説明

鉛フリーハンダ用難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物

【課題】鉛フリーハンダ用途に優れた260℃・10秒以上のハンダ耐熱性を有すると同時に難燃性も有する鉛フリーハンダ用ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂に対し、(B) ポリエチレンテレフタレート樹脂、(C) 特定のハロゲン化ビスイミド、(D) アンチモン化合物、 (E) リン系安定剤及び(F) ガラス繊維をそれぞれ所定量配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の融点以上という高温条件下において、ハンダ付けが可能な耐熱性を有する難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびその成形品に関する。更に詳しくは、優れた耐熱性、難燃性を有し、コネクター、スイッチ、コンデンサー、集積回路(IC)、リレー、抵抗器、発光ダイオード(LED)、コイルボビンおよびその周辺機器、ハウジング等の電気・電子部品に適した難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化と高機能化に伴い、部品実装の高密度化が進んでおり、半導体、コンデンサ等の電子部品だけでなく、データI/Oを担うコネクター等の周辺部品もプリント配線板に実装されるようになってきた。従来、電子部品はプリント配線板のスルーホールを介してハンダ付けされていたが、最近はこれらの電子部品を基板に表面実装するケースが増えている。この場合、高温に加熱されたハンダに接近したりもしくは触れたりして、基板等の成形品が溶けたり、変形しては困るので、基板等の成形品は、いわゆるハンダ耐熱性向上の要求が年々高まっている。
【0003】
更に、リフローハンダとして、従来から錫・鉛系合金のハンダが使用されてきたが、昨今の環境問題に対する関心の高まりから、鉛を使用しない、いわゆる鉛フリーハンダが盛んに検討されるようになり、その実用化も着実に進んでいる。鉛フリーハンダは、従来の錫・鉛系合金のハンダに比べ融点が高い。即ち、従来の錫・鉛系合金の融点が180℃付近だったのに対し、鉛フリーハンダは通常200℃超の融点となり、少なくとも20℃程度の融点上昇は避けられない。更に浸漬ハンダ付け法によるハンダ付けでは、融点より30〜60℃高い温度で行われる。このことからも、コネクターのハウジング等に使用するポリブチレンテレフタレート材料には、少なくとも260℃×10秒のハンダ耐熱性が要求されるようになってきた。
【0004】
更にこれらの電気・電子部品においては、上記ハンダ耐熱性に加えて安全性の観点から難燃性が必須となる場合も多い。難燃性の指標としては、アンダーライターラボラトリーズのサブジェクト94(UL−94)の方法に準じた燃焼試験が一般的である。UL−94においてV−0要求がなされることが多い。
【0005】
ポリブチレンテレフタレート樹脂は、その優れた機械特性、電気特性、またその難燃性付与の容易さから、コネクター、スイッチ、コンデンサー、集積回路(IC)、リレー、抵抗器、発光ダイオード(LED)、コイルボビンおよびその周辺機器、ハウジング等の電気・電子部品に使用される場合があるが、240℃×10〜60秒のハンダ耐熱性が限度である。そのため、260℃以上のハンダ耐熱性が要求されるケースでは、液晶ポリマーやポリアリーレンサルファイド等のスーパーエンプラが一般には使用される。しかし、これらのスーパーエンプラはポリブチレンテレフタレート樹脂に比較すると高価であり、また成形加工上、射出成形温度が高く金型の耐久時間が短くなる、ウエルド強度が低くなるといった問題点がある。
【0006】
そこで、特許文献1では、無水マレイン酸基やオキサゾリン基等を有する重合体とポリブチレンテレフタレートあるいはポリアミド樹脂とを溶融混練・成形し、電離放射線を照射することによりハンダ耐熱性を向上させることが提案されている。
【0007】
また、特許文献2においては、熱可塑性樹脂にチタン酸金属塩を添加した、ハンダリフロー炉内の高温条件下でも耐熱性を有する組成物が提案されている。
【0008】
しかし、いずれの文献も難燃性との両立に関しては特記されていない。
【0009】
また、特許文献3には、ハロゲン化ビスイミドを難燃剤として使用するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が記載されている。ハロゲン化ビスイミドは耐熱性に優れる難燃剤であるが、鉛フリーハンダ用途に使用するには、更なる耐熱性の向上手法が必要とされる。
【特許文献1】特開2001−40096号公報
【特許文献2】特開2003−213139号公報
【特許文献3】特公平7−21103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、鉛フリーハンダ用途に優れた260℃・10秒以上のハンダ耐熱性を有すると同時に難燃性も有するポリブチレンテレフタレート樹脂組成物及びその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、ポリブチレンテレフタレートに対し、ポリエチレンテレフタレート、ハロゲン化ビスイミド、アンチモン化合物、リン系安定剤及びガラス繊維を必須成分として配合した組成物が、高いハンダ耐熱性と同時に難燃性も有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、
(B) ポリエチレンテレフタレート樹脂50〜100重量部
(C) 下記一般式(1)で示されるハロゲン化ビスイミド10〜50重量部
(D) アンチモン化合物3〜50重量部
(E) リン系安定剤0.01〜5重量部
(F) ガラス繊維30〜200重量部
を配合してなる鉛フリーハンダ用難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物である。
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R1は2価の有機基を示し、R2及びR3は少なくともその一方が1つ以上のハロゲン原子を有する2価の有機基を示す。)
【発明の効果】
【0015】
本発明のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、鉛フリーハンダ用途の耐熱性、難燃性に優れており、特にコネクター、スイッチ、コンデンサー、集積回路(IC)、リレー、抵抗器、発光ダイオード(LED)、コイルボビンおよびその周辺機器、ハウジング等の電気・電子部品に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、順次本発明の樹脂組成物の構成成分について詳しく説明する。(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂は、主成分としてジカルボン酸にテレフタル酸またはテレフタル酸ジメチル、ジヒドロキシ化合物に1,4−ブタンジオールを使用してなる縮合重合体である。主成分以外にジカルボン酸として、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸の如き公知のジカルボン酸及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等を含んでいてもかまわない。また、ジヒドロキシ化合物には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシフェニル、ナフタレンジオール、ジヒドロキシジフェニルエーテル、シクロヘキサンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ジエトキシ化ビスフェノールAの如きジヒドロキシ化合物、またポリオキシアルキレングリコール及びこれらのアルキル、アルコキシ又はハロゲン置換体等を含んでいてもよく、一種又は二種以上を混合使用することができる。
【0017】
また、その他にもオキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ジフェニレンオキシカルボン酸等のオキシカルボン酸及びこれらのエステル形成可能な誘導体も使用できる。更に、これらの他に三官能性モノマー、即ちトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等を少量併用した分岐又は架橋構造を有するポリエステルであっても良い。また、ジブロモテレフタル酸、テトラブロモテレフタル酸、テトラクロロテレフタル酸、1,4−ジメチロールテトラブロモベンゼン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAのエチレンまたはプロピレンオキサイド付加物のような芳香族核にハロゲン化合物を置換基として有し、かつエステル形成基を有する化合物を用いたハロゲンを有するポリエステルコポリマーも含まれる。更に、高融点ハードセグメントと低融点ハードセグメントのブロック共重合体を構成するポリエステル系エラストマーも使用することができる。本発明で用いられるポリブチレンテレフタレート樹脂は、溶剤としてo−クロロフェノールを用い30℃で測定した固有粘度が0.55dl/g以上のものが好ましく、更には0.55〜1.2dl/g、特に0.55〜1.0dl/gのものが好ましい。
【0018】
本発明の(B) ポリエチレンテレフタレート樹脂は、例えば少なくとも90モル%がテレフタル酸からなるジカルボン酸化合物またはそのエステル形成性誘導体成分と、少なくとも90モル%がエチレングリコールであるグリコールとをエステル化反応またはエステル交換反応させ、次いで重縮合反応させて得られる重合体である。ジカルボン酸のエステル形成性誘導体としては、テレフタル酸単位のジアルキルエステル、ジアリールエステル等が好ましく挙げられる。ジカルボン酸として10モル%未満の範囲でテレフタル酸と併用できるものとしては、例えばフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ナフタレン−1,4−もしくは2,6−ジカルボン酸、ジフェニルエーテル−4,4’−ジカルボン酸等が挙げられる。グリコール成分として10モル%未満の範囲でエチレングリコールと併用できるものとしては、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。その他、ポリエチレンテレフタレート樹脂を得る際に用いることのできる他の成分としては、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のオキシ酸を挙げることができる。本発明で用いられるポリエチレンテレフタレート樹脂は、その重合度については特に限定されないが、溶剤としてo−クロロフェノールを用い30℃で測定した固有粘度が0.4〜1.0dl/gのものが好ましい。
【0019】
(B) ポリエチレンテレフタレート樹脂は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、50〜100重量部用いられる。50重量部未満では耐熱性が不十分でハンダ槽付け試験で溶融する場合があり、一方で100重量部を超えると離型しにくい等の成形性の不具合が生じる可能性がある。
【0020】
次に、本発明で用いられる(C) ハロゲン化ビスイミドは、下記一般式(1)で示される化合物である。
【0021】
【化3】

【0022】
ここで、R1はは2価の有機基であって、一般にはアルキレン基、アリレン基であり、特に望ましいのは低級アルキレン基である。例えば、メチレン、エチレン、1,4 −ブチレン、1,6 −ヘキサメチレン、フェニレン、4,4'−メチレンジフェニレン、4,4'−オキシジフェニレン、キシリレン、テトラクロロキシリレン、テトラブロモキシリレン等が例示され、中でもエチレン、ブチレン、ヘキサメチレン基であることが好ましい。又、R2及びR3は少なくとも一方、望ましくは両方が1つ以上のハロゲンを有する2価の有機基であり、好ましくはハロゲン化芳香族の2価の基であり、1〜4個のハロゲンを有する2価のフェニレン基が一般的である。又、ハロゲンはブロムであることが好ましく、特に好ましくはテトラブロモフェニレン基である。
【0023】
(C) 成分の(1)式で示されるビスイミドの例として次のものが挙げられる。N,N'−(p及びm−フェニレン)−ビス〔3・4・5・6 −テトラ−クロロフタルイミド〕、N,N'−(p及びm−フェニレン)−ビス〔3・4・5・6 −テトラ−ブロモフタルイミド〕、N,N'−(メチレン−ジ−p−フェニレン)−ビス〔3・4・5・6 −テトラクロロフタルイミド〕、N,N'−(メチレン−ジ−p−フェニレン)−ビス〔3・4・5・6 −テトラブロモフタルイミド〕、N,N'−(オキシ−ジ−p−フェニレン)−ビス〔3・4・5・6 −テトラクロロフタルイミド〕、N,N'−(オキシ−ジ−p−フェニレン)−ビス〔3・4・5・6 −テトラブロモフタルイミド〕、N,N'−(p及びm−フェニレン)−ビスクロルエンドイミド、*N,N' −(p及びm−テトラクロロキシリレン)−ビス−〔3・4・5・6 −テトラクロロフタルイミド〕、*N,N' −(p及びm−テトラクロロキシリレン)−ビス−〔3・4・5・6 −テトラブロモフタルイミド〕、*N,N' −(p及びm−テトラクロロキシリレン)−ビスクロルエンドイミド、N,N'−(1・2 −エチレン)−ビスクロルエンドイミド、N,N'−(1・2 −エチレン)−ビス〔3・4・5・6 −テトラブロモフタルイミド〕、N,N'−ビス(1・2・3・4・5 −ペンタブロモベンジル)−ピロメリットイミド、N,N'−ビス(2・4・6 −トリブロモフェニル)ピロメリットイミド。
【0024】
* これらにおいては、テトラハロキシリレン基は1・2・4・5 −テトラハロキシリレン及び1・3・4・5 −テトラハロキシリレン基である。中でも好適な化合物としては低級アルキレンビステトラブロモフタルイミド、特にN,N'−エチレンビステトラブロモフタルイミドが挙げられる。これらハロゲン化ビスイミドは耐熱性に優れた難燃剤であり、本発明に好適に用いられる。
【0025】
(C) 成分の配合量は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、10〜50重量部である。過大になると機械的、物理的性質、熱安定性等を害し、樹脂の外観を阻害するので好ましくない。また、過少の場合は難燃性が不十分となる。
【0026】
本発明で用いられる(D) アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン、ハロゲン化アンチモン、アンチモン酸ナトリウム、アルカリ金属酸化物と五酸化アンチモンの複塩等が挙げられる。いずれも使用可能であるが、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートのエステル交換反応を抑制するために、中でも五酸化アンチモン、又は酸化ナトリウムと五酸化アンチモンの複塩で、例えば日産化学(株)よりNA−1030、NA−1070等の商品名で市販されているものが好適である。
【0027】
(D) アンチモン化合物は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し3〜50重量部添加される。3重量部未満では十分な難燃性が発現できず、一方50重量部を超えると機械物性、成形性等の他特性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0028】
また本発明に使用される(E) リン系安定剤としては、無機リン系安定剤(アルカリ金属又はアルカリ土類金属リン酸塩等)、及び有機リン系安定剤(有機亜リン酸エステル、有機リン酸エステル、有機ホスホン酸エステル、有機亜ホスホン酸エステル)から選択された少なくとも1種が挙げられる。リン系安定剤は、液状又は固体状のいずれであってもよい。
【0029】
リン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩としては、リン酸又は対応するリン酸水素塩(例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム[(リン酸一ナトリウム(リン酸二水素ナトリウム)、リン酸二ナトリウム(リン酸水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム)等)]等のアルカリ金属塩;リン酸カルシウム[第一リン酸カルシウム(リン酸二水素カルシウム、ビス(リン酸二水素)カルシウム一水和物等)、第二リン酸カルシウム(リン酸水素カルシウム、リン酸水素カルシウム二水和物等)等]、リン酸マグネシウム(リン酸水素マグネシウム、リン酸二水素マグネシウム等)等のアルカリ土類金属塩が例示できる。前記アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩は、無水物又は含水物のいずれであってもよい。特に好ましくはリン酸ナトリウム、リン酸カルシウムである。
【0030】
有機亜リン酸エステルとしては、ビス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリイソデシルホスファイト、ジ−n−オクタデシルホスファイト等のアルキルホスファイト(モノ乃至トリC6-24アルキルホスファイト等);ジフェニルイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、ビス又はトリス(t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト等のアリール基に置換基(アルキル基、シクロアルキル基等)を有していてもよいアリールホスファイト(モノ乃至トリC6-10アリールホスファイト等);トリベンジルホスファイト等のアラルキルホスファイト(モノ乃至トリ(C6-10アリール−C1-6アルキル)ホスファイト等)の他、ビスアリールペンタエリスリトールジホスファイト[ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等]、ビスアラルキルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。特に好ましくはトリデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、ビスアリールペンタエリスリトールジホスファイトである。
【0031】
有機リン酸エステルとしては、リン酸のモノ乃至トリアルキルエステル(例えば、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート等のモノ乃至ジC6-24アルキルエステル等)、リン酸のモノ乃至トリアリールエステル(モノ又はジフェニルホスフェート等のモノ又はジC6-10アリールエステル等)等が挙げられる。
【0032】
有機ホスホン酸エステルとしては、ジステアリルホスホネート等のモノ又はジアルキルホスホネート(C6-24アルキルホスホネート等);ジフェニルホスホネート、ジ(ノニルフェニル)ホスホネート等のアリール基に置換基を有していてもよいアリールホスホネート(C6-10アリールホスホネート等);ジベンジルホスホネート等のモノ又はジアラルキルホスホネート((C6-10アリール−C1-6アルキル)ホスホネート等)等が挙げられる。
【0033】
有機亜ホスホン酸エステルとしては、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル)−4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト、(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト等のビフェニレンジホスフォナイト等が挙げられる。
【0034】
(E) リン系安定剤の配合量は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、0.01〜5重量部である。0.01重量部未満であると、ポリブチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートのエステル交換反応を抑制できず、溶融時の増粘により成形の不具合が発生する場合がある。5重量部を超えると成形品表面にブリードするなどの不具合が発生する可能性がある。
【0035】
本発明に使用される(F) ガラス繊維は、特にその種類、性状(繊維径、繊維長)は限定されず、何れのものの使用も可能であるが、表面処理剤又はカップリング剤で処理されているものを用いるのが好ましい。
【0036】
ガラス繊維の表面処理剤又はカップリング剤としては、従来この目的で使用する公知の官能性化合物、例えばエポキシ化合物、イソシアネート化合物、シラン系化合物及びチタネート系化合物が用いられる。具体的物質としては、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタンエポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ビニルシクロヘキセンジオキシド、ジシクロペンタジエンジオキシド、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカーボネート等のポリエポキシ化合物、2,4−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トリデンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、1,3−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリフェニルイソシアネート及び上記ジイソシアネートの誘導体(重合体ウレタン、ウレタジオン二量体より高次のオリゴマー、シアヌレート重合体)等のイソシアネート系化合物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、β−アミノエトキシ−γ−アミノプロピルトリメトキシシランの如き公知のアミノシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス−β−メチキシエトキシシラン、γ−メタクリロプロピルトリメトキシシラン、n−(ジメトキシメチルシリルプロピル)エチレンジアミン、n−(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン等が挙げられる。
【0037】
(F) ガラス繊維は、(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、30〜200重量部の範囲で添加される。30重量部未満であると高温時の剛性を保持する効果が不十分であり、200重量部を超える場合は流動性が低下し成形が困難になる可能性がある。
【0038】
尚、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、必要に応じ、耐熱性、難燃性を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂、添加剤、有機充填剤、無機充填剤等の1種又は2種以上を、重合中、又は重合後に補助的に添加配合した組成物として使用することも可能である。
【0039】
ここで熱可塑性樹脂としては、ポリエステルエラストマー、本発明以外のポリエステル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアリーレンオキシド、ポリアリーレンサルファイド、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0040】
また、添加剤としては、従来公知の紫外線吸収剤や抗酸化剤等の(E) 成分以外の安定剤、帯電防止剤、(C) 、(D) 成分以外の難燃剤、難燃助剤、染料や顔料等の着色剤、潤滑剤、可塑剤、滑剤、離型剤、結晶核剤等が例示される。
【0041】
また、無機充填剤としては、(F) ガラス繊維以外に、ミルドガラスファイバー、ガラスビーズ、ガラスフレーク、シリカ、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、カーボン繊維、カーボンブラック、黒鉛、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー等の珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナの如き金属の酸化物、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等の金属の炭酸塩や硫酸塩、更に炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素等が例示され、有機充填剤としては、高融点の芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリエステル繊維、芳香族ポリアミド繊維、フッ素樹脂繊維、ポリイミド繊維等が例示される。また、本発明の樹脂組成物においては、燃焼時の滴下防止剤としてポリテトラフルオロエチレンを使用することが好ましい。
【0042】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の調製は、従来の樹脂組成物調製法として一般に用いられる設備と方法により容易に調製される。例えば、1)各成分を混合した後、1軸又は2軸の押出機により練り込み押出してペレットを調製し、しかる後調製する方法、2)一旦組成の異なるペレットを調製し、そのペレットを所定量混合して成形に供し成形後に目的組成の成形品を得る方法、3)成形機に各成分の1又は2以上を直接仕込む方法等、何れも使用できる。また、樹脂成分の一部を細かい粉体としてこれ以外の成分と混合し添加することは、これらの成分の均一配合を行う上で好ましい方法である。また、上述した充填剤等は、任意の時期に添加し、所望の組成物を得ることが可能である。
【0043】
本発明の樹脂組成物は、成形加工性が良好である。そのため、本発明では、該樹脂組成物を溶融混練し、押出成形や射出成形等の慣用の成形方法により容易に成形でき、効率良く成形品を得ることができる。特に射出成形が好ましい。
【0044】
本発明の樹脂組成物は、金属・樹脂のインサート成形品及びアウトサート成形品とした場合に、金属部のみ260℃・10秒加熱されても樹脂部分が溶融しない。特に実施例記載のハンダ付け槽を用いた耐熱性評価においてアウトサート成形品が溶融しない。即ち、本発明の樹脂組成物は、難燃性に優れ、且つ鉛フリーハンダ用途の耐熱性に優れるので、電気・電子部品、特にコネクター、スイッチ、コンデンサー、集積回路(IC)、リレー、抵抗器、発光ダイオード(LED)、コイルボビンおよびその周辺機器、ハウジング等の電気・電子部品に好適に用いられる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1〜8、比較例1〜5
各樹脂組成物を表1に示す混合比率でドライブレンドし、30mmφのスクリューを有する2軸押出機を用いて、265℃にて溶融混練したのちペレット化し、各試験片を作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0046】
尚、使用した成分の詳細は以下の通りである。
・(A) ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂
ウィンテックポリマー製、500FP
・(B) ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂
カネボウ製、ベルペットEFG10
・(C) ハロゲン化ビスイミド化合物
アルベマール製、SAYTEX BT93
・(D) アンチモン化合物
日産化学製、サンエポックNA−1030
・(E) リン系安定剤
(E-1) 旭電化製、アデカスタブPEP−36
(E-2) 米山化学工業製、リン酸一ナトリウム
・(F) ガラス繊維
日本電気ガラス製、ECS03T187
・ポリテトラフルオロエチレン樹脂
三井デュポンフロロケミカル製、800J
・低分子量ポリエチレン
三洋化成工業製、サンワックス165P
・酸化防止剤
日本チバガイギー製、イルガノックス1010
また、比較例に
・(C') ハロゲン化ポリカーボネート
帝人化成製、ファイアーガードFG7500
を用いた。
【0047】
また、評価方法は以下の通りである。
[耐熱性]
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、成形温度265℃、金型温度80℃で、銅板のアウトサート成形品を射出成形により作成した。この試験片は、図1に示すような、20mm×30mm×0.2mmでリードフレームとなった銅板の中央部に、樹脂が10mm×10mm×7mm付帯した形態の成形品である。ハンダ付け性試験機を用い、図1に示すように、試験片の金属部(銅板)を樹脂部下約2mmまで10秒間浸漬し、一定時間加熱後にアウトサート金属回りの樹脂(2mmt片側:一部)の溶融状態を顕微鏡にて観察し、溶融していなければ○、溶融した場合は×とした。ハンダ付け槽の温度は、250℃、260℃、270℃とした。
【0048】
尚、比較例2、4では、流動性不足や離型性不足でアウトサート成形品が成形できず、評価不能であった。
[燃焼性]
アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、5本の試験片(厚み1/32インチ)を用いて燃焼性について評価を実施した。
[引張強さ、伸び]
得られたペレットを140℃で3時間乾燥後、成形温度265℃、金型温度80℃で、ISO3167引張試験片を射出成形し、ISO527−1、2に定められている評価基準に従い評価した。
【0049】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例のハンダ耐熱性試験に使用したアウトサート成形品と試験状況を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対し、
(B) ポリエチレンテレフタレート樹脂50〜100重量部
(C) 下記一般式(1)で示されるハロゲン化ビスイミド10〜50重量部
(D) アンチモン化合物3〜50重量部
(E) リン系安定剤0.01〜5重量部
(F) ガラス繊維30〜200重量部
を配合してなる鉛フリーハンダ用難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【化1】

(式中、R1は2価の有機基を示し、R2及びR3は少なくともその一方が1つ以上のハロゲン原子を有する2価の有機基を示す。)
【請求項2】
金属・樹脂のインサート成形品及びアウトサート成形品とした場合に、金属部のみ260℃・10秒加熱されても樹脂部分が溶融しない請求項1記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
(E) リン系安定剤がリン酸のアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩である請求項1記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
(E) リン系安定剤が有機亜リン酸エステルである請求項1記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形してなる電気・電子部品。
【請求項6】
コネクター、スイッチ、コンデンサー、集積回路(IC)、リレー、抵抗器、発光ダイオード(LED)、コイルボビンおよびその周辺機器、ハウジングの何れかである請求項5記載の電気・電子部品。

【図1】
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【公開番号】特開2007−146118(P2007−146118A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−249561(P2006−249561)
【出願日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【出願人】(501183161)ウィンテックポリマー株式会社 (54)
【Fターム(参考)】