説明

鋼ストリップを冷却する方法及び装置

【課題】
鋼から作られた冷間圧延ストリップの形の平坦な金属製品に適用可能な連続焼鈍時のクエンチング操作のための冷却装置を提供する。
【解決手段】
この冷却装置は、溢流せきを含み、この溢流せき内に一連のチューブ(1)が完全に浸漬されかつストリップ(2)の各側に沿って大体垂直にかつ対称的に積み重ねられており、これらのチューブが本質的に水平な乱流ジェットの形で冷却流体をストリップ上に噴出し、全てのチューブ間に冷却流体の排出のための隙間が設けられ、この隙間が隙間に対応する排出通路内の負荷の損失を最小とするために流体の所定比流速値に設定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続焼鈍法において鋼ストリップを冷却する装置に関する。特に、この冷却は水の浸漬ジェットにより達成される。この冷却操作は沸騰水の浴中での第一冷却操作後に実行されることができる。
【背景技術】
【0002】
連続焼鈍は冷間圧延後の鋼のストリップに適用される熱化学的処理である。金属の“ストリップ”は金属製品であり、それは切断されると特に車の車体構造、家庭用電気器具のフレーム等の製造のために使用されるシートを生成する。
【0003】
連続焼鈍法は鋼ストリップを制御された加熱及び冷却に曝されている炉に通過させることからなる。連続焼鈍炉内では、鋼ストリップは一連の連続上昇及び下降経路に従って垂直に移動し、このようにして種々の処理段階を連続的に通過する。
【0004】
炉中でのストリップの処理は一般的に次の連続的熱処理段階を含む:
− 予熱及び加熱:ストリップは2から3分で700から850℃の温度に達する;
− 約1分間最高温度に保つ;
− 例えば沸騰水による徐冷;
− 急冷(“クエンチング”と呼ばれる)、例えばその沸点と同じ位の高い温度でのストリップの上へ噴霧される液体の形の水による;
− 過時効;
− 最終冷却。
【0005】
これらの種々の段階は意図した鋼処理、すなわち再結晶、炭化物の析出、最終構造の取得または非時効性鋼の取得等、を実施するために必要である。
【0006】
特に、改善された抵抗性及び成形性を同時に持つ薄鋼板に対する特に自動車産業からの増大する要求が近年出て来ている。
【0007】
この場合において、冷却段階は特に重大な役割を果たす。なぜなら、それがある場合に、例えば“二相”、“多相”、“HEL(高弾性限界)”等の形式のような特別な顕微鏡構造を達成するために必要な高価な合金元素の濃度を減少させるからである。従って、冷却法は些細ではない金属学的及び財政上の問題に相当する。
【0008】
工業的に使用される主たる冷却技術は:
− ガスジェットによる冷却;
− 恐らく“攪拌された”水浴中への浸漬;
− 冷却ローラー上への通過による冷却;
− 水のジェットによる冷却;
− 超音速ガスによる噴霧により作られた水の霧による冷却、この技術は“ミスティングジェット”と呼ばれている;
である。
【0009】
過去、本出願人は鋼ストリップを沸点に接近した水浴内に浸漬することからなる冷却方法を開発した。この方法はラインの条件にかかわりなく、冷却の例外的な均質性によりかつ一定な熱伝達係数により特徴付けられるが、それはまた幾つかの制限を持つ。
【0010】
一つ目には、達成することができる冷却速度が比較的低いことである、すなわち1mm厚の鋼ストリップに対し約50℃/秒であることである。この制限は鋼ストリップが沸騰水の浴中に高温度で浸漬されるとき、安定な水蒸気の膜が“膜沸騰”として知られている状態でその表面近くに形成されるという事実から発生する。この膜沸騰は熱交換を著しく制限する。“膜沸騰”は熱い壁と液体または液体と蒸気の二相混合物のいずれかである流体との間の高沸騰に起因する蒸気膜の存在を意味し、この存在は壁と流体の間の劣った熱伝達をもたらす。
【0011】
二つ目には、沸騰水の浴から出たときの鋼ストリップの温度は約300℃より高いままでなければならないことである。ストリップの温度がこの温度未満に落ちると、蒸気膜は不安定となり、“核”沸騰として知られる沸騰状態に変化する。後者の状態では、ストリップに隣接する領域は種々の熱流を受け、それが主要な温度差を作り出す。これらの温度勾配は鋼中に塑性変形を作り出す危険を及ぼす機械的抱束を導入し、それは永久的であり、平面度欠陥に導くであろう。
【0012】
これらの欠陥を修正する解決策が提案されている。鋼ストリップは例えば冷水の静止浴に浸漬されることができる。しかし、この解決策はまた、平面度に欠陥のある外観に導く。
【0013】
他の解決策は鋼ストリップの近くの沸騰帯域の局所的形成を防ぐために浸漬ジェットにより鋼ストリップを冷却することからなる解決策を提唱している。これらの冷却システムは“ガスジェット冷却”形式の徐冷によりまたは水の静止浴中への浸漬により先行されることができまたは先行されないこともできる。
【0014】
従って、特許出願JP−A−58 039210では、ストリップはまず60℃を越える温度の水浴中でそれが200〜500℃の温度、すなわち膜沸騰と核沸騰の間の移行が起こる温度範囲に達するまで冷却される。それは次いで移行直前または直後にストリップを浸漬水ジェットによりストリップが浴の温度に達するまで冷却することが推奨されている。
【0015】
同様な解決策(JP−A−60 009834)は、鋼ストリップの各側に配置されかつ沸騰温度の60〜75%の温度の水タンク中に浸漬された一組の冷却傾斜路を使用する。噴霧傾斜路の所定の形状のため、層流が発生され、それが鋼ストリップの近くの蒸気膜の形成を防止する。
【0016】
さらに別の解決策はストリップの移動方向に平行なかつそれに関して向流で二枚の平坦な板間に水を循環させることからなる(EP−A−210847,JP−A−63 145722,JP−A−62 238334)。
【0017】
別の文献はクエンチング時のストリップの変形を抑制するためにジェットの衝撃圧を使用することを提案する(JP−A−11 193418参照)。この出願人は鋼ストリップの各側に少なくとも500N/cmの圧力を付与することを推奨する。
【0018】
最後に、沸騰を防ぐような方式でクエンチング浴中への添加物により冷却を制御し、従ってクエンチング時の鋼中の内部抱束の水準を制限することもまた可能である(JP−A−57 085923)。
【0019】
多数の解決策が提案されたが、液体手段による急冷から出たときの高い熱的性能と良好な平面度水準を同時に得ることは今日まで主要な課題として残っている。
【発明の開示】
【0020】
本発明の目的
本発明は好ましくは鋼から作られた冷間圧延ストリップの形の平坦な金属製品に適用可能な、典型的には1000℃/秒を越える速度での“クエンチング”操作を提供することを目的とする。
【0021】
このクエンチング操作は好ましくは0℃〜50℃の温度で冷水のジェット(このジェットは浸漬されている)により実施されなければならない。
【0022】
本発明は装置内の流れを制御することにより鋼ストリップの全幅を横切ってできるだけ均質である冷却条件を高出力で確保することを目的とする。
【0023】
従って、装置に入るときのストリップの温度は750℃〜350℃でなければならず、出るときの温度は好ましくは0℃〜150℃でなければならない。
【0024】
本発明の主要な特徴的要素
本発明の一つの第一目的は金属ストリップ、好ましくは鋼ストリップの形の平坦製品の連続焼鈍処理時のクエンチング操作を実施するための基本的冷却装置に関し、前記装置は本質的に垂直な、上昇または下降経路で配置されており、前記装置は溢流せきを含み、この溢流せき内に一連のチューブが完全に浸漬されかつストリップの各側に沿って多かれ少なかれ垂直にかつ対称的に積み重ねられており、これらのチューブがそれぞれ多かれ少なかれ水平に乱流ジェットの形の冷却流体をスリットまたは一連の穴を通して噴出する。この装置はまた、その下部に封止手段を備えている。
【0025】
本発明によれば、ストリップの同じ側に位置した二つの連続チューブのいずれも冷却流体を排出するために全てのチューブに対して同じ隙間により分離されている。前記隙間はそのとき前記隙間に相当する排出通路中の流れの損失を最小とするためにストリップの表面の平方メートル当たりかつ時間当たり立方メートルで表した冷却流体に対する比流速の水準で選ばれる(各隙間に対する流れの損失と流れの全損失は同一である)。
【0026】
本発明の好適実施態様によれば、チューブの背後に設けられた溢流せきの壁はチューブの幅に少なくとも等しい幅を持ち、この壁のチューブの背部に関する水平距離は溢流せきの存在に起因する流れの損失が二つの連続チューブ間の隙間に起因する流れの損失の5%未満であるように選ばれ、それは無視できると考えられる。従って、流れは二次元的である。
【0027】
本発明はストリップの表面の冷却流体に対する比流速を時間当たりかつm当たり250〜1000mで選ぶことにより局部沸騰の現象を有利に防ぐことを可能とする。本出願人により試験された装置の例では、表面当たりの最大比流速は時間当たりかつm当たり約580mであった。
【0028】
隙間に起因する流れの損失は好ましくは150mm水柱未満である。
【0029】
さらなる利点として、各チューブの端部とストリップの間の距離は全てのチューブに対し同一であり、それは50mm〜200mmである。
【0030】
さらに、本発明によれば、噴出速度(VJET)は次の基準をそれぞれ満たす:
− 穴の場合は、

− スリットの場合は、

ここでAはチューブとストリップの間の距離を表し、dは穴の直径またはスリットの厚さを表す。A及びdは同じ単位の長さであり、例えばメートルで表される。それらの商は無次元である。VJETはm/秒で表される。
【0031】
乱流ジェットの理論から取られたこれらの二つの基準は速度0での環境による乱流ジェットの最大速度の減衰を示す。基準は2.5m/秒の最小速度に基づき計算される。A=50mm(ジェット開口に関するストリップの位置)でのジェットの最大速度は0.65m/秒である。従って、0.65m/秒の速度は膜沸騰の層を破壊するためにジェットがストリップに到達するときのジェットの最小速度と考えられる。
【0032】
冷却流体は好ましくは50℃未満の温度に維持された液状水である。
【0033】
この装置は好ましくは本質的に垂直な上昇経路(30°未満の垂直に関する角度差)で設けられるが、多かれ少なかれ沸点にもたらされた水のタンクにより直接前置されている。
【0034】
本発明はまた、処理される金属製品が0.25m/秒〜20m/秒の移動速度と0.1mm〜10mmの厚さを持つ設備において有利に実施されるであろう。
【0035】
本発明の一つの重要な特徴は冷却流体の噴出速度がストリップの全幅を横切って均質であるように冷却チューブの寸法が作られているということにある。
【0036】
チューブは好ましくは速度の分布が下部チューブの幅に依存する噴出の最大速度(Vmax)と最小速度(Vmin)の間の相対差が5%未満であるように、すなわち

であるように寸法が作られる。
【0037】
チューブの通過のための断面とチューブの自由噴霧断面、すなわちスリットの面積または穴の合計面積、との間の比は1を越える。
【0038】
本発明の好適実施態様によれば、前記チューブは長方形断面を持つ。長方形断面のある辺と隣接辺の比は好ましくは0.1〜10であり、ジェットの干渉性を制御するためにチューブの厚さは穴の直径またはスリットの厚さの0.25〜10倍であり、チューブの厚さと穴の直径との間の比は好ましくは2/3に等しい。
【0039】
本発明の別の有利な特徴によれば、上述の封止手段はストリップの通過と、溢流せきからの下向きの洩れを最小値に限定する流れの損失の創出との両者を可能とする二対のローラーを持つロックを含む。
【0040】
さらに、本発明によれば、この封止手段はまた、制御可能な圧力及び/または温度でローラー間に流体を注入するための手段を含む。
【0041】
一利点として、上部チューブはブロックを備えており、そのブロックの高さは溢流せきの水の膜の厚さと、最大流速でのチューブ間の流れの損失に相当する水柱の高さとの合計に少なくとも等しい。
【0042】
本発明の第二目的は金属ストリップ、好ましくは鋼ストリップの形の平坦製品の連続焼鈍処理時のクエンチング方法に関し、それは上記の実施態様の一つに述べられた装置で実施して金属製品の表面当たり1000kW/m〜10000kW/mの比冷却動力を達成する。
【0043】
本発明の方法によれば、装置に入るときのストリップの温度は350℃〜750℃であり、出るときの温度は50℃〜450℃、好ましくは50℃〜100℃または350℃〜450℃である。
【0044】
図面の簡略説明
図1は本発明による冷却装置の断面図を概略的に示す。
【0045】
図2は本発明の装置での鋼ストリップ上に水を噴霧するために意図された穴の配置を概略的に示す。
【0046】
図3は本発明による冷却装置の熱的性能をグラフで示す。
【0047】
図4は鋼ストリップの平面度に関して前記装置の性能を示す。
【0048】
図5及び6は鋼ストリップの機械的性質の均質性についての冷却均一性の影響力を示す。図5は二相系の鋼に関し、一方図6は多相鋼系の鋼に関する。
【0049】
図7は図5及び6に関する試験を実行するためにストリップの幅の関数として取った試料の種々の位置を概略的に示す。
【0050】
図8は平面度指数を計算可能とするパラメーターを示し、これらのパラメーターは正弦曲線を構成し、その正弦曲線にストリップの縦方向の輪郭が縁を前にして合わせられている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0051】
図1が示すように、この冷却装置は冷却される鋼ストリップの各側に対称的に配置された“傾斜路”または“冷却傾斜路”と呼ばれる一組のチューブ1を含む。これらの傾斜路は冷却流体に浸漬されかつ冷却流体を横方向に供給されている。それらの断面は好ましくは長方形である。本発明をさらに説明するとき、字句“チューブ”及び“傾斜路”は区別なく使用されるであろう。
【0052】
傾斜路の浸漬は装置の下部に設けられた封止システムにより達成され、この封止システムは鋼ストリップ2の通過と冷却流体のハウジングの底への洩れ割合を最小に制限するために最大流れ損失の創出との両方を可能とする。与えられた用途適用例では、この封止システムは、鋼ストリップに対して押圧されかつ鋼ストリップに関して対称的に配置された二対のローラー3を含む。ローラー間に制御可能な圧力及び/または温度で流体が注入される。
【0053】
冷却流体は好ましくは水である。冷却傾斜路はストリップ2の通過線から距離Aに位置されている。同等の性能のために、一つには嵩の理由のため今一つはシステム中の全流速を制限するために、ストリップと冷却傾斜路の間の最大距離は200mmに設定される。
【0054】
空間Bが二つの連続傾斜路間に残されており、従って傾斜路により注入された水はそれらの間に排出されることができる。これは鋼ストリップの幅に依存してできるだけ均質な流れを保証する。距離Bの選択は最大比冷却動力Pと、ストリップの近くの冷却流体の十分迅速な置換を確保し、それによってストリップの近くの局部沸騰領域の形成を防止するための排出通路を通る流れの最小損失との間の妥協から生じる。ここで比冷却動力は単位表面積当たり及び冷却されるストリップの表面当たりの冷却動力として定義される。距離Bは各噴霧傾斜路の前面の同一流れ状態を確保するために、全ての傾斜路に対して連続する傾斜路の二対間で同一であるように選ばれる。従って、これは流れの垂直均質性を達成可能とする。このようにして、所定の傾斜路により注入された冷却流体はこの傾斜路のすぐ次に位置した通路により排出される。これは偏った経路の創出を防ぎ、沸騰帯域の局所形成を防ぐために冷却流体がストリップの近くで費やす時間を最小とする。
【0055】
各冷却傾斜路1はストリップに露出されたその表面に、冷却流体をストリップ上に噴霧するために意図された図2に示されるような少なくとも一つのスリットまたは一連の穴を備えている。二つの連続した穴間の距離はストリップの極めて近くの流れがスリットのそれに整合することができるようなものでなければならない。流体の噴出速度はストリップの近くの沸騰帯域の形成を防ぐのに十分でなければならない。この噴出速度Vはストリップに関しての距離Aの関数として選ばれ、それは典型的には0〜10m/秒である。
【0056】
排出通路から下流では、冷却装置またはハウジングはハウジングの全幅を横切って溢流せき4を含み、その高さは最後の傾斜路のジェットの水準に対応し、それは全ての操作条件で、最後の傾斜路が他と同じ範囲で浸漬されることを保証する。
【0057】
各傾斜路の前面に同じ流れ状態を確保するために:
− 上部冷却傾斜路はブロック5が施されており、その高さは溢流せきの水のストリップの厚さHと、最大流速Qmaxに対する排出通路を通しての流れの損失ΔPに対応する水柱ΔHの高さとの合計に少なくとも等しい;
− 排出通路は最後の傾斜路の下に設けられる。
【0058】
従って、このシステムが作動しているとき、傾斜路の、前表面またはストリップ側と、後表面またはせき側との間に水の高さの差がある。この差は所定の流速に対し、二つの傾斜路間の流れ損失に相当する水柱の高さに等しい。
【0059】
図3に示された装置の冷却性能は次の値:装置に入ってくる及び装置から出て行く鋼ストリップの温度、冷却部の長さ及び装置を通過する鋼ストリップの移動速度、に基づく熱バランスにより工業条件で測定された。図3はストリップの表面当たりでかつ平方メートル当たりのkWで表された比冷却動力が比流速の一次関数であることを示す。ここで比流速自体は一緒に加算された二表面に対する平方メートル当たりでかつ時間当たりの立方メートルで表される。ここで考えられた条件では、比動力は製品の表面当たり4000〜6000kW/mである。
【0060】
図4は鋼ストリップの平面度に関する装置の性能を示す。それらは冷却、従って装置内の流れの制御の均質性を示す。平面度の決定はここでは長縁に関する。図中の各点は一連の工業試験時の所定の瞬間の−関連した比冷却動力により規定された−装置の操作点を示す。“I”単位で表された平面度指数は各操作点と関連している。“I”単位は鋼ストリップの100m当たり1mmの相対伸びに相当する。
【0061】
“長縁”形式の欠陥の場合、ストリップの縁の縦方向輪郭は波長Lと振幅Xを持つ正弦曲線に同化されることができる。平面度指数は以下の関係式によりL及びX(図8参照)の測定に基づいて計算される:

【0062】
図4は二つの参照しきい値、120及び240“I”単位を示し、それは二つの電気亜鉛めっきラインのための認容できる平面度許容度に対応する。図は大多数の操作点がより厳密なラインのしきい値の下に位置されていることを示す。
【0063】
図5及び6は機械的性質の均質性についての冷却均一性の影響力を示す。図5は“二相”系の鋼に関する。図6は多相鋼(フェライト、マルテンサイト、ベイナイト、パーライト)に関する。両方の場合において、機械的性質はけん引試験により決定される。試料は図7に示された図により、シートの幅に依存した異なる位置で取られる:
1)極縁
2)縁
3)4分位
4)中央
5)中央
6)4分位
7)縁
8)極縁
【0064】
図5及び6はそれぞれ破壊点荷重、弾性限界(図6のみ)及び破壊点荷重の80%での伸びを示す。これらの観察からストリップの幅に沿って機械的性質の良好な均質性があることが結論付けられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明による冷却装置の断面図を概略的に示す。
【図2】本発明の装置での鋼ストリップ上に水を噴霧するために意図された穴の配置を概略的に示す。
【図3】本発明による冷却装置の熱的性能をグラフで示す。
【図4】鋼ストリップの平面度に関して前記装置の性能を示す。
【図5】鋼ストリップの機械的性質の均質性における冷却均一性の影響力を示し、二相系の鋼に関する。
【図6】鋼ストリップの機械的性質の均質性についての冷却均一性の影響力を示し、多相鋼系の鋼に関する。
【図7】図5及び6に関する試験を実行するためにストリップの幅の関数として取った試料の種々の位置を概略的に示す。
【図8】平面度指数を計算可能とするパラメーターを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ストリップ(2)、好ましくは鋼ストリップの形の平坦製品の連続焼鈍処理時のクエンチング操作のための冷却装置であって、前記装置が:
− 本質的に垂直な、上昇または下降経路で設けられており;
− 溢流せき(4)を含み、この溢流せき内に一連のチューブ(1)が完全に浸漬されかつストリップ(2)の各側に沿って多かれ少なかれ垂直にかつ対称的に積み重ねられており、一連のチューブのそれぞれがスリットまたは一連の穴を通して本質的に水平な乱流ジェットの形の冷却流体をストリップ上に噴出し;
− その下部に封止手段(3)を備えている;
ものにおいて、
ストリップ(2)の同じ側に設けられたいずれの二つの連続チューブ(1)も冷却流体の排出のために全てのチューブ(1)に対して同一の隙間(B)により分離されており、前記隙間(B)に対応する排出通路内の流れの損失を最小とするためにストリップの表面の平方メートル当たりかつ時間当たりの立方メートルで表した冷却流体の比流量の所定値に前記隙間(B)が選ばれていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
チューブ(1)の背部に設けられた溢流せき(4)の壁がチューブ(1)の幅に少なくとも等しい幅を持ち、チューブ(1)の背部に関するこの壁の水平距離が溢流せき(4)の存在に起因する流れの損失が二つの連続チューブ(1)間の隙間(B)に起因する流れの損失の5%未満であるように選ばれることを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
冷却流体の比流速がストリップの表面当たりかつm当たりかつ時間当たり250〜1000mであることを特徴とする請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
隙間(B)に起因する流れの損失が150mm水柱未満であることを特徴とする請求項1,2または3に記載の装置。
【請求項5】
各チューブ(1)の端部とストリップ(2)の間の距離(A)が全てのチューブに対し同一であり、かつ20mm〜200mmであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
各チューブの噴出速度(VJET)が次の基準をそれぞれ満たす:
− 穴の場合は、

− スリットの場合は、

ここでAはチューブとストリップの間の距離を表し、dは穴の直径またはスリットの厚さを表す、
ことを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
冷却流体が50℃未満の温度に維持された液状水であることを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の装置。
【請求項8】
装置が垂直上昇経路で設けられているが、多かれ少なかれ沸点にもたらされた水のタンクにより直接前置されていることを特徴とする請求項1から7のいずれか一つに記載の装置。
【請求項9】
処理される平坦な金属製品が0.1mm〜10mmの厚さを持つことを特徴とする請求項1から8のいずれか一つに記載の装置。
【請求項10】
処理される平坦な金属製品が0.25m/秒〜20m/秒の移動速度を持つことを特徴とする請求項1から9のいずれか一つに記載の装置。
【請求項11】
冷却チューブ(1)が、噴出速度の分布が下部チューブの幅に依存する噴出の最大速度(Vmax)と最小速度(Vmin)の間の相対差(Vmax−Vmin/Vmax)が5%未満であるようなものであるような寸法で作られていることを特徴とする請求項1から10のいずれか一つに記載の装置。
【請求項12】
チューブの通過のための断面と、そのチューブの自由噴霧断面、すなわちスリットの面積または穴の合計面積、との間の比が1を越えることを特徴とする請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記チューブ(1)が長方形断面を持つことを特徴とする請求項1から12のいずれか一つに記載の装置。
【請求項14】
長方形断面のある辺の隣接辺に対する比が好ましくは0.1〜10であることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項15】
チューブの厚さが穴の直径またはスリットの厚さの0.25〜10倍であり、チューブの厚さと穴の直径との間の比が好ましくは2/3に等しいことを特徴とする請求項13または14に記載の装置。
【請求項16】
前記封止手段(3)がストリップ(2)の通過と、溢流せき(4)から下向きの洩れを最小値に限定する流れの損失の創出との両方を可能とする二対のローラーを持つロックを含むことを特徴とする請求項1から15のいずれか一つに記載の装置。
【請求項17】
封止手段(3)がローラー間に流体を注入するための手段をさらに含み、その流体の圧力及び/または温度が制御されることができることを特徴とする請求項16に記載の装置。
【請求項18】
上部チューブ(1)がブロック(5)を備えており、そのブロックの高さが溢流せきの水の膜の厚さ(H)と、最大流速でのチューブ間の流れの損失に相当する水柱の高さ(ΔH)との合計に少なくとも等しいことを特徴とする請求項1から17のいずれか一つに記載の装置。
【請求項19】
金属ストリップ、好ましくは鋼ストリップの形の平坦製品の連続焼鈍処理時のクエンチング方法において、それが請求項1から18のいずれか一つに記載の装置で実施して金属製品の表面当たり1000kW/m〜10000kW/mの比冷却動力を達成することを特徴とする方法。
【請求項20】
装置に入るときのストリップの温度が350℃〜750℃であり、出るときの温度が50℃〜450℃、好ましくは50℃〜100℃または350℃〜450℃であることを特徴とする請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−512431(P2007−512431A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540104(P2006−540104)
【出願日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【国際出願番号】PCT/BE2004/000167
【国際公開番号】WO2005/054524
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(591000986)アルセロール フランス (9)
【氏名又は名称原語表記】ARCELOR France
【Fターム(参考)】