説明

長尺板材の固定構造、長尺板材固定具、及び長尺板材

【課題】床面、壁面、又は天井面等の建物の敷設面に多数の長尺板材が敷設された状態で、任意の長尺板材を取り外し可能にすると共に、前記敷設に際しては、敷設面の任意の箇所から開始可能にすることである。
【解決手段】床板B1 の端面1に長手方向Tに沿って係止溝4が形成されていて、根太材Jに複数の床板固定具A1 が固定されて、床板固定具A1 の係止部20が床板B1 の係止溝4に係止されて、床板固定具A1 を介して床板B1 を根太材Jに固定する構造であって、前記床板固定具A1 は、弾性変形可能なバネ材で成形されて、ビス類61を介して前記根太材Jに固定される固定部10と、当該固定部10の幅方向の両端部から鈍角状に起立して対向形成された一対の係止部20とから成って、前記各係止部20の先端部には、床板B1 の着脱時に当該床板B1 の端面1に摺接して前記係止部20を弾性変形させる摺接部21が外方に突出してそれぞれ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然木或いは再生木のデッキ材等からなる長尺板材の固定構造、及び長尺板材固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
公共施設や住宅の屋外スペースに設置される通常のウッドデッキは、支持枠上に横架されて固定された複数本の根太材、及び該根太材の長手方向に対して垂直に固定される複数枚の板状のデッキ材(以下、単に「床板」という)から構成され、前記ウッドデッキの高さを可変可能にする場合には、前記支持枠を支持して地面に立脚する支持脚もウッドデッキの構成に含まれる。
【0003】
床板は、根太材上に並置され、各々所定の目地幅を有して固定具を介して根太材上に固定される。通常の床板は、両側面に長手方向に沿って溝が形成されており、前記固定具は前記溝に嵌合された状態で根太材に固定されることにより、床板が根太材に取り付けられる。前記固定具の根太材への固定方法は、固定具によるねじ留め方法が一般的であった。
【0004】
しかし、従来の固定具を用いた方法で床板を取り付ける場合には、床板を根太材に端から一枚ずつ順番に並べ、一枚ずつ順番に固定させていく必要があった。従って、床板を取り外す際には、取付け時とは逆の手順で、端から一枚ずつ順番に取り外していかなければならなかった。特に、腐食した床板の交換、清掃等のメンテナンス、或いはデッキ下への落下物を拾う等、特定の床板のみ或いは特定の一部分を取り外したい場合でも、順番に取り外す必要があり、大変な手間と労力を要していた。また、床板の取付け、取外し作業が敬遠されるために、デッキ下の空間を有効に活用できなかった。
【0005】
上記問題点を解決するために、必要な床板のみを取り外すことが可能な床構造が提案されている。例えば、特許文献1では、図15に示すように、床板110の目地111内に配置された取付金具M1 が開示されている。前記取付金具M1 は、床板110の目地幅W10に収まる本体部101と、該本体部101上面に配された略長方形の係止片102とから成り、該係止片102は、中心にビス121を貫通させた状態で、水平面内で回動可能に前記本体部101と固定されている。前記床板110の固定の際は、目地幅W10に対応させて根太130上に固定された各取付金具M1 の両脇に床板110を載置し、前記床板110側面の溝112内に前記係止片102の長手部分を前記ビス121により回動させて挿入し、前記長手部分の先端部に形成された突起103を前記溝112の下面を押圧させることで、前記床板110を固定している。しかし、前記取付金具M1 の幅、即ち本体部101の幅は、床板110の目地幅W10に相当するため、細い目地幅W10の間で、床板110の固定及び解除の細かい作業をするのは困難であると同時に、目地幅W10を細くするのに限界がある。即ち、床板110の目地幅W10を、例えば、目地幅としてよく選択される3ないし5mmの大きさに設定することはほぼ不可能である。
【0006】
また、特許文献2では、図16に示すように、床板210側面の溝212に嵌合した状態で、根太230の受け部231を挟み込んで前記床板210を前記根太230に固定する床板固定具M2 が開示されている。前記床板固定具M2 は、前記根太230を幅方向から挟み込む部分201と、前記床板210側面の溝212に嵌合する部分202を有しており、前記床板210を根太230上に固定する際は、前記床板210側面の溝212に前記床板固定具M2 を嵌合させた状態で、前記床板固定具M2 を金槌等で叩きながら前記幅方向から根太230に挟み込ませていく。前記床板210を取り外す際は、上記固定方法と逆の手順をたどる。しかし、前記床板固定具M2 によって根太230から床板210を着脱する際には、細い目地幅W20の目地211内に工具を差し入れて、前記工具を介して前記床板固定具M2 を叩き打ち、前記床板固定具M2 を根太230に挟み込ませたり、根太230から取り外したりしなければならない。このため、細形状の工具を必要とし、狭い目地211内での作業が面倒である。また、目地幅W20を比較的大きく設定する場合には、前記床板固定具M2 を根太230に挟み込む位置を変えるだけで目地幅W20を自由に調節できるが、自由に調節可能であるために、目地幅W20を全て一定として床板210を敷設するには作業者の技術や経験を要する。また、前記床板固定具M2 は前記目地211内に床板固定具M2 が収まる構造であり、目地211内で前記床板固定具M2 を根太230から着脱する作業をする必要があるため、目地幅W20を細く設定する際にはやはり限界がある。
【特許文献1】特開2003−227224号公報
【特許文献2】特開2005−105802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、床面、壁面、又は天井面等の建物の敷設面に多数の長尺板材が敷設された状態で、任意の長尺板材を取り外し可能にすると共に、前記敷設に際しては、敷設面の任意の箇所から開始可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、長尺板材の端面に長手方向に沿って係止溝が形成されていて、固定材に板材幅に対応した幅で複数の長尺板材固定具が固定されて、長尺板材固定具の係止部が長尺板材の係止溝に係止されて、長尺板材固定具を介して長尺板材を固定材に固定する構造であって、前記長尺板材固定具は、弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から鈍角状に起立して対向形成された一対の係止部とから成って、前記各係止部の先端部には、長尺板材の着脱時に当該長尺板材の端面に摺接して前記係止部を弾性変形させる摺接部が外方に突出してそれぞれ形成され、固定状態の特定の長尺板材を幅方向にスライドさせて、長尺板材の幅方向の一方の長尺板材固定具の前記係止部を弾性変形させて、長尺板材の幅方向に沿って隣接する長尺板材固定具の開口幅を広げることにより、当該長尺板材の幅方向の他方の端部を持ち上げて、その傾斜姿勢のままで長尺板材を傾斜方向にスライドさせる操作、及びこの逆操作を行なうことにより、敷設された長尺板材群のうち特定の長尺板材の脱着を可能にしたことを特徴としている。
【0009】
請求項1の発明によれば、長尺板材が床板であり、固定材が根太材である場合には、根太材に床板を敷設するには、根太材に床板幅に対応したピッチで床板固定具を固定しておき、床板を自身の幅方向に沿って傾斜させ、傾斜の低い側の床板端部の係止溝に床板固定具の係止部を係止させてから、床板を前記傾斜方向に沿って前記係止部を押圧させていくと、床板固定具の係止部は起立角度が小さくなるように弾性変形されて、相隣接する床板固定具の間隔が広くなる。この状態で、傾斜姿勢の高い側の床板端部を押し下げると、当該端部に対応する位置に配置された床板固定具の一方の係止部の上端の摺接部に床板の端面が摺接することにより、床板固定具の起立部は起立角度が小さくなる方向に弾性変形されて、相隣接する床板固定具の間に床板が配置される。この状態では、床板の幅方向の両端の各係止溝に、隣接する各床板固定具の摺接部が収容された状態で、当該各係止溝に係止部が係止される。
【0010】
上記のようにして、床板固定具を介して根太材に床板が敷設された状態では、床板の係止溝に床板固定具の係止部が係止されることにより、床板の浮き上がりが防止される。
【0011】
また、上記以外の床板の固定方法としては、床板をほぼ水平にした状態で、床板固定具の弾性力に抗して直上から押圧し、相隣接する床板固定具の間に床板を無造作に落とし込むことによって行なうことも可能である。
【0012】
一方、敷設された床板群のうち特定の床板を取り外すには、当該床板を略目地分だけ幅方向にスライドさせて、床板の幅方向の一方の床板固定具の前記係止部を弾性変形させると、床板の幅方向に沿って隣接する床板固定具の開口幅が広くなる。この結果、当該床板の幅方向の他方の端部においては、係止溝に対する床板固定具の係止部の係止が緩やかになるか、或いは係止が解除された状態となる。このため、当該床板の幅方向の他方の端部を持ち上げると、当該端部の係止が緩やかな場合には、当該部分に配置された床板固定具の係止部が、当該床板の係止溝と床板固定具の係止部との係止が解除される方向に弾性変形されて、当該床板の他方の端部は、隣接する床板の上面よりも上方まで持ち上げ可能となり、この傾斜姿勢において当該床板を傾斜方向に引き上げると、当該床板に隣接する両床板が固定されたままで、当該床板のみが外される。取り外した特定の床板を元の位置に戻して固定するには、上記各操作を順次逆の順序で行えばよい。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の長尺板材の固定構造において、前記長尺板材固定具の係止部は、弾性変形された状態で長尺板材の係止溝に係止されることを特徴としている。
【0014】
請求項2の発明によれば、床板の係止溝に対して床板固定具の係止部が弾性変形して係止された状態においても、床板固定具の固定部に対する係止部の起立角度は鈍角を保持しているため、床板の係止溝に対する床板固定具の係止部の弾接力は、斜下方に作用する。よって、敷設された床板は、前記弾接力の下方分力により下方に押し付けられるので、敷設状態が安定化する。なお、敷設された床板の幅方向の位置は、両側の各床板固定具の前記弾接力の水平分力が均衡することにより定められる。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の長尺板材の固定構造において、前記長尺板材固定具の摺接部は、開口が対向するように外方にわん曲された断面形状を有することを特徴としている。
【0016】
請求項3の発明によれば、床板固定具の摺接部は、外方にわん曲して形成されているので、特定の床板のみを脱着する場合において、床板の端面が係止部の外周面に引っ掛かることなく円滑に摺接して、床板固定具の係止部が弾性変形されるために、上記した特定の床板の脱着が容易となる。
【0017】
請求項4の発明は、請求項2又は3に記載の長尺板材の固定構造において、前記長尺板材固定具の対向形成された各係止部には、各係止部の弾性変形を維持するための弾性変形維持部材が嵌着されていることを特徴としている。
【0018】
請求項4の発明によれば、床板固定具の各係止部の弾性変形状態が長期に亘って維持されるため、床板の係止溝に対する床板固定具の係止部の弾接状態がそのまま維持されて、長期間の使用によっても床板が長手方向にずれなくなる。
【0019】
請求項5の発明は、端面に長手方向に沿って係止溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から鈍角状に起立して対向形成された一対の係止部とから成って、前記各係止部の先端部には、長尺板材の着脱時に当該長尺板材の端面に摺接して前記係止部を弾性変形させる摺接部が外方に突出してそれぞれ形成されていることを特徴としている。
【0020】
請求項5の発明は、請求項1の発明を「長尺板材固定具」の面から把握したものであって、請求項1の発明と実質的には同一である。
【0021】
請求項6の発明は、端面に長手方向に沿って係止溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部であって、しかも長手方向に沿ってずれた位置に鋭角状に起立された一対の係止部とから成って、前記各係止部の先端部には、長尺板材の着脱時に当該長尺板材の端面に摺接して前記係止部を弾性変形させる摺接部が正面視において外方に突出してそれぞれ形成されていることを特徴としている。
【0022】
請求項6の発明は、請求項5の発明に対して、一対の係止部の固定部の幅方向に沿った形成位置、及び一対の係止部の固定部に対する起立角度が異なるのみで、他の構成は同一であり、請求項5の発明と同等の作用効果が奏される。
【0023】
請求項7の発明は、端面に長手方向に沿って係止溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から直角及び鈍角状に起立して対向形成された長さの異なる一対の係止部とから成って、前記一対の係止部のうち直角状に起立した係止部には、先端部分に起立方向よりも外側に折曲された平板状の浮上り防止部が形成されていることを特徴としている。
【0024】
請求項7の発明によれば、まず、床板固定具の一方の係止部は直角状に前記固定部から起立しているので、床板を係止した状態においては、前記係止部の外側は全面に亘って床板の下端面と接している。このため、前記係止部に負荷がかかっても、弾性変形することは殆どない。また、床板の係止溝には、前記浮上り防止部がほぼ当接状態で完全に収納されていて、床板の出隅部が前記浮上り防止部の下端部によって当接状態で係止される。従って、床板が長手方向に反り上がり、前記床板の両端部を係止している各床板固定具の係止部を押圧しても、床板が浮き上がって床板固定具から外れることはない。従って、床板の浮上り防止効果がより一層向上する。
【0025】
請求項8の発明は、端面に長手方向に沿って係止溝と収容溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から直角又は鈍角状に起立して対向形成されて、長手方向の長さが異なる一対の係止部とから成って、前記一対の係止部のうち長さの短い係止部は、前記固定部の長手方向の中央部にのみ形成されていて、長さの短い係止部が起立している側の前記固定部の端部における当該係止部が形成されていない部分には、幅方向に延設された延設固定部が形成されていることを特徴としている。
【0026】
請求項8の発明は、請求項5又は7の発明に対して、一対の係止部の長手方向の長さがそれぞれ異なること、及び長さの短い係止部が起立している側の固定部には延設固定部が延設されていることが相違しているが、他の構成は同一である。このため、請求項5又は7の発明と同等の作用効果が奏される。前記作用効果に加えて、更に、前記固定部に延設固定部が形成されたことにより、当該延設固定部にも取付具(ビス類)を挿通して前記床板固定具を根太材に固定できるので、前記固定部において、両端部から起立した一対の係止部に挟まれた狭い幅領域に形成されたビス孔にビス類を挿通するよりも、ビス類を挿通しやすく、より強固に床板固定具を固定材に固定できる。このため、新規に床板を根太材に順に固定していく敷設作業は、容易に効率良く施工できる。
【0027】
請求項9の発明は、端面に長手方向に沿って係止溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から直角及び鈍角状に起立して対向形成された長さの異なる一対の係止部とから成って、前記一対の係止部のうち直角状に起立した係止部の先端部分には断面V字形の外れ防止部が水平に形成されていることを特徴としている。
【0028】
請求項9の発明は、請求項7の発明に対して、浮上り防止部が外止め部に置き換わった点が異なるのみで、他の構成は同一であり、請求項7の発明と同等の作用効果が奏される。更に、前記外止め部は、断面V字形の形状で、直角状に起立した係止部の先端部分に水平に形成されていて、床板の係止溝に完全に収納されていることにより、前記外れ防止部のV字底部が係止溝の下面に当接した状態で床板を鉛直方向に係止する。このため、平板状の浮上り防止部と比べて、更に以下の作用効果が期待できる。一点目は、前記外れ防止部のV字底部が床板の係止溝の下面を鉛直方向に係止しているので、前記床板が使用により収縮して、床板固定具の係止部と当接していた出隅部及び下端面が前記係止部から離れても、床板が根太材から外れることはない。したがって、収縮した床板に対する浮上り防止効果がより一層奏される。二点目は、前記V字底部が係止溝の下面と長手方向に沿って当接しているので、摩擦力により床板の長手方向にも幅方向にも摩れることがなく、ずれ防止効果が大きい。
【0029】
請求項10の発明は、端面に長手方向に沿って係止溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、弾性変形可能なバネ材で成形されて、前記固定材に形成されたスリーブ孔に挿入される断面T字形の挿入取付具と、当該挿入取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から鈍角状に起立して対向形成された一対の係止部とから成って、前記挿入取付具は、長板状の挿入回転部と、当該挿入回転部の中央部分から直立した挿入軸足部とから成って、前記挿入回転部の短手方向と前記固定部の長手方向が平行になるように、前記挿入軸足部が前記固定部の中央部分に固着されて、前記各係止部の先端部には、長尺板材の着脱時に当該長尺板材の端面に摺接して前記係止部を弾性変形させる摺接部が外方に突出してそれぞれ形成されていることを特徴としている。
【0030】
請求項10の発明は、請求項5の発明に対して、固定部下面の中央部分に挿入取付具が形成されていて、根太材への固定の仕方が異なっているのみで、他の構成は同一であり、請求項5の発明と同等の作用効果が奏される。前記挿入取付具は、長板状の挿入回転部と、その中央から直立した挿入軸足部とから成る断面T字形の形状であり、前記挿入回転部における長板の短手方向が前記長尺板材固定具の長手方向と平行になるように、前記挿入取付具が前記固定部に固着されている。前記長尺板材固定具用の固定材には、前記挿入回転部の形状に対応した横長のスリーブ孔が、固定材の長手方向に沿って所定ピッチで形成されている。固定材に前記長尺板材固定具を固定する際は、まず挿入回転部の長手方向が横長のスリーブ孔の長手方向と一致する向きに合わせて挿入取付具を当該スリーブ孔に挿入する。次に、挿入回転部を固定材の裏側に挿通させてから、前記長尺板材固定具を90°回転させる。これによって、長尺板材固定具は、挿入軸足部を中心にして90°回転するので、挿入回転部の長手方向がスリーブ孔の長手方向と直交し、当該挿入回転部は固定材に係止されて、スリーブ孔から抜け出ることはない。これによって、長尺板材固定具は、挿入取付具を介して固定材に固定される。以上の手順で、板材幅に対応させた間隔でスリーブ孔に長尺板材固定具を複数個固定すればよい。また、長尺板材固定具を固定材から取り外す際には、長尺板材を長尺板材固定具から取り外した後に、当該長尺板材固定具を90°再び回転させることによって、固定材裏側の挿入回転部の長手方向が再びスリーブ孔の長手方向と一致するので、挿入回転部をスリーブ孔から抜き出せばよい。
【0031】
請求項10の発明によれば、長尺板材固定具を固定材に固定するための取付具が、前記挿入取付具のように長尺板材固定具と一体化していることによって、ビス類等の取付具を別に準備したり、工具を準備する必要がないので、現場での作業が煩雑にならず、作業を簡単に実施できる。また、前記取付具を紛失することもない。また、当該長尺板材固定具、及びスリーブ孔が形成された固定材を共に使用することによって、前記長尺板材固定具を回転させるだけで固定材から着脱可能となる。これによって、板材幅の異なる長尺板材に変更する際にも、固定材上の長尺板材固定具の固定位置を容易に変更可能となって、作業を効率良く実施できる。前記長尺板材固定具を内壁や間仕切壁、又は天井に適用すれば、容易に壁板や天井板を変更できるので、部屋の模様替えやリフォームを容易に実施できる。
【0032】
請求項11の発明は、幅方向の端面に長手方向に沿って請求項1ないし10に記載の長尺板材固定具を係止可能な係止溝が形成された長尺板材であって、断面長方形状の板材本体と、当該板材本体の長手方向の両端部の下面に一体に取り付けられて前記係止溝を形成するための係止溝形成具とから成ることを特徴としている。
【0033】
請求項11の発明に係る長尺板材は、薄板状の板材本体と、当該板材本体の長手方向の両端部における下面に一体に取り付けられた係止溝形成具とから成り、板材本体の「台」に当該係止溝形成具の「歯」がついた下駄状の構造になっている。当該係止溝形成具は、軽金属(アルミニウム等)や樹脂の押出成形等で成形されたもので、幅方向の両端部には、長尺板材固定具の係止部を係止可能な係止溝が形成されている。長尺板材が上記の構造をしていることによって、長尺板材全体が再生木、又はむくの天然木である場合に比べて、以下の効果が奏される。まず、板材本体のみを再生木や天然木にすれば良いため、再生木や天然木に係止溝等の加工をする必要がないので、加工し易い。また、当該長尺板材は押出し成形品であるので加工精度も得られ、かつ経済的であり、長尺板材の重量も軽減されるので作業し易い。更に、板材本体は断面長方形の板材であれば良いので木製の板材に限られない。板材本体として、ガラスやアクリル板、金属パネル等多彩な材質の板材を利用することが可能となるので長尺板材の選択の幅が広がり、軽量な板材を使用すれば、床板のみならず、壁板や天井板にも適用可能となる。
【0034】
請求項12の発明は、請求項11に記載の発明において、前記係止溝形成具は、板材本体の幅方向の端部に嵌着される断面コ字形の嵌着部を備え、当該嵌着部により板材本体に一体に取り付けられることを特徴としている。
【0035】
請求項12の発明は、請求項11に記載の発明に対して、前記板材本体の幅方向の端部に断面コ字形の嵌着部を備えている点が異なるのみで、他の構成は同一であり、請求項11の発明と同等の作用効果が奏される。更に、前記嵌着部により、板材本体は幅方向の端部で嵌着されて係止溝形成具と一体化されるので、以下のような効果も奏される。即ち、板材本体が木製の薄板の場合には、長尺板材に係止溝形成具をビス類で取り付けることは可能であるが、板材本体がガラス板等の場合には、ビス類で取り付けるのは困難であり、ビス孔の孔開け作業等の余計な作業工程を要する。しかし、前記係止溝形成具は前記嵌着部を有することにより、ビス類等で固定することが困難な材質の板材でも板材本体として使用することが可能となって、使用できる板材の選択の幅がより一層広がる。また、工具等を用いてビス類を抜き取ることなく板材本体を係止溝形成具から外すことも容易に行える。即ち、前記嵌着部により容易に板材本体を係止溝形成具から着脱可能である。従って、嵌着部と一体化した係止溝形成具及び板材本体から成る長尺板材は、軽量でかつ多様な板材に容易に交換可能であるため、内壁や間仕切壁の壁板や、天井板として最適である。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、床面、壁面、又は天井面等の敷設面に多数の長尺板材が敷設された状態において、任意の長尺板材を取り外して、当該長尺板材を再び取り付けることが可能となると共に、敷設面の任意の箇所から敷設を開始することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、最良の実施形態を挙げて本発明について更に詳細に説明する。建物の敷設面には、床面、壁面、天井面が挙げられる。ここでは、前記敷設面が床面、長尺板材が床板、及び固定材が根太材である場合について説明する。最初に、図1ないし図4を用いて、床板固定具の構成について説明する。次に、根太材上に固定された床板固定具と床板との関係を構成面から説明する。図1は、根太材J上に固定された床板固定具A1 を介して敷設された床板B1 群の平面図である。図2は、床板固定具A1 の全体斜視図である。図3は、床板固定具A1 を介して床板B1 が根太材J上に固定された状態を示す正面断面図である。図4は、床板B1 が敷設されていない状態における根太材J上に固定された床板固定具A1 を示す斜視図である。
【0038】
まず、床板固定具A1 の構成について説明する。図2に示されるように、床板固定具A1 は、弾性変形可能なばね鋼で成形され、根太材J上にビス類61で固定される固定部10と、当該固定部10の幅方向の両端から起立して左右対称に対向形成された一対の係止部20からなる。当該係止部20の各先端部には、外方に突出した摺接部21が形成されている。固定部10には、固定部10の長手方向に沿って一箇所或いは複数箇所にビス孔11が形成されている。当該ビス孔11は、床板固定具A1 を根太材J上にビス固定するためのものである。一対の係止部20は、それぞれ前記固定部10と鈍角の起立角度θ0 を有して起立し、対向形成されている。前記係止部20の各先端部に形成された摺接部21は、前記係止部20の起立方向よりも外方に突出した部分を有する。前記摺接部21が外方に突出していることによって、床板B1 の着脱時において、前記摺接部21を床板B1 の下端面1bに摺接させ易くなる。また、前記摺接部21が前記下端面1bに摺接することにより、前記摺接部21を先端部に有する係止部20は、起立角度θが非変形状態の起立角度θ0 よりも小さくなるように弾性変形する。上記の摺接部21の効果が十分に発揮されて、前記摺接部21の外周面に床板B1 の下端面1bが引っ掛かることなく円滑に摺接するためには、摺接部21の最適形状は、開口8が対向するように外方にわん曲された断面円弧状、又は近似円弧状であることが望ましい。
【0039】
根太材J上に固定された床板固定具A1 と床板B1 との関係について説明する。以下、長尺板材の長手方向を方向T、幅方向を方向U、及び固定材の長手方向を方向Sとし、ここでは、床板B1 の長手方向、幅方向をそれぞれ方向T、方向U、及び根太材Jの長手方向を方向Sと単にいうことがある。まず、図1及び図4に示されるように、床板固定具A1 は、当該床板固定具A1 の固定部10の幅方向が根太材Jの長手方向Sと平行になるように根太材J上に配置された状態で、方向Sに沿ってビス類61で固定され、根太材J上に一定ピッチP1 で並んでいる。床板幅W0 の床板B1 は、床板B1 の長手方向Tが方向Sに対して直交するように並置され、床板B1 の幅方向Uの両端面1が隣接する各床板固定具A1 に固定された状態で、根太材J上に敷設されている。なお、図1及び図4の符号41,62は、それぞれ根太材Jを固定する支持枠、及び支持枠と根太材Jを固定するビス類を示す。
【0040】
次に、図3を用いて、床板固定具A1 に係止された状態における床板B1 、及び床板固定具A1 について説明する。まず、天然木或いは再生木からなる床板B1 において、端面1には、床板B1 の長手方向Tに沿って係止溝4が形成されていて、係止溝4を介して上下配置される上下各端面1a, 1bは、下端面1bが内側に入り込んだ段差状になっている。床板B1 の端面1が上記のように段差状である理由は、根太材Jに固定された床板固定具A1 の固定部10との干渉を回避するためであるのと、床板B1 の相隣接する床板固定具A1 への固定作業を容易にするためである。床板B1 が床板固定具A1 で係止された状態では、係止溝4と下端面1bとで形成される出隅部5は、床板固定具A1 の係止部20に当接又は弾接している。また、床板B1 の両端面1に形成された係止溝4内には、隣接する各床板固定具A1 の摺接部21が収納されている。一つの床板固定具A1 の両側に係止された二枚の床板B1 の各上端面1aは、目地幅W1 の目地7を挟んで対向されている。係止溝4の幅及び深さ方向の寸法は、外方に突出した摺接部21が収納されるのに必要十分であれば良い。また、上下各端面1a,1bの段差具合については、床板B1 の係止状態において、出隅部5が床板固定具A1 の係止部20に当接或いは弾接可能となるように、係止溝4の前記寸法と合わせて設定される。
【0041】
図3を用いて、床板B1 を係止した状態の床板固定具A1 について説明する。床板固定具A1 は、固定部10が根太材J上に当接した状態で、ビス類61を介して根太材Jに固定されている。一対の係止部20は、それぞれ前記固定部10と起立角度θ1 をなして起立し、床板B1 の出隅部5と当接或いは弾接状態で床板B1 を係止している。このとき、係止部20の先端部に形成された摺接部21は、床板B1 の係止溝4に収納されている。前記係止部20が出隅部5と当接している場合には、前記起立角度θ1 は、床板固定具A1 の非変形状態における起立角度θ0 に等しい。一方、前記係止部20が出隅部5と弾接している場合には、起立角度θ1 は前記起立角度θ0 よりも小さくなって、係止部20は僅かに立ち上がった状態に弾性変形されている。このため、係止部20には弾性復元力が作用して、係止部20は弾接している出隅部5を斜下方に向けて押圧する。従って、当接状態よりも弾接状態の方が床板B1 の係止は強固になっている。
【0042】
前記出隅部5が当接或いは弾接する係止部20の位置については、前記出隅部5が係止できないような摺接部21の上方部分では問題はあるが、それより下方であれば、前記係止部20又は摺接部21のどの位置に前記出隅部5が当接或いは弾接しても問題はない。ただし、床板B1 が根太材J上に係止された状態を安定的に保持する必要性を考慮すれば、床板固定具A1 の摺接部21の下端部、或いはその上下付近が望ましい。特に、床板B1 の浮き上がり防止の観点からでは、上記位置として前記下端部が最適である。なお、図3では、前記出隅部5が前記下端部より僅かに下側の係止部20に弾接された状態が図示されている。図中F,F1 ,F2 はそれぞれ床板固定具A1 の弾接力、該弾接力の垂直方向の分力、同水平方向の分力を示し、これらについては後述する。
【0043】
次に、図3ないし図8を用いて、水平に設置された根太材J上に床板固定具A1 を介して床板B1 を敷設する二種類の工程について説明し、その後、任意の一枚の床板B1 を根太材J上から脱着する工程について説明する。図5の(イ)ないし(ハ)は、隣接する床板固定具A1 に一枚の床板B1 を傾斜姿勢で係止させていく工程を正面から順番に見た図である。図6は、隣接する床板固定具A1 に一枚の床板B1 を直上から係止させる工程を正面から順番に見た図である。図7は、根太材Jの端部付近に敷設された床板B1 群の正面断面図である。図8の(イ)ないし(ハ)は、根太材J上に敷設された床板B1 群から一枚の床板B1 を取り外す工程を正面から順番に見た図である。なお、図5,図6,図8において、床板固定具A1 及び根太材Jの断面表示は省略してある。また、図8(イ)では、床板固定具A1 の係止部20を出隅部5に当接させた状態で床板B1 を係止しているため、係止部20の係止状態の起立角度θ1 は非変形状態の起立角度θ0 と等しくなっている。
【0044】
まず、図4を用いて、床板固定具A1 の根太材J上への取付け工程について説明する。床板B1 を敷設後、隣り合う床板B1 の間に予め設定された目地幅W1 を有する目地7が形成されるように、各根太材Jの長手方向Sに対して床板固定具A1 の幅方向が平行となるように床板固定具A1 を配置し、所定のピッチP1 で床板固定具A1 をビス類61で固定していく。ピッチP1 は、床板B1 の床板幅W0 と前記目地幅W1 との和になるように定められる(P1 =W0 +W1 )。また、床板固定具A1 を固定していく際に、その都度ピッチP1 を定めながら、ドリルビス等を用いて根太材Jを穿孔すると同時に床板固定具A1 を固定させていくことも可能であるが、予め前記方向Sに沿ってピッチP1 でビス孔を形成しておいた根太材Jを用いて、床板固定具A1 の固定部10に形成されたビス孔11を前記ビス孔に対応させてビス類61を挿通させることにより固定していくことも可能である。所定ピッチP1 でビス孔が予め形成された根太材Jを用いれば、経験や技術のない作業者でも、失敗することなく所定ピッチP1 で床板固定具A1 を根太材J上に固定させていくことが可能であるし、根太材J上の任意のどの部分からでも床板固定具A1 の固定作業を容易に開始できる。
【0045】
次に、図5を用いて、根太材J上に固定されてピッチP1 で隣接する床板固定具A1 に床板B1 を係止させて、床板B1 を根太材J上に固定していく工程について説明する。ここで、床板B1 を係止する前の非変形状態の床板固定具A1 において、固定部10に対する係止部20の起立角度はθ0 である。また、摺接部21の水平方向に対して最も外方に突出した部分と、該突出方向に隣接した床板固定具A1 の摺接部21における上記部分との距離(間隔)を床板固定具A1 の「開口幅D」と定め、床板固定具A1 の非変形状態(即ち、床板B1 を係止していない状態)における開口幅をD0 とする。
【0046】
上記の状態で隣接している二つの床板固定具A1 に、一枚の床板B1 を係止させる。その手順を以下に示す。最初に、床板B1 を水平方向に対して斜めに傾けながら、水平より低く傾いた側(図5では紙面左側)の端面1の係止溝4に、床板固定具A1 の係止部20先端の摺接部21が挿入されるように、床板B1 を前記係止部20に向けて落とし込む。水平より低く傾いた側の出隅部5が床板固定具A1 の係止部20に当接したら、その傾斜姿勢のまま床板B1 を更に斜下方に落とし込んで、床板固定具A1 の係止部20を押圧する。このとき、該係止部20は起立角度θが非変形状態の起立角度θ0 よりも小さくなるように弾性変形するので、床板固定具A1 の開口幅Dは非変形状態の開口幅D0 よりも大きくなる。該開口幅Dが広がるので、前記出隅部5付近を中心として床板B1 を下方に回動させ、水平より高く傾いている側(図5では紙面右側)の下端面1bと下面3との出隅部6を、隣接の床板固定具A1 の摺接部21に当接させる。前記出隅部6が前記摺接部21に当接したら、更に下方へ押し込む。すると、同側の床板固定具A1 の係止部20は、起立角度θが非変形状態の起立角度θ0 よりも僅かに小さくなるように弾性変形していき、前記出隅部6、続けて前記下端面1bは摺接部21の外周面に摺接しながら下方に滑り込んでいく。この結果、床板B1 の下面3全体が根太材J上に当接し、床板B1 は隣接する床板固定具A1 間に完全に嵌まり込む。それと同時に、床板B1 の両端面1側の床板固定具A1 の係止部20が、自身の弾性復元力にて起立角度θを非変形状態の起立角度θ0 に戻すように復元するので、床板B1 の各端面1側の出隅部5は、それぞれ各床板固定具A1 の係止部20に当接か或いは弾接した状態で係止され、このとき前記各床板固定具A1 の摺接部21は、床板B1 の各側の係止溝4によって収納される。以上の工程により、床板B1 は、床板固定具A1 を介して根太材J上に固定される。
【0047】
前記出隅部5が前記係止部20によって係止された状態において、床板固定具A1 の開口幅、及び係止部20の起立角度をそれぞれD1 ,θ1 とすれば、前記出隅部5が係止部20に対して当接状態で係止されている場合には、前記開口幅D1 、及び前記起立角度θ1 は、非変形状態の開口幅D0 、及び起立角度θ0 に等しい。また、前記出隅部5が弾接状態で係止されている場合には、前記開口幅D1 は非変形状態の開口幅D0 よりも大きく、前記起立角度θ1 は非変形状態の起立角度θ0 よりも小さい。前記係止部20の起立角度θ1 が非変形状態の起立角度θ0 よりも小さいので、前記係止部20では非変形状態まで変形が完全に復元しておらず、前記係止部20の弾性復元力は残存した状態にある。上記残存した弾性復元力を弾接力Fとすれば、該弾接力Fが作用することによって、前記係止部20は自身と弾接している出隅部5を斜下方に向けて押圧する。前記弾接力Fのうち垂直方向の分力F1 が、根太材Jに対して床板B1 を押付けて固定するように作用するため、当接状態よりも弾接状態の方が床板B1 の係止は強固になる。また、前記出隅部5が、床板固定具A1 の摺接部21の下端部に当接或いは弾接している場合には、前記摺接部21が床板B1 の係止溝4に係止され、前記出隅部5の上方への動きが阻害されるので、床板B1 の浮き上がりが最も効果的に防止される。
【0048】
また、前記弾接力Fのうち水平方向の分力F2 は、床板B1 の両端面1において、相等しいために互いに相殺される。前記分力F2 が均衡することによって、根太材Jの長手方向Sに沿って隣接する各床板固定具A1 の中間位置に、即ち、床板固定具A1 の開口幅D1 の中点に当たる位置に床板B1 の幅方向Uの中央部が一致するように、床板B1 が配置される。従って、敷設される床板B1 の幅方向Uの位置決めは、同方向U、即ち前記方向Sに沿って隣接配置された各床板固定具A1 の弾接力Fが互いに等しくなり均衡することによって行われる。そして、床板固定具A1 を根太材J上に固定するピッチP1 と、床板B1 の幅W0 が一定である限り、相隣接する床板B1 の端面1同士の間隔である目地幅W1 は、全ての床板B1 において一定となる。
【0049】
次に、図6を用いて、別の手法にて床板B1 を根太材J上に固定する工程を説明する。上記のように前記床板B1 を傾斜させて床板固定具A1 に係止させる以外の方法としては、以下の方法も可能である。まず、前記床板B1 を水平に載置して、床板B1 両端面1の出隅部6或いは出隅部付近の下面3を、隣接する床板固定具A1 の摺接部21に当接させる。次に、前記床板B1 の上面2上に作業者が乗り上げ、勢いをつけて前記床板B1 を踏みつける等の手段を講じて、前記床板B1 を押し下げるのに十分な力を直上から前記床板B1 に与える。この結果、前記床板B1 は、各出隅部6及び下端面1bを順に摺接部21と摺接させながら、前記係止部20の起立角度θを小さく、また、床板固定具A1 の開口幅Dを大きくするように前記係止部20を弾性変形させていく。これによって、床板B1 は垂直方向に押し下げられて、隣接する床板固定具A1 間に挟め込まれる。これと同時に、前記係止部20は、弾性復元力によって、床板B1 の両端面1の出隅部5と当接か或いは弾接するまで弾性変形を復元させて、起立角度θ1 をなして前記出隅部5を係止し、前記摺接部21は前記床板B1 の係止溝4に収納される。
【0050】
以上、いずれかの工程を繰り返し実施することによって、水平に設置された根太材J上に順に固定していき、水平な床板B1 群を形成していく。図7に示すように、敷設された床板B1 群は、床板幅W0 の床板B1 が目地幅W1 の目地7を有して、根太材Jの長手方向Sに沿ってピッチP1 で根太材J上に連続的に固定された床板構造となっている。そして、各床板B1 の両端面1に形成された係止溝4と下端面1bとで形成される出隅部5が床板固定具A1 と当接或いは弾接することによって、床板B1 は床板固定具A1 に係止され、床板B1 の根太材J上への固定が可能となっている。なお、根太材Jをビス類62で固定した支持枠41において、敷設された前記床板B1 群を敷設予定場所に設置する場合には、支持枠41を介して前記床板B1 群が固定された根太材Jをビス類63等で地面(床面)Gに固定するか、或いは、支持枠41の各所に支持脚を設け、該支持脚を立脚させて前記床板B1 群を地面Gから所定高さを有して設置する。前記支持脚の高さ方向を調節することにより、前記床板B1 群の設置高さを変えることが可能である。また、地面Gが斜面である場合、或いは、床板B1 群をスロープ状に傾斜させる場合等において、根太材Jを水平面に対して傾斜した状態で設置し、その上に床板B1 を固定する際は、上記した床板B1 の固定方法において、「水平方向」を「根太材Jの長手方向S」と読み替えれば良い。これは、以下に説明する床板B1 の取外し方についても同様である。
【0051】
次に、図6及び図8を用いて、敷設された床板B1 群から、任意の一枚の床板B1 を脱着する工程について説明する。まず、敷設された床板B1 群のうち、或る任意の床板B1 を取り外すには、以下の手順で行えばよい。まず、当該床板B1 を略目地幅W1 分だけ床板B1 の幅方向U、即ち方向Sに沿ってスライドさせて、当該床板B1 の両端面1の出隅部5を係止している各床板固定具A1 のうち、一方側の床板固定具A1 の係止部20を押圧して、起立角度θが係止状態の起立角度θ1 よりも小さくなるように前記係止部20を弾性変形させ、床板B1 の幅方向Uに沿って隣接する床板固定具A1 間の開口幅Dを係止状態の開口幅D1 よりも広くする。この結果、当該床板B1 の他方側の床板固定具A1 において、該床板固定具A1 の摺接部21を収納していた係止溝4が該床板固定具A1 から離れるので、当該床板B1 の係止溝4に対する係止を緩めるか或いは解除した状態となる。次に、前記スライドにより係止部20を押圧した側を中心として床板B1 を回動させるようにして、前記係止が緩んだ状態にある側の当該床板B1 の端部を持ち上げ、当該床板B1 を水平方向に対して傾斜させていくと、持ち上げられた側の下端面1bは該摺接部21に摺接する。該摺接部21と連接する係止部20は、起立角度θを小さくする方向に僅かに弾性変形しながら、前記下端面1bを該摺接部21に沿って滑り上げていく。この結果、持ち上げられた側の床板B1 の端部は完全に床板固定具A1 から外れ、それと同時に、前記係止部20は弾性復元力により変形は復元し、非変形状態の起立角度θ0 になるまで起立する。また、前記係止が解除された状態にある場合、同状態にある側の当該床板B1 の端部を持ち上げると、前記端部は下端面1bが摺接部21に接触することなく持ち上がる。この結果、持ち上げられた側の床板B1 の端部は、敷設された状態で隣接する床板B1 の上面2よりも上方まで持ち上げ可能となる。従って、この傾斜方向に沿って当該床板B1 を引き上げると、隣接する両床板B1 は固定されたままで、当該床板B1 のみが外される。なお、当該床板B1 が引き上げられるにつれて、当該床板B1 の幅方向Uへのスライドにより弾性変形していた側の床板固定具A1 の係止部20は、弾性復元力によって非変形状態に戻っていく。なお、取り外した床板B1 を元の位置に戻して再固定するには、上記したように、床板B1 の敷設工程と同じ手順で実施すればよい。
【0052】
次に、図9を用いて、床板B1 の目地7の幅W1 について説明する。図9(イ)及び(ロ)は、目地幅W1 ,W2 をそれぞれ有して床板B1 が固定され、敷設された状態における床板B1 群の正面断面図である。なお、床板固定具A1 及び根太材Jの断面表示は略してある。床板B1 の目地7の幅W1 は、一般的には3mm,5mm,10mmがある。目地幅W1 が大きい場合には、見栄えが悪いだけでなく、床板B1 群の床下への落下物も多く、また、つま先を目地7に引っ掛けたり、ハイヒールのヒール部分が前記目地7内に嵌る等で歩行時に危険である。このため、床板B1 の自然発生的な膨張分や反り分を考慮しつつ、なるべく目地幅W1 を小さくできることが望ましく、最適な目地幅W1 として3ないし5mmが採用されることが多い。本発明の床板固定具A1 では、3ないし5mm内で目地幅W1 を容易に変えることが可能である。即ち、ピッチP1 は、床板幅W0 と目地幅W1 との和であるから、目地幅W1 をW1 より狭い目地幅W2 に変える場合(W2 <W1 )には、前記床板固定具A1 を根太材J上に固定するピッチP1 を狭くするだけでよい。また、目地幅W2 を有して床板B1 が係止された状態にある床板固定具A1 のピッチ、及び係止部20の起立角度をそれぞれP2 ,θ2 とすれば、ピッチP2 とピッチP1 の関係は、P2 <P1 であり、また、起立角度θ2 と起立角度θ1 、及び非変形状態の起立角度θ0 との関係は、θ2 <θ1 ≦θ0 となる。従って、起立角度θ1 がθ0 と等しい状態、即ち係止部20が床板B1 の出隅部5と当接状態で床板B1 を根太材J上に固定するような床板固定具A1 の場合には、目地幅をW1 よりも小さいW2 に調整すると、前記係止部20は前記出隅部5と弾接するようになるので床板固定具A1 はより強固に床板B1 を係止可能となる。また、前記起立角度θ1 がθ0 よりも小さい状態、即ち係止部20が床板B1 の出隅部5と弾接状態で床板B1 を根太材J上に固定するような床板固定具A1 の場合には、目地幅をW1 よりも小さいW2 に調整すると、係止部20にはより大きな弾性復元力が残存するので、より大きな弾接力Fが前記係止部20に作用する。従って、前記床板固定具A1 は、一層強固に床板B1 を係止できるようになる。
【0053】
次に、図10及び図11を用いて、固定された床板B1 の長手方向へのずれを確実に防止する方法について説明する。図10(イ)及び(ロ)は、それぞれ床板B1 の非固定時、及び固定時において、弾性変形維持部材51が嵌着された床板固定具A1 を正面から見た断面図である。図11(イ)及び(ロ)は、一方側の係止部20の一部にゴム部52、及びバリ部53がそれぞれ形成された床板固定具A1 の全体斜視図である。床板固定具A1 を介して根太材J上に敷設された床板B1 群において、該床板B1 群上に長期間に亘り過剰な歩行や衝撃がかかると、各床板固定具A1 に係止された床板B1 は、床板B1 の長手方向Tに沿ってずれを生じる可能性がある。これを防止するための方法を以下に示す。まず、一つ目の方法は、ばね材で形成された弾性変形維持部材51を備えた床板固定具A1 を用いる点である。当該弾性変形維持部材51は、両端部51bが床板固定具A1 の対向形成された各係止部20或いは摺接部21内面にそれぞれ嵌着され、中央部51aは弓形状の架橋状態で配置された形状である。該弾性変形維持部材51の中央部51aを持ち上げて上側が突出するような弓形状に撓ませた場合には、前記弾性変形維持部材51の両端部51bを介して、前記床板固定具A1 の係止部20が起立角度θ1 を小さくする方向に弾性変形するため、前記床板固定具A1 による床板B1 の係止が緩和された状態となる。また、該中央部51aを押し下げて下側が突出するような弓形状に撓ませた場合には、前記弾性変形維持部材51の両端部51bを介して、前記床板固定具A1 の係止部20には床板B1 を斜下方に押圧する力が加わる。このため、前記各係止部20の弾性変形状態が長期に亘って維持され、床板B1 の出隅部5に対する前記係止部20の弾接状態も維持される。従って、前記床板固定具A1 単体の場合よりも、より大きな力で床板B1 を長期間に亘って押圧し、床板B1 の根太材J上への係止状態を維持できるので、床板B1 を長期間使用しても床板B1 の長手方向Tへのずれは防止される。
【0054】
また、固定された床板B1 の長手方向へのずれを防止する別の方法としては、摩擦力を利用する方法がある。即ち、床板固定具A1 の片側一方の係止部20の一部に摩擦力の大きい材質であるゴム材を貼り付けてゴム部52を形成するか、前記係止部20の一部の表面状態を粗くして、摩擦力を有するバリ部53を形成する方法である。前記ゴム部52或いはバリ部53は、床板B1 の出隅部5が当接或いは弾接する位置を含むように、片側一方の前記係止部20の外側面の一部に形成される。前記ゴム部52或いはバリ部53を前記係止部20の片側一方にのみ設ける理由は、床板B1 の着脱のし易さのためである。前記ゴム部52或いはバリ部53を有する床板固定具A1 を用いて床板B1 を根太材J上に固定する際は、まず、ゴム部52或いはバリ部53が形成されている側の摺接部21に前記床板B1 の係止溝4が挿入されるように床板B1 を斜め下方に落とし込み、前記床板B1 の出隅部5を係止部20に当接させ、押圧する。次に、水平より高く傾いた側の出隅部5及び下端面1bを、隣接する床板固定具A1 の摺接部21に摺接させて、床板B1 の下面3が根太材J上に当接するまで下方に滑らせていけばよい。なお、固定された床板B1 を取り外す際は、上記と反対の手順で行えばよい。前記出隅部5及び下端面1bが摺接する側の摺接部21及び係止部20には、前記ゴム部52或いはバリ部53が形成されてないので、床板B1 の着脱は容易に行える。
【0055】
本発明の床板固定具A1 によって、一枚単位で床板B1 を容易に交換可能となった結果、以下のような利点が挙げられる。前記床板B1 群のメンテナンスが時間的にも経済的にも効率良く実施できる。また、床板B1 の目地7から床板B1 群の下部空間に落下した硬貨や貴重品等の落下物を容易に拾得でき、前記下部空間に溜まったゴミ等を容易に除去できる。更に、前記下部空間を有効活用して、床板B1 群に付加価値をつけることが可能となる。例えば、床板B1 群の下部空間(例えば支持枠41上)に照明装置を設置すれば、夜間に足元を照らせる床板B1 群になる。また、前記床板B1 群と地面Gとの間の空間に水道上下管を配管し、電線等を配線すれば、水を使用する場所、例えば、噴水、ジャグジーバス、ガーデニング可能な庭等に前記床板B1 群を採用することも可能となる。
【0056】
上記した床板固定具A1 のうち、係止部20の先端部分に形成された摺接部21の形状が図12−A及び図12−Bに示すように変化したものを使用しても、根太材J上に床板B1 を固定することは可能である。図12−A(イ),(ロ)及び図12−B(ハ),(ニ)は、それぞれ摺接部22ないし25を有する床板固定具A2 ないしA5 と床板B1 との係止部の断面図である。ここで、床板固定具A2 ないしA5 において、その固定部10、及び摺接部22ないし25より下の部分における係止部20は、床板固定具A1 と同一形状であるため、同一符号を付した。また、各摺接部22ないし25は、係止部20の起立方向よりも外側に突出した部分を有する点は共通している。まず、図12−A(イ)に示されるように、床板固定具A2 において、その摺接部22は、開口8が対向するように外方に屈曲されて、開口8側が広くなった断面コの字状を有している。図12−A(イ)では、前記床板固定具A2 は、床板B1 の出隅部5に対して摺接部22の下端部より僅かに下方部分を当接或いは弾接させた状態で、床板B1 を根太材J上に固定している。次に、床板固定具A3 において、図12−A(ロ)に示されるように、その摺接部23は、断面がリング状になるようにわん曲された形状となっている。図12−A(ロ)では、前記床板固定具A3 は、床板B1 の出隅部5に対して摺接部23(摺接部23における斜下側部分)を当接或いは弾接させた状態で、床板B1 を根太材J上に固定している。また、床板固定具A4 において、図12−B(ハ)に示されるように、その摺接部24は、開口8が対向するように外側に屈曲された断面略山型形状を有している。図12−B(ハ)では、前記床板固定具A4 は、床板B1 の出隅部5に対して摺接部24の下端部より僅かに下方部分を当接或いは弾接させた状態で、床板B1 を根太材J上に固定している。更に、床板固定具A5 において、図12−B(ニ)に示されるように、その摺接部25は、係止部20の起立方向よりも外側に折曲された平板部25aの先端に内側に向けてわん曲されたわん曲部25bを有する形状である。図12−B(ニ)では、前記床板固定具A5 は、床板B1 の出隅部5に対して摺接部25の最も基端の部分に当接或いは弾接させた状態で、床板B1 を根太材J上に固定している。
【0057】
次に、図13を用いて床板固定具A6 について説明する。図13(イ)は、床板固定具A6 が床板B1 を係止している状態を正面から見た図であり、同(ロ)は、床板固定具A6 の全体斜視図である。床板固定具A1 ないしA5 において、一対の係止部20は、固定部10の幅方向の両端部から鈍角の起立角度θ0 で起立して対向形成されているが、以下に説明する形状の床板固定具A6 を使用しても、前記床板固定具A1 ないしA5 と同じように床板B1 を係止することができる。床板固定具A6 は、ビス類61を介して根太材J上に固定される固定部10と、当該固定部10の幅方向の両端部における長手方向に沿ってずれた位置から鋭角の起立角度θ3 で起立した一対の係止部30からなっている。また、各係止部30の先端部分には、床板B1 の着脱時に床板B1 の出隅部6及び下端面1bに摺接する摺接部31が形成されている。このため、前記床板固定具A6 の正面視では、一対の当該係止部30は互いに交差した状態で、当該係止部30先端の摺接部31は外方に突出されている。前記摺接部31の形状は、上記した摺接部21ないし25のいずれの形状でも良いが、図13の摺接部31は摺接部21と同様の形状である。
【0058】
床板固定具A6 を用いて、根太材J上に床板B1 を着脱する際は、上記の床板固定具A1 による床板B1 の着脱方法と同じである。但し、係止部30の起立角度θ3 が鋭角であるため、以下の点で前記床板固定具A1 との相違がある。即ち、床板B1 が摺接部21を介して前記床板固定具A1 の係止部20に作用すると、前記係止部20の起立角度θは非変形状態の起立角度θ0 よりも小さくなるように弾性変形する。一方、床板固定具A6 では、床板B1 が摺接部31を介して係止部30に作用すると、前記係止部30の起立角度θは非変形状態の起立角度θ3 よりも大きくなるように弾性変形する。なお、図13(イ)では、床板固定具A6 は、床板B1 の出隅部5を摺接部31のちょうど下端部に当接あるいは弾接させることによって、前記床板B1 を係止している。
【0059】
材質の弾性力を利用した床板固定具の別の例としては、図14に示す床板固定具A7 がある。図14(イ)ないし(ハ)は、床板固定具A7 に床板B1 を係止していく工程を正面から順番に見た図である。床板固定具A7 は断面略Y字状であって、根太材J上に固定される固定部70と、該固定部70の幅方向の中央から直上に起立した起立部80と、該起立部80の先端部に形成された一対の係止部90とから成る。当該各係止部90は、先端部に形成された上係止部91、下端部に形成された下係止部92、及び上係止部91と下係止部92を連結する本体係止部93とから成り、各係止部90は内側にわん曲された断面形状を有している。前記係止部90の内側にわん曲された外周面が、床板固定具A1 における摺接部21と同様の作用効果を有している。前記各本体係止部93の対向面には前記固定部70の長手方向に沿って複数の突条94が形成されている。なお、本実施例のビス類61において、床板固定具A1 ないしA6 を固定するビス類61と用途は同様であるが、頭部の形状は、床板B1 と干渉しないようになべ頭状ではなく皿頭状となっている。
【0060】
床板固定具A7 を用いて、床板B1 を根太材J上に固定する際は、以下の手順で行う。まず、床板B1 を水平方向に対して斜めに傾けながら、水平より低く傾いた側の端面1の係止溝4に、床板固定具A7 の係止部90が挿入されるように、床板B1 を前記係止部90に向けて傾斜姿勢で落とし込む。前記係止溝4の上面4aが前記係止部90の上係止部91に当接したら、この当接点91aを介して該上係止部91を下方向に押圧し、係止部90全体を弾性変形させる。弾性変形させた状態のまま、前記当接点91a付近を中心に下方向に床板B1 を回動させることにより、前記当接点91a側の出隅部5を下係止部92の下側に入り込ませ、床板B1 の水平より高く傾いていた側においては、下端面1bと下面3との出隅部6を、隣接の床板固定具A7 の係止部90に摺接させる。前記出隅部6が前記係止部90に摺接したら、更に下方へ押し込む。前記出隅部6は、係止部90の内側にわん曲した外周面に摺接しながら下方に滑り込んでいく。前記出隅部6が前記係止部90の下係止部92下端まで到達した時点で、更に力を入れて下方に床板B1 を押し込むことにより、前記下係止部92は下方向に弾性変形しながら床板B1 の下端面1bと摺接して出隅部5と摺接するまで、床板B1 は一気に押し込まれる。床板B1 の下面3が床板固定具A7 の固定部70上に当接するまで床板B1 が押し込まれると、それと同時に、下方に弾性変形していた前記下係止部92には弾性復元力が上方に作用して、前記下係止部92は上方に復元し、床板B1 の係止溝4の下面4bに当接或いは弾接する。この結果、床板B1 は床板固定具A7 によって係止される。このとき、弾性変形されていた係止部90の上係止部91の弾性復元力に対して、下係止部92によって係止溝4の下面4bが当接或いは弾接状態で係止されるので、前記上係止部91が係止溝4の上面4aと当接或いは弾接する場合でも、床板B1 は確実に床板固定具A7 によって係止される。なお、床板B1 を着脱せずに根太材J上への固定状態を維持させておく場合には、床板固定具A7 を弾性力のやや小さいアルミ材から成形し、一対の本体係止部93の対向面によって形成される空間95に、アンカーゴムRを挿入して床板固定具A7 の係止を強固にしてもよい。また、アンカーゴムRの側面に、前記本体係止部93の対向面に形成された突条94に対応する溝を形成すれば、前記床板固定具A7 の係止を更に強固に維持することができる。
【0061】
次に、図17(イ)及び(ロ)を用いて床板固定具A8 について説明する。図17(イ)は、床板固定具A8 が床板B2 を係止している状態を正面から見た断面図であり、同(ロ)は、床板固定具A8 の全体斜視図である。床板固定具A8 の構成は、床板固定具A1 と比較して、係止部20の起立角度θ及び係止部20の先端部分が相違している。即ち、床板固定具A1 における一対の係止部20は、固定部10の幅方向の両端部から鈍角の起立角度θ0 で起立して対向形成されているが、床板固定具A8 は、一対の係止部20のうち一方の係止部20aは、鈍角の起立角度θ0 で起立しているが、他方の係止部20bは、固定部10に対して直角の起立角度θ4 をなして起立している。また、前記係止部20aの先端部分には、床板固定具A1 の摺接部21と同一の摺接部21が形成されていて、当該摺接部21の形状は、前記係止部20aの起立方向よりも外方に突出し、わん曲された断面円弧状、又は近似円弧状である。一方、係止部20bの先端部分には、当該係止部20bの起立方向よりも外側に折曲された平板状の浮上り防止部28が形成されている。
【0062】
床板固定具A8 を用いる際は、当該床板固定具A8 に適した床板B2 を使用する。当該床板B2 は、床板固定具A1 の際の床板B1 とは形状が異なる。即ち、床板B2 の両側の端面1に形成された係止溝4,4’の幅及び深さ方向の寸法がそれぞれ異なる。一点目は、前記床板B2 において、床板固定具A8 の浮上り防止部28が収納される側の係止溝4’は、摺接部21が収納される側の係止溝4よりも幅は狭く、深さは深くなっている。二点目は、係止溝4が形成されている側の端面1は、上端面1aに対して下端面1bが内側に入り込んだ段差状になっているが、係止溝4’が形成されている側の端面1’においては、上端面1a’と下端面1b’は同一面上にあり、段差状にはなっていない。なお、前記係止溝4の上端面1aに対する下端面1bの入り込み具合は、床板固定具A1 の床板B1 に比べて大きく、上端面1aがより一層張り出した形状となっている。
【0063】
図17に示されるように、床板B2 の上端面1a,1a’の垂直方向の長さ(厚さ)は異なっているが、下端面1b,1b’の垂直方向の長さ(厚さ)は同一で、出隅部5,5’の位置(高さ)が同一となっている。当該床板B2 の変形型として、例えば、床板B2 の上端面1a,1a’の前記長さが同一で、かつ下端面1b,1b’の前記長さ及び出隅部5,5’の高さが異なる構成の床板B2 ’が挙げられる(図示せず)。当該床板B2 ’を使用する場合には、出隅部5,5’の高さに対応させて、係止部20a,20bの各起立高さが異なる構成の床板固定具A8 の変形型A8 ’を用いると良い(図示せず)。
【0064】
床板固定具A8 を用いて、根太材J上に床板B2 を着脱する際は、上記の床板固定具A1 による床板B1 の着脱方法と類似である。但し、床板固定具A8 の係止部20’bは直角の起立角度θ4 で起立し、その先端部分に浮上り防止部28を有するために、前記床板固定具A1 との間には新規に床板B1 を根太材J上に取り付けて敷設していく工程に相違点がある。即ち、床板固定具A1 を用いて新規に床板B1 を敷設していく場合には、前記床板固定具A1 を予め根太材Jに固定しておき、後から床板B1 を取り付けていくことができたが、床板固定具A8 を用いる場合には、床板固定具A8 の根太材J上への固定と床板B2 の取り付けを交互に行って床板B2 を敷設していく必要がある。以下、図18(イ)ないし(ハ)を用いて、床板B2 の敷設工程を説明する。図18(イ)ないし(ハ)は、床板固定具A8 に床板B2 を係止していく工程を正面から順番に見た図である。床板B2 を一枚ずつ順番に根太材J上の所定場所から新規に敷設していく場合には、まず、床板B2 の目地幅W1 及び床板幅W0 を考慮してピッチP1 を決め、根太材J上にピッチP1 ごとに目印等をつけておく。次に、図18(イ)に示すように、最初の床板固定具A8 を根太材J上に配置する際は、一対の係止部20a,20bのうち係止部20a側が床板B2 の敷設方向を向くように敷設開始場所に配置する。そして、前記最初の床板固定具A8 をビス類61で根太材J上に固定する。次に、前記床板固定具A8 の隣、即ち係止部20aに出隅部5が当接するようにして一枚目の床板B2 を載置する。図18(ロ)に示すように、二個目の床板固定具A8 を前記床板B2 の隣に置き、当該床板固定具A8 の浮上り防止部28を前記床板B2 の係止溝4’に収納させる。前記床板B2 の出隅部5を、最初に固定した床板固定具A8 の係止部20aに当接させた状態で、前記床板B2 を根太材Jの長手方向Sに沿ってスライドさせて、前記係止部20aをその起立角度θが僅かに小さくなるように押圧する。前記係止部20aを押圧した状態のまま、二個目の床板固定具A8 の位置をピッチP1 の前記目印に合わせる。ドリルビス等を用いて根太材Jを穿孔すると同時にビス類61で前記床板固定具A8 を固定する。このとき、最初に取り付けられた床板固定具A8 において、押圧されていた係止部20aは弾性変形し、前記床板B2 の出隅部5を弾接状態で係止させる。また、前記係止部20aの起立角度はθ1 となっていて、係止状態の起立角度θ1 は、非変形状態の起立角度θ0 よりも小さい。一方、二個目に取り付けられた床板固定具A8 において、係止部20bの起立角度θ4 は直角であるため、前記係止部20bは全面に亘り前記床板B2 の下端面1b’と接している。前記係止部20bの先端部分の浮上り防止部28は、前記床板B1 の係止溝4’に収納されており、前記浮上り防止部28の下端部28bは前記床板B2 の出隅部5’を係止している。従って、前記床板B2 は、最初の床板固定具A8 の係止部20aによって出隅部5を、二個目の床板固定具A8 の係止部20bによって出隅部5’を係止されることで、根太材J上に固定されている。なお、このときの二個目の床板固定具A8 における前記浮上り防止部28の先端部分28aは、係止溝4’の上面4a’に当接しているか、又は前記上面4a’との間に極めて僅かな隙間があるのみである。次に、図18(ハ)に示すように、二枚目以降の床板B2 を根太材J上に敷設していく場合には、上記工程を繰り返し、床板固定具A8 と床板B2 とを交互に根太材Jに取り付けていけばよい。
【0065】
図19(イ),(ロ)を用いて、床板固定具A1 に対する床板固定具A8 の優れた点について説明する。図19(イ)は、床板固定具A1 が床板B1 を係止している状態を正面から見た図である。同(ロ)は、床板固定具A8 が床板B2 を係止している状態を正面から見た図である。図19(イ)に示すように、床板固定具A1 を用いて床板B1 を根太材J上に固定した場合には、前記床板B1 の両出隅部5と共に、前記床板B1 に隣接する各床板固定具A1 の係止部20に弾接されることによって、前記床板B1 は係止されている。このため、例えば長時間の使用等により、床板B1 が長手方向Tに沿って反り上がり、床板固定具A1 によって係止されている部分が浮き上がってしまうと、前記床板固定具A1 の係止部20は、弾性変形して起立角度θを小さくして倒れるように弾性変形してしまうので、前記床板B1 の係止部分の浮き上がりを防止することができない可能性がある。なお、図19(イ)において、浮き上がった床板B1 は二点鎖線で示した。一方、図19(ロ)に示すように、床板固定具A8 を用いて床板B2 を根太材J上に固定した場合には、床板B2 の係止部分の浮上りを防止できる。以下に理由を示す。一点目は、前記床板固定具A8 の係止部20bの起立角度θ4 は直角であるために、前記係止部20bは全面に亘って床板B2 の下端面1b’と接しており、前記係止部20bが押圧されても、弾性変形することは殆どない点である。二点目は、床板B2 の係止溝4’には、床板固定具A8 の浮上り防止部28が完全に収納されていて、その先端部分28aは、係止溝4’の上面4a’とほぼ当接状態にある点である。三点目は、床板B2 の出隅部5’が前記浮上り防止部28の下端部28bによって当接状態で係止されている点である。従って、床板B2 が長手方向Tに反り上がり、床板固定具A8 との係止部分が浮き上がろうとして各係止部20a,20bを押圧しても、床板固定具A8 の係止部20bは殆ど弾性変形せず、また、浮上り防止部28は、その先端部分28aを係止溝4’の上面4a’にほぼ当接した状態で収納されていて、かつその下端部28bで出隅部5’を係止しているので、床板B2 が浮き上ることはない。
【0066】
次に、図20(イ),(ロ)を用いて、上記の工程で根太材J上に敷設された床板B2 群から、任意の一枚の床板B2 を脱着する工程について説明する。図20(イ),(ロ)は、根太材J上に敷設された床板B2 群から一枚の床板B2 を取り外す工程を正面から順番に見た図である。当該工程は、床板固定具A1 を用いて敷設された床板B1 群から、任意の一枚の床板B1 を脱着する工程とほぼ同一であるが、異なる点は、床板B2 を持ち上げる側が決まっている点である。即ち、隣接の床板固定具A1 に両端部を係止されている床板B1 の場合は、床板B1 のどちらの端部を持ち上げても取り外すことは可能であるが、隣接する床板固定具A8 に両端部を係止されている床板B2 の場合は、一方の端部では前記床板固定具A8 の浮上り防止部28を係止溝4’内に深く収納させているので、他方側、即ち前記床板固定具A8 に隣接の床板固定具A8 の係止部20aによって係止されている側の端部を持ち上げる必要がある。以下に、床板B2 の取付け手順を示す。まず、図20(イ)に示すように、床板固定具A8 の係止部20aに係止されている側の端部を持つ。次に、当該端部とは反対側で前記浮上り防止部28に当接している出隅部5’を中心として、床板B2 を回動させるように前記端部を持ち上げる。そのまま前記端部を持ち上げていくと、出隅部5が摺接部21に当接し、前記係止部20aは起立角度θを小さくする方向に弾性変形するので、前記摺接部21は係止溝4から外れる。図20(ロ)に示すように、持ち上げられた側の床板B2 の端部が完全に床板固定具A8 から外れたら、前記床板B2 を斜め上方にスライドさせて、回動中心となっていた側の係止溝4’から前記浮上り防止部28を抜き出す。最後に、床板B2 をその傾斜方向に沿って引き上げて、床板B2 を根太材Jから取り外す。なお、取り外した床板B2 を元の位置に戻して再び取り付けるには、上記手順の逆の手順を行えばよい。従って、床板固定具A8 を用いて床板B2 を一枚ずつ脱着することは問題なく実施することが可能である。
【0067】
次に、図21(イ),(ロ)を用いて、床板固定具A9 について説明する。図21(イ)は、床板固定具A9 が床板B3 を係止している状態における断面図であり、同(ロ)は、床板固定具A9 の全体斜視図である。なお、図21(イ)は、同(ロ)のX−X線断面図である。まず、床板固定具A9 の構成について説明する。床板固定具A9 は、床板固定具A1 と同様な弾性変形可能なバネ鋼で成形され、根太材J状にビス類61で固定される固定部10と、当該固定部10の幅方向の両端から鈍角の起立角度θ0 で起立して対向形成された長さの異なる一対の係止部20’a,20’bからなる。長さの短い側の係止部20’aは、長い側の係止部20’bの長手方向の中央部にのみ形成されていて、前記短い側の係止部20’aが起立している側の前記固定部10の端部において、当該係止部20’aが形成されていない部分には、床板固定具A9 の幅方向、即ち根太材Jの長手方向Sに延設された延設固定部10aが形成されている。当該延設固定部10aにもビス孔11が形成されている。各係止部20’a,20’bの先端部分には、床板固定具A1 と同一形状の摺接部21a,21bがそれぞれ形成されていて、当該摺接部21a,21bの形状は、前記係止部20’a,20’bの起立方向よりも外方に突出して、わん曲された断面円弧状、又は近似円弧状である。即ち、床板固定具A9 は、床板固定具A1 と比べると、一対の係止部20’a,20’bの長手方向の長さがそれぞれ異なる点、及び長さの短い係止部20’aが起立している側の固定部10の端部には延設固定部10aが延設されている点で相違しているが、他の構成は同一である。
【0068】
床板固定具A9 を用いる際は、当該床板固定具A9 に適した床板B3 を使用する。当該床板B3 の形状は、床板固定具A1 ないしA5 用の床板B1 に、延設固定部10aを収容するための収容溝9が長手方向に沿って形成されたものである。前記収容溝9が形成されている以外の構成は、床板B3 と床板B1 は同一である。
【0069】
床板固定具A9 を根太材J上に固定する場合には、前記固定部10に延設固定部10aが形成されたことにより、当該延設固定部10aにビス類61を挿通して前記床板固定具A9 を根太材J上に固定できる。また、固定部10に形成されるビス孔11を、係止部20’a,20’bに挟まれた部分ではなく、前記係止部30’aの形成されていない部分に設けることにより、床板固定具A1 のように、一対の係止部20に挟まれた固定部10に形成されたビス孔11にビス類61を挿通するよりも、ビス類61を挿通しやすく、また、より強固に床板固定具A9 を根太材J上に固定できる。
【0070】
新規に床板B3 を根太材J上に敷設していく場合には、床板固定具A1 と同様に、予め根太材J上に床板固定具A9 を所定間隔で固定しておき、後から床板B3 を取り付けていくことは可能であるが、床板固定具A9 の固定と床板B3 の取り付けを交互に行うと、敷設作業を容易にかつ効率良く行うことができる。図22(イ)ないし(ハ)を用いて、床板固定具A9 を用いた床板B3 の敷設工程について説明する。図22(イ)ないし(ハ)は、床板固定具A9 に床板B3 を係止していく工程を正面から順番に見た図である。まず、図22(イ)に示すように、床板固定具A9 を敷設方向の前方に延設固定部10aが向くように配置し、根太材J上に最初の床板固定具A9 を固定する。次に、当該床板固定具A9 の隣に最初の床板B3 を置き、当該床板B3 の収容溝9に前記床板固定具A9 の延設固定部10aを収容するように根太材Jの長手方向Sに沿ってスライドさせて、前記床板B3 の出隅部5が前記床板固定具A9 の係止部20’aに当接か又は僅かに弾接状態となるところを前記床板B3 の固定位置とする。図22(ロ)に示すように、前記床板B3 を基準として、その隣に2個目の床板固定具A9 を置き、前記床板B3 が動かないように押さえながら、当該床板固定具A9 が前記床板B3 を当接又は弾接状態で係止するように前記床板固定具A9 の位置を合わせる。その位置で2個目の床板固定具A9 をビス類61で固定する。次に、2枚目の床板B3 を最初の床板B3 と同様にして配置し、上記工程を繰り返して床板B3 を根太材J上に敷設していく。従って、床板固定具A9 の固定位置は床板B3 の幅を基準に合わせればよく、前記床板固定具A9 が床板B3 を当接又は弾接状態で係止するように床板B3 を押さえながら、床板固定具A9 と床板B3 を交互に並置して根太材J上に取り付けていけばよいので、容易で効率良い作業の繰り返しで床板B3 を敷設することが可能である。
【0071】
上記したように、床板固定具A9 は、一対の係止部20’a,20’bの長手方向の長さが異なる点、及び固定部10に延設固定部10aが延設されている点で床板固定具A1 と相違しているが、他の構成は同一であるため、床板固定具A9 を用いて根太材J上に敷設された床板B3 群から任意の一枚を脱着する方法は、床板固定具A1 を用いて敷設された床板B1 群から任意の一枚を脱着する方法と同一である。ただし、前記係止部20’aと20’bの長手方向の長さは異なっているため、長さの短い係止部20’aの方が、より小さい押圧力で弾性変形させることが可能である。このため、一枚の床板B3 を取り外す際は、当該床板B3 の両側の端部のうち、係止部20’aで出隅部5を係止されている側の端部を持ち上げた方が取り外し易い。また、再び床板B3 を戻して取り付ける際は、取り外したときと逆の手順をたどればよい。
【0072】
次に、図23(イ),(ロ)を用いて床板固定具A10について説明する。図23(イ)は、床板固定具A10が床板B4 を係止している状態における断面図であり、同(ロ)は、床板固定具A10の全体斜視図である。なお、図23(イ)は、同(ロ)のX−X線断面図である。床板固定具A10は、床板固定具A9 における摺接部21bが浮上り防止部28に置き換わった構成である。即ち、床板固定具A10の固定部10には延設固定部10aが形成され、長さの異なる一対の係止部20’a,20’bのうち、長さの長い側の係止部20’bの先端部には浮上り防止部28が形成されている。床板固定具A10を用いる際に使用される床板B4 は、床板固定具A8 に適した床板B2 に延設固定部10aを収容可能な収容溝9を長手方向に沿って形成されているものである。床板固定具A10及び床板B4 を用いることによって、以下に示すように、床板固定具A8 と床板固定具A9 の効果が同時に奏される。即ち、まず、床板固定具A8 と同様に、床板B4 が長手方向に反り上がっても、床板固定具A10から床板B4 が浮き上って外れることはない。次に、床板固定具A10を用いて床板B4 を根太材J上に敷設していく際には、浮上り防止部28の形状のために床板固定具A10の固定と床板B4 の取り付けを順番に行う必要があるが、延設固定部10aが形成されているので、容易に床板固定具A10の位置決めをしながら効率良く順番に床板B4 を敷設していくことが可能である。また、根太材J上に敷設した床板B4 群から任意の一枚を脱着できるのは明らかであり、更に、前記床板B4 を取り外す際は、長さの短い側の係止部20’aに係止されている側の端部を持って床板B4 を回動させるように持ち上げれば、長さの短い側の係止部20’aは長い側の係止部20’bよりも小さな力で弾性変形するので、床板固定具A8 と比較して持ち上げ易く、取り外し易い。
【0073】
次に、床板固定具A11について説明する。床板固定具A11は、床板固定具A8 と比較して、前記浮上り防止部28が外れ防止部29に置き換わった構成である。即ち、床板固定具A8 では、固定部10に対して直角の起立角度θ4 をなして起立している係止部20bの先端部分には浮上り防止部28が形成されているが、床板固定具A11の当該係止部20bの先端部分には、断面V字形の外れ防止部29が水平に形成されている。当該外れ防止部29は、V字底部29aを係止溝4’の下面4b’に当接した状態で、係止溝4’内に収納される。当該床板固定具A11を使用する際に用いられる床板は、床板固定具A8 と同様に床板B2 で良い。また、後述する床板B5 でも良い。図24に(イ),(ロ)に床板固定具A11が床板B5 を係止している状態を示す。図24(イ)は、床板固定具A11が床板B5 を係止している状態を正面から見た断面図であり、同(ロ)は、床板固定具A11の全体斜視図である。図24(イ)に示されるように、床板B5 を使用する場合には、摺接部21が収納される係止溝4側の上端面1aと、外れ防止部29が収納される係止溝4’側の上端面1a’の垂直方向の長さ(即ち、床板本体B5aの厚さ)が等しいので、床板固定具A11は、係止部20aの起立高さが床板固定具A8 の場合よりも小さく、摺接部21が係止溝4内に収納できるような構成となっている。床板固定具A11を根太材J上にビス類61で固定した後、床板B2 、上記の床板B2 の変形型B2 ’、又は床板B5 を敷設する場合には、根太材J上の床板固定具A8 に床板B2 を敷設していく場合と同一で良い。
【0074】
床板固定具A11の効果について床板固定具A8 と比較して説明する。なお、ここでは、両床板固定具A8 ,A11ともに床板B2 を係止するとして説明する。床板固定具A8 において、床板B2 の係止溝4’に床板固定具A8 の浮上り防止部28が完全に収納されていて、その先端部分28aは、係止溝4’の上面4a’とほぼ当接状態にあり、床板B2 の出隅部5’が前記浮上り防止部28の下端部28bによって当接状態で係止されているので、床板B2 の浮上りは防止される。しかし、床板B2 が特に天然木である場合には、長時間の使用によって収縮する。このため、床板B2 の下端面1b’は当接していた係止部20bから離れ、出隅部5’と前記下端部28bとが離れてしまうと、浮上り防止部28による床板B2 の浮上り防止効果が低下してしまう。しかし、外れ防止部29の場合には、床板B2 が収縮し、かつ浮き上っても、V字底部29aによって係止溝4’の下面4b’は鉛直方向に押さえられるので、収縮した床板B2 の浮上りを防止し、根太材Jから外れるのを防止できる。更に、前記V字底部29aは係止溝4’の下面4b’と長手方向Tに沿って当接しているので、使用により床板B2 が摩れる状況に陥っても、V字底部29aと前記下面4b’との間に摩擦力が発生するため、床板B2 は長手方向Tにも幅方向U(根太材Jの長手方向S)にも摩れることがないので、床板B2 の摩れ防止効果が大きい。
【0075】
次に、図25及び図26を用いて床板B5 について説明する。図25は、床板固定具A11を介して床板B5 が根太材J上に固定された状態を示す正面断面図である。図26は、根太材J上に固定された床板固定具A11及び敷設された状態の床板B5 群を示す斜視図である。床板B5 は、断面長方形の床板本体B5aと、当該床板本体B5aの長手方向Tの両端部における下面に一体に取り付けられた係止溝形成具B5bとから成り、床板本体B5aの「台」に当該係止溝形成具B5bの「歯」がついた下駄状の構造になっている。図25に示されるように、当該係止溝形成具B5bは、軽金属(アルミニウム等)の押出成形等で成形されて、幅方向Uの両端部には、床板固定具A11の係止部20a,20bを係止可能な係止溝4,4’が形成されている。なお、係止溝形成具B5bは押出し成形品であるので、床板B3 のように収容溝9を形成すること(図25には図示せず)、或いは床板固定具A8 の変形型A8 ’や床板固定具A11等に合わせて、係止溝4,4’の幅及び深さ、出隅部5,5’の高さ等を容易に変更して加工することが可能である。従って、床板B1 ないしB4 のうち、上端面1a,1a’の垂直方向の長さが等しい床板B1 ,B3 及びB2 の変形型B2 ’を床板B5 のような構成にすることが可能である。また、係止溝形成具B5bには、係止溝形成具B5bと床板本体B5aとを一体化させるために、係止溝形成具B5bの所定箇所(図26では1個の係止溝形成具B5bにつき4箇所)から床板本体B5aに対して垂直方向にビス類64が挿通されている。更に、経済的な観点及び床板B5 の重量を考慮して、係止溝形成具B5b全体としては、複数個の枠体を並べたような構造となっている。根太材J上に床板B5 を敷設する際は、床板B1 ,B2 ’又はB3 と同様に、根太材J上に等間隔に固定されている床板固定具A1 ないしA7 ,A8',A9 又はA11に応じて、係止部20の摺接部21ないし25、又は浮上り防止部28、或いは外れ防止部29が床板B5 の係止溝4,4’に収納されるようにして、床板B5 を根太材J上に固定していけばよい。なお、図26に示されるように、床板本体B5 aの長手方向Tに沿った係止溝形成具B5bの取付け位置の間隔が大きいと、床板B5 を前記各床板固定具A1 ないしA7 ,A8 ’,A9 又はA11を介して根太材Jに敷設して使用した場合には、前記各取付け位置間において床板本体B5aが撓んでしまう可能性がある。このため、取り付けられた各係止溝形成具B5bの間に、係止溝形成具B5bと当該係止溝形成具B5bが固定されている根太材Jとの高さの和に相当する高さの根太材J’を配置してビス類62で支持枠41に固定する。当該根太材J’によって、当該床板本体B5aは補強されて前記撓みが防止される。
【0076】
床板B5 は、全体が再生木、又はむくの天然木である従来の床板B1 ないしB4 に比べて、以下の効果が奏される。まず、床板B5 において、床板本体B5aは再生木や天然木からなる断面長方形の薄手の板材から構成されるので加工し易く、例えば再生木を床板形状に加工したり、天然木から成る木材を長手方向に沿って切削して係止溝4,4’を成形する等の成形加工を施す必要がない。また、係止溝形成具B5bは押出し成形品であるので高い加工精度を得ることができる。また、特に天然木では、天然木自体が高額で、かつ天然木材の切出しや係止溝4,4’の加工等の加工費も高額となるが、床板本体B5aは断面長方形の薄手の板材で良いので加工費が軽減でき、床板B5 一枚当たりの木材使用量も軽減されて経済的である。また、係止溝形成具B5bにより床板B5 の重量も軽減されるので、運搬が楽で作業し易い。更に、床板本体B5aと係止溝形成具B5bとは別体であるので、両者を一体化した状態で現場に搬入することも可能であるが、例えば車両の搬入スペースが限られている場合には、一体化させずに別々に搬送して、現場で両者を一体化させてから根太材J上に敷設していくことも可能となる。
【0077】
上記各実施例では、長尺板材を床板B1 ないしB5 、及び固定材を根太材Jであるとして、床板固定具A1 ないしA11を用いて、根太材Jに床板B1 ないしB5 を着脱する例について説明したが、敷設面が壁面、又は天井面であって、前記長尺板材が壁板材又は天井板材である場合においても、同様の構造で壁板材又は天井板材を固定材に着脱可能に固定することも可能であって、特定の一枚の壁板材又は天井板材の着脱ができる。
【0078】
次に、図27ないし図31を用いて、長尺板材固定具及び長尺板材を建物の内壁又は壁面、及び天井面に適用する場合について、床板固定具A1 ないしA11と相違する点のみを説明する。図27(イ),(ロ)はそれぞれ、前方及び後方から見た壁板固定具A12の斜視図である。図28は、軽鉄下地材で組まれた壁下地K1 を構成するスタッドJ1 上に、壁板固定具A12を介して仕上材の壁用の長尺板材(以下、単に「壁板」という。)B6 が敷設された状態を示した図である。図29(イ)ないし(ハ)は、壁板固定具A12をスタッドJ1 上に固定する工程を斜め前方から順番に見た図である。図30は、壁板固定具A12を介して壁板B6 がスタッドJ1 上に固定された状態を示す正面断面図である。図31は、軽鉄下地材で組まれた天井下地(裏桟)K2 を構成する野縁J2 上に、天井板固定具A13を介して仕上材の天井用の長尺板材(以下、「天井板」という)B7 が敷設された状態を示した図である。なお、以下、長尺板材の長手方向S及び幅方向Uは、壁板B6 又は天井板B7 の長手方向及び幅方向であり、固定材の長手方向Sは、スタッドJ1 及び野縁J2 の長手方向である。まず、図27を用いて壁板固定具A12について説明する。壁板固定具A12は、アルミニウム等の軽金属、又は押出成形や射出成形可能な樹脂から成り、床板固定具A1 と比較して、固定部10にビス孔11が形成されていない代わりに、当該固定部10の下面中央部に挿入取付具12が形成された構成になっている。挿入取付具12は、長板状の挿入回転部12aと、当該挿入回転部12aの中央部から直立した挿入軸足部12bとから成る断面T字形の形状であり、前記挿入回転部12aの短手方向が、前記固定部10の長手方向と平行になるようにして、挿入取付具12が前記固定部10の下面中央部に固着されている。また、挿入回転部12aにおいて、固定部10と対向する面の短手方向の縁部には、突条の止着部12cが形成されている。
【0079】
次に、図28及び図29を用いて、壁板固定具A12の固定材であるスタッドJ1 について説明する。内装工事において、内壁や間仕切壁を構築する際には、軽量鉄骨(軽鉄)下地材で組まれた骨組み状の壁下地K1 に、石膏ボード等の仕上板を貼るのが一般的である。本発明における内壁や間仕切壁は、前記仕上板の代わりに、前記壁下地K1 上に壁板固定具A12を介して壁板B6 が敷設された構成である。まず、壁下地K1 は、上端部と下端部にそれぞれ水平方向に走る断面コ字状の部材から成るランナ42と、上下のランナ42に挟まれた状態で等間隔に直立するスタッドJ1 と、当該スタッドJ1 に所定間隔で形成された挿通孔(図示せず)に挿通されて水平方向に走る振止め43と、当該振止め43を係止するスペーサ44から構成される。壁板固定具A12が固定されるスタッドJ1 は、断面コ字状の軽鉄下地材が利用され、開口部と、該開口部に相対向する背面部と、一対の側面部とから成る。前記開口部の幅方向の両端には、一対の開口縁が相対向して形成されていて、それらの先端部は折り曲げられて、前記開口部内に入り込んでいる。スタッドJ1 は、所定間隔をおいて、前記開口部がランナ42の長手方向に沿った同一方向に向けられて立設される。また、各スタッドJ1 の前記背面部には振止め43が挿通される挿通孔が形成されていて、各スタッドJ1 の前記背面部から起立する一対の側面部は、同一平面上に配置されている。当該一対の側面部のうち、正面手前側の側面部J1 aには、壁板B6 の板材幅と同一又は整数分の一の長さに対応した所定間隔(ピッチP3 )で、スタッドJ1 の長手方向Sに沿って複数のスリーブ孔H1 が形成されている。当該スリーブ孔H1 の形状は、前記挿入取付具12における挿入回転部12aの長板形状に対応しており、各スリーブ孔H1 は、その短手方向を前記方向Sと平行にして並列している。
【0080】
次に、図29を用いて、スタッドJ1 に壁板固定具A12を固定する方法について説明する。まず、壁板固定具A12の挿入取付具12を、スタッドJ1 のスリーブ孔H1 の形状に合う向きにして当該スリーブ孔H1 に挿入し、挿入回転部12a全体をスタッドJ1 の裏側に挿通させる〔図29(イ)〕。このとき、壁板固定具A12の固定部10の長手方向は、スタッドJ1 の長手方向Sと平行であり、挿入回転部12aの短手方向はスリーブ孔H1 の短手方向と平行である。次に、挿入回転部12aをスタッドJ1 に挿通させた状態で、前記壁板固定具A12を左右どちらかに90°回転させると〔図29(ロ)〕、当該壁板固定具A12は、挿入軸足部12bを中心にして90°回転し、壁板固定具A12の固定部10の長手方向は、前記方向Sと垂直になり、挿入回転部12aの短手方向はスリーブ孔H1 の短手方向と垂直になる。このため、当該挿入回転部12aはスタッドJ1 に係止されて、スリーブ孔H1 から抜け出ることはない。更に、挿入回転部12aの短手方向の縁部における突条の止着部12cがスタッドJ1 の裏側面と当接した状態で、挿入回転部12aはスタッドJ1 に止着されるので、挿入軸足部12bはスリーブ孔H1 内を動くことなく壁板固定具A12がスタッドJ1 に固定される〔図29(ハ)〕。以上の手順で、壁板B6 の板材幅に対応させた間隔でスリーブ孔H1 に壁板固定具A12を複数個固定していけばよい。また、壁板固定具A12が上記のような構成のため、スタッドJ1 から壁板固定具A12を取り外す際には、壁板B6 を壁板固定具A12から取り外した後に、当該壁板固定具A12を90°再び回転させることによって、スタッドJ1 の裏側で壁板固定具A12を係止していた挿入回転部12aの短手方向が、再びスリーブ孔H1 の短手方向と平行になり、同時に止着部12cもスタッドJ1 の裏側面から外れるので、挿入回転部12aをスリーブ孔H1 から抜き出せばよい。
【0081】
壁板固定具A12は、当該壁板固定具A12をスタッドJ1 上に固定するための取付具(挿入取付具12)と、固定部10及び係止部20から成って壁板B6 を固定するための壁板固定部分とが一体化している。このため、壁板固定具A12を使用すれば、壁板固定具A12をスタッドJ1 に取り付けるためのビス類61等の取付具を別途準備したり、取り付けるための工具等を必要としないので、現場での作業が煩雑にならず、作業を簡単に実施できて、前記取付具を紛失することもない。また、所定間隔にスリーブ孔H1 が形成されたスタッドJ1 と当該壁板固定具A12を使用することによって、壁板固定具A12を回転させるだけで挿入取付具12を介してスタッドJ1 から壁板固定具A12を挿脱可能となり、当該壁板固定具A12の着脱が容易に行える。このため、模様替え等で板材幅の異なる壁板B6 に変更する際にも、スタッドJ1 上の壁板固定具A12の固定位置を変更することが容易になって、壁板B6 の取替え作業を効率良く実施できる。
【0082】
次に、図30を用いて、壁板本体B6a、係止溝形成具B6b、及び壁板本体B6 aの幅方向Uの端部を嵌着する嵌着部B6cとを備えた壁板B6 について説明する。壁板固定具A12を使用する際に用いられる壁板B6 の構成は、全体が天然木又は再生木から成り、幅方向Uの両端部に係止溝が形成されたものでも良いが、図30に示されるような構成の壁板B6 でも良い。即ち、当該壁板B6 は、断面長方形の薄板状の壁板本体B6aと、当該壁板本体B6aの幅方向の両端部の下面に取り付けられて前記係止溝4を形成するための係止溝形成具B6bから成り、当該係止溝形成具B6bには壁板本体B6aの幅方向Uの端部に嵌着される断面コ字形の嵌着部B6cが具備されている。嵌着部B6cにより係止溝形成具B6bは壁板本体B6aと一体化され、全体として壁板B6 が構成されている。また、嵌着部B6cの断面視において、壁板本体B6aの下面と当接する部分が上面と当接する部分よりも長く成形されているため、壁板本体B6aは安定的に嵌着される。従って、壁板本体B6aの幅方向Uの両端部に、係止溝形成具B6bにおける嵌着部B6cを嵌着させることによって、壁板B6 は、壁板本体B6aの「台」に係止溝形成具B6bの「歯」がついた下駄状の構造を有する。当該壁板B6 が上記のような下駄状の構造を有するため、以下のような効果が奏される。即ち、壁板本体B6aに係止溝形成具B6bを取り付ける際に、ビス類等を用いて壁板本体B6aに孔を開ける必要がない。従って、ガラス板等のようにビス類で取り付けるのが困難な材質の板材や、孔を開けると不都合なものでも壁板本体B6aとして使用することが可能となる。また、壁板本体B6aには孔が開かないので、使用後の壁板本体B6aを別の用途に再利用することが可能である。更に、模様替え等で壁板本体B6aを交換する場合には、工具等を用いてビス類を抜き取ることなく嵌着部B6cから壁板本体B6aを外す、又は嵌めるのみで容易に壁板本体B6aを係止溝形成具B6bから着脱可能である。従って、杉等の木板、金属パネル、ガラス板、アクリル板のような材質の板材から成る壁板B6 や、色や柄の異なるクロス(壁紙)が貼られた壁板本体B6aから成る壁板B6 等を一種類、又は複数種類を自由に組み合わせて、壁板固定具A12を介してスタッドJ1 上に敷設することができる。また、敷設された壁板B6 群の裏側に形成される空間に照明装置や空調装置、配線等を収容すれば、壁板B6 の目地7’を利用した壁照明や空調の噴出しが可能となる。一方、目地7’から前記空間内が見えるのを防ぎたい場合には、図30に示されるように、嵌着部B6cの所定箇所に凹部を形成し、そこにゴム材等の目地材Nを嵌め込んで目地7’を封じれば良い。
【0083】
上記は、長尺板材固定具の壁への適用例として、軽鉄下地材から成る骨組み状の壁下地K1 (スタッドJ1 )に直接壁板固定具A12を固定して、壁板B6 を敷設する例である。別の適用例として、前記壁下地K1 上に石膏ボード等の壁仕上板が貼られ、内壁又は間仕切壁として既に完成している壁体に適用することも可能である。この場合には、当該壁体面に新たに壁下地K1 のような骨組みを構築し、スタッドJ1 状の固定材に壁板固定具A12を固定して、壁板B6 を敷設すれば、従来の壁体と、壁板B6 群からなる壁体の二重壁構造となる。即ち、既にある内壁や間仕切壁を壊すことなく、その上に壁板B6 群から成る新たな壁体を作ることができる。また、敷設される壁板B6 の目地方向を、スタッドJ1 の取付方向によって変えることができる。即ち、スタッドJ1 の長手方向Sが垂直になるよう取り付ければ、各壁板B6 の長手方向Tが水平方向に沿うために、目地方向は水平となって「横目地」となる。一方、スタッドJ1 の長手方向Sが水平方向に沿うように壁下地K1 の骨組みを改良したり、或いは、既にある内壁や間仕切壁の壁面にスタッドJ1 状の固定材を水平に取り付けることによって、壁板B6 の目地方向は垂直方向となり「縦目地」となる。
【0084】
図31を用いて、長尺板材固定具を天井面に適用する場合について説明する。天井に用いられる長尺板材固定具を天井板固定具A13とする。天井板固定具A13は、壁板固定具A12と同一か、或いは相似形でよい。一般的な天井は、軽鉄下地材からなる天井下地K2 に、石膏ボードや化粧板等の天井用仕上板がビス類で留めつけられた構成である。当該天井下地K2 は、仕上板が留めつけられる野縁J2 と、当該野縁J2 を固定する野縁受け45と、当該野縁受け45を吊るすために鉄骨梁等に固定された吊り具46から成る。なお、ここでは固定材の長手方向Sは、野縁J2 の長手方向である。天井に天井板固定具A13を適用する場合には、前記天井下地K2 において、前記野縁J2 の本来化粧板等を留めつける面J2 aに、スリーブ孔H2 を野縁J2 の長手方向Sに沿って所定間隔(ピッチ)で形成する。そして、当該スリーブ孔H2 に天井板固定具A13の挿入取付具12を挿入して固定し、天井板B7 の板材幅に合わせて等間隔に固定された各天井板固定具A13を介して天井板B7 を野縁J2 上に敷設する。天井板B7 としては、壁板B6 と同様に、天井板本体B7aと、天井板本体B7aの幅方向Uの端部を嵌着する嵌着部B7cを具備する係止溝形成具B7bとから構成されるものを利用するのが軽量化の点で好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】根太材J上に固定された床板固定具A1 を介して敷設された床板B1 群の平面図である。
【図2】床板固定具A1 の全体斜視図である。
【図3】床板固定具A1 を介して床板B1 が根太材J上に固定された状態を示す正面断面図である。
【図4】床板B1 が敷設されていない状態における根太材J上に固定された床板固定具A1 を示す斜視図である。
【図5】(イ)ないし(ハ)は、隣接する床板固定具A1 に一枚の床板B1 を傾斜姿勢で係止させていく工程を正面から順番に見た図である。
【図6】隣接する床板固定具A1 に一枚の床板B1 を直上から係止させる工程を正面から順番に見た図である。
【図7】根太材Jの端部付近に敷設された床板B1 群の正面断面図である。
【図8】(イ)ないし(ハ)は、根太材J上に敷設された床板B1 群から一枚の床板B1 を取り外す工程を正面から順番に見た図である。
【図9】(イ)及び(ロ)は、目地幅W1 ,W2 をそれぞれ有して床板B1 が固定され、敷設された状態における床板B1 群の正面断面図である。
【図10】(イ)及び(ロ)は、それぞれ床板B1 の非固定時、及び固定時において、弾性変形維持部材51が嵌着された床板固定具A1 を正面から見た断面図である。
【図11】(イ)及び(ロ)は一方側の係止部20の一部にゴム部52、及びバリ部53がそれぞれ形成された床板固定具A1 の全体斜視図である。
【図12−A】(イ)及び(ロ)は、それぞれ摺接部22及び23有する床板固定具A2 及びA3 と床板B1 との係止部の断面図である。
【図12−B】(ハ)及び(ニ)は、それぞれ摺接部24及び25有する床板固定具A4 及びA5 と床板B1 との係止部の断面図である。
【図13】(イ)は、床板固定具A6 が床板B1 を係止している状態を正面から見た図であり、(ロ)は、床板固定具A6 の全体斜視図である。
【図14】(イ)ないし(ハ)は、床板固定具A7 に床板B1 を係止していく工程を正面から順番に見た図である。
【図15】(イ)は、特許文献1において、床板110を根太130上に固定した状態における取付金具M1 の正面図である。(ロ)は、同状態を示す取付金具M1 の平面図である。
【図16】(イ)及び(ロ)は、特許文献2において、床板210を根太230上に固定した状態の床板固定具M2 を取り外す手順を示した部分斜視図である。
【図17】(イ)は、床板固定具A8 が床板B2 を係止している状態を正面から見た断面図である。(ロ)は、床板固定具A8 の全体斜視図である。
【図18】(イ)ないし(ハ)は、床板固定具A8 に床板B2 を係止していく工程を正面から順番に見た図である。
【図19】(イ)は、床板固定具A1 が床板B1 を係止している状態を正面から見た図であり、(ロ)は、床板固定具A8 が床板B2 を係止している状態を正面から見た図である。
【図20】(イ)及び(ロ)は、根太材J上に敷設された床板B2 群から一枚の床板B2 を取り外す工程を正面から順番に見た図である。
【図21】(イ)は、床板固定具A9 が床板B3 を係止している状態を正面から見た断面図であり、(ロ)は、床板固定具A9 の全体斜視図である。
【図22】(イ)ないし(ハ)は、床板固定具A9 に床板B3 を係止していく工程を正面から順番に見た図である。
【図23】(イ)は、床板固定具A10が床板B4 を係止している状態を正面から見た断面図であり、(ロ)は、床板固定具A10の全体斜視図である。
【図24】(イ)は、床板固定具A11が床板B5 を係止している状態を正面から見た断面図であり、(ロ)は、床板固定具A11の全体斜視図である。
【図25】床板固定具A11を介して床板B5 が根太材J上に固定された状態を示す正面断面図である。
【図26】根太材J上に固定された床板固定具A11及び敷設された状態の床板B5 群を示す斜視図である。
【図27】(イ),(ロ)はそれぞれ、前方及び後方から見た壁板固定具A12の斜視図である。
【図28】軽鉄下地材で組まれた壁下地K1 を構成するスタッドJ1 上に、壁板固定具A12を介して仕上材の壁板B6 が敷設された状態を示した図である。
【図29】(イ)ないし(ハ)は、壁板固定具A12をスタッドJ1 上に固定する工程を斜め前方から順番に見た図である。
【図30】壁板固定具A12を介して壁板B6 がスタッドJ1 上に固定された状態を示す正面断面図である。
【図31】軽鉄下地材で組まれた天井下地K2 を構成する野縁J2 上に、天井板固定具A13を介して仕上材の長尺天井板材B7 が敷設された状態を示した図である。
【符号の説明】
【0086】
1 〜A11:床板固定具(長尺板材固定具)
12:壁板固定具(長尺板材固定具)
13:天井板固定具(長尺板材固定具)
1 〜B5 :床板(長尺板材)
6 :壁板(長尺板材)
7 :天井板(長尺板材)
5 a:床板本体
6 a:壁板本体
5b,B6b:係止溝形成具
6c:嵌着部
D:隣接する床板固定具の開口幅
F:弾接力
J:根太材(固定材)
1 :スタッド(固定材)
2 :野縁(固定材)
1 〜P3 :ピッチ
S:固定材の長手方向
T:長尺板材の長手方向
U:長尺板材の幅方向
0 :床板幅
1 ,W2 :目地幅
θ:係止部の起立角度
1:床板の端面
1b:床板の下端面
3:床板の下面
4:係止溝
5:係止溝と下端面とで形成される出隅部
6:下端面と下面とで形成される出隅部
7:目地
8:開口
10:固定部
10a:延設固定部
12:挿入取付具
12a:挿入回転部
12b:挿入軸足部
20,30:係止部
21,31:摺接部
28:浮上り防止部
29:外れ防止部
51:弾性変形維持部材
61:ビス類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺板材の端面に長手方向に沿って係止溝が形成されていて、固定材に板材幅に対応した幅で複数の長尺板材固定具が固定されて、長尺板材固定具の係止部が長尺板材の係止溝に係止されて、長尺板材固定具を介して長尺板材を固定材に固定する構造であって、
前記長尺板材固定具は、弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から鈍角状に起立して対向形成された一対の係止部とから成って、
前記各係止部の先端部には、長尺板材の着脱時に当該長尺板材の端面に摺接して前記係止部を弾性変形させる摺接部が外方に突出してそれぞれ形成され、
固定状態の特定の長尺板材を幅方向にスライドさせて、長尺板材の幅方向の一方の長尺板材固定具の前記係止部を弾性変形させて、長尺板材の幅方向に沿って隣接する長尺板材固定具の開口幅を広げることにより、当該長尺板材の幅方向の他方の端部を持ち上げて、その傾斜姿勢のままで長尺板材を傾斜方向にスライドさせる操作、及びこの逆操作を行なうことにより、敷設された長尺板材群のうち特定の長尺板材の脱着を可能にしたことを特徴とする長尺板材の固定構造。
【請求項2】
前記長尺板材固定具の係止部は、弾性変形された状態で長尺板材の係止溝に係止されることを特徴とする請求項1に記載の長尺板材の固定構造。
【請求項3】
前記長尺板材固定具の摺接部は、開口が対向するように外方にわん曲された断面形状を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の長尺板材の固定構造。
【請求項4】
前記長尺板材固定具の対向形成された各係止部には、各係止部の弾性変形を維持するための弾性変形維持部材が嵌着されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の長尺板材の固定構造。
【請求項5】
端面に長手方向に沿って係止溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、
弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から鈍角状に起立して対向形成された一対の係止部とから成って、
前記各係止部の先端部には、長尺板材の着脱時に当該長尺板材の端面に摺接して前記係止部を弾性変形させる摺接部が外方に突出してそれぞれ形成されていることを特徴とする長尺板材固定具。
【請求項6】
端面に長手方向に沿って係止溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、
弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部であって、しかも長手方向に沿ってずれた位置に鋭角状に起立された一対の係止部とから成って、
前記各係止部の先端部には、長尺板材の着脱時に当該長尺板材の端面に摺接して前記係止部を弾性変形させる摺接部が正面視において外方に突出してそれぞれ形成されていることを特徴とする長尺板材固定具。
【請求項7】
端面に長手方向に沿って係止溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、
弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から直角及び鈍角状に起立して対向形成された長さの異なる一対の係止部とから成って、
前記一対の係止部のうち直角状に起立した係止部には、先端部分に起立方向よりも外側に折曲された平板状の浮上り防止部が形成されていることを特徴とする長尺板材固定具。
【請求項8】
端面に長手方向に沿って係止溝と収容溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、
弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から直角又は鈍角状に起立して対向形成されて、長手方向の長さが異なる一対の係止部とから成って、
前記一対の係止部のうち長さの短い係止部は、前記固定部の長手方向の中央部にのみ形成されていて、長さの短い係止部が起立している側の前記固定部の端部における当該係止部が形成されていない部分には、幅方向に延設された延設固定部が形成されていることを特徴とする長尺板材固定具。
【請求項9】
端面に長手方向に沿って係止溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、
弾性変形可能なバネ材で成形されて、取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から直角及び鈍角状に起立して対向形成された長さの異なる一対の係止部とから成って、
前記一対の係止部のうち直角状に起立した係止部の先端部分には断面V字形の外れ防止部が水平に形成されていることを特徴とする長尺板材固定具。
【請求項10】
端面に長手方向に沿って係止溝が形成された長尺板材を固定材に固定するように使用される長尺板材固定具であって、
弾性変形可能なバネ材で成形されて、前記固定材に形成されたスリーブ孔に挿入される断面T字形の挿入取付具と、当該挿入取付具を介して前記固定材に固定される固定部と、当該固定部の幅方向の両端部から鈍角状に起立して対向形成された一対の係止部とから成って、
前記挿入取付具は、長板状の挿入回転部と、当該挿入回転部の中央部分から直立した挿入軸足部とから成って、前記挿入回転部の短手方向と前記固定部の長手方向とが平行になるように、前記挿入軸足部が前記固定部の中央部分に固着されて、
前記各係止部の先端部には、長尺板材の着脱時に当該長尺板材の端面に摺接して前記係止部を弾性変形させる摺接部が外方に突出してそれぞれ形成されていることを特徴とする長尺板材固定具。
【請求項11】
幅方向の端面に長手方向に沿って請求項1ないし10に記載の長尺板材固定具を係止可能な係止溝が形成された長尺板材であって、
断面長方形状の板材本体と、当該板材本体の長手方向の両端部における下面に一体に取り付けられて前記係止溝を形成するための係止溝形成具とから成ることを特徴とする長尺板材。
【請求項12】
前記係止溝形成具は、板材本体の幅方向の端部に嵌着される断面コ字形の嵌着部を備え、当該嵌着部により板材本体に一体に取り付けられることを特徴とする請求項11に記載の長尺板材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−A】
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【図12−B】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−31827(P2008−31827A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−80598(P2007−80598)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(502458338)
【出願人】(506222166)
【Fターム(参考)】