説明

長尺部材の保持具

【課題】パイプの振動の伝達を、軟質材料を用いないで阻止し、パイプの挿入を容易にできるようにし、組み付けを簡単にできる、長尺部材の保持具を提供する。
【解決手段】保持具1は、本体部2と、別部品のクランプ部3とを備え、本体部2はクランプ部3を収容して保持するクランプ保持部10を有し、クランプ部3は、U字形状に形成されて、パイプをクランプ部に保持するようにU字形状の底部に延びる弾性保持片26を有し、クランプ保持部10は、クランプ部3が振動できる大きさの隙間g1〜g5をもってクランプ部を収容しており、隙間g1、g2を保つように、クランプ保持部側壁を弾性的に押す第1弾性片17を有し、クランプ部底部25にはクランプ保持部の係止穴18に連結される嵌合ロッド27が形成され、クランプ部底部には、クランプ保持部底部との間に隙間g5を保つように、弾性的に押す第2弾性片31が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプやワイヤハーネス等の長尺部材を保持するクランプ部と、ボデーパネル等の被取付部材へ固定する本体部とを備え、長尺部材がクランプ部に保持されて本体部が被取付部材に固定されることにより、長尺部材が被取付部材に取付けられる構成の長尺部材の保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプやワイヤハーネス等の長尺部材を保持するクランプ部と、ボデーパネル等の被取付部材へ固定する本体部とを備え、長尺部材がクランプ部に保持され、本体部は被取付部材に固定されることによって、長尺部材を被取付部材に取付ける保持具は知られている。パイプ等の長尺部材をボデーパネル等の被取付部材に保持する場合、パイプからの振動をボデーパネルへ伝達するのを防止し、あるいはその逆の振動の伝達を防止することが望まれている。最もよく用いられる防振手段は、ゴム等の弾性軟質材料であり、クランプ部のパイプ等を受ける底面等に取付けられて振動の伝達を減少するものである。
【0003】
【特許文献1】実開平4−044581号公報
【特許文献2】特開平7−310866号公報
【特許文献3】特開2005−155749号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、クランプ部にゴム等の弾性軟質材料を設けて振動の伝達を減少する、長尺部材の保持具を記載している。この保持具は、長尺部材をクランプ部に挿入するとき、弾性軟質材料の摩擦抵抗が大きく、長尺部材の保持操作のために大きな力を必要とする。特許文献2に記載の長尺部材の保持具は、クランプ部にゴム等の弾性軟質材料を必要としていない。しかし、その保持具は、クランプ部が複雑な形状であり、長尺部材を挿入する開放部分が二重クランプ形状であるので、長尺部材の保持操作のために大きな力を必要としている。
【0005】
特許文献3に記載の長尺部材の保持具は、長尺部材を保持するクランプ部(3)と被取付部材へ固定する本体部(2)とが別部品として形成され、クランプ部と本体部が、更に別部品で成る軟質材料の防振部材(4)によって連結されている。この保持具は、長尺部材をクランプ部に挿入するときの大きな力を必要としないが、クランプ部と本体部を防振連結するために軟質材料の防振部材(4)を必要としている。また、クランプ部と本体部を連結するのに防振部材を必要としているので、保持具の組み付けが簡単ではない。
【0006】
従って、本発明の目的は、パイプ等の長尺部材とボデーパネル等の被取付部材との間での振動の伝達を軟質材料を用いないで阻止し、長尺部材の挿入を容易にできるようにするとともに、軟質材料の部品を不要にして、組み付けを簡単にできる、長尺部材の保持具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、パイプやワイヤハーネス等の長尺部材を保持するクランプ部と、ボデーパネル等の被取付部材へ固定する本体部とを備え、長尺部材がクランプ部に保持され、本体部は被取付部材に固定されることにより、長尺部材が被取付部材に取付けられる構成の長尺部材の保持具であって、クランプ部と本体部とは別部品として形成され、本体部は、被取付部材に固定される固定部と、クランプ部を収容して保持するクランプ保持部とを有し、クランプ部は、開放部分から押込まれた長尺部材を収容するように側壁と底部とから成るU字形状に形成されており、開放部分には、収容した長尺部材をクランプ部に保持する弾性保持片が底部に向けて延びており、本体部のクランプ保持部は、クランプ保持部に対してクランプ部が振動できる大きさの隙間を保ってクランプ部を収容する空間を形成する側壁と底部とで形成されており、クランプ保持部側壁又はクランプ部側壁には、クランプ保持部にクランプ部が収容された状態においてクランプ部側壁とクランプ保持部側壁との間に隙間を保つように、クランプ保持部側壁又はクランプ部側壁を弾性的に押す第1弾性片が形成されており、クランプ部底部とクランプ保持部底部とには、クランプ部をクランプ保持部に押込むことでクランプ部がクランプ保持部に連結される連結手段が形成されており、更に、クランプ部底部又はクランプ保持部底部には、連結手段で連結されたクランプ部底部とクランプ保持部底部との間に隙間を保つように、クランプ保持部底部又はクランプ部底部を弾性的に押す第2弾性片が形成されている、ことを特徴とする保持具を提供する。
【0008】
上記保持具において、クランプ保持部側壁又はクランプ部側壁には、クランプ保持部にクランプ部が収容された状態においてクランプ部側壁とクランプ保持部側壁との間に隙間を保つように、クランプ保持部側壁又はクランプ部側壁を弾性的に押す第1弾性片が形成され、クランプ部底部とクランプ保持部底部とには、クランプ部をクランプ保持部に押込むことでクランプ部がクランプ保持部に連結される連結手段が形成されており、更に、クランプ部底部又はクランプ保持部底部には、連結手段で連結されたクランプ部底部とクランプ保持部底部との間に隙間を保つように、クランプ保持部底部又はクランプ部底部を弾性的に押す第2弾性片が形成されているので、パイプ等の長尺部材を保持したクランプ部が、パイプ等の長尺部材パイプの振動によって振動させられても、隙間の範囲内において振動するだけであり、クランプ部から本体部へは振動は伝達されない。例えば、第1弾性片によって隙間を保っているので長尺部材の軸方向における振動や長尺部材を横切る方向(側壁へ方向)の振動が本体部に伝達されるのを阻止し、連結手段と第2弾性片によって隙間を保っているので長尺部材の底部方向への振動が本体部に伝達されるのを阻止し、更に、連結手段と第1弾性片とで連結手段の軸回りにおける姿勢を弾性的に維持するので、長尺部材が連結手段の軸回りに振動するのが本体部に伝達されるのを阻止し、第1弾性片がクランプ部をクランプ保持部との間に隙間を維持しクランプ部の弾性保持片が長尺部材を弾性保持するので長尺部材がクランプ部の開放部分に向けて振動するのが本体部に伝達されるのを阻止する。従って、軟質材料の防振部材を必要とせずに、クランプ部から本体部へ振動が伝達されるのが阻止される。
上記のように、保持具は、軟質材料を用いずに防振できるので、長尺部材の挿入を容易にでき、長尺部材の保持力が高くなるとともに、軟質材料の部品が不要であるので本体部とクランプ部の組み付けを簡単にできる。
【0009】
上記保持具において、連結手段は、クランプ部底部又はクランプ保持部底部から延びる錐台形状の先端と軸部とを持つ嵌合ロッドと、嵌合ロッド先端を受入れて軸部において抜け止めを成すように、クランプ保持部底部又はクランプ部底部に形成された係止穴とから成る。その場合、嵌合ロッドの軸部と係止穴とは、嵌合ロッドを受入れて嵌合ロッドがその軸回りに回転するのを可能にするように、円形横断面を有する。
【0010】
上記保持具において、第2弾性片は、嵌合ロッドを挟んで一対形成されており、嵌合ロッドが係止穴に挿入された状態でクランプ部底部とクランプ保持部底部との間に隙間を保つようにクランプ保持部底部又はクランプ部底部を弾性的に押している。第1弾性片は、クランプ保持部の一対の側壁のそれぞれに設けられ、対面するクランプ部の側壁を弾性的に押している。第1弾性片は、クランプ保持部側壁に形成され、第1弾性片は、クランプ保持部にクランプ部が収容された状態においてクランプ部の開放部分に対応する高さ位置に形成された一対の第1弾性片で成り、第1弾性片のそれぞれはクランプ保持部側壁の各縁部からクランプ部側壁に向けてクランプ保持部側壁の中間に向けて延びている。一対の第1弾性片の先端はクランプ保持部側壁の中間位置において相互に離隔しており、クランプ部側壁には、一対の第1弾性片の先端の離隔部分に対応する位置に、動き規制リブが形成されており、動き規制リブが、クランプ部がクランプ保持部の中で嵌合ロッドの軸回りに回転するのを規制する。クランプ部底部の内面に、受入れた長尺部材の直径の許容範囲内の誤差を受入れるようにクランプ部に受入れた長尺部材を弾性保持片に向けて弾性的に押上げる、弾性押上げ片が形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明の1実施形態に係る、長尺部材の保持具1について説明する。保持具1は、図1〜図6に示す本体部2と、本体部2とは別部品である、図7〜図12に示すクランプ部3とから成り、図13〜図18に図示のように、本体部2にクランプ部3が連結されて成る。本体部2とクランプ部3とは、別部品として形成され、それぞれ、合成樹脂材料で一体成形されて成る。保持具1は、図19に図示のように、長尺部材としてのパイプ5がクランプ部3に保持され、被取付部材としてのボデーパネル6に立設されたスタッド7に本体部2を取付けられ、保持具1によって、パイプ5がボデーパネル6に取付けられる。保持具1において、クランプ部3は、本体部2のクランプ保持部に、そのクランプ保持部内で振動できる大きさの隙間を保って収容され保持される。従って、クランプ部3は、本体部2のクランプ保持部内で振動でき、その振動が本体部2に伝達されないようにクランプ保持部に保持される。保持具1は、パイプ5とボデーパネル6の間での振動の伝達を阻止又は遮断するのに弾性軟質材料を用いていないが、前記のように、クランプ部3と本体部2のクランプ保持部の中で振動できるので、パイプ5からの振動がボデーパネル6へ伝達されるのが阻止される。振動伝達の阻止については、後に、図20〜図24も参照しながら詳細に説明する。なお、ボデーパネル6には、図19に示すように、棒状部分の周面にねじ溝又は周溝が形成されたスタッド7が立設され、本体部2の固定部がスタッド7に固定される。図20〜図24は、クランプ部3に保持したパイプ5によって振動したクランプ部3が、本体部2のクランプ保持部の中で、クランプ保持部へ振動を伝達せずに振動できる作用を示している。
【0012】
本体部2の詳細を図1〜図6を参照して説明する。本体部2は、被取付部材に固定される固定部9と、クランプ部3を収容して保持するクランプ保持部10とを有する。固定部9は、ボデーパネル6に立設された棒状のスタッド7を受入れるように中心部分が中空に形成され、その中空部分には、スタッド7のねじ溝(ねじスタッドの場合)又は周溝(周溝スタッドの場合)に係止するスタッド係止部が、スタッドのねじ溝又は周溝に弾性的に係止する、複数の係止爪11として形成されている。上部には、スタッド7が挿通できる開口13が形成されている。なお、固定部9は、図示の例では、スタッド7に係止するものとして構成されているが、Tスタッドに係止する構造であっても、錨脚形状のクリップを有するものであっても、更に、他の固定手段を有するものであってもよい。
【0013】
本体部2のクランプ保持部10は、クランプ部3を振動可能に収容して保持する。そのため、クランプ保持部10は、クランプ部3がクランプ保持部10に対して振動できる大きさの隙間g1〜g5(図14、図17)を保ってクランプ部3を収容する空間を形成する一対の側壁14と底部15とで形成されている。一対のクランプ保持部側壁14のそれぞれには、クランプ保持部10にクランプ部3が収容された状態においてクランプ部側壁とクランプ保持部側壁14との間に隙間g1、g2を保つように、クランプ部側壁を弾性的に押す第1弾性片17が形成されている。第1弾性片17は、クランプ保持部側壁14のそれぞれに、クランプ保持部10にクランプ部3が収容された状態においてクランプ部の開放部分に対応する高さ位置に、一対形成されている。各クランプ保持部14の一対の第1弾性片17のそれぞれは、クランプ保持部側壁の各縁部からクランプ部側壁に向けてクランプ保持部側壁14の中間に向けて延びている。一対の第1弾性片の先端は、クランプ保持部側壁の中間位置において一定の間隔をおいて相互に離隔している。
【0014】
本体部2のクランプ保持部10の底部15には、クランプ部3をクランプ保持部10に押込むことでクランプ部3をクランプ保持部10に連結するための連結手段の一方が形成されている。その連結手段は、クランプ部底部から延びる錐台形状の先端を持つ嵌合ロッドを受入れてその軸部において抜け止めを成すように、クランプ部底部に形成された係止穴18である。係止穴18は、図2及び図4に最もよく示されるように、嵌合ロッドを受入れて嵌合ロッドがその軸回りに回転するのを可能にするように、円形横断面を有する。更に、係止穴18のある底部部分19は、嵌合ロッドの先端の挿入力を低くするように、細長い板形状に形成されて中央に係止穴18が形成され、係止穴18から延びるスリット21が形成されている。これによって、係止穴18の拡開を容易にするとともに拡開後の復帰をする弾性を与えて嵌合ロッドの挿入を容易にしている。なお、クランプ保持部10にクランプ部3が連結された状態において、クランプ部底部がクランプ保持部底部15に対して振動できるように、隙間g5(図17)が確保される。
【0015】
クランプ部3の詳細を図7〜図12を参照して説明する。クランプ部3は、パイプ5等の長尺部材を保持する。また、クランプ部3は、本体部2のクランプ保持部10に収容保持される。クランプ部3は、上部の開放部分22から押込まれたパイプを収容するように一対の側壁23と底部25とから成るU字形状に形成されている。開放部分22には、収容したパイプをクランプ部3に保持する弾性保持片26が底部25に向けて斜めに延びている。図示の例では、弾性保持片26は一対形成されている。バランスよくパイプを保持するには、一対の弾性保持片26が形成されるのが好ましいが、1つであっても十分にパイプを保持できる。クランプ部3は、クランプ保持部10に対してクランプ部3が振動できる大きさの隙間g1〜g5(図14、図17)をもってクランプ保持部10に収容されて保持される。クランプ部底部25には、クランプ部3をクランプ保持部10に押込むことでクランプ部3をクランプ保持部10に連結するための、他方の連結手段としての嵌合ロッド27が形成されている。嵌合ロッド27は、クランプ保持部底部15の係止穴18に係止するように、クランプ部底部から延びる錐台形状の先端29と軸部30とを持つ。嵌合ロッド27は、係止穴18に挿入されると嵌合ロッド先端29が通過して受入れられると小径の軸部30において抜け止めを成す。嵌合ロッド軸部30は係止穴18の円形穴に対応して円形横断面を有するように形成される。これによって、嵌合ロッド27がその軸回りに回転するのを可能にして、クランプ部3全体が軸部30の軸回りに回転できる。なお、嵌合ロッド27が係止穴18に係止してクランプ保持部10にクランプ部3が連結された状態において、クランプ部底部25がクランプ保持部底部15に対して振動できるように、隙間g5(図17)が確保される。
【0016】
クランプ部底部25には、嵌合ロッド27と係止穴18とで連結されたクランプ部底部25とクランプ保持部底部15との間に隙間g5(図17)を保つように、クランプ保持部底部15を弾性的に押す第2弾性片31が形成されている。第2弾性片31は、嵌合ロッド27を挟んで一対形成されている。各第2弾性片31は、図7、図9〜図11に図示のように、一定幅の板形状であって先端にビードを持つバネ性のある弾性片として形成されている。クランプ部底部25の内面には、許容範囲内の誤差の直径のパイプを受入れて確実に保持するるの可能にするため、クランプ部3に受入れたパイプを弾性保持片26に向けて弾性的に押上げる、弾性押上げ片33が一対形成されている。更に、クランプ部側壁23のそれぞれには、一対の第1弾性片17の先端の離隔部分に対応する位置に動き規制リブ34が形成されている。動き規制リブ34は、クランプ部3がクランプ保持部10の中で嵌合ロッド27の軸回りに回転するのを一定範囲に規制して、回転し過ぎるのを防止する。
【0017】
上記構成で成る本体部2とクランプ部3は、図13〜図18に図示のように、クランプ部3が本体部2のクランプ保持部10に収容されて保持された状態に組み付けられて、保持具1となる。その組み付け操作は、クランプ部3をクランプ保持部10に押込んで、クランプ部底部25の嵌合ロッド27をクランプ保持部底部15の係止穴18に挿入するだけでよい。嵌合ロッド27が係止穴18に挿入されると、先端29が係止穴18を通過して軸部30が係止穴18に収まって抜け止めされ、クランプ部3がクランプ保持部10に連結される。この連結状態において、クランプ保持部側壁14とクランプ部側壁23とは第1弾性片17によって一定の隙間g1、g2(図14)が保たれ、嵌合ロッド27と係止穴18との連結と第2弾性片31とによって隙間g5(図17)が一定に保持され、更に、嵌合ロッド27と係止穴18の連結によって、パイプ長手方向のクランプ保持部10の側壁とクランプ部3との間に隙間g3、g4(図14)が一定に維持される。従って、クランプ部3は、嵌合ロッド27と係止穴18との係止部分と、第1弾性片17と第2弾性片31との当接部分とが、クランプ保持部10に係合しており、他の部分は、クランプ保持部10と一定の隙間をおいて離れている。これによって、クランプ部3は、一定の振動範囲でクランプ保持部10の中で振動できるが、その一定の振動範囲を越えた動きは、クランプ部3がクランプ保持部10に嵌合ロッド27と係止穴18とによって連結しているので、規制されて、クランプ部3が本体部2から抜け外れることなく連結され、保持したパイプが抜け外れることはない。
【0018】
図13〜図18に示す長尺部材の保持具1は、図19に図示のように、長尺部材としてのパイプ5を被取付部材であるボデーパネル6に取付けるのに用いられる。図示の例において、パイプ5が長尺部材の1例として示されているが、ワイヤハーネス等の他の長尺部材であってもよい。クランプ部3には開放部分22からパイプ5が押込まれて収容されて弾性保持片26によって保持される。本体部2の固定部9には、開口13から、ボデーパネル6に立設されたスタッド7が挿入され、スタッド係止爪11がスタッド7のねじ溝又は周溝に係止して、パイプ5がボデーパネル6に固定される。
【0019】
保持具1において、クランプ部3は、クランプ部3に保持したパイプ5によって振動した場合、本体部2のクランプ保持部10の中で、クランプ保持部10へ振動を伝達せずに振動できる。かかる作用を、図14、図15及び図17に示す隙間g1〜g5及び振動方向x−x′、y−y′、z−z′及びu−uを参照しながら、図20〜図24を用いて説明する。なお、図20〜図24において、クランプ部3に保持したパイプ5を図示の便宜上省略しているが、クランプ部3には、図19に図示のように、パイプ5が保持されているものとする。図20において、保持したパイプに直交する水平方向すなわちx−x′方向においては、2対の第1弾性片17が、隙間g1、g2の間で撓むことができる。従って、クランプ部3は、隙間g1及びg2の範囲であれば、クランプ保持部10の中で、クランプ保持部10に振動の伝達をすることなく、振動できる。
【0020】
次に、図21を参照して、図14に示すz−z′方向すなわちパイプの長手方向における振動について説明する。この方向の振動は、パイプ5においては殆どないのであまり考慮する必要はないが、取付け時における誤差を許容するには有効である。クランプ部3は嵌合ロッド27がクランプ保持部10の係止穴18に挿入されて係止することによってクランプ保持部10に連結されており、パイプ長手方向には隙間g3及びg4が形成されているので、一定の隙間g3及びg4の範囲内で移動できる。係止穴18にはスリット21が連続して形成されているので、その移動が容易にできる。なお、この移動は、2対の第1弾性片17の間の離隔部分にクランプ部3の動き規制リブ34があるので、この動き規制リブ34によっても規制される。
【0021】
図22を参照して、図14に示すu−u方向すなわち嵌合ロッド27の軸回りに回転する方向の振動について説明する。この場合のパイプの振動は、パイプの長手方向に直交する水平方向の隙間g1、g2及びパイプ長手方向の隙間g3、g4の範囲内で、クランプ保持部10に伝達されることなしに、嵌合ロッド27(係止穴18)の軸回りに回転振動できる。また、2対の第1弾性片17は、その回転において適正な姿勢になるように弾発力を与えているので、回転方向における振動を可能にし且つその振動を規制するように作用する。なお、この回転振動は、2対の第1弾性片17の間の離隔部分にクランプ部3の動き規制リブ34があるので、この動き規制リブ34によっても規制される。
【0022】
図23を参照して、図15に示すy′方向すなわちパイプ5に直交する方向であってクランプ部3の底部25をクランプ保持部10の底部15に押下げる方向の振動について説明する。この場合のパイプの振動は、パイプの長手方向に直交する垂直方向の隙間g5の範囲内でできる。第2弾性片31は、クランプ保持部10の底部15に撓んだ状態で押付けられて隙間g5を維持している。その状態でクランプ部3がパイプの振動によってy′方向に押下げられると、第2弾性片31は更に撓められて、クランプ部3は隙間g5の範囲内で、クランプ保持部10に伝達されることなしに、振動できる。それ以上の振動は、嵌合ロッド27の軸部30が係止穴18に係合しているので規制されて、連結が抜け外れることはない。
【0023】
図24を参照して、図15に示すy方向すなわちパイプ5に直交する方向であってクランプ部3をクランプ保持部10から引上げる方向の振動について説明する。この場合のパイプの振動は、パイプ5を保持している弾性保持片26の先端を矢印35の方向に押上げるように作用する。この押上げ力は、クランプ部3の側壁23をクランプ保持部10の側壁14の側に撓めるように作用する。クランプ部3の側壁23とクランプ保持部10の側壁14との間には、第1弾性片17を介して隙間g1、g2が設けられている。従って、パイプ5のy方向の振動は、隙間g1、g2の範囲内でクランプ保持部10に伝達されることなしに、できる。なお、それ以上の押上げ方向の振動は、クランプ部3の側壁23の撓みがクランプ保持部10の側壁14によって規制されて、パイプ5が抜け外れることはない。
【0024】
なお、上記実施形態においては、第1弾性片がクランプ保持部の側壁に形成されているが、第1弾性片は、クランプ部の側壁に、クランプ保持部側壁に対面するように形成されてもよい。また、連結手段としては、嵌合ロッドをクランプ保持部底部に設け、係止穴をクランプ部に設けたものでもよく、嵌合ロッドと係止穴に代わる軸回り可能な他の連結手段であってもよい。更に、第2弾性片は、上記実施形態においては、クランプ部の底部に形成されているが、クランプ保持部底部に、隙間を保つようにクランプ部底部を弾性的に押すように、形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の1実施形態に係る長尺部材の保持具の本体部の斜視図である。
【図2】図1の本体部の平面図である。
【図3】図2の本体部の正面図である。
【図4】図2の本体部の底面図である。
【図5】図2の本体部のA−A線断面図である。
【図6】図3の本体部のB−B線断面図である。
【図7】本発明の1実施形態に係る長尺部材の保持具のクランプ部の斜視図である。
【図8】図7のクランプ部の平面図である。
【図9】図8のクランプ部の正面図である。
【図10】図9のクランプ部の側面図である。
【図11】図9のクランプ部の底面図である。
【図12】図9のクランプ部のC−C線断面図である。
【図13】本発明の1実施形態に係る長尺部材の保持具の斜視図である。
【図14】図13の保持具の平面図である。
【図15】図14の保持具の正面図である。
【図16】図14の保持具の底面図である。
【図17】図14の保持具のD−D線断面図である。
【図18】図15の保持具のE−E線断面図である。
【図19】本発明の1実施形態に係る長尺部材の保持具がパイプをボデーパネルに取付けた状態を示す正面図である。
【図20】本発明の1実施形態に係る長尺部材の保持具においてパイプの長手方向に直交する水平方向の振動の伝達の防止を説明する図である。
【図21】本発明の1実施形態に係る長尺部材の保持具においてパイプの長手方向の移動を許容することを説明する図である。
【図22】本発明の1実施形態に係る長尺部材の保持具において連結手段の回転方向の振動の伝達の防止を説明する図である。
【図23】本発明の1実施形態に係る長尺部材の保持具においてパイプの長手方向に直交する押下げ方向の振動の伝達の防止を説明する図である。
【図24】本発明の1実施形態に係る長尺部材の保持具においてパイプの長手方向に直交する押上げ方向の振動の伝達の防止を説明する図である。
【符号の説明】
【0026】
1 長尺部材の保持具
2 本体部
3 クランプ部
5 パイプ(長尺部材)
6 ボデーパネル(被取付部材)
7 スタッド
9 固定部
10 クランプ保持部
11 スタッドの係止爪
13 開口
14 クランプ保持部の側壁
15 クランプ保持部の底部
17 第1弾性片
18 係止穴
19 係止穴を形成する底部部分
21 スリット
22 クランプ部の開放部分
23 クランプ部側壁
25 クランプ部底部
26 弾性保持片
27 嵌合ロッド
29 嵌合ロッド先端
30 嵌合ロッドの軸部
31 第2弾性片
33 弾性片押上げ片
34 動き規制リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプやワイヤハーネス等の長尺部材を保持するクランプ部と、ボデーパネル等の被取付部材へ固定する本体部とを備え、長尺部材が前記クランプ部に保持され、前記本体部は被取付部材に固定されることにより、長尺部材が被取付部材に取付けられる構成の長尺部材の保持具であって、
前記クランプ部と前記本体部とは別部品として形成され、
前記本体部は、被取付部材に固定される固定部と、前記クランプ部を収容して保持するクランプ保持部とを有し、
前記クランプ部は、開放部分から押込まれた長尺部材を収容するように側壁と底部とから成るU字形状に形成されており、前記開放部分には収容した長尺部材を該クランプ部に保持する弾性保持片が前記底部に向けて延びており、
前記本体部の前記クランプ保持部は、該クランプ保持部に対して前記クランプ部が振動できる大きさの隙間を保って該クランプ部を収容する空間を形成する側壁と底部とで形成されており、
前記クランプ保持部側壁又は前記クランプ部側壁には、該クランプ保持部に該クランプ部が収容された状態において該クランプ部側壁と該クランプ保持部側壁との間に前記隙間を保つように、前記クランプ保持部側壁又は前記クランプ部側壁を弾性的に押す第1弾性片が形成されており、
前記クランプ部底部と前記クランプ保持部底部とには、前記クランプ部を前記クランプ保持部に押込むことで該クランプ部が該クランプ保持部に連結される連結手段が形成されており、
更に、前記クランプ部底部又は前記クランプ保持部底部には、前記連結手段で連結された該クランプ部底部と該クランプ保持部底部との間に前記隙間を保つように、前記クランプ保持部底部又は前記クランプ部底部を弾性的に押す第2弾性片が形成されている、
ことを特徴とする保持具。
【請求項2】
請求項1に記載の保持具において、前記連結手段は、前記クランプ部底部又は前記クランプ保持部底部から延びる錐台形状の先端と軸部とを持つ嵌合ロッドと、前記嵌合ロッド先端を受入れて前記軸部において抜け止めを成すように、前記クランプ保持部底部又は前記クランプ部底部に形成された係止穴とから成る、ことを特徴とする保持具。
【請求項3】
請求項2に記載の保持具において、前記嵌合ロッドの前記軸部と前記係止穴とは、前記嵌合ロッドを受入れて該嵌合ロッドがその軸回りに回転するのを可能にするように、円形横断面を有する、ことを特徴とする保持具。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の保持具において、前記第2弾性片は、前記嵌合ロッドを挟んで一対形成されており、該嵌合ロッドが前記係止穴に挿入された状態で前記クランプ部底部と前記クランプ保持部底部との間に前記隙間を保つように前記クランプ保持部底部又は前記クランプ部底部を弾性的に押している、ことを特徴とする保持具。
【請求項5】
請求項3に記載の保持具において、前記第1弾性片は、前記クランプ保持部の一対の側壁のそれぞれに設けられ、対面する前記クランプ部の側壁を弾性的に押している、ことを特徴とする保持具。
【請求項6】
請求項5に記載の保持具において、前記第1弾性片は、前記クランプ保持部側壁に形成され、該第1弾性片は、前記クランプ保持部に前記クランプ部が収容された状態において該クランプ部の前記開放部分に対応する高さ位置に形成された一対の第1弾性片で成り、該第1弾性片のそれぞれは、前記クランプ保持部側壁の各縁部から前記クランプ部側壁に向けて該クランプ保持部側壁の中間に向けて延びている、ことを特徴とする保持具。
【請求項7】
請求項6に記載の保持具において、前記一対の第1弾性片の先端は前記クランプ保持部側壁の前記中間位置において相互に離隔しており、前記クランプ部側壁には、前記一対の第1弾性片の先端の離隔部分に対応する位置に、動き規制リブが形成されており、該動き規制リブが、前記クランプ部が前記クランプ保持部の中で前記嵌合ロッドの軸回りに回転するのを規制する、ことを特徴とする保持具。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の保持具において、前記クランプ部底部の内面に、受入れた長尺部材の直径の許容範囲内の誤差を受入れるように該クランプ部に受入れた長尺部材を前記弾性保持片に向けて弾性的に押上げる、弾性押上げ片が形成されている、ことを特徴とする保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2010−96332(P2010−96332A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269996(P2008−269996)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(390025243)ポップリベット・ファスナー株式会社 (159)
【Fターム(参考)】