関節駆動装置、および多関節アーム装置
【課題】作動ロッドに作用する横荷重を受ける構造とすることによって円滑な作動を確保し、さらには、小型化を図り得る、関節駆動装置を提供する。
【解決手段】関節駆動装置10は、対をなす第1と第2のフレーム31、32に回動自在に接続されたアーム部材40と、アーム部材を揺動させるアクチュエータ70と、を含んでいる。アクチュエータは、アーム部材に取り付けられるシリンダチューブ71を備える駆動部Dと、駆動部によってシリンダチューブの軸線方向に沿って移動するシリンダロッド73と、基端部が第1のフレームに回動自在に接続され、シリンダロッドに対して傾斜して伸びるリンク部材80と、シリンダロッドに連結されるとともにリンク部材の先端部が回動自在に接続されたガイド部材90と、を有している。駆動部は、流体圧によってピストン72を移動し、ピストンに取り付けたシリンダロッドを移動させている。
【解決手段】関節駆動装置10は、対をなす第1と第2のフレーム31、32に回動自在に接続されたアーム部材40と、アーム部材を揺動させるアクチュエータ70と、を含んでいる。アクチュエータは、アーム部材に取り付けられるシリンダチューブ71を備える駆動部Dと、駆動部によってシリンダチューブの軸線方向に沿って移動するシリンダロッド73と、基端部が第1のフレームに回動自在に接続され、シリンダロッドに対して傾斜して伸びるリンク部材80と、シリンダロッドに連結されるとともにリンク部材の先端部が回動自在に接続されたガイド部材90と、を有している。駆動部は、流体圧によってピストン72を移動し、ピストンに取り付けたシリンダロッドを移動させている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節駆動装置、および多関節アーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
比較的重い部品や荷物などを移動するときには、例えば、アーム型の助力装置を使用し、作業者の負荷を軽減している。アーム型の助力装置は、重量をバランスするために、関節のように駆動される関節駆動装置を備えている(特許文献1を参照)。関節駆動装置は、アーム部材を揺動させるためのアクチュエータを有している。関節駆動装置には、大きい作動範囲を確保するために、関節的に動いたときに周辺設備と干渉することがないように小型化を図ることが要請されている。
【0003】
特許文献1に記載された関節駆動装置にあっては、アクチュエータとしてガススプリングを使用している。アーム部材は、基台に回動自在に接続してある。アーム部材には、スライド部材を摺動自在に保持する長孔を形成してある。ガススプリングにおける作動ロッドとしてのシリンダロッドの先端は、基台に回動自在に接続してある。ガススプリングにおけるシリンダチューブの端部は、長孔内のスライド部材に回動自在に接続してある。また、スライド部材には、一端を基台に回動自在に接続したリンク部材の他端を回動自在に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−218588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された関節駆動装置にあっては、ガススプリングの両端、つまり、シリンダロッドの先端およびシリンダチューブの端部を回動自在に支持している。このため、アクチュエータが作動したときに、シリンダロッドに横荷重が作用し、アーム部材を円滑に揺動させることができない虞がある。また、基台、リンク部材およびアクチュエータによって三角形状をなすリンクを構成しており、関節駆動装置の小型化を図る上での制約となっている。
【0006】
本発明の目的は、作動ロッドに作用する横荷重を受ける構造とすることによって円滑な作動を確保し、さらには、小型化および軽量化を図り得る、関節駆動装置を提供することにある。また、この関節駆動装置を1つのユニットとして複数個連結することによって構成され、円滑な作動、小型化および軽量化を図り得る多関節アーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る関節駆動装置は、対をなす第1と第2のフレームと、基端部が前記第1のフレームに回動自在に接続され、先端部が前記第2のフレームに回動自在に接続されたアーム部材と、前記第1のフレームに対して前記アーム部材を揺動させることによって前記第2のフレームを移動させるアクチュエータと、を含んでいる。前記アクチュエータは、前記アーム部材に取り付けられるケーシングを備える駆動部と、前記駆動部によって前記ケーシングの軸線方向に沿って移動する作動ロッドと、基端部が前記第1のフレームに回動自在に接続され、前記作動ロッドに対して傾斜して伸びるリンク部材と、前記作動ロッドに連結されるとともに前記リンク部材の先端部が回動自在に接続されたガイド部材と、を有している。
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る多関節アーム装置は、上記の関節駆動装置における前記第1のフレームと、上記の関節駆動装置における前記第2のフレームとを回転自在に連結するための連結部材を有し、前記関節駆動装置を1つのユニットとして複数個連結することによって構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作動ロッドに作用する横荷重をガイド部材によって受ける構造とすることによって円滑な作動を確保し、さらには、小型化および軽量化を図り得る、関節駆動装置を提供することができる。
【0010】
また、関節駆動装置を1つのユニットとして複数個連結することによって構成され、円滑な作動、小型化および軽量化を図り得る多関節アーム装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る多関節アーム装置を適用した、アーム型の助力装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示される多関節アーム装置を拡げた状態で示す図である。
【図3】図1に示される多関節アーム装置を閉じた状態で示す図である。
【図4】多関節アーム装置を構成する1つの関節駆動装置を示す斜視図である。
【図5】関節駆動装置の内部構造を示す断面図である。
【図6】初期位置における関節駆動装置を模式的に示す図である。
【図7】アーム部材を揺動させた作動位置における関節駆動装置を模式的に示す図である。
【図8】作動位置における関節駆動装置の説明に供する図である。
【図9】図9(A)(B)(C)は、関節駆動装置の大きさに関する考察の説明に供する図であって、図9(A)は、実施形態の構成の場合、図9(B)(C)は、対比例の構成の場合を示している。
【図10】ガイド部材を改変した第1の改変例に係る関節駆動装置の内部構造を示す断面図である。
【図11】関節駆動装置の第2の改変例を、初期位置において模式的に示す図である。
【図12】関節駆動装置の第2の改変例を、アーム部材を揺動させた作動位置において模式的に示す図である。
【図13】関節駆動装置の第3の改変例を、初期位置において模式的に示す図である。
【図14】関節駆動装置の第3の改変例を、アーム部材を揺動させた作動位置において模式的に示す図である。
【図15】図15(A)は、アーム部材の基端部を回動自在に接続する回動軸とリンク部材の基端部を回動自在に接続する回動軸との位置関係が可搬重量に与える影響の理論計算に用いる各種パラメータの説明に供する概念図、図15(B)は、関節駆動装置が関節角度θ駆動したときの各角度の導出の説明に供する図、図15(C)は、図15(B)における符号15Cを付した部分の拡大図である。
【図16】関節角度とアクチュエータ出力との関係を示すグラフである。
【図17】軸間水平距離を変化させたときのアクチュエータ出力幅の変化を示す図である。
【図18】軸の位置パラメータ(軸間水平距離、軸間垂直距離)を変更した場合におけるアクチュエータ出力幅をマッピングする手順を示す概略フローチャートである。
【図19】軸の位置パラメータ(軸間水平距離、軸間垂直距離)とアクチュエータ出力幅の大きさとの組み合わせ分布図を示している。
【図20】第4の改変例に係る多関節アーム装置を、拡げた状態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1を参照して、車体101の組み立てラインでは、搬送装置102によって搬送されてくる車体101に、ワーク103としての車体構成部品を組み付けている。車体101の組み立てラインには、アーム型の助力装置100を設置している。助力装置100に設けたハンド21によって比較的重いワーク103を保持しながら作業点まで移動し、作業者の負荷を軽減している。助力装置100には、多関節アーム装置20を組み込んでいる。図2および図3にも示すように、多関節アーム装置20は、複数個(図示例では4個)の関節駆動装置10を有している。なお、説明の便宜上、4個の関節駆動装置10を、ベース104に取り付けた基端側からハンド21を取り付けた先端側に向けて順に、第1の関節駆動装置10、第2の関節駆動装置10、第3の関節駆動装置10、および第4の関節駆動装置10という。
【0014】
関節駆動装置10のそれぞれは、対をなす第1と第2のフレーム31、32と、第1と第2のフレーム31、32を接続するとともに揺動自在なアーム部材40とを有し、第2のフレーム32を第1のフレーム31に対して鉛直面に関して円運動自在に構成している。作業者がワーク103を作業点に向けて移動すると、第1〜第4の関節駆動装置10のそれぞれは、重量をバランスするために、ワーク103の高さに合わせて作動する。図1には、実線および二点鎖線によって、第1〜第4の関節駆動装置10が2つの形態に作動した状態を示している。実線によって示される形態は、第1と第2の関節駆動装置10のそれぞれにおける第1と第2のフレーム31、32がほぼ水平位置にあり、第3と第4の関節駆動装置10のそれぞれにおける第2のフレーム32が第1のフレーム31に対して鉛直上方向に移動している。一方、二点鎖線によって示される形態は、第1と第2の関節駆動装置10のそれぞれにおける第2のフレーム32が第1のフレーム31に対して鉛直上方向に移動し、第3と第4の関節駆動装置10のそれぞれにおける第1と第2のフレーム31、32がほぼ水平位置にある。関節駆動装置10の作動は、圧縮したエアや作動油などの圧縮流体の流体圧を用いている。関節駆動装置10のそれぞれには、空圧機器110を介して圧縮流体が供給される。空圧機器110は、コンプレッサ111に接続してある。また、空圧機器110は、コントローラ120に接続してある(図1を参照)。コントローラ120は、CPUやメモリを主体に構成しており、空圧機器110のオンオフ制御や、流体圧の調整などを行う。コントローラ120は、重量をバランスするために、第1〜第4の関節駆動装置10のそれぞれに供給すべき流体圧などを算出し、第1〜第4の関節駆動装置10のそれぞれに流体圧を供給する。
【0015】
図2および図3を参照して、多関節アーム装置20は、一の関節駆動装置10における第1のフレーム31と、他の関節駆動装置10における第2のフレーム32とを回転自在に連結するための回転ジョイント50(連結部材に相当する)を有している。多関節アーム装置20は、関節駆動装置10を1つのユニットとして複数個(図示例では4個)連結することによって構成している。回転ジョイント50は、関節駆動装置10同士を連結した連結面に対して直交する鉛直軸51(図2を参照)の回りに関節駆動装置10のそれぞれを回転自在に保持している。回転ジョイント50は、後述するが、ベアリング52、フランジ53、およびハウジング54によって構成している(図5をも参照)。図2および図3の符号「22」は、第2のフレーム32のハウジング54とハンド21とを回転自在に連結するためのベアリングを示している。ハンド21用のベアリング22は、回転ジョイント50のベアリング52と共通した構造を有し、ハウジング54に取り付けている。
【0016】
多関節アーム装置20は、回転ジョイント50を介して4個の関節駆動装置10を拡げると、図2に示す状態となる。一方、多関節アーム装置20は、回転ジョイント50を介して4個の関節駆動装置10を閉じると、図3に示す状態となる。閉じた状態では、多関節アーム装置20は、4個の関節駆動装置10を積み重ねたような姿勢を取る。
【0017】
多関節アーム装置20は、リーチつまり作業点までの到達距離を長くとれることができ(図2を参照)、使わないときには小さくできる(図3を参照)。さらに、多関節であることから、ワーク103を移動するときの姿勢を複数とることができる(図1を参照)。
このため、周辺設備と干渉することなくワーク103を作業点に到達させることができる。また、使用する環境が変化し、ワーク103を移動した後の姿勢が異なっても、改造等を行う必要がなく、コストの増加を抑えることができる。
【0018】
なお、図1に示した多関節アーム装置20は、第1のフレーム31を基端側とし、第2のフレーム32を先端側として、第4の関節駆動装置10における第2のフレーム32にハンド21を取り付けている。この形態とは逆に、第2のフレーム32を基端側とし、第1のフレーム31を先端側として、第4の関節駆動装置10における第1のフレーム31にハンド21を取り付ける構成とすることもできる。
【0019】
図4および図5を参照して、本実施形態の関節駆動装置10は、概説すれば、対をなす第1と第2のフレーム31、32と、基端部が第1のフレーム31に回動自在に接続され、先端部が第2のフレーム32に回動自在に接続されたアーム部材40と、第1のフレーム31に対してアーム部材40を揺動させることによって第2のフレーム32を移動させるアクチュエータ70と、を含んでいる。アクチュエータ70は、アーム部材40に取り付けられるシリンダチューブ71(ケーシングに相当する)を備える駆動部Dと、駆動部Dによってシリンダチューブ71の軸線方向に沿って移動するシリンダロッド73(作動ロッドに相当する)と、基端部が第1のフレーム31に回動自在に接続され、シリンダロッド73に対して傾斜して伸びるリンク部材80と、シリンダロッド73に連結されるとともにリンク部材80の先端部が回動自在に接続されたガイド部材90と、を有している。本実施形態における駆動部Dは、流体圧によってシリンダロッド73を移動させている。シリンダチューブ71内には、このシリンダチューブ71の軸線方向に沿って進退移動自在にピストン72を配置している。シリンダロッド73は、ピストン72に取り付けてあり、シリンダチューブ71の軸線方向に沿って第1のフレーム31に向けて伸びている。以下、詳述する。
【0020】
第1と第2のフレーム31、32のそれぞれは、相互に向かい合う面が開口した略箱形状を有している。図4において左手側に示されるフレームを第1のフレーム31と言い、右手側に示されるフレームを第2のフレーム32と言う。
【0021】
第1のフレーム31における図5中下端部には、ベアリング52を取り付けたフランジ53を設けている。第2のフレーム32における図5中上端部には、ベアリング52を保持自在なハウジング54を設けている。ベアリング52、フランジ53、およびハウジング54によって前述した回転ジョイント50を構成している。符号55は、回転ジョイント50を介して関節駆動装置10同士を相対的に回転させるときの回転負荷を付与するバネ部材を示している。バネ部材55が回転負荷として付与する弾発力の大きさは、図示しないねじ部材によって調節自在となっている。多関節アーム装置20の使用者は、回転負荷を調節することによって、関節駆動装置10同士を回転させるときの好みの重さを設定することができ、良好な操作感を得る。
【0022】
アーム部材40は、上壁41と、一対の側壁42と、底壁43とを備える略箱形状を有している。側壁42における図4において左手側に示される基端部は、第1のフレーム31に回動軸44を介して回動自在に接続し、右手側に示される先端部は、第2のフレーム32に回動軸45を介して回動自在に接続してある。側壁42には、回動軸44、45との接続部分を補強するための補強部材46を取り付けている(図4を参照)。底壁43と第1のフレーム31との間には、リンク部材80が挿通する開口47を形成している。なお、アーム部材40に補強部材46を取り付けているが、この補強部材46を取り付けても、厚さが厚い素材からアーム部材を形成する場合に比較して、小型化および軽量化が図られている。
【0023】
関節駆動装置10はさらに、アーム部材40に対して間隔を隔てて平行に伸び、基端部が第1のフレーム31に回動自在に接続され、先端部が第2のフレーム32に回動自在に接続された平行アーム部材60を有している。平行アーム部材60は、角棒形状を有している。平行アーム部材60における図4において左手側に示される基端部は、第1のフレーム31に回動軸61を介して回動自在に接続し、右手側に示される先端部は、第2のフレーム32に回動軸62を介して回動自在に接続してある。第1のフレーム31、第2のフレーム32、アーム部材40、および平行アーム部材60によって、平行リンクを構成する。この平行リンクによって、第1のフレーム31に対してアーム部材40および平行アーム部材60を揺動させると、第2のフレーム32を平行移動させることができる。
【0024】
図5を参照して、シリンダチューブ71は、アーム部材40の内部空間に取り付けている。シリンダチューブ71は、軸直交断面が例えば矩形形状を有し、アーム部材40における上壁41および一対の側壁42に接触している。シリンダチューブ71の軸直交断面は矩形形状に限られず、適宜の形状を採用し得る。シリンダチューブ71の軸線方向は、アーム部材40の上壁41が伸びる方向と平行をなしている。シリンダチューブ71内には、圧縮流体を供給する圧力室74を、ピストン72との間に区画形成している。圧力室74は、配管75を介して、空圧機器110に接続している。図1にも示したように、空圧機器110は、コンプレッサ111およびコントローラ120に接続してある。
【0025】
ピストン72は、シリンダチューブ71の軸線方向に沿って進退移動自在に、シリンダチューブ71内に収容している。ピストン72は、圧力室74に供給された圧縮流体の流体圧によって、第1のフレーム31に向けて前進移動する。
【0026】
シリンダロッド73は、ピストン72と一体的に形成され、シリンダチューブ71の軸線方向に沿って、つまりアーム部材40の上壁41が伸びる方向と平行をなして伸びている。シリンダロッド73は、シリンダチューブ71を越えて、第1のフレーム31に向けて伸びている。
【0027】
リンク部材80は、直線のロッド形状を有している。リンク部材80における図5において左手側に示される基端部は、第1のフレーム31に回動軸61を介して回動自在に接続してある。リンク部材80は、シリンダロッド73が伸びる方向に対して傾斜して伸びている。図示例では、リンク部材80の基端部および平行アーム部材60の基端部は、同じ回動軸61を中心にして、第1のフレーム31に回動自在に接続してある。
【0028】
ガイド部材90は、転がり自在なローラ91を含んでいる。シリンダロッド73は、ローラ91の回転中心に回動軸92を介して回動自在に接続してある。リンク部材80における図5において右手側に示される先端部も、ローラ91の回転中心に回動軸92を介して回動自在に接続してある。アクチュエータ70を作動すると、ローラ91は、アーム部材40の上壁41の内面に押付けられながら回転する。
【0029】
本実施形態にあっては、アーム部材40とシリンダチューブ71とを一体的に形成し、アーム部材40の強度を高めるための構造体としてシリンダチューブ71を利用している。アーム部材40の構造体としてシリンダチューブ71を有効活用することによって、アーム部材40自体の剛性、強度を必要以上に高めたり、大型化および重量化を招いてしまう他の強度部材を取り付けたりする必要がない。したがって、関節駆動装置10の全体として、一層の軽量化および小型化を図ることができる。
【0030】
なお、本発明は、市販されている一般的な流体圧シリンダを用いることを排除するものではない。必要な推力を有する流体圧シリンダを関節駆動装置10に適用することもできるが、アーム部材40の剛性、強度を確保するために、他の構造体(リンク、ビーム、カバーなど)を必要とし、その結果、アーム部材40の重量が重くなり、大きさも大きくなる虞がある。したがって、一層の軽量化および小型化を図るためには、本実施形態のように、アーム部材40とシリンダチューブ71とを一体的に形成することが好ましい。
【0031】
次に、本実施形態の作用を図6〜図8を参照しつつ説明する。なお、図6〜図8においては、第1のフレーム31の位置を固定した場合において、第2のフレーム32が変位する様子を示している。第2のフレーム32の位置を固定して第1のフレーム31を変位させることもできることは言うまでもない。
【0032】
図6に示すように、初期位置においては、関節駆動装置10は、圧力室74に圧縮流体が供給されて重量をバランスし、第1と第2のフレーム31、32をほぼ同じ高さ位置に保持している。
【0033】
図6に示す状態から圧力室74に圧縮流体をさらに供給してアクチュエータ70を作動させると、ピストン72が、流体圧によってシリンダチューブ71の軸線方向に沿って、第1のフレーム31に向けて前進移動する。アクチュエータ70の推力は、シリンダロッド73、ガイド部材90、およびリンク部材80を介して伝達され、アーム部材40を揺動させる。
【0034】
図7に示すように、関節駆動装置10は、アーム部材40を揺動させた作動位置において、圧力室74に圧縮流体が供給されて重量をバランスし、第2のフレーム32を第1のフレーム31よりも高い位置に保持している。
【0035】
アクチュエータ70を作動させるときには、ガイド部材90のローラ91は、アーム部材40の上壁41の内面に押付けられながら回転している。図8を参照して、本実施形態の関節駆動装置10にあっては、リンク部材80からの支持力fsによってシリンダロッド73に作用する横荷重wを、ガイド部材90によって受け、シリンダロッド73にかかる負荷を分散する構造としてある。このため、シリンダロッド73は、過大な曲げモーメントがかかることなく、進退移動する。したがって、アーム部材40を円滑に揺動させることができ、関節駆動装置10の円滑な作動を確保することが可能となる。なお、図8において符号Fはシリンダ推力、fはガイド部材90に作用するシリンダ推力Fの反作用の力を表している。
【0036】
次に、図9(A)(B)(C)を参照して、関節駆動装置の大きさに関して考察する。
【0037】
図9(A)(B)(C)のそれぞれにおいて、アクチュエータ70、130におけるシリンダチューブ71、131の大きさは同じ大きさで表している。また、シリンダチューブ71、131が図中水平方向に位置する状態を平行リンクの初期位置とし、シリンダチューブ71、131が傾斜した状態を平行リンクの作動位置とする。理解の容易のために、シリンダチューブ131のうち平行リンクが占める領域を超えて存在する部位にハッチングを付してある。
【0038】
図9(B)を参照して、平行リンクの対角線上にアクチュエータ130を配置した場合には、シリンダチューブ131の一部は、平行リンクの初期位置または作動位置のいずれの位置においても、平行リンクが占める領域を超えて存在する。
【0039】
図9(C)を参照して、特許文献1に記載された技術と同様に、リンク部材132およびアクチュエータ130によってリンクを構成した場合には、リンク部材132の一部は、平行リンクの初期位置または作動位置のいずれの位置においても、平行リンクが占める領域を超えて存在する。図示のとおり平行リンク自体が大きいため、関節駆動装置も大きい。
【0040】
一方、図9(A)を参照して、本実施形態の場合には、平行リンクの初期位置または作動位置のいずれの位置においても、シリンダチューブ71やリンク部材80の一部が、平行リンクが占める領域を超えて存在することがない。したがって、図9(A)に示される本実施形態の関節駆動装置10は、図9(B)(C)に示される対比例に比べて、小型化を図る上で有利な構成を有している。さらに、関節駆動装置10の小型化を通して、軽量化を図ることもできる。
【0041】
さらに、本実施形態にあっては、アーム部材40とシリンダチューブ71とを一体的に形成し、アーム部材40の構造体としてシリンダチューブ71を有効活用している。この点からも、関節駆動装置10の全体として、一層の軽量化および小型化を図ることができる。
【0042】
多関節アーム装置20には、その使用者の側から、リーチつまり作業点までの到達距離を長くとれること、周辺設備と干渉することなく作業点に到達できること、使わないときに小さくできること、などが要求されている。アームを多関節化することによって、上記の項目を達成できる。ただし、そのためには、個々の関節駆動装置10の小型化および軽量化を図る必要がある。個々の関節駆動装置10が大型かつ重いと、多関節化したアームも、強度を高めるためにさらに大型になり、重くなってしまうからである。
【0043】
本実施形態では、上述したように、関節駆動装置10の円滑な作動を確保することが可能であり、関節駆動装置10の小型化および軽量化を図ることができる。したがって、関節駆動装置10を1つのユニットとして複数個連結することによって構成される多関節アーム装置20の円滑な作動を確保することも可能であり、多関節アーム装置20の小型化および軽量化を図ることができる。よって、多関節アーム装置20に要求されている、リーチを長くとれること、周辺設備と干渉することなく作業点に到達できること、使わないときに小さくできること、などを容易に満足することができる。
【0044】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜改変して実施することができる。例えば、複数個の関節駆動装置10を連結して多関節アーム装置20とした実施形態について説明したが、1個の関節駆動装置10のみを用いても良い。この場合には、平行アーム部材60および連結部材50は必ずしても必要ではない。また、リンク部材80は、直線形状を有する場合に限定されず、湾曲した部位を備える形状でも良い。シリンダチューブ71内のピストン72を流体圧によって移動し、ピストン72に取り付けたシリンダロッド73を移動させる形態を示したが、これとは逆の形態でも良い。つまり、シリンダチューブを可動側とし、ピストンを固定側とし、シリンダチューブに取り付けた作動ロッドを移動させる形態でも良い。さらに、駆動部Dは、作動ロッドとしてのシリンダロッド73を流体圧によって移動させる場合に限定されない。駆動部Dは、例えば、電磁駆動プランジャーなどによって作動ロッドを直動する形態でも良い。この形態のケーシング内には、プランジャーや、電磁力を生成する電磁コイルなどを収納している。その他の改変例について以下に説明する。
【0045】
(第1の改変例)
図10は、ガイド部材90を改変した第1の改変例に係る関節駆動装置10の内部構造を示す断面図である。なお、実施形態と共通する部材には同じ符号を付し、その説明は一部省略する。
【0046】
ガイド部材90が転がり自在なローラ91を含んでいる実施形態について説明したが(図5を参照)、本発明はこの場合に限定されるものではない。ガイド部材90は、シリンダロッド73に作用する横荷重を受けることによって、シリンダロッド73にかかる負荷を分散し得る限りにおいて、適宜の構成を採用することができる。図10に示す関節駆動装置10は、ガイド部材90が、スライド移動自在なスライダ95を含んでいる。ガイド部材90は、一般的なLMガイドから構成され、スライダ95と、スライダ95の直線移動をガイドする保持ブロック96とを有している。保持ブロック96は、アーム部材40の上壁41の内面に設けている。シリンダロッド73は、スライダ95に連結してある。
リンク部材80における先端部は、スライダ95に回動軸97を介して回動自在に接続してある。アクチュエータ70を作動すると、スライダ95は、保持ブロック96にガイドされて直線移動する。第1の改変例においても、実施形態と同様に、シリンダロッド73に作用する横荷重を、ガイド部材90によって受け、シリンダロッド73にかかる負荷を分散している。このため、シリンダロッド73は、曲げモーメントがかかることなく、進退移動する。したがって、アーム部材40を円滑に揺動させることができ、関節駆動装置10の円滑な作動を確保することが可能となる。
【0047】
(第2の改変例)
図11および図12を参照して、関節駆動装置10の第2の改変例を説明する。図11には、関節駆動装置10の第2の改変例を、初期位置において模式的に示し、図12には、関節駆動装置10の第2の改変例を、アーム部材40を揺動させた作動位置において模式的に示している。なお、実施形態と共通する部材には同じ符号を付し、その説明は一部省略する。
【0048】
第1と第2のフレーム31、32が相対的に変位する鉛直面において見た場合に、回動軸44と回動軸61とを同じ鉛直軸上に位置するように第1のフレーム31に配置し、回動軸45と回動軸62とを同じ鉛直軸上に位置するように第2のフレーム32に配置した実施形態について説明したが(図6および図7を参照)、本発明はこの場合に限定されるものではない。図11および図12に示すように、第1と第2のフレーム31、32が相対的に変位する鉛直面において見た場合に、回動軸44と回動軸61とを異なる鉛直軸上に位置するように第1のフレーム31に配置し、回動軸45と回動軸62とを異なる鉛直軸上に位置するように第2のフレーム32に配置してもよい。このような配置形態は、第1のフレーム31の限られた大きさの範囲内で、回動軸44と回動軸61とを可能な限り離間させて配置し、回動軸44と回動軸61との間の距離を可能な限り大きくした配置形態である。同様に、第2のフレーム32の限られた大きさの範囲内で、回動軸45と回動軸62とを可能な限り離間させて配置し、回動軸45と回動軸62との間の距離を可能な限り大きくした配置形態である。実施形態では、初期位置から作動位置までアーム部材40を揺動させると、アーム部材40の上壁41と平行アーム部材60との間隔は比較的狭くなる(図6および図7を参照)。これに対して、第2の改変例における回動軸44と回動軸61との位置関係、および回動軸45と回動軸62との位置関係では、初期位置から作動位置までアーム部材40を揺動させても、アーム部材40の上壁41と平行アーム部材60との間隔は比較的広く、空間部48を確保することができる。この空間部48は、圧縮流体を圧力室74に供給する配管75や、電気的な配線などを収納する空間として用いることができる。配管75や電気的な配線などが外部に露出しないので、配管75などの破損を低減することができる。
【0049】
(第3の改変例)
図13および図14を参照して、関節駆動装置10の第3の改変例を説明する。図13には、関節駆動装置10の第3の改変例を、初期位置において模式的に示し、図14には、関節駆動装置10の第3の改変例を、アーム部材40を揺動させた作動位置において模式的に示している。なお、実施形態と共通する部材には同じ符号を付し、その説明は一部省略する。
【0050】
リンク部材80の基端部および平行アーム部材60の基端部を同じ回動軸61を中心にして第1のフレーム31に回動自在に接続した実施形態について説明したが(図6および図7を参照)、本発明はこの場合に限定されるものではない。図13および図14に示すように、リンク部材80の基端部を回動自在に接続する回動軸81と、平行アーム部材60の基端部を回動自在に接続する回動軸61とが異なってもよい。第2の改変例において説明したように、回動軸44と回動軸61との位置関係は、空間部48を確保する観点から定まっている。一方、回動軸44と回動軸81との位置関係は、空間部48を確保する観点からではなく、可搬重量を増加させる観点から定め得るからである。
【0051】
アーム部材40の基端部を第1のフレーム31に回動自在に接続する回動軸44(第1の回動軸に相当する)に対する、リンク部材80の基端部を第1のフレーム31に回動自在に接続する回動軸81(第2の回動軸に相当する)の相対的な位置は、回動軸44と回動軸81との間の距離が第1のフレーム31の大きさの範囲内で許容される最大長さとなる位置に、設定するのが好ましい。回動軸44と回動軸81との位置関係のみで、関節駆動装置10における可搬重量を増加させることが可能となるからである。
【0052】
回動軸44と回動軸81との位置関係が可搬重量に与える影響を、理論計算結果に基づいて説明する。
【0053】
図15(A)を参照して、理論計算に用いる各種パラメータは次のとおりである。
【0054】
a :回動軸44と回動軸81との軸間水平距離
b :回動軸44と回動軸81との軸間垂直距離
θ :関節駆動装置の関節角度(平行アーム部材60の水平位置からの傾斜角度)
φ :リンク部材80の延長線とアクチュエータ70のシリンダロッド73とがなす角度
ψ :リンク部材80の水平位置からの傾斜角度
L :アーム部材40を回動自在に接続するための、回動軸44と回動軸45との間の距離
La:回動軸44と関節駆動装置全体の重心との間の距離
L1:リンク部材80の長さ
s :回動軸44と回動軸45とを結んだ直線と、アクチュエータ70のシリンダロッド73との間の距離
W :関節駆動装置の先端に掛かる荷重
Wa:関節駆動装置の自重
なお、アクチュエータ70の直径は、空圧シリンダの場合のボア径を想定した。
【0055】
アクチュエータ70の駆動部Dの出力F(以下、単に、「アクチュエータ出力F」という)は、下記の式(1)から求まる。
【0056】
【数1】
【0057】
図15(B)(C)を参照して、関節駆動装置が関節角度θ駆動したときのφは、次のように導出される。回動軸44と回動軸81とを結ぶ線分と、シリンダロッド73の延長線とが交わる交点を点Aとする。点A、回動軸81、および回動軸92によって形成される三角形において、正弦定理から下記の式(2)の関係がある。式(2)より、角度φが式(3)のように導き出される。
【0058】
【数2】
【0059】
また、式(3)の角度αは、下記の式(4)から求められる。また、角度θ、角度φ、および角度ψは、下記の式(5)の関係がある。
【0060】
【数3】
【0061】
式(1)から、軸間水平距離aおよび軸間垂直距離bが可能な限り大きくなるように回動軸44と回動軸81との位置関係を定めることによって、すなわち、回動軸44と回動軸81との間の距離が第1のフレーム31の大きさの範囲内で許容される最大長さとなるように回動軸44と回動軸81との位置関係を定めることによって、アクチュエータ出力Fを小さくでき、大きな荷重Wに対してもバランスをとることができる。つまり、同じ能力のアクチュエータ70を用いても、回動軸44と回動軸81との位置関係のみで、関節駆動装置10における可搬重量を増加させることが可能となる
リンク部材80をその長さL1が長い構造とすることによっても、また距離sを長い構造とすることによっても、同様に、関節駆動装置における可搬重量を増加させることが可能となる。
【0062】
理論計算によって求めた、関節角度θとアクチュエータ出力Fとの関係を図16に示す。図中のΔFは、第1のフレーム31に対してアーム部材40を揺動させる範囲内において、揺動させたアーム部材40の姿勢をバランスするために必要なアクチュエータ70の駆動部Dの出力の最大値と最小値との差である出力幅を示している。以下、単に、「アクチュエータ出力幅ΔF」という。
【0063】
アクチュエータ出力幅ΔFは、回動軸44に対する回動軸81の相対的な位置(軸間水平距離a、軸間垂直距離b)や、リンク部材80の長さL1やアクチュエータ70の相対的な位置(距離s)などの条件を変更することによって変更することができる。アクチュエータ出力幅ΔFが小さくなる条件(回動軸44に対する回動軸81の相対的な位置や、リンク部材80の長さL1やアクチュエータ70の相対的な位置(距離s)など)を計算によって導出することができる。同様に、アクチュエータ出力幅ΔFが大きくなる条件を計算によって導出することもできる。
【0064】
回動軸44に対する回動軸81の相対的な位置は、アクチュエータ出力幅ΔFの大きさとの組み合わせにおいて設定することができる。アクチュエータ出力幅ΔFを小さくする組み合わせにおいて回動軸44に対する回動軸81の位置を設定すると、アクチュエータ出力幅ΔFが小さくてよいことから、アクチュエータや空圧機器110に接続するコンプレッサ111は能力的に小型のものでもよく、コントローラ120による空圧機器110のオンオフ制御や流体圧の調整も容易になる。これらを通して、関節駆動装置の制御系を簡素化することが可能となる。また、関節駆動装置のコストの低減を図ることができる。一方、アクチュエータ出力幅ΔFを大きくする組み合わせにおいて回動軸44に対する回動軸81の位置を設定すると、関節角度θの単位角度当たりの出力幅ΔFを大きくできることから、関節駆動装置の関節角度などを調整する位置決め時における制御分解能を高めることができる。
【0065】
図17は、軸間水平距離aを変化させたときのアクチュエータ出力幅ΔFの変化を示している。
【0066】
軸間水平距離a=0mmのときと、回動軸81の軸位置を水平方向に20mm移動させたとき(a=20mm)とのそれぞれについて、アクチュエータ出力Fを式(1)から求めた。回動軸81の軸位置を水平方向に例えば20mm移動させることによって(a=20mm)、関節駆動装置のバランス性能として、アクチュエータ出力幅ΔFが約半分になる。また、荷重Wに対してバランスするためのアクチュエータ出力Fを小さくでき、関節駆動装置における可搬重量を増加させることができる。
【0067】
次に、図18および図19を参照して、回動軸44と回動軸81との軸間水平距離a、回動軸44と回動軸81との軸間垂直距離b、つまり回動軸44、81の位置パラメータ(a、b)を変更した場合における、アクチュエータの出力幅ΔFのマッピングについて説明する。
【0068】
回動軸44および回動軸81を配置する位置は、第1のフレーム31の寸法によって制限を受ける。したがって、位置パラメータ(a、b)の範囲は、関節駆動装置の仕様(寸法)によって決まる。
【0069】
決定された範囲内における位置パラメータ(a、b)の組み合わせについて、アクチュエータ出力Fを式(1)から求める。併せて、アクチュエータ出力幅ΔFを求める。関節駆動装置の先端に掛かる荷重W、関節駆動装置の自重Wa、リンク部材80の長さL1などの寸法は、関節駆動装置の仕様にしたがう。
【0070】
そして、位置パラメータ(a、b)の組み合わせに対して、アクチュエータ出力幅ΔFをマッピングする。
【0071】
図19には、位置パラメータ(a、b)とアクチュエータ出力幅ΔFの大きさとの組み合わせ分布図を示している。アクチュエータ出力幅ΔFが小さくなる回動軸81の相対的な位置を決定する場合には、分布図を参照することによって、設計可能な寸法値の範囲から、位置パラメータ(a、b)を導出することができる。アクチュエータの出力幅ΔFが大きくなる回動軸81の相対的な位置を決定する場合にも同様に、分布図を参照することによって、設計可能な寸法値の範囲から、位置パラメータ(a、b)を導出することができる。
【0072】
なお、リンク部材80の長さL1および距離sについても、同様に、アクチュエータ出力幅ΔFの大きさとの組み合わせにおいて設定することができる。アクチュエータ出力幅ΔFを小さくする組み合わせにおいてリンク部材80の長さL1と距離sを設定すると、関節駆動装置の制御系を簡素化することが可能となり、関節駆動装置のコストの低減を図ることができる。一方、アクチュエータ出力幅ΔFを大きくする組み合わせにおいてリンク部材80の長さL1および距離sを設定すると、関節駆動装置の関節角度などを調整する位置決め時における制御分解能を高めることができる。
【0073】
また、回動軸81を回動軸44に対して回動軸61よりも近い位置に配置した例を示したが(図13および図14を参照)、空間部48を確保でき、第1と第2のフレーム31、32の大きさに余裕がある場合には、回動軸81を回動軸44に対して回動軸61からさらに離した位置に配置してもよい。
【0074】
(第4の改変例)
図20を参照して、第4の改変例に係る多関節アーム装置20を説明する。図20には、第4の改変例に係る多関節アーム装置20を拡げた状態で示している。なお、実施形態と共通する部材には同じ符号を付し、その説明は一部省略する。
【0075】
関節駆動装置10における第1のフレーム31の下端部にベアリング52を配置し、第2のフレーム32の上端部にハウジング54を配置した実施形態について説明したが(図2を参照)、本発明はこの場合に限定されるものではない。関節駆動装置10における第1のフレーム31の上端部にもベアリング52をさらに配置し、第2のフレーム32の下端部にもハウジング54をさらに配置してもよい。多関節アーム装置20における関節駆動装置10同士の連結形態を多様化でき、助力装置100の設置場所との関係、周辺設備との干渉を回避する関係、作業点の位置との関係などにおいて、最適な連結形態を選択する際の自由度を高めることができる。図示例では、第2の関節駆動装置10が、第1と第3の駆動装置の下側に連結されている。さらに詳しくは、第1の関節駆動装置10の第2のフレーム32の下側に、第2の関節駆動装置10の第1のフレーム31の上側を接続し、第3の関節駆動装置10の第1のフレーム31の下側に、第2の関節駆動装置10の第2のフレーム32の上側を接続している。
【符号の説明】
【0076】
10 関節駆動装置、
20 多関節アーム装置、
21 ハンド、
31 第1のフレーム、
32 第2のフレーム、
40 アーム部材、
41 上壁、
42 側壁、
43 底壁、
44 回動軸(第1の回動軸)、
45 回動軸、
50 回転ジョイント(連結部材)、
52 ベアリング、
53 フランジ、
54 ハウジング、
60 平行アーム部材、
61 回動軸、
62 回動軸、
70 アクチュエータ、
71 シリンダチューブ(ケーシング)、
72 ピストン、
73 シリンダロッド(作動ロッド)、
74 圧力室、
80 リンク部材、
81 回動軸(第2の回動軸)、
90 ガイド部材、
91 ローラ、
95 スライダ、
96 保持ブロック、
100 アーム型の助力装置、
101 車体、
102 搬送装置、
103 ワーク、
110 空圧機器、
111 コンプレッサ、
120 コントローラ、
D 駆動部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、関節駆動装置、および多関節アーム装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
比較的重い部品や荷物などを移動するときには、例えば、アーム型の助力装置を使用し、作業者の負荷を軽減している。アーム型の助力装置は、重量をバランスするために、関節のように駆動される関節駆動装置を備えている(特許文献1を参照)。関節駆動装置は、アーム部材を揺動させるためのアクチュエータを有している。関節駆動装置には、大きい作動範囲を確保するために、関節的に動いたときに周辺設備と干渉することがないように小型化を図ることが要請されている。
【0003】
特許文献1に記載された関節駆動装置にあっては、アクチュエータとしてガススプリングを使用している。アーム部材は、基台に回動自在に接続してある。アーム部材には、スライド部材を摺動自在に保持する長孔を形成してある。ガススプリングにおける作動ロッドとしてのシリンダロッドの先端は、基台に回動自在に接続してある。ガススプリングにおけるシリンダチューブの端部は、長孔内のスライド部材に回動自在に接続してある。また、スライド部材には、一端を基台に回動自在に接続したリンク部材の他端を回動自在に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−218588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された関節駆動装置にあっては、ガススプリングの両端、つまり、シリンダロッドの先端およびシリンダチューブの端部を回動自在に支持している。このため、アクチュエータが作動したときに、シリンダロッドに横荷重が作用し、アーム部材を円滑に揺動させることができない虞がある。また、基台、リンク部材およびアクチュエータによって三角形状をなすリンクを構成しており、関節駆動装置の小型化を図る上での制約となっている。
【0006】
本発明の目的は、作動ロッドに作用する横荷重を受ける構造とすることによって円滑な作動を確保し、さらには、小型化および軽量化を図り得る、関節駆動装置を提供することにある。また、この関節駆動装置を1つのユニットとして複数個連結することによって構成され、円滑な作動、小型化および軽量化を図り得る多関節アーム装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明に係る関節駆動装置は、対をなす第1と第2のフレームと、基端部が前記第1のフレームに回動自在に接続され、先端部が前記第2のフレームに回動自在に接続されたアーム部材と、前記第1のフレームに対して前記アーム部材を揺動させることによって前記第2のフレームを移動させるアクチュエータと、を含んでいる。前記アクチュエータは、前記アーム部材に取り付けられるケーシングを備える駆動部と、前記駆動部によって前記ケーシングの軸線方向に沿って移動する作動ロッドと、基端部が前記第1のフレームに回動自在に接続され、前記作動ロッドに対して傾斜して伸びるリンク部材と、前記作動ロッドに連結されるとともに前記リンク部材の先端部が回動自在に接続されたガイド部材と、を有している。
【0008】
上記目的を達成する本発明に係る多関節アーム装置は、上記の関節駆動装置における前記第1のフレームと、上記の関節駆動装置における前記第2のフレームとを回転自在に連結するための連結部材を有し、前記関節駆動装置を1つのユニットとして複数個連結することによって構成されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作動ロッドに作用する横荷重をガイド部材によって受ける構造とすることによって円滑な作動を確保し、さらには、小型化および軽量化を図り得る、関節駆動装置を提供することができる。
【0010】
また、関節駆動装置を1つのユニットとして複数個連結することによって構成され、円滑な作動、小型化および軽量化を図り得る多関節アーム装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る多関節アーム装置を適用した、アーム型の助力装置を示す概略構成図である。
【図2】図1に示される多関節アーム装置を拡げた状態で示す図である。
【図3】図1に示される多関節アーム装置を閉じた状態で示す図である。
【図4】多関節アーム装置を構成する1つの関節駆動装置を示す斜視図である。
【図5】関節駆動装置の内部構造を示す断面図である。
【図6】初期位置における関節駆動装置を模式的に示す図である。
【図7】アーム部材を揺動させた作動位置における関節駆動装置を模式的に示す図である。
【図8】作動位置における関節駆動装置の説明に供する図である。
【図9】図9(A)(B)(C)は、関節駆動装置の大きさに関する考察の説明に供する図であって、図9(A)は、実施形態の構成の場合、図9(B)(C)は、対比例の構成の場合を示している。
【図10】ガイド部材を改変した第1の改変例に係る関節駆動装置の内部構造を示す断面図である。
【図11】関節駆動装置の第2の改変例を、初期位置において模式的に示す図である。
【図12】関節駆動装置の第2の改変例を、アーム部材を揺動させた作動位置において模式的に示す図である。
【図13】関節駆動装置の第3の改変例を、初期位置において模式的に示す図である。
【図14】関節駆動装置の第3の改変例を、アーム部材を揺動させた作動位置において模式的に示す図である。
【図15】図15(A)は、アーム部材の基端部を回動自在に接続する回動軸とリンク部材の基端部を回動自在に接続する回動軸との位置関係が可搬重量に与える影響の理論計算に用いる各種パラメータの説明に供する概念図、図15(B)は、関節駆動装置が関節角度θ駆動したときの各角度の導出の説明に供する図、図15(C)は、図15(B)における符号15Cを付した部分の拡大図である。
【図16】関節角度とアクチュエータ出力との関係を示すグラフである。
【図17】軸間水平距離を変化させたときのアクチュエータ出力幅の変化を示す図である。
【図18】軸の位置パラメータ(軸間水平距離、軸間垂直距離)を変更した場合におけるアクチュエータ出力幅をマッピングする手順を示す概略フローチャートである。
【図19】軸の位置パラメータ(軸間水平距離、軸間垂直距離)とアクチュエータ出力幅の大きさとの組み合わせ分布図を示している。
【図20】第4の改変例に係る多関節アーム装置を、拡げた状態で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1を参照して、車体101の組み立てラインでは、搬送装置102によって搬送されてくる車体101に、ワーク103としての車体構成部品を組み付けている。車体101の組み立てラインには、アーム型の助力装置100を設置している。助力装置100に設けたハンド21によって比較的重いワーク103を保持しながら作業点まで移動し、作業者の負荷を軽減している。助力装置100には、多関節アーム装置20を組み込んでいる。図2および図3にも示すように、多関節アーム装置20は、複数個(図示例では4個)の関節駆動装置10を有している。なお、説明の便宜上、4個の関節駆動装置10を、ベース104に取り付けた基端側からハンド21を取り付けた先端側に向けて順に、第1の関節駆動装置10、第2の関節駆動装置10、第3の関節駆動装置10、および第4の関節駆動装置10という。
【0014】
関節駆動装置10のそれぞれは、対をなす第1と第2のフレーム31、32と、第1と第2のフレーム31、32を接続するとともに揺動自在なアーム部材40とを有し、第2のフレーム32を第1のフレーム31に対して鉛直面に関して円運動自在に構成している。作業者がワーク103を作業点に向けて移動すると、第1〜第4の関節駆動装置10のそれぞれは、重量をバランスするために、ワーク103の高さに合わせて作動する。図1には、実線および二点鎖線によって、第1〜第4の関節駆動装置10が2つの形態に作動した状態を示している。実線によって示される形態は、第1と第2の関節駆動装置10のそれぞれにおける第1と第2のフレーム31、32がほぼ水平位置にあり、第3と第4の関節駆動装置10のそれぞれにおける第2のフレーム32が第1のフレーム31に対して鉛直上方向に移動している。一方、二点鎖線によって示される形態は、第1と第2の関節駆動装置10のそれぞれにおける第2のフレーム32が第1のフレーム31に対して鉛直上方向に移動し、第3と第4の関節駆動装置10のそれぞれにおける第1と第2のフレーム31、32がほぼ水平位置にある。関節駆動装置10の作動は、圧縮したエアや作動油などの圧縮流体の流体圧を用いている。関節駆動装置10のそれぞれには、空圧機器110を介して圧縮流体が供給される。空圧機器110は、コンプレッサ111に接続してある。また、空圧機器110は、コントローラ120に接続してある(図1を参照)。コントローラ120は、CPUやメモリを主体に構成しており、空圧機器110のオンオフ制御や、流体圧の調整などを行う。コントローラ120は、重量をバランスするために、第1〜第4の関節駆動装置10のそれぞれに供給すべき流体圧などを算出し、第1〜第4の関節駆動装置10のそれぞれに流体圧を供給する。
【0015】
図2および図3を参照して、多関節アーム装置20は、一の関節駆動装置10における第1のフレーム31と、他の関節駆動装置10における第2のフレーム32とを回転自在に連結するための回転ジョイント50(連結部材に相当する)を有している。多関節アーム装置20は、関節駆動装置10を1つのユニットとして複数個(図示例では4個)連結することによって構成している。回転ジョイント50は、関節駆動装置10同士を連結した連結面に対して直交する鉛直軸51(図2を参照)の回りに関節駆動装置10のそれぞれを回転自在に保持している。回転ジョイント50は、後述するが、ベアリング52、フランジ53、およびハウジング54によって構成している(図5をも参照)。図2および図3の符号「22」は、第2のフレーム32のハウジング54とハンド21とを回転自在に連結するためのベアリングを示している。ハンド21用のベアリング22は、回転ジョイント50のベアリング52と共通した構造を有し、ハウジング54に取り付けている。
【0016】
多関節アーム装置20は、回転ジョイント50を介して4個の関節駆動装置10を拡げると、図2に示す状態となる。一方、多関節アーム装置20は、回転ジョイント50を介して4個の関節駆動装置10を閉じると、図3に示す状態となる。閉じた状態では、多関節アーム装置20は、4個の関節駆動装置10を積み重ねたような姿勢を取る。
【0017】
多関節アーム装置20は、リーチつまり作業点までの到達距離を長くとれることができ(図2を参照)、使わないときには小さくできる(図3を参照)。さらに、多関節であることから、ワーク103を移動するときの姿勢を複数とることができる(図1を参照)。
このため、周辺設備と干渉することなくワーク103を作業点に到達させることができる。また、使用する環境が変化し、ワーク103を移動した後の姿勢が異なっても、改造等を行う必要がなく、コストの増加を抑えることができる。
【0018】
なお、図1に示した多関節アーム装置20は、第1のフレーム31を基端側とし、第2のフレーム32を先端側として、第4の関節駆動装置10における第2のフレーム32にハンド21を取り付けている。この形態とは逆に、第2のフレーム32を基端側とし、第1のフレーム31を先端側として、第4の関節駆動装置10における第1のフレーム31にハンド21を取り付ける構成とすることもできる。
【0019】
図4および図5を参照して、本実施形態の関節駆動装置10は、概説すれば、対をなす第1と第2のフレーム31、32と、基端部が第1のフレーム31に回動自在に接続され、先端部が第2のフレーム32に回動自在に接続されたアーム部材40と、第1のフレーム31に対してアーム部材40を揺動させることによって第2のフレーム32を移動させるアクチュエータ70と、を含んでいる。アクチュエータ70は、アーム部材40に取り付けられるシリンダチューブ71(ケーシングに相当する)を備える駆動部Dと、駆動部Dによってシリンダチューブ71の軸線方向に沿って移動するシリンダロッド73(作動ロッドに相当する)と、基端部が第1のフレーム31に回動自在に接続され、シリンダロッド73に対して傾斜して伸びるリンク部材80と、シリンダロッド73に連結されるとともにリンク部材80の先端部が回動自在に接続されたガイド部材90と、を有している。本実施形態における駆動部Dは、流体圧によってシリンダロッド73を移動させている。シリンダチューブ71内には、このシリンダチューブ71の軸線方向に沿って進退移動自在にピストン72を配置している。シリンダロッド73は、ピストン72に取り付けてあり、シリンダチューブ71の軸線方向に沿って第1のフレーム31に向けて伸びている。以下、詳述する。
【0020】
第1と第2のフレーム31、32のそれぞれは、相互に向かい合う面が開口した略箱形状を有している。図4において左手側に示されるフレームを第1のフレーム31と言い、右手側に示されるフレームを第2のフレーム32と言う。
【0021】
第1のフレーム31における図5中下端部には、ベアリング52を取り付けたフランジ53を設けている。第2のフレーム32における図5中上端部には、ベアリング52を保持自在なハウジング54を設けている。ベアリング52、フランジ53、およびハウジング54によって前述した回転ジョイント50を構成している。符号55は、回転ジョイント50を介して関節駆動装置10同士を相対的に回転させるときの回転負荷を付与するバネ部材を示している。バネ部材55が回転負荷として付与する弾発力の大きさは、図示しないねじ部材によって調節自在となっている。多関節アーム装置20の使用者は、回転負荷を調節することによって、関節駆動装置10同士を回転させるときの好みの重さを設定することができ、良好な操作感を得る。
【0022】
アーム部材40は、上壁41と、一対の側壁42と、底壁43とを備える略箱形状を有している。側壁42における図4において左手側に示される基端部は、第1のフレーム31に回動軸44を介して回動自在に接続し、右手側に示される先端部は、第2のフレーム32に回動軸45を介して回動自在に接続してある。側壁42には、回動軸44、45との接続部分を補強するための補強部材46を取り付けている(図4を参照)。底壁43と第1のフレーム31との間には、リンク部材80が挿通する開口47を形成している。なお、アーム部材40に補強部材46を取り付けているが、この補強部材46を取り付けても、厚さが厚い素材からアーム部材を形成する場合に比較して、小型化および軽量化が図られている。
【0023】
関節駆動装置10はさらに、アーム部材40に対して間隔を隔てて平行に伸び、基端部が第1のフレーム31に回動自在に接続され、先端部が第2のフレーム32に回動自在に接続された平行アーム部材60を有している。平行アーム部材60は、角棒形状を有している。平行アーム部材60における図4において左手側に示される基端部は、第1のフレーム31に回動軸61を介して回動自在に接続し、右手側に示される先端部は、第2のフレーム32に回動軸62を介して回動自在に接続してある。第1のフレーム31、第2のフレーム32、アーム部材40、および平行アーム部材60によって、平行リンクを構成する。この平行リンクによって、第1のフレーム31に対してアーム部材40および平行アーム部材60を揺動させると、第2のフレーム32を平行移動させることができる。
【0024】
図5を参照して、シリンダチューブ71は、アーム部材40の内部空間に取り付けている。シリンダチューブ71は、軸直交断面が例えば矩形形状を有し、アーム部材40における上壁41および一対の側壁42に接触している。シリンダチューブ71の軸直交断面は矩形形状に限られず、適宜の形状を採用し得る。シリンダチューブ71の軸線方向は、アーム部材40の上壁41が伸びる方向と平行をなしている。シリンダチューブ71内には、圧縮流体を供給する圧力室74を、ピストン72との間に区画形成している。圧力室74は、配管75を介して、空圧機器110に接続している。図1にも示したように、空圧機器110は、コンプレッサ111およびコントローラ120に接続してある。
【0025】
ピストン72は、シリンダチューブ71の軸線方向に沿って進退移動自在に、シリンダチューブ71内に収容している。ピストン72は、圧力室74に供給された圧縮流体の流体圧によって、第1のフレーム31に向けて前進移動する。
【0026】
シリンダロッド73は、ピストン72と一体的に形成され、シリンダチューブ71の軸線方向に沿って、つまりアーム部材40の上壁41が伸びる方向と平行をなして伸びている。シリンダロッド73は、シリンダチューブ71を越えて、第1のフレーム31に向けて伸びている。
【0027】
リンク部材80は、直線のロッド形状を有している。リンク部材80における図5において左手側に示される基端部は、第1のフレーム31に回動軸61を介して回動自在に接続してある。リンク部材80は、シリンダロッド73が伸びる方向に対して傾斜して伸びている。図示例では、リンク部材80の基端部および平行アーム部材60の基端部は、同じ回動軸61を中心にして、第1のフレーム31に回動自在に接続してある。
【0028】
ガイド部材90は、転がり自在なローラ91を含んでいる。シリンダロッド73は、ローラ91の回転中心に回動軸92を介して回動自在に接続してある。リンク部材80における図5において右手側に示される先端部も、ローラ91の回転中心に回動軸92を介して回動自在に接続してある。アクチュエータ70を作動すると、ローラ91は、アーム部材40の上壁41の内面に押付けられながら回転する。
【0029】
本実施形態にあっては、アーム部材40とシリンダチューブ71とを一体的に形成し、アーム部材40の強度を高めるための構造体としてシリンダチューブ71を利用している。アーム部材40の構造体としてシリンダチューブ71を有効活用することによって、アーム部材40自体の剛性、強度を必要以上に高めたり、大型化および重量化を招いてしまう他の強度部材を取り付けたりする必要がない。したがって、関節駆動装置10の全体として、一層の軽量化および小型化を図ることができる。
【0030】
なお、本発明は、市販されている一般的な流体圧シリンダを用いることを排除するものではない。必要な推力を有する流体圧シリンダを関節駆動装置10に適用することもできるが、アーム部材40の剛性、強度を確保するために、他の構造体(リンク、ビーム、カバーなど)を必要とし、その結果、アーム部材40の重量が重くなり、大きさも大きくなる虞がある。したがって、一層の軽量化および小型化を図るためには、本実施形態のように、アーム部材40とシリンダチューブ71とを一体的に形成することが好ましい。
【0031】
次に、本実施形態の作用を図6〜図8を参照しつつ説明する。なお、図6〜図8においては、第1のフレーム31の位置を固定した場合において、第2のフレーム32が変位する様子を示している。第2のフレーム32の位置を固定して第1のフレーム31を変位させることもできることは言うまでもない。
【0032】
図6に示すように、初期位置においては、関節駆動装置10は、圧力室74に圧縮流体が供給されて重量をバランスし、第1と第2のフレーム31、32をほぼ同じ高さ位置に保持している。
【0033】
図6に示す状態から圧力室74に圧縮流体をさらに供給してアクチュエータ70を作動させると、ピストン72が、流体圧によってシリンダチューブ71の軸線方向に沿って、第1のフレーム31に向けて前進移動する。アクチュエータ70の推力は、シリンダロッド73、ガイド部材90、およびリンク部材80を介して伝達され、アーム部材40を揺動させる。
【0034】
図7に示すように、関節駆動装置10は、アーム部材40を揺動させた作動位置において、圧力室74に圧縮流体が供給されて重量をバランスし、第2のフレーム32を第1のフレーム31よりも高い位置に保持している。
【0035】
アクチュエータ70を作動させるときには、ガイド部材90のローラ91は、アーム部材40の上壁41の内面に押付けられながら回転している。図8を参照して、本実施形態の関節駆動装置10にあっては、リンク部材80からの支持力fsによってシリンダロッド73に作用する横荷重wを、ガイド部材90によって受け、シリンダロッド73にかかる負荷を分散する構造としてある。このため、シリンダロッド73は、過大な曲げモーメントがかかることなく、進退移動する。したがって、アーム部材40を円滑に揺動させることができ、関節駆動装置10の円滑な作動を確保することが可能となる。なお、図8において符号Fはシリンダ推力、fはガイド部材90に作用するシリンダ推力Fの反作用の力を表している。
【0036】
次に、図9(A)(B)(C)を参照して、関節駆動装置の大きさに関して考察する。
【0037】
図9(A)(B)(C)のそれぞれにおいて、アクチュエータ70、130におけるシリンダチューブ71、131の大きさは同じ大きさで表している。また、シリンダチューブ71、131が図中水平方向に位置する状態を平行リンクの初期位置とし、シリンダチューブ71、131が傾斜した状態を平行リンクの作動位置とする。理解の容易のために、シリンダチューブ131のうち平行リンクが占める領域を超えて存在する部位にハッチングを付してある。
【0038】
図9(B)を参照して、平行リンクの対角線上にアクチュエータ130を配置した場合には、シリンダチューブ131の一部は、平行リンクの初期位置または作動位置のいずれの位置においても、平行リンクが占める領域を超えて存在する。
【0039】
図9(C)を参照して、特許文献1に記載された技術と同様に、リンク部材132およびアクチュエータ130によってリンクを構成した場合には、リンク部材132の一部は、平行リンクの初期位置または作動位置のいずれの位置においても、平行リンクが占める領域を超えて存在する。図示のとおり平行リンク自体が大きいため、関節駆動装置も大きい。
【0040】
一方、図9(A)を参照して、本実施形態の場合には、平行リンクの初期位置または作動位置のいずれの位置においても、シリンダチューブ71やリンク部材80の一部が、平行リンクが占める領域を超えて存在することがない。したがって、図9(A)に示される本実施形態の関節駆動装置10は、図9(B)(C)に示される対比例に比べて、小型化を図る上で有利な構成を有している。さらに、関節駆動装置10の小型化を通して、軽量化を図ることもできる。
【0041】
さらに、本実施形態にあっては、アーム部材40とシリンダチューブ71とを一体的に形成し、アーム部材40の構造体としてシリンダチューブ71を有効活用している。この点からも、関節駆動装置10の全体として、一層の軽量化および小型化を図ることができる。
【0042】
多関節アーム装置20には、その使用者の側から、リーチつまり作業点までの到達距離を長くとれること、周辺設備と干渉することなく作業点に到達できること、使わないときに小さくできること、などが要求されている。アームを多関節化することによって、上記の項目を達成できる。ただし、そのためには、個々の関節駆動装置10の小型化および軽量化を図る必要がある。個々の関節駆動装置10が大型かつ重いと、多関節化したアームも、強度を高めるためにさらに大型になり、重くなってしまうからである。
【0043】
本実施形態では、上述したように、関節駆動装置10の円滑な作動を確保することが可能であり、関節駆動装置10の小型化および軽量化を図ることができる。したがって、関節駆動装置10を1つのユニットとして複数個連結することによって構成される多関節アーム装置20の円滑な作動を確保することも可能であり、多関節アーム装置20の小型化および軽量化を図ることができる。よって、多関節アーム装置20に要求されている、リーチを長くとれること、周辺設備と干渉することなく作業点に到達できること、使わないときに小さくできること、などを容易に満足することができる。
【0044】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜改変して実施することができる。例えば、複数個の関節駆動装置10を連結して多関節アーム装置20とした実施形態について説明したが、1個の関節駆動装置10のみを用いても良い。この場合には、平行アーム部材60および連結部材50は必ずしても必要ではない。また、リンク部材80は、直線形状を有する場合に限定されず、湾曲した部位を備える形状でも良い。シリンダチューブ71内のピストン72を流体圧によって移動し、ピストン72に取り付けたシリンダロッド73を移動させる形態を示したが、これとは逆の形態でも良い。つまり、シリンダチューブを可動側とし、ピストンを固定側とし、シリンダチューブに取り付けた作動ロッドを移動させる形態でも良い。さらに、駆動部Dは、作動ロッドとしてのシリンダロッド73を流体圧によって移動させる場合に限定されない。駆動部Dは、例えば、電磁駆動プランジャーなどによって作動ロッドを直動する形態でも良い。この形態のケーシング内には、プランジャーや、電磁力を生成する電磁コイルなどを収納している。その他の改変例について以下に説明する。
【0045】
(第1の改変例)
図10は、ガイド部材90を改変した第1の改変例に係る関節駆動装置10の内部構造を示す断面図である。なお、実施形態と共通する部材には同じ符号を付し、その説明は一部省略する。
【0046】
ガイド部材90が転がり自在なローラ91を含んでいる実施形態について説明したが(図5を参照)、本発明はこの場合に限定されるものではない。ガイド部材90は、シリンダロッド73に作用する横荷重を受けることによって、シリンダロッド73にかかる負荷を分散し得る限りにおいて、適宜の構成を採用することができる。図10に示す関節駆動装置10は、ガイド部材90が、スライド移動自在なスライダ95を含んでいる。ガイド部材90は、一般的なLMガイドから構成され、スライダ95と、スライダ95の直線移動をガイドする保持ブロック96とを有している。保持ブロック96は、アーム部材40の上壁41の内面に設けている。シリンダロッド73は、スライダ95に連結してある。
リンク部材80における先端部は、スライダ95に回動軸97を介して回動自在に接続してある。アクチュエータ70を作動すると、スライダ95は、保持ブロック96にガイドされて直線移動する。第1の改変例においても、実施形態と同様に、シリンダロッド73に作用する横荷重を、ガイド部材90によって受け、シリンダロッド73にかかる負荷を分散している。このため、シリンダロッド73は、曲げモーメントがかかることなく、進退移動する。したがって、アーム部材40を円滑に揺動させることができ、関節駆動装置10の円滑な作動を確保することが可能となる。
【0047】
(第2の改変例)
図11および図12を参照して、関節駆動装置10の第2の改変例を説明する。図11には、関節駆動装置10の第2の改変例を、初期位置において模式的に示し、図12には、関節駆動装置10の第2の改変例を、アーム部材40を揺動させた作動位置において模式的に示している。なお、実施形態と共通する部材には同じ符号を付し、その説明は一部省略する。
【0048】
第1と第2のフレーム31、32が相対的に変位する鉛直面において見た場合に、回動軸44と回動軸61とを同じ鉛直軸上に位置するように第1のフレーム31に配置し、回動軸45と回動軸62とを同じ鉛直軸上に位置するように第2のフレーム32に配置した実施形態について説明したが(図6および図7を参照)、本発明はこの場合に限定されるものではない。図11および図12に示すように、第1と第2のフレーム31、32が相対的に変位する鉛直面において見た場合に、回動軸44と回動軸61とを異なる鉛直軸上に位置するように第1のフレーム31に配置し、回動軸45と回動軸62とを異なる鉛直軸上に位置するように第2のフレーム32に配置してもよい。このような配置形態は、第1のフレーム31の限られた大きさの範囲内で、回動軸44と回動軸61とを可能な限り離間させて配置し、回動軸44と回動軸61との間の距離を可能な限り大きくした配置形態である。同様に、第2のフレーム32の限られた大きさの範囲内で、回動軸45と回動軸62とを可能な限り離間させて配置し、回動軸45と回動軸62との間の距離を可能な限り大きくした配置形態である。実施形態では、初期位置から作動位置までアーム部材40を揺動させると、アーム部材40の上壁41と平行アーム部材60との間隔は比較的狭くなる(図6および図7を参照)。これに対して、第2の改変例における回動軸44と回動軸61との位置関係、および回動軸45と回動軸62との位置関係では、初期位置から作動位置までアーム部材40を揺動させても、アーム部材40の上壁41と平行アーム部材60との間隔は比較的広く、空間部48を確保することができる。この空間部48は、圧縮流体を圧力室74に供給する配管75や、電気的な配線などを収納する空間として用いることができる。配管75や電気的な配線などが外部に露出しないので、配管75などの破損を低減することができる。
【0049】
(第3の改変例)
図13および図14を参照して、関節駆動装置10の第3の改変例を説明する。図13には、関節駆動装置10の第3の改変例を、初期位置において模式的に示し、図14には、関節駆動装置10の第3の改変例を、アーム部材40を揺動させた作動位置において模式的に示している。なお、実施形態と共通する部材には同じ符号を付し、その説明は一部省略する。
【0050】
リンク部材80の基端部および平行アーム部材60の基端部を同じ回動軸61を中心にして第1のフレーム31に回動自在に接続した実施形態について説明したが(図6および図7を参照)、本発明はこの場合に限定されるものではない。図13および図14に示すように、リンク部材80の基端部を回動自在に接続する回動軸81と、平行アーム部材60の基端部を回動自在に接続する回動軸61とが異なってもよい。第2の改変例において説明したように、回動軸44と回動軸61との位置関係は、空間部48を確保する観点から定まっている。一方、回動軸44と回動軸81との位置関係は、空間部48を確保する観点からではなく、可搬重量を増加させる観点から定め得るからである。
【0051】
アーム部材40の基端部を第1のフレーム31に回動自在に接続する回動軸44(第1の回動軸に相当する)に対する、リンク部材80の基端部を第1のフレーム31に回動自在に接続する回動軸81(第2の回動軸に相当する)の相対的な位置は、回動軸44と回動軸81との間の距離が第1のフレーム31の大きさの範囲内で許容される最大長さとなる位置に、設定するのが好ましい。回動軸44と回動軸81との位置関係のみで、関節駆動装置10における可搬重量を増加させることが可能となるからである。
【0052】
回動軸44と回動軸81との位置関係が可搬重量に与える影響を、理論計算結果に基づいて説明する。
【0053】
図15(A)を参照して、理論計算に用いる各種パラメータは次のとおりである。
【0054】
a :回動軸44と回動軸81との軸間水平距離
b :回動軸44と回動軸81との軸間垂直距離
θ :関節駆動装置の関節角度(平行アーム部材60の水平位置からの傾斜角度)
φ :リンク部材80の延長線とアクチュエータ70のシリンダロッド73とがなす角度
ψ :リンク部材80の水平位置からの傾斜角度
L :アーム部材40を回動自在に接続するための、回動軸44と回動軸45との間の距離
La:回動軸44と関節駆動装置全体の重心との間の距離
L1:リンク部材80の長さ
s :回動軸44と回動軸45とを結んだ直線と、アクチュエータ70のシリンダロッド73との間の距離
W :関節駆動装置の先端に掛かる荷重
Wa:関節駆動装置の自重
なお、アクチュエータ70の直径は、空圧シリンダの場合のボア径を想定した。
【0055】
アクチュエータ70の駆動部Dの出力F(以下、単に、「アクチュエータ出力F」という)は、下記の式(1)から求まる。
【0056】
【数1】
【0057】
図15(B)(C)を参照して、関節駆動装置が関節角度θ駆動したときのφは、次のように導出される。回動軸44と回動軸81とを結ぶ線分と、シリンダロッド73の延長線とが交わる交点を点Aとする。点A、回動軸81、および回動軸92によって形成される三角形において、正弦定理から下記の式(2)の関係がある。式(2)より、角度φが式(3)のように導き出される。
【0058】
【数2】
【0059】
また、式(3)の角度αは、下記の式(4)から求められる。また、角度θ、角度φ、および角度ψは、下記の式(5)の関係がある。
【0060】
【数3】
【0061】
式(1)から、軸間水平距離aおよび軸間垂直距離bが可能な限り大きくなるように回動軸44と回動軸81との位置関係を定めることによって、すなわち、回動軸44と回動軸81との間の距離が第1のフレーム31の大きさの範囲内で許容される最大長さとなるように回動軸44と回動軸81との位置関係を定めることによって、アクチュエータ出力Fを小さくでき、大きな荷重Wに対してもバランスをとることができる。つまり、同じ能力のアクチュエータ70を用いても、回動軸44と回動軸81との位置関係のみで、関節駆動装置10における可搬重量を増加させることが可能となる
リンク部材80をその長さL1が長い構造とすることによっても、また距離sを長い構造とすることによっても、同様に、関節駆動装置における可搬重量を増加させることが可能となる。
【0062】
理論計算によって求めた、関節角度θとアクチュエータ出力Fとの関係を図16に示す。図中のΔFは、第1のフレーム31に対してアーム部材40を揺動させる範囲内において、揺動させたアーム部材40の姿勢をバランスするために必要なアクチュエータ70の駆動部Dの出力の最大値と最小値との差である出力幅を示している。以下、単に、「アクチュエータ出力幅ΔF」という。
【0063】
アクチュエータ出力幅ΔFは、回動軸44に対する回動軸81の相対的な位置(軸間水平距離a、軸間垂直距離b)や、リンク部材80の長さL1やアクチュエータ70の相対的な位置(距離s)などの条件を変更することによって変更することができる。アクチュエータ出力幅ΔFが小さくなる条件(回動軸44に対する回動軸81の相対的な位置や、リンク部材80の長さL1やアクチュエータ70の相対的な位置(距離s)など)を計算によって導出することができる。同様に、アクチュエータ出力幅ΔFが大きくなる条件を計算によって導出することもできる。
【0064】
回動軸44に対する回動軸81の相対的な位置は、アクチュエータ出力幅ΔFの大きさとの組み合わせにおいて設定することができる。アクチュエータ出力幅ΔFを小さくする組み合わせにおいて回動軸44に対する回動軸81の位置を設定すると、アクチュエータ出力幅ΔFが小さくてよいことから、アクチュエータや空圧機器110に接続するコンプレッサ111は能力的に小型のものでもよく、コントローラ120による空圧機器110のオンオフ制御や流体圧の調整も容易になる。これらを通して、関節駆動装置の制御系を簡素化することが可能となる。また、関節駆動装置のコストの低減を図ることができる。一方、アクチュエータ出力幅ΔFを大きくする組み合わせにおいて回動軸44に対する回動軸81の位置を設定すると、関節角度θの単位角度当たりの出力幅ΔFを大きくできることから、関節駆動装置の関節角度などを調整する位置決め時における制御分解能を高めることができる。
【0065】
図17は、軸間水平距離aを変化させたときのアクチュエータ出力幅ΔFの変化を示している。
【0066】
軸間水平距離a=0mmのときと、回動軸81の軸位置を水平方向に20mm移動させたとき(a=20mm)とのそれぞれについて、アクチュエータ出力Fを式(1)から求めた。回動軸81の軸位置を水平方向に例えば20mm移動させることによって(a=20mm)、関節駆動装置のバランス性能として、アクチュエータ出力幅ΔFが約半分になる。また、荷重Wに対してバランスするためのアクチュエータ出力Fを小さくでき、関節駆動装置における可搬重量を増加させることができる。
【0067】
次に、図18および図19を参照して、回動軸44と回動軸81との軸間水平距離a、回動軸44と回動軸81との軸間垂直距離b、つまり回動軸44、81の位置パラメータ(a、b)を変更した場合における、アクチュエータの出力幅ΔFのマッピングについて説明する。
【0068】
回動軸44および回動軸81を配置する位置は、第1のフレーム31の寸法によって制限を受ける。したがって、位置パラメータ(a、b)の範囲は、関節駆動装置の仕様(寸法)によって決まる。
【0069】
決定された範囲内における位置パラメータ(a、b)の組み合わせについて、アクチュエータ出力Fを式(1)から求める。併せて、アクチュエータ出力幅ΔFを求める。関節駆動装置の先端に掛かる荷重W、関節駆動装置の自重Wa、リンク部材80の長さL1などの寸法は、関節駆動装置の仕様にしたがう。
【0070】
そして、位置パラメータ(a、b)の組み合わせに対して、アクチュエータ出力幅ΔFをマッピングする。
【0071】
図19には、位置パラメータ(a、b)とアクチュエータ出力幅ΔFの大きさとの組み合わせ分布図を示している。アクチュエータ出力幅ΔFが小さくなる回動軸81の相対的な位置を決定する場合には、分布図を参照することによって、設計可能な寸法値の範囲から、位置パラメータ(a、b)を導出することができる。アクチュエータの出力幅ΔFが大きくなる回動軸81の相対的な位置を決定する場合にも同様に、分布図を参照することによって、設計可能な寸法値の範囲から、位置パラメータ(a、b)を導出することができる。
【0072】
なお、リンク部材80の長さL1および距離sについても、同様に、アクチュエータ出力幅ΔFの大きさとの組み合わせにおいて設定することができる。アクチュエータ出力幅ΔFを小さくする組み合わせにおいてリンク部材80の長さL1と距離sを設定すると、関節駆動装置の制御系を簡素化することが可能となり、関節駆動装置のコストの低減を図ることができる。一方、アクチュエータ出力幅ΔFを大きくする組み合わせにおいてリンク部材80の長さL1および距離sを設定すると、関節駆動装置の関節角度などを調整する位置決め時における制御分解能を高めることができる。
【0073】
また、回動軸81を回動軸44に対して回動軸61よりも近い位置に配置した例を示したが(図13および図14を参照)、空間部48を確保でき、第1と第2のフレーム31、32の大きさに余裕がある場合には、回動軸81を回動軸44に対して回動軸61からさらに離した位置に配置してもよい。
【0074】
(第4の改変例)
図20を参照して、第4の改変例に係る多関節アーム装置20を説明する。図20には、第4の改変例に係る多関節アーム装置20を拡げた状態で示している。なお、実施形態と共通する部材には同じ符号を付し、その説明は一部省略する。
【0075】
関節駆動装置10における第1のフレーム31の下端部にベアリング52を配置し、第2のフレーム32の上端部にハウジング54を配置した実施形態について説明したが(図2を参照)、本発明はこの場合に限定されるものではない。関節駆動装置10における第1のフレーム31の上端部にもベアリング52をさらに配置し、第2のフレーム32の下端部にもハウジング54をさらに配置してもよい。多関節アーム装置20における関節駆動装置10同士の連結形態を多様化でき、助力装置100の設置場所との関係、周辺設備との干渉を回避する関係、作業点の位置との関係などにおいて、最適な連結形態を選択する際の自由度を高めることができる。図示例では、第2の関節駆動装置10が、第1と第3の駆動装置の下側に連結されている。さらに詳しくは、第1の関節駆動装置10の第2のフレーム32の下側に、第2の関節駆動装置10の第1のフレーム31の上側を接続し、第3の関節駆動装置10の第1のフレーム31の下側に、第2の関節駆動装置10の第2のフレーム32の上側を接続している。
【符号の説明】
【0076】
10 関節駆動装置、
20 多関節アーム装置、
21 ハンド、
31 第1のフレーム、
32 第2のフレーム、
40 アーム部材、
41 上壁、
42 側壁、
43 底壁、
44 回動軸(第1の回動軸)、
45 回動軸、
50 回転ジョイント(連結部材)、
52 ベアリング、
53 フランジ、
54 ハウジング、
60 平行アーム部材、
61 回動軸、
62 回動軸、
70 アクチュエータ、
71 シリンダチューブ(ケーシング)、
72 ピストン、
73 シリンダロッド(作動ロッド)、
74 圧力室、
80 リンク部材、
81 回動軸(第2の回動軸)、
90 ガイド部材、
91 ローラ、
95 スライダ、
96 保持ブロック、
100 アーム型の助力装置、
101 車体、
102 搬送装置、
103 ワーク、
110 空圧機器、
111 コンプレッサ、
120 コントローラ、
D 駆動部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対をなす第1と第2のフレームと、
基端部が前記第1のフレームに回動自在に接続され、先端部が前記第2のフレームに回動自在に接続されたアーム部材と、
前記第1のフレームに対して前記アーム部材を揺動させることによって前記第2のフレームを移動させるアクチュエータと、を含み、
前記アクチュエータが、
前記アーム部材に取り付けられるケーシングを備える駆動部と、
前記駆動部によって前記ケーシングの軸線方向に沿って移動する作動ロッドと、
基端部が前記第1のフレームに回動自在に接続され、前記作動ロッドに対して傾斜して伸びるリンク部材と、
前記作動ロッドに連結されるとともに前記リンク部材の先端部が回動自在に接続されたガイド部材と、を有してなる関節駆動装置。
【請求項2】
前記アーム部材と前記駆動部の前記ケーシングとが一体的に形成され、前記アーム部材の強度を高めるための構造体として前記ケーシングを利用してなる請求項1に記載の関節駆動装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、転がり自在なローラ、またはスライド移動自在なスライダを含んでいる請求項1または請求項2に記載の関節駆動装置。
【請求項4】
前記アーム部材に対して間隔を隔てて平行に伸び、基端部が前記第1のフレームに回動自在に接続され、先端部が前記第2のフレームに回動自在に接続された平行アーム部材をさらに有する請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の関節駆動装置。
【請求項5】
前記アーム部材の前記基端部を前記第1のフレームに回動自在に接続する第1の回動軸に対する、前記リンク部材の前記基端部を前記第1のフレームに回動自在に接続する第2の回動軸の相対的な位置は、前記第1の回動軸と前記第2の回動軸との間の距離が前記第1のフレームの大きさの範囲内で許容される最大長さとなる位置に、設定されている請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の関節駆動装置。
【請求項6】
前記アーム部材の前記基端部を前記第1のフレームに回動自在に接続する第1の回動軸に対する、前記リンク部材の前記基端部を前記第1のフレームに回動自在に接続する第2の回動軸の相対的な位置は、前記第1のフレームに対して前記アーム部材を揺動させる範囲内において、揺動させた前記アーム部材の姿勢をバランスするために必要な前記アクチュエータの前記駆動部の出力の最大値と最小値との差である出力幅の大きさとの組み合わせにおいて設定されている請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の関節駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の関節駆動装置における前記第1のフレームと、請求項1〜6のいずれか1つに記載の関節駆動装置における前記第2のフレームとを回転自在に連結するための連結部材を有し、前記関節駆動装置を1つのユニットとして複数個連結することによって構成される多関節アーム装置。
【請求項1】
対をなす第1と第2のフレームと、
基端部が前記第1のフレームに回動自在に接続され、先端部が前記第2のフレームに回動自在に接続されたアーム部材と、
前記第1のフレームに対して前記アーム部材を揺動させることによって前記第2のフレームを移動させるアクチュエータと、を含み、
前記アクチュエータが、
前記アーム部材に取り付けられるケーシングを備える駆動部と、
前記駆動部によって前記ケーシングの軸線方向に沿って移動する作動ロッドと、
基端部が前記第1のフレームに回動自在に接続され、前記作動ロッドに対して傾斜して伸びるリンク部材と、
前記作動ロッドに連結されるとともに前記リンク部材の先端部が回動自在に接続されたガイド部材と、を有してなる関節駆動装置。
【請求項2】
前記アーム部材と前記駆動部の前記ケーシングとが一体的に形成され、前記アーム部材の強度を高めるための構造体として前記ケーシングを利用してなる請求項1に記載の関節駆動装置。
【請求項3】
前記ガイド部材は、転がり自在なローラ、またはスライド移動自在なスライダを含んでいる請求項1または請求項2に記載の関節駆動装置。
【請求項4】
前記アーム部材に対して間隔を隔てて平行に伸び、基端部が前記第1のフレームに回動自在に接続され、先端部が前記第2のフレームに回動自在に接続された平行アーム部材をさらに有する請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の関節駆動装置。
【請求項5】
前記アーム部材の前記基端部を前記第1のフレームに回動自在に接続する第1の回動軸に対する、前記リンク部材の前記基端部を前記第1のフレームに回動自在に接続する第2の回動軸の相対的な位置は、前記第1の回動軸と前記第2の回動軸との間の距離が前記第1のフレームの大きさの範囲内で許容される最大長さとなる位置に、設定されている請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の関節駆動装置。
【請求項6】
前記アーム部材の前記基端部を前記第1のフレームに回動自在に接続する第1の回動軸に対する、前記リンク部材の前記基端部を前記第1のフレームに回動自在に接続する第2の回動軸の相対的な位置は、前記第1のフレームに対して前記アーム部材を揺動させる範囲内において、揺動させた前記アーム部材の姿勢をバランスするために必要な前記アクチュエータの前記駆動部の出力の最大値と最小値との差である出力幅の大きさとの組み合わせにおいて設定されている請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の関節駆動装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1つに記載の関節駆動装置における前記第1のフレームと、請求項1〜6のいずれか1つに記載の関節駆動装置における前記第2のフレームとを回転自在に連結するための連結部材を有し、前記関節駆動装置を1つのユニットとして複数個連結することによって構成される多関節アーム装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図19】
【公開番号】特開2010−76089(P2010−76089A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170477(P2009−170477)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】
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