説明

鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置

【課題】裏面鏡の連続生産において、裏止め塗膜塗布後、次いで鏡端縁部の縁塗りを、行った後、縁塗り塗膜がかすれる、縁塗り塗料が鏡端面に垂れることなく、縁塗り塗膜の均一塗布および膜厚制御が可能な鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置を提供する。
【解決手段】裏止め塗膜を被覆形成してなる鏡1を、裏止め塗膜を被覆形成してなる裏面側を上にしてコンベヤー上を搬送させつつ、該裏面側端縁部に上側より接触しつつ回転する塗布ロール2により、裏面側端縁部に縁塗り塗液を縁塗り塗装する鏡1の裏面側端縁部の縁塗り装置であって、連動回転する並接した塗液ピックアップロール3と調製ロール4と塗布ロール2からなる鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀鏡膜および金属膜の保護のために裏止め塗膜が被覆形成してなる鏡裏面側の端縁部に、縁塗り塗料を塗布し縁塗り塗膜を形成する鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置に関する。特に、裏止め塗膜を被覆形成し端部を面取り加工した鏡を、コンベヤー上に搬送し、連続して縁塗り塗料を塗布し縁塗り塗膜を形成する鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
姿見等に使われる汎用の鏡は、透明板状体であるガラス板にスプレー法で銀液を塗布し銀鏡反応により銀鏡膜を形成し、その上層に同様の手順で銅膜を形成し、さらに上層に銀鏡膜および銅膜保護のための裏止め塗膜をカーテンフローコート法で形成してなる。
【0003】
通常は、ガラス板を洗浄研磨した後、自動的、連続的に運ぶ装置であるコンベヤー上に搬送させつつ、スプレー法で、上面に銀が析出してなる銀境膜がガラス板に強固に付着するよう塩化スズ液を散布し、搬送されるガラス板に銀液を塗布し銀鏡反応により銀を析出させ銀鏡膜を形成し、その上層に同様の手順で銅膜を形成し、その上層に銀鏡膜および銅膜保護のために、カーテンフローコート法で裏止め塗料を塗布し焼き付け乾燥させた裏止め塗膜を被覆形成する。このように、鏡はガラス板上に、銀鏡膜、銅膜、裏止め塗膜を順次積層被覆してなる。
【0004】
しかしながら、銀鏡膜および銅膜保護ための裏止め塗膜を塗布したとしても、鏡の裏面端部の面取り加工を行うと、加工部に銀鏡膜および銀鏡膜を保護するための銅膜等の金属膜が露出するため、水分等と接触しやすく、銀鏡膜、金属膜が変質および変色しやすい。この変色は端部より内側に銀鏡膜および銅膜が侵食されることで広がり、縁シケ欠陥となる。尚、縁シケとは、鏡の切断面から腐食性物質が侵入し、銀鏡膜および銅膜を侵す腐食形態であり、多くが鏡の端に半円状または帯状に見られる。
【0005】
鏡は過酷な環境下や長期間使用するうちに、裏止め塗膜を通して水分や酸素の影響を受け、銀鏡膜、銅膜の界面において局部電池作用が生じ、先ず銀よりイオン化しやすい銅膜が腐食される犠牲防食作用により、銀境膜の腐食が抑制される。しかしながら、水分や酸素との接触が続けば最終的には銀膜の腐食まで進展する。尚、水道水中に存在する微量に存在する塩素がこの腐食を助長する。また、腐食は環境温度が高くなるほど進行が速い。
【0006】
よって、面取り加工部およびその内側近傍の鏡の裏面側端縁部には銀鏡膜、金属膜を保護するための縁塗り塗料を塗布する。特に、風呂、トイレ等、水分が接触しやすく腐食しやすい場所に使用する場合は、縁塗り塗料を鏡の端縁部に塗ることが好ましい。また、環境に優しいエコ仕様として、裏面鏡は裏止め塗膜に鉛顔料を使わないものに置き換わってきており、銀鏡膜保護のための銅膜も形成しない鏡へと移行することが予想され、裏面鏡の端縁部の上記縁塗りは重要となる。
【0007】
風呂、トイレ等の水分が接触しやすく腐食しやすい場所に使用する場合、鏡の耐食性能を高めるために、縁塗り塗液と同様の組成物からなる樹脂液を用いて鏡裏面全面にクリヤ塗装をすることも行われるが高価となる。そこで縁塗り塗料を、金属膜が露出し、または取り扱い時にキズが付きやすく腐食しやすい鏡の裏面側端縁部に幅広の縁塗り塗膜を設け、鏡の耐食性能をより高めることが好ましい。
【0008】
このような鏡用縁塗り塗液を塗布する装置は、種々提案されており、例えば、本出願人は、特許文献1に鏡の裏面を上側にして移送しつつ、塗料槽からの塗料を塗料供給ロール、塗料ガイド、塗布ロールを介して前記鏡の裏面側端縁部に導き塗装する鏡裏面端部の装置を開示した。
【0009】
また、特許文献2には、被塗装体の上に接して塗装用ローラーを配し、塗装用ローラーを壁材で囲み、塗装用ローラーの周面と壁材とにより塗料溜を形成し、その間隙より塗液をローラー周面に沿って流下させ被塗装体を塗装する装置で、さらにローラー周面に環状溝を刻成してなる塗装装置が開示されている。
【0010】
特許文献1および特許文献2は、いずれも鏡の裏面を上面とし、その端縁部を塗装する装置であり、縁塗り塗液が端面あるいは鏡表面側に垂れやすいという問題があった。
【0011】
特許文献1の鏡裏面端部の塗装装置は、幅広く均一に裏面側端縁部を塗装する上で好都合であるが、塗液の伝達部材が多く必ずしも簡易なものとはいえず、連続塗装に適さない。特許文献2の塗装装置は塗布ロールと壁材との間隙調整が容易でなく、所望厚みの塗膜を形成するのが困難で、特に先述のように端面等への垂れを生じやすい。
【0012】
よって、本出願人は、特許文献3に、塗液が鏡端面に垂れ、さらに表面側に達しやすいという従来の不具合を解消し、またローラーの付着物等による鏡表面への汚染を防ぐものとして、裏面を下側として鏡をコンベヤー上に移送させつつ、該裏面の端縁部域に下側より接触し回転する塗装ローラーにより該部を塗装する装置であって、塗装ローラーの下方に配した塗料槽の塗液に塗装ローラー下部を浸漬し、塗装ローラーの回転に伴い塗液をローラー外周に付着させて該ローラーの上端に接する鏡の裏面側端縁部塗装装置本体と、塗装ローラーと鏡とに相対的な押圧力を適宜付与する押圧力調整機構と、鏡の裏面側端縁部に供する塗液量の制御機構を有する鏡裏面側端縁部の塗布装置を開示した。
【0013】
また、本出願人は、特許文献4に、把手部と、その先端に配設した塗装用回転駆動部からなり、該回転駆動部は電動モーターと、一側端にモーター軸に軸着した小径プーリー、および回転駆動部本体に軸承され、ベルトを介して前記小径プーリーと連動回転する大径プーリーを配し、大径プーリーの対向軸端には塗装ローラー、および該塗装ローラーと近接、離隔調整可能に隣接した塗液溜と、鏡の側端に接する走査案内杆を配し、かつ塗液溜の塗装ローラー隣接側枠の一部を欠切して縦溝孔を形成し、該縦溝孔に塗装ローラーの一端を嵌入して塗液と接触させるハンディタイプの簡易な鏡の縁塗り器を開示した。
【0014】
尚、縁塗り塗料については種々提案されており、例えば、本出願人らは、特許文献5に、ガラス基板端部、銀鏡膜、銅等からなる金属保護膜、裏面保護膜(裏止め塗膜)へ強固に付着し、長期にわたり優れた防食効果を示すビスフェノ−ル型エポキシ樹脂、オルソ−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ硬化剤およびシランカップリング剤を含有する鏡用縁塗り液を開示した。また、本出願人らは、特許文献6に、水性でありながら硬化が短時間で済み、鏡端縁部の被覆形成が容易なアクリルシリコン樹脂エマルジョンを含有する水性の鏡用縁塗り液を開示した。
【特許文献1】実開昭59−10856号公報
【特許文献2】特開平4−41763号公報
【特許文献3】特開平7−31911号公報
【特許文献4】特開平7−265767号公報
【特許文献5】特開2005−307179号公報
【特許文献6】特開2006−219607号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
鏡の生産において、裏止め塗膜を被覆形成後に面取り加工した鏡は、連続して縁塗りを行うことが好ましい。鏡端縁部の縁塗りを行う際、裏止め塗膜形成後に面取り加工した一定数の鏡を纏め、裏止め塗膜を形成してなる裏面側を上としてコンベヤー上を搬送させつつ、上側からロールコーターを用いて、連続的に縁塗り塗料を鏡の端縁部に塗布し、縁塗りを行うことが効率が良く、生産性の向上に繋がる。詳しくは、鏡の製造ラインにおいて、裏面側を上に搬送させつつ、銀鏡膜、銅膜、裏止め塗膜の形成を行い、次いで、そのままの状態、即ち、裏面側を上にした状態で、端面の面取り加工を行い、鏡を裏返すことなく、裏面側を上としてコンベヤー上を搬送させつつ、上側からロールコーターを用いて、連続的に縁塗り塗料を鏡の端縁部に塗布し縁塗りを行うことが効率良く、生産性の向上に繋がる。
【0016】
鏡を裏返す作業を人力で行うことは大変であるし、機械で行うにしても挟み込むまたは吸盤で吸着した後に裏返すこととなり、裏返すのに複雑で高価な装置および場所を要し、効率的ではないという問題があった。
【0017】
また、裏止め塗液を塗布後、加熱して乾燥させたとしても、裏止め塗膜が完全に固まるまでには数日かかる。固まらない状態で搬送および裏返しにすると裏止め塗膜を痛めやすいという問題があった。鏡を裏返しにすることなく、裏止め塗膜上に縁塗り塗液をロールコート法で塗布し、裏止め塗膜および縁塗り塗膜を同時に加熱乾燥することが効率良く、鏡の生産において製造時間が短縮される。
【0018】
特許文献3に記載の鏡裏面側端縁部の塗装装置は、縁塗り塗料を下側より塗布することによって、縁塗り塗料が鏡端面に垂れ、さらに表面側に達しやすいという上側から塗布する際の従来の不具合を解消するものである。しかしながら、前述のように、鏡端縁部の縁塗りを行う際、上から塗布する方が効率良く、そのためには、上側から塗布する場合においても、縁塗り塗料が鏡端面に垂れ、さらに表面側に達するという問題を解決する必要がある。
【0019】
また、連続塗布に、特許文献4のハンディタイプの鏡の簡易な縁塗り器を用いたところ、塗装ロールへの縁塗り塗料の供給が少ないと、縁塗り塗膜がかすれる、供給が多いと鏡端面に垂れ、縁塗り塗膜の均一塗布および膜厚制御がし難いという問題があった。
【0020】
本発明は、防食鏡の生産において、裏止め塗膜を被覆形成し面取り加工した鏡を裏返すことなく、効率的且つ連続的に鏡の裏面側端縁部の縁塗りを行い、縁塗り塗膜がかすれる、縁塗り塗料が鏡端面に垂れることなく、所望の厚さに均一塗布することが可能な鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置を提供することを目的とする。
【0021】
また、本発明は前記鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置により、耐食性能のために有効な範囲、且つ厚さに、縁塗り塗膜が形成されてなる防食鏡に関する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
ロールコーターを用いての縁塗り塗装において、塗布ロールに添設して液溜めを設け、塗布ロールに縁塗り塗液を供給しつつ、同時に塗布ロールのロール面を鏡の裏面側端縁部に接触させつつ、1本の塗布ロールのみのロールコーターを用いて縁塗り塗装を行う従来の方法は、連続して縁塗り作業を行うと、縁塗り塗液の供給が追いつかなく、縁塗り塗膜の均一塗布および膜厚制御が困難となる。
【0023】
そこで、本発明の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置において、塗液ピックアップロールと調製ロールと塗布ロールを並べ、その外周面が線状に接した状態、即ち、並接した状態で設けた。即ち、3本のロールからなるロールコーターを用い、各ロールが連動して回転することで、縁塗り塗液を満たした塗料槽に浸漬させた塗液ピックアップロールの外周面より縁塗り塗液が、調製ロールの外周面、次いで、塗布ロールの外周面に移り、塗布ロール面を鏡の裏面側端縁部と接触させることで、鏡の裏面側端縁部を縁塗りし、縁塗り後、加熱感想して縁塗り塗膜とした。
【0024】
その際、各々のロールを連動して回転させることで、縁塗り塗液が付着した塗液ピックアップロールと調製ロールの外周面の接点に液溜りができることで縁塗り塗液が混練され、調製ロールのロール面に縁塗り塗液が均一に付着するように展開した。
【0025】
即ち、本発明は、裏止め塗膜を被覆形成してなる鏡を、裏止め塗膜を被覆形成してなる裏面側を上にしてコンベヤー上を搬送させつつ、該裏面側の端縁部に上側より接触しつつ回転する塗布ロールにより、鏡裏面側の端縁部に縁塗り塗液を縁塗り塗装する鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置であって、連動回転する並接した塗液ピックアップロールと調製ロールと塗布ロールからなることを特徴とする鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置である。
【0026】
さらに、本発明は、裏止め塗膜を被覆形成してなる鏡を、裏止め塗膜を被覆形成してなる裏面側を上にしてコンベヤー上を搬送させつつ、該裏面側の端縁部に上側より接触しつつ回転する塗布ロールにより、鏡裏面側の端縁部に縁塗り塗液を縁塗り塗装する鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置であって、連動回転する並接した塗液ピックアップロールと調製ロールと塗布ロールからなり、塗液ピックアップロールの下方に配した塗料槽内の縁塗り塗液に塗液ピックアップロールの下部を浸漬し、塗液ピックアップロールの回転に伴い縁塗り塗液を塗液ピックアップロールの外周面に付着させ、縁塗り塗液を塗液ピックアップロールに並接した連動回転する調製ロールの外周面に移しつつ、縁塗り塗液を回転する塗液ピックアップロールと調製ロール間で混練し、調製ロールの外周面に展開し、次いで縁塗り塗液を調製ロールに並接した連動回転する塗布ロールの外周面に移し、塗布ロールの下端に接しつつ搬送される鏡の裏面側端縁部に縁塗り塗液を塗布することを特徴とする上記の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置である。
【0027】
塗液ピックアップロールと調製ロールと塗布ロールの外周面は、縁塗り液を保持するためにエンボス加工等されていることが好ましい。また、縁塗り塗液の保持のために、少なくとも塗布ロールの表面は複数の環状溝を周設していることが好ましく、塗布ロールは硬い鏡の裏面に連続して当接するので、連続塗装をするに連れて複数の環状溝、実際には多数の環状溝が、つぶれる懸念のない硬い材料であることが好ましい。
【0028】
また、本発明は、少なくとも塗布ロールの外周面は、複数の環状溝を周設してなることを特徴とする上記の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置である。
【0029】
環状溝の溝幅および深さは縁塗り塗液の固形分濃度または粘度によるが、0.1mm以上、2.0mm以下の間で調整する。環状溝は、逆3角形の形状とすることが加工しやすく、各ロールが外周面の接触による抵抗で連動しやすく、言い換えれば、付け回りしやすいように、外周部頂点は面取り加工することが好ましい。このようにすることで、鏡裏面側端縁部に供給する塗液量の制御機構として、例えば、塗液掻取り枝杆を用いた際に、鏡裏面側端縁部に供給する縁塗り塗液の塗液量の制御がしやすい。
【0030】
また、本発明は、環状溝の溝幅が0.1mm以上、2.0mm以下、深さが0.1mm以上、2.0mm以下であることを特徴とする上記の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置である。
【0031】
金属製で多数の環状溝を周設する塗布ロールを用いることで、鏡裏面側端縁部に供給する塗液量の制御機構として、例えば、塗液掻取り枝杆を用い、環状溝内の縁塗り塗液を除き、掻取り、塗鏡裏面に供給する塗液量を精密に制御することが可能となる。
【0032】
さらに、本発明は、鏡裏面側端縁部に供給する塗液量の制御機構として、塗液掻取り枝杆を用いたことを特徴とする上記の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置である。
【0033】
また、塗布ロールと鏡に相対的な押圧力を適宜付与する機構としては、アームの先端に塗布ロールを取り付け支点からのアームの触れ幅を調整し、アーム自体に板バネを用いるまたはアームに渦巻きバネを添設する等の機構があげられる。このように、塗布ロールと鏡とに相対的な押圧力を適宜付与する押圧力調整機構として、押圧力調整用のバネ弾性体を、塗布ロールに近接して設けることが好ましい。
【0034】
本発明は、塗布ロールと鏡とに相対的な押圧力を適宜付与する押圧力調整機構として押圧力調整用のバネ弾性体を塗布ロールに近接して設けたことを特徴とする上記の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置である。
【0035】
さらに、本発明は、上記の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置で、裏止め塗膜を被覆形成してなる鏡の裏面側端縁部に縁塗り塗膜が形成されてなる防食鏡である。
【0036】
裏止め塗膜の端縁部から水分の浸入を防ぐために、裏止め塗膜上に縁塗り塗膜を行う。設置時の取り扱い等で、鏡端縁部の裏止め塗膜は傷が付きやすく、傷が付くと、そこから侵入した水分が銀鏡膜または銅膜に接触し縁シケが発生する。また、風呂およびトイレ等、水周りの鏡は洗剤を含んだ水で洗浄することも多く、壁に平行に設置された鏡の下辺部に端縁部に水膜および水溜りができる。よって、縁塗り塗膜を塗布する範囲が、鏡端縁部から20mmより小さいと、これら水膜および水溜りに対して十分な大きさではない。よって、縁塗り塗膜を塗布する範囲は、鏡端縁部から20mm以上であることが好ましい。鏡端縁部から50mmを超えて塗布することは、通常、縁塗り塗装はハケまたはロールコーターで塗布することから考えると現実的ではなく、手間がかかり価格の上昇に繋がる。尚、水膜および水溜りができやすい鏡の下辺部には、少なくとも帯状に広幅縁塗りした縁塗り塗膜を設けることによって、鏡の耐食性能を著しく向上させることが可能となる。
【0037】
また、裏止め塗膜の厚さが20μmより薄いと、銀鏡膜、銅膜等の金属膜の保護効果が小さい。また、200μmより厚く塗ることは、ロールコーターでは塗り難く、乾燥に時間がかかり現実的ではない。また、縁塗り塗膜中に気泡が発生しやすくなり、耐食性能が低下しやすい。
【0038】
さらに、本発明は、上記の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置で、裏止め塗膜を被覆形成してなる鏡の裏面側端縁部に、鏡端縁部を始点として20mm以上、50mm以下までの位置に、厚さ20μm以上、200μm以下の帯状の縁塗り塗膜を形成してなることを特徴とする防食鏡である。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、裏止め塗膜を塗布し鏡を作製後、次いで裏返すことなく鏡端縁部の縁塗りを行った後、裏返すことなく裏面を上にした状態で連続的に縁塗りを行ったとしても、縁塗り塗膜がかすれる、また縁塗り塗液が鏡端面に垂れることなく、所望の厚さに均一塗布することが可能な鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置が得られた。
【0040】
本発明の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置を用いることで、裏面鏡の生産において、裏止め塗膜塗布後に面取り加工した鏡を、裏返すことなく裏面を上に連続して鏡端縁部の縁塗りが行え、効率良く生産を行え、生産性が向上した。また、生産した鏡の縁塗り塗膜は均一な厚さを有し且つ平滑であり、優れた耐食性を得るに有効な範囲、且つ厚さに、縁塗り塗膜が形成され、鏡端縁部からの縁シケ発生が抑制され、優れた耐食性の防食鏡が得られた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
図1の(A)は、本発明の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置の一例の側面図である。(B)は、本発明の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置の一例の正面図である。
【0042】
図1の(A)および(B)に示すように、本発明の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置は、裏止め塗膜を被覆形成してなる鏡1を、裏止め塗膜を被覆形成してなる裏面側を上にしてコンベヤーとしての搬送ロール7上を搬送させつつ、該裏面側の端縁部に上側より接触しつつ回転する塗布ロール2により、鏡裏面側の端縁部に縁塗り塗液を縁塗り塗装する鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置であって、連動回転する並接した塗液ピックアップロール3と調製ロール4と塗布ロール2からなることを特徴とする鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置である。
【0043】
詳しくは、本発明の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置は、裏止め塗膜を裏面側に形成した鏡1を、裏面側を上にして搬送ロール7上を搬送させつつ、該裏面側の端縁部に上側より接触し回転する塗布ロール2により、鏡1の裏面側の端縁部に縁塗り塗液を縁塗り塗装する鏡1の裏面側端縁部の縁塗り装置であって、連動回転する並接した塗液ピックアップロール3と調製ロール4と塗布ロール2からなり、塗液ピックアップロール3の下方に配した塗料槽5内の縁塗り塗液に塗液ピックアップロール3の下部を浸漬し、塗液ピックアップロール3の回転に伴い、縁塗り塗液を塗液ピックアップロール3の外周面に付着させ、縁塗り塗液を塗液ピックアップロール3に並接して連動回転する調製ロール4の外周面に移しつつ、縁塗り塗液を回転する塗液ピックアップロール3と調製ロール4間で混練し、調製ロール4の外周面に展開し、次いで、調製ロール4と塗布ロール2の回転に伴い、縁塗り塗液が調製ロール4に並接した連動回転する塗布ロール2の外周面に移し、塗布ロール2の下端に接しつつ搬送される鏡1の裏面側端縁部に縁塗り塗液を塗布することを特徴とする鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置である。
【0044】
手順としては、図1の(A)に示すように、塗液ピックアップロール3の下部を縁塗り塗液を満たした塗料槽5に浸漬し、塗液ピックアップロール3を回転させる。
【0045】
その際、塗液ピックアップロール3の外周面に、所望の量の縁塗り塗液が付着するように、塗料槽5内の縁塗り塗液の液面高さを調製して、塗液ピックアップロール3の浸漬位置を決定することが好ましい。鏡1の裏面側端縁部に一定の膜厚の縁塗り塗膜16を形成するためには、塗布中は、塗液ピックアップロール3の浸漬位置が一定となるように、塗料槽5内の縁塗り塗液の液面高さを一定の高さを保つに保つことが好ましい。液面高さを一定の高さを保つことで、塗液ピックアップロール3の外周面に、一定量の縁塗り塗液が付着する。
【0046】
次いで、縁塗り塗液が付着した塗液ピックアップロール3の外周面と調製ロール4の外周面とが、縁塗り塗液の粘性でスリップなく付け回りすることにより連動する。塗液ピックアップロール3と調製ロール4が逆向きに回転することで、外周面接点で液溜り6となって、縁塗り塗液は混練され、調製ロール4の外周面に均一に展開される。
【0047】
次いで、並接する調製ロール4と塗布ロール2が粘性でスリップなく付け回りすることにより、並接する調製ロール4と塗布ロール2の回転に伴い、調製ロール4の外周面から塗布ロール2の外周面へ縁塗り塗液は移る。最後に塗布ロール2が鏡1の端縁部に押圧されることにより縁塗り液が鏡1の裏面側端縁部に移り、縁塗り塗膜16が塗布される。
【0048】
このように、本発明において、裏止め塗膜16を形成した鏡1を、裏止め塗膜16を形成した裏面側を上にしてコンベヤーとしての搬送ロール7上を搬送させつつ、該裏面側の端縁部に上側より接触しつつ回転する塗布ロール2により、鏡裏面側の端縁部に縁塗り塗液を縁塗り塗装する、連動回転する並接した塗液ピックアップロール3と調製ロール4と塗布ロール2からなる鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置を用い、塗液ピックアップロール3の下方に配した塗料槽5内の縁塗り塗液に塗液ピックアップロール3の下部を浸漬し、塗液ピックアップロール3の回転に伴い縁塗り塗液を塗液ピックアップロール3の外周面に付着させ、縁塗り塗液を塗液ピックアップロール3に並接した連動回転する調製ロール4の外周面に移しつつ、縁塗り塗液を回転する塗液ピックアップロール3と調製ロール4間で混練し、調製ロール4の外周面に展開し、次いで縁塗り塗液を調製ロール4に並接した連動回転する塗布ロール2の外周面に移し、塗布ロール2の下端に接しつつ搬送される鏡1の裏面側端縁部に縁塗り塗液を塗布する鏡1の裏面側端縁部の縁塗り方法によって、優れた耐食性を得るに有効な範囲、且つ厚さに、縁塗り塗膜16が形成されてなる防食鏡が得られた。
【0049】
また、鏡1を自動的、連続的に運ぶ装置であるコンベヤーとしては、図1の(A)および(B)に示すような、通常、搬送ロール7が用いられる、駆動としては、鏡1を自動的、連続的に運べるように工夫して、下側の搬送ロール7、または図示しない上側の搬送ロールを電動モーター等で駆動させる。通常、搬送ロール7は、円筒状ゴム輪に鉄棒を心棒として挿入したものが用いられる。
【0050】
また、塗液ピックアップロール3と調製ロール4と塗布ロール2の各心棒に、図示しない歯車またはベルト車等を設置して互いに連結させる等して、各ロールがスリップすることなく円滑に連動させることが好ましい。尚、搬送する鏡1の裏面に押圧されることによって、塗布ロール2が回転するので、塗液ピックアップロール3と調製ロール4と塗布ロール2に、特に電動モーター等の駆動源を設置する必要はない。
【0051】
塗液ピックアップロール3と調製ロール4と塗布ロール2の外周面は、縁塗り塗液を保持するためにエンボス加工等されていることが好ましい。縁塗り塗液を保持するために少なくとも、塗布ロール2の外周面には、複数の環状溝、実質的には、多数の環状溝を周設していることが好ましい。
【0052】
また、塗布ロール2は硬い鏡1の裏面側端部8と連続して当たるので、その外周面には、連続塗装をするに連れてつぶれる懸念のない硬い材料を用いることが好ましく、金属、セラミックまたは硬質樹脂等から選ばれる。縁塗り塗液に対して変質することなく優れた耐性があることからはステンレス鋼が適した材料であり、塗布ロール2の表面に複数の環状溝を周設する際に加工容易であることを考慮すれば、アルミニウム、アルミニウム合金が適した材料である。縁塗り塗液に対して十分に耐性があり、加工が容易であることから、アルミニウム、アルミニウム合金を用いることが好ましい。
【0053】
金属製で多数の環状溝を周設する塗布ロール2を用いることで、鏡1の裏面側端縁部に供給する縁塗り塗液の液量の制御機構として、例えば、図示しない塗液掻取り枝杆を用い、外周面に塗液掻取り枝杆を押し付けて、環状溝9内の縁塗り塗液を除いて掻取り、鏡裏面に供給する縁塗り塗液の液量を精密に制御することが可能となる。掻き取られた縁塗り塗液は、捨てずに塗料槽5に戻すことが経済的である。
【0054】
図2は、塗布ロールの一例の部分拡大断面図である。
【0055】
外周面に設けた環状溝9の溝幅10および深さ11は縁塗り塗液の固形分濃度または粘度によるが、鏡1に所望の厚みの縁塗り塗膜16を形成するためには、各々0.1mm以上、2.0mm以下の間で調整する。0.1mmより溝幅10が狭いまたは深さ11が浅い溝9は加工が困難であるとともに、縁塗り塗膜16が薄くなりすぎて現実的ではない。2.0mmより、溝幅10が広いまたは深さ11が深い溝9は、ロール外周面の縁塗り塗液の保持量が多すぎる、ロール外周面に塗液の流れが生じ外周面上で不均一になる等の不具合が生じ、均一な膜厚の縁塗り塗膜16が形成困難となる。
【0056】
図2に示すように、環状溝9は、断面逆3角形の形状とすることが加工しやすく、各ロールが外周面の接触による抵抗で連動しやすい、言い換えれば、付け回りしやすいように、外周部頂点は面取り加工することが好ましい。このようにすることで、鏡1の裏面側端縁部に供給する縁塗り塗液の塗液量の制御機構として、例えば、塗液掻取り枝杆を用いた際に、鏡1の裏面側端縁部に供給する縁塗り塗液の塗液量の制御がしやすい。
【0057】
また、塗布ロール2と鏡1に相対的な押圧力を適宜付与する機構としては、例えば、図1において、図示しないアームの先端に塗布ロール2を取り付け、支点からのアームの触れ幅を調整し、アーム自体に板バネを用いるまたはアームに渦巻きバネを添説する等の機構があげられる。このように、塗布ロール2と鏡1とに相対的な押圧力を適宜付与する押圧力調整機構として押圧力調整用のバネ弾性体を塗布ロール2に近接して設けることが好ましい。
【0058】
図3は、本発明の縁塗り装置を用いて作製した防食鏡の一例の端縁部の拡大断面図である。
【0059】
図3に示すように、本発明の縁塗り装置を用いて作製した防食鏡は、ガラス基板G上に銀鏡膜12を設け、その上に銅膜13を設け、その上に裏止め塗料を塗布し裏止め塗膜14を設けた後、端部の面取り加工を行い、加工面15およびその近傍に縁塗り塗膜16を塗布形成してなる。または、ガラス基板G上に銀鏡膜12を設け、その上に裏止め塗料を塗布し裏止め塗膜14を設けた後、端部の面取り加工を行い、加工面15およびその近傍に縁塗り塗膜16を塗布形成してなる。
【0060】
図4は、本発明の防食鏡の一例を裏面側から見た平面図である。
【0061】
鏡製品の殆どは矩形であり、殆どが壁面に平行、地面に対して垂直な状態で使用される。また、鏡に対して悪影響をおよぼす洗浄剤、水道水等殆どは液体であり、矩形の鏡1の下辺部に溜まりやすく、鏡1の縁シケは下辺の鏡1の端縁部に集中的に発生する。このことから、図4に示すように、特に、少なくとも鏡1の下辺部に縁塗り塗液を帯状に幅広縁塗りし、帯状の縁塗り塗膜16を設けることによって、鏡1の耐食性能を著しく向上させることが可能となる。
【0062】
このように、鏡1の端縁部から水分の進入を防ぐために、裏止め塗膜14上に幅広の縁塗り塗膜16を形成する。少なくとも防食鏡の使用時に下辺となる端縁部には、幅広の縁塗り塗膜16を形成する。設置時の取り扱い等で、鏡1の端縁部の裏止め塗膜14は傷が付きやすく、傷が付くと、そこから侵入した水分が銀鏡膜12または銅膜13に接触し縁シケが発生する。
【0063】
また、風呂およびトイレ等、水周りの鏡は洗剤を含んだ水で洗浄することも多く、鏡の端縁部に水膜および水溜りができる。縁塗り塗膜16を形成する範囲が鏡1の端縁部から20mmより小さいとこれら水溜りに対して十分な大きさではない。よって、縁塗り塗膜16を塗布する範囲は、鏡1の端縁部から20mm以上であることが好ましい。少なくとも鏡1の下辺部に縁塗り塗液を帯状に幅広縁塗りした縁塗り塗膜16を設けることが好ましい。
【0064】
鏡1の端縁部から50mmを超えて塗布することは、通常、縁塗り塗装はハケまたはロールコーターで塗布することを考えると、現実的ではなく、手間がかかり価格の上昇に繋がる。
【0065】
また、縁塗り塗膜16の厚さが、20μmより薄いと、銀鏡膜12、銅膜13等の金属膜の保護効果が小さい。また、200μmより厚く塗ることは、ロールコーターでは塗り難く、乾燥に時間がかかり現実的ではなく、縁塗り塗膜16中に気泡が発生しやすくなり、気泡により穴に水が浸入することで、耐食性能が低下しやすい。
【0066】
尚、本発明の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置は、ガラス基板Gに銀境膜12、銅膜13、裏止め塗膜14を順次積層した鏡1に幅広帯状の縁塗り塗膜16を形成した防食鏡のみでなく、環境保護のために、銅膜13を形成しないで、ガラス基板Gに銀境膜12、裏止め塗膜14を順次積層した鏡1に幅広帯状の縁塗り塗膜16を形成した防食鏡についても好適に適用される。また、無鉛の顔料を使用した裏止め塗膜14を有する無鉛鏡にも好適に適用される。
【実施例】
【0067】
公知の手段で、図3に示すように、ガラス基板Gの片面に銀鏡膜12、銅膜13、裏止め塗膜14を順次積層してなる厚み5mmの鏡1を作製した。
【0068】
具体的には、清浄に洗浄したガラス基板Gの片面に硝酸銀溶液と銀を還元させるための還元液とからなる銀メッキ液をスプレーし、銀鏡反応にて1.0g/mとなるように銀鏡膜12を形成し、この膜面を水洗した後、硫酸銅溶液と銅を還元させるための還元液とからなる銅メッキ液をスプレーし、0.3g/mとなるように銅膜13を形成し水洗後に乾燥させた。銅膜13上に、エポキシ樹脂および硬化剤を85重量部、シクロヘキサン−ホルムアルデヒド樹脂を15重量部のバインダーと顔料とが重量比で顔料/バインダー=2.0であり、且つ顔料組成物中6.0質量%の硫酸鉛を含有する有鉛顔料からなる裏止め塗料をカーテンフローコーターにより均一な膜厚となるように塗布した後、乾燥炉で6分、ガラス基板Gの温度が140℃になるように硬化させ乾燥膜厚50μmの裏止め塗膜14を形成した。
【0069】
尚、裏止め塗膜14に用いる樹脂には、エポキシ樹脂以外に、メラミン樹脂、アルキド樹脂が挙げられ、顔料には、硫酸鉛を含む有鉛顔料以外に炭酸鉛からなる有鉛顔料、または無鉛顔料が挙げられるが、本実施例においては、エポキシ樹脂、硫酸鉛を含む有鉛顔料を使用した。有鉛顔料は銅膜13に対して防錆効果がある。
【0070】
このようにして作製した鏡1を300mm角の大きさに切断し、その端縁部をシーミング加工し、上記銀鏡膜12、銅膜13が露呈した傾斜した加工部15に、図1に示した鏡裏面側端縁部の縁塗り装置を使用し、エポキシ樹脂を主成分とする縁塗り塗料、またはアクリルシリコン樹脂を主成分とする縁塗り塗液を用い、所定の膜厚および縁塗り幅となるように、縁塗り塗装を実施した。
【0071】
エポキシ樹脂を主成分とする縁塗り塗液には、主剤および硬化剤からなる2液型のものを使用した。
【0072】
主剤は、ビスフェノール型液状エポキシ樹脂(エポキシ等量184〜194)40重量部、ビスフェノール型固形状エポキシ樹脂(エポキシ等量900〜1000)60重量部およびオルソクレゾール/ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ等量205〜230)3重量部に、レオロジーコントロール剤、4重量部、レベリング剤、0.5重量部、消泡剤0.5重量部を加え、溶剤としてメチルイソブチルケトン、メチルプロピルグリコール、ノルマルブタノール、キシレン等を加え、所望の固形分濃度、粘度に調整した。硬化剤は、アミン価235〜265、活性水素等量150のポリアミド樹脂(富士化学工業株式会社製、トーマイド437)を用いた。これら、主剤および硬化剤を塗布前に混合して使用した。
【0073】
また、アクリルシリコン樹脂を主成分とする縁塗り塗料は、TG、20℃のアクリルシリコン樹脂エマルジョン(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名、ポリデュレックスG623)を用い、造膜助剤としてのテキサノールおよびレベリング剤を加えた後、純水を加えることで、所望の固形分濃度、粘度に調整した。
【0074】
図1に示すように、裏止め塗膜14を被覆形成してなる鏡1を、裏止め塗膜14を形成した裏面側を上として搬送ロール7上を搬送させつつ、鏡1の裏面側の端縁部に上側より接触し回転する塗布ロール2により、鏡1裏面側の端縁部に前記縁塗り塗液を塗装した。詳しくは、塗液ピックアップロール3の下方に配した塗料槽5内の縁塗り塗液に塗液ピックアップロール5の下部を浸漬し、塗液ピックアップロール3の回転に伴い、縁塗り塗液を塗液ピックアップロール3の外周面に付着させ、縁塗り塗液を塗液ピックアップロール3に並接した連動回転する調製ロール4の外周面に移しつつ、縁塗り塗液を回転する塗液ピックアップロール3と調製ロール4間で混練し、調製ロール4の外周面に展開し、次いで、縁塗り塗液を調製ロール4に並接した連動回転する塗布ロール2の外周面に移し、塗布ロール2の下端に接しつつ搬送される鏡1の裏面側の端縁部に縁塗り塗液を塗布し、縁塗り塗装した後に、焼成して縁塗り塗膜16とした。
【0075】
塗布ロール2の直径は50.0mm、塗布ロール2の外周面には、多数の環状溝9を周設してなり、環状溝9の溝幅10は0.5mm、深さ11が0.5mmである。
【0076】
このようにして得られた縁塗り塗装した鏡1の端縁部を20mmの高さまで、濃度、1.0質量%の塩酸溶液に浸漬し、室温(約20℃)下、48時間(hr)、96時間(hr)、144時間(hr)経過後の表面状態を確認することで、耐酸性の評価を行い、防食鏡としての耐食性能を確認した。
【0077】
エポキシ樹脂を主成分とした縁塗り塗液による縁塗り塗膜16を形成した鏡1の耐酸性評価結果を表1に示す。
【0078】
表1に示すように、厚さ、10μm、30μm、50μm、80μm、120μm、200μm、250μm、300μm、各々縁塗り幅、10mm、20mm、30mmの縁塗り塗膜16を形成した鏡を、上述の濃度、1.0質量%の塩酸溶液に鏡1の端部より20mm浸漬した。尚、図4に示すように、縁塗り幅17とは、鏡1の端部より形成した帯状の縁塗り塗膜の幅である。
【0079】
【表1】

【0080】
表1に示すように、鏡1の端部を始点として30mm、50mmの縁塗り幅で、各々、厚さ、30μm、50μm、80μm、120μm、200μmの縁塗り塗膜16を形成した鏡1は、浸漬144時間経過後、鏡面に異常なく良好な耐酸性を示した。
【0081】
それに対して、縁塗り塗膜16の厚さが10μmの鏡1は、縁塗り幅、10mm、30mm、50mmともに、96時間経過後、銀鏡膜12に腐食が発生し、144時間経過後、浸漬部全体が腐食した。このことは、縁塗り塗膜16の厚さが足りなくて、所望の耐食性能が得られなかったことによる。
【0082】
また、縁塗り幅10mmの鏡1は、浸漬48時間経過後、腐食が発生した、このことは裏止め塗膜14に濃度、1.0質量%の塩酸溶液が作用したことによる。
【0083】
また、濃度、1.0質量%の塩酸溶液に浸漬した結果、縁塗り塗膜16の厚さが250μm、300μmの鏡は、縁塗り塗膜16の表面に発泡が発生し、浸漬96時間系経過後、全てに銀鏡膜12の腐食が発生した。これは、気泡が発生した縁塗り塗膜16に、濃度、1.0質量%の塩酸溶液が浸入し銀境膜12が侵されたことによる。
【0084】
尚、アクリルシリコン樹脂を主成分とした縁塗り塗液による縁塗り塗膜16を形成した鏡1の耐酸性評価結果も表1と同等の結果であった。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】(A)は、本発明の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置の一例の側面図である。(B)は、本発明の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置の一例の正面図である。
【図2】塗布ロールの一例の部分拡大断面図である。
【図3】本発明の縁塗り装置を用いて作製した防食鏡の一例の端縁部の拡大断面図である。
【図4】本発明の防食鏡の一例を裏面側から見た平面図である。
【符号の説明】
【0086】
G ガラス基板
1 鏡
2 塗布ロール
3 塗液ピックアップロール
4 調整ロール
5 塗料槽
6 液溜り
7 搬送ロール
8 端部
9 環状溝
10 溝幅
11 深さ
12 銀鏡膜
13 銅膜
14 裏止め塗膜
15 加工面
16 縁塗り塗膜
17 縁塗り幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏止め塗膜を被覆形成してなる鏡を、裏止め塗膜を被覆形成してなる裏面側を上にしてコンベヤー上を搬送させつつ、該裏面側端縁部に上側より接触しつつ回転する塗布ロールにより、裏面側端縁部に縁塗り塗液を縁塗り塗装する鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置であって、連動回転する並接した塗液ピックアップロールと調製ロールと塗布ロールからなることを特徴とする鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置。
【請求項2】
裏止め塗膜を被覆形成してなる鏡を、裏止め塗膜を被覆形成してなる裏面側を上にしてコンベヤー上を搬送させつつ、該裏面側の端縁部に上側より接触しつつ回転する塗布ロールにより、鏡裏面側の端縁部に縁塗り塗液を縁塗り塗装する鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置であって、連動回転する並接した塗液ピックアップロールと調製ロールと塗布ロールからなり、塗液ピックアップロールの下方に配した塗料槽内の縁塗り塗液に塗液ピックアップロールの下部を浸漬し、塗液ピックアップロールの回転に伴い縁塗り塗液を塗液ピックアップロールの外周面に付着させ、
縁塗り塗液を塗液ピックアップロールに並接した連動回転する調製ロールの外周面に移しつつ、
縁塗り塗液を回転する塗液ピックアップロールと調製ロール間で混練し、調製ロールの外周面に展開し、
次いで縁塗り塗液を調製ロールに並接した連動回転する塗布ロールの外周面に移し、
塗布ロールの下端に接しつつ搬送される鏡の裏面側端縁部に縁塗り塗液を塗布することを特徴とする請求項1に記載の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置。
【請求項3】
少なくとも塗布ロールの外周面には、複数の環状溝を周設してなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置。
【請求項4】
環状溝の溝幅が0.1mm以上、2.0mm以下、深さが0.1mm以上、2.0mm以下であることを特徴とする請求項3に記載の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置。
【請求項5】
鏡裏面側端縁部に供給する塗液量の制御機構として、塗液掻取り枝杆を用いたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置。
【請求項6】
塗布ロールと鏡とに相対的な押圧力を適宜付与する押圧力調整機構として押圧力調整用のバネ弾性体を塗布ロールに近接して設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置で、裏止め塗膜を被覆形成してなる鏡の裏面側端縁部に縁塗り塗膜が形成されてなる防食鏡。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6いずれか1項に記載の鏡の裏面側端縁部の縁塗り装置で、裏止め塗膜を被覆形成してなる鏡の裏面側端縁部に、鏡端縁部を始点として20mm以上、50mm以下までの位置に、厚さ20μm以上、200μm以下の帯状の縁塗り塗膜を形成してなることを特徴とする防食鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−493(P2010−493A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187051(P2008−187051)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】