説明

銅合金スパッタリングターゲット及びその製造方法並びに半導体素子配線

Al又はSnから選んだ少なくとも1元素を0.01〜0.5(未満)wt%含有し、Mn又はSiが総量で0.25wtppm以下であることを特徴とする銅合金スパッタリングターゲット。半導体素子の配線材、特に銅電気メッキの際に、シート抵抗が小さく、また凝集がなく、安定で均一なシード層を形成させることができ、かつスパッタ成膜特性に優れた銅合金スパッタリングターゲット及び同ターゲットを用いて形成された半導体素子配線を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、半導体素子の配線材、特に銅電気メッキの際に、凝集がなく安定で均一なシード層を形成させることができ、かつスパッタ成膜特性に優れた銅合金スパッタリングターゲット及び同ターゲットの製造方法並びに同ターゲットにより形成された半導体素子配線に関する。
【背景技術】
従来、半導体素子の配線材料としてAl(比抵抗3.1μΩ・cm程度)が使われてきたが、配線の微細化に伴いより抵抗の低い銅配線(比抵抗1.7μΩ・cm程度)が実用化されてきた。
現在の銅配線の形成プロセスとしては、コンタクトホール又は配線溝の凹部にTa/TaNなどの拡散バリア層を形成した後、銅を電気メッキすることが多い。この電気メッキを行うために下地層(シード層)として、銅または銅合金をスパッタ成膜することが一般に行われる。
通常、純度4N(ガス成分抜き)程度の電気銅を粗金属として湿式や乾式の高純度化プロセスによって、5N〜6Nの純度の高純度銅を製造し、これをスパッタリングターゲットとして使用していた。この場合、半導体配線幅が0.18μmまでの銅配線には特に問題となることはなかった。
しかし、銅配線幅が0.13μm以下、例えば90nm又は65nmで、アスペクト比8を超えるような超微細配線では、シード層の厚さは100nm以下の極薄膜となり、6N純銅ターゲットでシード層を形成した場合は、凝集がおこって良好なシード層を形成できないということから、AlやSnを0.5〜4.0wt%含有させることによって、これを防止することを考えた。
このように下地層の均一な形成は重要であり、下地層が凝集した場合には、電気メッキで銅膜を形成する際に、均一な膜を形成することができない。例えば、配線中にボイド、ヒロックス、断線などの欠陥を形成してしまう。
また上記のボイド等の欠陥を残さないにしても、この部分で不均一な銅の電着組織を形成してしまうためにエレクトロマイグレーション耐性が低下してしまうという問題が発生する。
この問題を解決するためには、銅電気メッキの際に安定で均一なシード層を形成させることが重要であり、スパッタ成膜特性のすぐれたシード層形成に最適なスパッタリングターゲットが必要となる。上記のAlやSnを0.5〜4.0wt%含有させることによって凝集を防止することができ、その目的のためには非常に有効であった。
しかし、その一方でスパッタ膜のシート抵抗が大きくなるという欠点があることが分かった。用途によってはシート抵抗が大きくなることを問題にすることがあり、その目的、すなわち導電性を重視する場合のためには必ずしも有効ではない。
このことからスパッタ膜を形成した後、熱処理して析出物を形成し、シート抵抗を小さくする試みもなされた。しかし、Al等は固溶限が大きいので、析出物を形成してシート抵抗を小さくすることは事実上困難であった。また膜を熱処理することは、工程の複雑化やデバイスへの熱影響の問題もあった。
また、熱処理でAlを配線膜表面に拡散させることで銅配線の抵抗を低下させ、耐酸化性を向上させることが示されている(例えば、特開平6−177117号参照)が、このような処理をシード層に施すとAl酸化膜がシード表面に形成され電気めっき下地層としては導電性が低下し不適である。
これまで、銅配線材として、銅にいくつか元素を添加して、エレクトロマイグレーション(EM)耐性、耐食性、付着強度等を向上させることが提案されている(例えば、特開平5−311424号公報及び特開平1−248538号公報参照)。また、純銅のターゲット又はこれにTi0.04〜0.15wt%添加したターゲットが提案されている(例えば、特開平10−60633号公報参照)。
そして、これらの提案においては、添加元素の均一な分散のために急冷し、又は鋳塊における添加元素の偏析や、鋳造時の引け巣、鋳塊の結晶粒の粗大化を防止するために連続鋳造することが提案されている。
しかし、高純度銅あるいはこれに微量の金属を添加しても、比抵抗が低いという利点はあるが、エレクトロマイグレーションの問題やプロセス上の耐酸化性の問題があって、必ずしも良好な材料と言えない。
特に、最近ではアスペクト比がより高くなっている(アスペクト比4以上)ので、十分な耐エレクトロマイグレーション及び耐酸化性を有していることが要求されている。
以上から、配線材として、銅にAlやSn(その他TiやZr等の様々な元素)を添加した銅合金をターゲットとして使用する提案がある(例えば、特開平10−60633号公報参照)。しかし、これらは銅の低抵抗特性を損なわないで耐EM性、耐SM性や耐酸化性を向上させるものであり、上記の様な銅電気めっきによる微細銅配線プロセスにおけるシード層形成に使用することはできなかった(例えば、特開平6−177117号公報参照)。
また、Sn0.5wt%がCuの粒界拡散低減とEM特性向上に有効であるという提案がある(例えば、C.H.Hu,K.L.Lee,D.Gupta,and P.Blauner(IBM)著[Electromigration and deffusion in pure Cu and Cu(Sn) alloy,Mat.Res.Soc.Symp.Proc.Vol.427,1996]Materials research Society参照)。しかし、これはTaやTaNなどのバリア層上でのシード層との問題を解決するものではない。
以上から、従来技術では半導体素子の配線材、特に銅電気メッキの際に、導電性が高く、安定で均一なシード層を形成させることができる銅合金が得られておらず、必ずしも十分とは言えなかった。
【発明の開示】
本発明は、半導体素子の配線材、特に銅電気メッキの際に必要とされる導電性が極めて良好であり、また凝集がなく、安定で均一なシード層を形成させることができ、かつスパッタ成膜特性に優れた銅合金スパッタリングターゲット及び同ターゲットの製造方法並びに同ターゲットを用いて形成された半導体素子配線を提供することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を行った結果、適切な量の金属元素を添加することにより、銅電気メッキの際のボイド、ヒロックス、断線などの欠陥の発生を防止することができ、比抵抗が低く、かつ耐エレクトロマイグレーション及び耐酸化性を有している、安定で均一なシード層を形成できる銅合金スパッタリングターゲット及び同ターゲットの製造方法並びに同ターゲットを用いて形成された半導体素子配線を得ることができるとの知見を得た。
本発明はこの知見に基づき、
1.Al又はSnから選んだ少なくとも1元素を0.01〜0.5(未満)wt%含有し、かつMn又はSiのいずれか一方又は双方が総量で0.25wtppm以下含有することを特徴とする銅合金スパッタリングターゲット
2.Al又はSnから選んだ少なくとも1元素を0.05〜0.2wt%含有し、Mn又はSiが総量で0.25wtppm以下含有することを特徴とする銅合金スパッタリングターゲット
3.Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asから選択した1又は2以上を総量で1.0wtppm以下含有することを特徴とする上記1又は2記載の銅合金スパッタリングターゲット
4.Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asから選択した1又は2以上を総量で0.5wtppm以下含有することを特徴とする上記1又は2記載の銅合金スパッタリングターゲット
5.Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asから選択した1又は2以上を総量で0.3wtppm以下含有することを特徴とする上記1又は2記載の銅合金スパッタリングターゲット
6.ガス成分を除く不可避的不純物が10wtppm以下であることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の銅合金スパッタリングターゲット
7.ガス成分を除く不可避的不純物が1wtppm以下であることを特徴とする上記6記載の銅合金スパッタリングターゲット
8.Na、Kがそれぞれ0.05wtppm以下、U、Thがそれぞれ1wtppb以下、酸素5wtppm以下、窒素2wtppm以下、炭素2wtppm以下であることを特徴とする上記1〜7のいずれかに記載の銅合金スパッタリングターゲット
9.Na、Kがそれぞれ0.02wtppm以下、U、Thがそれぞれ0.5wtppb以下、酸素1wtppm以下、窒素1wtppm以下、炭素1wtppm以下であることを特徴とする上記8記載の銅合金スパッタリングターゲット。
10.平均結晶粒径が100μm以下であり、平均粒径のばらつきが±20%以内であることを特徴とする上記1〜9のいずれかに記載の銅合金スパッタリングターゲット
11.上記1〜10のいずれかに記載の銅合金スパッタリングターゲットを用いて形成された半導体素子配線
12.半導体素子配線のシード層として形成されることを特徴とする上記11記載の半導体素子配線
13.Ta、Ta合金又はこれらの窒化物のバリア膜上にシード層として形成されることを特徴とする上記12記載の半導体素子配線
14.添加元素の母合金を作製し、これを銅又は低濃度母合金の溶湯に溶解してインゴットとし、このインゴットを加工してターゲットとすることを特徴とする上記1〜10のいずれかに記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法
15.固溶限以内の母合金を作製することを特徴とする上記14記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法
を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の銅合金スパッタリングターゲットは、Al又はSnから選んだ少なくとも1元素を0.01〜0.5(未満)wt%、好ましくは0.05〜0.2wt%含有し、Mn又はSiは総量で0.25wtppm以下とする。
これによって、特に銅電気メッキの際に、めっきの際の凝集を効果的に防止できバリア膜との濡れ性を向上させる。またシート抵抗を小さく保つことができ、耐酸化性に富み、安定で均一なシード層を形成させることができる。また、スパッタ成膜特性にも優れており、半導体素子の配線材として有用である。
0.05wt%未満では合金を製造する場合に、組成のばらつきが大きくなり、凝集防止効果が低下し、一方0.5wt%以上となると、スパッタ膜のシート抵抗が大きくなり、本発明の目的に合致したターゲットが得られ難くなる。また、銅合金製造工程の溶解の際に、Al、Snの増加と共に酸素含有量が増大するという問題もある。
MnとSiの含有は耐酸化性を向上させる。しかし、Mn、Si自体は凝集防止効果がなく、また0.25wtppmを超えるとシート抵抗を大きくさせてしまうので、0.25wtppm以下にする必要がある。特に、Mn、Siは溶解原料としてAl、Snから混入し易いので、MnとSiの成分管理は重要である。
上記本発明の銅合金スパッタリングターゲットは、Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asから選択した1又は2以上を総量で0.5wtppm以下、好ましくは0.3wtppm以下含有させることができる。
これらの成分元素は、耐酸化性を向上させる。しかし、Mn、Siと同様に0.5wtppmを超えるとシート抵抗が大となり、またAl、Snの凝集防止作用を著しく低下させる、すなわちバリア膜との濡れ性を著しく低下させてしまうので、添加する場合でも0.5wtppm以下にする必要がある。特に、好ましい添加量は、総量で0.3wtppm以下である。
本発明の銅合金スパッタリングターゲットは、ガス成分を除く不可避的不純物が10wtppm以下、好ましくは1wtppm以下とする。これらの不純物は、シート抵抗を大きくし、またAl、Snの凝集防止作用を低下させる、すなわちバリア膜との濡れ性を低下させてしまうので、厳しく制限する必要がある。
また、不純物のNa、Kは、それぞれ0.05wtppm以下、好ましくは0.02wtppm以下、U、Thはそれぞれ1wtppb以下、好ましくは0.5wtppb以下、酸素5wtppm以下、好ましくは1wtppm以下、窒素2wtppm以下、好ましくは1wtppm以下、炭素2wtppm以下、好ましくは1wtppm以下とする。不純物であるアルカリ金属元素Na、K及び放射性元素U、Thは微量でも半導体特性に悪影響を与えるので上記の範囲とするのが望ましい。
また、上記本発明の銅合金スパッタリングターゲットに含まれるガス成分の酸素、窒素、炭素は、結晶粒界に介在物を形成してパーティクルの発生の原因となり、特にスパッタライフ中の突発的なパーティクル発生を生じさせるという問題があるので、極力低減することが望ましい。
また、酸素により、シード層に酸化銅(CuO)が形成されてしまうと、電気めっきの際にその部分が溶解してしまうという問題がある。このようにめっき浴によってシード層表面が侵されると、ミクロ的に電場が変動して均一なめっき膜が形成されないという問題が起こる。したがって、酸素等のガス成分を上記の範囲に制限することが必要である。
また、上記本発明の銅合金スパッタリングターゲットは、平均結晶粒径を100μm以下、平均粒径のばらつきが±20%以内とすることが望ましい。
このように、ターゲットの組織を制御することによりスパッタライフを通じて、膜のユニフォーミティ(膜厚均一性)を向上させることができ、膜組成の均一性を向上させることができる。特に、ウエハサイズが300mmを超えるようになると、膜のユニフォーミティはより重要になる。
さらに、上記本発明の銅合金スパッタリングターゲットは、半導体素子配線の製造、特に半導体配線のシード層の形成に有用であり、さらにはTa、Ta合金又はこれらの窒化物のバリア膜上のシード層形成に最適である。
本発明の銅合金スパッタリングターゲットの製造において、特に問題となるのは添加元素のSn及びAlの添加量が極めて低いために、銅合金インゴットの製造段階で組成にバラツキが生じてしまうことである。
特に、SnやAlのように、融点が低く、比重の小さい元素は、銅の溶湯に添加する際に、蒸散や飛散が起こり易いためである。また、比重が小さいためにインゴットの中で偏析が大きくなってしまうなどの問題がある。また、SnやAlの添加元素からの不純物の混入も多く高品質の銅合金ターゲットを製造することが難しいという問題があった。
このようなことから溶解温度を高くし、十分に溶湯を攪拌すれば、不純物となる多量のSi、Mnは低減させることができるが、添加元素自体も減少してしまう不都合を生じる。減少量を見込んで添加量を多くしても、溶湯温度の管理が難しく、また溶解作業は変動要因が多いので、適切な調整は困難であった。
そこで、本発明は融点が約800°Cと高く固溶限内の単相の母合金を作製し、これを銅又は低濃度母合金の溶湯に溶解してインゴットとする。融点が高いので酸素等の不純物も効果的に減少させることができる。この母合金の添加元素濃度を測定し、これを純銅又は低濃度銅母合金に溶融添加することで、安定した低濃度銅合金インゴットを製造することができる。
具体的には、純度6N以上の高純度銅と上記銅母合金を準備し、水冷銅製坩堝のコールドクルーシブル溶解法にて高真空雰囲気で溶解し、高純度の合金を得る。銅母合金による添加元素の量は十分な管理を行うことが必要である。溶解方法としては、この他に高純度のグラファイト坩堝を使用することもできる。
溶解に際しては、溶湯との接触による汚染を少なくするために、純度6Nの銅板を坩堝底部に設置することが有効である。
合金化した溶湯は、速やかに高真空雰囲気中で水冷銅鋳型に鋳込んでインゴットを得る。このインゴットの組織、例えば結晶粒径を制御することにより、スパッタリング特性を向上させることができる。
製造したインゴットは表面層を除去して、熱間鍛造、熱間圧延、冷間圧延、熱処理工程を経て、ターゲット素材とする。このターゲット素材はさらに機械加工により所定の形状とし、バッキングプレートと接合してターゲット製品を得る。
実施例及び比較例
次に、実施例に基づいて本発明を説明する。以下に示す実施例は、理解を容易にするためのものであり、これらの実施例によって本発明を制限するものではない。すなわち、本発明の技術思想に基づく変形及び他の実施例は、当然本発明に含まれる。
【実施例1〜10】
純度6N以上の高純度銅と銅母合金(Al、Sn、Mn、Siその他の添加元素)を調整し、水冷銅製坩堝のコールドクルーシブル溶解法にて高真空雰囲気で溶解し高純度の合金を得た。調整した実施例1〜10の合金組成を表1に示す。
本溶解に際しては、溶湯との接触による汚染を少なくするために、純度6Nの銅板を坩堝底部に設置した。合金化した溶湯を、高真空雰囲気中で水冷銅鋳型に鋳込んでインゴットを得た。
次に、製造したインゴットの表面層を除去してφ160×60tとした後、400°C熱間鍛造でφ200とした。その後、400°Cで熱間圧延してφ270×20tまで圧延し、さらに冷間圧延でφ360×10tまで圧延した。次に、400〜600°C1時間熱処理後、ターゲット全体を急冷してターゲット素材とした。これを機械加工で直径13インチ、厚さ7mmのターゲットに加工し、これをさらにAl合金製バッキングプレートと拡散接合により接合してスパッタリングターゲット組立体とした。
平均粒径の測定はJIS H0501に基づき切断法により、ターゲットを平面方向で同心円状に17点、板厚方向で表面、中央、裏面の3点、合計で17×3=51点で測定した。
このようにして得たターゲットを使用して8インチのTaN/Ta/Si基板上に100nm厚さのスパッタ膜を形成した。このスパッタ膜の凝集程度を高分解能SEMで観察した。また、Si基板上に約500nm厚さまでスパッタ成膜して膜のユニフォーミティを測定した。
以上の結果について、ターゲットの成分組成と共に、酸素含有量、平均結晶粒径、凝集性、膜厚均一性(3σ(%))を表1に示す。
本発明においては、酸素含有量が低く、また平均結晶粒度も100μm以下であり、平均粒径のばらつきが±20%以内である。
そして凝集が抑制され、全く凝集しないか又は凝集性が極めて低い。さらに膜厚均一性に優れており、安定で均一なシード層を形成できる銅合金スパッタリングターゲットを得ることができることが分る。これによって、同ターゲットを用いて優れた半導体素子配線を得ることができる。

(比較例1〜8)
実施例と同様の製造条件で、同様な合金成分ではあるが、本発明の範囲から外れる材料について、母合金を使用せず、粒径及びばらつきを変えた場合について、それぞれ銅合金ターゲットを作製した。
この条件を同様に表1に示す。このようにして得たターゲットを使用して8インチのTaN/Ta/Si基板上に100nm厚さのスパッタ膜を形成した。
このスパッタ膜の凝集程度を高分解能SEMで観察した。また、Si基板上に約500nm厚さまでスパッタ成膜して膜のユニフォーミティを測定した。
以上の比較例1−8の結果について、ターゲットの成分組成と共に、酸素含有量、平均結晶粒径、凝集性、膜厚均一性(3σ(%))を同様に表1に示す。
比較例1では、Alが0.008wt%で、凝集防止効果が低く、凝集性が強くなっている。比較例2では、Alが0.50wt%を超えており、またSiが多くなり、再結晶温度も高く、凝集防止効果が低い。また、比較例3に示すように、Siが高い(0.25ppmを超える)と凝集防止効果が低下する。
比較例4は、凝集性は低いが、酸素含有量が高くかつ粒径のばらつきが大きいため、膜厚の均一性が悪くなっている。
比較例5は、Sn含有量が0.02wt%未満であるため凝集防止効果が低く、強い凝集性を示した。逆に、比較例6は、Sn含有量が0.5wt%を超え、同時にMnが多くなり、再結晶温度も高く、凝集性が強く現われた。比較例7に示すように、Mnの含有量が高いと凝集防止効果が低下する。
また、比較例8は、凝集性は低いが、粒径のばらつきが大きく膜厚の均一性が悪くなっている。
(実施例11−1〜11−5)
次に、母合金の作製と目標組成からのズレを調べるために、真空雰囲気中、コールドクルーシブル溶解法で母合金を作製した。この母合金(銅)のアルミニウム含有量を固溶限内である4.632wt%とした。この母合金の液相線温度は約1060°Cである。
次に、真空雰囲気中、コールドクルーシブル溶解法で6Nグレードの高純度銅を1400°C程度で溶解し、さらに前記母合金を0.106wt%になるように添加して、溶湯温度が約1150〜1400°Cになってから鋳造し、鋳造インゴットを作製した。また、同様の方法で、合計5回インゴットを作製した。
そして、これらのインゴットのアルミニウム量をICP発光分析法にて分析した。その結果を表2に示す。

(比較例9−1〜9−4)
真空雰囲気中、コールドクルーシブル溶解法で6Nグレードの高純度銅を1400°C程度で溶解し、アルミニウムを0.106wt%になるように添加して、溶湯温度が約1150〜1400°Cになってから鋳造し、鋳造インゴットを作製した。また、同様の方法で、合計4回インゴットを作製した。
そして、これらのインゴットのアルミニウム量をICP発光分析法にて分析した。その結果を同様に、表2に示す。
(比較例10−1〜10−4)
真空雰囲気中、コールドクルーシブル溶解法で母合金を作製した。この母合金(銅)のアルミニウム含有量は、固溶限を超える31.33wt%とした。この母合金の液相線温度は約800°Cである。
次に、真空雰囲気中、コールドクルーシブル溶解法で6Nグレードの高純度銅を1400°C程度で溶解し、さらに前記母合金を0.106wt%になるように添加して、溶湯温度が約1150〜1400°Cになってから鋳造し、鋳造インゴットを作製した。また、同様の方法で、合計4回インゴットを作製した。
そして、これらのインゴットのアルミニウム量をICP発光分析法にて分析した。その結果を同様に、表2に示す。
上記表2から明らかなように、実施例実施例11−1〜11−5の場合は、いずれも目標組成からのズレ(バラツキ)が少なく、5%以内であった。一方、母合金を使用せずに直接合金元素を添加した比較例9−1〜9−4及び固溶限を超える母合金を使用した比較例10−1〜10−4では、目標組成からのズレ(バラツキ)が大きく、5%をはるかに超えていた。このように適正な母合金を使用しない場合は、極めて製造の安定性が悪かった。
特に、母合金としては、800°C以上、好ましくは1000°C程度の融点(液相線温度)が必要で、さらに単相合金(アルミニウム又は錫の固溶限内の組成範囲)が適していることが分った。
【発明の効果】
本発明は、半導体素子の配線材、特に銅電気メッキの際に、シート抵抗が小さくかつ凝集がなく、安定で均一なシード層を形成させることができ、スパッタ成膜特性に優れた銅合金スパッタリングターゲット及び同ターゲットの製造方法並びに同ターゲットにより形成された半導体素子配線を得ることができるという優れた効果を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al又はSnから選んだ少なくとも1元素を0.01〜0.5(未満)wt%含有し、かつMn又はSiのいずれか一方又は双方が総量で0.25wtppm以下含有することを特徴とする銅合金スパッタリングターゲット。
【請求項2】
Al又はSnから選んだ少なくとも1元素を0.05〜0.2wt%含有し、Mn又はSiが総量で0.25wtppm以下含有することを特徴とする銅合金スパッタリングターゲット。
【請求項3】
Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asから選択した1又は2以上を総量で1.0wtppm以下含有することを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項記載の銅合金スパッタリングターゲット。
【請求項4】
Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asから選択した1又は2以上を総量で0.5wtppm以下含有することを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項記載の銅合金スパッタリングターゲット。
【請求項5】
Sb,Zr,Ti,Cr,Ag,Au,Cd,In,Asから選択した1又は2以上を総量で0.3wtppm以下含有することを特徴とする請求の範囲第1項又は第2項記載の銅合金スパッタリングターゲット。
【請求項6】
ガス成分を除く不可避的不純物が10wtppm以下であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第5項のいずれかに記載の銅合金スパッタリングターゲット。
【請求項7】
ガス成分を除く不可避的不純物が1wtppm以下であることを特徴とする請求の範囲第6項記載の銅合金スパッタリングターゲット。
【請求項8】
Na、Kがそれぞれ0.05wtppm以下、U、Thがそれぞれ1wtppb以下、酸素5wtppm以下、窒素2wtppm以下、炭素2wtppm以下であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第7項のいずれかに記載の銅合金スパッタリングターゲット。
【請求項9】
Na、Kがそれぞれ0.02wtppm以下、U、Thがそれぞれ0.5wtppb以下、酸素1wtppm以下、窒素1wtppm以下、炭素1wtppm以下であることを特徴とする請求の範囲第8項記載の銅合金スパッタリングターゲット。
【請求項10】
平均結晶粒径が100μm以下であり、平均粒径のばらつきが±20%以内であることを特徴とする請求の範囲第1項〜第9項のいずれかに記載の銅合金スパッタリングターゲット。
【請求項11】
請求の範囲第1項〜第10項のいずれかに記載の銅合金スパッタリングターゲットを用いて形成された半導体素子配線。
【請求項12】
半導体素子配線のシード層として形成されることを特徴とする請求の範囲第11項記載の半導体素子配線。
【請求項13】
Ta、Ta合金又はこれらの窒化物のバリア膜上にシード層として形成されることを特徴とする請求の範囲第12項記載の半導体素子配線。
【請求項14】
添加元素の母合金を作製し、これを銅又は低濃度母合金の溶湯に溶解してインゴットとし、このインゴットを加工してターゲットとすることを特徴とする請求の範囲第1項〜第10項のいずれかに記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項15】
固溶限以内の母合金を作製することを特徴とする請求の範囲第14項記載の銅合金スパッタリングターゲットの製造方法。

【国際公開番号】WO2004/083482
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【発行日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−503638(P2005−503638)
【国際出願番号】PCT/JP2004/001914
【国際出願日】平成16年2月19日(2004.2.19)
【出願人】(591007860)株式会社日鉱マテリアルズ (545)
【Fターム(参考)】