説明

防振装置

【課題】弾性体のばね特性をより活かして、防振性、操作性、負荷耐久性に優れた防振装置を提供する。
【解決手段】それぞれが一方向に長い基板部8と、その長手方向の各端部の両側縁から屈曲した4つの板形状の規制体部6とを備える一対の支持体7,7が、各々の規制体部6が接触しないように十字状にゴム弾性体5に埋設されている。各支持体7,7がその長手方向に相対的にスライド変位した場合に、一方の支持体7の2つの規制体部6,6が、この2つの規制体部6,6に各々隣接する他方の支持体7の2つの規制体部6,6とそれぞれゴム弾性体5を介して係合し、両支持体7,7が抜け外れ不能となる。隣接する各支持体7の規制体部6,6間には断面V字状等のスリット14が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の支持体が弾性体に埋設された防振装置に関し、ランマーに好適な防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の防振装置では防振性や操作性、負荷耐久性が求められている。
【0003】
例えば、ランマーの使用時には、ランマー本体が激しく上下動するため、ハンドルを介して作業者へ伝わる振動を軽減する必要がある(防振性)。そのため、各支持体は弾性体に非接触状態で埋設され、一般に、その弾性体には柔らかなばね特性のものが用いられる。
【0004】
一方、ランマーの進行方向を変える場合や段差を乗り越える場合などには、ハンドルを操作してランマー本体を動かす必要がある。その際、小さなハンドル操作でランマー本体が動けば便利である(操作性)。この点、弾性体を柔らかくすると防振性はよくなるものの、ハンドルの動きがランマー本体に伝わり難くなって操作性が悪くなり易いという問題がある。
【0005】
更に、現場ではハンドルを引っ掛けてランマー本体を吊り上げるなど、通常の使用状態に比べて防振装置に過度な負荷が加わる場合があり、そのような場合でも弾性体の損傷は防ぐ必要がある(負荷耐久性)。
【0006】
このような要望を適えるべく、ゴム弾性体中に一対の支持体を十字状に向かい合わせに配置するタイプの防振装置が提案されている(特許文献1、2)。
【0007】
例えば、特許文献1では、略長方形板状をした基板部材の長辺の両側の中央部に、それぞれ内側にC字状に湾曲する一対の立ち上がり片を対向状に立設した金属製の骨材(支持体)が用いられていて、その立ち上がり片側を向かい合わせにした状態で2つの骨材が十字状に配置されている。
【0008】
一方、特許文献2では、略U字状に折曲された帯状の金属板の両端部を、更にそれぞれ外側に直交状に折り曲げて一対の折曲片を形成した骨材(支持体)が用いられていて、その折曲片側を向かい合わせにした状態で2つの骨材が十字状に配置されている。
【0009】
これら防振装置によれば、2つの骨材が非接触の状態でゴム弾性体に埋設されているため、ランマー本体からハンドルに伝わる振動が軽減でき(防振性)、骨材がストッパーの役目を果たすため、ゴム弾性体の所定以上の捩れを防止することができる(負荷耐久性)。ハンドルを少し下げればランマー本体の先端が簡単に上がるため、速やかに移動することもできる(操作性)。
【特許文献1】特許第3654575号公報
【特許文献2】特開2001−18178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、これら防振装置は、負荷が加えられたときに各骨材がゴム弾性体を介して間接的に力を作用し合う部位(以下、作用部位ともいう)が防振装置の中央付近にあって骨材どうしが近接している。そのため、防振装置に負荷が加わると直ぐに骨材どうしが作用して、ゴム弾性体が弾性性能を発揮する前にその動きが規制され、ばね特性が十分に活かしきれていないという問題がある。
【0011】
例えば、ランマー本体の上下動が小さい場合であればよいが、でこぼこした荒地など、ランマー本体が比較的大きく上下動するような場合(通常はこのような場合が多い)には、直ぐに弾性体が潰れてその弾性が発揮されなくなり、実質的に両骨材を直接連結したような状態となって防振性が損なわれる。また、特にそのような場合は、ハンドルを確りと把持する必要があることから、かえって振動による作業者への負担を増加させることにもなる。
【0012】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、弾性体のばね特性をより活かすことができ、防振性、操作性、負荷耐久性に優れた防振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明では、作用部位が防振装置の外周側に位置するように配設した。
【0014】
具体的には、一方が振動体に取り付けられ、他方が操作体に取り付けられる一対の支持体が弾性体に埋設された防振装置であって、上記一対の支持体のそれぞれが、振動体と操作体とに各々固定される一方向に長い基板部と、その長手方向の各端部の両側から同じ面側に延びるように立設された4つの規制体部と、を備え、各々の基板部が上記規制体部が延びる側で対面し、これら規制体部が接触しないように上記一対の支持体が十字状に配設されていて、各支持体が各々の基板部の長手方向へ相対的にスライド変位した場合に、一方の支持体の2つの規制体部が、この2つの規制体部と各々隣接する他方の支持体の2つの規制体部とそれぞれ弾性体を介して係合し、両支持体が抜け外れ不能になるように配設する。
【0015】
かかる構成によれば、基板部の同じ面側に延びるように4つの規制体部が立設されていて、各々の規制体部が接触せずに互い違いになった状態で、各支持体が弾性体に埋設されている。つまり、各支持体は、隣接する規制体部の間に弾性体が介在した状態で連結されているため、そのばね特性によって防振性を得ることができるとともに、各支持体の規制体部によって弾性体の変形を規制することができる。
【0016】
ここで、これら規制体部は、一方向に長い基板部の長手方向の各端部の両側、つまり支持体の両端に設けられているため、弾性体に埋設されたとき、その中心部に設けられるのに比べて隣接する各支持体の規制体部どうしの間を大きく設定することができ、その間に介在する弾性体のばね特性をより活かすことができる。
【0017】
すなわち、ランマー本体の上下動が大きくなっても、介在する弾性体量が多くなって弾性体が実質的に機能しなくなるのを軽減できるので、防振性を大きく損なわずに済む。更に、作用部位の形態をより自在に設定できるようになるため、防振性と操作性との調整が容易になり両者をバランスよく設定できることから、その結果として操作性にも優れることとなる。
【0018】
そして、各支持体が各々の基板部の長手方向に相対的にスライド変位した場合に、一方の支持体の2つの規制体部が、この2つの規制体部と各々隣接する他方の支持体の2つの規制体部とそれぞれ弾性体を介して係合し、両支持体が抜け外れ不能になるので、ハンドルを引っ掛けてランマー本体を吊り上げるような過度な負荷が防振装置に加わっても、最終的には両支持体でその負荷を受け止めることができるため、弾性体の損傷を防ぐことができる。
【0019】
詳しくは、一方の支持体における長手方向の少なくとも一端部の両側に位置する2つの規制体部の最遠隔部位間の間隔を、この2つの規制体部と各々隣接する他方の支持体の2つの規制体部の最近接部位間の間隔よりも大きく設定すればよい。尚、ここでいう最遠隔部位とは最も遠く隔たった部位をいい、最近接部位とは最も近く接した部位をいう。また、少なくとも一端部としたのは、他方の一端部も同様の構成にすることも含む趣旨である。
【0020】
具体的には、上記一対の支持体のそれぞれが同形状の金属部材からなり、上記各規制体部は、各基板部の長手方向の各端部の両側縁から屈曲して形成された板形状をしていて、各基板部の中心を通る軸線の周り方向に隣接する両支持体の規制体部どうしが、その周り方向に対面しているようにすることができる。
【0021】
そうすれば、まず、各支持体は金属板を屈曲して形成してあるので、成形が容易で生産性に優れる。
【0022】
そして、例えば防振装置に捩り負荷が加わった場合には、各基板部の中心を通る軸線の周り方向に隣接する両支持体の規制体部どうしが、その負荷の加わる周り方向に対面しているため、確実かつ効率的に作用し合うこととなる。従って、防振装置の耐久性や操作性を向上させることができる。
【0023】
また、一方の支持体の規制体部と、隣接する他方の支持体の規制体部との間の弾性体の部分には、これら規制体部が延びる方向に延びるスリットを形成するのが好ましい。
【0024】
そのようなスリットを形成することで、一対の支持体は、弾性体に加えて隙間が介在した状態で連結され、ばね特性が非線形に変化して防振性、操作性に優れるものとなる。
【0025】
すなわち、防振装置に加わる負荷が比較的小さい領域では、スリットの作用で弾性体は柔らかなばね特性を発揮する(第1柔軟領域ともいう)。負荷が大きくなってスリットが潰れ、その両側の弾性体どうしが接する領域では、第1柔軟領域よりも大きなばね特性を発揮する(第2柔軟領域ともいう)。そして、更に負荷が大きくなると、徐々に弾性体が潰れてその弾性が発揮され難くなり、最終的には規制体部どうしが実質的に力を直接作用し合うような状態となる(規制領域ともいう)。
【0026】
従って、例えば、通常の使用時は第1柔軟領域内となるように設定すれば、作業者への振動負担を軽減でき、ハンドルを少し大きく動かして第2柔軟領域に至ると、弾性体のばね特性が大きくなってランマー本体を操作し易くなる。直ぐに規制領域に至ってランマー本体の振動が直接伝わるようなことがなくなり、操作性と防振性とを両立できる。
【0027】
尚、このようなスリットは、上記弾性体の部分ごとに4箇所形成するのが好ましい。そうすれば、上下方向や左右方向、捩り方向にもその作用効果を効率よく発揮させることができ、ばね特性の変化量も大きくなるため効果的である。
【0028】
また、そのスリットの横断面は、I字形状や、弾性体の中心側から外周側に拡がるV字形状、弾性体の中心側から外周側に拡がるY字形状とすることができる。
【0029】
そうすれば、ばね特性の立ち上がり状態や変化量、弾性体の柔らかさなど、弾性体のばね特性を自在に調整できる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、従来よりも弾性体のばね特性をより活かすことができるので、防振性、操作性、負荷耐久性に優れた性能を発揮する防振装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0032】
本発明の防振装置1は、例えば、ランマーや削岩機、ハンマーなどの振動工具に適している。本実施形態ではランマーを例に説明する。
【0033】
図1は、そのランマーの概略図を示しており、ランマーは、エンジンによって上下方向に変位駆動する衝撃板2を備えたランマー本体3(振動体)と、作業員が手にして操作し易いように金属パイプで構成されたハンドル4(操作体)とを備えている。
【0034】
本実施形態の防振装置1は、このランマー本体3とハンドル4との間に介設されて、左右一対の形で用いられる。
【0035】
図2は、その防振装置1の全体の概略を示している。防振装置1は、高さの小さい略円柱状の外観形状をしていて、ゴム弾性体5(図中、想像線で示す)と、各々に4つの規制体部6,・・,6が設けられた一対の支持体7,7(図中、実線で示す)とを備え、これら一対の支持体7,7が、規制体部6,・・,6の設けられた内面側を向かい合わせにした非接触の状態でゴム弾性体5に埋設されている。符号Aは、防振装置1の回動軸ともなる軸線を示しており、この軸線Aは負荷が加わると歪む場合があるため、以下、特に言及しない限り、この無負荷の状態の防振装置1について詳しく説明する。
【0036】
一対の支持体7,7は、部材の共通化を図るために、同形状をした2つの金属部材で構成されており、図3に示すように、各支持体7は一方向に長い板状の基板部8と、その長手方向の各端部の両側から同じ内面側に立設された4つの規制体部6,・・,6とを備えている。
【0037】
基板部8の主面の略中央には、軸線Aが直交して通る中心S(捩れ中心Sともいう)が位置している。基板部8の長手方向の両端部寄りには、それぞれボルト孔10,10が2箇所、貫通形成されており、又、基板部8の長手方向の両側部には、補強用の鍔部11,・・,11が張り出すように形成されている。
【0038】
各支持体7は、基板部8の捩れ中心Sに対して点対称に構成されていて、各規制体部6,・・,6や、ボルト孔10,10等は捩れ中心Sを通る軸線Aまわりに180度回転しても同じになるように配置されている。
【0039】
各規制体部6は、主面が略長方形の板形状をしていて、基板部8の長手方向の各端部において、その両側縁から一方の面(内面)側に屈曲して形成されている。すなわち、各支持体7はプレス加工をするだけで形成できるように工夫されている。
【0040】
これら4つの規制体部6,・・,6はまた、軸線A方向から見て捩れ中心S周りにX字状に配置されている。詳しくは、各規制体部6は、その基板部8の他方の面(外面)側の主面9(規制面9ともいう)が捩れ中心Sに対してその周方向に臨むように、基板部8の長手方向に延びる長手方向線Nから約40度傾斜した状態で基板部8の内面から略直交して延びるように立設されている。
【0041】
そして、これら規制体部6,・・,6のうち、長手方向の一端部の両側に位置する2つの規制体部6,6の最遠隔部位間、つまり、これら2つの規制体部6,6の規制面9におけるその捩れ中心Sの外周側の一側端9a(外側端9aともいう)間の間隔L1は、長手方向の一側部の両端に位置する2つの規制体部6,6の最近接部位間、つまり、これら2つの規制体部6,6の規制面9におけるその捩れ中心S側の一側端9b(内側端9bともいう)間の間隔L2よりも大きく設定されている。
【0042】
かかる形状の2つの支持体7,7は、図4に詳しく示すように、各々の基板部8,8が略平行に対向するとともに、その長手方向が十字状に略直交し、各々の規制体部6,・・,6が互い違いになった状態で加硫一体成形によりゴム弾性体5中に配設されている。
【0043】
このとき、一対の支持体7,7は接触することなく、一方の支持体7の各規制体部6,・・,6は、隣接する他方の支持体7の各規制体部6,・・,6と十分に離れて位置し、各々の規制面9,9は、捩れ中心Sを通る軸線Aに対し、その周り方向に対面している。
【0044】
そして、詳細は後述するが、防振装置1に捩れ負荷やせん断負荷が加わる場合には、一方の支持体7の2つの規制体部6,6が、これら規制体部と各々隣接する他方の支持体7の2つの規制体部6,6とゴム弾性体5を介して間接的に力を作用し合う。
【0045】
例えば、過度なせん断負荷が加わって、他方の支持体7に対して一方の支持体7がその長手方向にスライド変位すると、他方の支持体7に近づく2つの規制体部6,6の各規制面9の外側端9bの部分が、各々隣接する他方の支持体7の2つの規制体部6,6の各規制面9の内側端9aの部分とそれぞれゴム弾性体5を介して係合し、両支持体7,7が抜け外れないようになっている。
【0046】
また、各支持体7の基板部8の外面は、円柱形状をしたゴム弾性体5の両端面と略面一となるように構成されており、その各端面のゴム弾性体5の部分には、比較的大径の円筒形状をした2つのボルト装着穴12,12が開口している。これらボルト装着穴12,12は、、基板部8の両側の鍔部11,・・,11に隣接する部位から他方の支持体7の基板部8の内面に突き当たるまで延びていて、これらボルト装着穴12の底部中央には先のボルト孔10が開口している。
【0047】
更に、ゴム弾性体5には、その外周を切り欠いたようなスリット14が周方向の4箇所に等間隔で形成されている。
【0048】
詳しくは、一方の支持体7の各規制体部6と、隣接する他方の支持体7の各規制体部6との間のゴム弾性体5の部分4箇所に、各規制体部6が延びる方向に延びるスリット14,・・,14が一つずつ形成されている。スリット14の横断面はゴム弾性体5の中心側から外周側に拡がるV字形状をしていて、そのゴム弾性体5の外周側及び端面側はいずれも開放されている。また、ゴム弾性体5が変形し易いように、その中心側に位置する各スリット14の基端部14aは、横断面が略Ω字形状をした丸溝となっている。
【0049】
このように構成された一対の防振装置1,1は、先の図1に示したように、各支持体7の基板部8の捩れ中心Sを通る軸線Aをランマー本体3の側面に向けた状態で、このボルト装着穴12及びボルト孔10を介してボルトでランマー本体3とハンドル4とに締結固定される。
【0050】
次にかかる形態の防振装置1の動作を、図5を参照しながら説明する。
【0051】
図5は、ランマーに取り付けられた防振装置1をその軸線A方向から見た状態を示している。手前の支持体7は上下方向に延びるようにハンドル4に締結され、奥の支持体7は前後方向に延びるようにランマー本体3に締結されている。
【0052】
同図の(a)は、ランマー本体3の上下振動やハンドル4の上下動によって防振装置1に捩り負荷が加わった状態を例示しており、このように防振装置1に捩り負荷が加わると、矢印線が示すように、一対の支持体7,7はそれぞれ捩れ中心Sを通る軸線A周りに相対的に回動変位し、各支持体7の隣接する規制体部6,6どうしが、ゴム弾性体5を介して力を作用し合う。
【0053】
このとき、捩り負荷が比較的小さい領域では、スリット14の作用でゴム弾性体5は柔らかなばね特性を発揮する(第1柔軟領域)。そして、更に捩り負荷が大きくなると、2箇所でスリット14が潰れてその両側の弾性体どうしが接するようになり、第1柔軟領域よりも大きなばね特性が発揮される(第2柔軟領域)。
【0054】
従って、ランマー本体3の上下振動による捩り負荷が第1柔軟領域内に収まるように設定しておけば、通常の使用時には柔らかなばね特性を発揮させることができるので防振性に優れる。そして、ハンドル4を少し上下に動かせば、ばね特性が大きくなって容易にランマー本体3を傾動させることができるので、操作性にも優れる。
【0055】
また、同図の(b)は、ハンドル4の前後動により、防振装置1にせん断負荷が加わった状態を例示している。この場合でも、捩り負荷と同様に、ゴム弾性体5によって第1柔軟領域と第2柔軟領域の2つのばね特性が発揮されるため、ランマー本体3の前後移動も容易に行うことができる。尚、この場合、支持体7,7の変位量に応じて捩れ中心S,Sの位置ずれが生じる。
【0056】
その際、そのせん断負荷が加わって引っ込む側(図中右側)に位置する各支持体7の規制体部6,6は、いずれも突き出る側に向かってハ字状に先窄まりに傾斜した状態で対向しているため、引っ込む支持体7は、これら規制体部6,・・,6によってゴム弾性体5の中心側に向かうようにスライド案内される。従って、ゴム弾性体5に余計な歪みを発生させずに確実かつ効率的に力を作用させることができる。
【0057】
一方、同図の(c)は、ハンドル4を引っ掛けてランマー本体3を吊り上げた状態を例示している。このように防振装置1に過度な負荷が加わると、ゴム弾性体5が潰れてその弾性が機能しなくなり、規制体部6,6どうしが実質的に直接力を作用し合うような状態となる(規制領域)。
【0058】
すなわち、奥の支持体7の下側2つの規制体部6,6が、手前の支持体7の下側2つの規制体部6,6に受け止められるため、支持体7が抜け外れてランマー本体3が落下することがなく、安心して作業できるとともにゴム弾性体5の損傷も回避できる。
【0059】
この防振装置1では、その外周側に作用部位が位置して比較的寸法に余裕があるため、使用状況に応じて作用部位を様々な形態に変更することができる。
【0060】
例えば、図6は、スリット14の拡がり度合いを変更した場合を示しており、かかる変更によりゴム弾性体5のばね特性の立ち上がりを調整することができる。
【0061】
すなわち、同図の(a)に示すように、スリット14の拡がり度合いをh1からh2、h3へと順に大きくしていくと、スリット14の両側のゴム弾性体5,5の接触するタイミングが遅くなっていって、同図の(b)のばね線図に示すように、ばね特性が大きく立ち上がる点、つまり、第1柔軟領域から第2柔軟領域に切り替わるタイミングを遅らすことができる。
【0062】
また、図7は、スリット14の形状を変更した場合を示している。例えば同図の(a)は、スリット14の横断面をI字形状としたものである。この形状では、V字形状に比べてスリット14の両側のゴム弾性体5,5が近接していて両者が早くに接触するため、第2柔軟領域の割合を大きくすることができる。
【0063】
一方、同図の(b)はスリット14の無い場合であり、この場合、ゴム弾性体5の素材自体のばね特性を活かして、比較的大きなばね特性を連続的に発揮させることができる。
【0064】
同図の(c)は、スリット14の深さ寸法を小さくしたものである。例えば、図8の(a)に示すように、スリット14の深さ寸法をf1からf2、f3へと順に小さくしていくと、スリット14の影響が小さくなっていって、同図の(b)のばね線図に示すように、初期のばね定数、つまり、第1柔軟領域におけるゴム弾性体5のばね特性を小さくすることができる。
【0065】
図示はしないが、これら形状を組み合わせて、スリット14の横断面をゴム弾性体5の中心側から拡がるY字形状にすることもできる。そうすれば、よりいっそう多様にばね特性を調整できる。
【0066】
以上説明したように、本発明の防振装置1によれば、ゴム弾性体5のばね特性を十分に活用することができるので、防振性、操作性、負荷耐久性に優れた機能を発揮させることができる。
【0067】
本発明にかかる防振装置1は、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。すなわち、弾性体の素材は、ゴムに限らずプラスチック樹脂であってもよい。弾性体の形状も、円柱形状に限らず、例えば断面が多角形をした角柱形状であってもよい。支持体7の形状も必要に応じて適宜変更できる。例えば、基板部8と規制体部6とを別体に構成してもよいし、基板部8を帯板形状とし、その長手方向両端の両側縁から外方に突出する突出片を各々平行に屈曲して、その基部側を捻って先端部に規制体部6を形成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ランマーの全体を示す概略図である。
【図2】本発明の防振装置の概略図である。
【図3】支持体を示す図である。(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は右側側面図である。
【図4】本発明の防振装置を示す図である。(b)は(a)のX−X線断面図、(c)は(a)のY−Y線断面図である。
【図5】本発明の防振装置の動作を説明するための図である。(a)は捩れ負荷が加わった状態、(b)は前後方向にせん断負荷が加わった状態、(c)は上下方向にせん断負荷が加わった状態を示している。
【図6】スリットの形状とばね特性を説明するための図である。(a)はスリットの各形状を、(b)は(a)の各スリットのばね線図を示している。
【図7】本発明の防振装置の弾性体の変形例を示す図である。
【図8】スリットの形状とばね特性を説明するための図である。(a)はスリットの各形状を、(b)は(a)の各スリットのばね線図を示している。
【符号の説明】
【0069】
1 防振装置
3 ランマー本体(振動体)
4 ハンドル(操作体)
5 ゴム弾性体(弾性体)
6 規制体部
7 支持体
8 基板部
14 スリット
L1 最遠隔部位間の寸法
L2 最近接部位間の寸法
S 中心
A 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が振動体に取り付けられ、他方が操作体に取り付けられる一対の支持体が弾性体に埋設された防振装置であって、
上記一対の支持体のそれぞれが、振動体と操作体とに各々固定される一方向に長い基板部と、その長手方向の各端部の両側から同じ面側に延びるように立設された4つの規制体部と、を備え、
各々の基板部が上記規制体部が延びる側で対面し、これら規制体部が接触しないように上記一対の支持体が十字状に配設されていて、
各支持体が各々の基板部の長手方向へ相対的にスライド変位した場合に、一方の支持体の2つの規制体部が、この2つの規制体部と各々隣接する他方の支持体の2つの規制体部とそれぞれ弾性体を介して係合し、両支持体が抜け外れ不能になることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
請求項1に記載の防振装置において、
一方の支持体における長手方向の少なくとも一端部の両側に位置する2つの規制体部の最遠隔部位間の間隔が、この2つの規制体部と各々隣接する他方の支持体の2つの規制体部の最近接部位間の間隔よりも大きく設定されていることを特徴とする防振装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の防振装置において、
上記一対の支持体のそれぞれは同形状の金属部材からなり、
上記各規制体部は、各基板部の長手方向の各端部の両側縁から屈曲して形成された板形状をしていて、
各基板部の中心を通る軸線の周り方向に隣接する両支持体の規制体部どうしが、その周り方向に対面していることを特徴とする防振装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の防振装置において、
一方の支持体の規制体部と、隣接する他方の支持体の規制体部との間の弾性体の部分に、これら規制体部が延びる方向に延びるスリットが形成されていることを特徴とする防振装置。
【請求項5】
請求項4に記載の防振装置において、
上記スリットの横断面がI字形状をしていることを特徴とする防振装置。
【請求項6】
請求項4に記載の防振装置において、
上記スリットの横断面が、弾性体の中心側から外周側に拡がるV字形状をしていることを特徴とする防振装置。
【請求項7】
請求項4に記載の防振装置において、
上記スリットの横断面が、弾性体の中心側から外周側に拡がるY字形状をしていることを特徴とする防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−180243(P2009−180243A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17455(P2008−17455)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000201869)倉敷化工株式会社 (282)
【Fターム(参考)】