説明

鉄道車両の電池箱及び鉄道車両

【課題】鉄道車両の駆動システムに応用する場合、高電圧を作る必要があるが、組立時の安全性を確保する必要があり、且つ鉄道車両の限られた空間に搭載するため、小型化を実現する必要がある。
【解決手段】複数のリチウムイオン電池セルが格納された複数の電池モジュール11と、その複数の電池モジュールを格納する電池モジュール格納部1と、複数の電池モジュールの状態を検知し、充放電を制御する制御部2と、電池モジュール格納部と制御部が車両の進行方向に並置可能な電池箱筐体3と、を有する鉄道車両用の電池箱とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄道車両に搭載する電池箱及び鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両においては、架線からの電源の供給が断たれたとき、または発電機等の故障により電源の供給が断たれた状態においても、一定時間、車室内の客室内の照明等の一定の機能を確保できるようにバッテリが非常用電源として装備されている。そして、そのようなバッテリは、通常車体に取り付けられたバッテリ箱内に収納されている。
【0003】
特許文献1には、そのバッテリ箱の小型化と、移動トレイの安定性を確保することを目的に、電池を搭載した移動トレイが、前面開口部を通じて引き出し可能に格納され、移動トレイの格納時には、接続コネクタが接続受けコネクタに接続される方向に移動トレイが案内され、電気的にスムーズに接続することが可能となる鉄道車両用バッテリ箱について開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−231024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バッテリにリチウムイオン電池を用いた場合、国連危険物輸送勧告において、輸送できる梱包状態での重量に制限されているため、輸送時の重量を制限以下にし、かつ輸送後の組立てを容易にする必要がある。
【0006】
また、鉄道車両の駆動システムにリチウムイオン電池を応用する場合、多数のリチウムイオン電池を直列に接続し、高電圧を作る必要があるが、組立時の安全性を確保する必要がある。さらに、鉄道車両の限られた空間に搭載するため、さらなる小型化を実現する必要がある。
【0007】
本発明の目的は、多数の電池が接続された高電圧のシステムであっても、組立時の安全性を確保すると共に、小型の電池箱を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両の電池箱は、複数のリチウムイオン電池セルが格納された複数の電池モジュールと、前記複数の電池モジュールを格納する電池モジュール格納部と、前記複数の電池モジュールの状態を検知し、充放電を制御する制御部と、前記電池モジュール格納部と前記制御部が並置可能な電池箱筐体と、を有する鉄道車両用の電池箱において、電池モジュール格納部は、電池モジュールを一方向から着脱可能に構成され、電池モジュールを一方向から差し込む動作により電池モジュールと電気的に接続可能なコネクタを有し、電池箱筐体は、電池モジュール格納部と制御部が、電池モジュールの着脱方向から見て略直交する鉄道車両の進行方向に並置可能である構成とする。
【0009】
また、その制御部は、複数の電池モジュールを直列接続する接続状態と、複数の電池モジュールの複数の負極を接地端子と接続する接地状態と、を切り替える切り替え手段を有する構成とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、多数の電池が接続された高電圧のシステムであっても、組立時の安全性を確保でき、且つ小型の電池箱が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る鉄道車両用の電池箱の斜視図である。
【図2】本発明に係る鉄道車両用の電池箱の上面図である。
【図3】図2の鉄道車両用の電池箱のB−B′断面図である。
【図4】図2の鉄道車両用の電池箱のA−A′断面図である。
【図5】本発明に係る電池モジュールの一実施例を示す図である。
【図6】本発明に係る電池モジュールの一実施例を示す図である。
【図7】本発明に係る電池モジュールの接続時のコネクタの状態を示す図である。
【図8】本発明に係る電池モジュールの接続時のコネクタの状態を示す図である。
【図9】本発明に係る鉄道車両用の電池箱の一実施例の回路図である。
【図10】本発明に係る鉄道車両用の電池箱の他の実施例の回路図である。
【図11】本発明に係る鉄道車両用の電池箱の他の実施例の回路図である。
【図12】本発明に係るメンテナンススイッチの前面図である。
【図13】本発明に係るメンテナンススイッチの接地状態を示す側面図である。
【図14】本発明に係るメンテナンススイッチの切替状態を示す側面図である。
【図15】本発明に係るメンテナンススイッチの接続状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下各実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
<電池箱の説明>
本発明の電池箱の構成を図1〜図4を用いて説明する。
【0014】
図1,図2,図3、及び図4はそれぞれ電池箱の斜視図、上面パネルをはずした状態の上面図、図2のB−B′断面図、及び図2のA−A′断面図である。尚、図2において、下側が前面、上側が背面、左側が左側面、右側が右側面である。また、車両には側面が前後方向に向くように取り付け、前面が車両左右方向の外側を向くように搭載する。
【0015】
本発明の電池箱は図2に記載の通り、複数の電池モジュールを格納する電池モジュール格納部1、その複数の電池モジュールの状態を検知し、充放電を制御する制御部2,電池モジュール格納部1と制御部2が並置可能な電池箱筐体3から構成される。鉄道車両に搭載される機器は、乗客等を乗せる空間を確保するため、床下や屋根上に実装されることが多い。このため、車載される機器は高さが制限される。例えば、一般的な車両の場合、650mm程度である。また、前後方向すなわち車両の左右方向も、地上に設置される設備との接触を防止するため設けられた車両限界により制限される。これに対し、本発明の電池箱のように電池モジュール格納部1と制御部2を、左右すなわち車両の進行方向に並べて配置することにより、これらの制限に対応することが可能となる。
【0016】
電池モジュール格納部1は、複数の(本実施例では8個)の電池モジュール11,電池モジュールに取り付けられた保持部12,保持部12を前後方向に移動可能に保持するレール13,電池モジュールの信号線を電池箱と接続するために取り付けられたコネクタ、つまり、電池モジュールと電気的に接続可能なコネクタ(信号オスコネクタ14,主回路オスコネクタ15)、筐体内部から筐体外部に冷却風を排気する、つまり収納された複数の電池モジュールの一方端部側に、熱を排気する4個のファン16,背面からの異物の侵入を防止するルーバ17,正面からの異物の侵入を防止するルーバと外部から吸入する冷却風から塵埃等を除去するフィルタを組み合わせたフィルタユニット18,前部シールプレート19、及び後部シールプレート20からなる。
【0017】
図1に示すように、電池箱に取り付けられた保持部12をレール13と摺動させながら電池モジュール11を前面から挿入し、前部シールプレート19,フィルタユニット18の順で取り付ける。前部シールプレート19には図4に示すように電池モジュール11の冷却に必要な冷却風を通す穴が開けられている。また、後部シールプレート20にも、同様に電池モジュール11の冷却に必要な冷却風を通す穴が開けられている。
【0018】
なお、電池モジュール格納部は、複数の電池モジュール11のそれぞれが、電池箱筐体3に対して水平方向に着脱可能な電池モジュール移動手段、本実施例ではレール13を設けている。よって各電池モジュールは、車両進行方向に対して、直交する方向である車両側面から脱着可能となり、メンテナンス性に優れる効果を奏する。
【0019】
<電池モジュールの説明>
次に電池モジュール11の詳細を図5〜図8を用いて説明する。
【0020】
図5(a)は前面図、図5(b)は上面図、図5(c)は側面図、図5(d)は底面図である。また図6(a)は図5(a)の背面図、図6(b)は図5(b)のC−C′断面図、図6(c)は図5(c)のD−D′断面図である。
【0021】
電池モジュール11は、48個の電池セル111(本実施例では、リチウムイオン電池セルを使用),セルコントローラ112,複数のリチウムイオン電池セルを格納する電池モジュール筐体113,信号メスコネクタ114,電池の充放電電流を流すための主回路メスコネクタ115,電池モジュール11を運搬するときに使う取っ手116,電池セル111の温度を測定する温度センサ117(図6(b)ではセンサ6つ使用),電池セル111からの電解液の漏洩を検知するガスセンサ118(図6(b)では、電池モジュール筐体113の電池セルが設けられた底面にセンサ2つ使用),ヒューズ119,電池モジュール筐体113の上面及び下面に設けたダクト(電池モジュール筐体113の下面に設けられた2個の吸気ダクト120,電池モジュール筐体113の上面に設けられた2個の排気ダクト121),取付け部122、及び前述した保持部12からなる。
【0022】
図6(b)に示すように複数のリチウムイオン電池セルが1つの電池モジュール11に格納されている。尚、図5(c),図6(b)は電池セル111が水平になるように描いているが、電池箱に実装する場合は、吸気ダクト120の下面,排気ダクト121の上面、及び保持部12が水平になるように挿入する。これにより、電池箱の上部及び下部に無駄な空間ができることを防ぐことができる。また、挿入時に電池モジュール11への重力の影響を受けなくなるため、着脱時の事故を防止することができる。
【0023】
電池セル111は、主回路メスコネクタ115と主回路オスコネクタ15を介して制御部2に接続され、充放電を行う。
【0024】
セルコントローラ112は、電池モジュール筐体113に内蔵された48個の電池セル111の各電圧,電池セル111の温度を測定する温度センサ117、及び電池セル111から電解液が漏洩したことを検知するガスセンサ118の信号を入力し、シリアル伝送に変換し、信号メスコネクタ114と信号オスコネクタ14を介して制御部2に接続される。セルコントローラ112は、各電池セル111の電圧,温度センサ117,ガスセンサ118の信号をシリアル通信に変換し、信号メスコネクタ114を介して、後述するバッテリコントローラに伝送する。また、バッテリコントローラの指令に基づき、電池セル毎の充電量の調整を行う。
【0025】
温度センサ117は、少なくとも冷却条件により、最も温度が高い電池セルと最も温度が低いセルに取り付ける。最も高い電池セルの温度センサにより、電池セルの寿命に影響する高温側の使用温度をファン16の制御や充放電電流の制限を行う。また、最も低い電池セルの温度センサにより、電池セルの能力が低下する低温側の使用温度を、ファン16の制御により制限することができる。
【0026】
電池モジュール11は、保持部12を電池箱筐体3に取り付けられたレール13にのせ、摺動しながら、電池モジュール11を引き出しのように後方に差し込む。電池モジュール11を差し込むことにより、電池モジュール11に固定された信号メスコネクタ114及び主回路メスコネクタ115が、電池箱筐体3に固定された信号オスコネクタ14及び主回路オスコネクタ15にそれぞれ結合される。
【0027】
この様子を図7及び図8に示す。図7が結合直前の状態、図8が結合直後の状態である。これにより、電池モジュール11と制御部2をコネクタに直接触れることなく、接続することが可能となる。特に、電池モジュール11の主回路コネクタは、常に電圧がかかっているため、感電や接続ミスによる事故を防止することができる。信号メスコネクタ114及び主回路メスコネクタ115は、電池モジュール11の後端部に配置することも可能であるが、側部に配置することにより鉄道車両に搭載した場合に制限が厳しい前後方向の寸法を小さくすることができる。
【0028】
また、電池モジュールの重量を35kg以下とする。このようにすることで、梱包状態で国連危険物輸送勧告で定められた重量(35kg以下)範囲内となるため、危険物に分類される航空機での輸送が可能となり、電池モジュール11をはずした状態で航空機により輸送し、輸送先で容易に組立てを行うことが可能となる。
【0029】
また、電池箱の前面すなわち、車両の側方から電池モジュール11の着脱が可能であるため、電池箱を車両に搭載した状態であってもモジュールの着脱が可能である。さらに、電池モジュール側のコネクタをメスコネクタにすることにより、短絡よる事故が発生する可能性を下げることができる。さらに、モジュール内にヒューズを設けることにより、主回路メスコネクタ115を短絡させた場合においても短絡電流を遮断することができるため、安全性が確保できる。
【0030】
次に電池セル111の冷却について説明する。吸気ダクト120は、前部シールプレート19に押しつけられ、吸気ダクト120の外側は、前部シールプレート19、及び吸気ダクトにより、フィルタユニット18のある空間から隔絶される。吸気ダクト120の内側は前部シールプレート19の穴を介してフィルタユニット18のある空間とつながる。排気ダクト121は後部シールプレート20に押しつけられ、排気ダクト121の外側は後部シールプレート20及び排気ダクト121により、ファン16のある空間から隔絶される。排気ダクト121の内部は後部シールプレート20の穴を介してファン16のある空間とつながる。
【0031】
充放電による電池セル111の発熱に伴う温度上昇を抑制するための冷却風は、フィルタユニット18を介して、冷却風を電池箱内に取り込む。取り込まれた冷却風は、前部シールプレート19に設けられた穴から、電池モジュールの吸気ダクト120を通り、電池セル111の側面を冷却する。冷却により温度の上昇した冷却風は排気ダクト121を通り、後部シールプレート20に設けられた穴を抜けて、ファン16及びルーバ17を通って、電池箱の外に排出される。
【0032】
前述したように、冷却風は電池セル111の側部のみに導かれ、信号オスコネクタ14,信号メスコネクタ114,主回路オスコネクタ15、及び主回路メスコネクタ115の周囲には入り込まない。また、同様に制御部2に入り込むことはない。これにより、フィルタユニット18で除去しきれない塵埃等がコネクタや、制御部2の機器に堆積することが無く、接触不良,腐食,短絡による故障の発生を抑制することができる。
【0033】
また、モジュール内においても図6(c)の太線で示す部分でシールする構造にすることにより、電池セル111の左右(両端)に設けられた電極部分やセルコントローラ112への塵埃等の堆積がなく、腐食や短絡による故障を抑制できる。
【0034】
また、電解液の漏洩に伴い発生するガスは、空気より重いため、電池セル111が格納される空間で最も低い場所にガスセンサ118を設置することにより、効率的に電解液の漏洩を検知することができる。なお、前述したように保持部12が水平になるように挿入されるため、後部の電池セル111が低くなる。
【0035】
<制御部の説明>
次に制御部2について、図9〜図11を用いて説明する。図9は複数(本実施例では8個)の電池モジュール11をすべて直列に接続した場合(8直)の回路図である。
【0036】
制御部2は、バッテリコントローラ201,メンテナンススイッチ202,近接スイッチ203,電流検出器204,ヒューズ205,電圧検出器206,モジュール信号コネクタ207,モジュール主回路コネクタ208,外部主回路端子209,ファンコネクタ210,上位通信コネクタ211,突入電流防止抵抗212a〜212g、及び接地抵抗213b〜213hからなる。
【0037】
バッテリコントローラ201は、メンテナンススイッチの状態を検知する近接スイッチ203,電池モジュールの充放電電流を検出する電流検出器204,電池モジュールの過電流保護を行うヒューズ205の断線検知器,出力電圧を検出する電圧検出器206に接続される。さらに、モジュール信号コネクタ207,信号オスコネクタ14、及び信号メスコネクタ114を介してセルコントローラ112に、ファンコネクタ210を介してファン16に、上位通信コネクタ211を介して上位コントローラに接続される。
【0038】
このように、電池モジュール格納部1や外部とはコネクタを介して接続されるため、接続をはずすことは容易である。さらに制御部2を前面より引き出せる構造としている。これにより、制御部2は電池箱筐体3から容易に取り外すことができるため、メンテナンス性に優れている。バッテリコントローラ201では、電流検出器204の出力,電圧検出器206の出力、及び通信により伝送されるセルコントローラ112が検出した温度に基づき、電池セル111の充電量の演算、及び保護に必要な異常状態の検出を行い、充電量及び異常状態を上位コントローラに対しシリアル通信により情報を伝送する。バッテリコントローラ201は、ヒューズ205の断線状態、ファン16の異常を検出し、同様に上位コントローラに伝送する。さらに、セルコントローラ112の検出した各電池セルの電圧に基づき、セルコントローラ112に対して、充電量のバランス制御を指令する。さらに、バッテリコントローラ201は、最も温度の高い電池セルの温度に基づきファン16の運転開始を制御し、最も温度の低い電池セルの温度に基づきファン16の運転停止を制御する。
【0039】
次に、主回路の接続に関して説明する。電池モジュール11は、2個ずつ直列に接続され、モジュール主回路コネクタ208を介してメンテナンススイッチ202に接続され、さらに外部主回路端子209を介して外部と接続される。
【0040】
メンテナンススイッチ202は、接地端子202b1,202d1,202f1,202h1、モジュール接続レバー202a2,202b2,202c2,202d2,202e2,202f2,202g2,202h2、モジュール補助接続端子202a3,202b3,202c3,202d3,202e3,202f3,202g3,202h3、及びモジュール接続端子202a4,202b4,202c4,202d4,202e4,202f4,202g4,202h4をもつ。
【0041】
電池モジュール11は、モジュール主回路コネクタ208を介してモジュール接続レバーに接続され、基本的には接地端子とモジュール接続端子の切り替えを行う。モジュール接続レバーがモジュール接続端子に接続されている通常状態のときには、電池モジュール11が全て直列に外部機器と接続される。通常はこの状態で電池箱を使用する。しかし、電池モジュール11の中には高い電位を持つものがあるため、この状態で電池モジュール11の挿抜等の作業を行うと感電等のおそれがある。次に、モジュール接続レバーが接地端子に接続された接地状態のときには、直列接続された2個の電池モジュール11毎に、陰極の主回路メスコネクタが、接地抵抗213b〜213hを介して接地される。この状態では、すべての電池モジュール11の電位が低く抑えられるため、電池モジュール11の挿抜等の作業を行う場合に感電等の危険を低減することができる。
【0042】
つまり、本実施例では、電池モジュールを外部機器と接続するためのモジュール接続端子と、電池モジュールを接地させるための接地端子と、接続端子または接地端子と接続して接続状態か接地状態にする切り替え手段、ここではモジュール接続レバーと、を制御部2に備える構成とする。
【0043】
また、接地状態から接続状態に切り替える時には、初めにモジュール接続レバーとモジュール補助接続端子に接続し、突入電流防止抵抗を介して直列接続及び外部接続が行われ、浮遊容量等への充電電流を抑制する。その後、モジュール接続レバーと接続端子を接続する。つまり、接地状態から接続状態に切り替えるとき、モジュール接続レバーが接続端子に接続されるより前にモジュール補助接続端子に接続させることにより、接続時の突入電流を抑制することが可能である。これは上述した通り、接地抵抗のような抵抗体をモジュール接続端子と接地端子間に設けたためである。
【0044】
また、4個の電池モジュール11を直列に接続した電池セットを2個並列に接続した場合(4直2並列)の回路図を図10に、2個の電池モジュール11を直列に接続した電池セットを4個並列に接続した場合(2直4並列)の回路図を図11に示す。セット数の増加に伴い、電流検出器204,ヒューズ205、及び電圧検出器206の数を増やし、メンテナンススイッチ202の接続を変更するだけで、対応が可能である。
【0045】
つまり、電池セットが1セットにつき、電流検出器204,ヒューズ205、及び電圧検出器206が少なくとも1つ必要であり、図10,図11のようにセット数が増える毎に、電流検出器204,ヒューズ205、及び電圧検出器206が増加するが、これらはメンテナンススイッチ202の接続を変更するだけで、容易にセット数を増加することができるようにしたものである。
【0046】
<メンテナンススイッチ>
図12〜図15を用いて、メンテナンススイッチ202の構造を説明する。
【0047】
図12にメンテナンススイッチ202の接続状態の正面図を示す。301はモジュール接続レバー(202a2,202b2,202c2,202d2,202e2,202f2,202g2,202h2)をまとめて操作するための操作レバーである。上からモジュール接続端子(202f4),モジュール接続補助端子(202f3),モジュール接続レバー(202f2),接地端子(202f1)の順で配置されている。また、横方向(電池モジュール格納部と制御部が並置された方向であり、車両の進行方向)におけるモジュール接続端子及び接地端子配列は外側に電位の低い端子を置き、中央に行くに従って、外側に比べて電位の高い端子を配置している。具体的には、一番左の端子から順に、1番目に電位の低い電池セットの陰極,1番目に電位の低い電池セットの陽極,3番目に電位の低い電池セットの陰極,3番目に電位の低い電池セットの陽極、と奇数番目に電位の低い電池セットの陰極,陽極の順に並べ、一番右の端子から順に、2番目に電位の低い電池セットの陰極,2番目に電位の低い電池セットの陽極,4番目に電位の低い電池セットの陰極,4番目に電位の低い電池セットの陽極、と偶数番目に電位の低い電池セットの陰極,陽極の順に並べる。尚、電池セットは、本実施例では、直列接続された2個の電池モジュールを表す。
【0048】
これにより、メンテナンススイッチ202内の電極間の電圧を抑制でき、沿面距離を短くできると共に、メンテナンススイッチ202の両脇の電極の電位を低く抑えることができるため、筐体との距離を短くすることも可能となり、機器の小型化を図ることができる。
【0049】
また、左右を入れ替えて、左から偶数番目,右から奇数番目の端子を配置しても問題ない。さらに、1番目に電位の低い電池セットの陽極,2番目に電位の低い電池セットの陰極など同電位の電極は入れ替えることも可能である。
【0050】
図13は接地状態のメンテナンススイッチ202の側面図である。接地端子202f1から絶縁材を介して前方に保持された接地バーと接地端子の間に接地抵抗213fが接続されている。
【0051】
次に接地状態から接続状態に切り替える途中のメンテナンススイッチ202の側面図を図14に示す。最初にモジュール接続レバー202f2とモジュール接続補助端子202f3が接触し、突入電流防止抵抗212fを介して接続される。なお、突入電流防止抵抗212fは、モジュール接続補助端子202f3とモジュール接続端子202f4間に接続されている。さらに、モジュール接続レバー202f2を操作すると、図15に示す接続状態となる。この状態では、突入電流防止抵抗212fの両端子が短絡され、突入電流防止抵抗212fを介することなく、直接接続される。また、モジュール接続端子(202f4)に対して、モジュール接続補助端子(202f3)とは反対側(上側)に近接スイッチ203を配置する。よって、図15のような接続状態のとき、近接スイッチ203が操作レバー301を検知し、メンテナンススイッチ202が接続状態であることを検知することができ、メンテナンススイッチ202の切り替え忘れを、バッテリコントローラ201を介して、上位コントローラで検知することができる。
【0052】
また、以上のような電池箱を鉄道車両に搭載することで、多数の電池が接続された高電圧のシステムであっても、組立時の安全性を確保すると共に、小型の電池箱を搭載したハイブリッド鉄道車両が提供できる。
【符号の説明】
【0053】
1 電池モジュール格納部
2 制御部
3 電池箱筐体
11 電池モジュール
12 保持部
13 レール
14 信号オスコネクタ
15 主回路オスコネクタ
16 ファン
17 ルーバ
18 フィルタユニット
19 前部シールプレート
20 後部シールプレート
111 電池セル
112 セルコントローラ
113 電池モジュール筐体
114 信号メスコネクタ
115 主回路メスコネクタ
116 取っ手
117 温度センサ
118 ガスセンサ
119 ヒューズ
120 吸気ダクト
121 排気ダクト
122 取付け部
201 バッテリコントローラ
202 メンテナンススイッチ
202a2,202b2,202c2,202d2,202e2,202f2,202g2,202h2 モジュール接続レバー
202a3,202b3,202c3,202d3,202e3,202f3,202g3,202h3 モジュール補助接続端子
202a4,202b4,202c4,202d4,202e4,202f4,202g4,202h4 モジュール接続端子
202b1,202d1,202f1,202h1 接地端子
203 近接スイッチ
204 電流検出器
205 ヒューズ
206 電圧検出器
207 モジュール信号コネクタ
208 モジュール主回路コネクタ
209 外部主回路端子
210 ファンコネクタ
211 上位通信コネクタ
212a〜212g 突入電流防止抵抗
213b〜213h 接地抵抗
301 操作レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリチウムイオン電池セルが格納された複数の電池モジュールと、
前記複数の電池モジュールを格納する電池モジュール格納部と、
前記複数の電池モジュールの状態を検知し、充放電を制御する制御部と、
前記電池モジュール格納部と前記制御部が並置可能な電池箱筐体と、を有する鉄道車両用の電池箱において、
前記電池モジュール格納部は、前記電池モジュールを一方向から着脱可能に構成され、前記電池モジュールを一方向から差し込む動作により前記電池モジュールと電気的に接続可能なコネクタを有し、
前記電池箱筐体は、前記電池モジュール格納部と前記制御部が、前記電池モジュールの着脱方向から見て略直交する鉄道車両の進行方向に並置可能であることを特徴とする鉄道車両用の電池箱。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道車両用の電池箱において、
前記複数の電池モジュールのそれぞれの重量は、35kg以下である鉄道車両用の電池箱。
【請求項3】
請求項1記載の鉄道車両用の電池箱において、
前記電池モジュール格納部は、前記複数の電池モジュールのそれぞれが前記電池箱筐体に対して水平方向に脱着可能な電池モジュール移動手段を有する鉄道車両用の電池箱。
【請求項4】
請求項1記載の鉄道車両用の電池箱において、
前記電池モジュール格納部は、吸気あるいは排気するファンを前記電池モジュールの着脱側とは反対側に有する鉄道車両用の電池箱。
【請求項5】
請求項1記載の鉄道車両用の電池箱において、
前記電池モジュールは、複数のリチウムイオン電池セルが格納された電池モジュール筐体と、前記電池モジュール筐体の上面及び下面に設けられたダクトと、を有し、前記上面及び下面のダクトの一方から吸気を行い、他方のダクトから排気を行うことを特徴とする鉄道車両用の電池箱。
【請求項6】
請求項5記載の鉄道車両用の電池箱において、
前記電池モジュール筐体は、リチウムイオン電池セルの温度を測定する温度センサを有する鉄道車両用の電池箱。
【請求項7】
請求項5記載の鉄道車両用の電池箱において、
前記電池モジュール筐体は、リチウムイオン電池セルから電解液が漏洩したことを検知するガスセンサを有する鉄道車両用の電池箱。
【請求項8】
請求項1記載の鉄道車両用の電池箱において、
前記制御部は、前記複数の電池モジュールを直列接続する接続状態と、前記複数の電池モジュールの複数の負極を接地端子と接続する接地状態と、を切り替える切り替え手段を有する鉄道車両用の電池箱。
【請求項9】
請求項8記載の鉄道車両用の電池箱において、
前記制御部は、前記切り替え手段を前記接地状態から前記接続状態に切り替えるとき、
前記切り替え手段が前記接続端子に接続されるより前に接続される補助接続端子を有し、
前記接続端子と前記補助接続端子間に抵抗体を有する鉄道車両用の電池箱。
【請求項10】
請求項8記載の鉄道車両用の電池箱において、
前記切り替え手段は、モジュール接続レバーである鉄道車両用の電池箱。
【請求項11】
請求項8記載の鉄道車両用の電池箱において、
前記接続端子及び前記接地端子は、前記電池モジュール格納部と前記制御部が並置された方向に対して、外側に電位の低い端子を設け、中央にいくに従って、外側に比べ電位の高い端子を設けた鉄道車両用の電池箱。
【請求項12】
請求項8記載の鉄道車両用の電池箱において、
直列に接続された複数の電池モジュールを電池セットとした場合、
前記接続端子及び前記接地端子は、前記電池モジュール格納部と前記制御部が並置された方向に対して、一方端から奇数番目に電位の低い前記電池セットの陰極,陽極の順に設け、他方端から偶数番目に電位の低い前記電池セットの陰極,陽極の順に設けた鉄道車両用の電池箱。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれかに記載の鉄道車両用の電池箱を有する鉄道車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−119324(P2012−119324A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−2679(P2012−2679)
【出願日】平成24年1月11日(2012.1.11)
【分割の表示】特願2008−220681(P2008−220681)の分割
【原出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000232944)日立水戸エンジニアリング株式会社 (227)
【Fターム(参考)】