説明

間接加熱型濃縮乾燥装置

【課題】コンパクトな構造で、液状原料の粘度によらず固形分や溶剤を効率よく回収できる間接加熱型濃縮乾燥装置を提供する。
【解決手段】装置の前段に横型薄膜蒸発機1を使用し、後段に2軸噛合い型スクリュー式乾燥機2を使用して、前段で液状原料を濃縮して大幅に減容するとともに原料粘度を上げ、後段では濃縮された高粘度の原料を確実に移送しながら乾燥する構成とした。これにより、コンパクトな構造で、低粘度の液状原料が大量に投入されても十分な加熱時間をとって高濃縮処理することができ、固形分や溶剤を効率よく回収できる。また、薄膜蒸発機1に供給される液状原料が発泡しやすいものであっても、前段の濃縮過程で原料の発泡性が大幅に低減されるので、スクリュー式乾燥機2での発泡によるトラブルが生じにくく、安定して高濃縮処理できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状原料を伝導加熱により濃縮乾燥して、液状原料中の固形分や溶剤を回収する間接加熱型濃縮乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液状原料中の水分を蒸発させ固形分を粉状製品として回収したり、樹脂を溶剤で溶かした液状原料から溶剤と固形樹脂を回収したりしようとする場合、液状原料を伝導加熱により間接的に加熱する方式の装置が用いられることが多い。このような間接加熱型装置の一つとして、液状原料が供給されるケーシングに、このケーシングを水平方向に貫通する一対のスクリューを互いに噛み合うように取り付け、スクリューを中空にしたりケーシングの外側にジャケットを設けたりして、これらの部材の内部に熱媒体を通すことにより、原料を移送しながら原料中の溶媒または溶剤を気化させる2軸噛合い型スクリュー式乾燥機がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記のようなスクリュー式乾燥機は、高粘度の原料に対しては安定して使用できるが、セルフクリーニング機能をもたせるためにスクリューどうしを噛み合わせるとともに、スクリューとケーシング下部内面とのクリアランスを小さく設定しているので、ケーシング内に原料を多く保持することができず、低粘度の原料を大量に高濃縮処理しようとすると装置全体が大型化するという難点がある。また、原料が低粘度の場合は、原料のケーシング内での滞留時間が短くなるので、原料を十分に加熱することができず、高濃度に濃縮(乾燥)させることが難しい。
【0004】
さらに、液状原料中の溶媒または溶剤の気化を促進するためにスクリューの上方に比較的広い空間を設けており、ケーシング上部内面にはセルフクリーニング機能が作用しないので、発泡性の原料を処理した場合には、未乾燥の原料が泡となってケーシング上部内面に付着し、付着した原料が成長して連続運転を阻害したり、原料の泡がはじけて排出側へ大きく飛び散った飛沫が乾燥ムラを引き起こしたりするという問題もある。
【0005】
一方、低粘度の液状原料を大量に濃縮処理するのに適した装置として、液状原料を供給されるドラムに、このドラムの軸心位置を貫通する回転軸を取り付け、回転軸の外周面に複数の攪拌羽根を設けて、攪拌羽根の回転により原料をドラム内周面に薄膜の状態で接触させるとともに、ドラムを外側から加熱して、原料中の溶媒または溶剤を気化させる薄膜蒸発機がある。このような薄膜蒸発機では、発泡性の原料でも安定して処理することができる。原料の泡ができても、高速回転する攪拌羽根でドラム内周面に押し付けられてすぐに壊れるからである。
【0006】
ところで、上記のような薄膜蒸発機には、ドラムを横置きにした横型(例えば、特許文献2参照。)と、ドラムを縦置きにした縦型(例えば、特許文献3参照。)の2つのタイプがあるが、そのうちの横型の薄膜蒸発機は、原料を排出側へ移送する能力が小さく、加熱により原料が固形化すると排出できなくなるので、原料から固形分を回収する処理には適していない。
【0007】
これに対して、縦型の薄膜蒸発機では、原料がその自重により上から下へ流れるので、加熱により原料が固形化しても排出は可能である。しかし、前述のスクリュー式乾燥機のようなセルフクリーニング機能はなく、固形化した原料が攪拌羽根やドラム内周面に付着すると排出が困難となるため、高粘度・高付着性の樹脂を溶かした原料を高濃縮処理する場合には対応できない。さらに、重力の影響が大きく原料のドラム内での滞留時間の調整が困難なため、原料の濃縮状況をコントロールしにくいという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−227842号公報
【特許文献2】特開2004−197989号公報
【特許文献3】特開平9−47796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、コンパクトな構造で、液状原料の粘度によらず固形分や溶剤を効率よく回収できる間接加熱型濃縮乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の間接加熱型濃縮乾燥装置は、一端側に供給口を他端側に排出口を有する横置きのドラムに、このドラムの軸心位置を貫通する回転軸を回転自在に取り付け、前記回転軸の外周面に複数の攪拌羽根を設けて、前記ドラムの供給口から供給された液状原料を前記攪拌羽根の回転によりドラム内周面に薄膜の状態で接触させ、伝導加熱により前記液状原料中の溶媒または溶剤を気化させて、前記ドラムの排出口から濃縮された液状原料を排出する薄膜蒸発機と、一端側に供給口を他端側に排出口を有するケーシングに、このケーシングを水平方向に貫通する一対のスクリューを回転自在にかつ互いに噛み合うように取り付け、前記ケーシングの供給口から供給された液状原料を前記スクリューの回転によりケーシング排出口へ向けて移送しながら、伝導加熱により前記液状原料中の溶媒または溶剤を気化させて、前記ケーシングの排出口から液状原料中の固形分を排出するスクリュー式乾燥機とを備え、前記薄膜蒸発機のドラムの排出口を前記スクリュー式乾燥機のケーシングの供給口に接続したものとした。
【0011】
すなわち、装置の前段に横型薄膜蒸発機を使用し、後段に2軸噛合い型スクリュー式乾燥機を使用して、前段で液状原料を濃縮して大幅に減容するとともに原料粘度を上げ、後段では濃縮された高粘度の原料を確実に移送しながら乾燥する構成とすることにより、コンパクトな構造で、低粘度の液状原料が大量に投入されても十分な加熱時間をとって高濃縮処理することができ、固形分や溶剤を効率よく回収できるようにしたのである。また、この構成では、薄膜蒸発機に供給される液状原料が発泡しやすいものであっても、前段の濃縮過程で原料の発泡性が大幅に低減されるので、スクリュー式乾燥機での発泡によるトラブルが生じにくく、安定して高濃縮処理することができる。
【0012】
上記の構成においては、前記スクリュー式乾燥機に排気口を設けず、前記薄膜蒸発機のドラムの一端側に排気口を設けて、前記ケーシング内およびドラム内の気体の流れを液状原料の流れと逆向きにすることが望ましい。このように装置全体を向流型とすれば、スクリュー式乾燥機内で固形化した原料の微粉が発生しても、その微粉の多くは気化した溶媒や溶剤とともに薄膜蒸発機に戻って排気口へ向かう途中で薄膜蒸発機内の液状原料に捕捉されるので、微粉の装置外への流出を抑えられ、回収した溶剤は再利用が可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の間接加熱型濃縮乾燥装置は、上述したように、前段に横型薄膜蒸発機を使用し、後段に2軸噛合い型スクリュー式乾燥機を使用したものであるから、コンパクトな構造で、低粘度の液状原料が大量に投入される場合や、液状原料が発泡性のものである場合でも安定して高濃縮処理ができ、固形分や溶剤を効率よく回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態の濃縮乾燥装置の一部切欠き縦断正面図
【図2】図1のII−II線に沿った断面図
【図3】図1のIII−III線に沿った断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。この間接加熱型濃縮乾燥装置は、液状原料中の水分を蒸発させ固形分を粉状製品として回収したり、樹脂を溶剤で溶かした液状原料から溶剤と固形樹脂を回収したりするためのもので、図1に示すように、前段に横型薄膜蒸発機1を使用し、後段に2軸噛合い型スクリュー式乾燥機2を使用している。
【0016】
前記薄膜蒸発機1は、図1および図2に示すように、横置きのドラム3と、ドラム3の外周面を覆うように設けられたジャケット4と、ドラム3の軸心位置を貫通しドラム3に回転自在に取り付けられた回転軸5と、回転軸5の外周面に設けられた複数の攪拌羽根6とを備えている。そのドラム3は、軸方向一端側の下部に供給口3a、他端側の下部に排出口3bがそれぞれ設けられている。また、ドラム3の軸方向一端側の上部に排気口3cが設けられ、ドラム3内の気体が液状原料と逆向きに流れるようになっている。
【0017】
なお、この実施形態では、上記のようにドラム3の排気口3cが供給口3aと近い位置に設けられているので、回転軸5の排気口3c直下部分を覆うコーン状のカバー10をドラム3の一端側で先細りとなる姿勢で設け、その上面側に排気用の孔10aをあけるとともに、供給口3aからカバー10内に入り込んだ液状原料を供給口3a側へ戻す羽根11を回転軸5に設けて、液状原料が排気口3cへ流れ込まないようにしている。
【0018】
そして、ジャケット4の内部に水蒸気等の熱媒体を通し、回転軸5を回転させることにより、ドラム3の供給口3aから供給された液状原料を、回転軸5と一体に回転する攪拌羽根6でドラム3内周面に薄膜の状態で接触させながら、ドラム3に伝わる熱で間接的に加熱して、液状原料中の溶媒または溶剤を気化させ、ドラム排出口3bから濃縮された液状原料を排出するようになっている。
【0019】
一方、前記スクリュー式乾燥機2は、図1および図3に示すように、横長のケーシング7と、ケーシング7の外側に設けられたジャケット8と、ケーシング7を水平方向に貫通しケーシング7に回転自在に取り付けられた一対の中空スクリュー9a、9bとを備えている。そのケーシング7は、長手方向一端側の上部に薄膜蒸発機1のドラム排出口3bに接続される供給口7aが設けられ、他端側の下部に排出口7bが設けられているが、排気口は設けられていない。また、両スクリュー9a、9bが互いに噛み合うように配されるとともに、各スクリュー9a、9bとケーシング7下部内面とのクリアランスが小さく設定され、セルフクリーニング機能が得られるようになっている。
【0020】
そして、ジャケット8および各スクリュー9a、9bの内部に水蒸気等の熱媒体を通し、両スクリュー9a、9bを互いに逆方向に回転させることにより、ケーシング7の供給口7aから供給された液状原料をスクリュー9a、9bでケーシング排出口7bへ向けて移送しながら、ケーシング7およびスクリュー9a、9bからの伝導加熱により液状原料中の溶媒または溶剤を気化させて、ケーシング排出口7bから液状原料中の固形分を排出するようになっている。
【0021】
この濃縮乾燥装置は上記の構成であり、その処理の流れは、まず、薄膜蒸発機1のドラム3に供給された液状原料がドラム3内で濃縮されて大幅に減容され、次に、濃縮された状態でスクリュー式乾燥機2のケーシング7に供給された液状原料がケーシング7内で乾燥されて、その固形分がケーシング排出口7bから回収される。一方、ドラム3内やケーシング7内で気化した溶媒または溶剤は、液状原料と逆向きに流れて薄膜蒸発機1のドラム3一端側の排気口3cから排出され、回収または大気放散される。
【0022】
上述したように、この濃縮乾燥装置は、前段の薄膜蒸発機1で液状原料を濃縮して大幅に減容するとともに原料粘度を上げ、後段のスクリュー式乾燥機2で濃縮された高粘度の原料を確実に移送しながら乾燥するようにしたので、コンパクトな構造で、低粘度の液状原料が大量に投入されても十分な加熱時間をとって高濃縮処理することができる。また、薄膜蒸発機1に発泡性の液状原料が供給された場合も、前段の濃縮過程で原料の発泡性を大幅に低減できるので、スクリュー式乾燥機2では原料の発泡が生じにくく、安定して高濃縮処理することができる。
【0023】
さらに、処理中に気化した気体が原料と逆向きに流れて排出されるようにしたので、スクリュー式乾燥機2内で固形化した原料の微粉が発生しても、その微粉の多くは薄膜蒸発機1内で高速回転する回転軸5の攪拌羽根6から付与される遠心力によりドラム3内周面上の薄膜状態の液状原料に接触して捕捉され、微粉の装置外への流出を抑えることができる。特に、回収しようとする溶剤を気化しやすくするために装置内を減圧状態とする場合は、ドラム排気口3cに接続される減圧装置(図示省略)の微粉吸引による不具合を防止できる効果が大きい。
【符号の説明】
【0024】
1 薄膜蒸発機
2 スクリュー式乾燥機
3 ドラム
3a 供給口
3b 排出口
3c 排気口
4 ジャケット
5 回転軸
6 攪拌羽根
7 ケーシング
7a 供給口
7b 排出口
8 ジャケット
9a、9b スクリュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側に供給口を他端側に排出口を有する横置きのドラムに、このドラムの軸心位置を貫通する回転軸を回転自在に取り付け、前記回転軸の外周面に複数の攪拌羽根を設けて、前記ドラムの供給口から供給された液状原料を前記攪拌羽根の回転によりドラム内周面に薄膜の状態で接触させ、伝導加熱により前記液状原料中の溶媒または溶剤を気化させて、前記ドラムの排出口から濃縮された液状原料を排出する薄膜蒸発機と、
一端側に供給口を他端側に排出口を有するケーシングに、このケーシングを水平方向に貫通する一対のスクリューを回転自在にかつ互いに噛み合うように取り付け、前記ケーシングの供給口から供給された液状原料を前記スクリューの回転によりケーシング排出口へ向けて移送しながら、伝導加熱により前記液状原料中の溶媒または溶剤を気化させて、前記ケーシングの排出口から液状原料中の固形分を排出するスクリュー式乾燥機とを備え、
前記薄膜蒸発機のドラムの排出口を前記スクリュー式乾燥機のケーシングの供給口に接続した間接加熱型濃縮乾燥装置。
【請求項2】
前記スクリュー式乾燥機に排気口を設けず、前記薄膜蒸発機のドラムの一端側に排気口を設けて、前記ケーシング内およびドラム内の気体の流れを液状原料の流れと逆向きにしたことを特徴とする請求項1に記載の間接加熱型濃縮乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−149657(P2011−149657A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12951(P2010−12951)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】