説明

長寿命の光誘起活性中心を用いる層状材料の製造法

【課題】基板材料に光活性層状高分子被覆膜を適用する方法を提供する。
【解決手段】基板材料に、少なくとも1つがカチオン活性中心を形成し得る光開始剤を含有する少なくとも2つの分離モノマー層を適用し、光開始剤を含有する少なくとも1つの層を、カチオン活性中心を形成する望ましい波長にて紫外線源で感光し、その際に硬化した層状材料を形成する重合反応で少なくとも2つの別個のモノマー層が反応し、両層が重合反応により硬化するように感光されたモノマー層のカチオン活性中心が未感光層に移動して、1つ以上の層が光開始剤を含有しないか又は開始光で感光されないでもカチオン活性中心の移動により硬化する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板材料に光活性化層状高分子被覆膜を適用する方法に関する。
【0002】
様々な基板材料に高分子被覆膜を用いることは公知である。典型的には、これらの被覆膜は熱活性化重合を用いて作製される。熱は、基板にモノマーが液体として適用された後、塗膜を重合させる活性中心を発生させるために用いられる。しかしながら、熱重合は、高温炉を長時間運転するために多くのエネルギー、時間および費用を必要とする。
【0003】
また、基板に高分子被覆膜を作製するために光重合を用いることも公知である。光重合反応は、フリーラジカル又はカチオン活性中心を発生させる連鎖反応である。光重合では、紫外線又は可視光からのエネルギーがモノマーを重合させるために用いられる。光重合は、溶媒を使用しないでエネルギーの節約と高い硬化速度を含む多くの利点を有している。
【0004】
しかしながら、様々な基板上の塗膜の重合は、酸素阻害に関連する問題のために成功しなかった。従来公知の光重合系では、一般的にフリーラジカル活性中心を発生させるためにフリーラジカル重合を用いてきた。フリーラジカル活性中心は、酸素と反応して非反応性の過酸化物およびヒドロペルオキシドを生じさせ得る。これは、重合速度の低下と高分子の分子量の減少をもたらす。酸素阻害は、フリーラジカル重合に不完全硬化を呈させて不完全な被覆膜をもたらし得る。酸素阻害を克服する典型的な方法は、モノマーから酸素を置換する試みで窒素を用いて系をパージすることである。複数の層を有する被覆膜では、1つより多い照射工程を必要とし各層に対する窒素パージが必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加えて、光重合は、顔料を有する硬化系でも不備を示し得る。顔料は、色彩を提供するため又は基板の表面を覆うために被覆膜に用いられ得る。顔料は光開始剤吸収と直接的に競合することによって光重合を抑制し得る。加えて、顔料は、光と相互作用して光子を多方向に散乱させて、着色塗料に対する光減衰の増加をもたらし得る。それ故、当業界では、着色塗料で用いられ得る層状被覆膜を形成する改良法の必要性がある。また、当業界では、多段照射工程および窒素パージ工程の必要性を取り除く層状被覆膜を適用する改良法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は、基板材料に重合被覆膜を効果的に生成する方法に関する。特に、本発明の方法は、その中に顔料を含有する被覆膜によって目的物を被覆するのに役立つ。
【0007】
1つの態様において、本発明の方法は、基板材料を用意し、前記基板材料に、少なくとも1つの層がカチオン活性中心を生じさせ得る光開始剤を含有する、少なくとも2つの別個のモノマー層を適用する複数の工程を含む。前記光開始剤を含有する層は、カチオン活性中心を形成する望ましい波長にて紫外線源で感光される。少なくとも2つの分離モノマー層は、硬化した層状材料を形成する重合反応で反応する。
【0008】
他の態様において、層状材料を形成する本発明の方法は、基板材料を用意する工程を含む。前記基板材料に下地塗りが適用される。透明被覆層は、カチオン活性中心を生じさせ得る光開始剤を含有する透明被覆層を用いて、下地塗り層に適用される。次いで、透明被覆層が、カチオン反応中心を形成する望ましい波長にて紫外線源で感光される。下地塗りおよび透明被覆層は、硬化した層状材料を形成する重合反応で反応する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、基板に適用された、モノマーと光開始剤とを含有する最下層が照射され、続いてモノマーからなる第2層がさらなる照射なしで硬化する、本発明の方法の1つの態様の図解である。
【0010】
【図2】図2は、基板にモノマーからなる最下層が、続いて光開始剤を含有するモノマーの第2層が適用され、次いで最下層および最上層の硬化をもたらす照射がなされる本発明の方法の図解である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1および2を参照すると、基板上に層状材料を形成する方法の図解が示されている。本発明の方法は、基板材料を用意することを含む。少なくとも2つの別個のモノマー層が基板材料に適用される。複数のモノマー層の少なくとも1つは、適した波長の光を照射されてカチオン活性中心を生じさせ得る光開始剤を含有している。光開始剤を含有する少なくとも1つの層は、望ましい波長にて紫外線源で感光される。少なくとも2つの別個のモノマー層は、硬化した層状材料を形成する重合反応で反応する。1つの態様において、感光されたモノマー層のカチオン活性中心は、両層が重合反応によって硬化するように未感光層に移動する。
【0012】
さまざまなカチオン光開始剤およびカチオン硬化性モノマーが利用され得る。1つの態様において、予め定められた光源からの光を吸収することによってモノマーのカチオン重合反応を開始し得る任意の光開始剤が利用され得る。さまざまなカチオン光開始剤としては、限定されないが、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、フェロセニウム塩、α−スルホニルオキシケトン、又はシリルベンジルエーテルが挙げられる。
【0013】
上記のように、さまざまなカチオン硬化性モノマーが利用され得る。1つの態様において、重合は、カチオン重合を受ける任意のモノマー又は複数のモノマーの組み合わせを用いるものであり得る。カチオン重合され得るさまざまなモノマーとしては、限定されないが、単官能基又は二官能基エポキシド、高分子量エポキシオリゴマーおよび樹脂、環状硫化物、ビニルエーテル、環状エーテル、環状ホルマールおよびアセタール、ラクトン、又はシロキサンが挙げられる。1つの態様において、モノマー成分は脂環式ジエポキシド(3,4−エポキシ−シクロヘキシルメタニル3,4−エポキシシクロヘキサン−カルボン酸塩)とグリシジルエーテル(2−ブトキシメチル−オキシラン)との組み合わせを含み得る。当然のことながら、モノマーの望ましい選択と量とは基板上に形成されるべき望ましい高分子に依存し得る。
【0014】
光開始剤は、モノマーが望ましい波長の光を照射されると光重合を受けるのに効果的又は充分である量で少なくとも1つのモノマー層中に存在し得る。1つの態様において、光開始剤は、モノマーに対して0.5〜6質量%の量で存在し得る。他の態様において、光開始剤は、0.5〜2質量%そして好適には0.8〜1.2質量%の量で存在し得る。
【0015】
モノマー層は、様々な適用法を用いて基板および他の層に適用され得る。含まれる適用法として、スプレー法、ナイフコーティング法、ブラッシング法、流し塗り法、浸し塗り法又はローリング法が挙げられる。1つの態様において、好適な方法は、圧縮空気吹き付け、無気噴霧、高速回転、又は静電スプレー適用を含むスプレー塗布である。基板に適用される層および次の層は、適用法に依存してさまざまな厚さを有し得る。1つの態様において、複数のモノマー層の厚さは、5〜150μm、好適には40〜60μmであり得る。
【0016】
図1を参照すると、光開始剤を含有する第1モノマー層を用いて第1層が基板材料に適用される本発明方法の図解が示されている。第1モノマー層は、第1モノマー層を硬化する紫外線源で感光される。次いで、紫外線でのさらなる感光なしで第2層が硬化するように、硬化した第1層にモノマーからなる第2層が適用される。
【0017】
図2を参照すると、本発明の方法の他の図解が示される。この図解では、第1モノマー層が基板材料に適用される。第2モノマー層は、光開始剤を含有する第2層を用いて第1層に適用される。次いで、第1モノマー層に直接的に紫外線で感光しないで、第1および第2モノマー層を硬化する紫外線源で第2層が感光される。
【0018】
図1および2の図解は基板に適用された2つの層を含むが、当然のことながら、光開始剤を含有する複数の層の少なくとも1つを用いて複数の層が基板材料に適用され得る。光開始剤を含有する少なくとも1つの層は、望ましい波長にて紫外線源で感光され得る。全ての複数の別個のモノマー層が、硬化した層状材料を形成する重合反応で反応し得る。1つの態様において、複数の層の少なくとも1つは顔料を含有し得る。顔料は、硬化した層状材料の硬化に影響を及ぼすことなく光開始剤を含有する層内に含有され得る。
【0019】
本発明の方法は、下地塗りおよび透明被覆膜の系で利用され得る。1つの態様において、基板は、適用された電解被覆層を有する鋼板を含み得る。第1の下地塗り層は基板に適用され得る。下地塗り層は、様々なモノマー、溶媒および顔料を含有し得る。透明被覆膜層は光開始剤を含有する透明被覆膜を用いて下地塗り層に適用され得る。次いで、透明被覆膜は、透明被覆層および下地塗り層のいずれもが重合反応において硬化されるように、望ましい波長にて紫外線源で感光され得る。
【実施例】
【0020】
実施例1
実験の配置が図1および2に示される。1番目の一連の実験、図1では、2層被覆膜の最下層のみに光に当てた。カチオン光重合に用いられたエポキシド単量体の混合物を1質量%のカチオン光開始剤(トリルクミル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(IPB、セカントケミカルズ(Secant Chemicals))と混合し、そしてエアブラシを用いてアルミニウム基板上に噴霧した。モノマー混合物は70質量%の3,4−エポキシ−シクロヘキシルメタニル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸塩(CDE、ダウケミカル社)と29質量%の2−ブトキシメチル−オキシラン(BMO、ヘキシオンスペシアリティ(Hexion Specialty)社)とを含有するものであった。この実験は、最下層中のモノマー/光開始剤混合物に加えられた追加の1質量%の顔料二酸化チタン(TiO)が含まれる場合と含まれない場合とで行った。次いで、この層を200Wのオリエール(Oriel)Hg−Xeアークランプを用いて約50.0mW/cmの測定放射照度で10分間照射した。次いで、硬化した層の上に、光開始剤を含有しない同じモノマー混合物からなる層を噴霧した。被覆パネルを大気条件および室温で保管し、そして観察し、不粘着表面を得るために必要な時間を測定した。一度重合されたら、被覆膜の厚さをマイクロメータ(ミクロ−TRI−グロスμ、BYKガードナー)を用いて測定した。
【0021】
実施例2
2番目の一連の実験、図2では、2層被覆膜のうちの最上層のみに光を当てた。70質量%のCDEと30質量%のBMOとを含有する混合物を、エアブラシを用いてアルミニウム基板上に噴霧した。1質量%のIPB光開始剤を用いた同じモノマー混合物を含有する第2層を未重合最下層の上面に噴霧した。この実験は、最上層中のモノマー/光開始剤混合物に加えられた追加の1質量%の顔料TiOが含まれる場合と含まれない場合とで行った。次いで、この2層を前記のHg−Xeアークランプを用いて10分間照射した。光重合は大気条件下に且つ室温で行った。被覆パネルを観察して不粘着表面を得るために必要な時間を測定した。一度重合されたら、被覆膜の厚さを、マイクロメータを用いて測定した。
【0022】
表1は、最下層のみが光を当てられそして活性中心が最上層(適用されたポスト光照射である)中に拡散して両層に対して全体での硬化および全特性変化をもたらした、1番目の一連の実験に対する実験結果を要約している。2つの被覆膜に対する結果が示されていて、1つは光が当てられた層に加えられた顔料のTiOが含まれるもので、1つは含まれないものである。
【0023】
【表1】

【0024】
表2は、パネル上に2つの層を噴霧し次いで光を当てた、2番目の一連の実験に対する結果を要約している。これらの実験では、最下層はモノマーのみ(開始剤なし)を含有した。光開始剤を含有する最上層に光を当てて、両層に対して全体での硬化および全特性変化をもたらした。2つの被覆膜に対する結果が示されていて、1つは加えられた顔料のTiOが含まれるもので、1つは含まれないものである。
【0025】
【表2】

【0026】
いずれの一連の実験でも、カチオン活性中心は光開始剤を含有せず照射されない層中に拡散することが可能であった。この現象の原動力は、2層間の濃度傾斜であると考えられる。複数の層の成分、および硬化時間にかかわらず、1〜2時間以内で完全に硬化した膜は、照射された膜での顔料の存在によって影響を受けなかった。これらの実験の結果は、本発明が多層被覆膜を硬化するためのカチオン光重合の新規な使用であることを示した。
【0027】
実施例3
模擬透明被覆膜
透明被覆膜をシミュレートするために、脂環式ジエポキシド(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸塩、例えばラーン(Rahn)のゲノマー(Genomer)7210)と、エポキシ化アマニ油(アルケマ(Arkema)のVikoflex7190)とを質量比50/50で混合し、合計で53.1436gの材料を得た。次いで、2.5423gのオキセタンアルコール(3−エチル−3−ヒドロキシメチル−オキセタン、東亜合成社のOXT−101)を樹脂混合物に加えた。次いで、2.6555gのリモネン二酸化物(アルケマ(Arkema))を混合物に加えた。次いで、樹脂混合物に、プロピレンカーボネート中のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩からなる光開始剤溶液(50/50質量での混合物)、例えばダウケミカルからのUVI6976を3.0532g加えた。最後に、この混合物に、ヒドロキシフェニル−トリアジン型の紫外線吸収剤溶液であるティヌビン(Tinuvin)400溶液1.8820gを加えた。ティヌビン400溶液は、主として1−メトキシ−2−プロピルアセテート、トルエン、メチルエチルケトン、VMおよびPナフサと少量の他の溶剤を含有する一般的な塗料用溶剤混合物に溶解した48質量%のティヌビン400(Ciba Specialty Chemicals)からなるものである。模擬透明被覆膜は、フラックテック(Flack Tek)DAC150FVZ−Kスピードミキサーを用いて約2500rpmで1.5分間混合した。
【0028】
模擬下塗り
下塗りをシミュレートするために、いずれも24.7016gの3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸塩とエポキシ化アマニ油とを混合して49.4032gの材料を得た。次いで、2.3581gのオキセタンアルコールと3.0233gのリモネン二酸化物とを樹脂混合物に加えた。最後に、2.0484gのアルミニウムフレークペースト(Eckart America社からのMetalure)を加えた。この模擬下塗りは、Flack Tekスピードミキサーを用いて約2500rpmで1.5分間混合した。
【0029】
テストパネル調製
PPG ED6650の電気塗装を有する冷延鋼板パネル(ACTテストパネルズからのAPR41968)を、それぞれに2個のマスキングテープストリップを適用することによって噴霧用に調製した(硬化後の被覆膜厚さ測定を容易にするため)。さらなる表面処理は行わなかった。模擬下塗りは、De VilbissHVLP吹き付け器を用いて、試験パネル上に62psiで噴霧した。次いで、第1のテープストリップを各パネルから取り除いた。次いで、同じ吹き付け器と条件とを用いて、濡れ下塗りに模擬透明被覆膜をスプレーした。最後に、テープの第2のストリップをパネルから取り除いた。
【0030】
硬化
パネルを2つの異なる条件を用いて硬化した。1つのパネルは、13mmH電球を有するFusion UV Conveyorシステムを用いて4フィート(121.92cm)/分で硬化した。全エネルギーは、UVB(紫外線B)範囲(280〜320nm)で約3.46J/cmであり、UVA範囲(320〜390nm)で約3.85J/cmであった。第2のパネルを10フィート(304.8cm)/分で硬化した。UVB範囲での全エネルギーは約1.51J/cmであり、UVA範囲での全エネルギーは約1.81J/cmであった。放射分析はEIT PowerPuckを用いて測定した。
【0031】
評価
各パネルがコンベヤーから出た直後に、外観、粘着性、および小さいプラスチック器具を用いた主観的な「削り取りやすさ」の観察を行った。4フィート/分で硬化したパネルは、粘着性がなく、透明被覆膜が硬くそして削り取ることが困難であった。10フィート/分で硬化したパネルは、粘着性がなかったが、削り取ることは容易であった。
【0032】
実施例4 多層被覆膜
最下層と最上層の材料組成
混合物を以下の質量パーセントで調製した:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジピン酸塩(例えば、ダウケミカルからのUVR6128)53.1%、エポキシ化アマニ油(例えば、アルケマからのVikoflex)42.2%、およびリモネン二酸化物(アルケマから)4.7%。
【0033】
中間層の材料組成
混合物を以下の質量パーセントで調製した:ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジピン酸塩(例えば、ダウケミカルからのUVR6128)85.5%、エポキシ化アマニ油(例えば、アルケマからのVikoflex7190)9.3%、およびトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモン酸塩の光開始剤(例えば、ダウケミカラからのUVI6976)5.2%。
【0034】
試験パネル調製
3枚のPPG ED6650の電気塗装を有する冷延鋼板パネル(ACTテストパネルズからのAPR41968)を試験用に用いた。表面処理は行わなかった。13μmの巻線棒を用いて各パネル上に最下層材料を引き下ろした。次いで、最下層に、中間層材料をウエット・オン・ウエットで噴霧した。最後に、中間層に、最上層材料をウエット・オン・ウエットで噴霧した。
【0035】
硬化
パネルを3つの異なる条件を用いて硬化した。1つのパネルは、13mmH電球を有するフュージョンUVコンベヤーシステムを用いて4フィート/分で硬化した。UVB範囲(280〜320nm)での全エネルギーは約3.5J/cmで、UVA範囲(320〜390nm)では約4.0J/cmであった。第2パネルは10フィート/分にて硬化した。UVB範囲での全エネルギーは約1.5J/cmで、UVA範囲での全エネルギーは約1.8J/cmであった。第3パネルは、20フィート/分で、全UVBエネルギーが約0.8J/cmで全UVAエネルギーが約0.9J/cmで硬化した。放射分析はEIT PowerPuckを用いて測定した。
【0036】
評価
各パネルがコンベヤーから出た直後に、外観、粘着性、および小さいプラスチック器具を用いた主観的な「削り取りやすさ」の観察を行った。3つのパネルは全てぬれてなく(非粘着性)で硬かった。4フィート/分および10フィート/分のいずれのパネルも最下層が硬化したことを示して削り取れなかった。コンベヤーから出た直後には、20フィート/分のパネルはほんのわずか削り取ることができたが、30秒後には削り取れなかった。パネルの全厚さは45〜60μmの範囲であった。
【0037】
上記の実施例は本発明のプロセスを説明するものであるが、それらは本発明のプロセスを限定するものとして理解されるべきではない。本発明は事例的方法で記載されている。用いられた用語は限定よりも言葉の記述の本質にあることを意図していると理解されるべきである。上記の教示に照らせば、本発明の多くの修正および変形が可能である。それゆえ、添付の特許請求の範囲の範囲内で、本発明は明確に記載された以外に実施され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に層状材料を形成する方法であって、
基板材料を用意する工程、
基板材料に、少なくとも1つの層がカチオン活性中心を生じさせ得る光開始剤を含有する、少なくとも2つの別個のモノマー層を適用する工程、
光開始剤を含有する少なくとも1つの層のみを、カチオン活性中心を形成する望ましい波長にて紫外線源で感光し、その際に少なくとも2つの別個のモノマー層が硬化した層状材料を形成する重合反応で反応する工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記感光されたモノマー層のカチオン活性中心が未感光層に移動し、両層が重合反応によって硬化する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板材料に、少なくとも2つのモノマー層のうちの光開始剤を含有する第1モノマー層を適用する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1モノマー層を紫外線源で感光し、第1モノマー層を硬化する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
硬化した前記第1モノマー層に、紫外線でのさらなる感光なしで硬化する第2モノマー層を適用する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記基板材料に、少なくとも2つのモノマー層のうちの第1を適用する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1モノマー層に、光開始剤を含有する第2モノマー層を適用する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第1モノマー層を紫外線源で感光することなく前記第2モノマー層を紫外線源で感光して、第1および第2モノマー層を硬化する請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基板材料に、その少なくとも1つの層が光開始剤を含有する複数のモノマー層を加え、光開始剤を含有する少なくとも1つの層を望ましい波長にて紫外線源で感光し、且つ全ての別個のモノマー層が硬化した層状材料を形成する重合反応で反応する請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の層のうちの少なくとも1つが顔料を含有する請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記光開始剤を含有する少なくとも1つの層が顔料を含有する請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、それに適用された電気塗装層を有する鋼鉄を含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記基板に第1の下塗り層を適用する工程を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記下塗り層に、光開始剤を含有する透明被覆層を適用する工程を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記透明被覆層および下塗り層の両方が重合反応で硬化するとき、前記透明被覆層を望ましい波長にて紫外線で感光する工程、を含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数のモノマー層が、単官能基又は多官能基のエポキシド、高分子量エポキシオリゴマーおよび樹脂、環状スルフィド、ビニルエーテル、環状エーテル、環状ホルマールおよびアセタール、ラクトン、又はシロキサンから選択される請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記複数のモノマー層が、5〜150μmの厚さを有する請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記光開始剤が、ジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアルキルフェナシル−スルホニウム塩、フェロセニウム塩、α−スルホニルオキシケトン、又はシリルベンジルエーテルからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記光開始剤が、モノマーに対して約0.5〜6質量%の量で存在する請求項1に記載の方法。
【請求項20】
基板に層状材料を形成する方法であって、
基板材料を用意する工程、
前記基板材料に第1の下地塗り層を適用する工程、
前記下地塗り層に、カチオン活性中心を生じさせ得る光開始剤を含有する、第2の透明被覆層を適用する工程、
前記透明被覆層を、カチオン活性中心を形成する望ましい波長にて紫外線源で感光し、その際硬化した層状材料を形成する重合反応で下地塗り層および透明被覆層が反応する工程、
を含む、前記方法。
【請求項21】
基板に層状材料を形成する方法であって、
基板材料を用意する工程、
前記基板材料に、少なくとも1つの層がカチオン活性中心を生じさせ得る光開始剤を含有する、複数のモノマー層を適用する工程、
前記光開始剤を含有する層を、カチオン活性中心を形成する望ましい波長にて紫外線源で感光する工程、
前記感光した層に追加のモノマー層を適用し、その際硬化した層状材料を形成する重合反応で複数の層が反応する工程、
を含む、前記方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−88135(P2011−88135A)
【公開日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−201029(P2010−201029)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(507342261)トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド (135)
【出願人】(510242277)ユニバーシティ オブ アイオワ リサーチ ファウンデーション (1)
【Fターム(参考)】