説明

防水床構造

【課題】隣接する防水床部材を接合する構造に関し、作業が簡単で、必要部材点数を少なくできる手段を提供する。
【解決手段】隣接する防水床部材1,2の接合側端縁部を突き合わせ、防水床部材1,2の接合部を覆うように樹脂シート20を配置したのち、この樹脂シート20に光を照射する。光照射により樹脂シート20が硬化すると共に防水床部材1,2に対し接着性を発揮し、接合部を水密的に封止すると同時に堅固な接合構造を構築する。光照射だけで水密性に優れた接合構造が得られるから、きわめて作業性が良い。ビスも接着剤も不要であるから必要部品点数を少なくできる。樹脂シート20に充分な可撓性・柔軟性を持たせられるから、接合部の周囲に段差や凹凸が有ったとしても、漏水を起こすおそれのないシール構造を確実に形成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水床を施工するために複数の防水床部材を接合する構造に関するものであって、詳しくは、簡単な作業により、水密性に優れた接合構造を構築することを目的とする。
【背景技術】
【0002】
複数の床部材を接合して防水床を構築する技術は例えば特許文献1に記載されている。同文献1では、洗い場部及び浴槽載置部を構成する複数の分割片をシール材を間に挟んで重ね合わせたのち、重ね合わせた部分を貫通するビスで止めつけることにより、防水床を施工している。
【特許文献1】特開平8−120724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載された前記防水床にあっては、分割片どうしを連結するのにビスの締め付け作業を要し、作業性が悪い。また連結構造の構築には、ビスと、間に挟むシール材とが必須であり、現場への携行部材の個数が多いという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明が、前記従来の問題点を解決するために採用した防水床部材の連結構造の特徴とするところは、請求項1に記載の如く、隣接する防水床部材がそれぞれの端縁部を当接又は近接させて配設し、当該防水床部材それぞれの端縁部を、それらの上に跨って配置した光硬化性の樹脂シートによって水密的に連結したことことにある。
【0005】
前記において防水床部材は、FRP製が代表的であるが、金属製・合成樹脂製とすることも考えられる。この防水床部材は、高さ調節が可能な架台に載設されることが多いが、架台と一体に製作される場合もある。光硬化性の樹脂シートとは、反応前は適度の可撓性・柔軟性を持ち、光照射による硬化反応によって防水床部材に接着すると共に充分な強度を発揮するものであり、例えば、不飽和ポリエステル・アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル等の合成樹脂に光重合開始剤を配合したものを主体とするFRPシートなどが挙げられる。上記において、重合反応を開始させる光の種類(波長)は、紫外線又は可視光線が一般的であり、光源としては太陽光(自然光)・各種ランプ・水銀灯・レーザー発生器等が考えられる。
【0006】
本発明は、防水床部材の接合構造において、請求項2に記載の如く、隣接する防水床部材を所定距離を置いて配設し、当該防水床部材それぞれの端縁部間に接合材を架け渡し、前記防水床部材それぞれと前記接合材とを、それらの上に跨って配置した光硬化性の樹脂シートによって水密的に連結する構造を採用することができる。
【0007】
前記接合構造において、請求項3に記載の如く、前記防水床部材の端縁部間であって、前記接合材が配置されていない空間部分が形成される場合、当該空間部分を前記樹脂シートで覆うことも考えられる。
【0008】
さらに本発明は、請求項4に記載の如く、隣接する防水床部材それぞれにおける接合側の端縁部に段部を形成し、当該段部間に接合材を架け渡し、前記防水床部材それぞれと前記接合材とを、それらの上に跨って配置した光硬化性の樹脂シートによって水密的に連結することを特徴とする防水床部材の接合構造を提供する。
【0009】
この場合、請求項5に記載の如く、前記防水床部材の表面と、前記接合材の表面とを、実質的に面一となるように設定するとよい。
【0010】
ところで本発明は、請求項6に記載の如く、隣接する防水床部材を接合する構造において、一方の防水床部材の上面に形成した平坦な受載部の上に、他方の防水床部材の端縁部を重ね合わせ、前記防水床部材の重ね合わせ領域を、光硬化性の樹脂シートによって水密的に被覆することを特徴とする防水床部材の接合構造を提供するものでもある。
【0011】
この場合において、請求項7に記載の如く、前記重ね合わせ領域において、上側に位置する防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に垂下部を形成し、当該垂下部を下側に位置する防水床部材の前記受載部に当接させてもよい。さらに加えて、請求項8に記載の如く、前記重ね合わせ領域において、下側に位置する防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に、上側に位置する防水床部材の裏面へ向かう起立部を形成してもよい。
【0012】
さらにまた本発明は、請求項9に記載の如く、隣接する防水床部材を接合するための構造において、一方の防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に上方へ突出する起立段部を形成し、該起立段部の上面に形成した平坦な受載部の上に、他方の防水床部材を重ね合わせ、前記防水床部材の重ね合わせ領域を、光硬化性の樹脂シートによって水密的に被覆することを特徴とする防水床部材の接合構造を提供する。
【0013】
この場合において、請求項10に記載の如く、前記重ね合わせ領域において、上側に位置する防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に垂下部を形成し、当該垂下部を下側に位置する防水床部材の上面に当接することが可能である。
【0014】
なお前記請求項6乃至10に記載した本発明に係る防水床部材の接合構造において、前記防水床部材の重ね合わせ領域に、上側に位置する防水床部材から下側に位置する防水床部材へ向かって下り勾配となる方向の排水勾配を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の防水床部材の連結構造によれば、隣接させて配設した防水床部材の端縁部上に跨って配置した光硬化性の樹脂シートに光照射することにより、この樹脂シートが防水床部材に固着すると共に硬化して、防水床部材どうしを水密的に連結する。従ってビスや接着剤が不要なので、接合構造の構築に必要な部材点数が少なくなり、その結果、施工現場への携行部片点数を減らすことが出来る。また、ビス止め作業や接着剤塗布作業の代わりに、光照射作業を行うだけでよいから、施工能率が向上する。さらに、樹脂シートは厚みを薄くできるので、接合部に大きい段差が生じにくく、防水床の表面を平坦にできる。従って、見栄えのよい防水床を構築でき、表層材や仕上げ材を敷設する場合は、その作業が容易になる。なお、樹脂シートは可撓性・柔軟性を備えるものにできるから、隣接する防水床部材の間に段差が有ったとしても、接合部を確実にシールすることが可能である。
【0016】
請求項2に記載の防水床部材の連結構造は、所定距離を置いて配設した防水床部材の間に接合材を架け渡し、それらの上に跨って配置した光硬化性の樹脂シートで水密的に連結するものであるから、防水床部材の間が離れていても接合が可能である。また、樹脂シートは可撓性を備えるものにできるから、防水床部材と接合材との間に段差が有ったとしても、水密な連結が可能である。さらに接合材の幅寸法を調整することによって、施工しようとする防水床の寸法を容易に変更できる。すなわち、充分な幅寸法を有する接合材を準備し、施工現場にてこの接合材を所要幅に切断するだけで、設置箇所の大きさに合わせた最適寸法の防水床を容易に構築することができる。また必要に応じ、異なる幅寸法を有する接合材を複数種類用意して、防水床の寸法変更に対応することも可能である。さらに、接合部分が接合材によって補強されるから、耐荷重強度の大きい接合構造が得られる。
【0017】
請求項3に記載した接合構造によれば、防水床部材の端縁部間であって接合材が配置されていない空間部分を樹脂シートで覆うので、例えば防水床部材を所定距離を置いて配設したときに、側縁部に形成した壁パネル載置部に生じる隙間など、特に強度を必要としない空間部分を別部材を用いることなく水密的に閉塞することができる。
【0018】
請求項4に記載した接合構造によれば、防水床部材における端縁部に形成した段部により、接合部の強度が向上するから変形が生じにくくなり、それ故、耐荷重強度及び水密性に優れた接合構造が得られる。
【0019】
請求項5に記載の接合構造によれば、防水床部材と接合材の表面を実質的に面一に設定したので、防水床の表面を平坦にでき、見栄えの良い床を提供できる。また、防水床の上に表層材や仕上げ材を敷設するのも容易となる。
【0020】
請求項6に記載の接合構造によれば、一方の防水床部材の上面に形成した平坦な受載部の上に、他方の防水床部材の端縁部を重ね合わせるから、重ね合わせ量の調節幅が大きくなり、従って、設置する防水床の大きい寸法変更にも容易に対処できる。また、防水床部材の重ね合わせ領域を光硬化性の樹脂シートによって水密的に被覆するので、ビスも接着剤も不要となり、その結果、部材点数が減少し、施工作業が容易になる。
【0021】
請求項7に記載の接合構造によれば、前記重ね合わせ領域において上側に位置する防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に垂下部を形成することにより、当該部分の剛性が向上するので、変形が生じにくくなり、シール性が確実になる。
【0022】
請求項8に記載の接合構造によれば、前記重ね合わせ領域において下側に位置する防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に形成した起立部が、重ね合わせ領域に浸入した水を堰き止めるから、防水床裏面への水の漏出をより確実に防止できる。
【0023】
請求項9に記載の接合構造によれば、一方の防水床部材に上方へ突出する起立段部を形成し、該起立段部の上面に形成した平坦な受載部の上に、他方の防水床部材を重ね合わせるので、防水床部材どうしの接合面の位置が、下側の防水床部材の主要部よりも高い位置になる。従って、水が重ね合わせ領域に浸入したり漏出したりしにくくなるから、シール性能が向上する。
【0024】
前記接合構造において、請求項10に記載の如く、上側に位置する防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に形成した垂下部を下側に位置する防水床部材の上面に当接させることにより、垂下部形成による剛性向上と、シール部分が二箇所になることによるシール性能の一層の確実化とが得られる。
【0025】
請求項11に記載の接合構造によれば、前記重ね合わせ領域に排水勾配を設けるので、漏水防止効果が向上する。また、重ね合わせ領域のシール性能を損なうことなく、防水床部材の重ね合わせ量を変更して、防水床の寸法変更を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[第1の実施形態]
図1に、本発明に係る防水床部材の接合構造の一実施形態を示す。本発明が適用されるのは、例えば浴室・トイレ・洗面所・シャワー室など、室内で水を使用することを想定した箇所の床を、複数の防水床部材を接合して施工する場合である。本例の防水床Fは、二つの防水床部材1,2、各防水床部材1,2を支持する架台4、防水床部材1,2の上に配置される表層材Pから構成され、必要に応じ、美観性・耐摩耗性・表面強度その他の特性を向上させる目的で、表層材Pの上に、タイルTや樹脂シート・セラミック板等の仕上げ材を配置してもよい。
【0027】
隣接して配置した二つの防水床部材1,2は、耐水性と不透水性とを持つ材質、例えばFRP・金属・合成樹脂で製作され、本例では端縁部を突き合わせて接合される。上記防水床部材1,2を支持する架台4は、ボルト・ナット等の組み合わせ等よりなる高さ調節脚5で高さ調節可能になされており、所望に応じ、防水床部材1,2に排水勾配を付与することができる。なお本例では、隣接する防水床部材1,2がそれぞれ異なる架台4,4で支持され、この架台4,4を連結部材10で連結して一体化する構成としたが、二つの防水床部材1,2を共通の架台で支持することも妨げない。さらに防水床部材1,2と架台4とは、一体形成される場合もある。
【0028】
前記防水床部材1,2がFRPの場合、その上にタイルTを接着剤で直接貼り付けるのは困難がことが多いため、タイルTとの接着性に優れた表層材Pを間に配置することが望ましい。このような表層材Pには、例えば、比較的曲げ強度の大きい補強板と、比較的比重が小さく且つ断熱性に優れた発泡板とを接合した板状材(例えばタイルクリート[商品名])が用いられる。タイルクリートでは、上記補強板が、セメントやモルタル等からなる芯材の表面層にガラス繊維ネットや合成樹脂メッシュシートを埋設して強化した板状材であり、上記発泡板が、ポリスチレン等から成る発泡プラスチック層の表面にガラス繊維ネットで補強したポリマーセメント層を形成したものから成っており、優れた耐水性及び耐荷重強度を有している。なお、複数のタイルクリート等の表層材Pを並べて配置する場合、表層材Pの接合部には、コーキング材を施すか、又は目止め材を含浸させたメッシュシート30を貼り付けることで隙間を閉塞する。
【0029】
本発明の特色は、隣接する防水床部材1,2を、端縁部の上に跨って配置した光硬化性の樹脂シート20によって連結したことにある。このような樹脂シート20には、プラスチック繊維やガラス繊維を補強材として混合した合成樹脂材料に、光重合開始剤を配合してシート状に成形したものが挙げられる。合成樹脂材料としては、不飽和ポリエステル・アクリル酸エステル・メタクリル酸エステル等が用いられる。かかる樹脂シート20は重合反応前の状態であるため、塑性変形が容易であり、それ故、優れた可撓性・柔軟性を示す。
【0030】
本発明に基づき防水床部材1,2を接合するには、図1に示す如く、隣接する防水床部材1,2の接合側端縁部を突き合わせ、必要に応じ、各防水床部材1,2を支持する架台4,4を連結部材10で連結する。そして、防水床部材1,2の接合部を覆うように樹脂シート20を配置したのち、この樹脂シート20を自然光(太陽光)に晒すか、適宜光源を用いて光を照射する。照射する光の種類(波長)は、通常、紫外線または可視光線であり、樹脂シート20の合成樹脂の種類や光重合開始剤の種類に基づいて最適のものが選択される。光照射されることにより、樹脂シート20の合成樹脂材料が、光重合開始剤の作用で重合反応を開始し硬化する。このとき、樹脂シート20は防水床部材1,2に対し接着性を発揮する。従って硬化反応が完了した樹脂シート20は、防水床部材1,2に対し強固に固定される結果、接合部を水密的に封止して優れたシール性能を発揮する。また、硬化した樹脂シート20は、防水床部材1,2を堅固に接合する構造を構築する。
【0031】
このように本発明によれば、樹脂シート20を防水床部材1,2の接合部上に配置し光照射するだけで水密性に優れた接合構造が得られるから、きわめて作業性が良い。樹脂シート20を固定するのにビスも接着剤も不要であるから、必要部品点数を少なくできる。樹脂シート20に充分な可撓性・柔軟性を持たせられるから、接合部の周囲に段差や凹凸が有ったとしても、漏水を起こすおそれのないシール構造を確実に形成できる。樹脂シート20の厚みを薄くできるので、接合部にほとんど段差を生じさせることがなく、見栄えの良い平坦な床面を設けられる。また表層材PやタイルT等の仕上げ材を敷設する場合、作業が容易である、等の多くの利点が得られる。
【0032】
[第2の実施形態]
図2に示す実施形態は、隣接する防水床部材1,2の端縁間に接合材21を架け渡し、この接合材21の上に光硬化性の樹脂シート20を配置した接合構造を示すものである。接合材21の材質は防水床部材1,2と共通でよいが、異なる材質でも差し支えない。
【0033】
本例では、図2(B)に示す如く、防水床部材1,2それぞれの接合側端縁部に、接合材21の厚みにほぼ等しい段差を有する段部22,22を形成した。これにより、接合材21を段部22,22上に配置したとき、防水床部材1,2の表面と接合材21の表面とを実質的に面一にできる。
【0034】
本例の接合構造は、防水床部材1,2を所定間隔を置いて配置し、それぞれの端縁部に形成した段部22,22間に接合材21を架け渡すよう配置する。このとき必要ならば、接合材21を、ビスや接着剤で防水床部材1,2へ固定してもよい。また接合材21と段部22との隙間をコーキング材で充填することも考えられる。引き続き、接合材21の上に光硬化性の樹脂シート20を配置するが、この樹脂シート20の寸法及び配置要領は、図2(B)に示すように、幅広の樹脂シート20で接合材21の上面全体を覆う態様と、図2(C)に示すように、幅の狭い樹脂シート20で接合材21と防水床部材1,2との境界部近傍だけを覆う態様とが考えられる。前者は作業工数が少なくて済み、後者は樹脂シート20の使用量が少なくて済むという利点がある。しかるのち光照射して、樹脂シート20を硬化させると同時に防水床部材1,2及び接合材21の表面に固着させる。これにより防水床部材1,2と接合材21との接合部が樹脂シート20で水密的に閉止された接合構造が得られる。
【0035】
かかる構成の接合構造は、隣接する防水床部材1,2間に架け渡した接合材21の幅寸法を適宜調整することにより、防水床の施工寸法を容易に変更できる。すなわち、幅寸法の異なる接合材21を使用することにより、あるいは現場で切断することにより、防水床を所望する寸法に仕上げることが可能である。
【0036】
[第3の実施形態]
図3は、隣接する防水床部材1,2の接合部に、凸型の接合材21を架け渡し、この接合材21の上にエプロン等の起立部材24を立設する場合の実施形態を示すものである。接合材21の上に配置する樹脂シート20には柔軟性を持たせることができるから、接合材21の形状に合わせて変形させるのが容易である。従って本例のように接合材21の形状が多少複雑でも、樹脂シート20を接合材21及び防水床部材1,2の表面に隙間無く密接させ、これらを一体に接合することが可能である。
【0037】
[第4の実施形態]
図4及び図5に例示する如く、隣接する防水床部材1,2を所定間隔を置いて配置した場合、接合材21で覆われない空間部分26が間に形成されることがある。例えば、防水床部材1,2における接合側端縁部を除く周縁部に、壁パネル等を立設するための載置部25,27を形成した場合、この載置部25,27の途中に空間部分26が形成される。しかるに本発明に係る樹脂シート20は柔軟性を持たせられるから、防水床部材1,2の周縁部形状に合わせて容易に変形させることができる。従って、樹脂シート20の長さを充分に長くしておけば、上記空間部分26を樹脂シート20で水密的に被覆することが可能である。なお、壁パネルの載置部25,27は壁パネルを立て込むことができればよいから、それほど強度が要求されない。それ故、上記空間部分26に接合材21など他の補強部材が無くても、硬化させた樹脂シート20のみで必要な強度が得られる。
【0038】
[第5の実施形態]
図6は、隣接する防水床部材1,2を、端縁部を重ね合わせて接合する場合の実施形態を示すものである。本例では、防水床部材1,2を支持する架台4はボルト・ナット等の組み合わせ等よりなる高さ調節脚5で高さ調節可能になされ、上側の防水床部材1から下側の防水床部材2へ向かって下り勾配となる排水勾配が付与されている。なお下側の防水床部材2を支持する架台4には、上側の防水床部材1の下面に達する張出部4aが設けられている。また、上下の防水床部材1,2に段差を有するので、重ね合わせ領域の近傍において、下側の防水床部材2上に補強材Qを配置し、その上面が上側の防水床部材1の表面と実質的に同一面レベルとなるように設定した。補強材Qを配設したことにより、表層材P又はタイルT等の仕上げ材の敷設が容易になる。ここで補強材Qとは、耐水性と耐荷重強度とを備えるものであればよく、表層材Pと同じ材質とするほか、FRP・金属・合成樹脂等で製作したものであってもよい。
【0039】
防水床部材1,2の接合構造は、図7に示すとおりである。下側の防水床部材2における端縁に形成した起立部2a上に、上側の防水床部材1の下面を重ね合わせる。他方、上側の防水床部材1における端縁に垂下部1aを形成し、この垂下部1aの下端を、下側の防水床部材2の上面に形成した平坦な受載部40に当接させる。また、下側の防水床部材2を支持する架台張出部4a上に支持部6を設け、この支持部6を上側の防水床部材1の下面に接着剤9で固定する。そして、上下の防水床部材1,2の重ね合わせ領域を覆うように光硬化性の樹脂シート20を配置し、これに光照射して硬化させる。
【0040】
かかる構成により、防水床部材1,2の接合部は、樹脂シート20により水密的に閉止されるので、漏水が確実に防水される。また防水床部材1,2には、硬化させた樹脂シート20が固着するから、強固な接合構造が得られる。下側の防水床部材2の受載部40は平坦であるから、重ね合わせ量の調整代を大きくとることができる。従って、現場における防水床の寸法変更に対処するのが容易である。
【0041】
しかも上記に加えて本実施例では、防水床部材1,2の重ね合わせ領域に排水勾配を付与したから、仮に樹脂シート20が破損したとしても、接合部Jに水が浸入しにくくなっている。その上、万一、接合部Jを水が通過したとしても、起立部2aがその水を堰き止めるから、防水床F外部への漏水防止が確実になっている。さらに、上側の防水床部材1に垂下部1aを形成し、下側の防水床部材2に起立部2aを形成したことにより、重ね合わせ領域Rの曲げ強度が向上しているから変形が生じにくく、よってシール性能の維持が容易である。
【0042】
[第6の実施形態]
隣接する2つの防水床部材1,2の端縁部を重ね合わせて接合する場合、図8〜10に示すような接合部Jの構造が考えられる。図8(A)は最も基本的な構成を示すものであり、上下の防水床部材1,2の端縁部を重ね合わせ、重ね合わせ領域を覆うように配置した光硬化性樹脂シート20で両者を接合したものである。本例の如く防水床部材1,2それぞれの平坦な端部を単に重ね合わせただけの接合構造であっても、光硬化性樹脂シート20によって優れたシール性能を発揮する。なお必要に応じて、防水床部材1,2の間に接着剤Sを挟んだり、両者をビスtで止め付けたりしてもよい。
【0043】
なお本例でも、上側の防水床部材1から下側の防水床部材2へ向かう排水勾配を設け、接合部Jに水が浸入しにくくなるようにした。これにより、重ね合わせ寸法を増減させても、接合部Jの排水勾配が維持される構造なので、防水床Fの寸法変更は、シール性能に悪影響を及ぼさない。
【0044】
前記接合部Jの構造は、図8(B)に示すように、上側の防水床部材1における端縁に垂下部1aを形成し、この垂下部1aの下端を、下側の防水床部材2上面に当接させ、両者の重ね合わせ領域を樹脂シート20で覆う構成も可能である。かかる構成によれば、垂下部1aにより上側の防水床部材1の曲げ強度が増大するから、変形が生じにくくなるので、シール性が向上するという利点が得られる。さらに同図(C)に示す如く、下側の防水床部材2の端縁に起立部2aを形成すれば、曲げ強度が向上すると共に、浸水をせき止める作用を営むので、漏水防止効果がより高まる。
【0045】
[第7の実施形態]
図9(A)は、下側の防水床部材2の端縁又は端縁近傍に上方へ突出する起立段部2bを形成し、該起立段部2bの上面に形成した平坦な受載部40の上に、上側となる防水床部材1を重ね合わせ、両者の重ね合わせ領域を光硬化性樹脂シート20で覆ったものである。この場合も、必要に応じ、間にシール部材Sを挟んだり、ネジt等で固定したりすることを併用してもよい。かかる接合部Jの構造によれば、防水床部材1,2の接合面の位置が、下側の防水床部材2の主要面部より高い位置になる。つまり、起立段部2bが堤防の機能を果たすから、水が接合部Jに浸入しにくくなるという効果を発揮する。なお起立段部2bの構造は、図9(A)のように防水床部材2を折曲形成したごときものでも、同図(B)のように防水床部材2の端縁部の厚みを変えたものであってもよい。
【0046】
[第8の実施形態]
上記の形態に加え、図10(A)に示す如く、上側の防水床部材1における端縁に垂下部1aを形成し、この垂下部1aの下端を下側の防水床部材2に当接させ、両者の重ね合わせ領域を樹脂シート20で被覆する構造を採用することも可能である。かかる構造は、接合部Jのシール箇所が2つになるからシール性が向上する。垂下部1aによる上側防水床部材1の端縁の剛性が向上することにより、変形防止効果も併せて得られる。なお起立段部2bの構造は、前記と同様、図10(B)の如く、防水床部材2の端縁部の厚みを変えて形成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施形態を示すものであって、図(A)は防水床部材と表層材とタイルとを分離して示す正面図、図(B)は防水床部材の接合部を拡大して示す正面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態を示すものであって、図(A)は防水床部材と表層材とタイルとを分離して示す正面図、図(B)は防水床部材の接合部を拡大して示す、図(C)は防水床部材の接合部の異なる態様を拡大して示す正面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態を示すものであって、防水床部材と表層材とタイルとを分離して示す正面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態を示すものであって、防水床部材と接合材と樹脂シートとを分離して示す要部の斜視図である。
【図5】本発明第4の実施形態の別態様を示すものであって、防水床部材と接合材と樹脂シートとを分離して示す要部の斜視図である。
【図6】本発明の第5の実施形態を示すものであって、防水床部材、補強材、表層材及びタイルを分離して示す正面図である。
【図7】本発明の第5の実施形態を示すものであって、防水床部材の接合部を拡大して示す正面図である。
【図8】本発明の第6の実施形態に関するものであって、図(A)〜(C)はいずれも防水床部材の接合部の各種態様を例示する要部の正面図である。
【図9】本発明の第7の実施形態に関するものであって、図(A)(B)はいずれも防水床部材の接合部の各種態様を例示する要部の正面図である。
【図10】本発明の第8の実施形態に関するものであって、図(A)(B)はいずれも防水床部材の接合部の各種態様を例示する要部の正面図である。
【符号の説明】
【0048】
1…防水床部材(上) 1a…垂下部 2…防水床部材(下) 2a…起立部 2b…起立段部 4…架台 5…高さ調節脚 10…連結部材 20…光硬化性樹脂シート 21…接合材 22…段部 26…空間部分 40…受載部 J…接合部 P…表層材 Q…補強材 S…接着剤 T…タイル(仕上げ材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する防水床部材がそれぞれの端縁部を当接又は近接させて配設され、当該防水床部材それぞれの端縁部が、それらの上に跨って配置された光硬化性の樹脂シートによって水密的に連結されていることを特徴とする防水床部材の接合構造。
【請求項2】
隣接する防水床部材が所定距離を置いて配設され、当該防水床部材それぞれの端縁部間に接合材が架け渡され、前記防水床部材それぞれと前記接合材とが、それらの上に跨って配置された光硬化性の樹脂シートによって水密的に連結されていることを特徴とする防水床部材の接合構造。
【請求項3】
請求項2に記載した接合構造において、前記防水床部材の端縁部間であって、前記接合材が配置されていない空間部分を、前記樹脂シートで覆った防水床部材の接合構造。
【請求項4】
隣接する防水床部材それぞれにおける接合側の端縁部に段部が形成され、当該段部間に接合材が架け渡され、前記防水床部材それぞれと前記接合材とが、それらの上に跨って配置された光硬化性の樹脂シートによって水密的に連結されていることを特徴とする防水床部材の接合構造。
【請求項5】
請求項4に記載した接合構造において、前記防水床部材の表面と、前記接合材の表面とが、実質的に面一となるように設定した防水床部材の接合構造。
【請求項6】
隣接する防水床部材を接合するための構造であって、一方の防水床部材の上面に形成した平坦な受載部の上に、他方の防水床部材の端縁部が重ね合わされ、前記防水床部材の重ね合わせ領域が、光硬化性の樹脂シートによって水密的に被覆されていることを特徴とする防水床部材の接合構造。
【請求項7】
前記重ね合わせ領域において、上側に位置する防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に垂下部が形成され、当該垂下部が下側に位置する防水床部材の前記受載部に当接されている請求項6に記載した防水床部材の接合構造。
【請求項8】
前記重ね合わせ領域において、下側に位置する防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に、上側に位置する防水床部材の裏面へ向かう起立部が形成されている請求項7に記載した防水床部材の接合構造。
【請求項9】
隣接する防水床部材を接合するための構造であって、一方の防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に上方へ突出する起立段部が形成され、該起立段部の上面に形成した平坦な受載部の上に、他方の防水床部材が重ね合わされ、前記防水床部材の重ね合わせ領域が、光硬化性の樹脂シートによって水密的に被覆されていることを特徴とする防水床部材の接合構造。
【請求項10】
前記重ね合わせ領域において、上側に位置する防水床部材の端縁部又は端縁部近傍に垂下部が形成され、当該垂下部が下側に位置する防水床部材の上面に当接されている請求項9に記載した防水床部材の接合構造。。
【請求項11】
前記防水床部材の重ね合わせ領域に、上側に位置する防水床部材から下側に位置する防水床部材へ向かって下り勾配となる方向の排水勾配を設けた請求項6乃至10のいずれかに記載した防水床部材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−112147(P2006−112147A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−301415(P2004−301415)
【出願日】平成16年10月15日(2004.10.15)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】