説明

長波長通過フィルタを利用した火炎識別装置及び関連した方法

改良された誤警報識別によって、低コストで火災を検出する火炎検出装置を提供し、火炎検出装置は、少なくとも2つの光センサを含み、それぞれは、異なる最短応答波長を有する長波長通過IRフィルタによって構成され、MWIR帯を広くサンプリングするように配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2009年6月24日に出願された米国特許出願第12/491,205号に対する優先権を主張し、その全ての内容は、引用により、ここに援用される。
【0002】
本発明は、一般的には、火炎の光学式検出装置に関する。
【背景技術】
【0003】
光学式火炎検出器が、様々な炎の存在をできるだけ信頼できる方法で検出できることが重要である。これは、光学式火炎検出器が、火災と、赤外線放射の他の源とを識別できることを必要とする。一般的に、光学式火炎検出は、スペクトルの、炭化水素の放射ピークである約4.3μmの狭い赤外線部分で行われる。
【0004】
光学式火炎検出器は、一般的に、炎によって放射されるスペクトルの部分を分析することによって、及び/又はその炎の時間的ちらつきを解析することによって機能する。通常、炎の中波長赤外線(MWIR)スペクトル(3μm〜5μm)における分光サインは、誤警報源によっては簡単に再現されない幾つかの重要な特徴を含んでいる。また、約180nmから290nmまでのUV−C波長帯は、MWIRと組み合わせたときに、その分光サインに基づいて火災を識別するのに役に立つ固有のスペクトル情報を含んでいる。
【0005】
従来技術において、簡単な火炎検出器は、1つだけのセンサを使用しており、火災検出器によって検出された信号が特定の閾値レベルを超えたときはいつでも、警報が発せられる。この簡単な手法は、それが火災と、他の明るい物体、例えば白熱電球、熱工業プロセス、例えば溶接、検出器の前で振られている温かい手、火が着いたタバコ及び太陽光さえも識別することができないので、間違ったトリガを出してしまうという欠点を有する。
【0006】
この問題を克服する試みが、放射を2つ以上の波長で検出することによってなされてきた。各波長で検出された信号の強度を相対的に比較することにより、1つの波長だけで検出したときよりも、間違った源をよりよく識別することができる。光学式火炎検出の従来技術では、識別の優れ基準を得るために、諸条件、効果等を十分考慮して選択された幾つかの帯域通過フィルタを利用している。帯域通過フィルタは、一般的には、明確に定義された下側の、ピーク透過率の50%である「カットオン」波長と、上側の、ピーク透過率の50%である「カットオフ」波長とを有するものと認められている。さらにまた、帯域通過フィルタは、中心波長の1%と13%の間の帯域幅である半値全幅(FWHM)を有するものとされている。通過帯域、中心波長及びフィルタの数は、システムエンジニアにとって有益なツールであり、適切に選択することによって、誤警報を良好に排除することができる。例えば、キング他に付与された米国特許第5,995,008号には、スペクトル帯域が重なるように応答する帯域通過フィルタによって構成された少なくとも2つのセンサを使用した光学式火災検出器装置が開示されている。第1の帯域通過フィルタは、COのサンプリングを保証するために、中心周波数が4.5μmに設定され、約0.15μmの帯域幅を有し、第2の帯域通過フィルタは、通過帯域が約0.35μmに設定されるとともに、第2の帯域通過フィルタは、フィルタリングする上側又は下側のフィルタ応答境界波長の両方が略一致するように、中心が合わせられている。キング他によると、スペクトラムの他の部分をサンプリングするために、第3のフィルタが追加されてもよい。
【0007】
実際、十分なリソースがある場合、全ての考えられる誤警報を100%除去するシステムを設計することは、理論的には可能である。しかしながら、現実的には、システムエンジニアは、彼らが特定の費用制約条件内で合理的に実装できるフィルタの数の選択は、制限されている。各フィルタは、それ自体は高価な項目であり、通常、安価な項目、例えば他のプリアンプ、他のアナログ/デジタル変換器チャンネル及び多くの処理パワーだけではなく、フィルタよりも高価な他のセンサを必要とするので、フィルタを追加することは、直ちにセンサのコストが増加する。更に、帯域通過フィルタは、一般的に、選択する帯域幅がより狭いほど、より高価である。帯域幅をより低くすることにより、炎の識別は向上し、しかしながら、これは、検出器のコストを増加させる。最後に、帯域幅がより狭いほど、感度はより高く、関連するセンサは、センサに到着する少ない光子数に対して十分な信号対雑音比が得られるように適切でなければならない。光学式火炎検出方法に、センサコストによる実際の制限を課した場合、帯域通過フィルタは、それが解決するよりも多くの問題を起こす可能性がある。
【0008】
何人かのシステムエンジニアは、焦電検出器、例えばタンタル酸リチウム(LiTaO)を利用することによって、システムにより多くの帯域通過フィルタを追加することによるコストの一部を軽減しようと試みた。焦電検出器は、他のMWIR検出器、例えばセレン化鉛(PbSe)よりもコストが安い解決策であり、確かに、より多くの特殊検出器材料、例えばインジウムヒ素(InAs)、インジウム鉛(InSb)、テルル化カドミウム水銀(MCT)又は水銀カドミウムテルル化亜鉛(MCZT)よりも高価でない。しかしながら、耐久性のある検出器を必要とする用途を考慮したとき、焦電検出器は、固有の欠陥がある。すなわち、焦電効果を示すあらゆる結晶は、また、ある程度、圧電効果を示すに違いない。換言すると、焦電検出器は、電磁放射線だけではなく、音及び振動に対しても敏感であり、これらの刺激の両方に比例して、応答を出力することになる。雑音及び/又は振動環境が重要であると予想される用途、例えば航空機、陸上/海上の乗り物、産業の活動、工場等を考慮したとき、これは、非常に好ましくない。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、それぞれがスペクトラムのIR部の波長の範囲に応答する長波通過(LWP)赤外フィルタをそれぞれ有する複数の光センサによって構成された火炎検出装置を目的とし、1つのLWPフィルタは、約4.17μmの波長において少なくとも50%で応答する。用いられる他のLWPフィルタは、互いに異なる波長で少なくとも50%で応答するが、少なくとも1つのフィルタの応答スペクトルが、もう1つのフィルタの部分集合であるように設計されている。
【0010】
本発明のこれら及び他の実施の形態は、また、図面を参照する実施の形態の以下の詳細な説明から、当業者に容易に理解でき、本発明は、開示するあらゆる特定の実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明を、添付の図面を参照して説明する。図面において、同一の参照番号は、同一の又は機能が類似した要素を示している。
【図1】炭化水素炎の分光特性を示すグラフである。
【図2】長波長通過フィルタを用いた例示的な火炎検出装置の機能図である。
【図3】一実施の形態に基づいて選択され、配列されたLWPフィルタのスペクトル応答を示すグラフである。
【図4】図1の炭化水素炎の分光特性曲線を図3のスペクトル応答曲線上に重ねたグラフである。
【図5】サファイヤガラスの分光透過特性を示すグラフである。
【図6】図5のグラフが重ねられた異なるセットのフィルタのスペクトル応答曲線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の様々な実施の形態及びそれらの効果は、図1〜図6を参照することによって、最も良く理解される。各図面の構成要素が必ずしも一定の比率であるというわけではなく、代わりに、本発明の原理を明確に示すように、強調されている。図面を通して、様々な図面の同じ及び対応する部分には、同じ参照番号を付している。
【0013】
ここに説明するように、この発明は、本質的特徴から逸脱することなく、他の特定の形態及び実施の形態でも提供することができる。上述した実施の形態は、全ての特徴において、一例に過ぎず、いかなる方法によっても、制限されるものではないと考えられる。発明の範囲は、上述の説明よりもむしろ、以下の請求の範囲によって明らかにされる。
【0014】
炭化水素炎が、約4.3μmと約4.5μmの間にピークを有し、実際のピークの位置が、炎の温度及び燃料に混合可能な酸素の量だけでなく、炎までの距離に依存するIR分光特性を示す傾向にあることは良く知られている。図1を参照すると、図1は、炭化水素炎で観察されるIR分光特性をプロットした図である。2つの曲線が示されている。第1の曲線は、「青炎」から受光されるIRエネルギを示し、略4.3μm(21)と、約2.7〜約2.8μm(11)とに2つの大きなピークを示している。第2の曲線は、「汚い炎」(酸素混合量が最低)からのIRエネルギを示し、ピークが、略同じ波長、すなわちそれぞれ青炎のIRエネルギと同じ波長22、12の近傍で生じている。
【0015】
このスペクトルを考慮した機能回路図を図2に示し、例示的な火炎検出装置100は、複数の光センサ101、103、105を含んでいる。光センサ101、103、105の全ては、アナログ/デジタル変換器、すなわちADC121に接続され、ADC121は、更にプロセッサ131に接続され、プロセッサ131は、プロセッサ131によってアクセス可能なコンピュータで読取り可能な媒体上に格納されているコンピュータプログラムによって実行される検出アルゴリズムに基づいて、処理を行う。プロセッサ131は、キーパッド、表示装置、聴覚表示器、例えば1つ以上のスピーカ、視覚表示器、例えば発光ダイオード等のうちの何れか1つを含む入出力装置141に応答する。また、較正の目的のために、周囲の温度の値を示す温度検出器161を含んでいてもよい。光センサ101、103、105は、透明な保護被覆151の他に、信号強度を増幅する専用のアンプを含んでいてもよい。
【0016】
光センサ101、103、105はそれぞれ、所定の波長よりも長い波長だけに応答するように設計された長波長通過(LWP)フィルタ111、113、115を含んでいる。例えば、この実施の形態の第1のフィルタ111は、約2.55μm以上の波長に少なくとも50%の出力で応答し、長波長のカットオフ波長を有さないように設定されていてもよい。第2のフィルタ113は、少なくとも、約3.5μm以上の波長に50%の出力で応答し、同じく、長波長のカットオフ波長を有さないように設定されている。第3の光センサ105は、第3のフィルタ115を含み、第3のフィルタ115は、約4.17μm以上の波長に少なくとも50%の出力で応答し、長波長のカットオフ波長を有さないように設定されている。図3は、LWPフィルタの例示的な組合せで得られるスペクトル応答のグラフを示す。グラフに示すように、第3のフィルタ115は、第2のフィルタ113のスペクトル応答203の部分集合であるスペクトル応答205を有するように設定されている。同様に、第2のフィルタ113のスペクトル応答203は、第1のフィルタ111のスペクトル応答201の部分集合である。
【0017】
高価で、比較的精密な赤外用フィルタを環境に露出させる用途は少ないので、簡単にきれいにすることができる保護被覆151が、実装されている。この発明の特徴は、この保護被覆151を利用して、共通のカットオフ波長を赤外用フィルタに与えるということである。カットオフ波長は、被覆材料に固有の特性によって与えてもよく、あるいは、それは保護被覆の内部に塗布されたコーティングの形であってもよく、あるいは、それらの2つの組合せであってもよい。ここで説明するような用途の場合、適切な保護被覆151は、硬くて、耐久性があり、耐傷性がある。透明なサファイヤガラスは、図5のサファイヤガラスの透過率特性のグラフで観察できるように、6μmを超える固有の50%のカットオフ波長を示すので、検出器用に選択される優れた材料である。さらに、サファイヤガラスは、化学的に不活性であり、機械的に強固である。したがって、他の赤外線コーティングの費用は避けられる。
【0018】
したがって、様々な誤警報源からの炎を識別するために、火炎検出器は、より長い波長に応答するフィルタ113/115のスペクトル応答が、より短い波長に応答するフィルタ111のスペクトル応答の部分集合であるように配置された幾つかのLWPフィルタを、異なる規定された応答の短波長を有するが、カットオフ波長を与える保護被覆と共に利用する。この手法の効果の幾つかは、光センサが、検出する非常に大きなフラックスを有することであり、また、IRスペクトラムの大部分をサンプリングできることである。カットオン波長は、可能な限り高い識別度が得られるように選択される。実際には、1つのフィルタ、すなわち、炭化水素炎からの4.3μmのピークを検出することを目的にしたフィルタ(この実施の形態では第3のフィルタ115)のカットオン波長の許容誤差が、最高の性能を得るためには、厳密に規定されることが必要である。このフィルタのカットオン波長が、短い波長側に余りにシフトされている場合、CO波長の火元は、競合する誤警報源に埋もれてしまい、誤警報との識別が損なわれる。このフィルタのカットオン波長が、長い波長側に余りにシフトされている場合、COピークのエネルギは2つのフィルタ間に分離され、また、識別が損なわれる。残りのLWPフィルタのカットオン波長は、既知でなければならないが、非常に緩い許容誤差が許され、したがって、センサのコストは更に削減される。
【0019】
帯域通過フィルタではなく、LWPフィルタと、別のカットオフフィルタとをできれば保護被覆の形で用いることにより、以前の解決策に勝る大きな効果が得られる。第1に、これらの種類のフィルタは、帯域通過フィルタと比較して、フィルタ基板上に蒸着する薄膜層が少ないので、検出器の総原価をより低くすることができる。第2に、光学系は、通常光量が不足し、したがって、システム設計者は、特殊な材料で造られた高価な光センサを用いなければならないか、火炎検出器の範囲が制限されることを受け入れなければならない。しかしながら、LWPフィルタは、光センサに通過する光量を多くすることができ、したがって、特定の光センサの信号対雑音比を高めることができ、あるいはより安価な光センサを利用できる可能性がある。最後に、LWPフィルタは、入射角効果に起因した性能のシフトに対して感度が低い。
【0020】
例えば、4μmのカットオン波長を有するフィルタは、4μmで1.17%の帯域通過フィルタと比較して、入射角によるシフトが少ない。この具体例におけるLWPフィルタは、40°の入射角で約0.1μmのシフトを起こし、一方、1.17%の帯域通過フィルタは、約0.23μmのシフトを起こす。より大きな入射角による更なる性能の利点は、1.17%の帯域通過フィルタのピーク透過率が略2倍低下するのに対して、LWPフィルタのピーク透過率がほとんど測定できない程度しか変化しないことである。要約すると、帯域通過フィルタと比較して、LWPフィルタを用いる利点は、コストであり、光センサに対する光強度が増加することであり、大きな入射角による非常に良好な性能である。
【0021】
光センサの作用面は、関連する光センサの透過波長を検出するのに適したあらゆる材料から造ることができることに、注意すべきである。ある場合、光センサのスペクトル応答曲線は、当然、カットオフ波長を与えることになり、LWPフィルタと共に用いたとき、得られる機能は、非常に広い、すなわちおおよそ5μmの帯域通過フィルタの機能である。他の場合、光センサのスペクトルのカットオフ波長は、コスト、大きさ、感度、動作温度範囲等と比較したとき、関係事項のうちの些細なものであり、光センサの有効カットオフ波長は、20μm〜50μmの範囲にある。この場合、保護被覆又はLWPフィルタ自体の基板材料の分光透過率は、これよりも非常に短い波長のカットオフ波長を与える虞がある。
【0022】
火災検出装置100は、それぞれのLWPフィルタ111、113、115によって通過された波長に基づき、光センサ101、103、105によってIRエネルギを受光する。光センサ101、103、105からの全ての信号は、ADC121に供給され、ADC121は、アナログ信号をデジタル信号102に変換して出力し、デジタル信号102はプロセッサ131に供給される。プロセッサ131は、検出アルゴリズムに基づいてデジタル信号102を解析するプログラムを実行する。プロセッサ131は、ADC121から入力電圧102を読み込み、必要に応じて、較正に基づく補正係数を適用し、2つの比を計算する。なお、最も広い有効通過帯域を有する検出器(第1の検出器)が特定の閾値よりも上にある場合、比が計算されるだけである。第1の比は、第2の光センサ103の電圧信号を第1の光センサ101の電圧信号によって除算したものであり、第2の比は、第3の光センサ105の電圧信号を第2の光センサ103の電圧信号によって除算したものである。第3の比は、第3の光センサ105の電圧信号を第1の光センサ101の電圧信号によって除算したものとすることができ、また、直接計算することもできるが、数学的には冗長である。2つの得られる比の値は、閾値と比較され、閾値が満たされる場合、プロセッサ131は、I/O141に警報を起動させるコマンド信号104を出す。これらの具体的な仕様を用いて、検出アルゴリズムは、比較のための閾値の具体的な値を含み、第1の比が約0.40と約0.85の間にあり、第2の比が0.85以上の場合、警報を起動するコマンドを出す。
【0023】
図3のグラフで示すフィルタの例示的な構成において、第1のフィルタ111(短波長)は、約2.3μmと約2.8μmの間のどこかに50%のカットオン波長を有してもよい。第2のフィルタ113は、約3.2μmと約3.8μmの間に50%のカットオン波長を有してもよい。しかしながら、第3のフィルタ115は、炭化水素炎(4.3μm)のピーク透過波長を含むので、50%のカットオン波長は、4.17μmの約1%以内に存在しなければならない。検出アルゴリズムの閾値は、選択されたフィルタのカットオン波長に適合するように調整する必要があることは、言うまでもない。図4は、上述した検出器装置が検出可能な波長に対する有効範囲を示すために、単に、LWPのスペクトル応答曲線に炭化水素炎のスペクトル特性を並べて書いたものである。
【0024】
上述した実施の形態は、3つのセンサと、関連したフィルタとを含み、2つの対応する数学的に独特な比を計算するアルゴリズムを有する。しかしながら、波長LWPフィルタ117を有する光センサ(図2の光センサ107)を追加して、誤警報の排除の更なるマージンを与えるようにしてもよい。これらは、炎の他のスペクトル特徴を識別するために、スペクトルのUV、可視又はIR部の様々な他の部分に追加することができる。これは、MWIR内に波長LWPフィルタ117を追加することを妨げず、それは、炎のスペクトルのこのようなそのスペクトルで重要な特徴が、それらの特徴を識別するために、光センサ107によってサンプリングされるように、単に波長LWPフィルタ117を配置する問題である。例えば、2.7μm、1.9μm及び更に1.4μmの水の発光帯は、固有の炎サインの一部としてもよい。これらの波長の周りに更なるフィルタを配置することは、スペクトルが黒体のスペクトルに余りに類似したスペクトルで興味がない範囲にフィルタを設けることよりも有益である。黒体又は灰色体の放射は、多くの誤警報の原因である。
【0025】
逆に、2つの波長LWPフィルタを利用することができるが、誤警報の数は極端に多くなる。したがって、上述した手法が2つの光センサだけで利用される場合、固有の第3の光センサが、誤警報を排除するのを助けるために必要となる。この固有な第3の光センサは、UV帯で動作し、検出器の物理的特性によってスペクトル的に限定された検出プロセスを有するガイガー/ミュラー検出器に類似したものであってもよい。GM検出器のこの検出プロセスは、それが太陽の波長に対して感度を有しないので、有効である。
【0026】
それに加えて、検出アルゴリズムは、また、光センサの有効帯域幅、すなわちフィルタのカットオン波長から光センサの有効カットオフ波長までの帯域幅を用いて警報を起動するかを決定する、「分光光束比」と呼ばれる比の他のセットを計算してもよい。この方法は、各LWPフィルタから保護被覆によって与えられる共通のカットオフ波長までとして計算される有効帯域幅を用いて、比を計算する前に、各光センサからの各電圧を正規化することが必要である。このように、比較的狭い有効帯域幅を有する光センサ/フィルタの組合せからの大きな電圧レベルは、μm当たりのVで測定されるように比較的大きな分光光束を生成する。逆に、比較的広い有効帯域幅を有する光センサ/フィルタの組合せからの比較的小さい信号は、比較的小さい分光光束を生成する。この方法は、単に、そのLWPフィルタ及び保護被覆のカットオフ波長からの関連した帯域幅を考慮した各光センサからの信号を説明しようとする。例えば、第3の比は、第1の光センサの帯域幅によって除算された第1の光センサからの電圧として計算される。同様に、第4及び第5の比は、それぞれ、第2の光センサの帯域幅によって除算された第2の光センサの電圧であり、第3の光センサの帯域幅によって除算された第3の光センサの電圧である。理想的には、プロセッサは、全ての比を計算して、適切な閾値と比較するロジックを含むようにしなければならない。
【0027】
フィルタを、上で提案した波長とは異なる波長に応答するように選択してもよいことは言うまでもない。図6は、フィルタの他の組合せのスペクトル応答曲線を、視覚的に示しており、例えば、短波長フィルタ111のスペクトル応答611は、約3.93μm以上において、50%以上で応答するようにしてもよい。第2のフィルタ113のスペクトル応答613は、約4.17μm以上において、50%以上で応答するようにしてもよく、第3のフィルタ115のスペクトル応答615は、約4.96μm以上において、50%以上で応答するようにしてもよい。また、サファイヤ保護ガラスのスペクトル透過率応答651は、LWPフィルタ111、113、115の組合せを示すこのグラフ中に含まれており、保護被覆151は、帯域通過フィルタの関連するコストなしで、約6μm以上のカットオフ波長を有する帯域通過フィルタを、事実上実現している。
【0028】
3つのフィルタを用いる実施の形態において、第1のフィルタ111のカットオン波長は、それが、検出したい固有のスペクトル特徴のピーク波長の約−25%の範囲内にあるように選択されてもよく、選択された波長は、第2のフィルタ113のカットオン波長未満である。例えば、炭化水素炎を検出するように求められる用途においては、このピーク位置は、約4.25umである。この開示の利益を受ける当業者は、また、ピークの波長が、幾つかの大気成分の濃度だけではなく、炎から光センサまでの距離に依存すると認識することになる。したがって、フィルタ仕様を選択するときには、これらの要素を考慮すべきである。第2のフィルタ113のカットオン波長は、それが固有のスペクトルピークに非常に近く、例えば予測されるピーク波長の約+/−10%内に位置するように選択されるべきである。第3のフィルタ115のカットオン波長は、選択された波長が第2のフィルタ113のカットオン波長よりも長くなるように、固有のスペクトル特徴のピーク波長の約+25%以内にあるべきである。
【0029】
保護被覆151を用いた実施の形態の場合、被覆材料は、用いる検出器に十分な信号対雑音比を与えるために、カットオフ波長が第3のフィルタ115のカットオン波長よりも長くなるように選択されるべきである。例えば、上述の例示的な実施の形態において、カットオフ波長は、第3のフィルタ115のカットオン波長の+25%を超える範囲内にあるべきである。高い検出感度(D*)を示す検出器材料の場合、基準がカットオフ波長及びカットオン波長の両方の50%の点にあるので、これは、非常に小さく、0%と同じくらい小さくてもよい。一方、炎とセンサ間の距離が増えるにつれて、5μmと8μmの間の透過率が非常に低下するので、空気は、カットオフフィルタとして機能する可能性がある。したがって、検出器が、例えば潜在的な火災源から5m以上離れて置かれる可能性がある場合、カットオフフィルタとして機能する保護被覆は、必要ではなくてもよい。
【0030】
プロセッサ131は、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、マイクロコントローラ、メモリを有する中央処理装置(CPU)又は他の適切な論理回路によって実現することができる。プロセッサ131は、コンピュータシステムを実質的に含む。このようなコンピュータシステムは、例えば、通信バスに接続された1つ以上のプロセッサを含む。また、コンピュータシステムは、主記憶装置、好ましくはランダムアクセスメモリ(RAM)を含むことができ、また、不揮発性の補助記憶装置を含むことができる。
【0031】
補助記憶装置は、例えばハードディスク装置及び/又はリムーバブル記憶装置を含むことができる。リムーバブル記憶装置は、周知の方法で、リムーバブル記憶ユニットから読み出し及び/又は書き込む。リムーバブル記憶ユニットは、ディスク、磁気テープ、光ディスク等を表し、リムーバブル記憶装置によって読み出され、書き込まれる。リムーバブル記憶ユニットは、コンピュータソフトウェア及び/又はデータを記憶したコンピュータで使用可能な記憶媒体を含む。
【0032】
補助記憶装置は、コンピュータプログラム又は他の命令をコンピュータシステムにロードすることができる他の同様な手段を含むことができる。このような手段は、例えば、リムーバブル記憶ユニットと、インタフェースとを含むことができる。このような手段の具体例は、リムーバブル記憶ユニットからソフトウェア及びデータをコンピュータシステムに転送することができるプログラムカートリッジ及びカートリッジインタフェース(例えばビデオゲーム機器で見ることができる)と、リムーバブルメモリチップ(例えばEPROM又はPROM)及び関連するソケットと、他のリムーバブル記憶ユニット及びインタフェースとを含むことができる。
【0033】
コンピュータプログラム(また、コンピュータ制御ロジックとも呼ばれる)は、主記憶装置及び/又は補助記憶装置に記憶されている。また、コンピュータプログラムは、通信インタフェースを介して受信することもできる。このようなコンピュータプログラムは、実行されたときに、コンピュータシステムに、ここで説明するような本発明の特定の機能を実行させることができる。特に、コンピュータプログラムは、実行されたときに、制御プロセッサに、本発明の機能の能力を実行及び/又は起こさせることができる。したがって、このようなコンピュータプログラムは、装置のコンピュータシステムのコントローラを表す。
【0034】
発明がソフトウェアを用いて実施される実施の形態において、ソフトウェアは、コンピュータプログラム製品に格納され、リムーバブル記憶装置、メモリチップ又は通信インタフェースを用いて、コンピュータシステムにロードすることができる。制御ロジック(ソフトウェア)は、制御プロセッサによって実行されたとき、制御プロセッサに、ここで説明するような発明の特定の機能を実行させる。
【0035】
他の実施の形態において、上述した検出装置の機能は、第1に、例えば、ハードウェア部品、例えば特定用途向け集積回路(ASIC)又はフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGAs)を用いたハードウェアによって実現される。ここで説明する機能を実行するために、ハードウェアステートマシンを実装することは、当業者にとって明らかである。更に他の一実施の形態において、火炎検出装置の機能は、ハードウェア及びソフトウェアの組合せを用いて、上述した原理に基づき、実現することができる。
【0036】
上述し、関連する図面に示すように、本発明は、LWPIRフィルタを用いた火災検出装置を含む。発明の特定の実施の形態を説明したが、当業者によって、特に上述した教示に照らして、変更することができるので、発明は、それに限定されないことは理解される。したがって、それらの機能、あるいは本発明の精神及び範囲を実現するそれらの改良を組み込みあらゆるこのような変更は、添付の特許請求の範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のスペクトル応答を有する第1の長波長通過フィルタを含む第1の光センサと、
第2のスペクトル応答を有する第2の長波長通過フィルタを含む第2の光センサと、
第3のスペクトル応答を有する第3の長波長通過フィルタを含む第3の光センサとを含み、
上記第3のスペクトル応答は、上記第2のスペクトル応答の部分集合であり、該第2のスペクトル応答は、上記第3のスペクトル応答の部分集合である火災検出装置。
【請求項2】
保護被覆を更に含む請求項1記載の火災検出装置。
【請求項3】
上記第1、第2及び第3のスペクトル応答は、上記各長波長通過フィルタがそれ以上で50%の透過率で少なくとも応答するそれぞれの第1、第2及び第3の最短波長で規定され、該第1の最短波長は、約2.3μmと約2.8μmの間にあり、該第2の最短波長は、約3.2μmと約3.8μmの間にあり、該第3の最短波長は、4.17μmの約1%以内にある請求項1記載の火災検出装置。
【請求項4】
上記第1、第2及び第3のスペクトル応答は、上記各長波長通過フィルタがそれ以上で50%の透過率で少なくとも応答するそれぞれの第1、第2及び第3の最短波長で規定され、該第1の最短波長は、約3.93μmであり、該第2の最短波長は、約4.17μmであり、該第3の最短波長は、約4.96μmである請求項1記載の火災検出装置。
【請求項5】
上記第1、第2及び第3のスペクトル応答は、上記各長波長通過フィルタがそれ以上で50%の透過率で少なくとも応答するそれぞれの第1、第2及び第3の最短波長で規定され、該第1の最短波長は、所定のピーク波長の25%未満に過ぎず、該第2の最短波長は、該ピーク波長の10%以内にあり、該第3の最短波長は、該ピーク波長の25%以上に過ぎない請求項1記載の火災検出装置。
【請求項6】
カットオフ波長以下の波長のエネルギだけが通過するようなスペクトル透過率を有する保護被覆を更に含む請求項5記載の火災検出装置。
【請求項7】
上記カットオフ波長は、上記第3の最短波長の25%以上に過ぎない請求項6記載の火災検出装置。
【請求項8】
上記第1、第2及び第3の光センサから受信された第1、第2及び第3の信号を解析して、コマンド信号及び該コマンド信号に応答して出力を出すコンピュータベースのプロセッサを更に含む請求項1記載の火災検出装置。
【請求項9】
上記コンピュータベースのプロセッサは、当該プロセッサに命令して、検出方法を実行させる制御ロジックが設定されたコンピュータで読取り可能な媒体を含み、
上記検出方法は、
上記第1の信号に対する上記第2の信号の比である第1の比を、第1の閾値と比較し、
上記第2の信号に対する上記第3の信号の比である第2の比を、第2の閾値と比較する請求項8記載の火災検出装置。
【請求項10】
上記第1、第2及び第3のスペクトル応答は、上記各長波長通過フィルタがそれ以上で50%の透過率で少なくとも応答するそれぞれの第1、第2及び第3の最短波長で規定され、該第1の最短波長は、所定のピーク波長の25%未満に過ぎず、該第2の最短波長は、該ピーク波長の10%以内にあり、該第3の最短波長は、該ピーク波長の25%以上に過ぎない請求項9記載の火災検出装置。
【請求項11】
上記検出方法は、更に、
上記第1のスペクトル応答に対する上記第1の信号の比である第3の比を、第3の閾値と比較し、
上記第2のスペクトル応答に対する上記第2の信号の比である第4の比を、第4の閾値と比較し、
上記第3のスペクトル応答に対する上記第3の信号の比である第5の比を、第5の閾値と比較する請求項10記載の火災検出装置。
【請求項12】
上記コンピュータベースのプロセッサは、当該プロセッサに命令して、検出方法を実行させる制御ロジックが設定されたコンピュータで読取り可能な媒体を含み、
上記検出方法は、
上記第1のスペクトル応答に対する上記第1の信号の比である第1の比を、第1の閾値と比較し、
上記第2のスペクトル応答に対する上記第2の信号の比である第2の比を、第2の閾値と比較し、
上記第3のスペクトル応答に対する上記第3の信号の比である第3の比を、第3の閾値と比較する請求項8記載の火災検出装置。
【請求項13】
上記第1、第2及び第3のスペクトル応答は、上記各長波長通過フィルタがそれ以上で50%の透過率で少なくとも応答するそれぞれの第1、第2及び第3の最短波長で規定され、該第1の最短波長は、所定のピーク波長の25%未満に過ぎず、該第2の最短波長は、該ピーク波長の10%以内にあり、該第3の最短波長は、該ピーク波長の25%以上に過ぎない請求項12記載の火災検出装置。
【請求項14】
約2μmと8μmの間の波長で固有のスペクトル応答をそれぞれ有する少なくとも3つのセンサを含み、
上記センサのうちの1つは、約4.17μmの波長以上のスペクトル応答を有し、該1つのセンサのスペクトル応答は、他のセンサのスペクトル応答内に含まれる火災検出器。
【請求項15】
カットオフ波長以下の波長のエネルギだけが通過するようなスペクトル透過率を有する保護被覆を更に含む請求項14記載の火災検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−531586(P2012−531586A)
【公表日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−517536(P2012−517536)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/035570
【国際公開番号】WO2010/151386
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(511314407)ポラリス センサー テクノロジーズ インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】