播波の波形データを用い、記録装置のFFT機能で共振周波数ペクトルを求め、その各共振周波数スペクトル図を作成した。各サンプルの共振周波数スペクトルを図25(a)及び(b)に示す。
【0171】
次に、図25(a)及び(b)の各共振周波数スペクトルについて、4〜10kHzの周波数範囲(高周波域)のトップピーク強度と、3〜4kHzの周波数範囲のトップピーク強度を求めた。そして、それら4〜10kHzの周波数範囲のトップピーク強度と3〜4kHzの周波数範囲(低周波域)のトップピーク強度との強度比率を計算した。その結果、サンプルT54の強度比率は1.40であり、サンプルT55の強度比率は1.64であった。この結果から明らかなように、共振周波数スペクトルの4〜10kHzの周波数範囲のトップピーク強度と、3〜4kHzの周波数範囲のトッブピーク強度との強度比率から、周方向クラックの進行度を判定することができる。なお、前記したように最大振幅値で進行度を判定することも可能である。
【0172】
<実施形態3>
本発明の更に別の実施形態を以下に説明する。
【0173】
まず、衝撃弾性波試験に用いる入射装置及び受信子について説明する。
【0174】
入射装置としては、ハンマや鋼球またはインパルスハンマなどによる打撃具が使用できる。なお、衝撃弾性波試験において打撃は常に同じ力で加えることが望ましいので、例えばシュミットハンマやバネを用いて一定の力で鋼球等を打ち出す方法、または一定の高さから鋼球等を落下させる方法を採用する。また、インパルスハンマの打撃力を計測しておき、データ解析時に打撃力の影響を考慮できるようにしておく方法を採用してもよい。
【0175】
受信子としては、後述するような先端形状の加速度センサやAEセンサ及び振動センサ等が使用できる。受信子のセット方法としては、テープや接着剤等で固定してもよいし、手や押さえ治具等を使って圧着させてもよい。
【0176】
以上の入射装置及び受信子は、水や酸性水・塩基性水に接触することがあるため、SUSなどの耐食性に優れた材料で構成することが好ましい。
【0177】
この実施形態では、衝撃弾性波試験つまりハンマや鋼球またはインパルスハンマなどで検査対象管の端部内面に打撃を与え、検査対象管の他端部内面にセットした加速度センサまたはマイクロフォンにて伝搬波をキャッチして、伝搬波の速度、減衰時間、振幅、共振周波数、位相等を求め、健全品との比較から劣化の有無を確認する。
【0178】
そして、下水管路や農水管路などを構築している鉄筋コンクリート管を衝撃弾性波試験にて検査するに際して、弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を検査対象管の管長の1/4以上離した設置して試験を行う。
【0179】
このように弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を管長の1/4以上離した状態で衝撃弾性波試験を実施すると、経年変化による鉄筋コンクリート管の管全体の振動モードの変化を捉えやすくなり、検査精度を高めることができる。
【0180】
<実施例3>
本発明の具体的な実施例を説明する。
【0181】
[サンプル準備]
JIS A 5303のB型に属する日本ヒューム管製の製品(内径250mm)について、図8に示すような要領で切断を行って、以下のサンプルを準備した。
・サンプルT61:無処理品
・サンプルT62:軸方向クラック導入品
コンクリート面に落下させることにより軸方向に10本のクラックを発生させたもの(図10参照)。なお、クラックの本数は、片端面で内面外面に発生していたクラック本数を目視で確認した。
【0182】
[入射及び受信位置]
入射装置と受信装置を図26に示す位置(実施例3−1〜3−5と比較例3−1,3−2)に配置して弾性波の入射及び伝播波の受信を行った。
【0183】
[使用機器]
入射装置:P型シュミットハンマ
受信子:振動センサGH−313A(キーエンス製)の雄ねじ部に、直径10mm、高さ15mmの円柱物(SUS製)をねじ込んで使用した。なお、受信子は手で押しつけてセットした。
【0184】
受信用アンプ:GA−245(キーエンス製)
データロガー(記録装置):NR−350(キーエンス製)
[データ解析]
以上の装置で受信・記録した伝播波の波形データを用いて、各サンプルの最大振幅値(図16参照)を求めた。その結果を下記の表11及び図27に示す。
【0185】
【表11】

【0186】
この表11及び図27から明らかなように、入射装置と受信装置との間隔(弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔)を検査対象管(1000mm)の管長の1/4以上(250mm以上)に保つことにより、クラック発生を明確に捉えることが可能となる。
【0187】
<実施形態4>
本発明において衝撃弾性波試験に用いる受信子としては、図28(a)〜(e)に示すように、先端形状が円錐または角錐の受信子2a〜2eを挙げることができる。また、受信子の先端形状を錐状とする場合、図28(f)〜(i)に示すように、錐面(側面)を曲面に加工した受信子2f〜2iとしてもよい。
【0188】
なお、このような錐状の受信子に替えて、先端形状が針状の受信子を用いてもよい。
【0189】
受信子の他の例として、図29(a)〜(i)に示すように、先端面が平面の受信子3a〜3iを挙げることができる。このように受信子の先端面を平面とする場合、その先端面の面積は3cm2以下、より好ましくは2.5cm2以下とする。受信子の先端面の面積が3cm2よりも大きくなると、検査対象管の管内面との接触状況が不安定となり受信時の安定性が損なわれる。
【0190】
受信子の更に別の例として、図30(a)〜(g)に示すように、先端面が曲面の受信子4a〜4gを挙げることができる。このように受信子の先端面を曲面とする場合、その先端面の曲率半径は25mm以下、より好ましくは20mm以下とする。受信子の先端面の曲率半径が25mmよりも大きくなると、検査対象管の管内面との接触状況が不安定となり受信時の安定性が損なわれる。
【0191】
なお、以上の受信子のセット方法としては、テープや接着剤等で固定してもよいし、手や押さえ治具等を使って圧着させてもよい。また、受信子は、水や酸性水・塩基性水に接触することがあるため、SUSなどの耐食性に優れた材料で構成することが好ましい。
【0192】
<実施例4>
本発明の具体的な実施例を説明する。
【0193】
[サンプル準備]
JIS A 5303のB型に属する日本ヒューム管製の製品(内径250mm)について、図8に示すような要領で切断を行って、以下のサンプルを準備した。
・管厚減少サンプルT71:ウォータージェットブラストにより内面表層に骨材露出させたもの。研削量は平均研削厚みが1.6mmとなるようにした。なお、研削量は管端面付近で片端10点ずつ、計20点をノギスで測定を行った。
・ラード付着サンプルT72:管内面にラードを付着させたもの。なお、ラードは平均厚みが約1〜4m程度となるように付着した。
【0194】
[入射及び受信位置]
入射装置と受信装置を図9に示す位置に配置して弾性波の入射及び伝播波の受信を行った。
図9においては、入射装置と受信装置との間隔(弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔)を検査対象管(1000mm)の管長の1/4以上(250mm以上)である800mmに設定した。
【0195】
[使用機器]
入射装置:P型シュミットハンマ
受信子:振動センサGH−313A(キーエンス製)の雄ねじ部に、図31に示す形状物(受信子)をねじ込んで使用した。なお、受信子は手で押しつけてセットした。
【0196】
受信用アンプ:GA−245(キーエンス製)
データロガー(記録装置):NR−350(キーエンス製)
[計測結果]
図31に示す各受信子(実施例4−1〜4−3と比較例4−1)を用いて、衝撃弾性波試験を各3回ずつ実施して最大振幅値のバラツキを調べた。その結果を下記の表12及び図32に示す。
【0197】
【表12】

【0198】
以上の表12及び図32の結果から明らかなように、受信子形状を制御することにより、衝撃弾性波による検査を精度よく計測が行えることがわかる。
【0199】
<実施形態5>
本発明の鉄筋コンクリート管の検査機器の実施形態を図33を参照しながら説明する。
【0200】
図33に示す検査機器は、打撃機構台車10、受信機構台車20、TVカメラ車30及びデータ記録装置40を備えている。打撃機構台車10、受信機構台車20及びTVカメラ車30は、検査対象管であるヒューム管100の内部を走行することができる。また、データ記録装置40は検査対象区間の地上に配置される。
【0201】
打撃機構台車10と受信機構台車20とは、連結部材としてのジョイント部材50にて相互に連結されており、打撃時において打撃機構台車10から発生する振動による影響が受信機構台車20側に及ばない構造としている。
なお、上記検査機器やジョイント50はステンレスやアルミ合金などの錆びにくい材質で作られていることが好ましく、また、防水性能を有するものが好ましい。
【0202】
打撃機構台車10,受信機構台車20とジョイント部材50との連結方法としては、例えば各台車10,20に連結用雌ねじ(図示せず)を設ける一方、ジョイント部材50の両端部に、その各台車10,20の連結用ねじに嵌まり合う雄ねじ(図示せず)を加工しておき、ジョイント部材50の端部の雄ねじを各台車10,20の連結用雌ねじにねじ込んで連結するという方法を挙げることができる。
【0203】
また、他の方法として、各台車10,20にアイボルトを設ける一方、ジョイント部材50の両端部にフックを設けておき、その各フックを各台車10,20にアイボルトに引っ掛けて連結するという方法を挙げることができる。
【0204】
なお、ジョイント部材50は、打撃機構台車10及び受信機構台車20との間隔(弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔)を、検査対象管(1000mm)の管長の1/4以上(250mm以上)の一定の間隔保つ必要があるので、例えば金属またはプラスチックなどの伸縮し難い材料で製作する。
【0205】
打撃機構台車10と受信機構台車20とはデータ転送用電気ケーブル60にて接続されており、また、受信機構台車20は地上のデータ記録装置40にデータ転送用電気ケーブル60を介して接続されている。
【0206】
打撃機構台車10には弾性波の入射装置11が搭載されている。入射装置11は、電動またはエアシリンダにて駆動力が与えられる昇降機構12上に配置されており、その昇降機構12の駆動により、入射装置11が計測時に打撃を行える位置まで移動することができ、また、走行時において管内面に接触しない位置まで移動することができる。
【0207】
受信機構台車20には伝播波を受信する受信装置21が搭載されている。受信装置21は、電動またはエアシリンダにて駆動力が与えられる昇降機構22上に配置されており、その昇降機構22の駆動により、受信装置21が計測時に受信を行える位置まで上昇することができ、また、走行時において管内面に接触しない位置まで下降することができる。
【0208】
以上の入射装置11及び受信装置21などの機器は、各台車10,20にボルト等によってしっかりと固定されている。
【0209】
TVカメラ車30に搭載したCCDカメラ31は、入射装置11による弾性波入射位置と受信装置21による弾性波受信位置と受信位置を決定する際に用いられるもので、その映像データはデータ転送用電気ケーブル(図示せず)を介してデータ記録装置40に導かれ、モニタ41の画面上に表示される。
【0210】
なお、図33の実施形態では、CCDカメラ31はテレビカメラ車30に搭載されている例を示しているが、これに限られることなく、CCDカメラは打撃機構台車10もしくは受信機構台車20のいずれか一方もしくは両方に搭載されていてもよく、更にCCDカメラ31と同様に照明装置を搭載しておくことによって、より視点が確認し易くなるので好ましい。
また、CCDカメラも既設管路の内部を走行するものであり、前記検査機器等と同様に防水性能を有するものが好ましい。
【0211】
なお、打撃機構台車10、受信機構台車20及びTVカメラ車30の管内での走行手段としては、先頭となるTVカメラ車30または受信機構台車20をワイヤー等によって牽引する方法、あるいはTVカメラ車30または受信機構台車20を自走車とする方法などを挙げることができる。
【0212】
また、打撃機構台車10において、管頂から打撃部までの間隔を一定に保つことにより、計測対象に与える打撃力が安定し、得られるデータの精度が向上するので好ましい。
【0213】
なお、図33の実施形態では、受信機構台車20は、測定機器本体上に昇降装置22および受信装置21がこの順番で載置されているが、例えば、昇降装置22の内部にロードセルのような受信装置21の圧着力を制御することができる制御機構を入れておくことによって、計測時の圧着力が一定となり、えられるデータの精度が向上できるので好ましい。
【0214】
以上の構造の検査機器によれば、検査員らが入ることができないような、小口径の鉄筋コンクリート管を検査する場合であっても、衝撃弾性波試験を容易に実施することができる。
【0215】
ここで、本実施形態の検査機器においては、(1)昇降機構の交換、(2)台車の車輪径を変える、(3)台車の大きさを変える等を行うことで、管口径が異なる複数種の検査対象管の検査に対応することできる。また、ジョイント部材50の長さを調整することにより、種々の管長の検査対象管の検査に対応することできる。
【0216】
なお、図33の実施形態では、データ記録装置を地上に配置した例を示しているが、これに限られることなく、データ記録装置は打撃機構台車または受信機構台車に搭載しておいもよい。
【産業上の利用可能性】
【0217】
本発明の検査機器によれば、検査員らが入ることができないような小口径の鉄筋コンクリート管を検査する場合であっても、上記した特徴を有する検査方法を容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】本発明の実施形態の検査工程を示す図である。
【図2】検査対象ブロックの一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に使用する構造解析モデルを示す斜視図である。
【図4】構造解析に用いる形状データを示す図である。
【図5】構造解析において作成する荷重−応力曲線を示す図である。
【図6】本発明の実施例に用いるサンプルT13の説明図である。
【図7】サンプルへの計測機器の配置を示す図である。
【図8】本発明の実施例に用いるサンプルの作製要領を模式的に示す図である。
【図9】サンプルへの計測機器の配置を示す図である。
【図10】軸方向クラック導入サンプルの模式図である。
【図11】各サンプルの共振周波数スペクトル図である。
【図12】各サンプルの周波数成分比率を示すグラフである。
【図13】本発明の実施例で採用するクラック導入方法を模式的に示す図である。
【図14】周方向クラック導入サンプルの模式図である。
【図15】各サンプルの共振周波数スペクトル図である。
【図16】伝播波の最大振幅値の説明図である。
【図17】伝播波の減衰時間の説明図である。
【図18】本発明の実施形態に適用する判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図19】同じく判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図20】同じく判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図21】同じく判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図22】同じく判定処理の内容を示すフローチャートである。
【図23】各サンプルの周波数成分比率を示すグラフである。
【図24】各サンプルの周波数成分比率を示すグラフである。
【図25】各サンプルの共振周波数スペクトル図である。
【図26】サンプルへの計測機器の配置を示す図である。
【図27】入射位置−受信子間距離と伝播波の最大振幅値との関係を示すグラフである。
【図28】受信子の例を示す斜視図である。
【図29】受信子の他の例示す斜視図である。
【図30】受信子の別の例示す斜視図である。
【図31】本発明の実施例に用いる受信子の形状を示す図である。
【図32】本発明の実施例の測定結果を示すグラフである。
【図33】本発明の検査機器の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0219】
1 鉄筋コンクリート管
S0 洗浄工程
S1 調査工程
S2 調査部位選択工程
S3 測定工程
S4 鉄筋配置確認工程
S5 コンクリート物性測定工程
S6 鉄筋径測定工程
S7 演算工程
M 構造解析に使用するモデル
2a〜2i,3a〜3i,4a〜4g 受信子
10 打撃機構台車
11 入射装置
12 昇降機構
20 受信機構台車
21 受信装置
22 昇降機構
30 TVカメラ車
31 CCDカメラ
40 データ記録装置
41 モニタ
50 ジョイント部材
60 データ転送用電気ケーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート管の劣化状態を管内部から衝撃弾性波試験にて検査する方法であって、弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を検査対象管の管長の1/4以上離した状態とし、
弾性波の受信子として、先端形状が錐状または針状の受信子を用いて衝撃弾性波試験を行うことを特徴とする鉄筋コンクリート管の検査方法。
【請求項2】
鉄筋コンクリート管の劣化状態を管内部から衝撃弾性波試験にて検査する方法であって、弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を検査対象管の管長の1/4以上離した状態とし、
弾性波の受信子として、先端面が平面でその先端面の面積が3cm2以下の受信子を用いて衝撃弾性波試験を行うことを特徴とする鉄筋コンクリート管の検査方法。
【請求項3】
鉄筋コンクリート管の劣化状態を管内部から衝撃弾性波試験にて検査する方法であって、弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を検査対象管の管長の1/4以上離した状態とし、
弾性波の受信子として、先端面が曲面でその先端面の曲率半径が25mm以下の受信子を用いて衝撃弾性波試験を行うことを特徴とする鉄筋コンクリート管の検査方法。
【請求項4】
鉄筋コンクリート管の劣化状態を管内部から衝撃弾性波試験にて検査する際に使用される検査機器であって、
打撃機構が搭載された台車と、受信機構が搭載された台車と、これら2台の台車を一定間隔で連結する連結部材とを備え、
前記連結部材の長さは、
弾性波入射位置と弾性波受信位置との間隔を検査対象管の管長の1/4以上離した状態とする長さとされていることを特徴とする鉄筋コンクリート管の検査機器。
【請求項5】
請求項4記載の鉄筋コンクリート管の検査機器において、
テレビカメラを搭載した台車を用いて、弾性波入射位置と弾性波受信位置とを決定するように構成されていることを特徴とする鉄筋コンクリート管の検査機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2008−261871(P2008−261871A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−142922(P2008−142922)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【分割の表示】特願2002−299179(P2002−299179)の分割
【原出願日】平成14年10月11日(2002.10.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】