鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置と、これを用いた鍛造リングの製造方法
【課題】従来の温間・熱間鍛造における成形限界域を拡張させ、既存設備で大型ワークの成形と品質精度向上の実現をする。
【解決手段】インナーパンチ1に設けられている窪み101でビレットの上端面を拘束すると共に、カウンターパンチ13とダイ12との間に形成される段差でビレットの下端面を拘束しながら、プレスを作動させてビレットの据込と押込を1ストロークで行う据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]を行い、次いで填圧をかけながら成形して、略皿状の成形体を得、次いで前記成形体の内側部分を抜く目抜工程を行う。
【解決手段】インナーパンチ1に設けられている窪み101でビレットの上端面を拘束すると共に、カウンターパンチ13とダイ12との間に形成される段差でビレットの下端面を拘束しながら、プレスを作動させてビレットの据込と押込を1ストロークで行う据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]を行い、次いで填圧をかけながら成形して、略皿状の成形体を得、次いで前記成形体の内側部分を抜く目抜工程を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置と、これを用いた鍛造リングの製造方法と、に関し、詳しくはベアリング用部品などとして用いられる鍛造リングを製造するための温間鍛造プレス装置と、これを用いた高品質な鍛造リングの製造方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造には、冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造の3種がある。
このうち、冷間鍛造は、常温で行うものであり、そのため大型プレスを必要とする。また、熱間鍛造は、1100〜1200℃という高温域で行うため、複雑な形状のものや大型鍛造品を製造できることから主流となっている。しかしながら、複雑な形状のものや大型鍛造品を製造できる反面、大きな熱エネルギーを必要とするばかりか、削りしろ、つまりムダが多い。
温間鍛造は、熱間鍛造に比べてエネルギー的には良好であり、よりCO2の削減を図ることができるが、熱間鍛造に比べてより大きなパワーが必要となり、大型の製品を製造するのが難しい。
このように、冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造には、それぞれ一長一短がある。
しかしながら、より大型の製品を製造することができれば、温間鍛造は地球環境には一番優しいものといえる。
【0003】
このような温間鍛造によるブランクの製造は、従来、据込、押込、目抜の3工程により行われている。
この工法では、成形に3台の鍛造プレスを要し、前記工程内ではビレット(billet)重量、ブランク外径などの製品サイズによる荷重的制約から、プレスの許容能力に応じた成形限界域が制限されてきた。
さらに、ビレット端面のバリ等は、据込、押込時に、上下端面の外周部拡径によるバリ切れ発生や、ビレット端面の突起部が型当たり初期に径方向に飛び出すz部バリといった問題を誘発させ、品質に悪影響をもたらしている。
この問題を解決するために、例えばブランク成形後に、外・内径に発生したキズを旋削加工で除去し、又は冷間鍛造後に、製品の外径及び内径を旋削することで対策を講じてきたが、煩雑であるばかりか、コスト高ともなるものであった。
【0004】
上述したとおり、従来は、プレスの許容能力に応じて成形限界域が制限されていたために、より大型ワークを成形する際は、それに応じたプレスの能力仕様を考慮しなければならなかった。
しかしながら、単にプレスを大型化させ、より大型ワークの成形を旧工法で行えば、ビレット端面の外周部拡径はさらに顕著にみられ、前記品質問題のさらなる悪化が懸念されており、その解決が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、既存設備で大型ワークの成形と品質精度向上の実現を目的とするものである。
従来の方法では、据込、押込、目抜の3工程をそれぞれ1工程ずつ行っていたが、据込工程と押込工程を1ストロークで完成させるUB(Ultra Backward)成形を行うことができることから、工程の短縮を図ることを目的とするものである。
また、本発明は、ビレット端面バリの影響を抑え、ブランク品質、つまり鍛造品の品質の向上を目的とするものである。
即ち、バリの残り跡(バリ残り)が製品中にあることを防止することを目的とするものである。
従って、本発明は、実用上十分な品質精度を確保しつつ、より大型品の成形が可能な製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、インナーパンチ及びアウターパンチを備えた上金型と、カウンターパンチ及びその周囲にダイを備えた下金型と、を有する鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置であって、前記インナーパンチの先端の略中央部に窪みを設けると共に、前記アウターパンチを可動式とし、かつ、前記カウンターパンチよりダイが高くなるように段差をつけて配置すると共に、前記ダイとこれを支持するプレートとの間に隙間を設けつつバネを配置したことを特徴とする、鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を用い、前記インナーパンチに設けられている窪みでビレットの上端面を拘束すると共に、前記カウンターパンチとダイとの間に形成される段差でビレットの下端面を拘束しながら、プレスを作動させてビレットの据込と押込を1ストロークで行う据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]を行い、次いで填圧をかけながら成形して、略皿状の成形体を得、次いで前記成形体の内側部分を抜く目抜工程を行うことを特徴とする、鍛造リングの製造方法を提供するものである。
【0007】
本発明は据込時におけるビレット両端面拘束手段と、押込時の背圧付加を同時に行う成形を主な特徴とする。
即ち、パンチとダイの中央部に窪みを設けた形とし、その窪みの中にビレットの両端面を拘束させたまま成形を行うことで、成形途中のビレット端面の広がりを抑える。本発明の方法によれば、従来よりもビレットとパンチ及びダイにかかる金型接触面積を半減させた据込ができるため、成形荷重を減らすことができる。
また、押込時に背圧成形を行うことにより、背圧による密閉率を低下させた成形で、ブランクのダレやヒケを抑えることができる。
この据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]は、据込と押込を同時に行うため、成形エネルギーがプレス能力の範囲内であれば、従来の3工程から2工程で成形が可能になり、これを超える場合には、ビレット径を大きくするか、或いは予め予備据込を行うことで、プレス能力の範囲内にエネルギーを抑えて成形すればよい。
【0008】
そして、ビレット両端面拘束手段は、端面部の面積を一定に保ちながら据込を行うため、従来生じていた型接触冷却部の引張応力によるバリの発生や、Z部のバリを抜き目部分に拘束させたまま成形し、抜き目として廃却するため、ブランク品質が向上する。
【0009】
また、従来対比重量増、即ち、1/dが大きいビレットは、切断時の倒れが小さいため、切断品質の高いビレットで、より大型ワークの成形が可能になる。
さらに、両端面拘束は、ビレットとパンチ及びダイにかかる金型接触面積を半減させた据込が行えるため、成形荷重を低減させるだけでなく、押込の背圧成形によって、実用上十分な精度を確保させたまま、大型ワークの成形が可能になる。
【0010】
この成形において、ワークにかかる背圧付加のタイミングは、据込が完了した時点で行うことが好ましい。
また、押込断面減少率が40%以下の製品は、据込外径が略型内壁に接するまでは背圧力を2倍以上に多くし、内壁に接してからは通常の背圧力とすることが必要である。
これにより、ワークの外径や内径部に生じるダレやヒケの影響を最小限に抑制させ、製品精度向上が期待できる。
また、ワークに付加する背圧力は、成形するワークの形状、即ち、ワークの断面減少率や幅等によって適切な付加荷重は異なるが、概ね10t〜20t程度である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、据込・押込を1ストロークで完成させ、従来の既存設備でより大型品の成形を可能にする。
また、ビレット端面バリの影響を抑え、ブランク品質を向上させることができる。
即ち、本発明によれば、既存設備で大型ワークの成形と品質精度の向上を図ることができる。
従来の方法では、据込、押込、目抜の3工程をそれぞれ1工程ずつ行っていたが、本発明の方法によれば、据込工程と押込工程を一緒に行うことができることから、工程の短縮が図られる。また、本発明の方法によれば、同じパワーであれば、より大きな製品を製造することが可能となる。
さらに、本発明は、ビレット端面バリの影響を抑え、ブランク品質、つまり鍛造品の品質の向上を図ることができる。
即ち、バリの残り跡(バリ残り)が製品中にあることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
請求項1に係る本発明は、鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置に関し、インナーパンチ及びアウターパンチを備えた上金型と、カウンターパンチ及びその周囲にダイを備えた下金型と、を有する鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置であって、前記インナーパンチの先端の略中央部に窪みを設けると共に、前記アウターパンチを可動式とし、かつ、前記カウンターパンチよりダイが高くなるように段差をつけて配置すると共に、前記ダイとこれを支持するプレートとの間に隙間を設けつつバネを配置したことを特徴とするものである。
請求項2に係る本発明は、鍛造リング(ブランク)の製造方法に関し、請求項1記載の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を用い、前記インナーパンチに設けられている窪みでビレットの上端面を拘束すると共に、前記カウンターパンチとダイとの間に形成される段差でビレットの下端面を拘束しながら、プレスを作動させてビレットの据込と押込を1ストロークで行う据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]を行い、次いで填圧をかけながら成形して、略皿状(略カップ状)の成形体を得、次いで前記成形体の内側部分を抜く目抜工程を行うことを特徴とするものである。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜4は、本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の一形態とその動作を示す説明図である。
次に、図5〜15は、本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を順に示す、一部切り抜き説明図である。
また、図16は、本発明の方法により得られた鍛造リングの一形態を示す斜視図である。
【0014】
上金型Aは、主にインナーパンチ1と、アウターパンチ2で形成されている。インナーパンチ1の先端部には、ビレットXの上端面を拘束させるための窪み101が設けられており、インナーパンチ1とアウターパンチ2は、インナーパンチホルダー3とアウターパンチホルダー4とによって、それぞれ支持されている。窪み101の深さは、通常、2mm程度あればよいが、これに限定されるものではない。
本発明においては、この窪み101の入り口部分には、図17に示すように、テーパーがつけられている。テーパーの角度は、製品に合った任意で、例えば30〜45度くらいが好ましい。また、テーパーの両角にはアールが設けられている。アールは、0.5〜3mm程度つければよい。このようなテーパーとアールにより、成形時の流れ(メタルフロー)がよくなり、クラックを防止することができる。
なお、ビレットの大きさは、用いるプレスの能力等に応じて適宜選定すればよい。
【0015】
ワークの外径が、ダイ11に接触後、背圧付加を伴った後方押出しが行えるように、アウターパンチ2は可動式とされている。
具体的には、アウターパンチ2の上部に、スペーサー5、ガイドプレート6、プレート7を設けて、ガイドプレート6の内部に可動式プレート10を挿入する。
そして、填圧付加ピン9が受ける背圧付加を可動式プレート10及び3〜4本の填圧付加伝達ピン8を介して、アウターパンチ2へ均等に伝達する構成となっている。
【0016】
また、下金型Bは、インサート11、ダイ12と、カウンターパンチ13及びスプリングプレート14によって形成されている。
前記カウンターパンチよりダイが高くなるように段差をつけて配置されており、ダイ12とスプリングプレート14の間には、隙間を設けつつバネ15を設け、成形開始前は、バネによって、ダイ12を浮かせた状態にしている。段差は4mm前後、隙間は2mm前後あればよいが、いずれもこれに限定されるものではない。バネ15を用いる代わりに、油圧又は空気圧を用いて、ダイ12を作動させることもできる。
なお、ダイ12とカウンターパンチ13とは、後述する別形態のように、カウンターパンチ13をカウンターパンチ13Aとカウンターパンチ13Bとに分割したものと見ることもできる。
【0017】
本発明の方法では、まずインナーパンチに設けられている窪み101でビレットの上端面を拘束すると共に、カウンターパンチ13とダイ12との間に形成される段差でビレットの下端面を拘束しながら、プレスを作動させてビレットの据込と押込を1ストロークで行う、据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]を行い、次いで填圧をかけながら成形(背圧成形)する。
即ち、ビレットの据込と押込を1ストロークで行う、据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]を開始する(図1並びに図5参照)。
そして、成形が始まり、ダイ12がワークの荷重を受けるに従って、バネ15が縮み、成形過程でダイ12及びスプリングプレート14が一体となる機構になっている(図2〜5参照)。
次いで填圧をかけながら成形(背圧成形)して、略皿状の成形体を得る(図6〜15並びに図16参照)。
填圧は、10〜20t程度かければよい。
なお、この工程では、窪みの部分にしか荷重がかかっていないので、少ない荷重で潰すことができる。つまり、荷重が低い状態で潰すことができる。従って、同じパワーであれば、より大きな製品を製造することが可能となる。
【0018】
次いで、前記成形体の内側部分を抜く目抜工程を行い、目的とする鍛造リング(ブランク)を得る。
ここでビレット端面にあるバリは、UB成形の結果、その位置がより内側(中央より)に移動し、目抜工程によりカットされる、成形体の内側部分にバリの残り跡として存在するようになる。
従って、本発明によれば、バリの残り跡のない美麗な鍛造リング(ブランク)を得ることができる。
図18は、目抜工程の模様を示す、一部切り抜き説明図である。また、図19は、そのようにして得られた鍛造リング(ブランク)aと、抜目bを示す一部切り抜き説明図である。図中、符号20はパンチであり、符号21はダイスである。
このようにして得られる鍛造リング(ブランク)は、冷間鍛造工程を経てベアリング用部品として、種々の形状に成形される。
【0019】
このように、本実施の形態の工法によれば、上記従来例よりも、ワーク品質を高めることができる。
【0020】
なお、上記実施の形態においては、ビレットを拘束させる手段として、インナーパンチ1に、窪みを設け、後方押出し時にアウターパンチ2が可動する構成を説明したが、インナーパンチ1を分割して、下型を形成するダイ12とカウンターパンチ13及びスプリングプレート14と同様な形態にさせて、スペーサー5にバネ機構を設けた成形を行ってもよい。
【0021】
以下、インナーパンチ1を分割した形態について、図20〜23により説明する。図20〜23は、本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の別形態とその動作を示す説明図である。但し、図20〜23では、主にインナーパンチ、アウターパンチ、カウンターパンチ周辺のみを示しており、プレートやダイなど、図1〜4と同様な部分については省略してある。
本形態では、インナーパンチ1をインナーパンチ1Aとインナーパンチ1Bとに分割し、インナーパンチ1Bにバネ機構(バネ16)とシリンダー17を設けている。なお、アウターパンチ2にはシリンダー18を設けている。
また、本形態では、カウンターパンチ13とダイ12の代わりに、ダイ12を設けることなく、カウンターパンチ13をカウンターパンチ13Aとカウンターパンチ13Bとに分割したものとして同じ役割を果たしている。
そして、このカウンターパンチ13Bにバネ機構(バネ15)とシリンダー17を設けている。
このようなものとすることにより、請求項2に係る方法で成形されたビレット端面拘束部の突起をなくすことができ、これにより、突起部の材料歩留まりを向上させることができる。即ち、請求項2に係る方法では、図22までの段階にしかならないが、本形態によれば、サーボプレスを用いることで、図23のように、突起部をフラットに成形させることができる。
【0022】
以下、この点について詳細に説明する。
まず、型の中心にビレットXを位置決めする凹みを、インナーパンチ1Aとインナーパンチ1B、及びカウンターパンチ13Aとカウンターパンチ13Bとで形成させる(図20参照)。
次に、ビレットXの両端面をこの凹みで固定して、据込を開始する。
この過程では、ビレットX端面の平行度不良による成形品形状不良がなく、左右上下対称の据込品が得られる(図21参照)。
据込工程が完了すると同時に、カップ上の後方押出成形域(押込)に入るが、この状態まで、インナーパンチ1Aとインナーパンチ1B、及びカウンターパンチ13Aとカウンターパンチ13Bの段差は維持され、ビレット両端の径方向拡大を防止している。なお、ここまでは、前記形態における両端拘束の説明と同様である。
成形完了時には、本来インナーパンチ1Aとインナーパンチ1B、及びカウンターパンチ13Aとカウンターパンチ13Bとによるビレット端面拘束部の段差が中央に残るが(図22参照)、成形完了直前(下死点付近)で、シリンダー17及びシリンダー18の油圧力を抜くことによって、成形完了時にはフラットな底部を成形させることができる(図23参照)。これにより、材料歩留まりを10〜15%改善することができる。
【0023】
また、上記実施の形態において、バネ機構について説明したが、本機構の目的は、拘束量の増加であるから、成形開始前にバネによって、ダイ12を浮かせる形態にしてあればよい。
即ち、本工法に用いるバネの本数、及び強度は限定しない。
しかしながら、例えばワークの張り付きでワークが排出困難となった場合、バネの弾性を利用して、ダイ12にノックアウトの役割を持たせられるよう、或る程度の弾性強度を持たせた方が好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
図1〜4に示す如き鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を用い、図5〜15に示すようにして、大型鍛造リングの製造を行った。
電動機は出力75kWと11kWの2台を用いた。最大加工重量は1000grであり、必要エネルギーは1000ton・cmであり、spmは40であった。
なお、プレスは1000tと80tの2台用い、最大径が100mmの鍛造リングを製造した。
得られた鍛造リングは、型接触冷却部の引張応力が発生しないため、据込バリは発生しなかった。また、端面の広がりを押さえて成形するため、z部は発生しなかった。
【0026】
比較例1
従来型の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を用い、据込、押込、目抜の3工程にて、大型鍛造リングの製造を行った。
電動機は出力100kWと75kWと11kWの3台を用いた。最大加工重量は1000grであり、必要エネルギーは1500ton・cmであり、spmは25であった。
なお、プレスは1200tと800tと80tの3台用い、最大径が100mmの鍛造リングを製造した。
得られた鍛造リングは、上下端面の外周部拡径によるバリ切れが発生した。また、ビレット端面の突起部が型当り初期に径方向に飛び出し、z部が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、据込・押込を1ストロークで完成させ、従来の既存設備でより大型品の成形を可能にする。
また、ビレット端面バリの影響を抑え、ブランク品質を向上させる事ができる。
従って、本発明は、鍛造リングの製造、ひいてはベアリング等の製造に有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の一形態とその動作を示す説明図である。
【図2】本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の一形態とその動作を示す説明図である。
【図3】本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の一形態とその動作を示す説明図である。
【図4】本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の一形態とその動作を示す説明図である。
【図5】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図6】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図7】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図8】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図9】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図10】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図11】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図12】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図13】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図14】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図15】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図16】本発明の方法により得られた鍛造リングの一形態を示す斜視図である。
【図17】インナーパンチの窪み部分の一形態を示す説明部である。
【図18】目抜工程の模様を示す、一部切り抜き説明図である。
【図19】目抜工程で得られた、鍛造リング(ブランク)aと、抜目bを示す一部切り抜き説明図である。
【図20】インナーパンチ1を分割した形態についての本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置とその動作を示す説明図である。
【図21】インナーパンチ1を分割した形態についての本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置とその動作を示す説明図である。
【図22】インナーパンチ1を分割した形態についての本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置とその動作を示す説明図である。
【図23】インナーパンチ1を分割した形態についての本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置とその動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
X ビレット
A 上金型
1 インナーパンチ
1A インナーパンチ1
1B インナーパンチ2
2 アウターパンチ
3 インナーパンチホルダー
4 アウターパンチホルダー
5 スペーサー
6 ガイドプレート
7 プレート
8 填圧付加伝達ピン8
9 填圧付加ピン
10 可動式プレート
B 下金型
11 インサート
12 ダイ
13 カウンターパンチ
13A カウンターパンチ1
13B カウンターパンチ2
14 スプリングプレート
15 バネ
16 バネ
17 シリンダー1
18 シリンダー2
19 シリンダー3
20 パンチ
21 ダイス
101 インナーパンチの窪み
a 鍛造リング(ブランク)
b 抜目
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置と、これを用いた鍛造リングの製造方法と、に関し、詳しくはベアリング用部品などとして用いられる鍛造リングを製造するための温間鍛造プレス装置と、これを用いた高品質な鍛造リングの製造方法と、に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造には、冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造の3種がある。
このうち、冷間鍛造は、常温で行うものであり、そのため大型プレスを必要とする。また、熱間鍛造は、1100〜1200℃という高温域で行うため、複雑な形状のものや大型鍛造品を製造できることから主流となっている。しかしながら、複雑な形状のものや大型鍛造品を製造できる反面、大きな熱エネルギーを必要とするばかりか、削りしろ、つまりムダが多い。
温間鍛造は、熱間鍛造に比べてエネルギー的には良好であり、よりCO2の削減を図ることができるが、熱間鍛造に比べてより大きなパワーが必要となり、大型の製品を製造するのが難しい。
このように、冷間鍛造、温間鍛造、熱間鍛造には、それぞれ一長一短がある。
しかしながら、より大型の製品を製造することができれば、温間鍛造は地球環境には一番優しいものといえる。
【0003】
このような温間鍛造によるブランクの製造は、従来、据込、押込、目抜の3工程により行われている。
この工法では、成形に3台の鍛造プレスを要し、前記工程内ではビレット(billet)重量、ブランク外径などの製品サイズによる荷重的制約から、プレスの許容能力に応じた成形限界域が制限されてきた。
さらに、ビレット端面のバリ等は、据込、押込時に、上下端面の外周部拡径によるバリ切れ発生や、ビレット端面の突起部が型当たり初期に径方向に飛び出すz部バリといった問題を誘発させ、品質に悪影響をもたらしている。
この問題を解決するために、例えばブランク成形後に、外・内径に発生したキズを旋削加工で除去し、又は冷間鍛造後に、製品の外径及び内径を旋削することで対策を講じてきたが、煩雑であるばかりか、コスト高ともなるものであった。
【0004】
上述したとおり、従来は、プレスの許容能力に応じて成形限界域が制限されていたために、より大型ワークを成形する際は、それに応じたプレスの能力仕様を考慮しなければならなかった。
しかしながら、単にプレスを大型化させ、より大型ワークの成形を旧工法で行えば、ビレット端面の外周部拡径はさらに顕著にみられ、前記品質問題のさらなる悪化が懸念されており、その解決が求められていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、既存設備で大型ワークの成形と品質精度向上の実現を目的とするものである。
従来の方法では、据込、押込、目抜の3工程をそれぞれ1工程ずつ行っていたが、据込工程と押込工程を1ストロークで完成させるUB(Ultra Backward)成形を行うことができることから、工程の短縮を図ることを目的とするものである。
また、本発明は、ビレット端面バリの影響を抑え、ブランク品質、つまり鍛造品の品質の向上を目的とするものである。
即ち、バリの残り跡(バリ残り)が製品中にあることを防止することを目的とするものである。
従って、本発明は、実用上十分な品質精度を確保しつつ、より大型品の成形が可能な製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る本発明は、インナーパンチ及びアウターパンチを備えた上金型と、カウンターパンチ及びその周囲にダイを備えた下金型と、を有する鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置であって、前記インナーパンチの先端の略中央部に窪みを設けると共に、前記アウターパンチを可動式とし、かつ、前記カウンターパンチよりダイが高くなるように段差をつけて配置すると共に、前記ダイとこれを支持するプレートとの間に隙間を設けつつバネを配置したことを特徴とする、鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、請求項1記載の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を用い、前記インナーパンチに設けられている窪みでビレットの上端面を拘束すると共に、前記カウンターパンチとダイとの間に形成される段差でビレットの下端面を拘束しながら、プレスを作動させてビレットの据込と押込を1ストロークで行う据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]を行い、次いで填圧をかけながら成形して、略皿状の成形体を得、次いで前記成形体の内側部分を抜く目抜工程を行うことを特徴とする、鍛造リングの製造方法を提供するものである。
【0007】
本発明は据込時におけるビレット両端面拘束手段と、押込時の背圧付加を同時に行う成形を主な特徴とする。
即ち、パンチとダイの中央部に窪みを設けた形とし、その窪みの中にビレットの両端面を拘束させたまま成形を行うことで、成形途中のビレット端面の広がりを抑える。本発明の方法によれば、従来よりもビレットとパンチ及びダイにかかる金型接触面積を半減させた据込ができるため、成形荷重を減らすことができる。
また、押込時に背圧成形を行うことにより、背圧による密閉率を低下させた成形で、ブランクのダレやヒケを抑えることができる。
この据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]は、据込と押込を同時に行うため、成形エネルギーがプレス能力の範囲内であれば、従来の3工程から2工程で成形が可能になり、これを超える場合には、ビレット径を大きくするか、或いは予め予備据込を行うことで、プレス能力の範囲内にエネルギーを抑えて成形すればよい。
【0008】
そして、ビレット両端面拘束手段は、端面部の面積を一定に保ちながら据込を行うため、従来生じていた型接触冷却部の引張応力によるバリの発生や、Z部のバリを抜き目部分に拘束させたまま成形し、抜き目として廃却するため、ブランク品質が向上する。
【0009】
また、従来対比重量増、即ち、1/dが大きいビレットは、切断時の倒れが小さいため、切断品質の高いビレットで、より大型ワークの成形が可能になる。
さらに、両端面拘束は、ビレットとパンチ及びダイにかかる金型接触面積を半減させた据込が行えるため、成形荷重を低減させるだけでなく、押込の背圧成形によって、実用上十分な精度を確保させたまま、大型ワークの成形が可能になる。
【0010】
この成形において、ワークにかかる背圧付加のタイミングは、据込が完了した時点で行うことが好ましい。
また、押込断面減少率が40%以下の製品は、据込外径が略型内壁に接するまでは背圧力を2倍以上に多くし、内壁に接してからは通常の背圧力とすることが必要である。
これにより、ワークの外径や内径部に生じるダレやヒケの影響を最小限に抑制させ、製品精度向上が期待できる。
また、ワークに付加する背圧力は、成形するワークの形状、即ち、ワークの断面減少率や幅等によって適切な付加荷重は異なるが、概ね10t〜20t程度である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、据込・押込を1ストロークで完成させ、従来の既存設備でより大型品の成形を可能にする。
また、ビレット端面バリの影響を抑え、ブランク品質を向上させることができる。
即ち、本発明によれば、既存設備で大型ワークの成形と品質精度の向上を図ることができる。
従来の方法では、据込、押込、目抜の3工程をそれぞれ1工程ずつ行っていたが、本発明の方法によれば、据込工程と押込工程を一緒に行うことができることから、工程の短縮が図られる。また、本発明の方法によれば、同じパワーであれば、より大きな製品を製造することが可能となる。
さらに、本発明は、ビレット端面バリの影響を抑え、ブランク品質、つまり鍛造品の品質の向上を図ることができる。
即ち、バリの残り跡(バリ残り)が製品中にあることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
請求項1に係る本発明は、鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置に関し、インナーパンチ及びアウターパンチを備えた上金型と、カウンターパンチ及びその周囲にダイを備えた下金型と、を有する鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置であって、前記インナーパンチの先端の略中央部に窪みを設けると共に、前記アウターパンチを可動式とし、かつ、前記カウンターパンチよりダイが高くなるように段差をつけて配置すると共に、前記ダイとこれを支持するプレートとの間に隙間を設けつつバネを配置したことを特徴とするものである。
請求項2に係る本発明は、鍛造リング(ブランク)の製造方法に関し、請求項1記載の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を用い、前記インナーパンチに設けられている窪みでビレットの上端面を拘束すると共に、前記カウンターパンチとダイとの間に形成される段差でビレットの下端面を拘束しながら、プレスを作動させてビレットの据込と押込を1ストロークで行う据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]を行い、次いで填圧をかけながら成形して、略皿状(略カップ状)の成形体を得、次いで前記成形体の内側部分を抜く目抜工程を行うことを特徴とするものである。
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜4は、本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の一形態とその動作を示す説明図である。
次に、図5〜15は、本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を順に示す、一部切り抜き説明図である。
また、図16は、本発明の方法により得られた鍛造リングの一形態を示す斜視図である。
【0014】
上金型Aは、主にインナーパンチ1と、アウターパンチ2で形成されている。インナーパンチ1の先端部には、ビレットXの上端面を拘束させるための窪み101が設けられており、インナーパンチ1とアウターパンチ2は、インナーパンチホルダー3とアウターパンチホルダー4とによって、それぞれ支持されている。窪み101の深さは、通常、2mm程度あればよいが、これに限定されるものではない。
本発明においては、この窪み101の入り口部分には、図17に示すように、テーパーがつけられている。テーパーの角度は、製品に合った任意で、例えば30〜45度くらいが好ましい。また、テーパーの両角にはアールが設けられている。アールは、0.5〜3mm程度つければよい。このようなテーパーとアールにより、成形時の流れ(メタルフロー)がよくなり、クラックを防止することができる。
なお、ビレットの大きさは、用いるプレスの能力等に応じて適宜選定すればよい。
【0015】
ワークの外径が、ダイ11に接触後、背圧付加を伴った後方押出しが行えるように、アウターパンチ2は可動式とされている。
具体的には、アウターパンチ2の上部に、スペーサー5、ガイドプレート6、プレート7を設けて、ガイドプレート6の内部に可動式プレート10を挿入する。
そして、填圧付加ピン9が受ける背圧付加を可動式プレート10及び3〜4本の填圧付加伝達ピン8を介して、アウターパンチ2へ均等に伝達する構成となっている。
【0016】
また、下金型Bは、インサート11、ダイ12と、カウンターパンチ13及びスプリングプレート14によって形成されている。
前記カウンターパンチよりダイが高くなるように段差をつけて配置されており、ダイ12とスプリングプレート14の間には、隙間を設けつつバネ15を設け、成形開始前は、バネによって、ダイ12を浮かせた状態にしている。段差は4mm前後、隙間は2mm前後あればよいが、いずれもこれに限定されるものではない。バネ15を用いる代わりに、油圧又は空気圧を用いて、ダイ12を作動させることもできる。
なお、ダイ12とカウンターパンチ13とは、後述する別形態のように、カウンターパンチ13をカウンターパンチ13Aとカウンターパンチ13Bとに分割したものと見ることもできる。
【0017】
本発明の方法では、まずインナーパンチに設けられている窪み101でビレットの上端面を拘束すると共に、カウンターパンチ13とダイ12との間に形成される段差でビレットの下端面を拘束しながら、プレスを作動させてビレットの据込と押込を1ストロークで行う、据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]を行い、次いで填圧をかけながら成形(背圧成形)する。
即ち、ビレットの据込と押込を1ストロークで行う、据込・押込連続鍛造成形[UB(Ultra Backward)成形]を開始する(図1並びに図5参照)。
そして、成形が始まり、ダイ12がワークの荷重を受けるに従って、バネ15が縮み、成形過程でダイ12及びスプリングプレート14が一体となる機構になっている(図2〜5参照)。
次いで填圧をかけながら成形(背圧成形)して、略皿状の成形体を得る(図6〜15並びに図16参照)。
填圧は、10〜20t程度かければよい。
なお、この工程では、窪みの部分にしか荷重がかかっていないので、少ない荷重で潰すことができる。つまり、荷重が低い状態で潰すことができる。従って、同じパワーであれば、より大きな製品を製造することが可能となる。
【0018】
次いで、前記成形体の内側部分を抜く目抜工程を行い、目的とする鍛造リング(ブランク)を得る。
ここでビレット端面にあるバリは、UB成形の結果、その位置がより内側(中央より)に移動し、目抜工程によりカットされる、成形体の内側部分にバリの残り跡として存在するようになる。
従って、本発明によれば、バリの残り跡のない美麗な鍛造リング(ブランク)を得ることができる。
図18は、目抜工程の模様を示す、一部切り抜き説明図である。また、図19は、そのようにして得られた鍛造リング(ブランク)aと、抜目bを示す一部切り抜き説明図である。図中、符号20はパンチであり、符号21はダイスである。
このようにして得られる鍛造リング(ブランク)は、冷間鍛造工程を経てベアリング用部品として、種々の形状に成形される。
【0019】
このように、本実施の形態の工法によれば、上記従来例よりも、ワーク品質を高めることができる。
【0020】
なお、上記実施の形態においては、ビレットを拘束させる手段として、インナーパンチ1に、窪みを設け、後方押出し時にアウターパンチ2が可動する構成を説明したが、インナーパンチ1を分割して、下型を形成するダイ12とカウンターパンチ13及びスプリングプレート14と同様な形態にさせて、スペーサー5にバネ機構を設けた成形を行ってもよい。
【0021】
以下、インナーパンチ1を分割した形態について、図20〜23により説明する。図20〜23は、本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の別形態とその動作を示す説明図である。但し、図20〜23では、主にインナーパンチ、アウターパンチ、カウンターパンチ周辺のみを示しており、プレートやダイなど、図1〜4と同様な部分については省略してある。
本形態では、インナーパンチ1をインナーパンチ1Aとインナーパンチ1Bとに分割し、インナーパンチ1Bにバネ機構(バネ16)とシリンダー17を設けている。なお、アウターパンチ2にはシリンダー18を設けている。
また、本形態では、カウンターパンチ13とダイ12の代わりに、ダイ12を設けることなく、カウンターパンチ13をカウンターパンチ13Aとカウンターパンチ13Bとに分割したものとして同じ役割を果たしている。
そして、このカウンターパンチ13Bにバネ機構(バネ15)とシリンダー17を設けている。
このようなものとすることにより、請求項2に係る方法で成形されたビレット端面拘束部の突起をなくすことができ、これにより、突起部の材料歩留まりを向上させることができる。即ち、請求項2に係る方法では、図22までの段階にしかならないが、本形態によれば、サーボプレスを用いることで、図23のように、突起部をフラットに成形させることができる。
【0022】
以下、この点について詳細に説明する。
まず、型の中心にビレットXを位置決めする凹みを、インナーパンチ1Aとインナーパンチ1B、及びカウンターパンチ13Aとカウンターパンチ13Bとで形成させる(図20参照)。
次に、ビレットXの両端面をこの凹みで固定して、据込を開始する。
この過程では、ビレットX端面の平行度不良による成形品形状不良がなく、左右上下対称の据込品が得られる(図21参照)。
据込工程が完了すると同時に、カップ上の後方押出成形域(押込)に入るが、この状態まで、インナーパンチ1Aとインナーパンチ1B、及びカウンターパンチ13Aとカウンターパンチ13Bの段差は維持され、ビレット両端の径方向拡大を防止している。なお、ここまでは、前記形態における両端拘束の説明と同様である。
成形完了時には、本来インナーパンチ1Aとインナーパンチ1B、及びカウンターパンチ13Aとカウンターパンチ13Bとによるビレット端面拘束部の段差が中央に残るが(図22参照)、成形完了直前(下死点付近)で、シリンダー17及びシリンダー18の油圧力を抜くことによって、成形完了時にはフラットな底部を成形させることができる(図23参照)。これにより、材料歩留まりを10〜15%改善することができる。
【0023】
また、上記実施の形態において、バネ機構について説明したが、本機構の目的は、拘束量の増加であるから、成形開始前にバネによって、ダイ12を浮かせる形態にしてあればよい。
即ち、本工法に用いるバネの本数、及び強度は限定しない。
しかしながら、例えばワークの張り付きでワークが排出困難となった場合、バネの弾性を利用して、ダイ12にノックアウトの役割を持たせられるよう、或る程度の弾性強度を持たせた方が好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
図1〜4に示す如き鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を用い、図5〜15に示すようにして、大型鍛造リングの製造を行った。
電動機は出力75kWと11kWの2台を用いた。最大加工重量は1000grであり、必要エネルギーは1000ton・cmであり、spmは40であった。
なお、プレスは1000tと80tの2台用い、最大径が100mmの鍛造リングを製造した。
得られた鍛造リングは、型接触冷却部の引張応力が発生しないため、据込バリは発生しなかった。また、端面の広がりを押さえて成形するため、z部は発生しなかった。
【0026】
比較例1
従来型の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を用い、据込、押込、目抜の3工程にて、大型鍛造リングの製造を行った。
電動機は出力100kWと75kWと11kWの3台を用いた。最大加工重量は1000grであり、必要エネルギーは1500ton・cmであり、spmは25であった。
なお、プレスは1200tと800tと80tの3台用い、最大径が100mmの鍛造リングを製造した。
得られた鍛造リングは、上下端面の外周部拡径によるバリ切れが発生した。また、ビレット端面の突起部が型当り初期に径方向に飛び出し、z部が発生した。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明によれば、据込・押込を1ストロークで完成させ、従来の既存設備でより大型品の成形を可能にする。
また、ビレット端面バリの影響を抑え、ブランク品質を向上させる事ができる。
従って、本発明は、鍛造リングの製造、ひいてはベアリング等の製造に有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の一形態とその動作を示す説明図である。
【図2】本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の一形態とその動作を示す説明図である。
【図3】本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の一形態とその動作を示す説明図である。
【図4】本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置の一形態とその動作を示す説明図である。
【図5】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図6】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図7】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図8】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図9】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図10】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図11】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図12】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図13】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図14】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図15】本発明の鍛造リングの製造方法の一形態を示す、一部切り抜き説明図である。
【図16】本発明の方法により得られた鍛造リングの一形態を示す斜視図である。
【図17】インナーパンチの窪み部分の一形態を示す説明部である。
【図18】目抜工程の模様を示す、一部切り抜き説明図である。
【図19】目抜工程で得られた、鍛造リング(ブランク)aと、抜目bを示す一部切り抜き説明図である。
【図20】インナーパンチ1を分割した形態についての本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置とその動作を示す説明図である。
【図21】インナーパンチ1を分割した形態についての本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置とその動作を示す説明図である。
【図22】インナーパンチ1を分割した形態についての本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置とその動作を示す説明図である。
【図23】インナーパンチ1を分割した形態についての本発明の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置とその動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0029】
X ビレット
A 上金型
1 インナーパンチ
1A インナーパンチ1
1B インナーパンチ2
2 アウターパンチ
3 インナーパンチホルダー
4 アウターパンチホルダー
5 スペーサー
6 ガイドプレート
7 プレート
8 填圧付加伝達ピン8
9 填圧付加ピン
10 可動式プレート
B 下金型
11 インサート
12 ダイ
13 カウンターパンチ
13A カウンターパンチ1
13B カウンターパンチ2
14 スプリングプレート
15 バネ
16 バネ
17 シリンダー1
18 シリンダー2
19 シリンダー3
20 パンチ
21 ダイス
101 インナーパンチの窪み
a 鍛造リング(ブランク)
b 抜目
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーパンチ及びアウターパンチを備えた上金型と、カウンターパンチ及びその周囲にダイを備えた下金型と、を有する鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置であって、前記インナーパンチの先端の略中央部に窪みを設けると共に、前記アウターパンチを可動式とし、かつ、前記カウンターパンチよりダイが高くなるように段差をつけて配置すると共に、前記ダイとこれを支持するプレートとの間に隙間を設けつつバネを配置したことを特徴とする、鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置。
【請求項2】
請求項1記載の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を用い、前記インナーパンチに設けられている窪みでビレットの上端面を拘束すると共に、前記カウンターパンチとダイとの間に形成される段差でビレットの下端面を拘束しながら、プレスを作動させて、ビレットの据込と押込を1ストロークで行う据込・押込連続鍛造成形を行い、次いで填圧をかけながら成形して、略皿状の成形体を得、次いで前記成形体の内側部分を抜く目抜工程を行うことを特徴とする、鍛造リングの製造方法。
【請求項1】
インナーパンチ及びアウターパンチを備えた上金型と、カウンターパンチ及びその周囲にダイを備えた下金型と、を有する鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置であって、前記インナーパンチの先端の略中央部に窪みを設けると共に、前記アウターパンチを可動式とし、かつ、前記カウンターパンチよりダイが高くなるように段差をつけて配置すると共に、前記ダイとこれを支持するプレートとの間に隙間を設けつつバネを配置したことを特徴とする、鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置。
【請求項2】
請求項1記載の鍛造リング製造用温間鍛造プレス装置を用い、前記インナーパンチに設けられている窪みでビレットの上端面を拘束すると共に、前記カウンターパンチとダイとの間に形成される段差でビレットの下端面を拘束しながら、プレスを作動させて、ビレットの据込と押込を1ストロークで行う据込・押込連続鍛造成形を行い、次いで填圧をかけながら成形して、略皿状の成形体を得、次いで前記成形体の内側部分を抜く目抜工程を行うことを特徴とする、鍛造リングの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−238234(P2008−238234A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84486(P2007−84486)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(307008347)株式会社 栗林製作所 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(307008347)株式会社 栗林製作所 (5)
【Fターム(参考)】
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